説明

コロイダル金属

本発明の目的は薬品として健康安全上に問題のないコロイダル金属、またコロイダル金属アロイを含有する健康食品、および酵素と作用する程度のサイズで過剰自己免疫抑制効果のある化粧品、医薬品を廉価に提供することにある。
本発明のコロイダル金属は径が0.5ナノメートル以上、2ナノメートル以下の金属またはそのアロイ粒子と包摂する低分子量化合物が含まれる。好ましくは金属またはそのアロイ粒子と包摂する低分子量化合物がシクロデキストリンまたはおよびクラウンエーテルであり、また好ましくはシクロデキストリンがβまたはおよびγまたはおよびδシクロデキストリンである。また好ましくはクラウンエーテルの環構成原子数が30から99である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロイダル金属を含有する健康食品、化粧品、医薬品および医薬部外品に関する。
【背景技術】
【0002】
コロイダル金属は写真用銀コロイドが有名であり、より微細粒子を形成することが写真の解像度を向上させることに繋がり種々の研究がなされている。
【0003】
非特許文献1に臭化銀コロイドの代表的なゾル・ゲル法による生成メカニズムが杉本らにより紹介されている。臭化銀粒子は光酸化により酸化銀粒子となり、還元されて銀粒子となる。
【0004】
YOUNG, Mark, Jらによる特許文献1に蛋白質ケージを利用した数ナノメートル(以下「nm」と略記する。)のナノサイズの金属粒子を含有する蛋白質センサーの製造方法が記載されている。しかし、この方法ではケージとして蛋白質を使用するため、例えば薬品などに使用する際に安全上の確認を厳重に行う必要が発生する。例えば天然ゴム由来の蛋白質に起因して重症のアレルギー性喘息症状が発症することがある。食品、薬品の用途では蛋白質に対する広範な安全性の確認が不可欠で、安全性確認費用が高額になる。また、一般に蛋白質は分子量が巨大であるため、金属の含有濃度が小さく、有効成分として経済的に不利である。さらには巨大分子に包まれているため経皮投与の方法は採用できない。。
【0005】
Oh Seong-Geunらによる特許文献2に金属塩、還元剤、ポリオキシエチレン、ラウリル酸ソルビット、ドデシル硫酸ナトリウムによる200nm以下、好ましくは20nm以下のナノ銀粒子などの製造方法が記載されている。しかし、この文献には2nm以下の金属粒子をコントロールして製造する方法は記載されていない。また好ましい還元剤としてヒドラジンの系が挙げられている。金属塩は還元されるため健康安全上に問題は少ないと思われるが、ヒドラジンおよびその分解物は健康安全上好ましくない。
【0006】
Yali Liuらによる非特許文献3にはシクロデキストリンを用いた金ナノ粒子の製造方法が記載されている。しかし、ナノ粒子の粒子径は最小で2から4nmに止まり、酵素と作用するには大き過ぎるサイズである。また、この文献には2nm以下の金属粒子をコントロールして製造する方法は記載されていない。
【0007】
Lee S Simonによる非特許文献2には金イオンによる筋肉注射剤が自己免疫性疾患であるリウマチ性関節炎に効果があるが、多量投与が必要であり、肝臓および腎臓に重大な副作用が発生すると記載されている。
【非特許文献1】J. Soc. Photogr. Sci Technol. Japan 40, 15-21 (1977)
【非特許文献2】Lee S Simon, 鄭rthritis Advisory Committee March 5, 2003・HFD-550/CDER/FDA
【非特許文献3】Chem. Matter, 15,4172-4180(2003)
【特許文献1】WO 2004/001019,PCT/US2003/003364号公報
