説明

コラゲナーゼ活性阻害剤

【課題】 新規なコラゲナーゼ活性阻害剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 発芽ケールまたは発芽ケールの抽出物がコラゲナーゼ活性を阻害することを見出し、発芽ケールまたは発芽ケールの抽出物を含有することを特徴とする、コラゲナーゼ活性阻害剤を完成させた。発芽ケールまたは発芽ケールの抽出物は従来技術のケールと比較しても高いコラゲナーゼ活性阻害効果を示した。本発明に用いる発芽ケールまたは発芽ケールの抽出物は、経口または非経口でコラゲナーゼ活性阻害剤として利用できるほか、更に外用剤や飲食品類へ配合できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発芽ケールまたは発芽ケールの抽出物を含有するコラゲナーゼ活性阻害剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは皮膚の主成分であり、弾力性のある繊維状のタンパク質である。コラーゲン産生量が正常ならば、しみやくすみのない滑らかな肌となり、弾力のある血管が形成され動脈硬化などが起こりにくくなる。しかしながら、コラーゲンは、体内でコラゲナーゼの作用により分解してしまう。よって、コラーゲンの分解を抑制し、皮膚の老化を防止するために、コラゲナーゼ活性阻害剤となり得る種々の物質が研究されている。現在までに、コラゲナーゼ活性阻害剤の代表的なものとして、コーヒー酸またはその塩(特許文献1)、グアバの葉(特許文献2)、ハマメリス抽出物(特許文献3)、コケモモ、シラカバ、ハマスゲ、ボダイジュ、緑茶(特許文献4)、シモツケソウ、ヤドリギ、ホホバ葉、蓮葉、レッドクローバー(特許文献5)、松樹皮抽出物(特許文献6)、ケール(特許文献7)、カムカム種子の抽出物(特許文献8)、アセロラ種子の抽出物(特許文献9)などが知られている。しかしながら、従来のコラゲナーゼ阻害剤は、必ずしも効果が十分でなく、製品への配合では、有効な結果を得るに至っていない場合があった。
【特許文献1】特開平5−117145号公報
【特許文献2】特開平7−291873号公報
【特許文献3】特開平8−283133号公報
【特許文献4】特開2003−12531号公報
【特許文献5】特開2003−48846号公報
【特許文献6】特開2003−238426号公報
【特許文献7】特開2003−238426号公報
【特許文献8】特許第3635081号公報
【特許文献9】特開2007−314552号公報
【0003】
発芽ケールとは、アブラナ科ブラシカ属に属するケール(Kale,学名 Brassica oleracea var. acephala DC)の新芽をいい、具体的には発芽後、本葉展開前に収穫した幼植物体をいう。発芽ケールはケールスプラウトとも呼ばれる。
【0004】
一般にアブラナ科植物の新芽は成熟体に比べ、スルフォラファンやグルコシノレート類が多く含まれており、発芽ケールにはケールの成熟体とは異なる様々な効果が期待されている。実際にアブラナ科植物の新芽には、メラニン合成抑制活性(特許文献10)、大腸ガン予防作用(特許文献11)、神経成長因子産生促進作用(特許文献12)などが既に報告されている。しかしながら、発芽ケールまたは発芽ケールの抽出物によるコラゲナーゼ活性阻害効果は知られていない。
【特許文献10】特開2003−155221号公報
【特許文献11】特開2005−60229号公報
【特許文献12】特開2007−15958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は新規なコラゲナーゼ活性阻害剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本研究者らは、鋭意研究を重ねた結果、発芽ケールまたは発芽ケールの抽出物を含有することを特徴とするコラゲナーゼ活性阻害剤を見出し、本発明を完成させた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は下記の実施形態に限定して解釈するべきではなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0009】
本発明のコラゲナーゼ活性阻害剤は、発芽ケールまたはその抽出物を含有することを特徴とする。
【0010】
本発明に用いられるケールの品種は特に制限されず、キッチンケール、ツリーケール、ブッシュケール、マローケール、シベリアンケール、スコッチケール、コラードおよび緑葉カンラン等の様々な種類のケールを使用することができる。また、栽培方法や栽培地に関しては特に限定されるものでもない。
【0011】
本発明において、発芽ケールとは、前記各種ケールの成熟体ではなく、それらの新芽をいう。例えばケールの種子を、9℃〜31℃、好ましくは12℃〜28℃、さらに好ましくは15℃〜25℃で水に浸漬させ、1日間〜7日間、好ましくは2日間〜6日間、さらに好ましくは3日間〜5日間発芽させる。発芽させた芽の長さは1mm〜100mm、好ましくは5mm〜75mm、さらに好ましくは10mm〜50mmである。
