説明

コモンモードノイズフィルタ

【課題】本発明は、差動信号で発生したノイズを除去できるコモンモードノイズフィルタを提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明のコモンモードノイズフィルタは、第1のコイル導体11の他端部11bと第2のコイル導体12の他端部12bとを接続し、かつ第3のコイル導体13の他端部13bと第4のコイル導体14の他端部14bとを接続するとともに、コモンモードノイズが第1の外部電極15および第4の外部電極18から流入し、第2の外部電極16および第3の外部電極17から流出するようにし、さらに、コモンモードノイズに対して前記第1のコイル導体11と前記第3のコイル導体13とが磁気結合し、前記第2のコイル導体12と前記第4のコイル導体14とが磁気結合するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器に使用されるコモンモードノイズフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のコモンモードノイズフィルタは、図6に示すように、非磁性体層1a〜1cと、この非磁性体層1a〜1cの上下に形成された複数の磁性体層2と、非磁性体層1a〜1c、磁性体層2を積層して形成された積層体3と、前記非磁性体層1a〜1cに形成されたスパイラル状の第1のコイル4、第2のコイル5と備え、第1のコイル4の巻き方向と第2のコイル5の巻き方向が上面視にて互いに同一とした構成となっていた。
【0003】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−60514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来のコモンモードノイズフィルタにおいては、コモンモードノイズを通過させた場合は第1のコイル4と第2のコイル5によって発生したインピーダンスによりコモンモードノイズを除去することができるが、差動信号を通過させた場合、差動信号は第1のコイル4と第2のコイル5とで打ち消し合うため、差動信号のノイズ成分(ノーマルモードノイズ)を除去できないという課題を有していた。
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、ノーマルモードノイズの除去も可能なコモンモードノイズフィルタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0008】
本発明の請求項1に記載の発明は、第1のコイルおよび第2のコイルと、第1のコイルの両端部に接続された第1、第2の外部電極と、第2のコイルの両端部に接続された第3、第4の外部電極とを備え、コモンモード電流が前記第1の外部電極および第4の外部電極から流入し、第2の外部電極および第3の外部電極から流出するようにするとともに、コモンモード電流によって前記第1のコイルと第2のコイルとが磁気結合するようにし、さらに第2のコイルと第4の外部電極との間にインピーダンス部を設けるようにしたもので、この構成によれば、第1のコイルとインピーダンス部、第2のコイルとインピーダンス部によりコモンモードノイズが除去でき、さらに、互いに180°の位相差のある差動信号が、第1の外部電極および第4の外部電極から流入したとき、第2のコイルに到達する信号は先にインピーダンス部を流れるため、インピーダンスによって信号の高周波成分が減衰するとともに、信号のノーマルモードノイズを除去できる。また、第2のコイルにおける高周波信号は他方の高周波信号に対し位相にずれが生じ、これにより、第1のコイルと第2のコイルとでは位相ずれや振幅レベル差により、発生する磁束を完全に打ち消し合わないため、第1のコイルと第2のコイル間にインピーダンスが発生し、この結果、差動信号の高周波成分が減衰するため、信号のノーマルモードノイズを除去できる。また、第1のコイルを通過した差動信号は第3の外部電極に到達する前にインピーダンス部を通過するため、インピーダンスによって高周波成分が減衰するとともに、第2のコイルにおける高周波信号は位相にずれが生じる。この時、第1のコイルに接続されたインピーダンス部と第2のコイルに接続されたインピーダンス部のインピーダンス値および位相が等しい場合、差動信号間に生じた位相差や振幅差が補正されて、正常な差動信号に復帰し、差動信号のノイズ成分のみが除去されるという作用効果を有するものである。