【特許文献2】United States Patent 6,660,058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は薬品として健康安全上に問題のないコロイダル金属、またコロイダル金属アロイを含有する健康食品、および酵素と作用する程度のサイズで過剰自己免疫抑制効果のある化粧品、医薬品を廉価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のコロイダル金属は径が0.5ナノメートル以上、2ナノメートル以下の金属またはそのアロイ粒子と包摂する低分子量化合物が含まれる。好ましくは金属またはそのアロイ粒子と包摂する低分子量化合物がシクロデキストリンまたはおよびクラウンエーテルであり、また好ましくはシクロデキストリンがβまたはおよびγまたはおよびδシクロデキストリンである。また好ましくはクラウンエーテルの環構成原子数が30から99である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコロイダル金属、特にコロイダル金、および金アロイはメラニン産生抑制効果ならびにメラノサイト増殖抑制効果があり、リウマチ剤、坑アレルギー剤、抗黒色皮膚癌剤としても有効である。粒径が分子サイズの0.5ナノメートル以上、2ナノメートル以下と小さいため経皮吸収させることができ、患部に必要際少量を限定的に投与することができ、筋肉注射薬と異なり過剰投与による副作用を未然に防止することができる。また、金チオマレイン酸のように3価の毒性の強い金イオンではなく、金属であるため副作用が少ない。健康食品として使用する際にもイオンより安定性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のコロイダル金属は径が0.5ナノメートル以上、2ナノメートル以下の金属またはそのアロイ粒子と包摂する低分子量化合物を含む。好ましくは金属またはそのアロイ粒子と包摂する低分子量化合物がシクロデキストリンまたはおよびクラウンエーテルであり、また好ましくはシクロデキストリンがβまたはおよびγまたはおよびδシクロデキストリンである。また好ましくはクラウンエーテルの環構成原子数が30から99である。
【0012】
本発明のコロイダル金属の金属としては哺乳動物に必須であるナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、リン(P)、ケイ素(Si)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、砒素(As)、セレン(Se)、モリブデン(Mo)、錫(Sn)、ヨウ素(I)、鉛(Pb)、フッ素(F)、ルビジウム(Rb)、必須であろうと考えられているリチウム(Li)、ベリリウム(Be)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、臭素(Br)、ストロンチウム(Sr)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、アンチモン(Sb)、セシウム(Cs)、バリウム(Ba)、タングステン(W)、金(Au)、水銀(Hg)などの中で通常の食材から摂取しがたい金属例えば金、プラチナ、銀およびレアメタルなどが健康食品として好適である。
【0013】
また本発明では0.5から2nmのサイズの金または金アロイ粒子がメラニン産生抑制およびメラノサイト増殖抑制作用があること、ならびに過剰自己免疫作用抑制剤としての効果があることを見出し、本発明の医薬品ならびに化粧品の完成に至った。
【0014】
本発明のコロイダル金属の原料としては水溶性金属塩、例えばキレート塩、硝酸塩、塩酸塩などがある。適当な水溶性があれば酢酸塩などの有機酸塩であっても良い。金属塩は水溶液またはアルコール水溶液などとして供される。例えば硝酸銀水溶液、4塩化金酸水溶液などであり、混合して使用されることもある。
【0015】
原料金属塩水溶液またはアルコール水溶液の濃度は金属により異なるが、金属粒子径を小さくコントロールするために、金属換算で50ppm以下が好ましい。より好ましくは20ppm以下である。不活性金属、例えば金の場合は10ppm以下、さらに好ましくは5ppm以下である。金属塩濃度が大きいほど粒径分布が広くなり、また2次凝集が起こり易い。
【0016】
