コレジスタ・イメージングのための血管内超音波システム
遠位端を有する細長い本体と当該細長い本体に挿入されるべく構成されたイメージングコアとを備えるカテーテルを含む血管内超音波イメージングシステムである。イメージングコアは、超音波エネルギーパルスを送信するべく及び反射超音波エネルギーパルスを受信するべく構成される。本システムは、イメージングコアに結合されたイメージングエンジンであって、イメージングコアにエネルギーパルスを与えて当該イメージングコアに超音波エネルギーパルスを送信させるべく構成されたイメージングエンジンをさらに含む。エネルギーパルスは繰り返しシーケンスで構成され、各シーケンスのエネルギーパルスは異なる特徴を有する。反射パルスは、各異なる特徴に起因する画像の複合画像を与えるべく処理される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に血管内超音波(intravascular ultrasound(IVUS))イメージングに関する。本発明は詳しくはコレジスタ・イメージング(co−registered imaging)のためのIVUSシステムに関する。
【0002】
優先権の主張
本願は、2009年10月12日に出願された同時係属中の米国仮特許出願第61/250,781号の利益を主張する。また、本願は、2009年10月30日に出願された同時係属中の米国仮特許出願第61/256,543号の利益を主張する。上記出願双方の全体が本明細書に参照として組み入れられる
【0003】
血管内超音波イメージングは一般に、経皮的冠動脈インターベンション、典型的にはベアメタル又は薬剤溶出ステントの配置をガイド及びアセスメントをするべく行われる。IVUSイメージングの他の用途は、冠状動脈疾患のアセスメントもさらに含む。
【0004】
冠動脈ステントは一般に、ステンレス鋼又はコバルト・クロム合金のような金属製の支柱を有する。金属ステントの支柱は、ステントの支柱上に成長した新生組織のような血液及び軟部組織と比べてかなり大きな反射超音波信号を与える。新生組織の成長を検出かつ測定する能力は、ステント治癒プロセスを評価する目的にとって特に重要である。現在市販のIVUSシステムは、反射超音波信号の検出可能範囲が限られているため、初期の新生組織の成長を検知する能力も限られている。
【0005】
破裂しやすいアテローム性傷害、いわゆる不安定プラークは、インターベンション心臓病専門医の興味を引いている。プラーク破裂の大きなパーセンテージを占めると考えられている不安定プラークの一のタイプは薄膜線維性アテロームである。この場合、薄い(65μm未満の)線維性被膜が、機械的に不安定な脂質豊富又は壊死のコアの上に横たわる。現在市販のIVUSシステムは、40MHzまで動作するのみであって、距離分解能は約100μmに限られる。したがって、現在市販のIVUSシステムは不安定プラークを信頼性をもって検出することができない。
【0006】
一般に、空間分解能を向上させるべくイメージング周波数を増大させる必要がある。しかしながら、増大したイメージング周波数はまた、血液と非血液組織との低減したコントラストももたらす。これは、血液が充填された内腔を内膜プラークからセグメント化することを困難にする。例えば、特許文献1に記載のように、血液及び非血液組織の周波数依存超音波特性を利用する自動セグメント化アルゴリズムもある。実時間の自動セグメント化ツールは、臨床診療にてその有用性を減じるエラーを起こしがちであることが多い。
【0007】
経胸腔的心エコー用途を目的とする多周波数イメージングが開発されている。特許文献2は、異なるイメージング周波数及び帯域幅の2つのBモード画像を同時に表示するシステムを記載する。しかし、この技術は、基本波イメージング技術及び高調波イメージング技術の双方を使用し、組織の非線形伝搬特性に依存する。高調波イメージングは良好な空間分解能を潜在的に与えるが、近接場での高調波イメージングの性能は限られる。さらに、高調波IVUSイメージングは現実的に有用とは考えられていない。
【0008】
多周波数IVUSイメージングはまた、複数のトランスデューサ・イメージングカテーテルの使用によって達成することができる。しかし、複数のトランスデューサによれば、使い捨てイメージングカテーテル及びイメージングシステムに複雑性及びコストが加わることとなる。別個のトランスデューサからの画像をコレジストレーションする潜在的な必要性がその現実的な使用をさらに複雑にする。
【0009】
経皮的冠動脈インターベンションをガイドするのに十分なコントラスト分解能、並びにステント治癒及び不安定プラークを検出するのに十分なコントラスト及び空間分解能を与える技術が必要とされている。さらに、かかる技術では複数画像間のコレジストレーション・ステップが不要であることが望ましい。またさらに、かかる技術では、既存の商用システム及びカテーテルに対してシステム及びカテーテルの複雑性及びコストが実質的に上昇しないことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,876,343号明細書
【特許文献2】米国特許第6,139,501号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開明細書第2004/0199047(A1)号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開明細書第2001/0029336(A1)号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開明細書第2008/0200815(A1)号明細書
【発明の概要】
【0011】
本発明は、遠位端を有する細長い本体と当該細長い本体に挿入されるべく構成されたイメージングコアとを備えるカテーテルを含む血管内超音波イメージングシステムを与える。イメージングコアは、超音波エネルギーパルスを送信するべく及び反射超音波エネルギーパルスを受信するべく構成される。本システムは、イメージングコアに結合されたイメージングエンジンであって、イメージングコアにエネルギーパルスを与えて当該イメージングコアに超音波エネルギーパルスを送信させるべく構成されたイメージングエンジンをさらに含む。エネルギーパルスは繰り返しシーケンスで構成され、各シーケンスのエネルギーパルスは異なる特徴を有する。
【0012】
エネルギーパルスの各シーケンスは、少なくとも2つのパルス、例えば3つのパルスを含む。異なる特徴は、パルスエネルギー、周波数、又は帯域幅である。
【0013】
本イメージングエンジンは、反射超音波エネルギーパルスを画像フレームにおいて処理するプロセッサと、反射超音波エネルギーパルスの異なる特徴を検出する検出器とを含む。本イメージングエンジンは、検出された異なる特徴に応じて当該フレームを処理する。
【0014】
本イメージングエンジンは、共通の検出された特徴を有する反射超音波エネルギーパルスのみを処理するべく構成される。本イメージングエンジンはさらに、反射超音波エネルギーパルスのシーケンスの異なる特徴に基づいて複合画像を与えるべく構成される。
【0015】
本イメージングエンジンは、反射超音波エネルギーパルスを別個の画像フレームにおいて処理するプロセッサを含む。各画像フレームは、異なるエネルギーパルスの特徴のそれぞれに対応する。本イメージングエンジンは、別個の画像フレームを同時に表示するための表示信号を与える。
【0016】
本発明はさらに、遠位端を有する細長い本体と当該細長い本体に挿入されるべく構成されたイメージングコアとを備えるカテーテルを与えることを含む方法を与える。当該イメージングコアは、超音波エネルギーパルスを送信するべく及び反射超音波エネルギーパルスを受信するべく構成される。本方法はさらに、イメージングコアに超音波エネルギーパルスを送信させるべく当該イメージングコアにエネルギーパルスを与えるステップを含む。エネルギーパルスは繰り返しシーケンスで構成され、各シーケンスのエネルギーパルスは異なる特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
添付図面とともに以下の記載を参照することで、本発明のさらなる特徴及び利点とともに、本発明を最も良く理解することができる。いくつかの図面では、同じ参照番号が同じ要素を特定する。
【0018】
【図1】IVUSシステムのハイレベルブロック図である。
【図2a】コレジスタ・イメージング用IVUSシステムの信号処理経路の一のブロック図である。
【図2b】コレジスタ・イメージング用IVUSシステムの信号処理経路の他のブロック図である。
【図3】図3a及び3bはそれぞれ、短時間パルスの時間領域信号及びパワースペクトルを示す。
【図4a】広帯域パワースペクトルの一の通過帯域を示す。
【図4b】広帯域パワースペクトルの他の通過帯域を示す。
【図5a】イメージングエンジンの一のブロック図である。
【図5b】イメージングエンジンの他のブロック図である。
【図5c】イメージングエンジンのさらに他のブロック図である。
【図6】図6aから6dはそれぞれ、第1、第2、第3、及び第4の代表的な送信パルスシーケンスを示す。
【図7】コレジスタ・イメージング用IVUSシステムの信号処理経路のブロック図である。
【図8】統合後方散乱パラメータ計算用信号処理ステップのブロック図である。
【図9】複数のコレジストレーションされた画像を含む表示を示す。
【図10】図10a及び10bは、コレジストレーションされた画像間のフィーチャ・マッピングを示す。
【図11】IVUSシステムのハイレベルブロック図である。
【図12】さらなるイメージングエンジンのブロック図である。
【図13】デジタル信号処理エンジンのブロック図である。
【図14】デジタル信号処理エンジンのブロック図である。
【図15】デジタル信号処理エンジンのブロック図である。
【図16】デジタル信号処理エンジンのブロック図である。
【図17】デジタル信号処理エンジンのブロック図である。
【図18】コレジスタ・イメージング用IVUSシステムの信号処理経路のブロック図である。
【図19】狭窄した冠状動脈の断面図である。
【図20】インプラントされたステントを伴う冠状動脈の断面図である。
【図21】高送信エネルギーパルスを用いて得られたステント冠状動脈の横断面IVUS画像を示す。
【図22】高エネルギー、中間エネルギー、及び低エネルギーの繰り返し送信パルスシーケンスを示す。
【図23】中間送信エネルギーパルスを用いて得られたステント冠状動脈の横断面IVUS画像を示す。
【図24】低送信エネルギーパルスを用いて得られたステント冠状動脈の横断面IVUS画像を示す。
【図25】高送信エネルギーパルスを用いて得られたステント冠状動脈の、選択されたダイナミックレンジを伴う横断面IVUS画像を示す。
【図26】中間送信エネルギーパルスを用いて得られたステント冠状動脈の、選択されたダイナミックレンジを伴う横断面IVUS画像を示す。
【図27】低送信エネルギーパルスを用いて得られたステント冠状動脈の、選択されたダイナミックレンジを伴う横断面IVUS画像を示す。
【図28】ステント冠状動脈の高送信エネルギー横断面IVUS画像、ステント冠状動脈の中間送信エネルギー横断面IVUS画像、及びステント冠状動脈の低送信エネルギー横断面IVUS画像の複合画像を示す。
【図29】高送信エネルギーパルスシーケンス、中間送信エネルギーパルスシーケンス、及び低送信エネルギーパルスシーケンスによるイメージング用IVUSシステムの信号処理経路のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、IVUSシステムのハイレベルブロック図である。IVUSシステムは、IVUSイメージングカテーテル1000、患者インターフェイスモジュール2000、及びイメージングエンジン3100からなる。カテーテルは典型的には、大腿又は橈骨動脈逆行性経路を介して冠状動脈へ送達される。イメージングカテーテル1000は、患者インターフェイスモジュール2000に機械的かつ電気的に接続される。イメージングエンジン3100は、冠状動脈イメージングを目的として、患者インターフェイスモジュール2000及びカテーテル1000の動作を制御するべく用いられる。IVUSイメージングカテーテルについての以下の説明は、機械的に回転する画像コアの場合に関する。各IVUS画像は、所定数のベクトル(又はスキャンライン)及び一ベクトル当たりのサンプルを含む。最新の入手可能な市販IVUSシステムは一画像当たり256ベクトルを利用する。一ベクトル当たりのサンプル数は一般に、市販のIVUSシステムに対して約256サンプルから2048サンプルの間で変化し、イメージング周波数及びデータ形式(例えばRF又はベース帯域)に部分的に依存する。
【0020】
図2aは、コレジスタ・イメージング用IVUSシステムの信号処理経路の一実施例のブロック図である。ステップ102で波形が選択される。一般にはイメージングエンジン内で選択される。次に、ステップ104で送信パルサーにより送信波形が生成される。送信パルサーは一般に、患者インターフェイスモジュールに配置される。ステップ106で、送/受信(T/R)スイッチを介して超音波トランスデューサ1100へ送信波形が送られる。トランスデューサは、10MHzから80MHzの周波数範囲にわたって動作する。冠内イメージングに対しては一般に、20MHzから60MHzの間である。
【0021】
トランスデューサは、超音波圧力場1110を放射して冠状動脈に超音波を当てる。超音波エネルギーの中には後方散乱されてトランスデューサが受信するものもある。受信された超音波は、ステップ106でT/Rスイッチを通過し、ステップ108で回転結合器を通過する。回転結合器は、誘導型回転結合器又は液体金属回転結合器である。代替的には、回転結合器は例えば、2009年5月14日に出願された同時係属中の米国特許出願第12/465,853号に記載の回転容量結合器であってよい。この出願は、出願人がSilicon Valley Medical Instruments,Incであって、発明の名称が回転容量結合器を有するIVUSシステムであり、その全体が本明細書に参照として組み入れられる。回転結合器は、カテーテルの機械的に回転するイメージングコアと、患者インターフェイスモジュールの回転しないエレクトロニクスとのインターフェイスをなす。
【0022】
次に、受信された信号はステップ109でゲイン増幅器を通過し、ステップ110でハイパスフィルタを通過し、及びステップ112で時間ゲイン補正増幅器を通過する。時間ゲイン補正が与えられるのは、超音波信号の減衰が、当該信号が冠状動脈内にさらに伝搬するときに増大するからである。次に、ステップ114で信号はアンチエイリアシング・ローパスフィルタを介して送信された後、ステップ116でデジタル化される。
