説明

コラーゲンの分解を制御するための生成物およびその同定方法

本発明はII型コラーゲンなどのコラーゲンの分解を制御するための生成物および方法を提供する。II型コラーゲンペプチドフラグメントの変異体、インヒビター、および擬似物質、並びにコラーゲンの分解を修飾し、それによりコラーゲン破壊の増加の病理学的影響を低減させることができるこれらのペプチドフラグメントを生成するプロテアーゼのインヒビターもまた包含される。加えて、本発明は疾患状態が直接的または間接的に1つまたはそれ以上のコラーゲン種の分解の結果である疾患状態を処置するための方法を提供する。さらに、本発明は診断目的でのこれらのペプチドフラグメントのスクリーニングを包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は2002年9月30日出願の米国仮特許出願番号第60/414,332号に基づくものである。本出願の明細書、請求の範囲および図面を含む全内容を、その全体を参照として本明細書に組み込む。
【0002】
[発明の分野]
本発明はII型コラーゲンを含むコラーゲンの分解を制御するための生成物および方法に関する。特に本発明はII型コラーゲンの独特なペプチドフラグメントが自動制御機能(auto regulatory function)を有し、インビトロおよびインビボでコラーゲンの細胞分化および分解の双方を調整することができるという発見に関する。これらのペプチドフラグメントの変異体、インヒビターおよび擬似物質、並びにコラーゲン破壊の増加の病理学的影響を低減させるためにコラーゲンの分解を修飾できるこれらのペプチドフラグメントを生成するプロテアーゼのインヒビターもまた本発明の範囲に包含される。これらの化合物は、1つまたはそれ以上の種類のコラーゲンの分解の直接的または間接的な結果である疾患状態の処置に有用である。本発明はまた診断目的の本発明のペプチドフラグメントのスクリーニングをも包含する。
【背景技術】
【0003】
例えば関節軟骨の細胞外マトリックス内の、コラーゲンの生理学的ターンオーバーは合成および分解の間のバランスを示す。このバランスは成人の軟骨の正常な成長および発達および維持の特徴である。しかしながら、正味のコラーゲン分解は、続いて軟骨および関節機能の喪失を伴い、変形性関節炎(OA:osteoarthritis)、成人性および若年性リウマチ性関節炎(RA:rheumatoid arthritis)、外傷後OAおよび特発性OA、乾癬性関節炎、および強直性脊椎炎などの多くの形態の関節炎の特徴である。眼疾患および線維症などのその他の疾患もまたコラーゲンのターンオーバー異常の結果であり、肺疾患、例えば慢性閉塞性肺疾患、および皮膚疾患、例えば強皮症なども含まれる。コラーゲンのターンオーバーを活性化するかまたは増加させることに関係する分子は現在あまりよく理解されていない。
【0004】
[コラーゲン原線維]
およそ25個の異なるコラーゲン様ポリペプチド(α鎖)が同定されている。Kielty,C.M.Hopkinson,I.、Grant,M.E.、Collagen,the collagen family:structure,assembly and organization in the extracellular matrix:Royce,P.E.、Steinmann,B.(編):Connective Tissue and its Heritable Disorders:Molecular,Genetic and Medical Aspects、103-147頁、New York,Wiley-Liss(1993)参照。これらのポリペプチドは、少なくとも19の異なるコラーゲン型で生じ、I型からXIX型と称される。これらのトロポコラーゲン分子は構造的に最もよく定義されている。コラーゲンはフォールディングして三重らせんおよび非らせんドメインを形成する3つのポリペプチド(α鎖)を含む分子である。このらせん構造はGly−X−Y(Xはしばしばプロリンであり、Yはしばしばヒドロキシプロリンである。)の特定の三塩基反復における高含量のグリシンおよびイミノ酸により決定され、これは細胞外マトリックスで会合して超分子凝集体になる。
【0005】
I、IIおよびIII型コラーゲンの場合、トロポコラーゲン三重らせんは会合して原線維になる。これらの原線維コラーゲン分子を電子顕微鏡により見ることができる。コラーゲン原線維はトロポコラーゲンの並行4分の1回転ねじれの並びからなる。Kielty et.al前記参照。
【0006】
[II型コラーゲン]
II型コラーゲン原線維は、300nmの長さの、非らせんアミノ末端およびカルボキシル末端テロペプチドドメインを有する複数のII型トロポコラーゲン分子(その各々が3つの同一のα鎖の三重らせんを含有する)を含有する。これらのコラーゲン分子の会合はヒドロキシピリジノリンおよびピリジノリン架橋により安定化され、強化される。Mayne,R.、what is collagen?:Koopman,W.J.(編)Arthritis and Allied Conditions:Textbook of Rheumatology、第14版、187-208頁、Lippincott,Williams & Wilkins,Philadelphia(2001)参照。
【0007】
II型コラーゲンは、細胞外マトリックスの15〜25重量%および軟骨の全コラーゲン含量の90〜95%を含む関節軟膏で最も主要な形態のコラーゲンである。Poole,A.R.et.al、Clin.Orthop.391:S26-33(2001)およびMayne,R.前記参照。II型コラーゲンは関節およびその他のヒアリン軟骨にその引張特性を与える。II型軟骨はまた硝子体液の主要なコラーゲン様成分でもある。Kielty et.al、前記参照。
【0008】
軟骨の細胞外マトリックス内のII型コラーゲンの正確な構成はマトリックスの正常な機能に必須である。アミノ(N)およびカルボキシ(C)プロペプチドを担持するプロコラーゲンは軟骨細胞から細胞外マトリックスに分泌され、そこで特異的C−およびN−プロテイナーゼによりC−およびN−プロペプチドが除去されて原線維を形成する。Kielty et.al、前記およびMayne,R.、前記参照。
【0009】
変形性関節症の軟骨では、引張特性の喪失があり、これは原線維ネットワークに対する損傷を示している。Poole,A.R.、Cartilage in Health and Disease:W.J.Koopman(編)Arthritis and Allied Conditions:Textbook of Rheumatology、第14版、第1巻226-284頁、Lippencott,Williams & Wilkins,Philadelphia(2001a)およびPoole,A.R.およびHowell,D.S.Etiopathogenesis of Osteoarthritis:R.W.Moskowitz et.al(編):Osteoarthritis:Diagnosis and Medical Surgical Management、第3版、29-47頁、Saunders Company,Philadelphia(2001b)参照。
【0010】
初期の実験では、イヌのOAモデルで進行性の引張モジュールの喪失およびII型コラーゲン含量の喪失がある。Guilak,F.et.al、J.Orthop.Res.4:474-484(1994);およびSetton,L.A.et.al、J.Orthop.Res.4:451-463(1994)参照。この引張モジュールおよびII型コラーゲン含量の喪失はヒトOAにおいても指摘されている。Akisuki,S.et.al、J.Orthop.Res.4:379-392(1986);およびHollander,A.P.et.al、J.Clin.Invest.6:2859-2869(1995)参照。さらにCOL2A1遺伝子の変異の結果であるII型コラーゲンのらせん構造における異常は、らせん構造を変える原因となり、家族性OAの症状に至る未成熟軟骨変性を引き起こし得ることが公知である。Eyre,D.R.et.al、J.Rheumatol.補27:49-51(1991);Knowlton,R.G.et.al、New Engl.J.Med.322(8):526-530(1990);Ritvaniemi,P.et.al、Arthritis Rheum.38(7):999-1004(1995);およびPoole,A.R.(2001a)前記。
【0011】
コラーゲンは主に軟骨の引張特性に寄与するので、研究者はII型コラーゲンに対する進行性の損傷が変形性関節炎(OA)、リウマチ性関節炎(RA)、若年性変形性関節炎(若年性OA)、外傷後変形性関節炎(外傷後OA)、特発性変形性関節炎(特発性OA)、乾癬性関節炎、および強直性脊椎炎などの関節破壊に関与する臨床疾患状態並びにヒアリン軟骨およびII型コラーゲンを含有する組織に対する損傷を招く。Kempson,G.E.et.al、Biochim.Biophys.Acta.297:456-472(1973)参照。眼におけるII型コラーゲンの変性は眼の疾患に関与し得る。II型コラーゲン分解は天然の加齢過程の一部として生じ得るが(Poole,A.R.前記(2001a))、特定の臨床点を越えるこのような分解は前記のOAの関節変性のような臨床疾患状態を招く。Wu,W.et.al、Arthritis Rheumatism,46:2087-2094(2002)参照。
【0012】
ヒトのOAの進行において、II型コラーゲンは漸増的に変性する。Hollander,A.P.et.al、前記(1995)参照。これはコラゲナーゼによるII型コラーゲンの切断の増加に伴って生じる。Billinghurst,R.C.et.al、J.Clinl.Invest.99:1534-1545(1997)およびDahlberg,L.et.al、Arthritis Rheum.43(3):673-682(2000)参照。コラーゲン原線維がこれらの特性を決定付けることから、この損傷は紛れもなく前記の引張特性の喪失によるものである。Poole,A.R.(2001a)前記並びにPoole,A.R.およびHowell,D.S.(2001b).前記参照。コラーゲンの変性は三重らせん構造の喪失を導き、結果的に通常三重らせん構造でマスクされているα鎖配列が暴露される。Dodge,G.R.およびPoole,A.R.、J.Clin.Invest.83(2):647-661(1989)およびHollander,A.P.et.al、J.Clin.Invest.93:1722-1732(1994)参照。
【0013】
[軟骨の分解に関与するプロテイナーゼ]
細胞外マトリックスの分解に役割を果たすことが公知であるプロテイナーゼは、メタロプロテアーゼ(MMP)、システインプロテアーゼおよびセリンプロテアーゼである。Poole,A.R.前記(2001a);およびMort,J.S.およびPoole,A.R.、Mediators of Inflammation,Tissue Destruction,and Repair.D.Proteases and theire Inhibitors.J.H.Klippel,L.J.Crofford,J.H.StoneおよびC.E.Weyand(編):Primer on the Rheumatic Diseases、第12版、第88巻、72-81頁、Arthritis Foundation,Atlanta,ジョージア州(2001)参照。MMPは一般にII型コラーゲンおよび軟骨プロテオグリカン・アグリカンなどのマトリックスマクロ分子の最終的な分解的切断に中心的な役割を果たすと考えられている。特にII型コラーゲンの三重らせんの切断はMMPファミリーに属するコラゲナーゼにより媒介されることが公知である(Mort,J.S.およびPoole,A.R.(2001)前記;Billinghurst,R.C.et.al(1997)前記)。公知の4つのヒトコラゲナーゼ、間質性コラゲナーゼ(またはコラゲナーゼ1;MMP−1)、好中球コラゲナーゼ(またはコラゲナーゼ2;MMP−8)、コラゲナーゼ3(MMP−13)およびコラゲナーゼ−4(膜型1−MMPまたはMMP−14)は各々、最初に775(グリシン)および776(ロイシン)残基の間で三重らせんII型コラーゲンを切断することが示されている(Mort,J.S.およびPoole,A.R.(2001)前記)。これらのコラゲナーゼの各々はII型コラーゲンの構成性α鎖から特徴的な大型のTCA(3/4)および小型のTCB(1/4)切断生成物を生成する。WO94/14070およびBillinghurst,R.C.et.al(1997)前記参照。プロテアーゼは特異的インヒビターにより制御され(Mort,J.S.およびPoole,A.R.(2001)前記)、これはしばしば関節軟骨において下方制御される。Poole,A.R.およびAlini,M.およびHollander,A.P.Cellular Biology of Cartilage Degradation:B.Henderson,J.C.W.EdwardsおよびE.R.Pettipher(編):Mechanisms and Models in Rheumatoid Arthritis、163-204頁、London,Academic Press(1995)参照。
【0014】
その他の研究者は多くのMMPのタンパク質含量および/またはメッセンジャーRNA(mRNA)発現がOA軟骨において増加することを示している。Mitchell,P.G.et.al、J.Clin.Invest.97:761-768(1996);Reboul,P.et.al、Arthritis Rheum.44:73-84(2001);Shlopov,B.V.et.al、Arthritis Rheum.40:2065-2074(1997);Freemont,A.J.et.al、Ann.Rheum.Dis.56:542-549(1997);Shlopov,B.V.et.al、Arthritis Rheum.43:195-205(2000)参照。MMPはOAのような疾患に関与すると考えられるが、今日までコラーゲンのMMP切断の特異的生成物が細胞の直接的な活性化に関与してこれらのプロテアーゼ分子を生成して軟骨の細胞外マトリックスを消化するという説得力のある証拠はなかった。II型コラーゲンのペプチドによるマクロファージの活性化(Poole,A.R.et.al(1995)前記)および細菌性コラゲナーゼにより生成されたII型コラーゲンの消化による、軟骨細胞に媒介される分解の刺激(Jennings,L.et.al、Connect Tissue Res.42:71-86(2001))について記載される報告がある。
【0015】
[サイトカイン]
プロ炎症性サイトカイン、例えばインターロイキン−1(IL−1)および腫瘍壊死因子α(TNF−α)はMMPの生成を誘発することによりOAの軟骨に対する損傷に関与し、これは、今度は細胞外マトリックスの破壊を導くと考えられている。Poole,A.R.et.al(2001a)前記およびPoole,A.R.et.al(2001b)前記参照。MMPの誘導はオートクリン/パラクリン様式で軟骨細胞により媒介されると考えられる。Borden,P.et.al、J.Biol.Chem.271:23577-23581(1996);Kammermann,J.R.et.al、Osteoarthritis Cartilage 4:23-34(1996)MacNaul,N.K.et.al、J.Biol.Chem.265:17238-17245(1990);およびGoldring,M.B.、Arthritis Rheum.43:1916-1926(2000)参照。
【0016】
IL−1またはTNF−αまたはその組み合わせは、いくつかのプロ炎症性因子、シクロオキシゲナーゼ2(COX−2)、誘導性一酸化窒素シンターゼ(iNOS)およびホスホリパーゼA2などの発現を誘導することができ、これはRAで観察される炎症におけるこれらのサイトカインの役割のさらなる証拠を提供していることを示す。これらのサイトカインの関与のさらなる証拠はOA滑液において見出されるIL−1およびTNF−αの量の増加およびOA軟骨におけるこれらの遺伝子の上方制御により提供される。Poole,A.R.et.al(2001b)前記参照。さらに、IL−1およびTNF−αレセプターはOA軟骨において上方制御される。Goldring,M.B.前記およびPoole,A.R.et.al(2001b)前記参照。
【0017】
軟骨細胞に関与するこれらの観察は、増加した量のIL−1およびTNF−αがOAにおいてこれらの細胞により産生され、従って病理学に寄与し得ることを示唆している。
【0018】
[軟骨細胞分化]
軟骨細胞分化は軟骨内骨化において生じる骨格発達の不可欠な特徴である。Poole,A.R.et.al(2001b)前記参照。OAでは、軟骨細胞はしばしば分化し、より表層の変性組織細胞外マトリックスでさらに肥大し(Goldring,M.B.前記;Poole,A.R.et.al(2001b)前記)、この場合II型コラーゲンの損傷はより顕著である(Hollander,A.P.et.al、(1994a)前記)。これはX型コラーゲン発現およびMMP−13および血管内皮細胞成長因子の合成、アポトーシス、上方制御を特徴とする肥厚性の表現型を呈する。Poole,A.R.et.al(2001b)前記参照。
【0019】
[疾患におけるコラーゲンの分解]
〔リウマチ性関節炎〕
リウマチ性関節炎(RA)は多くの可動関節の炎症を特徴とする慢性炎症疾患であり、関節および関節周囲構造の進行性の破壊を招く。II型コラーゲン原線維に対する損傷が通常RAにおいて、特に軟骨下骨に隣接する、およびパンヌス組織に隣接する関節軟骨の深部の軟骨細胞周囲で認められる。Dodge,G.R.およびPoole,A.R.et.al(1989)前記、並びにPoole,A.R.et.alActa Orthop.Scand.Suppl.266:88-91(1995)参照。
【0020】
〔変形性関節炎(OA)〕
OAはRA同様の、もう1つの衰弱性症状である。これは2次炎症変化を伴う軟骨および骨における相互の分解および修復過程の複合を示す。これは可動関節の進行性の変性、特に関節軟骨の喪失を招き、関節機能の喪失に至る。最近の研究では、特に(しかし排他的ではない)ヒト関節軟骨のII型コラーゲンの切断および変性を含む過度の分解が変形性関節炎に関係することが実証されている。Hollander,A.P.et.al(1994a)前記;Dodge,G.R.およびPoole,A.R.et.al(1989)前記;Hollander,A.P.et.al(1995)前記;Billinghurst,R.C.et.al(1997)前記;Dahlberg,L.et.al(2000)前記;並びにWu,W.et.al、Arthritis Rheum.46:2087-2094(2002)参照。