還元剤は例えばクエン酸、リンゴ酸、蓚酸、アスコルビン酸、乳酸などの天然ヒドロキシカルボン酸およびそのアルカリ金属塩、グルコピラノース、グルコフラノース、マンノース、サッカロース、ラクトース、キシリット、アガロース、ソルビット、デキストリンなどのポリオール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコールを使用することができる。これらの還元剤は比較的緩和な還元剤であるが、本発明の金属または金属アロイ粒子の径をコントロールするためにはできるだけ緩和な還元剤を使用することが好ましい。特に金属として安定な金または金アロイは最も緩和な還元剤である低分子アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、グリセリンなどが特に好ましい。
【0017】
使用する還元剤が上記のような緩和な還元剤である場合、金属塩に対し少なくとも等モル以上、好ましくは2倍等モル以上使用することが好ましい。より好ましくは5倍等モル以上である。より緩和な還元剤、例えばエタノール、グリセリンなどの低分子アルコールの場合などの場合は大過剰に加えることもある。
【0018】
本発明では低分子量の包摂化合物を金または金アロイなどの金属還元析出座席となるホストとして使用する。低分子量の包摂化合物として例えばシクロデキストリン、クラウンエーテルなどがあるが、シクロデキストリンは天然産物であり、安全性および経済性の面で優れている。
【0019】
包摂化合物としてのシクロデキストリンはグルコース6員環のαからあるが、αシクロデキストリンの空孔径は約0.45nmであり、7員環βシクロデキストリンは0.7nm、8員環γシクロデキストリンは0.85nm、9員環δシクロデキストリンは0.90nmである。金などの重金属の場合原子直径が大きいので7員環以上のシクロデキストリンが好ましく、より好ましくは8員環以上である。シクロデキストリンはバケツのような形であり、上下から挟み込む形で金属粒子を包摂する場合がある。この場合、空孔径の約2倍の空孔として作用する。シクロデキストリンは本発明の金または金アロイなどの金属還元析出座席となる。例えば本発明に使用する金粒子1個を構成する金原子の最小数は約十個であり、体心立方格子を形成するとその大きさは約0.5nmになる。包摂化合物の必要最小限座席数はこの構成原子数で除したモル数になる。従って、その濃度は金属モル濃度の10分の1モル以上が好ましい。包摂化合物を過剰に使用することは経済的に不利であるが、実用的に粒子サイズをコントロールする上では金属モル濃度の等モル以上が好ましい。さらに好ましくは2倍等モル以上である。
【0020】
シクロデキストリンと同様に包摂化合物としてのクラウンエーテルにはヘテロ原子が酸素である通常のポリエチレンオキサイド型クラウンエーテル、ヘテロ原子が硫黄であるポリオキシチオキサイド型チオクラウンエーテル、ヘテロ原子が窒素と硫黄であるアザチオクラウンエーテルなどがある。クラウンエーテルの構成原子数とエーテル環内径には相関性があり、本発明に使用するクラウンエーテルの内径は0.5〜2nmであり、環構成原子数で30から99である。30―クラウンエーテルー10の内径は約0.53nmであり、51−クラウンエーテルー17の内径は約0.96nmである。99−クラウンエーテルー33の内径は約2nmである。クラウンエーテルの製造法は両末端に塩素などのハロゲンを持つポリエチレンオキサイド、例えばヘプタエチレンオキサイドジクロライドとポリエチレンオキサイド、例えばヘプタエチレンオキサイドをテトラヒドロフラン(以下「THF」と略記する。)溶液中で水酸化ナトリウムにより脱塩酸反応させることにより、構成原子数30の30−クラウンエーテルー10を製造することができる。その濃度は金属モル濃度の10分の1以上が好ましい。包摂化合物を過剰に使用することは経済的に不利であるが、実用的に粒子サイズをコントロールする上では金属モル濃度の等モル以上が好ましい。さらに好ましくは2倍等モル以上である。
【0021】
本発明のコロイダル金属の製造は例えば予め保冷したシクロデキストリン水溶液またはアルコール水溶液に予め保冷した規定濃度に希釈した金属塩水溶液を攪拌しつつ添加し、還元剤水溶液を徐々に添加し、調製した後、昇温し、反応を促進する。コロイダル金属粒子径をコントロールするためには反応量および反応速度を小さくすることが肝要である。必要な場合には反応促進のため紫外線などの光照射を行っても良い。攪拌による空気酸化を防止するため窒素フローを行うことが好ましい。