【0023】
次に、デジタル化された信号は、低周波数経路120及び高周波数経路130を含む多周波数技術によって処理される。低周波数及び高周波数処理の経路は同様の処理段を含む。当該処理段は、通過帯域、視野、及び信号対雑音比のようなイメージングパラメータに起因して異なり得る。
【0024】
図3及び4を参照すると、60%超過の比帯域幅を有する60MHzのIVUSイメージングトランスデューサの短時間パルスに対する時間領域応答202及びパワースペクトル204がそれぞれ図3a及び3bに示される。大きな比帯域幅、すなわちほぼ50%超過の比帯域幅を有するトランスデューサの使用は、本発明の一の重要な側面である。50%未満の比帯域幅を有するトランスデューサを使用することもできるが、かかるトランスデューサの使用は有用性が低減されて有効とならないことが予想される。本発明の他の重要な側面は、有用な帯域幅にわたり均一な高い感度を有するトランスデューサの使用である。選択された低周波数及び高周波数は、重なる帯域幅222、224又は重ならない帯域幅226、228を含む。それぞれ図4a及び4bに示されるように、通過帯域幅中心周波数F1、F2に対応する。重なる帯域幅を使用する潜在的な利益は、帯域幅が広いほど空間分解能が良好な画像が生成されることにある。本発明の一実施例では、低い通過帯域幅中心周波数F1が40MHz、高い通過帯域幅中心周波数F2が60MHzであり、低い通過帯域幅222が30MHzから50MHz、高い通過帯域幅224が45MHzから75MHzである。本発明の他実施例では、カテーテルは広帯域40MHzトランスデューサを含み、低い通過帯域中心周波数は30MHz、高い通過帯域中心周波数は50MHzである。本発明のさらなる他実施例では、カテーテルは広帯域35MHzトランスデューサを含み、低い通過帯域中心周波数は25MHz、高い通過帯域中心周波数は40MHzである。
【0025】
図2aを再び参照すると、ステップ122で低周波数経路デジタル化データの前処理が最初に行われる。業界で周知のとおり、前処理は一般に、バンドパスフィルタリング技術及びベクトル処理技術を含む。ステップ124で、前処理されたデータのエンベロープが検出されて、その後ステップ126で後処理される。後処理は一般に、視覚的にアピールしかつ有用な画像を生成するべく対数圧縮及びガンマ補正を含む。次にステップ128で、後処理されたデータは、極座標から直交座標にスキャン変換される。前処理、検出、後処理、及びスキャン変換は、医用超音波イメージングの当業者にとって周知の信号及び画像の処理技術である。
【0026】
高周波数経路デジタル化データも同様の手法で処理される。ステップ132で高周波数経路デジタル化データの前処理が最初に行われる。繰り返しになるが、前処理は一般に、バンドパスフィルタリング及びベクトル処理を含む。ステップ134で、前処理されたデータのエンベロープが検出されて、その後ステップ136で後処理される。後処理は一般に、視覚的にアピールしかつ有用な画像を生成するべく対数圧縮及びガンマ補正を含む。次にステップ138で、後処理されたデータは、極座標から直交座標にスキャン変換される。
【0027】
次にステップ150で、低周波数及び高周波数のスキャン変換画像152、154が同時に表示される。低周波数画像は血液と非血液組織との良好なコントラストを含み、内腔境界検出が容易となる。高周波数画像は、薄い線維性被膜のような傷害フィーチャの良好な空間分解能を含む。低周波数及び高周波数のスキャン変換画像152、154は、双方の画像を生成するべく同じ超音波データが使用されるので、コレジストレーションされる。
【0028】
図2aに示す信号処理経路は、多くの物理構成で実装することができる。本発明の一の重要な側面は、イメージングエンジンの物理構成にある。図5aは、イメージングエンジン3100の一実施例のためのブロック図である。イメージングエンジン3100は、シングルボード・コンピュータ3102、専用デジタル信号処理(DSP)モジュール3120、及びインターフェイスボード3180を含む。DSPモジュール3120は、患者インターフェイスモジュールに送信される送信波形3182を選択するべく用いられる。インターフェイスボード3180には、時間ゲイン補正増幅器3184及びアンチエイリアシング・ローパスフィルタ3186が配置される。DSPモジュール3120には、アナログデジタル変換器(又はデジタイザ)3128が配置される。DSPモジュール3120はさらに、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)3122を含む。図2aに示す低周波数信号及び高周波数信号処理経路120、130は一般にFPGAに実装される。本実施例の一の重要な側面は、コレジスタ・イメージングが、単一のアナログデジタル変換器及び単一のFPGAを含むイメージングエンジンによって行われることにある。
【0029】
図5bは、本発明のイメージングエンジンの他実施例のブロック図である。本イメージングエンジンは、第1DSPモジュール3120及び第2DSPモジュール3140を含み、単一のアナログデジタル変換器(又はデジタイザ)3128及び2つのFPGA3122、3142が利用可能である。一のFPGAを含む第2DSPモジュールの追加により計算処理パワーが増大するが、デバイスの複雑性及びコストが増大する。同じデジタル化データが双方のFPGAによって処理される。
【0030】
図5cは、本発明のイメージングエンジンのさらなる他実施例のブロック図である。本イメージングエンジンは、第1DSPモジュール3120及び第2DSPモジュール3140を含み、2つのアナログデジタル変換器(又はデジタイザ)3128、3148及び2つのFPGA3122、3142が利用可能である。サンプリングクロック3126が双方のデジタイザ3128、3148を同期させる。本実施例の2デジタイザ/2FPGAのイメージングエンジンはさらに、第2時間ゲイン補正増幅器3188及び第2アンチエイリアシング・ローパスフィルタ3190を含む。第2のデジタイザ3148、時間ゲイン補正増幅器3188、ローパスフィルタ3190の追加により計算処理のパワー及び柔軟性が増大するが、デバイスの複雑性が増大する。柔軟性が加わることで、異なる周波数帯域に起因する当該組織を介した超音波圧力波の異なる減衰に対して補正をすることができる。
【0031】
図2bは、図5cに示すイメージングエンジンの一実施例を含むコレジスタ・イメージング用IVUSシステムの信号処理経路の一実施例のブロック図である。当該組織から後方散乱された信号は、トランスデューサ1100により受信された後に、ステップ106で送/受信スイッチを通過し、ステップ108で回転結合器を通過し、ステップ109でゲイン増幅器を通過し、ステップ110でハイパスフィルタを通過する。ハイパスフィルタを通過した信号は次に、低周波数処理経路120A及び高周波数処理経路130Aを含む多周波数技術によって処理される。低周波数処理経路120A及び高周波数処理経路130Aは同様の処理段を含む。当該処理段は、通過帯域、視野、及び信号対雑音比のようなイメージングパラメータに起因して異なり得る。ステップ112で、低周波数経路信号に対して時間ゲイン補正が最初に適用される。時間ゲイン補正が与えられるのは、超音波信号の減衰が、当該信号が冠状動脈内にさらに伝搬するときに増大するからである。TGC増幅された低周波数経路信号は次に、ステップ114でアンチエイリアシング・ローパスフィルタを介して送信された後、ステップ116でアナログデジタル(A/D)変換(又はデジタル化)される。ステップ122で低周波数経路デジタル化データの前処理が最初に行われる。前処理は一般に、バンドパスフィルタリング技術及びベクトル処理技術を含む。ステップ124で、前処理されたデータのエンベロープが検出されて、その後ステップ126で後処理される。後処理は一般に、視覚的にアピールしかつ有用な画像を生成するべく対数圧縮及びガンマ補正を含む。次にステップ128で、後処理されたデータは、極座標から直交座標にスキャン変換される。
【0032】
高周波数経路130Aの信号も同様の手法で処理される。ステップ110でのハイパスフィルタリングの後にまず、ステップ112Aで時間ゲイン補正が、ステップ114Aでアンチエイリアシング・ローパスフィルタが、ステップ116AでA/D変換が行われる。次にステップ132で、高周波数デジタル化されたデータが前処理される。前処理は一般に、バンドパスフィルタリング技術及びベクトル処理技術を含む。ステップ134で、前処理されたデータのエンベロープが検出されて、その後ステップ136で後処理される。後処理は一般に、視覚的にアピールしかつ有用な画像を生成するべく対数圧縮及びガンマ補正を含む。次にステップ138で、後処理されたデータは、極座標から直交座標にスキャン変換される。次にステップ150で、低周波数及び高周波数のスキャン変換画像152、154が同時に表示される。図2bに示す信号処理経路の実施例において、多周波数信号処理経路はステップ110でのハイパスフィルタリングの後にスプリットされるのに対し、図2aに示す信号処理経路の実施例においては、多周波数信号処理経路はステップ116でのA/D変換の後にスプリットされる。ハイパスフィルタリングの後の多周波数信号処理経路のスプリットにより、異なるイメージング周波数に適した時間ゲイン補正を行うことができる。
【0033】
ここで図6a−6dを参照すると、一連のイメージング波形シーケンスが示されている。図6aは、単一のパルスシーケンス10がIVUS画像の各ベクトルに対して同じ波形Xcを送ることを含む一実施例を示す。図6bは、低周波数波形X1及び高周波数波形X2が交互となるパルスシーケンス20を含む他実施例を示す。単一パルスシーケンスに対する交互パルスシーケンスの潜在的利点は、送信されるエネルギーを、多周波数処理の選択された通過帯域に対して増大又は減少できることにある。送信エネルギーを調整できる能力は、同時に表示されるコレジストレーション画像の画質にとって有利である。図6cは、イメージング波形Xi及びパラメータイメージング波形Xpが交互となるパルスシーケンス30を含むさらなる他実施例を示す。イメージング波形Xiは、Xc、X1、又はX2波形を含む。パラメータイメージング波形Xpは、統合後方散乱、減衰、ひずみ、及びモーションを含む少なくとも一の超音波組織分類パラメータの解析を最適化するべく選択される。狭帯域波形の使用は、相関に基づく又はドップラーに基づくモーション解析にとって有利である。図6dは、イメージング波形Xi及びパラメータイメージング波形Xpが交互となるパルスシーケンス40を含むなおさらなる他実施例を示す。ここでは、複数のパラメータイメージング波形Xpがイメージング波形Xiの間に送信される。繰り返されるパルスの使用は、信号対雑音条件にとってさらに有利である。
【0034】
したがって、上述からわかるように及び本発明の複数の側面によれば、イメージングコアに結合されたイメージングエンジンは、イメージングコアにエネルギーパルスを与えて当該イメージングコアに超音波エネルギーパルスを送信させるべく構成される。エネルギーパルスは繰り返しシーケンスで構成され、各シーケンスのエネルギーパルスは異なる特徴を有する。例えば、エネルギーパルスの各シーケンスは少なくとも2つのパルスを含む。また、異なる特徴はパルスエネルギーである。
【0035】
図7は、コレジスタ・イメージング用IVUSシステムの信号処理経路の一実施例のブロック図を示す。ここでは、コレジストレーション画像がグレースケール画像182及びパラメータ画像184を含む。パラメータ画像184は、多重パラメータ画像を含む。ステップ102で選択されてイメージングエンジンから送られた送信波形は、図6a及び6cに示す単一パルスシーケンス10並びにイメージング及びパラメータイメージングパルスシーケンス30を含む。デジタル化ステップ116への信号処理経路は、図2aに示した多周波数イメージングのための信号処理経路と同様である。
【0036】
次に、デジタル化された信号は、グレースケールイメージング経路160及びパラメータイメージング経路170によって処理される。まずステップ162で、グレースケールイメージング経路のデジタル化データが前処理される。前処理は一般に、バンドパスフィルタリング技術及びベクトル処理技術を含む。ステップ164で、前処理されたデータのエンベロープが検出されて、その後ステップ166で後処理される。後処理は一般に、視覚的にアピールしかつ有用な画像を生成するべく対数圧縮及びガンマ補正を含む。次にステップ168で、後処理されたデータは、極座標から直交座標にスキャン変換される。
【0037】
パラメータイメージング経路170の処理段は、前処理ステップ172、パラメータ解析ステップ174、後処理ステップ176、及びスキャン変換ステップ178を含む。各パラメータイメージング処理ステップの具体的詳細は、当該計算対象の少なくとも一のパラメータによる。
【0038】
本発明の一実施例では、統合後方散乱のパラメータ画像が生成される。統合後方散乱前処理ステップ172は、バンドパスフィルタリング及びベクトル処理技術を含む。フィルタ通過帯域は、トランスデューサの−3dB帯域幅から決定される。ステップ174での統合後方散乱パラメータ解析は、スライディング窓技術を含む。スライディング窓技術は、超音波組織性状の当業者にとって周知である。
【0039】
ここで図8を参照すると、ブロック図に、スライディング窓技術を用いた統合後方散乱パラメータの計算のための信号処理段の一実施例が示される。まずステップ502で、前処理されたデータ500の関心領域(ROI)が選択される。ROIの各ベクトルに対してハミング窓又はハン窓のような時間領域窓が適用されて、周波数分解能の低減という犠牲のもとで高速フーリエ変換(FFT)スペクトル解析におけるエッジ不連続性が最小化される。ROIは、所定数のベクトル及びベクトルサンプルを含む。ベクトル及びベクトルサンプルの数は、ベクトル密度、サンプルレート、最適ROIサイズ、及び信号対雑音の測定基準(metrics)を含む詳細に依存する。
【0040】