【0021】
原発性または特発性OAは指骨間関節およびその他の小型の関節、並びに大型の関節、例えば股関節または膝関節に影響する。疾患は1つの特定の関節に関与し得るか、またはより全身的となり、多関節に関与し得る。OAは遺伝する可能性があり(例えばII型コラーゲンCOL2A1遺伝子の変異の結果等)、従って家族性OAとして公知である。OAは外傷性傷害または代謝性疾患、例えば血色素症、オクロノーシスまたはアルカプトン尿症、ウィルソン病、およびゴーシェ病に見出される軟骨マトリックスにおける異常沈着に関連する軟骨細胞に対する損傷の後に患者において進行する可能性がある。特発性OAは内分泌障害により引き起こされる軟骨代謝の乱れの結果である(Poole,A.R.et.al(2001b)前記)。軟骨マトリックスの石灰化もまたOAの特徴であり(Poole,A.R.et.al(2001b)前記)、軟骨細胞の肥厚(chondrocyte hypertrophy)と関連する。
【0022】
〔乾癬性関節炎〕
乾癬性関節炎は、皮膚およびその増殖に関与する炎症性疾患である。患者のおよそ10〜40%が、関節軟骨の破壊を伴う点でリウマチ性関節炎に非常に類似する慢性炎症侵食性関節炎を進行させる。
【0023】
〔強直性脊椎炎〕
強直性脊椎炎(AS:Ankylosing spondylitis)は、椎間板の変性、仙腸骨炎、およびおよそ4分の1の患者で四肢骨の炎症性侵食性関節疾患に関連する脊髄炎症を特徴とする。これはまたII型コラーゲンが存在する靭帯骨接合部の炎症をも特徴とする。Visconti,C.S.et.al、Arch.Biochem.Biophys.329:135-142(1996)参照。
【発明の開示】
【0024】
本発明はコラーゲンの分解が自動制御されるという驚くべき発見に基づき、本発明者らはコラーゲン種自身のさらなる分解の調整に関与するコラーゲンのペプチドフラグメントを同定した。
【0025】
従って本発明の目的は、II型コラーゲンなどのコラーゲンの分解を制御し、インビトロおよびインビボで細胞分化およびコラーゲンの分解の双方を調整するための生成物および方法を提供することである。また、本発明の別の目的は、コラーゲン破壊の増加の病理学的影響を低減するために、これらのペプチドフラグメントの変異体、インヒビター、抗体および擬似物質、並びにコラーゲンの分解を調整することができるこれらのペプチドフラグメントを生成するプロテアーゼのインヒビターを提供することである。本発明の更なる目的は、診断目的に有用な本発明のペプチドフラグメントをスクリーニングするための方法を提供することである。
【0026】
これらのおよびその他の目的によると、本発明は:
(a)PRGPPGPPGKPGDDGEAGKPGKSGERGPPGPQGARGFPGTPGLPGVKGHRGYPGLDGAKGEAGAPGVKGESGSPGQNGSPGGPM(CB12);
(b)GPRGPPGPPGKPGDDGEAGKPGKSGERGPPG(CB12−I);
(c)ERGPPGPQGARGFPGTPGLPGVK(CB12−II);
(d)GLPGVKGHRGYPGLDGAKGEAGAPG(CB12−III);
(e)GEAGAPGVKGESGSPGQNGSPGPM(CB12−IV);
(f)GERGPPGPQGARGFP*GTP*GLP*GVK(*はヒドロキシル化を示す。)(Pro6);
(g)GERGPP*GPQGARGFPFTP*GLP*GVK(*はヒドロキシル化を示す。)(Pro15);
(h)GERGPP*GPQGARGFP*GTPGLP*GVK(*はヒドロキシル化を示す。)(Pro18);および
(i)GERGPP*GPQGARGFP*GTP*GLPGVK(*はヒドロキシル化を示す。)(Pro21);
からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはそのフラグメントもしくは保存的に置換されたその変異体を含む、単離された、または精製されたペプチドであって、前記ペプチドは、II型コラーゲンの分解速度または軟骨細胞の肥厚速度を変化させるのに有効である、ペプチドを提供することである。加えて、本発明は、実質的に、重複ペプチド(overlapping peptide):GKSGERGPPGとして示されるアミノ酸配列からなるペプチドフラグメントを提供する。
【0027】
1つの態様によると、前記の精製された、または単離されたペプチドまたはペプチドフラグメントは、当該ペプチドの、1つまたはそれ以上のプロリンまたはリジン残基でのヒドロキシル化によりさらに修飾することができる。ヒドロキシル化プロリンまたはリジン残基はGly−X−ProまたはGly−X−Lys配列(Xはいずれかのアミノ酸を示す。)内に位置することができる。
【0028】
さらに別の態様によると、本発明の1〜5個のアミノ酸は保存的な置換により置換されており、これらのペプチドが、II型コラーゲンの分解速度または軟骨細胞の肥厚速度を変化させるのに有効である。
【0029】
さらに本発明は、前記のペプチドに少なくとも80%相同性を有するペプチドであって、これらのペプチドが、II型コラーゲンの分解速度または軟骨細胞の肥厚速度を変化させるのに有効である、ペプチドを含む。
【0030】
本発明の1つの態様では、ペプチドは前記のペプチドの群から選択される、ペプチド二量体または三量体の形態でもよい。ペプチド二量体は本発明のペプチドから選択される2つのペプチドからなる。ペプチドはさらにホモ二量体またはヘテロ二量体でもよい。同様に、ペプチド三量体は、各ペプチドが先に論じたようにペプチドの群から選択される3つのペプチドからなる。ペプチド三量体は、ホモ二量体またはヘテロ二量体でもよい。
【0031】
本発明のさらに別の態様では、本発明のペプチドの変異体、インヒビター、抗体、および擬似物質が提供される。医薬的に有効な担体およびこれらのペプチドの少なくとも1つのインヒビターを含む医薬用組成物もまた提供される。医薬用組成物も同様に哺乳動物、好ましくはヒトにおけるコラーゲンマトリックスのターンオーバーを低減させることができる。
【0032】
本発明のさらなる態様では、医薬的に有効量の前記の医薬用組成物の投与を含む、コラーゲン・ターンオーバーを制御する方法もまた提供される。このような医薬用組成物は、1つまたはそれ以上のコラーゲンタンパク質の分解を低減させることができる。
【0033】
本発明はまた、生物学的サンプルにおけるコラーゲンの分解を低減させることができる、コラーゲンのペプチドフラグメントのペプチド擬似物質を同定する方法であって、コラーゲンのペプチドフラグメントおよびその変異体を、天然に生成されたペプチドフラグメントの特異的レセプターに優先的に結合できるが、マトリックス分解経路をより活性化しないペプチドフラグメントの能力に関して、スクリーニングするステップを含む方法をも具体化する。特異的レセプターは抗インテグリンレセプターでもよい。マトリックス分解経路の活性化により、COLX、MMP−9、TGF−B1、IHH、MMP−13、CBFA1、SOX9、bFGF、pTHrP、カスパーゼ−3、MT1−MMP、IL−1B、およびMMP−1からなる群から選択される遺伝子の発現が誘導される。
【0034】
本発明のさらに別の態様では、生物学的サンプルは、滑液、血清および尿からなる群から選択される生物学的液体でもよい。
【0035】
本発明の別の具体的な特徴には、前記のペプチドまたはその抗原性フラグメントのエピトープに特異的に結合できる、単離された、または精製された抗体が含まれる。抗体は、これらのペプチドの活性を阻害するのに有効なモノクローナルまたはポリクローナル抗体でもよい。これらの抗体を用いて本発明のペプチドの生成のインヒビターを同定することができる。本発明の抗体を用いて、軟骨分解を止めるように設計された治療に応答し、疾患の急速なもしくは緩慢な進行の危険性を有するか、または、疾患の臨床的な兆候に先立って初期の前臨床的変化を示す疾患の危険性を有する対象を同定することができる。疾患は、変形性関節炎、リウマチ性関節炎、外傷後変形性関節炎、特発性変形性関節炎、および眼疾患からなる群から選択される。これらの抗体を、変形性関節炎、リウマチ性関節炎、外傷後変形性関節炎、特発性変形性関節炎、および眼疾患からなる群から選択される疾患を診断する方法において用いることもできる。加えて、これらを用いて、組織抽出物、血清、滑液、および尿からなる群から選択される体液におけるII型コラーゲン分解生成物の放出(release)を検出することができる。さらに、対象における前記肥厚を阻害する方法であって、医薬的に有効な量のこれらの抗体を対象に投与し、それにより軟骨細胞の肥厚を阻害するステップを含む方法においてこれらを利用することができる。
【0036】
コラーゲン破壊を阻害することができる化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)インビトロで、被験化合物をコラーゲン含有抽出物と共にインキュベートするステップ、
(b)コラーゲンの分解を増加させることが公知である化合物を添加するステップ、および
(c)公知の化合物単独と比較して、コラーゲンの分解を低下させることができる化合物を選択するステップ
を含む方法もまた提供される。
【0037】
本発明のその他の特徴および利点は以下の詳細な記載から明らかになる。しかしながら、種々の変更および修飾が本発明の範囲内であることは当業者に明らかになるので、詳細な記載および説明される実施例は本発明の好ましい態様を示し、説明のためだけに提供されるものであることを理解すべきである。
【0038】
以下の詳細な記載および図面を参照して、本発明の目的および特徴をよりよく理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
[定義]
本明細書で用いる「抗体」なる用語はCB12の1つまたはそれ以上のペプチドフラグメントと反応する抗体、および本発明の1つまたはそれ以上のペプチドフラグメントを生じるプロテイナーゼに対する抗体を含む。「抗体」なる用語がまた、その部分、例えばFab、Fvフラグメント、並びに本発明の1つまたはそれ以上のペプチドフラグメントの重複領域(overlapping region)および組換えにより生成されたフラグメントと反応する抗体および抗体フラグメントの融合生成物(多価および/または多特異的を含む)を含むことをも意図される。「抗体」なる用語がまた本発明の1つまたはそれ以上のペプチドフラグメントに特異的なレセプターに対する抗体を含むことをも意図される。従来の技術を用いて抗体をフラグメント化し、前記の様式と同一の様式で利用するためにフラグメントをスクリーニングすることができる。診断目的でのスクリーニングのため、または本発明のさらなるペプチドフラグメント、擬似物質、変異体およびインヒビターを同定するためのいずれかで抗体を用いることができる。抗体を用いて、インビボで本発明のペプチドフラグメントの産生に寄与するプロテアーゼを同定することもできる。
【0040】
「コラーゲン」または「コラーゲン種」なる用語はI型からXIX型と称される、少なくとも19の異なるコラーゲン型で生じる25の異なるコラーゲンα鎖のいずれかを意味する(Mayne,R.、前記(2001);Kiety et.al、(1993)参照、前記で引用)。「コラーゲンペプチド」なる用語は本発明で前記の活性ペプチドフラグメントを組み込むコラーゲンα鎖のいずれかのフラグメントを意味する。
【0041】
本明細書で用いる「分解経路」または「事象のカスケード」または「分解カスケード」なる用語は、本発明のペプチドフラグメントの産生の前の事象(特異的または非特異的プロテアーゼにより当該ペプチドフラグメントの配列を組み込むα鎖フラグメントが産生されることを含む。)と、本発明のペプチドフラグメントの放出により誘発される後続の事象との双方を含むことを意味し、これは当業者には理解される。さらに具体的には、本発明のペプチドフラグメントの放出に続く事象は、非限定例としては、その他のコラゲナーゼおよびメタロプロテイナーゼによる、コラーゲンおよび関連するプロテオグリカンのさらなる切断を含むことができる。
【0042】
加えて、本発明のペプチドフラグメントの放出により誘発される事象のカスケードは、例えばIL−1、TNF−α、IGF−1、TGF−β等のサイトカインを上方制御または下方制御するためのこれらのサイトカインの活性化や、プロ炎症性サイトカインおよび分解性プロテアーゼならびにそれらのインヒビターをコードする遺伝子の発現に影響するシグナル発生経路等のその他のカスケード事象の活性化または阻害を含むことができる。
【0043】
本明細書で用いる「投与」なる用語は、治療目的(例えばコラーゲン分解関連障害の処置)を達成するための物質(例えば本明細書で開示するペプチドフラグメント、およびペプチドフラグメントの変異体、インヒビター、および擬似物質)の投与を意味する。
【0044】
「機能的に等価な変異体」または「変異体」なる用語は本明細書で記載するペプチドに対する軽微な修飾を意味し、1つまたはそれ以上のアミノ酸の置換、挿入および/または欠失で1つまたはそれ以上のアミノ酸を交換することを含むことができる。アミノ酸置換は特性(nature)が保存された置換でもよく、または非保存でもよい。保存的なアミノ酸置換は本発明のタンパク質の1つまたはそれ以上のアミノ酸の、類似の荷電、大きさおよび/または疎水性特性のアミノ酸との交換を含むことができる。非保存的な置換は荷電、大きさおよび/または疎水性特性が類似しない1つまたはそれ以上のアミノ酸との交換を含む。変異体はまたペプチドフラグメントへの翻訳後修飾をも含み、酵素的および非酵素的修飾を含み、グリコシル化、糖化、ヒドロキシル化等を含む。「変異体」なる用語はまた、本発明の擬似物質およびインヒビターに対する前記のような軽微な変異体をも包含する。このような修飾物を作製することにより、ペプチドはレセプターに結合できるが、それを活性化することはできず、それにより天然由来のペプチドが軟骨分解を刺激することができない。また別に、このペプチドの変異体は軟骨分解を誘起するためのさらなる能力を有し得る。本明細書で用いる「ヒドロキシル化」なる用語はペプチドフラグメント内の1つまたはそれ以上のアミノ酸の修飾を意味する。特に、ヒドロキシル化は1つまたはそれ以上の位置でのプロリン残基のヒドロキシル化を意味することができ、特にアミノ酸配列Gly−X−Y内のプロリンのヒドロキシル化を含むことができる(Xはいずれかのアミノ酸であり、Yはプロリンである。)。
【0045】
本明細書で用いる「インヒビター」または「インヒビター分子」なる用語は、本発明のペプチドフラグメントまたはフラグメントによる特異的レセプターの活性化を変化させるかまたは妨げる能力を有する物質または物質の群を意味する。「インヒビター」とはまた、ペプチドフラグメントと(複数の)特異的レセプターとの間の相互作用を阻害または最小化するための、特定のレセプターに対するペプチドフラグメントまたはフラグメントの結合を変化させるおよび/または妨げる能力を有する物質または物質の群が意図される。「インヒビター」または「インヒビター分子」なる用語はまた、野生型ペプチドフラグメントと、本明細書に記載する競合阻害アッセイにより決定されるようなその特異的レセプターとの相互作用を競合的に阻害するか、またはペプチドフラグメントのレセプターに対する結合を可能にするが、ペプチドフラグメントが分解経路を活性化する能力を妨げるまたは最小化するための能力をも意味する。「インヒビター」または「インヒビター分子」なる用語はまた、活性ペプチドフラグメントの生成またはレベルを阻害するために1つまたはそれ以上のプロテアーゼと相互作用することができる物質または物質の群をも意味する。
【0046】
本明細書で用いる「リガンド」なる用語は、軟骨細胞の表面、または分解経路の活性化に関与するその他の細胞の表面の1つまたはそれ以上のレセプターに結合し、コラーゲンの分解を導く事象のカスケードを活性化することができる、本発明の1つもしくはそれ以上のペプチドフラグメントまたは本発明の1つまたはそれ以上のペプチドフラグメントのエピトープを意味する。
【0047】
「擬似物質(mimetic)」なる用語は、ペプチドが誘導されるタンパク質の分解の自動制御を活性化、調整、阻害または抑制するための、本発明の1つまたはそれ以上のペプチドの組み合わせを擬似する物質を意味する。擬似物質はまた軟骨マトリックスの分解を誘起するペプチドの活性を擬似する物質を表すこともできる。
【0048】
本明細書で用いる「分解の調整」なる用語は、コラーゲンの分解速度を増加もしくは低減させる、または1つもしくはそれ以上のコラーゲン分解生成物の蓄積を増加もしくは低減させる能力を意味し、コラーゲンの分解速度または分解のパターンの調整を含むことができる。
【0049】
「ペプチド」または「ペプチドフラグメント」なる用語はペプチド結合により、または修飾されたペプチド結合により互いに結合したアミノ酸を含む、いずれかの短鎖アミノ酸(ペプチドおよびオリゴペプチド)、すなわち分解経路または事象のカスケードを活性化する能力を有するペプチドを意味する。本発明によるペプチドは一般に5〜100アミノ酸長、好ましくは10〜90アミノ酸長、さらに好ましくは20〜80アミノ酸長である。本発明のペプチドフラグメントはコラーゲン分子の分解を導く事象のカスケードを調整する。ペプチドフラグメントのアミノ酸配列およびこれらのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド分子もまた本発明の範囲内と企図される。
【0050】
本明細書で用いる「ペプチドフラグメント前駆体」とは、本発明のペプチドを含有するα鎖またはそのフラグメントを意味し、コラーゲン分子のα鎖全長、または、得られたペプチドフラグメントもしくはそれを含むフラグメントを導く1つもしくはそれ以上の切断事象により部分的に分解されたコラーゲン分子を含むことができる。ペプチドはまた、当該α鎖から放出されたのではない変性分子の配列を表すこともできる。
【0051】
ペプチドフラグメントの「特異的レセプター」なる用語は、(健常および/または疾患において)天然に存在するペプチドフラグメントが高親和性を呈し、前記野生型ペプチドフラグメントと前記特異的レセプターとの相互作用の条件下で、天然に生成されるペプチドフラグメントが誘導される全長タンパク質の調整または分解に至る事象のカスケードの活性化を導くレセプターを意味する。特異的レセプターは、非限定例としては、II型コラーゲンレセプター、例えばインテグリンおよびインテグリンレセプターサブタイプを含むことができる。
【0052】
