説明

コラーゲンペプチド含有組成物の製造方法および用途

【課題】コラーゲン、ゼラチンなどが加水分解され、消化性、吸収性が良く、飲食品などの種々の用途への利用に適したアミノ酸配列を有するコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法、およびその用途を提供する。
【解決手段】キウイフルーツとコラーゲンなどを混合して、コラーゲンなどをキウイフルーツ由来の酵素で処理することにより加水分解する工程と、前工程で得られた被処理液を加熱処理することにより前記酵素を失活する工程とを含み、少なくとも前記加水分解工程と酵素失活工程は不活性ガス下で行われることを特徴とする、コラーゲンペプチド含有組成物の製造方法。また、該製法で得られたコラーゲンペプチドを配合した飲食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲンペプチド含有組成物の製造方法および用途に関する。詳しくは、キウイフルーツ由来のタンパク質分解酵素によりコラーゲン、ゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドを加水分解して得られるコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚や腱などに存在するコラーゲンは、加齢とともに減少する。したがって、コラーゲンやゼラチンまたはそれらを分解して得られるコラーゲンペプチドを摂取して、コラーゲンの不足を補い、健康維持や老化防止を実現することの重要性が認識されてきている。実際に、コラーゲン、ゼラチンまたはコラーゲンペプチドの摂取を目的として、それらを添加した食品や化粧品が数多く提案されている。
しかし、コラーゲンやゼラチンについては、分子量や粘度が高く、飲食品などに利用した場合、消化性や吸収性が低く、食感も悪く、さらには、嚥下効果が少ない。そのため、最近では、コラーゲンやゼラチンを加水分解し、低分子量化したコラーゲンペプチドを用いることで、消化性、吸収性を向上させた商品が多く流通している。
【0003】
コラーゲンペプチドを用いれば、上述の通り、消化性、吸収性を向上させることができるのであるが、消化・吸収されたコラーゲンペプチドのうち、体内でのコラーゲン合成に寄与する量がわずかであれば、結局のところ効率的ではない。そこで、コラーゲンの合成を促進するものとして知られているビタミンC(アスコルビン酸)が注目されている。ビタミンCは、次のようにして体内でのコラーゲン合成に寄与するとされている。すなわち、まず、コラーゲン合成のためには、プロリン残基がヒドロキシル化される必要があるが、体内中のプロリン水酸化酵素が、この反応を触媒している。また、前記酵素は、体内において、α−ケトグルタル酸をコハク酸に変換する作用もあり、この反応によって酸化され、不活性化されてしまう。そして、ビタミンCは、この不活性化されたプロリン水酸化酵素を還元して活性型のプロリン水酸化酵素を再生させる働きをする。なお、この反応で、ビタミンCはデヒドロアスコルビン酸へと酸化される。このように、ビタミンCは、不活性化されたプロリン水酸化酵素を再び活性化させ、結果として、プロリン水酸化酵素によるコラーゲン合成を促進する機能を有することから、コラーゲンペプチドとビタミンCを共に含んだ健康食品または健康飲料が開発されている。例えば、平均分子量が1000〜10000である魚類由来のコラーゲンペプチドと、ビタミンCと、ビタミンB2とを有効成分として含む、美肌促進剤が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、ビタミンCを多く含有する植物としてキウイフルーツが知られているが、キウイフルーツには、タンパク質分解酵素も含まれており、この酵素によってコラーゲンやゼラチンを加水分解し、コラーゲンペプチドを得ることができる。このようにキウイフルーツのタンパク質分解酵素を用いた従来技術として、例えば、鳥類の皮膚を、キウイフルーツなどの植物由来プロテアーゼ含有酵素で反応させ、コラーゲン、ヒアルロン酸などの有用な美肌成分を含有する美肌組成物が知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−238365号公報
【特許文献2】特開平11−308977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの追試したところによると、前記特許文献2に記載されている、キウイフルーツ由来のタンパク質分解酵素でコラーゲンやゼラチンを加水分解する方法で得られるコラーゲンペプチド含有組成物は、従来一般に用いられていた動物や微生物由来のプロテアーゼなどの酵素によってコラーゲンやゼラチンを加水分解する方法で得られるものと比較して、アミノ酸配列が特徴的であり、食感や嚥下効果が良好となるなど、飲食品などに配合するのに非常に好適な材料となることが分かった。さらに、コラーゲンやゼラチンを動物や微生物由来のプロテアーゼなどの酵素によって加水分解したコラーゲンペプチドであっても、キウイフルーツ由来のタンパク質分解酵素を用いて、さらに加水分解処理すれば、飲食品などに配合するのに非常に好適な材料となることも分かった。
