説明

コラムホールカバー

【課題】エンジン室側から車室内への透過音を減少し且つ蛇腹の伸縮性を備えたコラムホールカバーを提供する。
【解決手段】コラムホールカバーは、本体部10と、車体のダッシュパネル2に嵌着されるパネル取付部20と、他端側に設けられギヤハウジングに取り付けられるギヤ取付部30と、からなる。本体部10には、該本体部10を伸縮可能とする蛇腹部13が形成されており、該蛇腹部13の内側空間には軟質材からなる吸音材40が配置されている。蛇腹部13の根元部には、吸音材40を保持する脱落防止突起14が、周方向に上下に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体のダッシュパネルに貫設された取付孔及びこの取付孔に挿通されるステアリングシャフトの一部を覆うように、該取付孔に一端が取り付けられるとともに、該ステアリングシャフトが連結されたギアハウジングに他端が取り付けられるコラムホールカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のステアリング機構では、ステアリングシャフトを介してステアリングホイールの回転力をステアリングギヤに伝達し、この回転力をタイロッドの左右方向運動に変換することで車輪の制御を行っている。ここで、ステアリングホイールは車室内にある一方、ステアリングギヤは車体の外(エンジン室)にあり、ステアリングシャフトは車体の内側から外側に延びている。従って、通常、ステアリングシャフトは運転席の足元近くのダッシュパネルに設けられた孔を貫通しているため、走行中に車両の外部から泥や水などが孔を介して車室内に入ってきてしまうおそれがある。そこで、通常、ゴムなどの弾性材料よりなるコラムホールカバーでこの貫通孔を覆って、外部から泥や水などが車室内に侵入しないようにしている。
【0003】
このようなコラムホールカバーとして、図6に示されるように、両端に開口を有する筒状の本体部130と、この本体部130の一端側に一体に設けられた嵌合部135と本体部130の他端側に一体に設けられた第2嵌合部132とを有するコラムホールカバー101が知られている(例えば、特許文献1、図21参照)。
【0004】
このコラムホールカバー101の取付作業は、例えば、以下のようにして行われる。作業者は、ステアリングシャフト121が連結されたギヤハウジング120に第2嵌合部132を嵌合などにより取り付けた後、車体の外側からこれらを持ち上げる。そして、室内側すなわち図6にてダッシュパネル110の右上方から手を差し込み、嵌合部135の嵌合部押さえ部135bを摘んで嵌合部溝135aの一箇所を拡げてパネル内縁部111に嵌め込む。次に隣接する嵌合部溝135aを拡げて順にパネル内縁部111に嵌め合わせてゆき、嵌合部溝135aとパネル内縁部111とを全周に亘って嵌め合わせて取付作業を完了する。しかしながら、上記従来の構成よりなるコラムホールカバー101では、組付け誤差の吸収やギヤハウジング120の振動による軸ズレの吸収をする為に、蛇腹部136が形成されている。一般に、蛇腹部136は伸縮性・追従性を確保しようとすると、その膜厚が薄くなる為、エンジン室側からの騒音が透過しやすい傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−132328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題を解決するものであり、エンジン室側から車室内への透過音を減少し且つ蛇腹の伸縮性を備えたコラムホールカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一端に第1開口を他端に第2開口を有する筒状の本体部と、該本体部の前記一端側に設けられ、車体のダッシュパネルに貫設された取付孔を覆うように該ダッシュパネルに嵌着されるパネル取付部と、該本体部の前記他端側に設けられ、ギヤハウジングに取り付けられるギヤ取付部とからなり、前記本体部を伸縮可能とする蛇腹部を有するコラムホールカバーであって、前記蛇腹部の内側空間に吸音材を配置し、前記蛇腹部の根元部には該吸音材を保持する脱落防止突起を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
コラムホールカバー1には、本体部10の蛇腹部13の内側空間に吸音材40を配置している。この為、薄膜となる蛇腹部13からの透過音が低減でき、遮音性が向上できる。また、吸音材40は軟質材である為、蛇腹部13の伸縮・追従性にほとんど影響を与えない。さらに、蛇腹部13の根元部には脱落防止突起14が形成されている。この為、吸音材40が蛇腹部13の内側空間へ安定的に保持される。