本発明の一実施例においてシステムは、一IVUS画像当たり1024ベクトルのベクトル密度及び400×106サンプル/秒のサンプルレートを与える。最適ROIサイズは、ROIの最小径方向範囲を最大信号対雑音比と均衡させる。当該径方向範囲と比較可能なROIの側方向範囲により、その後のパラメータ画像解析を容易にすることができる。複数のベクトルによっても信号平均化が可能となる。さらに、選択されたROIサイズはレンジ依存である。物理ベクトルの間隔がレンジに伴い増大するからである。1.5mmのレンジにおける7ベクトル及び32サンプルのROIサイズにより、約60μm×60μmであるROIが得られる。このサイズは、薄い線維性被膜のような小型アテローム性傷害フィーチャにとって適切である。
【0041】
ステップ504でROIに対して平均パワースペクトルが計算される。これは、各ベクトルのパワースペクトルを計算した後に平均化することにより行われる。パワースペクトルは一般に、FFT技術を用いて計算される。平均化は一般に、対数(dB)領域で行われるが線形領域で行われてもよい。次にステップ506で、平均パワースペクトルついて、レンジ依存感度及び周波数依存トランスデューサ感度を含むシステム及びトランスデューサの影響が補正される。ステップ508で統合後方散乱パラメータが計算される。これは、選択された帯域幅の補正された平均パワースペクトル値を加算し、かつ、上記選択された帯域幅で除算することによって行われる。複数の付加的ROIが選択される。これは、前処理されたデータ500又は当該前処理されたデータの所定サブセットにわたり窓(又はROI)をスライドさせることによって行われる。ROIの重なり度合いは、重なりを最大化することによるパラメータ画像のスムージングと、重なりを最小化することによる計算コストとを均衡させるべく選択される。7ベクトル×32サンプルのROIサイズに対しては、スライディング窓の重なりは一般に、ベクトルに沿って16サンプル(又は50%)から24サンプル(又は75%)の間、及びベクトルを横切って4ベクトル(又は約50%)から6ベクトル(又は85%)の間を含む。解析すべきROIがもはや残っていない場合に統合後方散乱パラメータデータが後処理ステップ176(図7)に送られる。
【0042】
ステップ176の統合後方散乱画像の後処理は、しきい値処理及びガンマ補正を含む。本発明の一実施例では、統合後方散乱画像がしきい値処理されて、比較的低い統合後方散乱値を有するものとして知られる脂質豊富ROIが表示される。代替実施例では、統合後方散乱画像は、複数の組織タイプを区別するべく多レベルにてしきい値処理される。次にステップ178で、後処理統合後方散乱画像はスキャン変換される。
【0043】
次にステップ180で、スキャン変換されたグレースケール画像及びスキャン変換された統合後方散乱パラメータ画像が同時に表示される。グレースケール画像は良好な構造詳細を与える。統合後方散乱パラメータ画像は良好なプラーク組成詳細を与える。さらに、グレースケール及び統合後方散乱パラメータ画像182、184はコレジストレーションされる。同じ超音波データが双方の画像を生成するべく使用されるからである。
【0044】
図9は、4つのコレジストレーション画像192、194、196、198を含む表示190である。4つのコレジストレーション画像は、少なくとも一のグレースケール画像及び少なくとも一のパラメータ画像を含む。本発明の一実施例では、表示は、40MHzグレースケール画像、60MHzグレースケール画像、及び統合後方散乱パラメータ画像を含む。
【0045】
本発明により、コレジストレーション画像間の画像フィーチャのマッピングが容易となる。低い超音波周波数のIVUS画像が一般に血液と非血液組織との良好なコントラストを与える一方、高い超音波周波数のIVUS画像は一般にアテローム性傷害の良好な空間分解能を与える。図10aは、低周波数の第1IVUS画像300及び高周波数の第2IVUS画像を示す。カテーテルマスク302、322は、冠状動脈セクションに関するカテーテル位置を表す。第1画像300にて特定されるルーメン輪郭308は、第2画像320にて特定される内腔輪郭328に対してマッピング312される。内腔輪郭は、血液304と非血液組織とを区分する。第1画像300にて特定される血管輪郭310は、第2画像320にて特定される血管輪郭330に対してマッピング314される。内腔輪郭及び血管輪郭308、310は、アテローム性プラーク306と他組織とを区分する。高周波数IVUS画像のマッピングされた輪郭328、330によって、アテローム性プラークをさらに処理することができる。
【0046】
図10bは、第1画像340における顕著なフィーチャを第2画像360にマッピングすること、及び上記第2画像360における顕著なフィーチャを第1画像340にマッピングすることを示す。第1画像はグレースケール画像を含み、第2画像はパラメータ画像を含む。第1画像340の内腔輪郭348が第2画像360の内腔輪郭368にマッピング352される。第2画像360の血管輪郭370及びROI372はそれぞれ、第1画像340の第2血管輪郭350及び第2ROI352にマッピング374、376される。
【0047】
本発明は、最小限のデバイス複雑性で最適なイメージング性能及び計算効率を与えることが望ましい。図11は、コレジスタ・イメージング用IVUSシステムの一実施例のハイレベルブロック図を示す。コレジスタ・イメージング用IVUSシステムについての以下の説明は、2つのコレジストレーションされたグレースケール画像を表示するIVUSシステムの場合に関する。IVUSシステムは、2つの画像3802、3803、イメージングエンジン3804、患者インターフェイスモジュール(PIM)2000、及びIVUSイメージングカテーテル1000を含む。IVUSイメージングカテーテル1000についての以下の説明は、機械的に回転する画像コアの場合に関する。イメージングエンジン3804は、ディスプレイエンジン3806、DSPエンジン3808、送信(Tx)ロジック3810、送信バッファ3812、受信(Rx)信号処理段3814、及びアナログデジタル変換器(ADC)3816を含む。
【0048】
DSPエンジン3808は、実時間の同時コレジスタ・イメージングのための計算パワーを与える。DSPエンジン3808は、アナログ送信パルスシーケンスを生成する送信ロジック3810に制御信号を送る。送信パルスが送信バッファ3812を通過した後にPIM2000へ向かう。PIM2000は、カテーテル1000とイメージングエンジン3804とのインターフェイスである。PIM2000は、トランスデューサ励起エネルギーを送信し、トランスデューサ信号の戻りを受信し、及び信号の戻りをイメージングエンジン3804に送信する。戻り信号は受信信号処理段3814及びアナログデジタル変換器3816を通過する。次に、デジタル化された戻り信号はDSPエンジン3808にて処理される。画像データがディスプレイエンジン3806に送られて、コレジストレーション画像3802、3803の実時間の同時表示のためにストリーミングされる。
【0049】
図12は、イメージングエンジン3100の物理構成の一実施例を示す。イメージングエンジン3100は、画像生成、表示、及びシステム全体の制御のすべてを行う。イメージングエンジン3100は、汎用処理ユニット3500、DSPモジュール3600、及びインターフェイスボード3700を含む。
【0050】
汎用処理ユニット3500は、中央処理ユニット(CPU)3502、メモリコントローラ3504、動的ランダムアクセスメモリ(DRAM)3506、デジタルバスインターフェイス3508、及び周辺機器コントローラ3510を含む。DSPモジュール3600は、DSPエンジン3610、送信ロジック回路3612、デジタルアナログ変換器(DAC)3620、アナログデジタル変換器(ADC)3630、及びサンプリングクロック3640を含む。高速デジタルバス3512がデジタルバスインターフェイス3508とDSPエンジン3610とを接続する。インターフェイスボード3700は、送信バッファ3702、時間ゲイン補正(TGC)増幅器3704、及びアンチエイリアシング・ローパスフィルタ(LPF)3706を含む。
【0051】
DSPエンジン3610は、アナログ送信信号を送信バッファ3702に送るべく送信ロジック回路3612を制御する。アナログ送信信号は、少なくとも一の矩形パルスを含むパルスを含む。アナログ送信信号がインターフェイスボード3700からPIMに送られる。DSPエンジン3610はさらに、デジタルTGC信号を生成する。デジタルTGC信号は、DAC3620によってアナログTGC信号に変換される。アナログTGC信号は、PIMから受信した信号に適用されるTGC増幅3704のレベルを与える。ローパスフィルタ3706は、TGC増幅された信号のエイリアシングを最小化する。
【0052】
アンチエイリアシングされたTGC増幅戻り信号は、デジタル化された後に、コレジスタ・イメージングを目的としてDSPエンジン3610によって処理される。サンプリングクロック3640は、ADC(又はデジタイザ)3630とDSPエンジン3610とを同期させる。コレジストレーション画像が、画像表示を目的としてDSPエンジン3610から汎用処理ユニット3500までストリーミングされる。
【0053】
ここで図13−17を参照すると、DSPエンジン3610は異なる形態の複数の信号プロセッサを含む。図13−15は、DSPエンジン3610の図を示す。DSPエンジン3610は、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)3902、DSPチップ3904及びランダムアクセスメモリ(RAM)3906、又は特定用途向け集積回路(ASIC)3908を含む。DSPエンジンはさらに、複数の信号プロセッサを含む。図16は、第1FPGA3910及び第2FPGA3912を含むDSPエンジン3610の図を示す。図17は、CPU及びRAMモジュールの超並列プロセッサアレイ(MPPA)3914を含むDSPエンジン3610の図を示す。最もコスト効果が高く計算効率が良好な信号プロセッサは、具体的な用途に依存する。IVUSイメージングシステムには通常、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイが用いられる。
【0054】
図18は、コレジスタ多周波数イメージングのための信号処理経路を示す。これは、コレジストレーションされたグレースケールイメージング性能を最適化する一方でデバイスのコスト及び複雑性を最小化する。以下の説明は、図6bに示す交互送信パルスシーケンス20の場合に関する。ここで、第1パルスシーケンスX1は低いイメージング周波数を有し、X2は高いイメージング周波数を有する。図6aに示す単一パルスシーケンス10に対する交互パルスシーケンス20の潜在的利点は、多周波数処理の選択された通過帯域に対して送信エネルギーを増減できることにある。送信エネルギーを調整できる能力は、同時表示されるコレジストレーション画像の画質にとって有利である。
【0055】
ステップ300で、受信された信号がアナログからデジタル(A/D)に変換される。ステップ302で、デジタル化された信号が前処理される。ここで、前処理は一般にバンドパスフィルタリング技術及びベクトル処理技術を含む。前処理の具体的な形態は、送信信号がX1パルスであるか又はX2パルスであるかに依存する。デジタルマルチプレクサ330が、第1セットの前処理係数332及び第2セットの前処理係数334を受ける。前処理係数は、バンドパスフィルタリングのためのフィルタ係数を含む。ベクトル処理制御320が、どのセットの前処理係数を前処理に用いるべきかを決定する。ステップ304で、前処理された信号のエンベロープが検出される。ベクトル処理制御320は、デジタルマルチプレクサ340が検出処理のために第1セットの検出係数342又は第2セットの検出係数344を選択するかを決定する。次にステップ306で、検出された信号は後処理される。ここで、後処理は一般に、視覚的にアピールしかつ有用な画像を生成するべく対数圧縮及びガンマ補正を含む。次にステップ308で、後処理された信号は、極座標から直交座標にスキャン変換される。
【0056】
次にステップ310で、低周波数及び高周波数のスキャン変換画像312、314が同時に表示される。低周波数画像は血液と非血液組織との良好なコントラストを与え、内腔境界検出が容易となる。高周波数画像は、薄い線維性被膜のような傷害フィーチャの良好な空間分解能を与える。低周波数及び高周波数のスキャン変換画像312、314は、双方の画像データセットが交互送信パルスシーケンスを用いるときに実質的に同時に取得されるので、コレジストレーションされる。
【0057】
他実施例では、交互送信パルスシーケンスは交互のパルス群を含む。パルスシーケンスは、X1及びX2パルスシーケンスの交互の群を含む。ここで、X1及びX2パルスの群はそれぞれ少なくとも2つのパルスを含む。X1画像の取得とX2画像の取得との間の時間遅延は大きくなるが、X1パルスシーケンスとX2パルスシーケンスとの間の変更が少ないという利点がある。
【0058】
図18に示す信号処理経路の利点は、必要なデジタイザが一つのみであることにある。さらに、デジタル信号処理が単一のFPGAにて行われる。なおもさらに、多周波数処理を信号処理段の重複なしで行うことができる。
【0059】
本発明の一の重要な側面は、イメージングエンジン、患者インターフェイスモジュール、及びIVUSカテーテルを含むコレジスタ・イメージング用IVUSシステムを用いることにある。イメージングエンジンは、汎用処理ユニット、DSPモジュール、及びインターフェイスボードを含む。DSPモジュールは、アナログデジタル変換器及びDSPエンジンを含む。DSPエンジンは、FPGA、DSPチップ、又はASICを含む。DSPエンジンは代替的に、複数のFPGAか、又はCPU及びRAMモジュールの超並列処理アレイを含む。本発明の他の重要な側面は、高感度の広帯域(50%超過の比帯域幅)の超音波トランスデューサを含むIVUSカテーテルを用いることにある。ここで、グレースケール画像を生成するべく低い通過帯域及び高い通過帯域の双方を用いることができる。低い通過帯域及び高い通過帯域の中心周波数はそれぞれ、40MHz及び60MHz、30MHz及び50MHz、25MHz及び40MHz、並びに異なる周波数間隔の他の組み合わせを含む。本発明のさらに他の重要な側面は、プログラマブル送信パルスシーケンスを用いることにある。送信パルスシーケンスは、単一パルスイメージングシーケンス及び低周波数・高周波数交互のイメージングシーケンス、又はイメージング・パラメータ交互のイメージングシーケンスを含む。本発明のなおもさらに他の重要な側面は、少なくとも一のグレースケール画像を含む少なくとも2つのコレジストレーション画像を表示することにある。コレジストレーション画像はさらに、少なくとも一のパラメータ画像を含む。本発明の一のさらに重要な側面は、コレジストレーション画像間の画像フィーチャをマッピングすることにある。ここで、画像フィーチャは輪郭及び関心領域を含む。