【0009】
本発明の請求項2に記載の発明は、第1のコイルおよび第2のコイルと、第1のコイルの両端部に接続された第1、第2の外部電極と、第2のコイルの両端部に接続された第3、第4の外部電極とを備え、コモンモード電流が前記第1の外部電極および第4の外部電極から流入し、第2の外部電極および第3の外部電極から流出するようにするとともに、第1のコイルと第2のコイルとに互いに逆方向にコモンモード電流が流入するようにし、さらにコモンモード電流によって前記第1のコイルと第2のコイルとが正の磁気結合をするようにしたもので、この構成によれば、第1のコイルと第2のコイルのコモンモードインピーダンスによりコモンモードノイズが除去でき、さらに、第1のコイルの第2の外部電極側の端部に到達する信号は、先に第1のコイルを通過した後であるため、第2のコイルに対して第1のコイルの当該箇所における高周波信号は位相にずれが生じ、これにより、第1のコイルと第2のコイルとでは信号により発生する磁束を完全に打ち消し合わないため、第1のコイルと第2のコイル間に差動信号のインピーダンスが発生する。この結果、高周波の差動信号が減衰するため、差動信号で発生したノーマルモードノイズを除去できるという作用効果を有するものである。
【0010】
本発明の請求項3に記載の発明は、積層体と、この積層体の内部に形成された第1〜第4のコイル導体と、前記積層体の端部に設けられかつ前記第1〜第4のコイル導体の一端部にそれぞれ接続された第1〜第4の外部電極とを備え、前記第1のコイル導体の他端部と前記第2のコイル導体の他端部とを接続し、かつ前記第3のコイル導体の他端部と前記第4のコイル導体の他端部とを接続するとともに、コモンモード電流が前記第1の外部電極および前記第4の外部電極から流入し、前記第2の外部電極および前記第3の外部電極から流出するようにし、さらに、コモンモード電流によって前記第1のコイル導体と前記第3のコイル導体とが磁気結合し、前記第2のコイル導体と前記第4のコイル導体とが磁気結合するようにしたもので、この構成によれば、第1〜第4のコイル導体のコモンモードインピーダンスによりコモンモードノイズが除去でき、さらに、互いに180°の位相差のある差動信号が、第1の外部電極および第4の外部電極から流入したとき、第2のコイル導体に到達する信号は先に第1のコイル導体を流れるため、第2のコイル導体における高周波信号は位相にずれが生じ、これにより、第4のコイル導体と第2のコイル導体とでは信号により発生する磁束を完全に打ち消し合わないため、第4のコイル導体と第2のコイル導体間に差動信号のインピーダンスが発生する。この結果、高周波の差動信号が減衰するため、差動信号で発生したノーマルモードノイズを除去できるという作用効果を有するものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明のコモンモードノイズフィルタは、第1のコイル導体の他端部と第2のコイル導体の他端部とを接続し、かつ第3のコイル導体の他端部と第4のコイル導体の他端部とを接続するとともに、コモンモード電流が第1の外部電極および第4の外部電極から流入し、第2の外部電極および第3の外部電極から流出するようにし、さらに、コモンモード電流によって前記第1のコイル導体と前記第3のコイル導体とが磁気結合し、前記第2のコイル導体と前記第4のコイル導体とが磁気結合するようにしているため、互いに180°の位相差のある差動信号が、第1のコイル導体の一端部および第4のコイル導体の一端部から流入したとき、第2のコイル導体に到達する信号は先に第1のコイル導体を流れ、これにより、第2のコイル導体における高周波信号は位相にずれが生じるため、第4のコイル導体と第2のコイル導体とでは信号により発生した磁束を完全に打ち消し合わず、これにより、第4のコイル導体と第2のコイル導体間に差動信号のインピーダンスが発生する。この結果、高周波の差動信号が減衰するため、差動信号で発生したノーマルモードノイズを除去できるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図
【図2】同コモンモードノイズフィルタの斜視図
【図3】同コモンモードノイズフィルタの等価回路図
【図4】同コモンモードノイズフィルタの他の例の等価回路図
【図5】同コモンモードノイズフィルタの他の例の等価回路図