【0006】
ところで、前記特許文献2では、ビタミンCに関する記載はないが、前述したように、キウイフルーツにはビタミンCが多く含まれているため、前記製法で得られる組成物は、コラーゲンペプチドとビタミンCが共に含まれ、体内でのコラーゲン合成にも極めて有益な組成物となるのではないかと考えられた。
しかしながら、実際に、特許文献2の記載の方法で、キウイフルーツ由来のタンパク質分解酵素によってコラーゲンやゼラチンを加水分解してコラーゲンペプチド含有組成物を得る場合、その過程において、ビタミンCがいくらか失われてしまうことが分かった。
そこで、本発明の解決しようとする課題は、コラーゲン、ゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドが加水分解され、消化性、吸収性が良く、飲食品などの種々の用途に利用するのに適したアミノ酸配列を有するコラーゲンペプチド含有組成物を得るために、コラーゲン、ゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドをキウイフルーツ由来の酵素によって処理することにより加水分解するとともに、少なくとも前記加水分解工程と酵素失活工程において、ビタミンCの損失を抑制し、体内におけるビタミンCのコラーゲン合成能が良好に発揮される、コラーゲンペプチド含有組成物の製造方法および用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を行なった。その過程において、ビタミンCが、コラーゲンペプチド含有組成物を得る途中で酸化され、まず、L−デヒドロアスコルビン酸へと、さらに酸化が進んだ場合には、2,3−ジケト−L−グロン酸へと変換されてしまうことが分かった。上述の通り、ビタミンCは、体内でコラーゲン合成を促進する際において、還元剤として機能するものであることから、体内に摂取される前に酸化されてしまったのでは、その機能が損なわれてしまうことは明らかである。そして、更なる検討の結果、このようなビタミンCの酸化が、製造工程中、特に、加水分解工程と酵素失活工程における空気酸化によるものであることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明にかかるコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法は、キウイフルーツとコラーゲン、ゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドを混合して前記コラーゲン、ゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドをキウイフルーツ由来の酵素で処理することにより加水分解する工程と、前工程で得られた被処理液を加熱処理することにより前記酵素を失活する工程と、を含むコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法であって、少なくとも前記加水分解工程と酵素失活工程が不活性ガス下で行われる、ことを特徴とする。
本発明にかかる飲食品は、前記製造方法で得られるコラーゲンペプチド含有組成物を配合してなる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コラーゲン、ゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドが加水分解されているために、消化性、吸収性が良く、また、飲食品などの種々の用途に利用するのに適したアミノ酸配列を有するコラーゲンペプチド含有組成物を製造することができ、少なくとも前記加水分解工程と酵素失活工程が不活性ガス下で行なわれることにより、ビタミンCの空気酸化が抑制され、ビタミンCによる体内でのコラーゲンの合成能が良好に発揮される。また、キウイフルーツに含まれ、ビタミンCと同様に酸化され易い、クロロフィルa、クロロフィルb、カロチン、フラボノイド(ルチン、ケルセチン、タンニンなど)などについても、空気酸化を抑制することができる。さらに、キウイに含まれる酵素(アクチニジン)の活性中心をなすシステイン残基が酸化されて、該酵素の活性が劣化することを抑制することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明にかかるコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法および用途について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
本発明にかかる製法では、キウイフルーツとコラーゲン、ゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドが原料として用いられる。
原料の1つであるキウイフルーツは、別名オニマタタビ、チュウゴクサルナシ、シナサルナシとも呼称される、マタタビ科マタタビ属のつる性落葉果樹である。単にキウイと称される場合もある。ヘイワード、香緑、さぬきゴールド、ベビーキウイ、ブルーノ、アボットなどの多数の品種が存在するが、本発明で使用できるキウイフルーツは特に限定されず、いずれを用いても良い。