【0012】
発芽ケールは、水などで付着物を洗浄した後、必要に応じて、適当な大きさに細片化される。細片化は、当業者が通常使用するスライス、破砕、細断などの方法で行われる。
【0013】
本発明に用いられる発芽ケールは、前記発芽ケールを乾燥して得られる乾燥物、粉砕物またはこれらの抽出物のすべてが含まれる。
【0014】
本発明に用いられる発芽ケールの抽出物は、各種抽出溶媒を用いた抽出処理によって、原料から得られる抽出液、抽出液の希釈液若しくは濃縮液、抽出液を乾燥して得られる乾燥物、またはこれらの粗精製物、精製物のすべてが含まれる。常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してよい。抽出物の溶液中の発芽ケールの濃度には特に制限はないが、好ましくは0.01〜100質量%である。
【0015】
本発明で用いられる抽出溶媒の例としては水、低級1価アルコール(メチルアルコール、エチルアルコール等)、液状多価アルコール(グリセリン、1,3−ブチレングリコール等)、低級エステル(酢酸エチル等)、エーテル類(ジエチルエーテル等)、アセトニトリル等が挙げられ、それらの一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
本発明で行われる抽出処理は、発芽ケールに含まれる可溶性成分を溶出させる限り特に限定されず常法に従って行うことができ、室温ないし還流加熱下において任意の装置を使用することができる。抽出処理により可溶性成分を溶出させた後、ろ過により抽出残渣を除くことにより、抽出液を得ることができる。
【0017】
本発明に用いる発芽ケールまたは発芽ケールの抽出物は、経口または非経口でコラゲナーゼ活性阻害剤として利用できるほか、更に外用剤や飲食品類へ配合できる。
【0018】
本発明にかかるコラゲナーゼ活性阻害剤の発芽ケールまたは発芽ケールの抽出物の配合量としては、乾燥重量として0.0001〜50質量%が好ましく、0.01〜10質量%がさらに好ましいが、用いる剤型、使用対象等の様々の条件に応じて、広範囲でその配合量を適宜設定できる。
【0019】
本発明にかかるコラゲナーゼ活性阻害剤は、必要に応じて、効果を損なわない範囲内で外用剤、飲食品類などに使用される成分や添加剤を任意に添加して製造することができる。
【0020】
外用剤としては、例えば、ローション剤、乳剤、ゲル剤、クリーム剤、 軟膏剤、粉末剤、顆粒剤等の形態で、医薬品、医薬部外品、化粧品などとして使用できる。
【0021】
前記外用剤の外観や使用感、保存安定性をより向上させる目的で、デキストリンなどの賦形剤、香料、色素、保存剤、シリコン系ポリマー、アクリル系ポリマー等の増粘剤、EDTA等のキレート剤、フェノキシエタノール等の防腐剤などを添加することができる。さらに、機能を増強する目的で、様々な助剤を添加することもできる。例えば、他の薬効成分(活性酸素除去剤、抗酸化剤、抗炎症剤、細胞賦活剤、ビタミン剤、ホルモン剤等やこれらの効能を有する動植物由来の抽出物等)や他の油剤(リノール酸、リノレン酸、パルミチン酸、DHA、EPAなどの不飽和脂肪酸およびその誘導体や動植物より抽出された油およびその誘導体等)、保湿剤(コラーゲンまたはその分解物、カロットエキスなどに含まれるコラーゲン類似ペプチド、大豆ペプチド、アミノ酸、ヒアルロン酸等のムコ多糖類、コンドロイチンなどのアミノ糖、トレハロースなどの糖類、海藻類、アルギン酸、グルコマンナン、ペクチンなどの水溶性食物繊維等)、界面活性剤(レシチンや脂肪酸エステル、アミノ酸誘導体等)、紫外線吸収剤(酸化亜鉛や酸化チタン等)、吸収促進剤等を添加してもよい。
【0022】
このような添加剤を添加することにより、前記外用剤は、化粧水、化粧クリーム、乳液、クリーム、パック、ヘアトニック、ヘアクリーム、シャンプー、ヘアリンス、トリートメント、ボディシャンプー、洗顔剤、石鹸、ファンデーション、整髪料、育毛剤、水性軟膏、油性軟膏、シップなどとして使用できる。
【0023】
飲食品類としては、前記コラゲナーゼ活性阻害剤をそのまま、または種々の栄養成分を加えて、食用に適した形態、例えば、カプセル状、粉末状、顆粒状、丸剤、錠剤状、固形状、液状、シート状などに成形して保健用食品または栄養補助食品または食品素材として提供することができる。また種々の食品、例えば、食肉加工食品、水産加工食品、発酵乳製品に添加して使用することができ、水、果汁、牛乳、清涼飲料などの飲料に添加して使用してもよい。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定して解釈すべきではなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【0025】
(発芽ケールの粉砕物、抽出物調製)
ケールの種子を15℃〜25℃の水に浸漬させ、4日間発芽させた後、芽を10〜50mmに成長させた全草(芽、種子、根)を摘取、乾燥し、粉砕、殺菌、篩過して、粉砕物を得た。得られた粉砕物50gを、50%エチルアルコールを用いて抽出した。抽出後濾過し、濾液の溶媒を除き、発芽ケール抽出物12gを得た。