【図6】従来のコモンモードノイズフィルタの分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施の形態におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図、図2は同コモンモードノイズフィルタの斜視図である。
【0015】
本発明の一実施の形態におけるコモンモードノイズフィルタは、図1、図2に示すように、積層体10と、この積層体10の内部に形成された第1〜第4のコイル導体11〜14と、前記積層体10の端部に設けられかつ前記第1〜第4のコイル導体11〜14の一端部11a〜14aにそれぞれ接続された第1〜第4の外部電極15〜18とを備え、前記第1のコイル導体11の他端部11bと前記第2のコイル導体12の他端部12bとを接続し、かつ前記第3のコイル導体13の他端部13bと前記第4のコイル導体14の他端部14bとを接続するとともに、コモンモード電流が前記第1の外部電極15および前記第4の外部電極18から流入し、前記第2の外部電極16および前記第3の外部電極17から流出するようにし、さらにコモンモード電流によって前記第1のコイル導体11と前記第3のコイル導体13とが磁気結合し、前記第2のコイル導体12と前記第4のコイル導体14とが磁気結合するようにしているものである。
【0016】
上記構成において、前記第1〜第4のコイル導体11〜14は、それぞれ銀等の導電材料を渦巻状にめっきすることにより形成されている。そして、第1、第2のコイル導体11,12は、ともに第2の絶縁体層21bの上面に形成され、第3、第4のコイル導体13,14は、ともに第3の絶縁体層21cの上面に形成されている。
【0017】
また、前記第1のコイル導体11の一端部11a、第2のコイル導体12の一端部12aは、第2の絶縁体層21bの端面から露出し、第1のコイル導体11の他端部11b、第2のコイル導12の他端部12bは、第1の絶縁体層21aに設けられた第1の接続導体22aを介して接続されている。
【0018】
このとき、第1のコイル導体11の他端部11bと第1の接続導体22aとは、第2の絶縁体層21bに形成された第1のビア電極23aを介して接続され、第2のコイル導12の他端部12bと第1の接続導体22aとは、第2の絶縁体層21bに形成された第2のビア電極23bを介して接続されている。
【0019】
そして、第2の絶縁体層21bの端面から露出した第1のコイル導体11の一端部11a、第2のコイル導体12の一端部12aは、それぞれ積層体10の端部に設けられた第1、第2の外部電極15,16と直接接続されている。
【0020】
さらに、前記第3のコイル導体13の一端部13a、第4のコイル導体14の一端部14aは、ともに第3の絶縁体層21cの上面に設けられ、第3のコイル導体13の一端部13aは、第4の絶縁体層21dに設けられた第2の接続導体22bと接続され、第4のコイル導体14の一端部14aは、第4の絶縁体層21dに設けられた第3の接続導体22cと接続されている。また、第3のコイル導体13の他端部13bと第4のコイル導体14の他端部14bは、第3の絶縁体層21cの上面において互いに接続されている。
【0021】
このとき、第3のコイル導体13の一端部13aと第2の接続導体22bとは、第4の絶縁体層21dに形成された第3のビア電極23cを介して接続され、第4のコイル導体14の一端部14aと第3の接続導体22cとは、第4の絶縁体層21dに形成された第4のビア電極23dを介して接続されている。
【0022】
そして、第3のコイル導体13の一端部13aは第2の接続導体22bを介して積層体10の端部に設けられた第3の外部電極17と接続され、第4のコイル導体14の一端部14aは第3の接続導体22cを介して積層体10の端部に設けられた第4の外部電極18と接続されている。
【0023】
なお、第2、第3の接続導体22b、22cの上面には第5の絶縁体層21eが設けられている。これらの第1〜第5の絶縁体層21a〜21eは、下から第1の絶縁体層21a、第2の絶縁体層21b、第3の絶縁体層21c、第4の絶縁体層21d、第5の絶縁体層21eの順に積層され、また、第2〜第4の絶縁体層21b〜21dは、Cu−Znフェライト等の非磁性材料によりシート状に構成され、第1の絶縁体層21a、第5の絶縁体層21eは、Ni−Cu−Znフェライト等の磁性材料によりシート状に構成されている。また、第1〜第5の絶縁体層21a〜21eの枚数は、図1に示された枚数に限定されるものではない。