本明細書で用いる「治療薬」または「作用物質」なる用語は、コラーゲン分解の直接的または間接的な結果である1つまたはそれ以上の疾患状態の処置を可能にする様式で、ヒトなどの哺乳動物においてインビボでコラーゲンの分解を調整するために用いることができる化合物を意味する。本発明による治療薬はまた本明細書で開示するペプチド変異体、ペプチドフラグメント、擬似物質またはインヒビターもしくは抗体をも意味する。本発明は、1)疾患の特徴がコラーゲンの分解である疾患の発症を防ぐ、2)前記疾患に罹患した関節において症状、例えば痛み、腫脹、脆弱性を低減、遅延または排除し、機能的能力の喪失を防ぐ、3)軟骨の分解を低減、遅延または排除する「治療薬」を提供する。必ずしも痛みおよび炎症に影響しなくても軟骨変性を低減できるものであることに留意すべきである。
【0053】
本明細書で用いる「天然に生成されたペプチドフラグメント」なる用語は、コラーゲン種の1つまたはそれ以上の分解生成物を意味し、これは哺乳動物、特にヒトに天然に存在し、これは正常な個体内で生じるようにコラーゲン種の分解の結果として生じ、前記天然生成ペプチドフラグメントは、十分量で生成される場合、天然生成フラグメントが誘導されるコラーゲン種の分解の速度または量の測定可能な変数になる。より確実にするために、「天然に生成されたペプチドフラグメント」なる用語は、同一の配列を有し、コラーゲン全長の分解において有意な増加または減少を生み出す合成ペプチドまたはCNBr切断ペプチドフラグメントを含むことをも意味する。このような「天然に生成されたペプチドフラグメント」はインビトロまたはインビボでコラーゲン全長の分解を増加または低減させる能力により同定される。
【0054】
[本発明のペプチドフラグメント]
本発明のペプチドフラグメントは、コラーゲン種の構造に基づくペプチドフラグメントを含むことができ、前記フラグメントはインビトロおよびインビボの双方でコラーゲン種の分解を調整することができる。本発明のペプチドフラグメントは、前記コラーゲン種の分解を活性化できるか、または前記コラーゲン種の分解を阻害できるかのいずれかである。阻害するものは天然に生じ得るか、または前記の類のような研究法を用いて人工的に生成される。
【0055】
ペプチドフラグメントを、アミノ酸合成器を用いて合成することができるか、または当業者に公知の技術を用いて精製することができる。本発明による有用なペプチドは、培地中で、前記ペプチドを軟骨細胞培養物と、または軟骨の外植片培養物を前記ペプチドとインキュベートし、前記サンプル中のコラーゲンの分解量の変化に関して前記サンプルをモニターすることにより同定される。II型コラーゲンの場合、本明細書およびPCT/CA93/00522(これは参照することにより本明細書の一部とする)で開示されるように、抗体COL2−3/4Cに見られるコラゲナーゼ切断ネオエピトープに特異的な抗体を用いて分解生成物を同定することができる。同様に、Hollander,A.P.et.al、J.Cell Biochem.28:15-21(1994b)およびBillinghurst,R.C.et.al、(1997)前記に記載される研究法を用いてその他のコラーゲン種の分解の増加をモニターする類似の方法を利用できることは当業者には理解される。例えば、ペレット培養物におけるウシおよびヒト関節軟骨、または成熟関節軟骨の外植片培養物から単離された軟骨細胞を用い、コラーゲン種の分解生成物をモニターすることができる(例えば培養培地へのヒドロキシプロリン放出)。ペプチドフラグメントを、例えば成長板(growth plate)の成長点(physes)または骨折仮骨(fracture callous)で形成される軟骨内骨化(骨形成)に関する培養物等の、軟骨細胞に由来する培養物と共にインキュベートすることもできる。加えて、本発明にかかる有用なペプチドフラグメントを、その他のコラーゲンおよびマトリックス、例えば皮膚、肺、靭帯および腱と共にインキュベートし、これらのサンプルに存在するコラーゲン種の分解生成物に関してモニターすることができる。
【0056】
ペプチドフラグメントの量の変化、または分解生成物の蓄積の速度の変化を同定するために設計されたアッセイにより、分解カスケードを活性化し(特に分解の速度または量を増加または低減させ)、天然に存在するまたは罹患変異体であるペプチドフラグメントを同定することができる。分解カスケードに関与することが公知である遺伝子生成物の合成を刺激または下方制御するこれらのペプチドフラグメントを同定することにより、分解の速度または量を低減させることができるペプチドフラグメントを同定することができる。例えば、II型コラーゲンの分解カスケードに関して、関節炎では、本明細書でさらに記載するように、IL−1、TNF−α、MMP−1およびMMP−13遺伝子が上方制御されることが示されている。従ってこれらの実例の遺伝子および/またはタンパク質発現を低減させることができるいずれかのペプチドフラグメントは軟骨分解を制御するのに有用である。
【0057】
ペプチドがコラーゲンの分解を調整する能力を変化させるために(分解を増強させるか、または低減させるかのいずれか)、例えばホモ二量体またはヘテロ二量体、ホモ三量体、ヘテロ三量体等を形成するためにペプチドを結合させて、ペプチドフラグメントを修飾することもできる。同様に、酵素的または非酵素的修飾の双方を含むその他の修飾、例えばヒドロキシル化、グリコシル化、糖化およびその他の類似の修飾などは当業者に公知であり、これを利用してペプチドの活性を調整できる。
【0058】
特に種々の残基におけるヒドロキシル化はペプチドの活性を有意に変化させることができ、これは、個体の年齢に応じて、または様々な疾患の程度(合成が増加する、または変化した翻訳後修飾を生じ得る)を有する疾患に応じて変動し得る。ヒドロキシル化はプロリンおよびリジン残基などの種々のアミノ酸で生じ得る。特に、ヒドロキシル化はプロリンおよびリジン残基、特にα鎖のらせんドメインのGly−X−Y三塩基反復内のプロリンおよびリジン残基で生じる(Xはいずれかのアミノ酸であり、Yはプロリンまたはリジンである)。これはII型コラーゲンのペプチドフラグメントの分解を調整する能力における重要な因子であることが実証されている。
【0059】
[変異体]
本発明のペプチドフラグメントの変異体には、挿入、欠失、保存的なアミノ酸置換および非保存的なアミノ酸置換などがあり、変異体は野生型ペプチドフラグメントの分解を調整することができる。1つまたはそれ以上のアミノ酸の挿入または欠失を本発明のペプチドフラグメントに導入することができる。アミノ酸挿入は1〜100、特に1〜50、特に1〜10アミノ酸長にわたる単一のアミノ酸残基または連続したアミノ酸の挿入からなることができる。例えば、アミノ酸挿入を用いてペプチドフラグメントの2次または3次構造を維持し、従って標的レセプターに結合するが、ペプチドフラグメントが分解カスケードを活性化するのを妨げるペプチドフラグメントの能力を維持することができる。これらのペプチド変異体で逆を生じさせることができ、例えばこれをインビボで用いてコラーゲンタンパク質全長の分解を増加させる野生型ペプチドフラグメントの活性を阻害することができる。
【0060】
欠失は1〜50、好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜5アミノ酸長にわたり、最も好ましくは5アミノ酸未満の単一のアミノ酸の欠失または連続したアミノ酸の欠失からなることができる。例えばアミノ酸の欠失を用いてペプチドフラグメントの2次または3次構造を維持し、従って前記のようにペプチドフラグメントの特異的レセプターに結合する能力を維持することができる。
【0061】
本発明のペプチドフラグメントのペプチドの変異体は化学合成により最も都合よく調製される。本発明はまた本発明のペプチドフラグメントのアイソフォームをも企図する。アイソフォームは本発明のタンパク質として同一の数および種類のアミノ酸を含有するが、アイソフォームは異なる分子構造を有する。本発明はアイソフォームが環状ペプチドを含むことを企図する。アイソフォームは野生型ペプチドフラグメントと比較して、特異的レセプターに結合するか、および/または特異的レセプターに優先的もしくは競合的に結合する能力を有し得るが、分解経路を活性化する能力がより低いことが実証されている。加えて、アイソフォームは天然に生成されたペプチドフラグメントと同様に作用するが、系から当該ペプチドフラグメントを除去する能力を増大または低減させることが可能である独特な代謝経路を有している。
【0062】
本発明のペプチド変異体はまた、本明細書に記載するように、本発明のアミノ酸配列の相同体および/またはそのトランケーションをも含む。このような相同体には、本発明のペプチドフラグメントと、少なくとも70%、好ましくは75%、さらに好ましくは80%、最も好ましくは90%の同一性を有するアミノ酸配列を有するペプチドが含まれる。
【0063】
[ペプチド擬似物質]
本発明のペプチド擬似物質は理想的には天然に生成されたペプチドフラグメントの特異的レセプターに優先的に結合することができるが、分解経路または事象のカスケードを活性化する能力がより低いことが実証されるべきである。これは、ペプチド擬似物質が理想的には野生型ペプチドフラグメントと比較して類似したまたはより強い親和性を伴って特異的レセプターに結合すべきであるが、前記特異的レセプターの活性化を妨げるか、または分解経路を活性化する能力がより低いことを示すこと意味している。ペプチド擬似物質はまた、天然に発生する破壊生成物が結合しない分子に有意な程度には全く結合すべきではない。もちろん、注意深くスクリーニングすることにより、選択した適用(例えば天然に存在する分解生成物が結合するレセプター標的のサブセットに対する結合)に適合するように野生型破壊生成物の選択された特性を有するように本発明によるペプチド擬似物質を選択することができる。
【0064】
可能性のある薬物リード化合物を提供するのに有用であるために、本発明のペプチド擬似物質は少なくとも1mM、好ましくは1μM、さらに好ましくは少なくとも50nM、最も好ましくは少なくとも1nMの親和性で標的分子に結合すべきである。ペプチド擬似物質はまた20ヌクレオチドにコードされたアミノ酸以外のアミノ酸をも含有することができ、この場合前記アミノ酸は天然の過程、例えば翻訳後プロセシングか、または当分野で公知の化学修飾もしくは化学合成技術のいずれかにより修飾される。このようなアミノ酸を含めることにより、一般にインビボで急速に分解および/または排除される天然に存在するペプチドの医薬的使用に固有の問題を解決することができる。
【0065】
本発明のペプチドに通常存在し得る公知の修飾の実例は、例えばグルタミン酸残基のグリコシル化、糖化、ヒドロキシル化、脂質付着、硫酸化、ガンマ・カルボキシル化およびADPリボシル化である。その他の可能性のある修飾には、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合性架橋の形成、システインの形成、ピログルタマートの形成、ホルミル化、ガンマ・カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質溶解性プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アミノ酸のタンパク質へのトランスファーRNA媒介付加、例えばアルギニル化、およびユビキチン化などがある。
【0066】
修飾は、ペプチドバックボーン、アミノ酸側鎖およびアミノまたはカルボキシル末端などのペプチドの至るところで起こり得る。実際に、共有結合性修飾によるペプチドのアミノもしくはカルボキシル基または双方の閉塞(blockage)は天然に存在する合成ペプチドにおいて一般的であり、このような修飾は本発明のペプチドにおいても存在し得る。
【0067】
本発明による特に好ましいペプチド擬似物質はコラーゲン、特にII型コラーゲンのペプチドフラグメントの擬似物質であり、この場合前記ペプチド擬似物質は1つまたはそれ以上の種のコラーゲン分子の分解を調整することができる。
【0068】
本発明の1つの実施形態では、II型コラーゲン、特にCB12のペプチドフラグメントの擬似物質、特にCB12−I、CB12−II、CB12−III、CB12−IV、SP1、SP2、SP3、Pro6、Pro15、Pro18およびPro21からなる群から選択されるペプチドフラグメントの擬似物質である。特にこの場合、このような擬似物質は、当該群から選択されるペプチドフラグメントの擬似物質であって、コラーゲンの分解により直接的または間接的のいずれかで疾患が引き起こされ、変形性関節炎(OA)、リウマチ性関節炎(RA)、若年性関節炎(JA)、外傷後変形性関節炎(外傷後OA)、外傷後および特発性変形性関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、コラーゲンに関与する眼疾患、肺および皮膚疾患などを含む、前記疾患状態で観察されるII型コラーゲンの分解の増加を妨げるものである。
【0069】
結果的に本発明のペプチドフラグメントの活性と相互作用することができる薬物は、ペプチドフラグメントが誘導される全長タンパク質の分解を低減させるのを助け、このようにして疾患状態、例えばRA、若年性A、外傷後OAおよび特発性OA、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、眼疾患等を、医薬品による調節を受け易くする。
【0070】
[インヒビター]
本発明によるインヒビター分子は、ペプチドフラグメント前駆体とのプロテアーゼ相互作用を遮断または阻害することによりペプチドフラグメントの生成を阻害することができる分子であるか、またはペプチドフラグメントにより開始された分解カスケードの活性化を妨げることができ、それによりフラグメントの生成を妨げる分子である。特に、インヒビターは本発明のペプチドフラグメントの特異的レセプター部位に結合または優先的に結合することにより、例えば(複数の)レセプターの表面部位に特異的に結合することにより分解カスケードの活性化を妨げることができる。インヒビター分子はペプチドフラグメントまたは(複数の)フラグメントの認識部位に結合することにより作用するが、コラーゲン分子の分解の活性化を導く分解カスケードを活性化しない。
【0071】
インヒビター分子はまた、ペプチドフラグメントまたは(複数の)フラグメントにより認識される部位とは異なるレセプターの部位にも結合することができ、レセプターがもはやそのリガンドにより認識されることができないように、レセプター分子に立体構造変化を引き起こすことができる。
【0072】
本発明によるインヒビター分子はまた、分解カスケードを活性化する本発明のペプチドフラグメントの放出を妨げる分子、例えばプロテアーゼインヒビターを含む。当業者に理解されているように、一例としては、このようなインヒビターは、ペプチドフラグメントを放出できると同定された1つまたはそれ以上のプロテアーゼと共にペプチドフラグメント前駆体をインキュベートするステップと、インヒビター候補を加えるステップと、前記ペプチドフラグメントの放出の阻害をモニターするステップとにより同定することができる。
【0073】
同様に、当業者は、細胞付着アッセイまたはELISAアッセイの使用などの当分野で公知の種々の技術の1つにより、天然に存在するペプチドフラグメントとその特異的レセプターとの間の相互作用を変化させる能力に関して可能性のあるインヒビターをモニターし、天然に存在するペプチドフラグメントと特異的レセプターとの間の結合の低下に関してモニターすることができる。
【0074】
加えて、ペプチドフラグメントの特異的レセプターに対する結合を可能にするが、分解カスケードの活性を妨げる分子を同定することにより可能性のあるインヒビターを決定することもできる。
【0075】
[抗体]
本明細書で提供する開示で与えられた、本明細書に記載するペプチドフラグメントに対する単離された、または精製された抗体を当業者により容易に調製することができ、検定目的、治療目的、または診断目的で用いることができる。ペプチドフラグメントと相互作用することが見出された特異的レセプターに対する抗体もまた本発明に包含され、治療目的で使用することができる。
【0076】
本発明のペプチドフラグメントまたはその抗原性部分を用いてペプチドフラグメントに特異的な抗体を調製することができる。ペプチドフラグメントの明確なエピトープに結合するか、または重複領域で、もしくは2次構造エレメント、例えばペプチドフラグメントの二量体もしくは三量体に対するペプチドフラグメントの組み合わせにより作製されたエピトープを認識することができる抗体を調製することができる。これらの抗体を用いてペプチドの活性を阻害することができ、前記ペプチドフラグメントの生成のインヒビターを同定するために設計されたアッセイに有用であるか、または診断目的で用いて、種々の組織サンプルで疾患状態および疾患の進行をモニターすることもできる。
【0077】
従来の方法を用いて抗体を調製することができる。例えば本発明のペプチドを用いることにより、標準的な方法を用いてポリクローナル抗血清またはモノクローナル抗体を作製することができる。本発明はまた当業者に公知のキメラ抗体分子をも企図する。
【0078】
[診断薬としての抗体]
当業者に公知であるように、種々の酵素、蛍光材料、発光材料および放射活性材料などの検出可能なマーカーで抗体を標識することができる。
【0079】
本発明の天然に存在するペプチドフラグメントに対して反応する抗体(例えば酵素抱合体または標識された誘導体)を用いて、種々のサンプル、例えば組織または体液サンプル中のこれらのペプチドフラグメントおよびペプチド配列を含む変性コラーゲンを検出することができる。例えば、これらを、本発明のタンパク質の抗原決定基と抗体との間の結合相互作用に依存するいずれかの公知のイムノアッセイおよび免疫学的方法に用いることができる。このようなアッセイの実例はラジオイムノアッセイ、ウェスタンイムノブロッティング、酵素イムノアッセイ(例えばELISA)、免疫蛍光、免疫沈澱、ラテックス凝集、および免疫組織化学試験である。このように抗体を用いて、サンプル中の本発明の天然に存在するペプチドフラグメントを同定または定量することができ、従って、疾患状態の診断の指標として用いることができる。
【0080】
ペプチドフラグメントのエピトープに特異的な抗体とサンプルを接触させるステップであって、抗体がサンプル中のペプチドフラグメントと結合した後、検出され得るステップと、サンプル中のペプチドフラグメントに結合した抗体または未反応の抗体を検査するステップとによりペプチドフラグメントの分解の存在または不在に関してサンプルを試験することができる。
【0081】