【0026】
(ケールの粉砕物、抽出物の調製)
ケールの全草(芽、種子、根)を摘取、乾燥し、粉砕、殺菌、篩過して、粉砕物を得た。得られた粉砕物50gを、50%エチルアルコールを用いて抽出した。抽出後濾過し、濾液の溶媒を除き、ケール抽出物10gを得た。
【0027】
(サンプル溶液の調製)
ダルベッコPBS(Phosphate
buffered saline)(−)を用いて、発芽ケールおよびケールの粉砕物を調製し、サンプル溶液とした。
【0028】
(酵素溶液の調製)
コラゲナーゼB(ロッシュ製:Cat No.1088
807)を0.1%BSA(ウシ血清アルブミン)含有ダルベッコPBS(−)を用いて10μg/mlとなるように調製し、酵素溶液とした。
【0029】
(蛍光基質溶液の調製)
DMSOで溶解した蛍光基質(ペプチド研究所製:Code
3163v)を0.1%BSA含有ダルベッコPBS(−)を用いて5μMとなるように調製し、蛍光基質溶液とした。
【0030】
(被験溶液の調製)
96ウェルブラックプレートにサンプル溶液を50μl/wellで添加した。その後、酵素溶液を100μl/wellで添加し、37℃で10分間インキュベートを行った。さらに、蛍光基質溶液を50μl/wellで添加し、37℃で60分間インキュベートを行った後、320nmで励起し405nmにおける蛍光強度を測定した。
【0031】
(被験溶液blankの調製)
96ウェルブラックプレートにサンプル溶液を50μl/wellで添加した。その後、酵素溶液の代わりに0.1%BSA含有ダルベッコPBS(−)を100μl/wellで添加し、37℃で10分間インキュベートを行った。さらに、蛍光基質溶液を50μl/wellで添加し、37℃で60分間インキュベートを行った後、320nmで励起し405nmにおける蛍光強度を測定した。
【0032】
(対照溶液の調製)
96ウェルブラックプレートにダルベッコPBS(−)を50μl/wellで添加を行った。その後、酵素溶液を100μl/wellで添加し、37℃で10分間インキュベートを行った。さらに、蛍光基質溶液を50μl/wellで添加し、37℃で60分間インキュベートを行った後、320nmで励起し405nmにおける蛍光強度を測定した。
【0033】
(対照溶液blankの調製)
96ウェルブラックプレートに0.1%BSA含有ダルベッコPBS(−)を50μl/wellで添加した。その後、0.1%BSA含有ダルベッコPBS(−)を100μl/wellで添加し、37℃で10分間インキュベートを行った。さらに、蛍光基質溶液を50μl/wellで添加し、37℃で60分間インキュベートを行った後、405nmにおける蛍光強度を測定した。
【0034】
(コラゲナーゼ活性の測定)
コラゲナーゼ阻害活性は次の式から求められる阻害率で表した。
(数1) 阻害率(%)=100−[(A−B)/(C−D)]× 100
A:被験溶液の405nmにおける蛍光強度。
B:被験溶液blankの405nmにおける蛍光強度。
C:対照溶液の405nmにおける蛍光強度。
D:対照溶液blankの405nmにおける蛍光強度。
【0035】
さらに、濃度と活性の回帰分析から、IC50(50%阻害濃度)を算出した。
【0036】
[実施例1]
発芽ケールの粉砕物を被験溶液とし、コラゲナーゼ活性阻害率を算出した。
【0037】
[実施例2]
発芽ケールの抽出物を被験溶液とし、コラゲナーゼ活性阻害率とIC50値を算出した。
【0038】
[比較例1]
ケールの粉砕物を被験溶液とし、コラゲナーゼ活性阻害率を算出した。
【0039】
[比較例2]
ケールの抽出物を被験溶液とし、コラゲナーゼ活性阻害率とIC50値を算出した。
【0040】
コラゲナーゼ活性阻害率に結果を表1にIC50値の結果を表2に示す。
【表1】

【表2】

【0041】
表1に示すように、発芽ケールはケールと比較して、強いコラゲナーゼ活性を示した。特に、発芽ケール抽出物はケール抽出物と比較して、低濃度(0.625mg/ml)であっても5倍以上のコラゲナーゼ阻害率を示した。また、表2のIC50値が示すように、発芽ケール抽出物はケール抽出物と比較して、3倍の活性を示すことが明らかとなった。
【0042】
以上の結果より、発芽ケールが強いコラゲナーゼ活性阻害効果を示す新規な素材であることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明により、発芽ケールまたは発芽ケールの抽出物を含有する新規なコラゲナーゼ活性阻害剤を提供できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発芽ケールまたは発芽ケールの抽出物を含有することを特徴とする、コラゲナーゼ活性阻害剤。


【公開番号】特開2010−37320(P2010−37320A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205577(P2008−205577)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】