【0024】
さらに、前記第1〜第4の外部電極15〜18は、積層体10の端面に銀を印刷することにより形成され、またこれらの表面にめっきによってニッケルめっき層を形成するとともに、このニッケルめっき層の表面にめっきによってすずやはんだ等の低融点金属めっき層を形成する。なお、第1、第4の外部電極15,18を同一面に、第2、第3の外部電極16,17を他の同一面に設ける。
【0025】
また、前記第1〜第4のビア電極23a〜23dは、第2の絶縁体層21b、第4の絶縁性層21dの所定の2箇所に、レーザで孔あけ加工をし、この孔に銀を充填して形成する。
【0026】
ここで、上面視にて第1のコイル導体11と第3のコイル導体13を略同じ位置に配置し、巻き方向も同一方向としている。同様に、上面視にて第2のコイル導体12と第4のコイル導体14を略同じ位置に配置し、巻き方向も同一方向としている。この構成により、コモンモードノイズが第1の外部電極15および第4の外部電極18から流入し、第2の外部電極16および第3の外部電極17から流出するコモンモードノイズに対して、第1のコイル導体11と第3のコイル導体13とが磁気結合し、第2のコイル導体12と第4のコイル導体14とが磁気結合し、コモンモードノイズを除去できる。一方、差動信号に対しては、第1のコイル導体11で発生した磁界と第3のコイル導体13で発生した磁界とが打ち消し合い、第2のコイル導体12で発生した磁界と第4のコイル導体14で発生した磁界とが打ち消し合うため、通常は減衰されることなく通過するようになっている。しかし、高周波帯域では、後述するように第4のコイル導体14と第2のコイル導体12とでは信号で発生した磁束を完全に打ち消し合わず、第4のコイル導体14と第2のコイル導体12間で差動信号のインピーダンスが発生し、ノーマルモードノイズが除去される。
【0027】
図3は、上記した本発明の一実施の形態におけるコモンモードノイズフィルタの等価回路図である。
【0028】
図3からも明らかなように、第1の外部電極15から流入したコモンモードノイズは、第1のコイル導体11の後に第2のコイル導体12に流れ、また第4の外部電極18から流入したコモンモードノイズは、第4のコイル導体14の後に第3のコイル導体13に流れる。したがって、互いに磁気結合する第2のコイル導体12と第4のコイル導体14については、第2のコイル導体12には一旦第1のコイル導体11に流れてから信号が入ってくるが、第4のコイル導体14には直接信号が入ってくる。
【0029】
上記したように本発明の一実施の形態におけるコモンモードノイズフィルタにおいては、第1のコイル導体11の他端部11bと第2のコイル導体12の他端部12bとを接続し、かつ第3のコイル導体13の他端部13bと第4のコイル導体14の他端部14bとを接続するとともに、コモンモード電流が第1の外部電極15および記第4の外部電極18から流入し、第2の外部電極16および第3の外部電極17から流出するようにし、さらにコモンモード電流によって第1のコイル導体11と第3のコイル導体13とが磁気結合し、第2のコイル導体12と前記第4のコイル導体14とが磁気結合するようにしているため、互いに180°の位相差のある差動信号が、第1のコイル導体11の一端部11a(第1の外部電極15)および第4のコイル導体14の一端部14a(第4の外部電極18)から流入したとき、図3で示したように第2のコイル導体12に到達する信号は先に第1のコイル導体11を流れ、これにより、第2のコイル導体12における高周波信号の位相にずれが生じるため、第4のコイル導体14と第2のコイル導体12とでは信号で発生した磁束を完全に打ち消し合わず、第4のコイル導体14と第2のコイル導体12間で差動信号のインピーダンスが発生する。この結果、高周波の差動信号が減衰するため、ノーマルモードノイズを除去できるという効果が得られるものである。
【0030】