【0022】
反応温度は反応系により異なるが、調合の際には各成分ごとに5℃以下に冷却し、混合後、反応所定温度まで徐々に昇温することがサイズコントロール上、好ましい。反応はできるだけ緩やかに行う方がサイズコントロール上、また2次凝集などの防止上、好ましく、低濃度、低温で長時間反応させることが好ましい。反応温度は10℃から50℃が好ましく、2nm以下の粒径収率向上するためには緩やかな反応が好ましく、反応時間10時間以上が好ましい。
【0023】
反応容器はガラス製、ガラスライニングまたはポリエチレンライニング容器が好ましい。容器は予め硝酸水溶液などで十分に洗浄し、不純物の混入を防止することが好ましい。水は蒸留水をイオン交換し、金属成分を予め除去しておくと良い。
【0024】
金は反応性が乏しい金属である。また、金は酒、かまぼこ、菓子などの食品に金箔として添加されているが、日本国内では食品添加物として認可され、安全性が確認されている。ただし、金属状態の金は体内で吸収されることは少ないと考えられている。
【0025】
米国FDAによるArthritis Advisory Committee、March 5, 2003にIM (Intramuscular) Goldがリウマチ治療薬として1960年代まで使用され、その薬効は認められたものの、腎臓や肝臓などに金が蓄積したり、皮膚障害を発生する副作用が大きく、近年は使用されていないことが記載されている。この治療薬は筋肉注射薬として使用されたが、3価の金イオンの金チオマレイン酸であるため、毒性が強く、さらには1回の投与量が数十mgと大きく、患部への適切な投与ができなかったため、副作用が厳しく、使用禁止となった。この報告でも明らかなように、リウマチ性関節炎は関節部への刺激により酵素(サイトカイン)が関与する過剰自己免疫作用により骨膜破壊、骨変形に至る発症事例である。
【0026】
本発明のコロイダル金を100ppb含有する固形脂肪酸ナトリウム石鹸をリウマチ性関節炎患部の洗浄に夕刻1日1回使用することにより、翌朝の患部の腫れ、硬直、痛みなどを軽減することができた。特に過度の運動により、損傷を受けた膝関節の予防治療に効果的であった。この事実は酵素と反応しうるサイズ(2から0.5nm)の本発明のコロイダル金が洗浄作用中に経皮吸収され、患部に到達し、過剰自己免疫作用を阻止したものと推察される。リウマチ性関節炎の鍵と見られるサイトカイン酵素システインプロテアーゼであるインタールーキンの官能基の一つにチオール基を持つシスチン(Cys285)が挙げられており、本発明のコロイダル金粒子がこのシスチン座席を占めることにより、サイトカインの作用を封じ、初期リウマチ性関節炎に対する薬効が得られたものと推察される。
【0027】
本発明の上記石鹸による患部洗浄は経皮吸収の主要経路である汗腺、毛穴などの皮脂成分を除去する効果もあり、さらに入浴時の皮膚温上昇により、汗腺が開き、吸収効率が向上したものと考えられる。また、洗浄による物理的な作用が包摂化合物から金粒子を取り出し、リンパ液中に吸収しやすくなったもとの推察される。
【0028】
また、Yi Xiao らにより1.4nm径の金粒子とジチオール(ジスルフィド)を結合させた電極の開発がなされ、SCIENCE,VOL 299,21 MARCH 2003, 1887に掲載されている。通常見かける金箔は数ミクロンの厚さであっても反応性に乏しく、安定である。しかし、このようなサイズの金粒子になると金属結晶表面格子欠陥が外郭電子状態を不安定化し、ジアシルイミドまたはチオールと結合するようになると推測される。酵素は触媒として作用するが、その作用箇所である活性部位の大きさは立体的に限定されていることが多い。本発明のコロイド金属または金属アロイのサイズはこの酵素の活性部位の大きさと同じ程度であり、2nm以下、より好ましくは1.5nm以下、さらに好ましくは1.0nm以下、金属イオンの大きさより大きく結晶格子を構成しうる0.5nm以上である。
【0029】