【0060】
インプラントされたステントを有する冠状動脈のイメージングを目的として改善されたコントラスト分解能を与えることも望ましい。ステント治癒、又は冠動脈ステント支柱上の新生組織成長を検出及び測定できる能力に特に関連する。図19は、狭窄冠状動脈400の断面図を概略的に示す。冠状動脈は、血液が充填された内腔402、内膜プラーク層404、中膜層406、及び外膜層408を含む。内腔は一般に、4mm2未満の断面積を有する。図20は、ステントをインプラントした後の、図19と同じ冠状動脈400を概略的に示す。ステント支柱410が、内腔・プラーク境界の近傍に配置される。ステントは、動脈を通る改善された血液の流れを可能とするべく内腔断面積を増大させる。
【0061】
図21は、一般に50Vを超える振幅を有する高送信エネルギーパルスにより取得されたステント冠状動脈の横断面IVUS画像420を示す。横断面IVUS画像420は、冠状動脈に対するIVUSカテーテルの位置を示すカテーテルマスク422を含む。IVUS画像420はさらに、血液が充填された内腔424、新生組織成長426、内膜プラーク層428、中膜層430、及び外膜層432からの超音波反射を示す。新生組織成長426はステント治癒プロセスに起因する。薬剤溶出ステントの覆われていない支柱は、後のステント血栓症という不都合な事象の一要因と考えられる。横断面IVUS画像420はまたさらに、いわゆるステント・ブルーミング・アーチファクト436のみならず、ステント支柱434からのかなり強い超音波反射も含む。ステント・ブルーミング・アーチファクトは、IVUSシステムの一部である受信側エレクトロニクスの飽和に起因し得る。ステント支柱434のカテーテルマスク422から離れた側に特徴的に見られる。ステント反射434とステント・ブルーミング・アーチファクト436との結合厚さは一般に、ステント支柱の物理厚さよりもかなり大きく、約100ミクロン以下である。ステント・ブルーミング・アーチファクト436は画質を劣化させる。
【0062】
ステント・ブルーミング・アーチファクトは、送信パルスのエネルギーをIVUSシステムの受信側エレクトロニクスの飽和回避に十分なだけ低減することにより防止することができる。本発明の一実施例では、高送信エネルギーパルス、中送信エネルギーパルス、及び低送信エネルギーパルスを含む3パルスのシーケンスが用いられて新生組織成長が可視化され、冠状動脈内への十分な超音波エネルギーの浸透が与えられ、及びステント・ブルーミング・アーチファクトが防止される。図22は、高エネルギー送信パルスXH、中間エネルギー送信パルスXM、及び低エネルギー送信パルスXLの繰り返しパルスシーケンス22を示す。
【0063】
図21に示す横断面IVUS画像420は、高送信エネルギーパルスによって取得され、新生組織成長の可視化及び中膜層430を超える浸透が可能となる。図23は、図21に示すのと同じステント冠状動脈の横断面IVUS画像440を示すが、高送信エネルギーパルスの振幅よりも小さい振幅の中間送信エネルギーパルスによって取得される。横断面IVUS画像440は、冠状動脈に対するIVUSカテーテルの位置を示すカテーテルマスク422を含む。IVUS画像440はさらに、血液が充填された内腔424、新生組織成長426、及び内膜プラーク層428からの超音波反射を示す。横断面IVUS画像440はまたさらに、ステント支柱442からの超音波反射及びステント・ブルーミング・アーチファクト444も含む。
【0064】
図24は、図21に示すのと同じステント冠状動脈の横断面IVUS画像450を示すが、高送信エネルギーパルスの振幅よりも小さい振幅の低送信エネルギーパルスによって取得される。横断面IVUS画像450は、冠状動脈に対するIVUSカテーテルの位置を示すカテーテルマスク422を含む。IVUS画像440はさらに、新生組織成長426からの超音波反射及び内膜プラーク層428の複数部分を示す。横断面IVUS画像440はまたさらに、ステント支柱454からの超音波反射も含む。パルスの低送信エネルギーレベルゆえに、ステント・ブルーミング・アーチファクトも、中膜層及び外膜層のような冠状動脈の離れた部分も可視化されていない。パルスの低送信エネルギーレベルは、血液が充填された内腔からのわずかな超音波反射を検出かつ可視化する能力を低下させる。
【0065】
高送信エネルギーパルス、中送信エネルギーパルス、及び低送信エネルギーパルスの繰り返しシーケンスを用いて、高送信エネルギーIVUS画像、中間送信エネルギーIVUS画像、及び低送信エネルギーIVUS画像をコレジストレーションすることができる。ここで図25を参照すると、高送信エネルギーIVUS画像460がさらに処理されて、中膜層430及び外膜432のような、高送信エネルギーパルスによって可視化される深い組織を含むことができる。ここで図26を参照すると、中間送信エネルギーIVUS画像470がさらに処理されて、当該画像から除去されたステント及びステント・ブルーミング・アーチファクトを含む画像部分472を有することができる。ここで図27を参照すると、低送信エネルギーIVUS画像480がさらに処理されて、新生組織成長426及び画像部分454、472のみを含むことができる。画像部分454、472は、ステント及びステント・ブルーミング・アーチファクト472を含む中間送信エネルギーIVUS画像470の画像部分に位置する。ここで図28を参照すると、さらに処理された高送信エネルギーIVUS画像460、さらに処理された中間送信エネルギーIVUS画像470、及びさらに処理された低送信エネルギーIVUS画像480を組み合わせて複合画像490にすることができる。複合画像490では、ステント支柱454上の新生組織成長426が可視化され、中膜層430を超えかつ含む組織が可視化され、及びステント・ブルーミング・アーチファクトが回避される。
【0066】
図29は、高送信、中間送信、及び低送信エネルギーパルスを用いて取得された画像から複合画像を生成する信号処理経路の一実施例を示す。以下の説明は、図22に示す送信パルスシーケンス22の場合に関する。ここで、第1パルスXHは高送信エネルギーを有し、第2パルスXMは中間送信エネルギーを有し、及び第3パルスXLは低送信エネルギーを有する。
【0067】
ステップ550で、一般にイメージングエンジン内に格納される高送信エネルギー、中間送信エネルギー、又は低送信エネルギー波形が選択される。次にステップ552で、送信波形が送信パルサーによって生成される。ステップ554で、送/受信(T/R)スイッチを介して超音波トランスデューサ1100へ送信波形が送られる。トランスデューサは、10MHzから80MHzの周波数範囲にわたって動作する。冠内イメージングに対しては一般に、20MHzから60MHzの間である。
【0068】
トランスデューサは、超音波圧力場1110を放射して冠状動脈に超音波を当てる。超音波エネルギーの中には後方散乱されてトランスデューサが受信するものもある。受信された超音波は、ステップ554でT/Rスイッチを通過し、ステップ556で回転結合器を通過する。回転結合器は、誘導型回転結合器又は液体金属回転結合器である。回転結合器は、カテーテルの機械的に回転するイメージングコアと、患者インターフェイスモジュールの回転しないエレクトロニクスとのインターフェイスをなす。
【0069】
次にステップ558で、受信された信号にゲインが適用される。次にステップ560で、増幅された信号にハイパスフィルタが適用される。ステップ562で、ハイパスフィルタが適用された信号に時変ゲインが適用される。時間ゲイン補正が与えられるのは、超音波信号の減衰が、当該信号が冠状動脈内にさらに伝搬するときに増大するからである。次にステップ564で、当該信号にアンチエイリアシングローパスフィルタが適用された後に、ステップ566で当該信号がデジタル化される。
【0070】
ステップ568で、デジタル化された信号が前処理される。ここで、前処理は一般にバンドパスフィルタリング技術及びベクトル処理技術を含む。前処理の具体的な形態は、送信信号が高送信エネルギーパルスXHであるか又は低送信エネルギーパルスXLであるかに依存する。デジタルマルチプレクサ584が、第1セットの前処理係数PH584、第2セットの前処理係数PM585、及び第3セットの前処理係数PL586を受ける。前処理係数は、バンドパスフィルタリングのためのフィルタ係数を含む。ベクトル処理制御580が、どのセットの前処理係数を前処理に用いるべきかを決定する。ステップ570で、前処理された信号のエンベロープが検出される。ベクトル処理制御580は、デジタルマルチプレクサ588が検出処理のために第1セットの検出係数DH590、第2セットの検出係数DM585、又は第3セットの検出係数DL592を選択するかを決定する。次にステップ572で、検出された信号は後処理される。ここで、後処理は一般に、視覚的にアピールしかつ有用な画像を生成するべく対数圧縮及びガンマ補正を含む。
【0071】
次にステップ574で、後処理された信号は、極座標から直交座標にスキャン変換される。次にステップ576で、高送信エネルギー、中間送信エネルギー、及び低送信エネルギーのスキャン変換画像が一の複合画像に結合される。当該3つの画像の単一複合画像への結合又は融合は、各画像ごとのダイナミックレンジの一部を選択することによって行われる。次に複合画像は、いずれの単一画像よりも広いダイナミックレンジを有する。次に複合画像は、表示デバイスのパラメータを満足させるべく圧縮される。複合画像は、ステント支柱上の新生組織成長並びに中膜層を超えて及びこれを含む組織を含む。複合画像はさらにステント・ブルーミング・アーチファクトを回避する。個々の高送信エネルギー、中間送信エネルギー、及び低送信エネルギー画像はまず、後処理中にアラインメントが取られて、モーション・アーチファクトを最小化することができる。さらに、当該複数画像は、例えば心周期の拡張終期のような比較的小さなモーションの期間中に取得されて、モーション・アーチファクトをさらに最小化することができる。パルス送信同士の間の時間を最小化するべく取得されたデータの深度又はレンジを最小化することによって、モーション・アーチファクトをさらに最小化することができる。
【0072】
本発明の特定の実施例を図示し説明したが、変形が可能であるから、添付の特許請求の範囲において、本発明の真の要旨及び範囲内にあるすべての変更及び変形をカバーすることが意図される。
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に血管内超音波(intravascular ultrasound(IVUS))イメージングに関する。本発明は詳しくはコレジスタ・イメージング(co−registered imaging)のためのIVUSシステムに関する。
【0002】
優先権の主張
本願は、2009年10月12日に出願された同時係属中の米国仮特許出願第61/250,781号の利益を主張する。また、本願は、2009年10月30日に出願された同時係属中の米国仮特許出願第61/256,543号の利益を主張する。上記出願双方の全体が本明細書に参照として組み入れられる
【0003】
血管内超音波イメージングは一般に、経皮的冠動脈インターベンション、典型的にはベアメタル又は薬剤溶出ステントの配置をガイド及びアセスメントをするべく行われる。IVUSイメージングの他の用途は、冠状動脈疾患のアセスメントもさらに含む。
【0004】
冠動脈ステントは一般に、ステンレス鋼又はコバルト・クロム合金のような金属製の支柱を有する。金属ステントの支柱は、ステントの支柱上に成長した新生組織のような血液及び軟部組織と比べてかなり大きな反射超音波信号を与える。新生組織の成長を検出かつ測定する能力は、ステント治癒プロセスを評価する目的にとって特に重要である。現在市販のIVUSシステムは、反射超音波信号の検出可能範囲が限られているため、初期の新生組織の成長を検知する能力も限られている。
【0005】
破裂しやすいアテローム性傷害、いわゆる不安定プラークは、インターベンション心臓病専門医の興味を引いている。プラーク破裂の大きなパーセンテージを占めると考えられている不安定プラークの一のタイプは薄膜線維性アテロームである。この場合、薄い(65μm未満の)線維性被膜が、機械的に不安定な脂質豊富又は壊死のコアの上に横たわる。現在市販のIVUSシステムは、40MHzまで動作するのみであって、距離分解能は約100μmに限られる。したがって、現在市販のIVUSシステムは不安定プラークを信頼性をもって検出することができない。
【0006】
一般に、空間分解能を向上させるべくイメージング周波数を増大させる必要がある。しかしながら、増大したイメージング周波数はまた、血液と非血液組織との低減したコントラストももたらす。これは、血液が充填された内腔を内膜プラークからセグメント化することを困難にする。例えば、特許文献1に記載のように、血液及び非血液組織の周波数依存超音波特性を利用する自動セグメント化アルゴリズムもある。実時間の自動セグメント化ツールは、臨床診療にてその有用性を減じるエラーを起こしがちであることが多い。
【0007】
経胸腔的心エコー用途を目的とする多周波数イメージングが開発されている。特許文献2は、異なるイメージング周波数及び帯域幅の2つのBモード画像を同時に表示するシステムを記載する。しかし、この技術は、基本波イメージング技術及び高調波イメージング技術の双方を使用し、組織の非線形伝搬特性に依存する。高調波イメージングは良好な空間分解能を潜在的に与えるが、近接場での高調波イメージングの性能は限られる。さらに、高調波IVUSイメージングは現実的に有用とは考えられていない。
【0008】
多周波数IVUSイメージングはまた、複数のトランスデューサ・イメージングカテーテルの使用によって達成することができる。しかし、複数のトランスデューサによれば、使い捨てイメージングカテーテル及びイメージングシステムに複雑性及びコストが加わることとなる。別個のトランスデューサからの画像をコレジストレーションする潜在的な必要性がその現実的な使用をさらに複雑にする。
【0009】
経皮的冠動脈インターベンションをガイドするのに十分なコントラスト分解能、並びにステント治癒及び不安定プラークを検出するのに十分なコントラスト及び空間分解能を与える技術が必要とされている。さらに、かかる技術では複数画像間のコレジストレーション・ステップが不要であることが望ましい。またさらに、かかる技術では、既存の商用システム及びカテーテルに対してシステム及びカテーテルの複雑性及びコストが実質的に上昇しないことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,876,343号明細書