すなわち、差動信号は180°の位相差があるため、この180°の位相差を有する差動信号は、同一の方向つまり第1、第4の外部電極15,18から流入し、このとき、第2のコイル導体12で発生した磁界と第4のコイル導体14で発生した磁界とが打ち消し合うことになるが、信号が第2のコイル導体12に流入する前には第1のコイル導体11に流れることになる。そして、第1のコイル導体11にはL成分(インダクタンス成分)とR成分(抵抗成分)が生じ、L成分とR成分の位相差をΦとすると、Φ=tan-1(ωL/R)で表される(ωは信号の位相、Lはインダクタンス値、Rは抵抗値)。このとき、周波数が高いほど、L成分の位相がずれるため、第2のコイル導体12の第4のコイル導体14との位相差は180°からのズレが大きくなり、これにより、差動信号が高周波領域になるほど、第2のコイル導体12と第4のコイル導体14とでは完全に打ち消し合わないため、高周波の差動信号が減衰する。したがって、差動信号で発生した高周波のノイズを除去でき、かつこのノイズより周波数の低い信号は通過させることができる。このとき、差動信号の周波数はノイズの周波数より低いため、差動信号自体が受ける影響は小さい。
【0031】
さらに、第3のコイル導体13に到達する信号は先に第4のコイル導体14を流れ、第1のコイル導体11には直接信号が入ってくるため、第3のコイル導体13における高周波信号の位相にずれが生じ、これにより、第1のコイル導体11と第3のコイル導体13においても、同様に高周波の差動信号が減衰する。
【0032】
なお、上記構成において、第2のコイル導体12、第4のコイル導体14の代わりに一定のインダクタンス、抵抗値または容量値を有するインピーダンス部23を用いてもよい(図4に示す等価回路となる)。この場合、上記のようにコモンモード電流が第1の外部電極15および第4の外部電極18から流入し、第2の外部電極16および第3の外部電極17から流出するようにすると、第1のコイル21(第1のコイル導体11)と第2のコイル22(第3のコイル導体13)とが磁気結合し、互いに180°の位相差のある差動信号が、第1の外部電極15および第4の外部電極18から流入する。このとき、第1のコイル21の両端部にはインピーダンス部23を介して第1、第2の外部電極15,16と接続され、第2のコイル22の両端部にはインピーダンス部23を介して第3、第4の外部電極17,18と接続される。
【0033】
そして、第2のコイル22に到達する信号は先にインピーダンス部23を流れるため、インピーダンスによって信号の高周波成分が減衰するとともに、信号のノーマルモードノイズを除去できる。また、第2のコイル22における高周波信号は第1のコイル21の高周波信号に対し位相ずれや振幅差が生じ、これにより、第1のコイル21と第2のコイル22とでは位相ずれや振幅レベル差により、発生する磁束を完全に打ち消し合わないため、第1のコイル21と第2のコイル22間にインピーダンスが発生する。この結果、差動信号の高周波成分が減衰するため、信号のノーマルモードノイズを除去できる。
【0034】
さらに、第1のコイル21とインピーダンス部23、第2のコイル22とインピーダンス部23によりコモンモードノイズが除去できる。
【0035】
なお、図4においては、第4の外部電極18と第2のコイル22との間に形成されたインピーダンス部23と、第2の外部電極16と第1のコイル21との間に形成されたインピーダンス部23のそれぞれの抵抗値、インダクタンス値、容量値を略同一にし、略同一のインピーダンスとすれば、差動信号間に生じた位相差や振幅差が補正されて、正常な差動信号に復帰し、差動信号のノイズ成分のみが除去される。また、インピーダンス部23としては、絶縁層上に導電材料を直線状または蛇行状に形成して設けられた抵抗体、絶縁層上に導電材料を渦巻き状、螺旋状に形成して設けられたコイル、導電材料からなる板状導体を複数の絶縁層上に形成して設けられたコンデンサを使用できる。
【0036】
ここで、2つのインピーダンス部23をコイルとし、互いに磁気結合させれば、図1〜図3に示した本発明の一実施の形態におけるコモンモードノイズフィルタと同様の構成になる。
【0037】
さらに、図5に示すように、第1の外部電極15および第4の外部電極18から流入したコモンモード電流が、第1のコイル21と第2のコイル22では互いに逆方向に流れるようにしてもよい。このとき、コモンモード電流によって第1のコイル21と第2のコイル22とが正の磁気結合をする、すなわち第1のコイル21で発生した磁束と第2のコイル22で発生した磁束が互いに強め合うようにする。この場合、互いに180°の位相差のある差動信号が流入した場合、第1のコイル21の第2の外部電極16側の端部に到達する信号は、先に第1のコイル21を通過した後であるため、第2のコイル22に対して第1のコイル21の当該箇所における高周波信号は位相にずれが生じ、これにより、上記した構成と同様に、高周波の差動信号が減衰するため、差動信号で発生したノーマルモードノイズを除去できる。