【0011】
キウイフルーツには、ビタミンCをはじめとするビタミン類が多く含まれ、また、クロロフィルa、クロロフィルb、カロチン、フラボノイド(ルチン、ケルセチン、タンニンなど)などや、クエン酸、食物繊維など、健康上極めて好ましい成分を多く含んでいる。また、コラーゲン、ゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドを適度に加水分解することのできるアクチナーゼと呼ばれるタンパク質分解酵素も含んでいる。
本発明では、このような栄養機能性に優れたキウイフルーツを用いるため、製造されるコラーゲンペプチド含有組成物も栄養機能性に優れたものとなるのである。キウイフルーツは、そのまま用いても良いし、さらに、加工して用いても良い。前記加工の方法としては、特に限定されないが、例えば、搾汁液としたものをグラスフィルターなどで濾過したりすることによって、果汁として使用しても良い。
【0012】
前記コラーゲンとしては、特に限定されず、例えば、牛や豚などの哺乳類由来のコラーゲン、サメなどの魚類由来のコラーゲン、鶏やダチョウなどの鳥類由来のコラーゲンなどが挙げられる。コラーゲンは、前記哺乳類、魚類、鳥類などの骨、皮、鱗などに多く含まれており、これらの各種材料に対して、脱脂・脱灰処理、抽出処理等の従来公知の処理を施すことによって得ることができる。
前記ゼラチンは、前記コラーゲンから従来公知の方法により得ることができる。具体的には、例えば、前処理を経た前記コラーゲンを熱水に浸漬し、抽出することにより得ることができる。
【0013】
前記コラーゲンペプチドは、従来公知のもので良く、特に限定するわけではないが、例えば、前記コラーゲンやゼラチンを、酸、アルカリ、酵素などで加水分解することによって得ることができる。
前記コラーゲン、ゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドをキウイフルーツと混合して、酵素処理を行なうことにより、キウイフルーツに含有されるタンパク質分解酵素アクチナーゼでコラーゲン、ゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドが加水分解され、コラーゲンペプチド含有組成物が得られる。
前記酵素処理は、特に限定するわけではないが、例えば、20〜70℃で酵素処理をするのが通常である。30〜70℃であれば、コラーゲン、ゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドが良好に加水分解されるため、より好ましい。さらに好ましくは45〜55℃である。
【0014】
加水分解反応の他の条件としては、特に限定するわけではないが、例えば、pH2.5〜8.0であることが好ましい。より好ましくはpH2.5〜5.5である。pHが2.5未満では、種々の用途に利用する際に、pHを再調整しなければならなくなるおそれがあり、8.0を超えると、ビタミンCが破壊されてしまうおそれがある。また、加水分解反応の時間として、例えば、1分〜200時間とすることができる。
加水分解処理後、通常行われるように、酵素を失活させる必要がある。具体的には、特に限定するわけではないが、例えば、70〜100℃で1秒〜3時間加熱することにより、酵素を失活させることができる。
【0015】
前記酵素失活処理を終えた段階では、コラーゲンペプチドは混合溶液中に溶解あるいは分散した状態である。前記溶液を、コラーゲンペプチド含有組成物として各種用途に用いる場合、溶液状または分散液状のまま用いても良いし、さらに濃縮もしくは希釈したものまたは乾燥して粉末状としたものを用いても良い。粉末状のコラーゲンペプチド含有組成物を得るための方法としては、特に限定するわけではないが、例えば、噴霧乾燥やドラムドライヤーなどを用いた乾燥などが採用できる。
本発明にかかる製法により得られるコラーゲンペプチド含有組成物は、主たる原料がコラーゲン、ゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチド、キウイフルーツという人体に害のない天然物であるため、前記した液状・粉末状のいずれの使用形態であっても、不純物の除去や精製処理といった後処理がほとんど必要なく、簡易に各種用途に利用できるのである。
【0016】
本発明にかかる製法により得られるコラーゲンペプチド含有組成物の用途としては、特に限定されないが、例えば、菓子類、飲料類、乳製品などの飲食品が挙げられる。具体的には、ガム、キャンディー、錠菓、チョコレート、ゼリー、焼き菓子、スナック、牛乳、プリン、ヨーグルト、アイスクリーム、乳酸菌飲料、アルコール飲料、ビタミン飲料、ミネラル飲料、ゼリー飲料、コーヒー飲料、ニアウオーター、栄養ドリンクなどが挙げられる。
前記コラーゲンペプチド含有組成物を用いて飲食品などを製造する場合、本発明の効果を害しない範囲で他の材料を用いることができる。そのような他の材料としては、限定するわけではないが、例えば、賦形剤(乳糖、コーンスターチ、デキストリンなど)、糖類(グラニュー糖、ソルビット、キシリトール、フルクトース、グルコース、蜂蜜など)、酸味料(クエン酸、酒石酸、リンゴ酸など)、酸化防止剤(ビタミンC、ビタミンCの誘導体、ビタミンEなど)、香料(タイム、ペパーミント、バニラエキス、ターメリック、バジル、セージなど)、着色剤などが挙げられる。