イムノアッセイの方法では、所定の量のサンプルまたは濃縮サンプルを抗体または標識抗体と混合する。当該方法で用いる抗体の量は用いる標識物質に依存する。次いで当業者に公知の方法により抗体または標識抗体に結合したペプチドの量を検出することができる。サンプルまたは抗体を不溶化する、例えば公知の方法を用いてサンプルまたは抗体を適当なキャリヤと反応させることができる。適当なキャリヤの実例はセファロースまたはアガロースビーズである。不溶化したサンプルまたは抗体を用いる場合、抗体に結合したペプチドまたは未反応の抗体を洗浄により単離する。例えばサンプルをニトロセルロース膜にブロッティングする場合、バッファー、例えばウシ血清アルブミン(BSA)含有リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄することにより本発明のペプチドに結合した抗体を未反応抗体から分離する。
【0082】
標識抗体を用いる場合、1つまたはそれ以上の本発明の天然に存在するペプチドフラグメントの存在をサンプル中で結合した標識抗体の量を測定することにより決定することができる。標識材料を測定する適当な方法は標識物質に依存する。
【0083】
本発明の方法において未標識の抗体を用いる場合、抗体と特異的に相互作用して凝集または沈殿を引き起こす物質を用いて1つまたはそれ以上のこれらのペプチドに結合した抗体の量を測定することにより、本発明の1つまたはそれ以上のペプチドフラグメントの存在を決定することができる。特に本発明のペプチドに特異的な抗体に対する標識抗体を反応混合物に添加することができる。本明細書に記載した当分野で公知の従来の手順により本発明のペプチドに特異的な抗体に対する抗体を調製および標識することができる。本発明のペプチドに特異的な抗体に対する抗体は種特異的抗免疫グロブリン抗体またはモノクローナル抗体でよく、例えばヤギ抗ウサギ抗体を用いて本発明のペプチドに特異的なウサギ抗体を検出することができる。
【0084】
[さらなる治療用分子を同定するためのアッセイ]
、 本発明はさらなる天然に存在するペプチドフラグメント、変異体、擬似物質およびインヒビターを同定する手段を包含し、当業者に理解されるように、このような分子を検出および同定するのに適した多くのアッセイの使用を包含する。これらは、ここで簡単に記載し、以下の方法および実施例にてさらに詳細に記載する。
【0085】
コラーゲン分解に関連する障害を処置するための本発明のさらに有用なペプチドフラグメント、変異体、擬似物質および/またはインヒビターを同定するためにアッセイを設計することができ、これは:(a)1つまたはそれ以上の被験化合物(ペプチドフラグメント変異体、擬似物質またはインヒビターを含む)を選択するステップと、(b)軟骨細胞もしくは軟骨またはその抽出物の培養物を、被験化合物および公知の化合物と共にインキュベートするステップであって、当該公知の化合物が、コラーゲンの分解に及ぼす測定可能な効果を有するステップと、(c)公知の化合物単独とのインキュベーションと比較してコラーゲンの分解を変化させえる被験化合物を選択するステップとを含む。当業者には、前記の公知の化合物とのインキュベーションと比較して、コラーゲンの分解の低減を実証するこれらのペプチド、変異体、擬似物質またはインヒビターが、本発明に従って、障害の誘因因子としてコラーゲンの分解を有する前記障害を処置するのに有用であることは理解される。
【0086】
同様に、蓄積したペプチドフラグメントを同定および定量するために設計されたアッセイにより、コラーゲンの分解を増加させることが示されているペプチドフラグメントの増加を妨げるのに有用なプロテアーゼのインヒビターを同定することができる。例えば本明細書に記載するようなペプチドフラグメントに特異的な抗体を利用して、可能性のあるプロテアーゼインヒビターを伴って、および伴わずにインキュベートしたときに、ペプチドフラグメント前駆体から放出されたペプチドフラグメントのレベルを測定することができる。
【0087】
加えて、本発明の範囲内に包含されるアッセイは野生型ペプチドフラグメントがその特異的レセプターに結合するのを可能にするが、分解カスケードの活性化を妨げるこれらのペプチドフラグメント、変異体、擬似物質および/またはインヒビターを同定するためのアッセイを含む。
【0088】
当業者には理解されるように、結合に関して試験するためのアッセイ;例えばELISAまたはその他の類似の結合アッセイ、および分解カスケードを活性化する能力を決定するためのアッセイの組み合わせにより候補物質を同定することができる。後者には、非限定な例として、分解の増加の結果として活性化されたタンパク質の遺伝子発現、例えばMMP1、MMP3、IL−1、TNF−αおよびその他の類似する疾患関連遺伝子の増加を測定するアッセイなどが含まれる。同様に、分解の活性化の測定は、リン酸化、およびシグナルを発生するタンパク質の活性化のレベル、または細胞内で生じることが公知であるその他の類似の事象または分解カスケードの活性化を測定するためのアッセイを含むことができる。
【0089】
本明細書ではコラーゲン分解に関連する障害を処置するための、本発明によるペプチドフラグメント、変異体、擬似物質またはインヒビターの同定において使用するための競合阻害アッセイもまた包含される。このようなアッセイは、(a)標的レセプターをレセプターに特異的な抗体と共にプレインキュベートするステップと、(b)レセプター・抗体複合体を被験化合物と共にインキュベートするステップと、(c)非特異的に結合した被験化合物を除去するステップと、(d)抗体がレセプターに結合するのと比較して、レセプターに優先的に結合することができる被験化合物を同定するステップとにより、推定されるペプチドフラグメント、変異体、擬似物質またはインヒビター(「被験化合物」)を、野生型ペプチドフラグメントのその標的レセプターとの結合を妨げる能力に関してスクリーニングするステップを含むことができる。当業者には理解されるように、その他の類似する競合阻害アッセイを利用することもできる。
【0090】
[治療用組成物および投与]
本発明にかかる有用なペプチド、変異体、擬似物質、インヒビターおよび抗体を本明細書に記載する方法のための対象への投与、例えば隔週に皮下投与するのに適した医薬用組成物に組み込むことができる。典型的には、医薬用組成物は1つまたはそれ以上の前記の化合物および医薬上許容される担体を含む。本明細書で用いる「医薬上許容される担体」は、生理学的に適合し、本明細書に記載する方法のための対象への投与に適したいずれかのおよび全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤等を含む。医薬上許容される担体の実例には、1つまたはそれ以上の水、生理食塩水、リン酸塩緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等、およびその組み合わせなどがある。多くの場合、組成物中に等張化剤、例えば糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを含むのが好ましい。医薬上許容される担体はさらに、ペプチド、変異体、擬似物質、インヒビター等の貯蔵寿命または有効性を増強させる、少量の補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤、保存剤またはバッファーを含むことができる。
【0091】
本発明の組成物を種々の形態にすることができる。これには、例えば液体、半固体、および固体投与形態、例えば液体溶液(例えば注射用および注入用溶液)、分散液または懸濁液、錠剤、丸剤、粉末、リポソームおよび坐剤などがある。好ましい形態は意図される投与様式および治療適用に依存する。典型的な好ましい組成物は注射用および注入用溶液の形態、例えばヒトの受動免疫に用いられるものに類似の組成物である。投与の好ましい様式は非経口(例えば静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。好ましい実施形態では、ペプチド、変異体、擬似物質またはインヒビターを静脈内注入または注射により投与する。別の好ましい実施形態では、ペプチド、変異体、擬似物質またはインヒビターを筋肉内注射により投与する。特に好ましい実施形態では、ペプチド、変異体、擬似物質またはインヒビターを皮下注射により投与する(例えば隔週に皮下注射)。
【0092】
治療用組成物は典型的には製造および貯蔵の条件下で、無菌で、安定でなければならない。組成物を溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソームまたは高薬物濃度に適したその他の秩序構造として処方することができる。必要量の活性化合物(すなわちペプチド、変異体、擬似物質またはインヒビター)を適当な溶媒中、前記で列挙した成分の1つまたは組み合わせを伴って組み込むことにより無菌の注射用溶液を調製することができ、必要に応じ、続いて滅菌濾過する。一般に活性化合物を基本的な分散媒体および前記で列挙したものから必要とされるその他の成分を含有する無菌ベヒクルに組み込むことにより分散液を調製する。無菌注射用溶液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分にさらに望ましい成分を加えたものの粉末を、予め滅菌濾過したその溶液から生じる真空乾燥および凍結・乾燥である。コーティング、例えばレシチンを使用することにより、分散の場合に必要とされる粒子サイズを維持することにより、界面活性剤を使用することにより、溶液の適当な流動性を維持することができる。組成物に吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを含めることにより注射用組成物の吸収遅延をもたらすことができる。
【0093】
1つまたはそれ以上のペプチドフラグメント、変異体、擬似物質、インヒビターまたは抗体を当分野で公知の種々の方法により投与することができるが、多くの治療適用では、投与の好ましい経路/様式は皮下注射である。当業者には理解されるように、投与の経路および/または様式は望まれる結果に依存して変更される。特定の実施形態では、活性化合物を、化合物を急速な放出に対して保護する担体と共に調製することができ、例えば移植片、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化分配系などの放出制御処方である。生分解性、生体適合性重合体、例えば酢酸エチレンビニル、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルソエステル、およびポリ酢酸を用いることができる。このような処方の調製のための多くの方法が特許化されているか、または一般に当業者に公知である。例えばSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson編、Marcel Dekker,Inc.、New York(1978)参照。
【0094】
特定の態様では、ペプチド、変異体、擬似物質、インヒビターまたは抗体を、例えば不活性希釈剤または吸収できる食用担体と共に経口投与することができる。化合物(および望む場合、その他の成分)を硬質または軟質ゼラチンカプセルに封入し、錠剤に圧縮し、または直接対象の食事に混ぜ込むこともできる。経口治療投与用に、化合物を賦形剤と共に組み込み、摂取可能な錠剤、口腔錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェハー等の形態で用いることができる。非経口投与以外で本発明の化合物を投与するために、その不活性化を妨げる材料で化合物をコートするか、またはそれと化合物を同時投与することが必要な場合もあり得る。
【0095】
補助的な活性化合物を組成物に組み込むこともできる。特定の実施形態では、本発明のペプチド、変異体、擬似物質、インヒビターまたは抗体を1つまたはそれ以上のさらなる治療薬と同時処方および/または同時投与する。例えば本発明の抗インテグリン抗体または抗体部分を、別の標的に結合した、1つまたはそれ以上のさらなるペプチド、変異体、インヒビター、擬似物質等と同時処方および/または同時投与することができる。さらに、本発明の1つまたはそれ以上のペプチドフラグメント、インヒビター、変異体、擬似物質または抗体を2つまたはそれ以上の前記の治療薬と組み合わせて用いることができる。このような組み合わせ治療は投与した低用量の治療薬を有利に利用することができ、従って種々の単一治療に伴う生じ得る毒性または合併症を回避することができる。
【0096】
[方法]
〔II型コラーゲンの精製およびペプチドフラグメントの作製〕
ペプシン消化およびDodge,G.R.およびPoole,A.R.(1989)前記のMillerの方法を用いる差次的な塩沈殿によりウシ胎仔骨端軟骨からII型コラーゲンを精製した。ウシII型コラーゲンのCNBrフラグメントをDodge,G.R.およびPoole,A.R.(1989)前記に記載されるように調製した。高速液体クロマトグラフィーを用いて目的のペプチドフラグメントをCNBrフラグメントのプールから分離し、ペプチドの同一性および組成をアミノ酸配列分析により決定した。
【0097】
〔ウシおよびヒト関節軟骨細胞およびペレット培養物の単離〕
各々屠殺直後(3時間以内)および死亡の18時間以内の剖検から成体ウシおよびヒト関節軟骨を中手指節関節から入手した。以前に記載されているように(Aimes,R.T.(1995))、トリプシンおよび細菌性コラゲナーゼを用いて37℃で連続的に酵素消化することにより、新たに切開した関節軟骨標本から軟骨細胞を遊離させた。50μg/mlアスコルビン酸、0.1mg/mlウシ血清アルブミン(Sigma)、並びに5.0μg/mlインスリン、5.0μg/mlトランスフェリング(transferring)および5.0ng/ml亜セレン酸ナトリウムの溶液(I.T.S.;Boehringer Mannheim)を含有するダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM;Gibco)中で、2×106セル/mlの密度で単離した軟骨細胞を再懸濁した。細胞懸濁液の1mlアリコートを15ml遠心チューブに移した後、細胞を200Xgで5分間遠心して、ペレット培養物を調製した。得られた細胞ペレットを加湿した5%CO2/95%空気環境下、37℃で培養した。3〜4日毎に培地を交換し、培養を20日まで維持した。
【0098】
指示される場合、培養開始(0日)から各培地交換時にCNBrフラグメントまたは合成ペプチドを培養培地に新たに添加した。変性を確実にするために、培養培地に添加する前にCNBrフラグメントを50℃で20分間加熱した。予備試験では、変性した(50℃で20分間)II型コラーゲンを伴って、および伴わずに処理した培養物間で有意な差異は示されなかった(データは示していない)。何ら添加物を含まない培養物を対照として用いた。ペレットおよび条件培地を回収し、20℃で保存した。培地を4日毎に交換した。
【0099】
解っている関節炎の病歴がなく、関節変性の巨視的徴候のない成人から、死亡の18時間以内に生検によりヒト大腿骨顆軟骨を入手した。糖尿病を有した、または生検の前に化学療法剤を投与されたヒトはいなかった。屠殺場で屠殺直後に成体/去勢牛および雌牛の中手指節関節から成体ウシ関節軟骨を入手した。全ての軟骨標本を即座に無菌状態で研究室に移した。
【0100】
〔外植片培養のための軟骨調製〕
以前に記載されているように(Dahlberg,L.et.al、(2000)前記)軟骨を調製した。簡潔に言うと、20mMのHEAPSバッファー(pH7.4)(Gibco BRL)、45mMのNaHCO3、100単位/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンおよび150μg/ml硫酸ゲンタマイシン(メジウムA)を含む、ダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM;Gibco BRL,Life Technologies,Grand Island,ニューヨーク州)含有基本培養培地を用いて軟骨サンプルを3回洗浄した。単一の部分から厚みそのままの軟骨切片を約20mm×20mmで関節表面に対して垂直に、次におよそ2mm×2mm(5〜7個の立方体が無作為に得られ、測定した湿重量は約50〜70mg/ウェルであった)の立方体に切断した。
【0101】
〔外植片〕
軟骨を48ウェルプレートに割り当て(約40mg/ウェル)、50μg/mlアスコルビン酸、0.1mg/ウシ血清アルブミン、50μg/mlインスリン、5.0μg/mlのDMEMナトリウムを補充したメジウムAおよび5.0μg/mlのDMEMナトリウム単独中、95%空気/5%CO2中で37℃で維持した。軟骨を予め2日間前培養し、0日に培地を交換した。その後培地(ペレット培養で前記のように)を4日毎に交換した。0日から各々の培地交換時に種々のCNBrフラグメントおよび/または合成ペプチドを新たに添加した。その後、軟骨外植片および条件培地を回収し、20℃で貯蔵した。
【0102】
〔正常ヒト軟骨細胞の単離〕
単離した正常ヒト軟骨細胞を軟骨細胞培養、FACScanによるインテグリン発現の検出、および細胞付着アッセイに用いた。生検により得られた切開した正常ヒト軟骨を2〜4mmの大きさの小型の立方体に切断した。以前に記載されたもの(34)にいくつかの修飾を加えた方法で軟骨細胞を単離した。簡潔に言うと、立方体をメジウム(A)で3回洗浄した。その後、ダイスカットした軟骨を0.1(重量/容量)%トリプシン(Sigma)および0.02(重量/容量)%のEDTA(Sigma)を用いて37℃で60分間(25ml/組織質重量10g)消化した。トリプシンを阻害するために10%熱不活化ウシ胎仔血清(FCS)を含有するメジウムAで軟骨を洗浄した後、0.2(重量/容量)%コラゲナーゼ(IA型;Sigma)含有血清(50ml/組織質重量10g)を含む同一培地中、旋回シェーカーで穏やかに振盪しながら消化を続けた。未消化の軟骨をナイロンメッシュ(Cell Strainer;Becton Dickinson Labware、ニュージャージー州)層を通す濾過により除去した。メジウムA中室温で遠心(1500rpm、10分)により細胞を洗浄した。血球計算スライドで細胞数を推定し、トリパンブルー排除により生存性を検査した。
【0103】
〔軟骨細胞の培養〕
単離した軟骨細胞を15cm組織培養皿(Becton Dickinson Labware,Franklin Lakes、ニュージャージー州)中に高密度(2×105セル/cm2)で置き、10%熱不活化ウシ胎仔血清(FCS)を補充したメジウムA中、加湿した5%CO2/95%空気の環境下で培養した。細胞がコンフルエントになったとき、これをトリプシン処理し、1回継代し、次に6cmまたは10cm細胞培養皿(Corning Inc.,Corning、ニューヨーク州)に10%FCS含有メジウムA中高密度で置いた。実験の24時間前に血清を採り、後で細胞をPBSで洗浄して微量の血清を除去した。軟骨細胞を規定の時間、メジウムA中SP、IL−1βおよび/またはTNF−αと共にインキュベートした。第1継代軟骨細胞のみを細胞培養実験に用いた。