【0038】
なお、上記したコモンモードノイズフィルタにおいては、第2のコイル導体12、第4のコイル導体14(インピーダンス部23)を、それぞれ第1のコイル導体11、第3のコイル導体13(第1、第2のコイル21、22)と同一の絶縁層の上面に形成したが、それぞれ別々の絶縁層の上面に形成するようにしてもよい。
【0039】
また、第1〜第4のコイル導体11〜14(第1、第2のコイル21、22、インピーダンス部23)を積層体10の内部に形成するようにしたが、これらを導線で構成し、この導線を図3〜図5に示す等価回路になるように磁性体の巻芯に巻回するようにしてもよく、さらに、これらをそれぞれ1つのコイルや積層インダクタで構成し図3〜図5に示す等価回路になるように実装基板上に配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係るコモンモードノイズフィルタは、差動信号で発生したノイズを除去できるという効果を有するものであり、特にデジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器のノイズ対策として使用されるコモンモードノイズフィルタ等において有用となるものである。
【符号の説明】
【0041】
10 積層体
11 第1のコイル導体
11a 第1のコイル導体の一端部
11b 第1のコイル導体の他端部
12 第2のコイル導体
12a 第2のコイル導体の一端部
12b 第2のコイル導体の他端部
13 第3のコイル導体
13a 第3のコイル導体の一端部
13b 第3のコイル導体の他端部
14 第4のコイル導体
14a 第4のコイル導体の一端部
14b 第4のコイル導体の他端部
15 第1の外部電極
16 第2の外部電極
17 第3の外部電極
18 第4の外部電極
21 第1のコイル
22 第2のコイル
23 インピーダンス部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のコイルおよび第2のコイルと、第1のコイルの両端部に接続された第1、第2の外部電極と、第2のコイルの両端部に接続された第3、第4の外部電極とを備え、コモンモード電流が前記第1の外部電極および第4の外部電極から流入し、第2の外部電極および第3の外部電極から流出するようにするとともに、コモンモード電流によって前記第1のコイルと第2のコイルとが磁気結合するようにし、さらに第2のコイルと第4の外部電極との間、および第1のコイルと第2の外部電極との間にそれぞれ略同一のインピーダンス値を有するインピーダンス部を設けるようにしたコモンモードノイズフィルタ。
【請求項2】
第1のコイルおよび第2のコイルと、第1のコイルの両端部に接続された第1、第2の外部電極と、第2のコイルの両端部に接続された第3、第4の外部電極とを備え、コモンモード電流が前記第1の外部電極および第4の外部電極から流入し、第2の外部電極および第3の外部電極から流出するようにするとともに、第1のコイルと第2のコイルとに互いに逆方向にコモンモード電流が流入するようにし、さらにコモンモード電流によって前記第1のコイルと第2のコイルとが正の磁気結合をするようにしたコモンモードノイズフィルタ。
【請求項3】
積層体と、この積層体の内部に形成された第1〜第4のコイル導体と、前記積層体の端部に設けられかつ前記第1〜第4のコイル導体の一端部にそれぞれ接続された第1〜第4の外部電極とを備え、前記第1のコイル導体の他端部と前記第2のコイル導体の他端部とを接続し、かつ前記第3のコイル導体の他端部と前記第4のコイル導体の他端部とを接続するとともに、コモンモード電流が前記第1の外部電極および前記第4の外部電極から流入し、前記第2の外部電極および前記第3の外部電極から流出するようにし、さらに、コモンモード電流によって前記第1のコイル導体と前記第3のコイル導体とが磁気結合し、前記第2のコイル導体と前記第4のコイル導体とが磁気結合するようにしたコモンモードノイズフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−109292(P2012−109292A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254681(P2010−254681)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】