日焼けをすると皮膚が黒くなるが、これは紫外線の刺激により、皮膚が赤くなり、脳から指令を受けたメラニン産生細胞(メラノサイト)が活発にメラニンを産生するために起こる。このメラニン産生に係わる酵素がチロシナーゼである。銅は肝臓に蓄えられているが、脳の指令により皮膚に運ばれ、メラノサイトのシスチンに預けられる。チロシナーゼはシスチンから渡される銅と結合することにより活性化し、メラニン産生に寄与する。ここで、銅の代わりに予め経皮投与された金がシスチンに渡されていると、運ばれてきた銅はシスチンに預けることができなくなり、チロシナーゼは活性化することができなくなる。このようにして本発明のコロイダル金は経皮投与により肌の美白効果に寄与することができる。本発明のコロイダル金を日焼けで発赤した直後に経皮投与すると皮膚が黒くならなかった。これは経皮投与によりメラニン産生が抑制されたことを示している。
【0030】
本発明者らは6週齢雌褐色モルモットの毛を刈り取った2cm角の背中部位の皮膚に5ppm濃度の本発明コロイダル金水溶液を0.1ml、14日間、1日1回経皮投与し、隣接するブランク部位と比較した結果(図1)、紫外線照射による日焼けが肉眼でも容易に判別できる程度に軽減されることを見出した。この1回投与量は僅か0.5μgと一般薬の有効成分と比較しても非常に僅かであった。試験部位と隣接するブランク部位との間に薬効の有意差が現れたことは薬効成分である本発明のコロイダル金粒子が直接患部に作用することと、薬効成分が患部以外に移動しないことを意味している。この事実は投与量が少ないことと併せ、直接患部のみに薬効成分を投与できる本発明の投与方法が副作用の発現確率が著しく小さく優れた投与方法であることを実証している。
しかし、本発明のコロイダル金属の投与方法は上記経皮によるものに限定するものではなく、健康食品の記述の際に例示したように経口投与も可能である。
【0031】
さらに驚くべきことは本発明のコロイダル金粒子の経皮投与により、日焼けで生成したシミまた黒子を脱色することができた事実である。日焼けは新しく皮膚が再生する約1ヵ月後には元に戻る。しかし、皮膚のシミや黒子は経時変化なくそのままである。この事実は紫外線暴露などの刺激がなくなった後も、シミや黒子の部位はメラニンをメラノサイトが造り続けていることを示している。また、本発明のコロイダル金粒子の薬効により、シミや黒子の脱色した痕は皮膚組織が陥没し、肌理が粗くなっていることが観察された。この痕が示す意味はシミや黒子の生成時にメラノサイトが異常に増殖し、継続的に皮膚の黒さが維持され、その反面、皮膚の正常組織細胞の数が減少していたことを示している。黒子が皮膚から盛り上がっている場合は正常組織の数の減少がなく、メラノサイトが異常増殖しているため、周囲より盛り上がっていると推察される。盛り上がった黒子が小さくなってくること、および皮膚組織の陥没は本発明のコロイダル金粒子の経皮投与がメラノサイトの異常増殖を停止させたことを示している。皮膚細胞の異常増殖は良性の場合、いぼ、魚の目、シミ、黒子などであり、悪性の場合、黒色皮膚癌となる。従って、本発明のコロイダル金粒子の経皮投与が黒色皮膚癌の治療薬として有望であることが分かる。
【0032】
本発明のコロイダル金および金アロイの粒子は分子レベルの大きさで微細なため、モルモットの実験でも明らかなように皮膚から速やかに吸収される。特に汗腺や毛穴などから吸収されることが期待される。従って、本発明のコロイダル金を化粧用クリーム、ローション、石鹸、シップ剤などに添加配合することにより、肌の美白、およびシミ抜き効果を付与することができる。また、経皮薬としてリウマチ性慢性関節痛薬、抗皮膚癌剤として使用することができる。本発明のコロイダル金および金アロイは作用箇所に直接投与でき、自己免疫作用に関する酵素などに作用するため薬剤としての配合量は微量で良い。驚くべきことには一般薬剤の投与量が数mgであるのに対し、化粧用クリーム、ローション、石鹸、シップ剤などに添加配合する配合量は金量換算5ppb以上で効果がある。この投与量は数μgの単位であり、一般薬剤と比較し、非常に微量で効果がある。これは薬剤の副作用など安全性の面で非常に好ましい。本発明のコロイダル金の濃度は必要とする薬効により異なるが、効果を早期に求める場合には好ましくは10ppb以上、より好ましくは100ppb以上である。さらに好ましくは200ppb以上である。
【0033】