【0104】
〔全RNA抽出および単離〕
ChomczynskiおよびSacchi(Chomczynski,P.et.al、Anal.Biochem.162:156-159(1987))による手順にいくつか修飾を加えた、グアニジン・イソチオシアナート手順により、軟骨細胞または軟骨外植片から全RNAを単離した。簡潔に言うと、軟骨細胞(1〜2×106セル)または軟骨組織(200〜300mg)を溶液D(4Mグアニジン・イソチオシアナート、20mM酢酸ナトリウム(pH5.2)、0.1Mの2−メルカプトエタノールおよび0.5%のN−ラウロリルサルコシン)に可溶化した。イソプロパノール1容量を混合物に加え、全タンパク質および核酸を−20℃で一晩沈殿させた。4℃で遠心した後、タンパク質および核酸を含有するペレットを1mg/mlプロテイナーゼK(分子生物学実験用;Gibco BRL)を用いて65℃で2時間消化した。消化後、次いで混合物をフェノール1容量およびクロロホルム/アルコール(49:1)0.1容量で抽出した。4℃で遠心した後水相を収集し、イソプロパノール1容量を用いて−80℃で一晩沈殿させた。遠心後、ペレットを70%エタノールで洗浄していずれかの過剰な塩を除去した。全RNAペレットをジエチルピロカルボナート処理(DEPC)した水に再懸濁し、260nmで光学密度を読み取ることにより全RNAの量を測定した。
【0105】
〔逆転写〕
全RNA(1.5μg)を50mMのTris−HCl(pH8.3、室温)、75mMのKCl、3mMのMgCl2、10mMジチオスレイトール、dNTPミックス(dATP、dTTP、cCTP、およびdGTP)各500μM、および25μg/mlオリゴ(dT)1218プライマーを含有する反応容量20μl中200単位SuperScript(商標)II逆転写酵素(Invitrogen)を用いて、サーマルサイクラー中42℃で1時間逆転写した。混合物を70℃に15分間加熱することにより反応を終止させた。
【0106】
〔ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)〕
逆転写された全RNAの1μlを50μlの反応混合物中50mMのKCl、1.5mMのMgCl2、10mMのTris−HCl(pH8.3)、200μMのdNTPミックスおよび各々0.5マイクロモルのオリゴヌクレオチドプライマー中AmpliTaq(商標)DNAポリメラーゼ(Perkin Elmer,Branchburg,ニュージャージー州)2.5単位と共にインキュベートした。サーマルサイクラーでPCR増幅を行った。PCRプロトコールは95℃で1時間の変性、50〜58℃で1分間のアニーリング、および72℃で5分間の伸長、続いて伸長後72℃で10分間の30サイクルであった。各cDNAのプライマーセットおよびアニーリング温度を表Iに列挙する。40mMのTris、40mM酢酸および1mMのEDTA中1.5%アガロースゲルで、1mg/ml臭化エチジウム溶液3μlを含有するサンプルの電気泳動によりPCR産物のサイズを確認した。ゲルのデジタル画像をNIH 1.60イメージングソフトウェアを用いて分析し、PCR産物のバンドのピクセル強度を評価した。自動バックグラウンド除去法を用いてバックグラウンドシグナルを調節した。バンド強度を飽和以下であると決定した。GAPDHをゲル負荷の参照として用いた。
【0107】
〔条件培地でのMMPの検出のための酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)〕
前記の方法により単離し、高密度(2×105セル/cm2)で培養した第1継代の正常ヒト軟骨細胞をトリプシン処理し、1%のFCS含有メジウムAに106セル/mlの密度で再懸濁した。次いで細胞懸濁液200μlを各々丸底95ウェル培養プレートにプレートした。プレートした翌日に50μMのCB12−II、50μMのUSPおよび50ng/mlのTNF−αを培養培地に加え、培養物を24〜48時間維持した。条件培地を収集し、ELISAアッセイに供した。MMP−1およびMMP−13用のELISAキット(BIOTRAK)をAmersham Pharmacia Biotech(Piscataway、ニュージャージー州)から購入した。測定範囲はMMP−1では6.25〜100ng/ml、およびMMP−13では0.094〜3ng/mlであった。アッセイの感度は、MMP−1では1.7ng/ml、およびMMP−13では0.7ng/mlであった。
【0108】
〔FACScanにより検出される軟骨細胞表面のインテグリン発現〕
正常ヒト軟骨から軟骨細胞を一晩単離した後、細胞を濾過し、メジウムAで洗浄し、0.1%のBSA、1mMのPMSFおよび10μg/mlロイペプチンを含むDMEMに再懸濁液し、培養プレートで37℃で2時間回収した。次いで細胞を1回洗浄し、10mMのHEPES、1%のBSA、1mMのPMSFおよび10μg/mlロイペプチンを含有する氷冷PBSに再懸濁し、500μl中5×105セルを小型のチューブに等分した。抗インテグリン抗体(Santa Cruz)を細胞懸濁液と共に4℃で30分間インキュベートし、続いてFITC標識IgGを添加し、さらに1時間4℃でインキュベートした。軟骨細胞懸濁液を氷冷PBSで2回洗浄した後、細胞をPBS中1%ホルムアルデヒドで5分間固定し、PBSで洗浄し、FACScan分析に供した。データ分析のためにCiceroソフトウェアを装備したEPICSTM(Coulter Electronics,Inc.,Miami Lakes、フロリダ州)フローサイトメーターで細胞ソーティングを実施した。
【0109】
〔細胞付着アッセイ〕
層流フード内で、96ウェル、非組織培養プレートを、PBS中種々の濃度の本発明のペプチドフラグメント(CB12−II)、陰性対照ペプチド(USP)またはヒトフィブロネクチンで室温で一晩コートした。予備試験により、細胞数が2.5〜10×106セル/mlの範囲で増加したので、結合が増加したことが示された。CB12−IIの濃度が10μg/mlで最適な結合が得られた。プレートをPBSで1回洗浄した後、プレートウェルのさらなるタンパク質結合部位をPBS中5%熱変性BSAで、37℃[確認されたい]で1時間遮断した。新たに単離したヒト軟骨細胞を前記のように2時間回収し、次に1×107セル/ml(0.5〜2×106セル/ウェル)の密度で基質をコートしたプレートに加え、37℃で1時間インキュベートした。軟骨細胞懸濁液を5μg/ml抗インテグリン遮断抗体(Chemicon):α1(クローンCB12)、α2(クローンP1E6)、α5(クローンD1D6)、α1(クローン6S6)、α2(クローンP4H9)、α3(クローン25EW)、α2β1(クローンBHA2.1)、およびα5β1(クローンJBS5)と共に4℃で30分間プレインキュベートした後、細胞を予めコートしたウェルに37℃で1時間加えた。非付着細胞を除去し、ウェルをPBSで穏やかに2回洗浄した。次いで、前記のように(36、37)全細胞性ヘキソサミニダーゼを測定することにより結合した細胞を定量した。7.5mMのp−ニトロフェニル−N−アセチル−β−D−グルコサミニド(Sigma)60μlを0.5%のTriton X−100含有0.1Mのクエン酸ナトリウムバッファー(pH5.0)に加えた。6時間インキュベートした後、50mMグリシン、5mMのEDTA(pH10.4)を90μl加え、405nmで吸光度を読み取った。
【0110】
〔キナーゼ活性に関するウェスタンイムノブロット〕
MAPキナーゼ(ERK1/2、p38MAPKおよびJNK1/2)の活性化を検出するために、10cm培養皿にプレートした第1継代軟骨細胞をCB12−II(SP)、USP、TNF−α、天然ヒトII型コラーゲン、ヒトフィブロネクチン、並びにα2β1およびα5β1に対する抗体と共に5〜60分間インキュベートした。いくつかの実験ではペプチドを加える前に、軟骨細胞を1μMでU0126(MEK1/2のリン酸化のインヒビター、ERK1/2の上流キナーゼ分子)と共に1時間、1μMでSB203580(p38MAPKのリン酸化のインヒビター)と共に1時間、1μg/mlでヘルビマイシンA(チロシンキナーゼインヒビター)と一晩、100nMでウォルトマニン(PI3キナーゼインヒビター)と共に1時間、3μMでサイトカラシンD(接着班インヒビター)と共に30または60分間予備培養した。
【0111】
変動し得るが、規定のインキュベーション時間の後に、軟骨細胞を氷冷PBSで2回洗浄し、新たに添加したプロテイナーゼおよびホスファターゼインヒビター(1mMのPMSF、10μg/mlロイペプチン、1μg/mlアプロチニン、1mMのNa3VO4、1mMのNaF)を含有するRIPAバッファー(10mMのTris/HCl(pH7.4)、0.1%のSDS、1%のNP−40、0.1%デオキシコール酸ナトリウム、150mMのNaCl、1mMのEDTA)に溶解した。細胞ライゼートを遠心し、上澄を収集した。Bradford法を用いてタンパク質濃度を決定した。還元条件下、等量のタンパク質を10%のSDS−ポリアクリルアミドゲルで分離し、エレクトロトランスファーによりニトロセルロース膜(Bio-Rad)に移した。非特異的結合を遮断するために、膜を5%脱脂粉乳を含有するPBS中4℃で一晩インキュベートした。次いで膜をリン酸化ERK1/2、p38、およびJNK1/2(New England BioLabs)に対するウサギ抗体でプロービングした。抗体を0.5%脱脂粉乳を含有するPBSで1:1000に希釈し、室温で1時間膜と反応させた。ブロットを0.1%のTween−20含有PBSで3回洗浄し、ECL系(Amersham)のためにPBS−0.1%のTween−20で1:2000に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)抱合ヤギ抗ウサギIgG(New England BioLabs)と共に室温で1時間インキュベートした。次いで膜をPBS−Tweenで洗浄し、ECL検出試薬(Amersham)1および2の1:1希釈物を1分間添加して膜を検出した。溶液を除去し、膜をラップで包み、種々の時間フィルムに暴露した。抗体結合による全ERKタンパク質の検出により全タンパク質負荷が等しいことが実証された。
【0112】
〔コラゲナーゼ切断したものの抽出およびアッセイ、並びに全II型コラーゲン含量〕
以前に記載したように、種々の時間培養した細胞ペレットおよび軟骨外植片を消化して、コラゲナーゼにより生じるネオエピトープCOL2−3/4Cshort(Billinghurst,R.C.et.al、(1997)前記)および変性II型コラーゲンエピトープCOL2−3/4mおよび全II型コラーゲン(Hollander,A.P.et.al(1994a)前記)を抽出した。簡潔に言うと、収集したペレットを1.0mg/mlのα−キモトリプシンと共に37℃で一晩インキュベートして切断し、変性コラーゲンを可溶化し、前記のネオエピトープおよびエピトープは無傷のままにした。N−トシル−L−フェニルアラニン・クロロメチルケトン(Sigma)でα−キモトリプシン活性を阻害した後、サンプルを遠心し、上澄を除去し、10分間煮沸した。コラゲナーゼによるII型コラーゲンの切断により生じたCOL2−3/4Cshortエピトープ(以後COL2−3/4Cshortと称する)(Billinghurst,R.C.et.al、(1997)前記)および変性II型コラーゲンに暴露した(Hollander,A.P.et.al(1994a)前記)鎖内エピトープ(COL2−3/4m)をイムノアッセイによりα−キモトリプシン抽出物で測定した。II型コラーゲンの1次コラゲナーゼ切断により生じたTCA片で、カルボキシ末端切断ネオエピトープに対するウサギ抗体を用いてELISAアッセイでCOL2−3/4Cshortエピトープを検出する。COL2−3/4Cエピトープの培地への放出をイムノアッセイによっても測定した。組織/細胞および培地における全含量をCOL2−3/4Cshortエピトープに関しても記録した。COL2−3/4mエピトープが集中している細胞および組織でCOL2−3/4mエピトープを記録した。ペレットおよび外植片の残りの残基を1.0mg/mlプロテイナーゼKで56℃で一晩消化して残りの無傷のII型コラーゲンを抽出し、次に10分間煮沸して酵素を変性させた。ペレットおよび外植片中の全II型コラーゲン含量を、α−キモトリプシンおよびプロテイナーゼK消化の双方でCOL2−3/4mの総量から決定した。
【0113】
〔II型プロコラーゲン(CPII)のC−プロペプチドのラジオイムノアッセイ(RIA)〕
分解ではなく合成に関して本発明の1つの実施形態のペプチドフラグメントの特異性を示すために、II型プロコラーゲン(CPII)のC−プロペプチドのRIAを実施した。CPIIのイムノアッセイ(RIA)は以前に記載されており、ペプチドはII型コラーゲン合成のマーカーになることが示されている(Nelson,F.et.al、(1998)前記)。前記のように4Mの塩酸グアニジンを用いて種々の日に培養物の細胞ペレットを抽出した。次いでアッセイの前に微量透析ユニット(Bethesda Research Laboratory,Gaithersburg、メリーランド州)を用いてアリコートを50mMのTris−HCl(pH7.4)に対して徹底的に透析した。
【0114】
〔プロテオグリカンに関するアッセイ〕
プロテオグリカン、主にアグリカンと比較して、II型コラーゲンの分解に関する1つの実施形態のペプチドフラグメントの特異性を示すために、細胞ペレット、軟骨外植片およびさらには条件培地中の全プロテオグリカン(主にアグリカン)含量に関してα−キモトリプシンおよびプロテイナーゼK消化の双方で硫酸グリコサミノグリカン(GAG)含量を決定した。プロテオグリカンの培地への放出の測定を以前に記載されているように(Dahlberg,L.et.al、(2000)前記)、ジメチレンブル色素結合を用いて試験した。
【0115】
〔DNA含量に関するアッセイ〕
細胞含量に関して本発明の1つの実施形態のペプチドフラグメントの影響を示すために、以前に記載されているように(Nelson,F.et.al、(1998)前記)、細胞ペレットのDNA含量をプロテイナーゼK消化で測定した。
【0116】
〔統計分析〕
一方向分散分析(ANOVA)を用いて測定した変数を評価した。2群間の比較をスチューデントt検定により実施した。p<0.05を有意であると考えた。
【実施例】
【0117】
[実施例1:ウシペレット培養物における、コラゲナーゼに誘起されるII型コラーゲンの切断に及ぼすII型コラーゲンのCNBrペプチドフラグメントの影響]
対照培養では、COL2−3/4Cエピトープとして測定される、コラゲナーゼ切断されたII型コラーゲン含量は、ほとんどの培養期間中一定のままであった(図2参照)。0日に1および10μMで全CNBrフラグメントの混合物を添加することにより、20日まで培養物(細胞ペレット+培地)中の切断されたII型コラーゲン含量の用量依存的な様式で有意な漸増的増加が引き起こされ、20日で測定を中止した。CNBrフラグメントにより引き起こされる組織における増加は20日で最大であった。0日から全CNBrフラグメントを1μM(黒四角)および10μM(黒三角)で血清不含培地に添加した。対照培養(黒丸)には何も添加しないでモニターした。COL2−3/4Cshortエピトープに特異的な抗体を用いて酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によりコラゲナーゼ切断II型コラーゲン含量をα−キモトリプシン抽出物および条件培地で測定した。一方向ANOVAによりCNBrフラグメント濃度の、細胞ペレットおよび培地中の得られた全COL2−3/4含量に及ぼす有意な影響を確認した(図2参照)。
【0118】
CNBrフラグメントにより引き起こされるII型コラーゲン破壊におけるコラゲナーゼ、特にMMP−13の関与を確認するために、MMP−13の優先的なインヒビターである10nMのRS102,481を伴って(○)または伴わずに、全CNBrフラグメントを10μMで含有する培地中0日から関節軟骨細胞ペレットを培養した(図2)。MMP−1、MMP−8およびMMP−13のKi値に鑑みて、合成インヒビターは10nMで優先的にMMP−13を阻害する(Billinghurst et.al、(2000)前記、およびDahlberg,L.et.al、(2000)前記)。10μMのCNBrフラグメントでの処置により、10日に対照と比較してII型コラーゲンのコラゲナーゼ切断により生じるCOL2−3/4Cエピトープが最高に増加するが、CNBrフラグメントと共にRS102,481を添加することにより、ペレットおよび培地に存在するエピトープの上昇が抑制される(データは示していない)。
【0119】
[実施例2:ペレット培養物における、II型コラーゲンのCNBrペプチドフラグメントのII型コラーゲンの変性および合成に及ぼす影響]
20日までの1および10μMでの全CNBrフラグメントでの処置を伴う、および伴わない培養物間でc−プロペプチド含量(II型コラーゲン合成を反映する)における有意な差異は認められなかったが、CNBrフラグメントにより17および20日に10μMでII型コラーゲンの変性(α−キモトリプシン消化におけるCOL2−3/4mエピトープ)において有意な増加が引き起こされた(データは示していない)。II型コラーゲン含量(α−キモトリプシンおよびプロテアーゼK消化におけるCOL2−3/4mエピトープ)もまた11日まで漸増的に増加したが、その後、CNBrペプチドフラグメントはII型コラーゲン含量の増加を抑制し、20日の対照と比較して含量が有意に低下した(データは示していない)。
【0120】
[実施例3:ペレット培養物における、プロテオグリカンおよびDNA含量に及ぼすペプチドフラグメントの影響]
全培養期間中、対照培養ではペレット中のプロテオグリカン含量の漸増的な増加が示された(図4A)。1および10μMでの全CNBrフラグメントの添加によりプロテオグリカン含量には明確な影響はなかった。プロテオグリカンの対象培養の培地への放出が漸増的に増加し、17日までの最大レベルに到達することが示された。CNBrフラグメントはプロテオグリカンの培地への放出に検出可能な影響を引き起こさなかった(図4B)。
【0121】