【特許文献2】米国特許第6,139,501号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開明細書第2004/0199047(A1)号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開明細書第2001/0029336(A1)号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開明細書第2008/0200815(A1)号明細書
【発明の概要】
【0011】
本発明は、遠位端を有する細長い本体と当該細長い本体に挿入されるべく構成されたイメージングコアとを備えるカテーテルを含む血管内超音波イメージングシステムを与える。イメージングコアは、超音波エネルギーパルスを送信するべく及び反射超音波エネルギーパルスを受信するべく構成される。本システムは、イメージングコアに結合されたイメージングエンジンであって、イメージングコアにエネルギーパルスを与えて当該イメージングコアに超音波エネルギーパルスを送信させるべく構成されたイメージングエンジンをさらに含む。エネルギーパルスは繰り返しシーケンスで構成され、各シーケンスのエネルギーパルスは異なる特徴を有する。
【0012】
エネルギーパルスの各シーケンスは、少なくとも2つのパルス、例えば3つのパルスを含む。異なる特徴は、パルスエネルギー、周波数、又は帯域幅である。
【0013】
本イメージングエンジンは、反射超音波エネルギーパルスを画像フレームにおいて処理するプロセッサと、反射超音波エネルギーパルスの異なる特徴を検出する検出器とを含む。本イメージングエンジンは、検出された異なる特徴に応じて当該フレームを処理する。
【0014】
本イメージングエンジンは、共通の検出された特徴を有する反射超音波エネルギーパルスのみを処理するべく構成される。本イメージングエンジンはさらに、反射超音波エネルギーパルスのシーケンスの異なる特徴に基づいて複合画像を与えるべく構成される。
【0015】
本イメージングエンジンは、反射超音波エネルギーパルスを別個の画像フレームにおいて処理するプロセッサを含む。各画像フレームは、異なるエネルギーパルスの特徴のそれぞれに対応する。本イメージングエンジンは、別個の画像フレームを同時に表示するための表示信号を与える。
【0016】
本発明はさらに、遠位端を有する細長い本体と当該細長い本体に挿入されるべく構成されたイメージングコアとを備えるカテーテルを与えることを含む方法を与える。当該イメージングコアは、超音波エネルギーパルスを送信するべく及び反射超音波エネルギーパルスを受信するべく構成される。本方法はさらに、イメージングコアに超音波エネルギーパルスを送信させるべく当該イメージングコアにエネルギーパルスを与えるステップを含む。エネルギーパルスは繰り返しシーケンスで構成され、各シーケンスのエネルギーパルスは異なる特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
添付図面とともに以下の記載を参照することで、本発明のさらなる特徴及び利点とともに、本発明を最も良く理解することができる。いくつかの図面では、同じ参照番号が同じ要素を特定する。
【0018】
【図1】IVUSシステムのハイレベルブロック図である。
【図2a】コレジスタ・イメージング用IVUSシステムの信号処理経路の一のブロック図である。
【図2b】コレジスタ・イメージング用IVUSシステムの信号処理経路の他のブロック図である。
【図3】図3a及び3bはそれぞれ、短時間パルスの時間領域信号及びパワースペクトルを示す。
【図4a】広帯域パワースペクトルの一の通過帯域を示す。
【図4b】広帯域パワースペクトルの他の通過帯域を示す。
【図5a】イメージングエンジンの一のブロック図である。
【図5b】イメージングエンジンの他のブロック図である。
【図5c】イメージングエンジンのさらに他のブロック図である。
【図6】図6aから6dはそれぞれ、第1、第2、第3、及び第4の代表的な送信パルスシーケンスを示す。
【図7】コレジスタ・イメージング用IVUSシステムの信号処理経路のブロック図である。
【図8】統合後方散乱パラメータ計算用信号処理ステップのブロック図である。
【図9】複数のコレジストレーションされた画像を含む表示を示す。
【図10】図10a及び10bは、コレジストレーションされた画像間のフィーチャ・マッピングを示す。
【図11】IVUSシステムのハイレベルブロック図である。
【図12】さらなるイメージングエンジンのブロック図である。
【図13】デジタル信号処理エンジンのブロック図である。
【図14】デジタル信号処理エンジンのブロック図である。
【図15】デジタル信号処理エンジンのブロック図である。
【図16】デジタル信号処理エンジンのブロック図である。
【図17】デジタル信号処理エンジンのブロック図である。
【図18】コレジスタ・イメージング用IVUSシステムの信号処理経路のブロック図である。
【図19】狭窄した冠状動脈の断面図である。
【図20】インプラントされたステントを伴う冠状動脈の断面図である。
【図21】高送信エネルギーパルスを用いて得られたステント冠状動脈の横断面IVUS画像を示す。
【図22】高エネルギー、中間エネルギー、及び低エネルギーの繰り返し送信パルスシーケンスを示す。
【図23】中間送信エネルギーパルスを用いて得られたステント冠状動脈の横断面IVUS画像を示す。
【図24】低送信エネルギーパルスを用いて得られたステント冠状動脈の横断面IVUS画像を示す。
【図25】高送信エネルギーパルスを用いて得られたステント冠状動脈の、選択されたダイナミックレンジを伴う横断面IVUS画像を示す。
【図26】中間送信エネルギーパルスを用いて得られたステント冠状動脈の、選択されたダイナミックレンジを伴う横断面IVUS画像を示す。
【図27】低送信エネルギーパルスを用いて得られたステント冠状動脈の、選択されたダイナミックレンジを伴う横断面IVUS画像を示す。
【図28】ステント冠状動脈の高送信エネルギー横断面IVUS画像、ステント冠状動脈の中間送信エネルギー横断面IVUS画像、及びステント冠状動脈の低送信エネルギー横断面IVUS画像の複合画像を示す。
【図29】高送信エネルギーパルスシーケンス、中間送信エネルギーパルスシーケンス、及び低送信エネルギーパルスシーケンスによるイメージング用IVUSシステムの信号処理経路のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、IVUSシステムのハイレベルブロック図である。IVUSシステムは、IVUSイメージングカテーテル1000、患者インターフェイスモジュール2000、及びイメージングエンジン3100からなる。カテーテルは典型的には、大腿又は橈骨動脈逆行性経路を介して冠状動脈へ送達される。イメージングカテーテル1000は、患者インターフェイスモジュール2000に機械的かつ電気的に接続される。イメージングエンジン3100は、冠状動脈イメージングを目的として、患者インターフェイスモジュール2000及びカテーテル1000の動作を制御するべく用いられる。IVUSイメージングカテーテルについての以下の説明は、機械的に回転する画像コアの場合に関する。各IVUS画像は、所定数のベクトル(又はスキャンライン)及び一ベクトル当たりのサンプルを含む。最新の入手可能な市販IVUSシステムは一画像当たり256ベクトルを利用する。一ベクトル当たりのサンプル数は一般に、市販のIVUSシステムに対して約256サンプルから2048サンプルの間で変化し、イメージング周波数及びデータ形式(例えばRF又はベース帯域)に部分的に依存する。
【0020】
図2aは、コレジスタ・イメージング用IVUSシステムの信号処理経路の一実施例のブロック図である。ステップ102で波形が選択される。一般にはイメージングエンジン内で選択される。次に、ステップ104で送信パルサーにより送信波形が生成される。送信パルサーは一般に、患者インターフェイスモジュールに配置される。ステップ106で、送/受信(T/R)スイッチを介して超音波トランスデューサ1100へ送信波形が送られる。トランスデューサは、10MHzから80MHzの周波数範囲にわたって動作する。冠内イメージングに対しては一般に、20MHzから60MHzの間である。
【0021】
トランスデューサは、超音波圧力場1110を放射して冠状動脈に超音波を当てる。超音波エネルギーの中には後方散乱されてトランスデューサが受信するものもある。受信された超音波は、ステップ106でT/Rスイッチを通過し、ステップ108で回転結合器を通過する。回転結合器は、誘導型回転結合器又は液体金属回転結合器である。代替的には、回転結合器は例えば、2009年5月14日に出願された同時係属中の米国特許出願第12/465,853号に記載の回転容量結合器であってよい。この出願は、出願人がSilicon Valley Medical Instruments,Incであって、発明の名称が回転容量結合器を有するIVUSシステムであり、その全体が本明細書に参照として組み入れられる。回転結合器は、カテーテルの機械的に回転するイメージングコアと、患者インターフェイスモジュールの回転しないエレクトロニクスとのインターフェイスをなす。
【0022】
次に、受信された信号はステップ109でゲイン増幅器を通過し、ステップ110でハイパスフィルタを通過し、及びステップ112で時間ゲイン補正増幅器を通過する。時間ゲイン補正が与えられるのは、超音波信号の減衰が、当該信号が冠状動脈内にさらに伝搬するときに増大するからである。次に、ステップ114で信号はアンチエイリアシング・ローパスフィルタを介して送信された後、ステップ116でデジタル化される。
【0023】
次に、デジタル化された信号は、低周波数経路120及び高周波数経路130を含む多周波数技術によって処理される。低周波数及び高周波数処理の経路は同様の処理段を含む。当該処理段は、通過帯域、視野、及び信号対雑音比のようなイメージングパラメータに起因して異なり得る。
【0024】
図3及び4を参照すると、60%超過の比帯域幅を有する60MHzのIVUSイメージングトランスデューサの短時間パルスに対する時間領域応答202及びパワースペクトル204がそれぞれ図3a及び3bに示される。大きな比帯域幅、すなわちほぼ50%超過の比帯域幅を有するトランスデューサの使用は、本発明の一の重要な側面である。50%未満の比帯域幅を有するトランスデューサを使用することもできるが、かかるトランスデューサの使用は有用性が低減されて有効とならないことが予想される。本発明の他の重要な側面は、有用な帯域幅にわたり均一な高い感度を有するトランスデューサの使用である。選択された低周波数及び高周波数は、重なる帯域幅222、224又は重ならない帯域幅226、228を含む。それぞれ図4a及び4bに示されるように、通過帯域幅中心周波数F1、F2に対応する。重なる帯域幅を使用する潜在的な利益は、帯域幅が広いほど空間分解能が良好な画像が生成されることにある。本発明の一実施例では、低い通過帯域幅中心周波数F1が40MHz、高い通過帯域幅中心周波数F2が60MHzであり、低い通過帯域幅222が30MHzから50MHz、高い通過帯域幅224が45MHzから75MHzである。本発明の他実施例では、カテーテルは広帯域40MHzトランスデューサを含み、低い通過帯域中心周波数は30MHz、高い通過帯域中心周波数は50MHzである。本発明のさらなる他実施例では、カテーテルは広帯域35MHzトランスデューサを含み、低い通過帯域中心周波数は25MHz、高い通過帯域中心周波数は40MHzである。
【0025】
図2aを再び参照すると、ステップ122で低周波数経路デジタル化データの前処理が最初に行われる。業界で周知のとおり、前処理は一般に、バンドパスフィルタリング技術及びベクトル処理技術を含む。ステップ124で、前処理されたデータのエンベロープが検出されて、その後ステップ126で後処理される。後処理は一般に、視覚的にアピールしかつ有用な画像を生成するべく対数圧縮及びガンマ補正を含む。次にステップ128で、後処理されたデータは、極座標から直交座標にスキャン変換される。前処理、検出、後処理、及びスキャン変換は、医用超音波イメージングの当業者にとって周知の信号及び画像の処理技術である。
【0026】
高周波数経路デジタル化データも同様の手法で処理される。ステップ132で高周波数経路デジタル化データの前処理が最初に行われる。繰り返しになるが、前処理は一般に、バンドパスフィルタリング及びベクトル処理を含む。ステップ134で、前処理されたデータのエンベロープが検出されて、その後ステップ136で後処理される。後処理は一般に、視覚的にアピールしかつ有用な画像を生成するべく対数圧縮及びガンマ補正を含む。次にステップ138で、後処理されたデータは、極座標から直交座標にスキャン変換される。
【0027】
次にステップ150で、低周波数及び高周波数のスキャン変換画像152、154が同時に表示される。低周波数画像は血液と非血液組織との良好なコントラストを含み、内腔境界検出が容易となる。高周波数画像は、薄い線維性被膜のような傷害フィーチャの良好な空間分解能を含む。低周波数及び高周波数のスキャン変換画像152、154は、双方の画像を生成するべく同じ超音波データが使用されるので、コレジストレーションされる。
【0028】
図2aに示す信号処理経路は、多くの物理構成で実装することができる。本発明の一の重要な側面は、イメージングエンジンの物理構成にある。図5aは、イメージングエンジン3100の一実施例のためのブロック図である。イメージングエンジン3100は、シングルボード・コンピュータ3102、専用デジタル信号処理(DSP)モジュール3120、及びインターフェイスボード3180を含む。DSPモジュール3120は、患者インターフェイスモジュールに送信される送信波形3182を選択するべく用いられる。インターフェイスボード3180には、時間ゲイン補正増幅器3184及びアンチエイリアシング・ローパスフィルタ3186が配置される。DSPモジュール3120には、アナログデジタル変換器(又はデジタイザ)3128が配置される。DSPモジュール3120はさらに、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)3122を含む。図2aに示す低周波数信号及び高周波数信号処理経路120、130は一般にFPGAに実装される。本実施例の一の重要な側面は、コレジスタ・イメージングが、単一のアナログデジタル変換器及び単一のFPGAを含むイメージングエンジンによって行われることにある。