【0017】
本発明においては、上記の加水分解工程と酵素失活工程が不活性ガス下で行なわれる。不活性ガス下で行なうこととすれば、ビタミンCが空気酸化されることを防止できるため、体内でのコラーゲン合成能に優れるビタミンCの損失が抑制できるからである。また、キウイフルーツに含まれ、ビタミンCと同様に酸化され易い、クロロフィルa、クロロフィルb、カロチン、フラボノイド(ルチン、ケルセチン、タンニンなど)などについても、空気酸化を抑制することができる。さらに、キウイに含まれる酵素(アクチニジン)の活性中心をなすシステイン残基が酸化されて、該酵素の活性が劣化することを抑制することもできる。なお、前記加水分解工程、酵素失活工程以外でも、空気によってビタミンCや他の物質が酸化される可能性がある場合は、不活性ガス下で操作を行なうことが好ましい。具体的には、上記他の材料を用いる工程も不活性ガス下で行なうことが好ましく、全工程を不活性ガス下で行なうことがより好ましい。
【0018】
前記不活性ガスは、化学的に不活性な気体であり、ヘリウム、ネオン、アルゴンなどの希ガス類の他、例えば、窒素、二酸化炭素などの反応性に乏しい気体をも含む。
本発明にかかる製法により得られるコラーゲンペプチド含有組成物は、低粘度であるために、特に飲料に好ましく利用でき、この場合、例えば、飲料全量に対して、コラーゲンペプチド0.1〜50重量%、キウイ果汁0.1〜99重量%、糖類0〜30重量%、酸味料0〜30重量%の配合とすることができる。また、キウイ果汁濃度を0.1〜99.9重量%とすることができる。飲料は、コラーゲンペプチド含有組成物を粉末化してなる、粉末状飲料であってもよい。
【実施例】
【0019】
以下に、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。以下では、便宜上、「重量%」を単に「%」と、「重量部」を単に「部」と表記することがある。
実施例および比較例における、測定方法を以下に示す。
<粘度>
25℃における粘度をB型回転粘度計(TOKIMEC社製)により測定した。
<pH>
ペーハメータ(METTLER TOLEDO社製)により測定した。
【0020】
<ビタミンC含量>
測定試料に対して、沃化カリウム溶液を加え、0.1重量%N−ブロモスクシンイミド溶液で滴定することにより、定量した。指示薬として1重量%澱粉溶液を用いた。
〔実施例1〕
キウイフルーツ(品種「ヘイワード」)の皮を剥皮し、細かく裁断した後、さらにガーゼ4枚で搾汁液とした上でグラスフィルター(G3)により濾過してジュース状のキウイフルーツを得た。
これとは別に、魚由来のゼラチン(NORLAND社製)を用意し、水に分散させて、20重量%のゼラチン水溶液を調製した。
【0021】
前記ゼラチン水溶液50重量部に対して、前記ジュース状のキウイフルーツ50重量部を加え、撹拌混合することにより、混合溶液を得た。
前記混合溶液を、pH3.4、温度50℃の条件で3時間撹拌混合して、酵素処理することにより、加水分解反応を進行させた。
反応後、前記混合溶液を、85℃で30分加熱処理することにより、酵素を失活させ、コラーゲンペプチド含有組成物C1を得た。
コラーゲンペプチド含有組成物C1を得るための、上記全ての工程は、窒素ガス下で行なった。
【0022】
〔実施例2〕
魚由来のゼラチンを、魚由来のコラーゲンペプチド(NORLAND社製)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、全ての工程を窒素ガス下で行ない、コラーゲンペプチド含有組成物C2を得た。
〔実施例3〕
魚由来のゼラチンを、豚由来のゼラチン(VYSE社製)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、全ての工程を窒素ガス下で行ない、コラーゲンペプチド含有組成物C3を得た。
【0023】
〔実施例4〕
水酸化ナトリウム水溶液を用いて、前記酵素処理におけるpHを6.0に調整した点以外は、実施例1と同様にして、全ての工程を窒素ガス下で行ない、コラーゲンペプチド含有組成物C4を得た。
〔実施例5〕
水酸化ナトリウム水溶液を用いて、前記酵素処理におけるpHを8.5に調整した点以外は、実施例1と同様にして、全ての工程を窒素ガス下で行ない、コラーゲンペプチド含有組成物C5を得た。
【0024】
〔比較例1〕
全ての工程を不活性ガス下で行なわなかった点以外は、実施例1と同様にしてコラーゲンペプチド組成物C6を得た。
〔比較例2〕
水酸化ナトリウム水溶液を用いて、前記酵素処理におけるpHを8.5に調整した点以外は、比較例1と同様にしてコラーゲンペプチド含有組成物C7を得た。
〔コラーゲンペプチド含有組成物の評価〕