水を含有するクリーム、ローション、石鹸、シップ剤などに本発明のコロイダル金などを添加配合する方法としては本発明のコロイダル金水溶液またはアルコール水溶液をクリーム、ローション、石鹸、シップ剤などの原料に攪拌混合すれば容易に製造することができる。攪拌に際しては製品粘度が大きければニーダーを、小さければホモミキサーを使用するなど粘度により適宜攪拌方法を選択すれば良い。攪拌時に窒素パージを行っておくことは酸化防止の観点から好ましい。
【0034】
本発明のコロイダル金または金アロイはチオール基、またはジアシルイミド基と反応するため、クリーム、ローション、石鹸、シップ剤などの原料、添加物にこれらの官能基を持つ化合物は避けることが好ましい。その他性能に問題のない範囲で一般的にこれらの製品に使用される着色剤、粘度向上剤、安定剤、香料、防腐剤、副作用を発生しない他の薬効成分などを併せて使用することができる。例えば本発明のコロイダル金属に増粘剤などの添加剤を必要に応じ、本発明のコロイダル金属の特性を阻害しない範囲で加えることができる。例えば増粘剤、補助保護コロイドとして水溶性デキストリン、デンプン、アラビアガム、ゼラチン、ポリグリコールなどを使用することができる。
【0035】
銀製食器で知られているように銀は抗菌剤として古くから重用されている。その作用は銀イオンがシスチンのチオール基に結合し、スルフィド結合を阻害することによるとされている。銀イオンが細胞内の硫黄の近辺に集合することが観察されている。本発明のコロイダル銀も同様にチオール基と反応する。しかし、銀イオンは反応性が大きく、結合エネルギーが大きいが、本発明のコロイダル銀はクエン酸による還元など、弱酸性条件下でも製造されるように銀イオンと比較すると安定で、変色の恐れも少ない。
【0036】
上水道飲料水の中にも地質により銀が含まれていることがある。1993年8月、米国EPAはRegistration Eligibility Document (RED)で経口摂取量(RfD)の上限を5μg/kg/日と定めている。また、1〜50ppm濃度の数十nm径銀粒子または銀イオンの水コロイドは健康食品としてDietary Supplement Health and Education Act (DSHEA)に基づき米国で販売されている。
【0037】
化粧品は水を含有し、開封後も常温で保管され栄養成分が多いため、細菌の増殖が起こり易い。防腐剤としてパラベン(安息香酸エステル)が広く用いられるが、安全性の面で十分ではない。本発明のコロイダル銀および銀アロイも銀を主成分とし、抗菌剤、防腐剤として有効に作用する抗菌性能がある。液体培地(Soybean-Casein Digest Broth, BECTON DICKINSON AND CAMPANY製)を使用した混濁法による測定で、黄色ぶどう球菌(JCM No.2151)を32℃で3日間培養後、およびカンジダ菌23℃で3日間培養し得られた最小発育阻止濃度は20ppmと優れていた。この値は比較品として使用した硝酸銀と同じ値であり、ゼオライト銀置換体などの抗菌剤の約1/25であった。ゼオライト銀置換体では抗菌性が不足し使用できなかった防腐剤として使用可能な抗菌性能を示していた。従ってゼオライト銀置換体で使用されている抗菌剤用途、例えば皮膚の細菌繁殖による作用を軽減することができ、低濃度で皮膚清浄剤として抗菌・防臭性能がある。
【0038】
銀イオンと本発明のコロイダル銀を比較すると同じ金属濃度では銀イオンの方の数が多いため、強い抗菌性を示しそうである。しかし、銀イオンと本発明のコロイダル銀は反応性が異なり、本発明のコロイダル銀は効率良く作用するため、数の不利を補ったものと推察される。即ち、銀イオンは反応性が強いため、細胞壁などでも捕捉され浪費されるが、この分抗菌作用としては余り作用しない。本発明の銀コロイドは酵素に主として作用するため、少量でも有効であると考えられる。
【実施例】
【0039】
実施例1