【0029】
図5bは、本発明のイメージングエンジンの他実施例のブロック図である。本イメージングエンジンは、第1DSPモジュール3120及び第2DSPモジュール3140を含み、単一のアナログデジタル変換器(又はデジタイザ)3128及び2つのFPGA3122、3142が利用可能である。一のFPGAを含む第2DSPモジュールの追加により計算処理パワーが増大するが、デバイスの複雑性及びコストが増大する。同じデジタル化データが双方のFPGAによって処理される。
【0030】
図5cは、本発明のイメージングエンジンのさらなる他実施例のブロック図である。本イメージングエンジンは、第1DSPモジュール3120及び第2DSPモジュール3140を含み、2つのアナログデジタル変換器(又はデジタイザ)3128、3148及び2つのFPGA3122、3142が利用可能である。サンプリングクロック3126が双方のデジタイザ3128、3148を同期させる。本実施例の2デジタイザ/2FPGAのイメージングエンジンはさらに、第2時間ゲイン補正増幅器3188及び第2アンチエイリアシング・ローパスフィルタ3190を含む。第2のデジタイザ3148、時間ゲイン補正増幅器3188、ローパスフィルタ3190の追加により計算処理のパワー及び柔軟性が増大するが、デバイスの複雑性が増大する。柔軟性が加わることで、異なる周波数帯域に起因する当該組織を介した超音波圧力波の異なる減衰に対して補正をすることができる。
【0031】
図2bは、図5cに示すイメージングエンジンの一実施例を含むコレジスタ・イメージング用IVUSシステムの信号処理経路の一実施例のブロック図である。当該組織から後方散乱された信号は、トランスデューサ1100により受信された後に、ステップ106で送/受信スイッチを通過し、ステップ108で回転結合器を通過し、ステップ109でゲイン増幅器を通過し、ステップ110でハイパスフィルタを通過する。ハイパスフィルタを通過した信号は次に、低周波数処理経路120A及び高周波数処理経路130Aを含む多周波数技術によって処理される。低周波数処理経路120A及び高周波数処理経路130Aは同様の処理段を含む。当該処理段は、通過帯域、視野、及び信号対雑音比のようなイメージングパラメータに起因して異なり得る。ステップ112で、低周波数経路信号に対して時間ゲイン補正が最初に適用される。時間ゲイン補正が与えられるのは、超音波信号の減衰が、当該信号が冠状動脈内にさらに伝搬するときに増大するからである。TGC増幅された低周波数経路信号は次に、ステップ114でアンチエイリアシング・ローパスフィルタを介して送信された後、ステップ116でアナログデジタル(A/D)変換(又はデジタル化)される。ステップ122で低周波数経路デジタル化データの前処理が最初に行われる。前処理は一般に、バンドパスフィルタリング技術及びベクトル処理技術を含む。ステップ124で、前処理されたデータのエンベロープが検出されて、その後ステップ126で後処理される。後処理は一般に、視覚的にアピールしかつ有用な画像を生成するべく対数圧縮及びガンマ補正を含む。次にステップ128で、後処理されたデータは、極座標から直交座標にスキャン変換される。
【0032】
高周波数経路130Aの信号も同様の手法で処理される。ステップ110でのハイパスフィルタリングの後にまず、ステップ112Aで時間ゲイン補正が、ステップ114Aでアンチエイリアシング・ローパスフィルタが、ステップ116AでA/D変換が行われる。次にステップ132で、高周波数デジタル化されたデータが前処理される。前処理は一般に、バンドパスフィルタリング技術及びベクトル処理技術を含む。ステップ134で、前処理されたデータのエンベロープが検出されて、その後ステップ136で後処理される。後処理は一般に、視覚的にアピールしかつ有用な画像を生成するべく対数圧縮及びガンマ補正を含む。次にステップ138で、後処理されたデータは、極座標から直交座標にスキャン変換される。次にステップ150で、低周波数及び高周波数のスキャン変換画像152、154が同時に表示される。図2bに示す信号処理経路の実施例において、多周波数信号処理経路はステップ110でのハイパスフィルタリングの後にスプリットされるのに対し、図2aに示す信号処理経路の実施例においては、多周波数信号処理経路はステップ116でのA/D変換の後にスプリットされる。ハイパスフィルタリングの後の多周波数信号処理経路のスプリットにより、異なるイメージング周波数に適した時間ゲイン補正を行うことができる。
【0033】
ここで図6a−6dを参照すると、一連のイメージング波形シーケンスが示されている。図6aは、単一のパルスシーケンス10がIVUS画像の各ベクトルに対して同じ波形Xcを送ることを含む一実施例を示す。図6bは、低周波数波形X1及び高周波数波形X2が交互となるパルスシーケンス20を含む他実施例を示す。単一パルスシーケンスに対する交互パルスシーケンスの潜在的利点は、送信されるエネルギーを、多周波数処理の選択された通過帯域に対して増大又は減少できることにある。送信エネルギーを調整できる能力は、同時に表示されるコレジストレーション画像の画質にとって有利である。図6cは、イメージング波形Xi及びパラメータイメージング波形Xpが交互となるパルスシーケンス30を含むさらなる他実施例を示す。イメージング波形Xiは、Xc、X1、又はX2波形を含む。パラメータイメージング波形Xpは、統合後方散乱、減衰、ひずみ、及びモーションを含む少なくとも一の超音波組織分類パラメータの解析を最適化するべく選択される。狭帯域波形の使用は、相関に基づく又はドップラーに基づくモーション解析にとって有利である。図6dは、イメージング波形Xi及びパラメータイメージング波形Xpが交互となるパルスシーケンス40を含むなおさらなる他実施例を示す。ここでは、複数のパラメータイメージング波形Xpがイメージング波形Xiの間に送信される。繰り返されるパルスの使用は、信号対雑音条件にとってさらに有利である。
【0034】
したがって、上述からわかるように及び本発明の複数の側面によれば、イメージングコアに結合されたイメージングエンジンは、イメージングコアにエネルギーパルスを与えて当該イメージングコアに超音波エネルギーパルスを送信させるべく構成される。エネルギーパルスは繰り返しシーケンスで構成され、各シーケンスのエネルギーパルスは異なる特徴を有する。例えば、エネルギーパルスの各シーケンスは少なくとも2つのパルスを含む。また、異なる特徴はパルスエネルギーである。
【0035】
図7は、コレジスタ・イメージング用IVUSシステムの信号処理経路の一実施例のブロック図を示す。ここでは、コレジストレーション画像がグレースケール画像182及びパラメータ画像184を含む。パラメータ画像184は、多重パラメータ画像を含む。ステップ102で選択されてイメージングエンジンから送られた送信波形は、図6a及び6cに示す単一パルスシーケンス10並びにイメージング及びパラメータイメージングパルスシーケンス30を含む。デジタル化ステップ116への信号処理経路は、図2aに示した多周波数イメージングのための信号処理経路と同様である。
【0036】
次に、デジタル化された信号は、グレースケールイメージング経路160及びパラメータイメージング経路170によって処理される。まずステップ162で、グレースケールイメージング経路のデジタル化データが前処理される。前処理は一般に、バンドパスフィルタリング技術及びベクトル処理技術を含む。ステップ164で、前処理されたデータのエンベロープが検出されて、その後ステップ166で後処理される。後処理は一般に、視覚的にアピールしかつ有用な画像を生成するべく対数圧縮及びガンマ補正を含む。次にステップ168で、後処理されたデータは、極座標から直交座標にスキャン変換される。
【0037】
パラメータイメージング経路170の処理段は、前処理ステップ172、パラメータ解析ステップ174、後処理ステップ176、及びスキャン変換ステップ178を含む。各パラメータイメージング処理ステップの具体的詳細は、当該計算対象の少なくとも一のパラメータによる。
【0038】
本発明の一実施例では、統合後方散乱のパラメータ画像が生成される。統合後方散乱前処理ステップ172は、バンドパスフィルタリング及びベクトル処理技術を含む。フィルタ通過帯域は、トランスデューサの−3dB帯域幅から決定される。ステップ174での統合後方散乱パラメータ解析は、スライディング窓技術を含む。スライディング窓技術は、超音波組織性状の当業者にとって周知である。
【0039】
ここで図8を参照すると、ブロック図に、スライディング窓技術を用いた統合後方散乱パラメータの計算のための信号処理段の一実施例が示される。まずステップ502で、前処理されたデータ500の関心領域(ROI)が選択される。ROIの各ベクトルに対してハミング窓又はハン窓のような時間領域窓が適用されて、周波数分解能の低減という犠牲のもとで高速フーリエ変換(FFT)スペクトル解析におけるエッジ不連続性が最小化される。ROIは、所定数のベクトル及びベクトルサンプルを含む。ベクトル及びベクトルサンプルの数は、ベクトル密度、サンプルレート、最適ROIサイズ、及び信号対雑音の測定基準(metrics)を含む詳細に依存する。
【0040】
本発明の一実施例においてシステムは、一IVUS画像当たり1024ベクトルのベクトル密度及び400×106サンプル/秒のサンプルレートを与える。最適ROIサイズは、ROIの最小径方向範囲を最大信号対雑音比と均衡させる。当該径方向範囲と比較可能なROIの側方向範囲により、その後のパラメータ画像解析を容易にすることができる。複数のベクトルによっても信号平均化が可能となる。さらに、選択されたROIサイズはレンジ依存である。物理ベクトルの間隔がレンジに伴い増大するからである。1.5mmのレンジにおける7ベクトル及び32サンプルのROIサイズにより、約60μm×60μmであるROIが得られる。このサイズは、薄い線維性被膜のような小型アテローム性傷害フィーチャにとって適切である。
【0041】
ステップ504でROIに対して平均パワースペクトルが計算される。これは、各ベクトルのパワースペクトルを計算した後に平均化することにより行われる。パワースペクトルは一般に、FFT技術を用いて計算される。平均化は一般に、対数(dB)領域で行われるが線形領域で行われてもよい。次にステップ506で、平均パワースペクトルついて、レンジ依存感度及び周波数依存トランスデューサ感度を含むシステム及びトランスデューサの影響が補正される。ステップ508で統合後方散乱パラメータが計算される。これは、選択された帯域幅の補正された平均パワースペクトル値を加算し、かつ、上記選択された帯域幅で除算することによって行われる。複数の付加的ROIが選択される。これは、前処理されたデータ500又は当該前処理されたデータの所定サブセットにわたり窓(又はROI)をスライドさせることによって行われる。ROIの重なり度合いは、重なりを最大化することによるパラメータ画像のスムージングと、重なりを最小化することによる計算コストとを均衡させるべく選択される。7ベクトル×32サンプルのROIサイズに対しては、スライディング窓の重なりは一般に、ベクトルに沿って16サンプル(又は50%)から24サンプル(又は75%)の間、及びベクトルを横切って4ベクトル(又は約50%)から6ベクトル(又は85%)の間を含む。解析すべきROIがもはや残っていない場合に統合後方散乱パラメータデータが後処理ステップ176(図7)に送られる。
【0042】
ステップ176の統合後方散乱画像の後処理は、しきい値処理及びガンマ補正を含む。本発明の一実施例では、統合後方散乱画像がしきい値処理されて、比較的低い統合後方散乱値を有するものとして知られる脂質豊富ROIが表示される。代替実施例では、統合後方散乱画像は、複数の組織タイプを区別するべく多レベルにてしきい値処理される。次にステップ178で、後処理統合後方散乱画像はスキャン変換される。
【0043】
次にステップ180で、スキャン変換されたグレースケール画像及びスキャン変換された統合後方散乱パラメータ画像が同時に表示される。グレースケール画像は良好な構造詳細を与える。統合後方散乱パラメータ画像は良好なプラーク組成詳細を与える。さらに、グレースケール及び統合後方散乱パラメータ画像182、184はコレジストレーションされる。同じ超音波データが双方の画像を生成するべく使用されるからである。
【0044】
図9は、4つのコレジストレーション画像192、194、196、198を含む表示190である。4つのコレジストレーション画像は、少なくとも一のグレースケール画像及び少なくとも一のパラメータ画像を含む。本発明の一実施例では、表示は、40MHzグレースケール画像、60MHzグレースケール画像、及び統合後方散乱パラメータ画像を含む。
【0045】
本発明により、コレジストレーション画像間の画像フィーチャのマッピングが容易となる。低い超音波周波数のIVUS画像が一般に血液と非血液組織との良好なコントラストを与える一方、高い超音波周波数のIVUS画像は一般にアテローム性傷害の良好な空間分解能を与える。図10aは、低周波数の第1IVUS画像300及び高周波数の第2IVUS画像を示す。カテーテルマスク302、322は、冠状動脈セクションに関するカテーテル位置を表す。第1画像300にて特定されるルーメン輪郭308は、第2画像320にて特定される内腔輪郭328に対してマッピング312される。内腔輪郭は、血液304と非血液組織とを区分する。第1画像300にて特定される血管輪郭310は、第2画像320にて特定される血管輪郭330に対してマッピング314される。内腔輪郭及び血管輪郭308、310は、アテローム性プラーク306と他組織とを区分する。高周波数IVUS画像のマッピングされた輪郭328、330によって、アテローム性プラークをさらに処理することができる。
【0046】
図10bは、第1画像340における顕著なフィーチャを第2画像360にマッピングすること、及び上記第2画像360における顕著なフィーチャを第1画像340にマッピングすることを示す。第1画像はグレースケール画像を含み、第2画像はパラメータ画像を含む。第1画像340の内腔輪郭348が第2画像360の内腔輪郭368にマッピング352される。第2画像360の血管輪郭370及びROI372はそれぞれ、第1画像340の第2血管輪郭350及び第2ROI352にマッピング374、376される。
【0047】