全培養期間中、DNA含量は14μg/ペレットから11〜12μg/ペレットまでの着実な低下を示した。1または10μMでの全CNBrフラグメントの添加はDNA含量に影響を及ぼさなかった(図4C)。
【0122】
[実施例4:ウシ外植片培養物において、II型コラーゲンのCB12ペプチドは、コラゲナーゼに媒介されるII型コラーゲンの切断を誘起する。]
図5は、HPLCで単離された、変性II型コラーゲンおよびII型コラーゲンのCB12ペプチドで処理した軟骨および培地の双方におけるコラゲナーゼ切断II型コラーゲン含量の変化の時間経過を示す。これらの形態のコラーゲン分子に0日から0.1(黒四角)および1μM(黒三角)で添加した。対照培養(黒丸)には何も添加しなかった。値は4つの既知数に関する平均±SDである。一方向ANOVAにより、12日の培地および軟骨中のCOL2−3/4C含量に及ぼすCB12の有意な影響を確認した。変性コラーゲンの影響はなかった(図5A)。図5Bでは、変性コラーゲンおよびCB12ペプチドの添加はペレット培養物中のプロテオグリカン(GAG)含量および培養培地へのGAG放出に影響しないことを示すことができる。
【0123】
[実施例5:ウシ関節軟骨において、II型コラーゲンCB12ペプチドのサブペプチドは、コラゲナーゼに媒介されるII型コラーゲンの切断を誘起する。]
CB12ペプチドのサブペプチド(図1参照)を試験して、そのうちのどれが成体ウシ関節軟骨に由来する軟骨細胞においてコラゲナーゼによるII型コラーゲン切断を誘起するかを決定した。図6AはサブペプチドCB12−I、−II、−IIIおよび−IVによる、1および10μMでの用量依存的様式でのII型コラーゲンの全コラゲナーゼ切断の典型的な時間依存的誘導を示す。CB12−IIペプチドでの誘導が最も顕著であった。CB12−I、CB12−IIIおよびCB12−IVは活性がなかった。CB12−I、CB12−II、CB12−IIIまたはCB12−IVのいずれのペプチドもプロテオグリカン破壊に有意な影響はなかった(図6B)。
【0124】
[実施例6:ヒト外植片培養において、II型コラーゲンのCB12−II(SP)ペプチドフラグメントは、コラゲナーゼに媒介されるII型コラーゲンの切断を誘起する。]
図7は、ペレット培養物中の細胞外マトリックスと比較して、成熟ヒト関節軟骨が高レベルのII型コラーゲンおよびプロテオグリカンの双方を含有することを示している。これにより、ペレット培養物と比較して、関節軟骨外植片培養物においてCOL2−3/4Cの検出がより容易くなる。さらなる利点は、ペレット培養物は軟骨細胞が軟骨マトリックスを活発に合成し続けることを可能にするが、外植片培養物では軟骨分解に集中する能力である。最も重要なことは、外植片培養物では軟骨細胞のそのマトリックスに対する関係が既に確立され、健常な軟骨を維持するために恒常性が機能するということである。
【0125】
CB12−IIペプチド(SP)は10μMで12日で軟骨および培地中のCOL2−3/4エピトープ生成の有意な漸増的な増加を引き起こした(図7A)。II型コラーゲンの切断の誘起は用量依存的な様式で生じ、1μM(一方のドナーで)、5μMおよび10μMで双方のドナーで漸増的な活性が認められた(図7B)。
【0126】
[実施例7:ヒト外植片培養物において、CB12−II(SP)ペプチドのヒドロキシル化は、コラゲナーゼ媒介のII型コラーゲンの切断の誘起に影響する。]
Gly−X−Yの「Y」位置の可変鎖内プロリンヒドロキシル化でCB12−II(SP)の合成ペプチドを合成した(「Y」はプロリンである)(図1)。培養物中のCB12−II(SP)の存在で切断は明らかに増強された。単一のプロリン残基88(SP6)または103(SP21)でのヒドロキシル化の除去は16日までに活性に影響しなかった(図8)。残基97(SP15)または残基100(SP18)でのヒドロキシル化の除去は図8に示すように強度を低減した。従って、ペプチドのヒドロキシル化はその活性に影響する。
【0127】
[実施例8:ヒト軟骨細胞培養物における、ペプチドCB12−II(SP)によるMMP発現およびコラゲナーゼ活性の誘導]
単離した培養物中のヒト軟骨細胞をまた、ペプチドフラグメントCB12−IIと共にインキュベートし、遺伝子発現レベル(RT−PCRによるmRNA)をIL−1+TNF−αのインキュベーションにより誘導された発現と比較した。軟骨細胞をCB12−IIまたはTNF−α/IL−1βのいずれかと共に24時間インキュベーションした。mRNA増幅により、MMP−1、MMP−13およびMMp−3に関して予測された長さの明確なバンドを生じた(データは示していない)。MMPはGAPDHの対照と比較してサイトカインにより全て上方制御された。MMP−13はCB12−IIにより弱く上方制御された。MMP−1は明らかにCB12−IIにより誘導された。
【0128】
先に論じたように、単離したヒト軟骨細胞を高密度培養(106セル/ml)で48時間、CB12−II、陰性対照ペプチドUSP、またはサイトカインTNF−αと共にインキュベートすることによりMMP−1およびMMP−13のタンパク質レベルもまた試験した。ELISAを用いてMMP−1およびMMP−13の細胞から培地への分泌を測定した(図9Aおよび9B参照)。CB12−IIおよびTNF−αはMMP−1(図9A)およびMMP−13(図9B)の双方の分泌を、ペプチド不含および/または陰性対照ペプチド(USP)よりも有意に高く誘起した。
【0129】
[実施例9:ヒト外植片培養物における、II型コラーゲンの分解のペプチドフラグメントによる誘導の阻害]
II型コラーゲンのコラゲナーゼ切断の阻害に関して優先的なMMP−13インヒビターであるRS102,481を10nMで試験した。Billinghurst et.al、(2000)前記およびDahlberg,L.et.al、(2000)前記参照。このインヒビターは正常ヒト関節軟骨においてCB12−IIにより誘起されるコラゲナーゼ活性の増加を部分的に阻害することができる(データは示していない)。
【0130】
[実施例10:ヒト外植片培養物における、プロテオグリカン切断に及ぼす合成ペプチドCB12−II(SP)の効果]
正常ヒト関節軟骨におけるプロテオグリカン異化に及ぼすSPの何らかの効果を試験するために、培地への累積的なプロテオグリカン(主にアグリカン)放出および軟骨におけるプロテオグリカン含量をDMMB(1,9−ジメチルメチレンブルー)色素アッセイにより決定した。図10はペプチドがいずれの患者でもプロテオグリカン放出を誘起せず、また軟骨外植片におけるプロテオグリカン含量を低減させなかったことを実証している(データは示していない)。SP処理および対照標本間で累積的なプロテオグリカン放出に有意な差異はなかった。
【0131】
[実施例11:ペプチドフラグメントCB12−II(SP)に特異的なレセプターの同定]
CB12−IIの軟骨細胞表面レセプター媒介結合に関する証拠を探すために、抗インテグリン抗体を用いてCB12−IIの結合に関してそれらが競合し得るかどうかを決定した。最初に、FACScan分析により、β1、α2、α5、α2β1、およびα5β1インテグリンサブユニットが新たに単離したヒト軟骨細胞において一定の割合で発現されたことが示された(図11参照)。
【0132】
ウェル基盤の細胞・ペプチド付着アッセイを用いて、軟骨細胞とのペプチド相互作用を試験し、II型コラーゲンのフラグメントによるII型コラーゲン分解の自動制御におけるインテグリンレセプターの関与を実証した。抗α5β1インテグリン抗体は単離された軟骨細胞のCB12−IIコートしたプレートに対する付着を有意に阻害した(図12A)。これらの抗体はペプチドCB12−IV(USP)でコートしたプレートに対する軟骨細胞結合に有意な影響を及ぼさなかった(図12B参照)。α1、α2、α5、およびα2α1に対する抗体には結合に及ぼす一貫した影響はなかった。陽性対照として、抗α5β1抗体は単離したヒト軟骨細胞のヒトフィブロネクチンへの付着を阻害することも示され、フィブロネクチンはα5β1インテグリンに結合することが以前に示されている(図12C)。
【0133】
[実施例12:ヒト軟骨細胞培養物における、ERK1/2MAPキナーゼ経路のCB12−II活性化]
CB12−IIにより開始される分解経路の活性化をERK1/2(p42/44)のMAPキナーゼシグナル発生経路リン酸化をモニターすることにより試験した(データは示していない)。
【0134】
第1継代したコンフルエントヒト軟骨細胞をCB12−II(SP)(10μM)、USP(10μM)、抗α2β1およびα5β1抗体、抗インテグリンα2α1遮断抗体、並びにIL−1βまたはTNF−αで処理した。リン酸化されたp−ERK1/2またはp−MEKを検出する抗体を用いて細胞ライゼートを免疫ブロッティングした。いくつかの実験では、上流分子の特異的インヒビター、10μMでのU0126、ERK1/2を活性化するMEK1/2、およびp38MAPK活性を阻害する10μMのSB203580をペプチド、抗体およびサイトカインの1時間前に培養物に添加した。ヘルビマイシンA、サイトカラシンD、およびウォルトマニンもまたインヒビターとして用いた。
【0135】
10μMでのCB12−IIの添加後5分以内にERK1/2をリン酸化し、15〜30分で最大に達した。ペプチドの培養培地への添加の15分後に、1、10および50μMの濃度で、CB12−IIは用量依存的にERK1/2のリン酸化を誘起した。加えて、10μMでのCB12−IIは同一濃度のUSP以上にERK1/2のリン酸化を誘起した。抗α2β1およびα5β1抗体の双方は15分間のインキュベーションの後にERK1/2のリン酸化を誘起した。さらに15分でCB12−IIにより誘起されたERK1/2のリン酸化がU0126、サイトカラシンD、またはヘルビマイシンAにより阻害されたが、SB203580により阻害されなかった。
【0136】
[実施例13:正常ウシおよびヒト関節軟骨マトリックスの分解および軟骨細胞肥厚の誘起における種々の遺伝子の上方制御]
CB−12ペプチドフラグメントは、軟骨細胞の肥厚を特徴とする、正常ウシおよびヒト関節軟骨マトリックス分解誘起において種々の遺伝子の発現を誘導する。これらの遺伝子には末端分化に関与する遺伝子、例えばCOLX、MMP−9、TGF−B1、IHH、MMP−13、CBFA1、SOX9および増殖に関与するもの、例えばbFGFおよびpTHrPおよびカスパーゼ3などがある。上方制御するその他の遺伝子にはMT1−MMP、IL−1β、MMP−1などがある。
【0137】
成体ヒトおよびウシ関節軟骨双方の外植片培養物へのペプチドSP(CB12−II)の添加の結果、24〜48時間以内に前記遺伝子が迅速に誘導された。MMP−13発現は12日までに最大になった。mRNAのRT−PCR分析により、他で記載されたMMPおよびサイトカインの発現の検出に用いた様式で遺伝子発現を決定した。またTUNEL染色キット(Roche)を用いて、末端デオキシヌクロチジル・トランスフェラーゼ媒介dUTPニック末端標識で関節軟骨の7.5μm厚のクリオスタット切片を染色することによりアポトーシスを検出した。蛍光アポトーシス検出系を用いてアポトーシスを示した。
【0138】
[実施例14:CB12−IIペプチドの配列内に含まれる異なる配列およびエピトープを認識する抗体の使用]
CNBrペプチドCB12に組み込まれた配列に対する抗体およびCB12−II配列内に含まれるエピトープを認識するさらに特異的な抗体を、CB12−II内の特異的配列に対して供した。これらを用いて例えば変形関節炎において生じるII型コラーゲンの変性を検出することができる。これらは三重らせんコラーゲンとは反応しない。このような抗体はマウスモノクローナル抗体COL2−3/4mの特性に密接に関連する特性を有している(Hollander,A.P.et.al(1994a)前記)。しかしながら、これらは異なる配列およびエピトープを認識し、イムノアッセイによるその検出は体液、例えば組織抽出物、血清、滑液および尿におけるII型コラーゲン分解生成物の放出を研究および検出するイムノアッセイの準備に有用であり得る。CB12−IIに対する抗体により認識されるフラグメントは、関節炎の患者の血清に多量に存在するペプチド分解生成物を認識できる。従って、血清中のコラーゲンフラグメントの検出に用いるこれらは、急速なまたは緩慢な疾患の進行の危険性のある患者、軟骨分解を止めるように設計された治療に応答する患者、および関節炎の臨床的な兆候に先立って、初期の前臨床的変化を呈する疾患の危険性を有する患者を同定するのに有用である(我々は、抗体COL2−3/4mおよびCOL2−3/4Clong mono−C2Cに対する特許を出願、公表させていることに留意されたい)。これらの新しいアッセイは前記の適応症のいくつかにさらに有用であり、例えばCOL2−3/4Clong monoおよびCOL2−3/4Cshortのアッセイの組み合わせはOAの疾患の進行の予後診断に有用であるが、単一のアッセイは予後診断用ではない。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】II型コラーゲンCB12ペプチドのペプチドサブフラグメント、CB12−I、CB12−II、CB12−IIIおよびCB12−IVのアミノ酸配列を示す本発明の1つの実施形態の表である。CB12はII型コラーゲン分解を最も増強することができる。ヒドロキシル化プロリンを含有するペプチドをアステリスクの存在により示す。
【図2】II型コラーゲンの臭化シアン(CNBr)フラグメントを伴って、および伴わずに処理したウシ成体の関節軟骨細胞の培養ペレット中の、コラゲナーゼ切断された全II型コラーゲン含量の変化の時間経過を示す。血清不含培地に1μM(黒四角)および10μM(黒三角)のCNBrフラグメントを0日から添加した。対照培養(黒丸)には何も添加しなかった。いくつかの培養には、コラゲナーゼ−3(MMP−13)のインヒビター、10nMのRS 102,481を10μMのCNBrフラグメント(○)と共に添加した。CNBrフラグメントに関して、およびインヒビターに関して、インヒビターなし+フラグメントと比較して有意な差異が観察された。イムノアッセイによるII型コラーゲン切断の測定はBillinghurst,R.C.et.al、前記(1997)に記載されている。
【図3】1μM(黒四角)、10μM(黒三角)のII型コラーゲンのCNBrフラグメントおよび添加物なしの対照培養(黒丸)を伴って、および伴わずに処理した、ウシ成体の関節軟骨から単離された軟骨細胞の細胞ペレット中のII型プロコラーゲン(CPII、II型プロコラーゲン合成の測定、Nelson,F.et.al、J.Clin.Invest.102:2115-2125(1998))のC−ペプチドのCNBrフラグメントの影響の欠如を示す変化の時間経過で本発明の1つの実施形態を示すグラフである。
【図4】II型コラーゲンのCNBrフラグメントを伴う、および伴わない、細胞ペレット、培地中のプロテオグリカン(硫酸グリコサミノグリカン、GAG)含量、およびDNA含量の時間経過変化に影響しないことを実証する本発明の1つの実施形態のグラフである。1μMCNBrフラグメント(黒四角)、10μMCNBrフラグメント(黒三角)。対照培養(黒丸)。
【図5】本発明の1つの実施形態の一連のグラフである。図5Aはウシ関節軟骨外植片培養における変性II型コラーゲンおよびCB12で処理した軟骨および培地の双方におけるコラゲナーゼ切断II型コラーゲン含量における変化の時間経過を示す。変性II型コラーゲンおよびCB12を0.1(黒四角)および1μM(黒三角)で0日から添加した。対照培養(黒丸)には何も添加しなかった。値は4回の測定に関する平均±SDである。一方向ANOVAにより、12日で軟骨および培地の双方で得られたCOL2−1/4C含量に及ぼすCB12の有意な影響を確認した。図5Bは、ウシ外植片培養における変性II型コラーゲンおよびCB12で処理した軟骨中のGAG含量および培地へのGAG放出における変化の時間経過を示す。変性II型コラーゲンおよびCB12を0.1(黒四角)および1μM(黒三角)で0日から添加した。対照培養(黒丸)には何も添加しなかった。値は4回の測定に関する平均±SDである。一方向ANOVAにより、培地へのGAG放出または軟骨中のGAG含量に有意な影響は示されなかった。
【図6】ウシ成体の関節軟骨細胞から単離された軟骨細胞の外植片培養における本発明の種々のペプチドフラグメントで処理した軟骨および培地の双方におけるコラゲナーゼ切断II型コラーゲン含量の増加(図6A)の時間経過を示す本発明の実施形態のグラフである。ペプチドフラグメントCB12−I、II、III、およびIVを1μM(黒四角)および10μM(黒三角)で添加した。対照培養(黒丸)には何も添加しなかった。ペプチドCB12−IIが最も活性であった。図6Bは外植片培養におけるCB12誘導合成ペプチドの処理した、軟骨中のGAG含量および培地へのGAG放出の時間経過変化を実証する。CB12−I、II、III、およびIVを1μM(黒四角)および10μM(黒三角)で添加した場合に一貫した差異はなかった。対照培養(黒丸)には何も添加しなかった。
【図7A】正常ヒト成人の関節軟骨外植片(57歳女性)における(軟骨および培地を合わせた)コラゲナーゼによるII型コラーゲン切断のペプチドフラグメントCB12−II(SP)による16日にわたる用量依存的誘導を示す本発明の1つの実施形態のグラフである。図7Bは、正常ヒト成人の57歳女性および67歳男性からの関節軟骨外植片における(軟骨および培地を合わせた)、用量依存的な様式でのコラゲナーゼによるII型コラーゲン切断の16日にわたるペプチドフラグメントCB12−II誘導を示す本発明の1つの実施形態の棒グラフである。5μMおよび10μMでは双方の例で、1μMでは57歳で活性が認められた。
【図8】正常ヒト関節軟骨の外植片培養におけるコラゲナーゼによるII型コラーゲン切断における、CB12−II(SP)誘導の活性に及ぼすプロリンヒドロキシル化の差異の重要な影響を示す本発明の1つの実施形態のグラフである。種々のヒドロキシル化ペプチドを図1に列挙する。
【図9】本発明の1つの実施形態で、ELISAにより測定されるように、50μMのCB12−II(SP)、50μMのUSPおよび50ng/mlのTNF−αと共に48時間インキュベートした、単離されたヒト成人の関節軟骨細胞から培地に放出されたMMP−1(図9A)およびMMP−13(図9B)の誘導を実証する。
【図10】本発明の1つの実施形態で、ペプチドCB12−II(SP)はプロテオグリカン分解[正常ヒト成人の関節軟骨外植片の軟骨におけるGAGの枯渇を伴う培地への放出]を誘導しなかったことを実証する。培地に放出されたプロテオグリカン(主にアグリカン)の累積を4日毎の各培地交換での培地中のプロテオグリカン含量の合計として計算した。軟骨外植片は16日まで10μMのCB12−IIを伴って、または伴わずに培養を続けた。培地中の硫酸グリコサミノグリカンをジメチルメチレンブルー(DMMB)法により検定した。データを軟骨湿重量あたりのGAG放出μgとして表す。