5℃に冷却した金含有濃度100ppm塩化金酸水溶液200mlに保護コロイドとしてβシクロデキストリン1,400ppm水溶液200ml、還元剤としてクエン酸モノソウディウム塩を金モル数に対し、等モルを4分割し加え、窒素パージしながら攪拌しつつ1分間に2℃の割合で40℃まで昇温し、40℃到達後1時間保持し、還元反応を行い、さらに逐次等モルまで分割した残りの還元剤を同様に繰り返し反応させ、本発明のほとんど無色33ppmのコロイダル金を製造した。コロイダル金の金ナノ粒子の平均粒径はコロイダル金をコロジオン膜メッシュ上に載せ、透過型電子顕微鏡写真の画像解析から求めた。金粒子の粒径分布は10nm以上と最小グループに分かれ、最小グループ平均粒径は約0.9nmであり、βシクロデキストリンの空孔サイズとほぼ同じ大きさであった。2nm以下の粒子も数多く観察することができた。
製造したコロイダル金は30日室温で保管したが、安定で変色や2次凝集は認められなかった。
【0040】
比較例1
比較例1としてβシクロデキストリンの代わりに分子量約10,000の水溶性デキストリンを使用したコロイダル金は平均粒径が5.7nmと大きく、部分的な2次凝集が認められた。また、参考のため90℃以上で還元反応させると瞬時に反応し紅赤色を呈し、金ナノ粒子の粒径は全て10nm以上になり、2nm以下の金ナノ粒子は観察されなかった。
【0041】
実施例2
5℃に冷却した金含有濃度10ppm塩化金酸水溶液200mlに保護コロイドとしてβシクロデキストリン140ppmと、還元剤エタノールを20重量%含有する水溶液200mlを加え、窒素パージしながら攪拌しつつ1分間に2℃の割合で20℃まで昇温し、20℃到達後48時間保持し、還元反応を行い、本発明のほとんど無色5ppmコロイダル金粒子を製造した。コロイダル金粒子の粒径分布はコロジオン膜メッシュ上に載せた透過型電子顕微鏡写真を撮影し、求めた。(図2)図2で示すように2nm以下、0.5nm以上の粒子が観察された。包摂するβシクロデキストリンは電子線が透過するため、この写真では観察することはできなかったが、粒径がβシクロデキストリン内孔の大きさの2倍未満に抑制されていることから、本発明のコロイダル金粒子がβシクロデキストリンの内部または向かい合った2分子により包摂されて結晶成長が停止していることが示唆された。
【0042】
実施例3
製造例1と同様にして5℃に冷却した銀含有濃度100ppm硝酸銀水溶液200mlにγシクロデキストリン3,200ppm水溶液200ml、リンゴ酸モノナトリウム500ppm水溶液200mlを4分割し、加え、窒素パージしながら攪拌しつつ1分間に2℃の割合で40℃まで昇温し、40℃到達後10時間保持し、還元反応を行い、本発明の黄褐色33ppmのコロイダル銀を製造した。コロイダル銀の粒径分布はコロジオン膜メッシュ上に載せた透過型電子顕微鏡写真を撮影し、求めた。(図3)図3で示すように2nm以下、0.5nm以上の粒子が観察された。
【0043】
反応時間1時間後のコロイダル銀には最小グループの平均径の粒子があり、10時間後もそれらを多数観察できたことから、γシクロデキストリンが銀金属析出の核となり、また保護コロイドとして粒子が過大にならないよう止めていることが確認できた。さらに、30日室温で保管したが、安定で変色や2次凝集は認められなかった。原料および反応後の生成物は全て食品添加物として使用できる範囲の安全なものであった。
【0044】
実施例4
固形やし油石鹸を細かくカットした後、等量の40℃温水で膨潤溶解した液に製造例2の本発明の5ppmコロイダル金をニーダーで混合し、成形後乾燥し、本発明のコロイダル金100ppbの本発明リウマチ関節炎治療用固形石鹸を製造した。
軽度のリウマチ性膝関節痛のあるボランティアモニター5人が毎夕1回入浴時この石鹸を使用し、1分間膝関節部分を洗浄後、温水洗した。翌朝起床時、腫れが軽減し、膝関節の硬直も少なく関節痛が軽減したモニターが2人現れた。さらに3日後には残りの3人も同様の傾向が認められ、全てのモニターで関節痛軽減効果が認められた。1週間後、この石鹸による洗浄を停止するとリウマチ性疾患の腫れ、硬直、関節痛が再発し、洗浄による効果は短期的な持続効果であった。
【0045】
実施例5