本発明は、最小限のデバイス複雑性で最適なイメージング性能及び計算効率を与えることが望ましい。図11は、コレジスタ・イメージング用IVUSシステムの一実施例のハイレベルブロック図を示す。コレジスタ・イメージング用IVUSシステムについての以下の説明は、2つのコレジストレーションされたグレースケール画像を表示するIVUSシステムの場合に関する。IVUSシステムは、2つの画像3802、3803、イメージングエンジン3804、患者インターフェイスモジュール(PIM)2000、及びIVUSイメージングカテーテル1000を含む。IVUSイメージングカテーテル1000についての以下の説明は、機械的に回転する画像コアの場合に関する。イメージングエンジン3804は、ディスプレイエンジン3806、DSPエンジン3808、送信(Tx)ロジック3810、送信バッファ3812、受信(Rx)信号処理段3814、及びアナログデジタル変換器(ADC)3816を含む。
【0048】
DSPエンジン3808は、実時間の同時コレジスタ・イメージングのための計算パワーを与える。DSPエンジン3808は、アナログ送信パルスシーケンスを生成する送信ロジック3810に制御信号を送る。送信パルスが送信バッファ3812を通過した後にPIM2000へ向かう。PIM2000は、カテーテル1000とイメージングエンジン3804とのインターフェイスである。PIM2000は、トランスデューサ励起エネルギーを送信し、トランスデューサ信号の戻りを受信し、及び信号の戻りをイメージングエンジン3804に送信する。戻り信号は受信信号処理段3814及びアナログデジタル変換器3816を通過する。次に、デジタル化された戻り信号はDSPエンジン3808にて処理される。画像データがディスプレイエンジン3806に送られて、コレジストレーション画像3802、3803の実時間の同時表示のためにストリーミングされる。
【0049】
図12は、イメージングエンジン3100の物理構成の一実施例を示す。イメージングエンジン3100は、画像生成、表示、及びシステム全体の制御のすべてを行う。イメージングエンジン3100は、汎用処理ユニット3500、DSPモジュール3600、及びインターフェイスボード3700を含む。
【0050】
汎用処理ユニット3500は、中央処理ユニット(CPU)3502、メモリコントローラ3504、動的ランダムアクセスメモリ(DRAM)3506、デジタルバスインターフェイス3508、及び周辺機器コントローラ3510を含む。DSPモジュール3600は、DSPエンジン3610、送信ロジック回路3612、デジタルアナログ変換器(DAC)3620、アナログデジタル変換器(ADC)3630、及びサンプリングクロック3640を含む。高速デジタルバス3512がデジタルバスインターフェイス3508とDSPエンジン3610とを接続する。インターフェイスボード3700は、送信バッファ3702、時間ゲイン補正(TGC)増幅器3704、及びアンチエイリアシング・ローパスフィルタ(LPF)3706を含む。
【0051】
DSPエンジン3610は、アナログ送信信号を送信バッファ3702に送るべく送信ロジック回路3612を制御する。アナログ送信信号は、少なくとも一の矩形パルスを含むパルスを含む。アナログ送信信号がインターフェイスボード3700からPIMに送られる。DSPエンジン3610はさらに、デジタルTGC信号を生成する。デジタルTGC信号は、DAC3620によってアナログTGC信号に変換される。アナログTGC信号は、PIMから受信した信号に適用されるTGC増幅3704のレベルを与える。ローパスフィルタ3706は、TGC増幅された信号のエイリアシングを最小化する。
【0052】
アンチエイリアシングされたTGC増幅戻り信号は、デジタル化された後に、コレジスタ・イメージングを目的としてDSPエンジン3610によって処理される。サンプリングクロック3640は、ADC(又はデジタイザ)3630とDSPエンジン3610とを同期させる。コレジストレーション画像が、画像表示を目的としてDSPエンジン3610から汎用処理ユニット3500までストリーミングされる。
【0053】
ここで図13−17を参照すると、DSPエンジン3610は異なる形態の複数の信号プロセッサを含む。図13−15は、DSPエンジン3610の図を示す。DSPエンジン3610は、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)3902、DSPチップ3904及びランダムアクセスメモリ(RAM)3906、又は特定用途向け集積回路(ASIC)3908を含む。DSPエンジンはさらに、複数の信号プロセッサを含む。図16は、第1FPGA3910及び第2FPGA3912を含むDSPエンジン3610の図を示す。図17は、CPU及びRAMモジュールの超並列プロセッサアレイ(MPPA)3914を含むDSPエンジン3610の図を示す。最もコスト効果が高く計算効率が良好な信号プロセッサは、具体的な用途に依存する。IVUSイメージングシステムには通常、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイが用いられる。
【0054】
図18は、コレジスタ多周波数イメージングのための信号処理経路を示す。これは、コレジストレーションされたグレースケールイメージング性能を最適化する一方でデバイスのコスト及び複雑性を最小化する。以下の説明は、図6bに示す交互送信パルスシーケンス20の場合に関する。ここで、第1パルスシーケンスX1は低いイメージング周波数を有し、X2は高いイメージング周波数を有する。図6aに示す単一パルスシーケンス10に対する交互パルスシーケンス20の潜在的利点は、多周波数処理の選択された通過帯域に対して送信エネルギーを増減できることにある。送信エネルギーを調整できる能力は、同時表示されるコレジストレーション画像の画質にとって有利である。
【0055】
ステップ300で、受信された信号がアナログからデジタル(A/D)に変換される。ステップ302で、デジタル化された信号が前処理される。ここで、前処理は一般にバンドパスフィルタリング技術及びベクトル処理技術を含む。前処理の具体的な形態は、送信信号がX1パルスであるか又はX2パルスであるかに依存する。デジタルマルチプレクサ330が、第1セットの前処理係数332及び第2セットの前処理係数334を受ける。前処理係数は、バンドパスフィルタリングのためのフィルタ係数を含む。ベクトル処理制御320が、どのセットの前処理係数を前処理に用いるべきかを決定する。ステップ304で、前処理された信号のエンベロープが検出される。ベクトル処理制御320は、デジタルマルチプレクサ340が検出処理のために第1セットの検出係数342又は第2セットの検出係数344を選択するかを決定する。次にステップ306で、検出された信号は後処理される。ここで、後処理は一般に、視覚的にアピールしかつ有用な画像を生成するべく対数圧縮及びガンマ補正を含む。次にステップ308で、後処理された信号は、極座標から直交座標にスキャン変換される。
【0056】
次にステップ310で、低周波数及び高周波数のスキャン変換画像312、314が同時に表示される。低周波数画像は血液と非血液組織との良好なコントラストを与え、内腔境界検出が容易となる。高周波数画像は、薄い線維性被膜のような傷害フィーチャの良好な空間分解能を与える。低周波数及び高周波数のスキャン変換画像312、314は、双方の画像データセットが交互送信パルスシーケンスを用いるときに実質的に同時に取得されるので、コレジストレーションされる。
【0057】
他実施例では、交互送信パルスシーケンスは交互のパルス群を含む。パルスシーケンスは、X1及びX2パルスシーケンスの交互の群を含む。ここで、X1及びX2パルスの群はそれぞれ少なくとも2つのパルスを含む。X1画像の取得とX2画像の取得との間の時間遅延は大きくなるが、X1パルスシーケンスとX2パルスシーケンスとの間の変更が少ないという利点がある。
【0058】
図18に示す信号処理経路の利点は、必要なデジタイザが一つのみであることにある。さらに、デジタル信号処理が単一のFPGAにて行われる。なおもさらに、多周波数処理を信号処理段の重複なしで行うことができる。
【0059】
本発明の一の重要な側面は、イメージングエンジン、患者インターフェイスモジュール、及びIVUSカテーテルを含むコレジスタ・イメージング用IVUSシステムを用いることにある。イメージングエンジンは、汎用処理ユニット、DSPモジュール、及びインターフェイスボードを含む。DSPモジュールは、アナログデジタル変換器及びDSPエンジンを含む。DSPエンジンは、FPGA、DSPチップ、又はASICを含む。DSPエンジンは代替的に、複数のFPGAか、又はCPU及びRAMモジュールの超並列処理アレイを含む。本発明の他の重要な側面は、高感度の広帯域(50%超過の比帯域幅)の超音波トランスデューサを含むIVUSカテーテルを用いることにある。ここで、グレースケール画像を生成するべく低い通過帯域及び高い通過帯域の双方を用いることができる。低い通過帯域及び高い通過帯域の中心周波数はそれぞれ、40MHz及び60MHz、30MHz及び50MHz、25MHz及び40MHz、並びに異なる周波数間隔の他の組み合わせを含む。本発明のさらに他の重要な側面は、プログラマブル送信パルスシーケンスを用いることにある。送信パルスシーケンスは、単一パルスイメージングシーケンス及び低周波数・高周波数交互のイメージングシーケンス、又はイメージング・パラメータ交互のイメージングシーケンスを含む。本発明のなおもさらに他の重要な側面は、少なくとも一のグレースケール画像を含む少なくとも2つのコレジストレーション画像を表示することにある。コレジストレーション画像はさらに、少なくとも一のパラメータ画像を含む。本発明の一のさらに重要な側面は、コレジストレーション画像間の画像フィーチャをマッピングすることにある。ここで、画像フィーチャは輪郭及び関心領域を含む。
【0060】
インプラントされたステントを有する冠状動脈のイメージングを目的として改善されたコントラスト分解能を与えることも望ましい。ステント治癒、又は冠動脈ステント支柱上の新生組織成長を検出及び測定できる能力に特に関連する。図19は、狭窄冠状動脈400の断面図を概略的に示す。冠状動脈は、血液が充填された内腔402、内膜プラーク層404、中膜層406、及び外膜層408を含む。内腔は一般に、4mm2未満の断面積を有する。図20は、ステントをインプラントした後の、図19と同じ冠状動脈400を概略的に示す。ステント支柱410が、内腔・プラーク境界の近傍に配置される。ステントは、動脈を通る改善された血液の流れを可能とするべく内腔断面積を増大させる。
【0061】
図21は、一般に50Vを超える振幅を有する高送信エネルギーパルスにより取得されたステント冠状動脈の横断面IVUS画像420を示す。横断面IVUS画像420は、冠状動脈に対するIVUSカテーテルの位置を示すカテーテルマスク422を含む。IVUS画像420はさらに、血液が充填された内腔424、新生組織成長426、内膜プラーク層428、中膜層430、及び外膜層432からの超音波反射を示す。新生組織成長426はステント治癒プロセスに起因する。薬剤溶出ステントの覆われていない支柱は、後のステント血栓症という不都合な事象の一要因と考えられる。横断面IVUS画像420はまたさらに、いわゆるステント・ブルーミング・アーチファクト436のみならず、ステント支柱434からのかなり強い超音波反射も含む。ステント・ブルーミング・アーチファクトは、IVUSシステムの一部である受信側エレクトロニクスの飽和に起因し得る。ステント支柱434のカテーテルマスク422から離れた側に特徴的に見られる。ステント反射434とステント・ブルーミング・アーチファクト436との結合厚さは一般に、ステント支柱の物理厚さよりもかなり大きく、約100ミクロン以下である。ステント・ブルーミング・アーチファクト436は画質を劣化させる。
【0062】
ステント・ブルーミング・アーチファクトは、送信パルスのエネルギーをIVUSシステムの受信側エレクトロニクスの飽和回避に十分なだけ低減することにより防止することができる。本発明の一実施例では、高送信エネルギーパルス、中送信エネルギーパルス、及び低送信エネルギーパルスを含む3パルスのシーケンスが用いられて新生組織成長が可視化され、冠状動脈内への十分な超音波エネルギーの浸透が与えられ、及びステント・ブルーミング・アーチファクトが防止される。図22は、高エネルギー送信パルスXH、中間エネルギー送信パルスXM、及び低エネルギー送信パルスXLの繰り返しパルスシーケンス22を示す。
【0063】
図21に示す横断面IVUS画像420は、高送信エネルギーパルスによって取得され、新生組織成長の可視化及び中膜層430を超える浸透が可能となる。図23は、図21に示すのと同じステント冠状動脈の横断面IVUS画像440を示すが、高送信エネルギーパルスの振幅よりも小さい振幅の中間送信エネルギーパルスによって取得される。横断面IVUS画像440は、冠状動脈に対するIVUSカテーテルの位置を示すカテーテルマスク422を含む。IVUS画像440はさらに、血液が充填された内腔424、新生組織成長426、及び内膜プラーク層428からの超音波反射を示す。横断面IVUS画像440はまたさらに、ステント支柱442からの超音波反射及びステント・ブルーミング・アーチファクト444も含む。
【0064】
図24は、図21に示すのと同じステント冠状動脈の横断面IVUS画像450を示すが、高送信エネルギーパルスの振幅よりも小さい振幅の低送信エネルギーパルスによって取得される。横断面IVUS画像450は、冠状動脈に対するIVUSカテーテルの位置を示すカテーテルマスク422を含む。IVUS画像440はさらに、新生組織成長426からの超音波反射及び内膜プラーク層428の複数部分を示す。横断面IVUS画像440はまたさらに、ステント支柱454からの超音波反射も含む。パルスの低送信エネルギーレベルゆえに、ステント・ブルーミング・アーチファクトも、中膜層及び外膜層のような冠状動脈の離れた部分も可視化されていない。パルスの低送信エネルギーレベルは、血液が充填された内腔からのわずかな超音波反射を検出かつ可視化する能力を低下させる。
【0065】