【図11】本発明の1つの実施形態で、正常関節軟骨から新たに単離されたヒト軟骨細胞におけるインテグリンの発現を実証する。トリプシンおよびコラゲナーゼを用いて軟骨を一晩消化することにより軟骨細胞を単離した後、細胞を再懸濁し、2時間で回収した。細胞懸濁液を蛍光抗インテグリン抗体と共にインキュベートした後、その結合をFACSCANにより細胞数測定で決定した。βおよびαインテグリンが最も強く発現された。β1、α2、α5並びにα2β1およびα5β1。
【図12】本発明の1つの実施形態で、単離された軟骨細胞のCB12−II(図12A)、非特異的ペプチド(CB12−IV;(図12B))またはヒトフィブロネクチン(図12C)への付着を示す実験の実例を実証する。抗インテグリン抗体の遮断効果および対照免疫グロブリン(IgG)を対照(免疫グロブリン不含)と比較した。示すように、全細胞性ヘキソサミニダーゼ活性として付着を測定した。α5β1インテグリンに対する抗体はCB12−II(図12A)およびフィブロネクチン(図12C)に対する付着を遮断した。α2β2およびαインテグリンに対する抗体もまた幾人かの患者で付着を遮断した(データは示していない)。抗体はCB12−IVに対する付着には効果がなかった(図12B)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)GPRGPPGPPGKPGDDGEAGKPGKSGERGPPGPQGARGFPGTPGLPGVKGHRGYPGLDGAKGEAGAPGVKGESGSPGQNGSPGGPM(CB12);
(b)GPRGPPGPPGKPGDDGEAGKPGKSGERGPPG(CB12−I);
(c)ERGPPGPQGARGFPGTPGLPGVK(CB12−II);
(d)GLPGVKGHRGYPGLDGAKGEAGAPG(CB12−III);
(e)GEAGAPGVKGESGSPGQNGSPGPM(CB12−IV);
(f)GERGPPGPQGARGFP*GTP*GLP*GVK(*はヒドロキシル化部位を示す。)(Pro6);
(g)GERGPP*GPQGARGFPGTP*GLP*GVK(*はヒドロキシル化部位を示す。)(Pro15);
(h)GERGPP*GPQGARGFP*GTPGLP*GVK(*はヒドロキシル化部位を示す。)(Pro18);および
(i)GERGPP*GPQGARGFP*GTP*GLPGVK(*はヒドロキシル化部位を示す。)(Pro21)
からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはそのフラグメントもしくは保存的に置換されたその変異体を含む、単離された、または精製されたペプチドであって、前記ペプチドは、II型コラーゲンの分解速度または軟骨細胞の肥厚速度を変化させるのに有効である、ペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドがヒドロキシル化によりさらに修飾されている、請求項1に記載のペプチドフラグメント。
【請求項3】
前記ペプチドが、前記ペプチドの、1つまたはそれ以上のプロリンまたはリジン残基でヒドロキシル化されている、請求項2に記載のペプチドフラグメント。
【請求項4】
前記ペプチドが、Gly−X−Pro配列(Xはいずれかのアミノ酸を示す。)内に位置する1つまたはそれ以上のプロリン残基でヒドロキシル化されている、請求項3に記載のペプチドフラグメント。
【請求項5】
前記ペプチドが、Gly−X−Lys配列(Xはいずれかのアミノ酸を示す。)内に位置する1つまたはそれ以上のリジン残基でヒドロキシル化されている、請求項3のペプチドフラグメント。
【請求項6】
実質的にCB12:
GPRGPPGPPGKPGDDGEAGKPGKSGERGPPGPQGARGFPGTPGLPGVKGHRGYPGLDGAKGEAGAPGVKGESGSPGQNGSPGGPM
で示されるアミノ酸配列からなるペプチドフラグメント。
【請求項7】
前記ペプチドがヒドロキシル化によりさらに修飾されている、請求項6に記載のペプチドフラグメント。
【請求項8】
前記ペプチドが、前記ペプチドの、1つまたはそれ以上のプロリンまたはリジン残基でヒドロキシル化されている、請求項7に記載のペプチドフラグメント。
【請求項9】
前記ペプチドが、Gly−X−Pro配列(Xはいずれかのアミノ酸を示す。)内に位置する1つまたはそれ以上のプロリン残基でヒドロキシル化されている、請求項8に記載のペプチドフラグメント。
【請求項10】
前記ペプチドが、Gly−X−Lys配列(Xはいずれかのアミノ酸を示す)内に位置する1つまたはそれ以上のリジン残基でヒドロキシル化されている、請求項8に記載のペプチドフラグメント。
【請求項11】
前記ペプチドが、実質的に、
GPRGPP*GPP*GKP*GDDGEAGKP*GKSGERGPP*GPQGARGFP*GTP*GLP*GVKGHRGYPGLDGAKGEAGAP*GVKGESGSP*GQNGSP*GGPM(*はヒドロキシル化部位を示す。)
からなる、請求項7に記載のペプチドフラグメント。
【請求項12】
請求項6に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項13】
請求項11に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項14】
請求項6に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項15】
請求項11に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項16】
実質的にCB12−II:GERGPPGPQGARGFPGTPGLPGVKで示されるアミノ酸配列からなるペプチドフラグメント。
【請求項17】
前記ペプチドがヒドロキシル化によりさらに修飾されている、請求項16に記載のペプチドフラグメント。
【請求項18】
前記ペプチドが、前記ペプチドの、1つまたはそれ以上のプロリンまたはリジン残基でヒドロキシル化されている、請求項17のペプチドフラグメント。
【請求項19】
前記ペプチドが、Gly−X−Pro配列(Xはいずれかのアミノ酸を示す。)内に位置する1つまたはそれ以上のプロリン残基でヒドロキシル化されている、請求項18に記載のペプチドフラグメント。
【請求項20】
前記ペプチドが、Gly−X−Lys配列(Xはいずれかのアミノ酸を示す。)内に位置する1つまたはそれ以上のリジン残基でヒドロキシル化されている請求項18に記載のペプチドフラグメント。
【請求項21】
前記ペプチドが、実質的にGERGPP*GPQGARGFP*GTP*GLP*GVKからなる、請求項17に記載のペプチドフラグメント。
【請求項22】
請求項16に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項23】
請求項21に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項24】
請求項16に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項25】
請求項21に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項26】
前記ペプチドが、実質的にGERGPPGPQGARGFP*GTP*GLP*GVK(*はヒドロキシル化部位を示す。)(Pro6)からなる、請求項16に記載のペプチドフラグメント。
【請求項27】
請求項26に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項28】
請求項26に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項29】
前記ペプチドが、実質的にGERGPP*GPQGARGFPGTP*GLP*GVK(*はヒドロキシル化部位を示す。)(Pro15)からなる、請求項16に記載のペプチドフラグメント。
【請求項30】
請求項29に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項31】
請求項29に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項32】
前記ペプチドが、実質的にGERGPP*GPQGARGFP*GTPGLP*GVK(*はヒドロキシル化部位を示す。)(Pro18)からなる、請求項16に記載のペプチドフラグメント。
【請求項33】
請求項32に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項34】
請求項32に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項35】
前記ペプチドが、実質的にGERGPP*GPQGARGFP*GTP*GLPGVK(*はヒドロキシル化部位を示す。)(Pro21)からなる、請求項16に記載のペプチドフラグメント。
【請求項36】
請求項35に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項37】
請求項35に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項38】
実質的にCB12−I:GPRGPPGPPGKPGDDGEAGKPGKSGERGPPGで示されるアミノ酸配列からなるペプチドフラグメント。
【請求項39】
前記ペプチドがヒドロキシル化によりさらに修飾されている、請求項38に記載のペプチドフラグメント。
【請求項40】
前記ペプチドが、前記ペプチドの、1つまたはそれ以上のプロリンまたはリジン残基でヒドロキシル化されている、請求項39に記載のペプチドフラグメント。
【請求項41】
前記ペプチドが、Gly−X−Pro配列(Xはいずれかのアミノ酸を示す。)内に位置する1つまたはそれ以上のプロリン残基でヒドロキシル化されている、請求項40に記載のペプチドフラグメント。
【請求項42】
前記ペプチドが、Gly−X−Lys配列(Xはいずれかのアミノ酸を示す。)内に位置する1つまたはそれ以上のリジン残基でヒドロキシル化されている、請求項40に記載のペプチドフラグメント。
【請求項43】
前記ペプチドが、実質的にGPRGPP*GPP*GKP*GDDGEAGKP*GKSGERGPP*G(*はヒドロキシル化部位を示す。)からなる、請求項38に記載のペプチドフラグメント。
【請求項44】
請求項38に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項45】
請求項38に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項46】
請求項43に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項47】
請求項43に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項48】
実質的にCB12−III:GLPGVKGHRGYPGLDGAKGEAGAPGで示されるアミノ酸配列からなるペプチドフラグメント。
【請求項49】
前記ペプチドがヒドロキシル化によりさらに修飾されている、請求項48に記載のペプチドフラグメント。
【請求項50】
前記ペプチドが、前記ペプチドの、1つまたはそれ以上のプロリンまたはリジン残基でヒドロキシル化されている、請求項49に記載のペプチドフラグメント。
【請求項51】
前記ペプチドが、Gly−X−Pro配列(Xはいずれかのアミノ酸を示す。)内に位置する1つまたはそれ以上のプロリン残基でヒドロキシル化されている、請求項50に記載のペプチドフラグメント。
【請求項52】
前記ペプチドが、Gly−X−Lys配列(Xはいずれかのアミノ酸を示す。)内に位置する1つまたはそれ以上のリジン残基でヒドロキシル化されている、請求項50に記載のペプチドフラグメント。
【請求項53】
前記ペプチドが、実質的にGLP*GVKGHRGYP*GLDGAKGEAGAP*G(*はヒドロキシル化部位を示す。)からなる、請求項48に記載のペプチドフラグメント。
【請求項54】
請求項48に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項55】
請求項48に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項56】
請求項53に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項57】
請求項53に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項58】
実質的にCB12−IV:GEAGAPGVKGESGSPGQNGSPGPMで示されるアミノ酸配列からなるペプチドフラグメント。
【請求項59】
前記ペプチドがヒドロキシル化によりさらに修飾されている、請求項58に記載のペプチドフラグメント。
【請求項60】
前記ペプチドが、前記ペプチドの、1つまたはそれ以上のプロリンまたはリジン残基でヒドロキシル化されている、請求項59に記載のペプチドフラグメント。
【請求項61】
前記ペプチドがGly−X−Pro配列(Xはいずれかのアミノ酸を示す。)内に位置する1つまたはそれ以上のプロリン残基でヒドロキシル化されている、請求項60に記載のペプチドフラグメント。
【請求項62】
前記ペプチドがGly−X−Lys配列(Xはいずれかのアミノ酸を示す。)内に位置する1つまたはそれ以上のリジン残基でヒドロキシル化されている、請求項60に記載のペプチドフラグメント。
【請求項63】
前記ペプチドが、実質的にGEAGAP*GVKGESGSP*GQNGSP*GPM(*はヒドロキシル化部位を示す。)からなる、請求項58に記載のペプチドフラグメント。
【請求項64】
請求項58に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項65】
請求項58に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項66】
請求項63に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項67】
請求項63に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項68】
前記ペプチド配列の1〜5個のアミノ酸が保存的な置換により置換されており、前記ペプチドが、II型コラーゲンの分解速度または軟骨細胞の肥厚速度を変化させるのに有効である、請求項1、6、16、38、48または58のいずれかに記載のペプチド。
【請求項69】
請求項1、6、16、38、48または58のいずれかに記載のペプチドに少なくとも80%の相同性を有するペプチドであって、II型コラーゲンの分解速度または軟骨細胞の肥厚速度を変化させるのに有効である、ペプチド。
【請求項70】
2つのペプチドからなるペプチド二量体であって、各ペプチドが請求項1に記載のペプチドの群から選択される、ペプチド二量体。
【請求項71】
前記ペプチド二量体が、ホモ二量体またはヘテロ二量体である、請求項70に記載のペプチド二量体。
【請求項72】
3つのペプチドからなるペプチド三量体であって、各ペプチドが請求項1に記載のペプチドの群から選択される、ペプチド三量体。
【請求項73】
前記ペプチド三量体が、ホモ三量体またはヘテロ三量体である、請求項72に記載のペプチド三量体。
【請求項74】
医薬的に有効な担体および請求項14、15、24、25、28、31、34、37、45、47、55、57、65、または67のいずれかに記載の少なくとも1つのインヒビターを含む医薬用組成物。
【請求項75】
前記組成物が、哺乳動物におけるコラーゲンマトリックスのターンオーバーを低下させる、請求項74に記載の医薬用組成物の使用。
【請求項76】
前記組成物が、ヒトにおけるコラーゲンマトリックスのターンオーバーを低下させる、請求項74に記載の医薬用組成物の使用。
【請求項77】
コラーゲンのターンオーバーを制御する方法であって、
医薬的に有効な量の請求項74に記載の医薬用組成物を対象に投与するステップを含む方法。
【請求項78】
前記組成物の投与により、1つまたはそれ以上のコラーゲンタンパク質の分解が低減する、医薬的に有効な量の請求項74に記載の医薬用組成物の使用。
【請求項79】
生物学的サンプルにおけるコラーゲンの分解を低減させることができる、コラーゲンのペプチドフラグメントのペプチド擬似物質を同定する方法であって、
(a)コラーゲンのペプチドフラグメントおよびその変異体を、天然に生成されたペプチドフラグメントの特異的レセプターに優先的に結合できるが、マトリックス分解経路をより活性化しないペプチドフラグメントの能力に関して、スクリーニングするステップ
を含む方法。
【請求項80】
前記特異的レセプターが抗インテグリンレセプターである、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記マトリックス分解経路の活性化により、COLX、MMP−9、TGF−B1、IHH、MMP−13、CBFA1、SOX9、bFGF、pTHrP、カスパーゼ−3、MT1−MMP、IL−1B、およびMMP−1からなる群から選択される遺伝子の発現が誘導される、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
前記生物学的サンプルが、組織抽出物、滑液、血清および尿からなる群から選択される生物学的液体である、請求項79に記載の方法。
【請求項83】
請求項1、6、16、38、48または58に記載のペプチドのエピトープまたはその抗原性フラグメントに特異的に結合する、単離された、または精製された抗体。
【請求項84】
前記抗体が、モノクローナルまたはポリクローナル抗体である、請求項83に記載の抗体。
【請求項85】
前記ペプチドの活性を阻害するために用いられる、請求項83に記載の抗体。
【請求項86】
前記ペプチドの生成のインヒビターを同定するために用いられる、請求項83に記載の抗体。
【請求項87】
軟骨分解を止めるように設計された治療に応答し、疾患の急速なもしくは緩慢な進行の危険性を有するか、または、疾患の臨床的な兆候に先立って初期の前臨床的変化を示す疾患の危険性を有する対象を同定するために用いられる、請求項83に記載の抗体。