好ましくは吸音材40には、吸音材40より硬質の芯43が埋設されていると良い。吸音材40を蛇腹部13の内側空間に挿入し易く、組付け作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態のコラムホールカバーの斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本実施形態のコラムホールカバーの蛇腹部13を拡大した断面図である。
【図4】本実施形態の吸音材40の製造方法において、一体成形体を成形している状態を示す断面図である。
【図5】本実施形態の吸音材40の製造方法において、一体成形体の不要部を除去している状態を示す断面図である。
【図6】従来のコラムホールカバーの取付方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以上説明した本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下本発明の好適な実施例について説明する。
【実施例1】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本実施形態のコラムホールカバー1の全体を示す斜視図である。図2は、図1のA−A断面図である。図3は、本実施形態のコラムホールカバー1の蛇腹部13の部分拡大図である。図4は、本実施形態の吸音材40の製造方法において、一体成形体を成形している状態を示す断面図である。図5は、本実施形態の吸音材40の製造方法において、一体成形体の不要部を除去している状態を示す断面図である。
【0013】
本実施形態のコラムホールカバー1は、図1及び図2に示されるように、本体部10と、本体部10の一端側に一体に設けられたパネル取付部20と、本体部10の他端側に一体に設けられたギヤ取付部30とを有している。また、本体部10には伸縮・追従可能な蛇腹部13が形成されている。
【0014】
このコラムホールカバー1はゴム弾性体よりなり、射出成形により一体に成形したものである。なお、例えばギヤ取付部30をその他の部分よりも剛性の高い合成樹脂などにより成形してもよい。このギヤ取付部30は図示しないギヤハウジングに嵌合などにより取り付けられる。
【0015】
本体部10は、一端側に第1開口11を有するとともに他端側に第2開口12を有する筒状部材である。図1に示されるように第1開口は楕円形状であり、第2開口は円形状である。このため、パネル取付部20もその横断面形状が略楕円形状とされており、ギヤ取付部30もその横断面形状が円形状(真円又は略真円)とされている。
【0016】
パネル取付部20は、車体のダッシュパネル2の取付孔3を覆うように、この取付孔3の周りのパネル内縁部4に取り付けられる。このパネル取付部20は、パネル取付部20がダッシュパネル2のパネル内縁部4に取り付けられた取付状態における取付形状と略同等の成形形状となるように、ゴム弾性体により一体成形されたものである。すなわち、嵌合溝部内にパネル内縁部が嵌め合い代を持って嵌め込むように形成されている。
【0017】
このパネル取付部20は、本体部10の一端側の外周面に設けられた環状のフランジ部24と、このフランジ部24に連続して設けられた環状の突出部21と、外周側に開口しフランジ部24と突出部21とを隔てる環状の嵌合溝部25とからなる。
【0018】
フランジ部24は本体部10の第1開口11側の端部から所定距離だけ他端側に離れた外周面から外周側へ略水平に延出するように環状に設けられている。そして、このフランジ部24の外周側端縁には環状のシールリップ26が設けられている(本実施形態では2本)。
【0019】
突出部21は、第1開口11の径内側に延出する環状の基部23と、基部23の周方向における所定位置より突出したガイド部22とからなっている。基部23の底面23aはフランジ部24の上面24aと嵌合溝部25を介して対向するように形成されている。
【0020】
突出部21にはガイド部22が一体的に設けられている。このガイド部22は、基部23の周方向における所定位置に基部23よりも第1開口11の径方向外側に延出するように形成されている。ガイド部22は、コラムホールカバー1をパネル内縁部4へ嵌め込む作業を容易するものである
【0021】
蛇腹部13の内側空間にはバネ鋼鋼材の芯43が埋設された吸音材40が配置されている。この芯43は、吸音材40を蛇腹部13の内部空間に配置する際に、吸音材40が蛇行するのを防ぎ、組付作業性を容易にするものである。吸音材40は、蛇腹部13の根元部に周方向に上下に設けられた脱落防止突起14により安定的に保持されている。脱落防止突起14は、全周形成されていても良いし、周に複数箇所、均等に形成されていても良い。