製造例2で製造した本発明の5ppmコロイダル金を100ppb、エタノール15%になるように水とエタノールで希釈し、本発明の美白用ローション剤を製造した。紫外線で皮膚が発赤し日焼けしたボランティアが洗顔後、このローションを手のひらに約3から5ml取り、顔に刷り込むように使用した。翌朝日焼けによる皮膚の黒色化をチェックしたが、メラニン産生による皮膚の黒色化は殆ど認められなかった。これは本発明のコロイダル金が経皮吸収され、チロシナーゼの活性化を抑制し、メラノサイトのメラニン産生を抑制したことを示している。比較例2、このローションを使用しなかったボランティアはメラニン産生による皮膚の黒色化が認められた。
さらに、毎日1回この美白ローションを継続して使用した約2週間後、シミの色が薄くなり、2ヵ月後にはシミの部分と正常部分の皮膚の色が同じになった。シミの痕は肌理が粗くなり、周囲の正常部分より少し陥没していた。これは本発明のコロイダル金がメラノサイトの異常増殖を停止させ、正常な範囲に戻したことを示している。シミ部分のメラノサイトの異常増殖は良性腫瘍と同じと考えられる。
【0046】
実施例6
銀含有濃度10ppm硝酸銀水溶液150mlに、金含有濃度5ppm塩化金酸溶液50mlを加え、実施例2と同様にして還元反応を行い、本発明の淡黄色12.5ppmのコロイダル銀金アロイを製造した。コロイダル銀金アロイの銀金アロイ粒子の平均粒径はコロイダル銀金アロイをコロジオン膜メッシュ上に載せ、透過型電子顕微鏡写真の画像解析から求めた。銀金アロイナノ粒子の最小グループ平均粒径は約0.8nmであり、βシクロデキストリンの空孔サイズとほぼ同じ大きさであった。金属粒子に銀と金が共存し、金属粒子が銀金アロイであることを蛍光X線で確認した。
【0047】
実施例7
実施例2と同様にしてβデキストリンを30−クラウンー10にのみ変更し製造した本発明の淡紫色金含有濃度5ppmのコロイダル金を製造した。コロイダル金の金ナノ粒子の平均粒径はコロイダル金をコロジオン膜メッシュ上に載せ、透過型電子顕微鏡写真から求めた。金ナノ粒子の多くはは0.5から2nmであり、30−クラウンー10の空孔サイズまたはその2倍とほぼ同じ大きさであった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】褐色モルモット14日間投与後メラニン産生比較図。
【図2】本発明コロイダル金の透過型電子顕微鏡写真
【図3】本発明コロイダル銀の透過型電子顕微鏡写真

【特許請求の範囲】
【請求項1】
径が0.5ナノメートル以上、2ナノメートル以下の金属またはそのアロイ粒子と包摂する低分子量化合物が含まれるコロイダル金属。
【請求項2】
金属またはそのアロイ粒子と包摂する低分子量化合物がシクロデキストリンまたはおよびクラウンエーテルである請求項1のコロイダル金属。
【請求項3】
シクロデキストリンがβまたはおよびγまたはおよびδシクロデキストリンである請求項1または2のコロイダル金属。
【請求項4】
クラウンエーテルの環構成原子数が30から99である請求項1または2のコロイダル金属。
【請求項5】
主たる金属が金、銀、プラチナである請求項1から4のコロイダル金属。
【請求項6】
請求項1から5のコロイダル金属を含有する健康食品
【請求項7】
請求項1から5のコロイダル金属を含有する化粧品または医薬品。
【請求項8】
請求項1から5のコロイダル金属を含有する過剰自己免疫抑制剤。
【請求項9】
過剰自己免疫抑制がメラニン産生抑制、自己免疫性関節痛抑制、メラノサイト増殖抑制、黒色皮膚癌抑制である請求項7または8の医薬品または医薬部外品または化粧品。
【請求項10】
請求項7から9の医薬品または医薬部外品または化粧品を経皮投与する投与方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【国際公開番号】WO2005/082561
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【発行日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510385(P2006−510385)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001796
【国際出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(503188092)有限会社サンサーラコーポレーション (14)
【Fターム(参考)】