【請求項88】
前記疾患が、変形性関節炎、リウマチ性関節炎、外傷後変形性関節炎、特発性変形性関節炎、および眼疾患からなる群から選択される、請求項87に記載の抗体。
【請求項89】
変形性関節炎、リウマチ性関節炎、外傷後変形性関節炎、特発性変形性関節炎、および眼疾患からなる群から選択される疾患を診断する方法であって、請求項87に記載の抗体をサンプルと接触させるステップを含む方法。
【請求項90】
組織抽出物、血清、滑液、および尿からなる群から選択される体液中のII型コラーゲン分解生成物の放出を検出するために用いられる、請求項83に記載の抗体。
【請求項91】
対象における軟骨細胞の肥厚を阻害する方法であって、医薬的に有効な量の請求項83に記載の抗体を前記対象に投与し、それにより前記肥厚が阻害されるステップを含む方法。
【請求項92】
コラーゲンの破壊を阻害することができる化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)インビトロで、前記被験化合物をコラーゲン含有抽出物と共にインキュベートするステップ、
(b)コラーゲンの分解を増加させることが公知である化合物を添加するステップ、および
(c)前記公知の化合物単独と比較して、コラーゲンの分解を低下させることができる前記化合物を選択するステップ
を含む方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2〜9および11からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはそのフラグメントもしくは保存的に置換されたその変異体を含む、単離された、または精製されたペプチドであって、前記ペプチドは、II型コラーゲンの分解速度または軟骨細胞の肥厚速度を変化させるのに有効である、ペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドがヒドロキシル化によりさらに修飾されている、請求項1に記載のペプチドフラグメント。
【請求項3】
前記ペプチドが、前記ペプチドの、1つまたはそれ以上のプロリンまたはリジン残基でヒドロキシル化されている、請求項2に記載のペプチドフラグメント。
【請求項4】
前記ペプチドが、Gly−X−Pro配列(Xはいずれかのアミノ酸を示す。)内に位置する1つまたはそれ以上のプロリン残基でヒドロキシル化されている、請求項3に記載のペプチドフラグメント。
【請求項5】
前記ペプチドが、Gly−X−Lys配列(Xはいずれかのアミノ酸を示す。)内に位置する1つまたはそれ以上のリジン残基でヒドロキシル化されている、請求項3のペプチドフラグメント。
【請求項6】
実質的に配列番号11で示されるアミノ酸配列からなるペプチドフラグメント。
【請求項7】
前記ペプチドがヒドロキシル化によりさらに修飾されている、請求項6に記載のペプチドフラグメント。
【請求項8】
前記ペプチドが、前記ペプチドの、1つまたはそれ以上のプロリンまたはリジン残基でヒドロキシル化されている、請求項7に記載のペプチドフラグメント。
【請求項9】
前記ペプチドが、Gly−X−Pro配列(Xはいずれかのアミノ酸を示す。)内に位置する1つまたはそれ以上のプロリン残基でヒドロキシル化されている、請求項8に記載のペプチドフラグメント。
【請求項10】
前記ペプチドが、Gly−X−Lys配列(Xはいずれかのアミノ酸を示す)内に位置する1つまたはそれ以上のリジン残基でヒドロキシル化されている、請求項8に記載のペプチドフラグメント。
【請求項11】
前記ペプチドが、実質的に配列番号12で示されるアミノ酸配列からなる、請求項7に記載のペプチドフラグメント。
【請求項12】
請求項6に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項13】
請求項11に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項14】
請求項6に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項15】
請求項11に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項16】
実質的に配列番号13で示されるアミノ酸配列からなるペプチドフラグメント。
【請求項17】
前記ペプチドがヒドロキシル化によりさらに修飾されている、請求項16に記載のペプチドフラグメント。
【請求項18】
前記ペプチドが、前記ペプチドの、1つまたはそれ以上のプロリンまたはリジン残基でヒドロキシル化されている、請求項17のペプチドフラグメント。
【請求項19】
前記ペプチドが、Gly−X−Pro配列(Xはいずれかのアミノ酸を示す。)内に位置する1つまたはそれ以上のプロリン残基でヒドロキシル化されている、請求項18に記載のペプチドフラグメント。
【請求項20】
前記ペプチドが、Gly−X−Lys配列(Xはいずれかのアミノ酸を示す。)内に位置する1つまたはそれ以上のリジン残基でヒドロキシル化されている請求項18に記載のペプチドフラグメント。
【請求項21】
前記ペプチドが、実質的に配列番号14で示されるアミノ酸配列からなる、請求項17に記載のペプチドフラグメント。
【請求項22】
請求項16に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項23】
請求項21に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項24】
請求項16に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項25】
請求項21に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項26】
前記ペプチドが、実質的に配列番号6で示されるアミノ酸配列からなる、請求項16に記載のペプチドフラグメント。
【請求項27】
請求項26に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項28】
請求項26に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項29】
前記ペプチドが、実質的に配列番号7で示されるアミノ酸配列からなる、請求項16に記載のペプチドフラグメント。
【請求項30】
請求項29に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項31】
請求項29に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項32】
前記ペプチドが、実質的に配列番号8で示されるアミノ酸配列からなる、請求項16に記載のペプチドフラグメント。
【請求項33】
請求項32に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項34】
請求項32に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項35】
前記ペプチドが、実質的に配列番号9で示されるアミノ酸配列からなる、請求項16に記載のペプチドフラグメント。
【請求項36】
請求項35に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項37】
請求項35に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項38】
実質的に配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるペプチドフラグメント。
【請求項39】
前記ペプチドがヒドロキシル化によりさらに修飾されている、請求項38に記載のペプチドフラグメント。
【請求項40】
前記ペプチドが、前記ペプチドの、1つまたはそれ以上のプロリンまたはリジン残基でヒドロキシル化されている、請求項39に記載のペプチドフラグメント。
【請求項41】
前記ペプチドが、Gly−X−Pro配列(Xはいずれかのアミノ酸を示す。)内に位置する1つまたはそれ以上のプロリン残基でヒドロキシル化されている、請求項40に記載のペプチドフラグメント。
【請求項42】
前記ペプチドが、Gly−X−Lys配列(Xはいずれかのアミノ酸を示す。)内に位置する1つまたはそれ以上のリジン残基でヒドロキシル化されている、請求項40に記載のペプチドフラグメント。
【請求項43】
前記ペプチドが、実質的に配列番号15で示されるアミノ酸配列からなる、請求項38に記載のペプチドフラグメント。
【請求項44】
請求項38に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項45】
請求項38に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項46】
請求項43に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項47】
請求項43に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項48】
実質的に配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるペプチドフラグメント。
【請求項49】
前記ペプチドがヒドロキシル化によりさらに修飾されている、請求項48に記載のペプチドフラグメント。
【請求項50】
前記ペプチドが、前記ペプチドの、1つまたはそれ以上のプロリンまたはリジン残基でヒドロキシル化されている、請求項49に記載のペプチドフラグメント。
【請求項51】
前記ペプチドが、Gly−X−Pro配列(Xはいずれかのアミノ酸を示す。)内に位置する1つまたはそれ以上のプロリン残基でヒドロキシル化されている、請求項50に記載のペプチドフラグメント。
【請求項52】
前記ペプチドが、Gly−X−Lys配列(Xはいずれかのアミノ酸を示す。)内に位置する1つまたはそれ以上のリジン残基でヒドロキシル化されている、請求項50に記載のペプチドフラグメント。
【請求項53】
前記ペプチドが、実質的に配列番号16で示されるアミノ酸配列からなる、請求項48に記載のペプチドフラグメント。
【請求項54】
請求項48に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項55】
請求項48に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項56】
請求項53に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項57】
請求項53に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項58】
実質的に配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるペプチドフラグメント。
【請求項59】
前記ペプチドがヒドロキシル化によりさらに修飾されている、請求項58に記載のペプチドフラグメント。
【請求項60】
前記ペプチドが、前記ペプチドの、1つまたはそれ以上のプロリンまたはリジン残基でヒドロキシル化されている、請求項59に記載のペプチドフラグメント。
【請求項61】
前記ペプチドがGly−X−Pro配列(Xはいずれかのアミノ酸を示す。)内に位置する1つまたはそれ以上のプロリン残基でヒドロキシル化されている、請求項60に記載のペプチドフラグメント。
【請求項62】
前記ペプチドがGly−X−Lys配列(Xはいずれかのアミノ酸を示す。)内に位置する1つまたはそれ以上のリジン残基でヒドロキシル化されている、請求項60に記載のペプチドフラグメント。
【請求項63】
前記ペプチドが、実質的に配列番号17で示されるアミノ酸配列からなる、請求項58に記載のペプチドフラグメント。
【請求項64】
請求項58に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項65】
請求項58に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項66】
請求項63に記載のペプチドフラグメントの擬似物質。
【請求項67】
請求項63に記載のペプチドフラグメントのインヒビター。
【請求項68】
前記ペプチド配列の1〜5個のアミノ酸が保存的な置換により置換されており、前記ペプチドが、II型コラーゲンの分解速度または軟骨細胞の肥厚速度を変化させるのに有効である、請求項1、6、16、38、48または58のいずれかに記載のペプチド。
【請求項69】
請求項1、6、16、38、48または58のいずれかに記載のペプチドに少なくとも80%の相同性を有するペプチドであって、II型コラーゲンの分解速度または軟骨細胞の肥厚速度を変化させるのに有効である、ペプチド。
【請求項70】
2つのペプチドからなるペプチド二量体であって、各ペプチドが請求項1に記載のペプチドの群から選択される、ペプチド二量体。
【請求項71】
前記ペプチド二量体が、ホモ二量体またはヘテロ二量体である、請求項70に記載のペプチド二量体。
【請求項72】
3つのペプチドからなるペプチド三量体であって、各ペプチドが請求項1に記載のペプチドの群から選択される、ペプチド三量体。
【請求項73】
前記ペプチド三量体が、ホモ三量体またはヘテロ三量体である、請求項72に記載のペプチド三量体。
【請求項74】
医薬的に有効な担体および請求項14、15、24、25、28、31、34、37、45、47、55、57、65、または67のいずれかに記載の少なくとも1つのインヒビターを含む医薬用組成物。
【請求項75】
前記組成物が、哺乳動物におけるコラーゲンマトリックスのターンオーバーを低下させる、請求項74に記載の医薬用組成物の使用。
【請求項76】
前記組成物が、ヒトにおけるコラーゲンマトリックスのターンオーバーを低下させる、請求項74に記載の医薬用組成物の使用。
【請求項77】
コラーゲンのターンオーバーを制御する方法であって、
医薬的に有効な量の請求項74に記載の医薬用組成物を対象に投与するステップを含む方法。
【請求項78】
前記組成物の投与により、1つまたはそれ以上のコラーゲンタンパク質の分解が低減する、医薬的に有効な量の請求項74に記載の医薬用組成物の使用。
【請求項79】
生物学的サンプルにおけるコラーゲンの分解を低減させることができる、コラーゲンのペプチドフラグメントのペプチド擬似物質を同定する方法であって、
(a)コラーゲンのペプチドフラグメントおよびその変異体を、天然に生成されたペプチドフラグメントの特異的レセプターに優先的に結合できるが、マトリックス分解経路をより活性化しないペプチドフラグメントの能力に関して、スクリーニングするステップ
を含む方法。
【請求項80】
前記特異的レセプターが抗インテグリンレセプターである、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記マトリックス分解経路の活性化により、COLX、MMP−9、TGF−B1、IHH、MMP−13、CBFA1、SOX9、bFGF、pTHrP、カスパーゼ−3、MT1−MMP、IL−1B、およびMMP−1からなる群から選択される遺伝子の発現が誘導される、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
前記生物学的サンプルが、組織抽出物、滑液、血清および尿からなる群から選択される生物学的液体である、請求項79に記載の方法。
【請求項83】
請求項1、6、16、38、48または58に記載のペプチドのエピトープまたはその抗原性フラグメントに特異的に結合する、単離された、または精製された抗体。
【請求項84】
前記抗体が、モノクローナルまたはポリクローナル抗体である、請求項83に記載の抗体。
【請求項85】
前記ペプチドの活性を阻害するために用いられる、請求項83に記載の抗体。
【請求項86】
前記ペプチドの生成のインヒビターを同定するために用いられる、請求項83に記載の抗体。
【請求項87】
軟骨分解を止めるように設計された治療に応答し、疾患の急速なもしくは緩慢な進行の危険性を有するか、または、疾患の臨床的な兆候に先立って初期の前臨床的変化を示す疾患の危険性を有する対象を同定するために用いられる、請求項83に記載の抗体。
【請求項88】
前記疾患が、変形性関節炎、リウマチ性関節炎、外傷後変形性関節炎、特発性変形性関節炎、および眼疾患からなる群から選択される、請求項87に記載の抗体。
【請求項89】
変形性関節炎、リウマチ性関節炎、外傷後変形性関節炎、特発性変形性関節炎、および眼疾患からなる群から選択される疾患を診断する方法であって、請求項87に記載の抗体をサンプルと接触させるステップを含む方法。
【請求項90】
組織抽出物、血清、滑液、および尿からなる群から選択される体液中のII型コラーゲン分解生成物の放出を検出するために用いられる、請求項83に記載の抗体。
【請求項91】
対象における軟骨細胞の肥厚を阻害する方法であって、医薬的に有効な量の請求項83に記載の抗体を前記対象に投与し、それにより前記肥厚が阻害されるステップを含む方法。
【請求項92】
コラーゲンの破壊を阻害することができる化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)インビトロで、前記被験化合物をコラーゲン含有抽出物と共にインキュベートするステップ、
(b)コラーゲンの分解を増加させることが公知である化合物を添加するステップ、および
(c)前記公知の化合物単独と比較して、コラーゲンの分解を低下させることができる前記化合物を選択するステップ
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5b】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2006−501302(P2006−501302A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−541865(P2004−541865)
【出願日】平成15年9月30日(2003.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2003/030744
【国際公開番号】WO2004/031206
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(505116378)シュライナーズ・ホスピタル・フォー・チルドレン (2)
【Fターム(参考)】