前記実施例1〜3および比較例1にかかるコラーゲンペプチド含有組成物の粘度とビタミンC含量を、上述の方法によって測定した。粘度については、各ゼラチンやコラーゲンペプチドがどの程度加水分解されたかを示すために、加水分解処理前後の粘度をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。ただし、実施例3の加水分解処理前の粘度については、高過ぎて測定することができなかった。
【0025】
【表1】

【0026】
同様にして、実施例4,5および比較例2にかかるコラーゲンペプチド含有組成物についても、その粘度とビタミンC含量を上述の方法によって測定した。結果を表2に示す。参考として、実施例1にかかるコラーゲンペプチド含有組成物の結果も併せて示す。
【0027】
【表2】

【0028】
<考察>
(1)表1から、窒素ガスの有無によって、ビタミンC含量が異なることが分かり、実施例1〜3のコラーゲンペプチド含有組成物C1〜3のほうが、比較例1のC6よりも、ビタミンC含量が多いことが分かる。
(2)さらに、表2から、ビタミンC含量が、pHによっても影響を受けることが分かる。具体的には、pH2.5〜8.0の範囲内にあるC1,C4のビタミンC含量が多く、pH2.5〜5.5の範囲内にあるC1のビタミンC含量が特に多いことが分かる。なお、実施例の中では、pH8.5であるC5が最もビタミンC含量が少ないものの、同一のpH条件で、窒素ガス下という条件を満たしていない点のみ異なる、比較例2のC7と比較した場合には、ビタミンC含量の減少が、より少なく、優位性が認められる。
【0029】
(3)酵素処理前後の粘度差が、実施例1のC1では13cpsであるのに対し、比較例1のC6では10cpsであり、C6の方が小さく(表1参照)、また、実施例5のC5では25cpsであるのに対し、比較例2のC7では7cpsであり、C7の方が小さいことが分かる(表2参照)。実施例1と比較例1、および、実施例5と比較例2では、全工程が窒素雰囲気下で行われたか否かについてのみ異なるものであり、この結果から、窒素雰囲気下では、酵素の活性劣化を抑制できるということが分かる。
〔飲料の製造〕
実施例1にかかるコラーゲンペプチド含有組成物を用いて表3に示す配合割合で各種材料を撹拌混合することにより、配合の異なる飲料1〜4を製造した。いずれの飲料についても、添加物を殆ど用いていないにもかかわらず、味や臭いが好ましいものであり、嚥下効果にも優れた良好な飲料であった。
【0030】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明にかかるコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法は、例えば、栄養吸収性が高く、食感、嚥下効果も良好な優れた飲料を得る方法として好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キウイフルーツとコラーゲン、ゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドを混合して前記コラーゲン、ゼラチンおよび/またはコラーゲンペプチドをキウイフルーツ由来の酵素で処理することにより加水分解する工程と、前工程で得られた被処理液を加熱処理することにより前記酵素を失活する工程と、を含むコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法であって、少なくとも前記加水分解工程と酵素失活工程が不活性ガス下で行われる、ことを特徴とする、コラーゲンペプチド含有組成物の製造方法。
【請求項2】
前記加水分解工程における酵素処理がpH2.5〜8.0で行われる、請求項1に記載のコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法。
【請求項3】
前記加水分解工程における酵素処理温度が30〜70℃である、請求項1または2に記載のコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法。
【請求項4】
前記酵素失活工程の後に、コラーゲンペプチド含有組成物を粉末状にするための粉末化工程も含む、請求項1から3までのいずれかに記載のコラーゲンペプチド含有組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれかに記載の方法で得られるコラーゲンペプチド含有組成物を配合してなる、飲食品。
【請求項6】
コラーゲンペプチドの含有量が0.1〜50重量%である、請求項5に記載の飲食品。
【請求項7】
キウイフルーツの果汁濃度が0.1〜99.9重量%である、請求項5または6に記載の飲食品。
【請求項8】
飲料である、請求項5から7までのいずれかに記載の飲食品。

【公開番号】特開2008−194010(P2008−194010A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35225(P2007−35225)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(593156924)日本酵研株式会社 (1)
【出願人】(503377799)有限会社バイオシステム研究所 (2)
【出願人】(507050643)
【Fターム(参考)】