【0022】
次に、図4に吸音材40の製造方法について説明する。吸音材40は、PET繊維から形成され、低融点PET繊維(バインダ繊維)が30体積%含まれている。あらかじめ賦形しておいた半割体41、42の間にバネ鋼鋼材の芯43を配置し、上型5を下型6に近接する方向へ移動させて、半割体のフランジ部41a、42aを加圧する。加熱した上型5及び下型6でフランジ部41a、42aを加圧すると、バインダ繊維が溶融し一体的に溶着され図5に示すように一体形成体(フランジ部付き吸音材40)が形成される。そして、上型5を下型6から遠ざかる方へ移動させ離型し、図5に示すように切断刃7により一対のフランジ部を打ち抜いて、バネ鋼鋼材の芯が中央に埋設された吸音材40が得られる。なお、本実施例では吸音材40の材質をPET繊維としたが、ウレタン発泡させたものなども用いることができる。
【0023】
以上のような本実施形態のコラムホールカバー1の取付作業は、例えば以下のようにして行うことができる。まず、作業者はコラムホールカバー1のギヤ取付部30に図示しないギヤハウジングを取り付ける。その後、車体の外側からコラムホールカバー1を取り付けたギヤハウジングを持ち上げ、パネル取付部20をダッシュパネル2の取付孔3に対して位置決めしながらパネル内縁部4に近づけ、取付孔3にガイド部22を臨ませる。次に、車室内側から手を差し込み、取付孔3に臨んでいるガイド部22を指で摘んで車室内に引き込む。この時、ガイド部22近傍の嵌合溝部25を拡げてパネル内縁部4の対応する部位に嵌め込む。続いて、ガイド部22に隣接する突出部21の基部23に指を引っかけて摘み、突出部21を第1開口11の径内側上方(例えば図2の矢印B方向)に持ち上げて嵌合溝部25を拡げ、拡がった嵌合溝部25にパネル内縁部4を嵌め込む。そして、吸音材40を蛇腹部13の内側空間に挿入し、脱落防止突起14で吸音材40を保持させて、組付けを完了する。
【0024】
以上のように、本実施形態のコラムホールカバー1によれば、本体部10の蛇腹部13の内側空間に吸音材40を配置している。この為、薄膜になる蛇腹部13からの透過音が吸音材40により低減でき、遮音性が向上できる。また、吸音材40は軟質である為、蛇腹部13の伸縮性・追従性にほとんど影響を与えない。さらに、蛇腹部13の根元部には脱落防止突起14が形成されている。この為、吸音材40が蛇腹部13の内側空間へ安定的に保持される。
また、本実施形態の吸音材40には、バネ鋼鋼材の芯43が埋設されている。この為、吸音材40を蛇腹部13の内側空間に挿入し易く、組付け作業性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、ステアリングシャフトが車体のダッシュパネルを貫通する貫通孔とステアリングシャフトとの隙間を閉塞するコラムホールカバーに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0026】
1:コラムホールカバー
2:ダッシュパネル
3:取付孔
4:パネル内縁部
5:上型
6:下型
10:本体部
11:第1開口
12:第2開口
13:蛇腹部
14:脱落防止突起
20:パネル取付部
21:突出部
22:ガイド部
23:基部
24:フランジ部
25:嵌合溝部
26:シールリップ
30:ギヤ取付部
40:吸音材
43:芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に第1開口(11)を他端に第2開口(12)を有する筒状の本体部(10)と、該本体部(10)の前記一端側に設けられ、車体のダッシュパネル(2)に貫設された取付孔を覆うように該ダッシュパネル(2)に嵌着されるパネル取付部(20)と、該本体部(10)の前記他端側に設けられ、ギヤハウジングに取り付けられるギヤ取付部(30)とからなり、
前記本体部(10)を伸縮可能とする蛇腹部(13)を有するコラムホールカバーであって、
前記蛇腹部(13)の内側空間に吸音材(40)を配置し、前記蛇腹部(13)の根元部には該吸音材(40)を保持する脱落防止突起(14)を設けたことを特徴とするコラムホールカバー。
【請求項2】
前記吸音材(40)には、該吸音材(40)より硬質の芯(41)が埋設されていることを特徴する請求項1に記載のコラムホールカバー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−1030(P2011−1030A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147615(P2009−147615)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】