高送信エネルギーパルス、中送信エネルギーパルス、及び低送信エネルギーパルスの繰り返しシーケンスを用いて、高送信エネルギーIVUS画像、中間送信エネルギーIVUS画像、及び低送信エネルギーIVUS画像をコレジストレーションすることができる。ここで図25を参照すると、高送信エネルギーIVUS画像460がさらに処理されて、中膜層430及び外膜432のような、高送信エネルギーパルスによって可視化される深い組織を含むことができる。ここで図26を参照すると、中間送信エネルギーIVUS画像470がさらに処理されて、当該画像から除去されたステント及びステント・ブルーミング・アーチファクトを含む画像部分472を有することができる。ここで図27を参照すると、低送信エネルギーIVUS画像480がさらに処理されて、新生組織成長426及び画像部分454、472のみを含むことができる。画像部分454、472は、ステント及びステント・ブルーミング・アーチファクト472を含む中間送信エネルギーIVUS画像470の画像部分に位置する。ここで図28を参照すると、さらに処理された高送信エネルギーIVUS画像460、さらに処理された中間送信エネルギーIVUS画像470、及びさらに処理された低送信エネルギーIVUS画像480を組み合わせて複合画像490にすることができる。複合画像490では、ステント支柱454上の新生組織成長426が可視化され、中膜層430を超えかつ含む組織が可視化され、及びステント・ブルーミング・アーチファクトが回避される。
【0066】
図29は、高送信、中間送信、及び低送信エネルギーパルスを用いて取得された画像から複合画像を生成する信号処理経路の一実施例を示す。以下の説明は、図22に示す送信パルスシーケンス22の場合に関する。ここで、第1パルスXHは高送信エネルギーを有し、第2パルスXMは中間送信エネルギーを有し、及び第3パルスXLは低送信エネルギーを有する。
【0067】
ステップ550で、一般にイメージングエンジン内に格納される高送信エネルギー、中間送信エネルギー、又は低送信エネルギー波形が選択される。次にステップ552で、送信波形が送信パルサーによって生成される。ステップ554で、送/受信(T/R)スイッチを介して超音波トランスデューサ1100へ送信波形が送られる。トランスデューサは、10MHzから80MHzの周波数範囲にわたって動作する。冠内イメージングに対しては一般に、20MHzから60MHzの間である。
【0068】
トランスデューサは、超音波圧力場1110を放射して冠状動脈に超音波を当てる。超音波エネルギーの中には後方散乱されてトランスデューサが受信するものもある。受信された超音波は、ステップ554でT/Rスイッチを通過し、ステップ556で回転結合器を通過する。回転結合器は、誘導型回転結合器又は液体金属回転結合器である。回転結合器は、カテーテルの機械的に回転するイメージングコアと、患者インターフェイスモジュールの回転しないエレクトロニクスとのインターフェイスをなす。
【0069】
次にステップ558で、受信された信号にゲインが適用される。次にステップ560で、増幅された信号にハイパスフィルタが適用される。ステップ562で、ハイパスフィルタが適用された信号に時変ゲインが適用される。時間ゲイン補正が与えられるのは、超音波信号の減衰が、当該信号が冠状動脈内にさらに伝搬するときに増大するからである。次にステップ564で、当該信号にアンチエイリアシングローパスフィルタが適用された後に、ステップ566で当該信号がデジタル化される。
【0070】
ステップ568で、デジタル化された信号が前処理される。ここで、前処理は一般にバンドパスフィルタリング技術及びベクトル処理技術を含む。前処理の具体的な形態は、送信信号が高送信エネルギーパルスXHであるか又は低送信エネルギーパルスXLであるかに依存する。デジタルマルチプレクサ584が、第1セットの前処理係数PH584、第2セットの前処理係数PM585、及び第3セットの前処理係数PL586を受ける。前処理係数は、バンドパスフィルタリングのためのフィルタ係数を含む。ベクトル処理制御580が、どのセットの前処理係数を前処理に用いるべきかを決定する。ステップ570で、前処理された信号のエンベロープが検出される。ベクトル処理制御580は、デジタルマルチプレクサ588が検出処理のために第1セットの検出係数DH590、第2セットの検出係数DM585、又は第3セットの検出係数DL592を選択するかを決定する。次にステップ572で、検出された信号は後処理される。ここで、後処理は一般に、視覚的にアピールしかつ有用な画像を生成するべく対数圧縮及びガンマ補正を含む。
【0071】
次にステップ574で、後処理された信号は、極座標から直交座標にスキャン変換される。次にステップ576で、高送信エネルギー、中間送信エネルギー、及び低送信エネルギーのスキャン変換画像が一の複合画像に結合される。当該3つの画像の単一複合画像への結合又は融合は、各画像ごとのダイナミックレンジの一部を選択することによって行われる。次に複合画像は、いずれの単一画像よりも広いダイナミックレンジを有する。次に複合画像は、表示デバイスのパラメータを満足させるべく圧縮される。複合画像は、ステント支柱上の新生組織成長並びに中膜層を超えて及びこれを含む組織を含む。複合画像はさらにステント・ブルーミング・アーチファクトを回避する。個々の高送信エネルギー、中間送信エネルギー、及び低送信エネルギー画像はまず、後処理中にアラインメントが取られて、モーション・アーチファクトを最小化することができる。さらに、当該複数画像は、例えば心周期の拡張終期のような比較的小さなモーションの期間中に取得されて、モーション・アーチファクトをさらに最小化することができる。パルス送信同士の間の時間を最小化するべく取得されたデータの深度又はレンジを最小化することによって、モーション・アーチファクトをさらに最小化することができる。
【0072】
本発明の特定の実施例を図示し説明したが、変形が可能であるから、添付の特許請求の範囲において、本発明の真の要旨及び範囲内にあるすべての変更及び変形をカバーすることが意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位端を有する細長い本体と前記細長い本体に挿入されるべく構成されたイメージングコアとを備えるカテーテルであって、前記イメージングコアは超音波エネルギーパルスを送信するべく及び反射超音波エネルギーパルスを受信するべく構成されたカテーテルと、
前記イメージングコアに結合されたイメージングエンジンであって、前記イメージングコアにエネルギーパルスを与えて前記イメージングコアに前記超音波エネルギーパルスを送信させるべく構成されたイメージングエンジンと
を含み、
前記エネルギーパルスは繰り返しシーケンスで構成され、各シーケンスのエネルギーパルスは異なる特徴を有する血管内超音波イメージングシステム。
【請求項2】
各シーケンスのエネルギーパルスは少なくとも2つのパルスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
各シーケンスのエネルギーパルスは3つのパルスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記3つのパルスの第1パルスは高エネルギーの特徴を有し、前記3つのパルスの第2パルスは中間エネルギーの特徴を有し、前記3つのパルスの第3パルスは低エネルギーの特徴を有する、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記異なる特徴はパルスエネルギーである、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記異なる特徴は周波数である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記異なる特徴は帯域幅である、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記イメージングエンジンは、
前記反射超音波エネルギーパルスを画像フレームにおいて処理するプロセッサと、
前記反射超音波エネルギーパルスの前記異なる特徴を検出する検出器と
を含み、
前記イメージングエンジンは、検出された異なる特徴に基づいて前記フレームを処理する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記イメージングエンジンは、共通の検出された特徴を有する反射超音波エネルギーパルスのみを処理するべく構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記イメージングエンジンはさらに、反射超音波エネルギーパルスのシーケンスの異なる特徴に基づいて複合画像を与えるべく構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記イメージングエンジンは、前記反射超音波エネルギーパルスを別個の画像フレームにおいて処理するプロセッサを含み、各画像フレームは、異なるエネルギーパルスの特徴のそれぞれに対応し、前記イメージングエンジンは、前記別個の画像フレームを同時に表示するための表示信号を与える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
遠位端を有する細長い本体と前記細長い本体に挿入されるべく構成されたイメージングコアとを備えるカテーテルを与えることであって、前記イメージングコアは、超音波エネルギーパルスを送信するべく及び反射超音波エネルギーパルスを受信するべく構成されることと、
前記イメージングコアに前記超音波エネルギーパルスを送信させるべく前記イメージングコアにエネルギーパルスを与えることと
を含み、
前記エネルギーパルスは繰り返しシーケンスで構成され、各シーケンスのエネルギーパルスは異なる特徴を有する方法。
【請求項1】
遠位端を有する細長い本体と前記細長い本体に挿入されるべく構成されたイメージングコアとを備えるカテーテルであって、前記イメージングコアは超音波エネルギーパルスを送信するべく及び反射超音波エネルギーパルスを受信するべく構成されたカテーテルと、
前記イメージングコアに結合されたイメージングエンジンであって、前記イメージングコアにエネルギーパルスを与えて前記イメージングコアに前記超音波エネルギーパルスを送信させるべく構成されたイメージングエンジンと
を含み、
前記エネルギーパルスは繰り返しシーケンスで構成され、各シーケンスのエネルギーパルスは異なる特徴を有する血管内超音波イメージングシステム。
【請求項2】
各シーケンスのエネルギーパルスは少なくとも2つのパルスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
各シーケンスのエネルギーパルスは3つのパルスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記3つのパルスの第1パルスは高エネルギーの特徴を有し、前記3つのパルスの第2パルスは中間エネルギーの特徴を有し、前記3つのパルスの第3パルスは低エネルギーの特徴を有する、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記異なる特徴はパルスエネルギーである、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記異なる特徴は周波数である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記異なる特徴は帯域幅である、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記イメージングエンジンは、
前記反射超音波エネルギーパルスを画像フレームにおいて処理するプロセッサと、
前記反射超音波エネルギーパルスの前記異なる特徴を検出する検出器と
を含み、
前記イメージングエンジンは、検出された異なる特徴に基づいて前記フレームを処理する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記イメージングエンジンは、共通の検出された特徴を有する反射超音波エネルギーパルスのみを処理するべく構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記イメージングエンジンはさらに、反射超音波エネルギーパルスのシーケンスの異なる特徴に基づいて複合画像を与えるべく構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記イメージングエンジンは、前記反射超音波エネルギーパルスを別個の画像フレームにおいて処理するプロセッサを含み、各画像フレームは、異なるエネルギーパルスの特徴のそれぞれに対応し、前記イメージングエンジンは、前記別個の画像フレームを同時に表示するための表示信号を与える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
遠位端を有する細長い本体と前記細長い本体に挿入されるべく構成されたイメージングコアとを備えるカテーテルを与えることであって、前記イメージングコアは、超音波エネルギーパルスを送信するべく及び反射超音波エネルギーパルスを受信するべく構成されることと、
前記イメージングコアに前記超音波エネルギーパルスを送信させるべく前記イメージングコアにエネルギーパルスを与えることと
を含み、
前記エネルギーパルスは繰り返しシーケンスで構成され、各シーケンスのエネルギーパルスは異なる特徴を有する方法。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公表番号】特表2013−507227(P2013−507227A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534276(P2012−534276)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/052258
【国際公開番号】WO2011/046903
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(510171405)シリコンバレー メディカル インスツルメンツ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/052258
【国際公開番号】WO2011/046903
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(510171405)シリコンバレー メディカル インスツルメンツ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
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