説明

コンクリート函体の接続方法

【課題】 曲線施工など特にコンクリート函体の接合端面に推力が不均一に加わる場合であっても、作業効率を悪化させることなく、また、コンクリート函体の破損も生じることなく、コンクリート函体同士のズレ及び目開きを防止でき、更に、コンクリート函体に推力が加わることがなくなった後には金物類などの部品を容易に取り外して再利用できるコンクリート函体の接続方法を提供することを目的とする。
【解決手段】コンクリート函体4の外周面または内周面に埋め込むアンカーボルト21の上端を、固定金具20に螺子止めすることにより固定金具20の起立部24をコンクリート函体4表面に起立させ、全ネジボルト22の螺子端部を起立部24に貫通させて隣接するコンクリート函体4を跨いで架渡し、これを螺子止めすることにより、全ネジボルト22と固定金具20とアンカーボルト21とを互いに着脱自在として両コンクリート函体4を連結固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下水道、共同溝、電信・電話などの付設地下道等の地下構造物を市街地などに施工するオープンシールド工法や推進工法において適用でき、特に曲線施工を行う箇所において好適であるコンクリート函体の接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上下水道、共同溝、電信・電話などの付設地下道等の地下構造物を市街地などに施工する工法として、推進工法やオープンシールド工法が広く用いられている。推進工法とは、掘削機により切羽の掘削を行いながら掘削孔にコンクリート函体やヒューム管を発進坑に吊り降ろしてセットし、このコンクリート函体等を発進坑に配置した推進ジャッキにより押し出すことにより次のコンクリート函体等をセットするスペースを確保するという工程を繰り返して、順次縦列にコンクリート函体等を埋設する工法である。通常、先頭のコンクリート函体等の前には、刃口または掘進機が設置される。
【0003】
一方、オープンシールド工法は開削工法(オープンカット工法)とシールド工法の長所を活かした合理性に富む工法であり、オープンシールド工法に関する特許文献としては、例えば以下のものが存在する。
【特許文献1】特開2006−112101号公報
【特許文献2】特開2006−112100号公報
【0004】
このオープンシールド工法で使用するオープンシールド機1の概略は図9に示すように左右の側壁板1aと、これら側壁板1aに連結する底板1bとからなる前面、後面および上面を開口したもので、前記側壁板1aと底板1bの先端を刃口11として形成し、また側壁板1aの中央または後端近くに推進ジャッキ2を後方に向け上下に並べて配設する。図中3は隔壁を示す。
【0005】
かかるオープンシールド機1を使用して施工するオープンシールド工法は、図示は省略するが、発進坑内にこのオープンシールド機1を設置して、オープンシールド機1の推進ジャッキ2を伸長して発進坑内の反力壁に反力をとってオープンシールド機1を前進させ、地下構造物を形成する第1番目のコンクリート函体4を上方から吊り降ろし、オープンシールド機1のテール部1c内で縮めた推進ジャッキ2の後方にセットする。推進ジャッキ2と反力壁との間にはストラットを配設して適宜間隔調整をする。
【0006】
また、発進坑は土留壁で構成し、オープンシールド機1を発進させるにはこの土留壁を一部鏡切りするが、必要に応じて薬液注入などで発進坑の前方部分に地盤改良を施しておくこともある。
【0007】
ショベル等の掘削機9でオープンシールド機1の前面または上面から土砂を掘削しかつ排土する。この排土工程と同時またはその後に推進ジャッキ2を伸長してオープンシールド機1を前進させる。この前進工程の場合、コンクリート函体4の前にはボックス鋼材または型鋼を用いた枠体よりなるプレスバー8を配設し、オープンシールド機1は後方にセットされたコンクリート函体4から反力をとる。
【0008】
そして第1番目のコンクリート函体4の前に第2番目のコンクリート函体4をオープンシールド機1のテール部1c内で吊り降ろす。以下、同様の排土工程、前進工程、コンクリート函体4のセット工程を適宜繰り返して、順次コンクリート函体4をオープンシールド機1の前進に伴い縦列に地中に残置し、さらにこのコンクリート函体4の上面に埋戻土5を入れる。
【0009】
なお、コンクリート函体4をオープンシールド機1のテール部1c内に吊り降ろす際には、コンクリートブロック等による高さ調整材7をコンクリート函体4下に配設し、このテール部1c内でコンクリート函体4の左右および下部の空隙にグラウト材6を充填する。
【0010】
このようにして、オープンシールド機1が到達坑まで達したならばこれを撤去して工事を完了する。
【0011】
このようなオープンシールド工法では、前記のごとくコンクリート函体4をオープンシールド機1の前進に伴い縦列に地中に残置し、コンクリート函体4は、オープンシールド機1のテール部1c内に吊り降ろされ、オープンシールド機1の前進とともに該テール部1cから出て地中に残されていくものであり、オープンシールド機1はこのように地中に残置したコンクリート函体4に反力をとって前進する。
【0012】
コンクリート函体4は鉄筋コンクリート製で、図10に示すように左側板4a、右側板bと上床板4cと下床4dとからなるもので、前後方向面を開口10として開放されている。図中12は、端面部4eに開口し、前後のコンクリート函体4を緊結する緊結部材としてのPC鋼棒を挿入するためのシース孔、17はPC鋼棒の碇着用の箱抜きを示す。
【0013】
また、コンクリート函体4の強度を確保するため、一般的に隅角部はハンチ形状としてコンクリートの厚みが大きく、開口10の形状が面取りしたようになっている。
【0014】
ところで、曲線施工を行う場合にはオープンシールド機1としては、機体を前後方向に複数に分割し、それぞれ独自に方向変換可能な中折れ構造として主に推進ジャッキ2の使用位置や本数を変えながら上下左右方向に方向制御を行い推進させる。
【0015】
図11に示すように、オープンシールド機1がコンクリート函体4に反力をとって曲線を描きながら前進する際には、左右の推進ジャッキ2でコンクリート函体4にアンバランスの力を加えることや、一点鎖線で示すように、コンクリート函体4に対してオープンシールド機1が傾くため、先頭のコンクリート函体4に加わる力は端面に対して均等ではなく偏心推力が作用し、その結果、縦列するコンクリート函体4の接合端面相互にずれが生じる。
【0016】
なお、函体縦締めの方法としては通常PC鋼棒などの緊結部材による縦締めを行っており、これによってコンクリート函体4の接続部におけるずれはある程度抑えられるが、大きな偏心推力が発生すると函体接続端面の目開きが生じ、漏水発生の原因となる場合がある。
【0017】
さらに、曲線施工時では、曲線半径が小さくなるほどオープンシールド機1は推進ジャッキ2が片押しに近い状態となり、オープンシールド機1付近の函体接続端面の内側は直線施工時に比べて一層、目開きが生じやすい状態となる。
【0018】
このため、特に急曲線施工時には、コンクリート函体4の接続端面にボルトボックス16を設けて、ボルトにより隣接するコンクリート函体4同士を接続するが、曲線半径が小さくなるほど、函体に伝達された推進分力の目開きを起こさせる力が大きくなるため、コンクリート函体4内側の目開き防止措置として事前にコンクリート函体4の曲線内側部分の縦締め用ボルトを増やす方法が採られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかし、曲線施工時においては直線施工時に比べ、オープンシールド機1の推進に伴い発生するオープンシールド機1のピッチング、ローリング及びヨーイングに対して、通常、オープンシールド機1の推進方向制御が頻繁に行われる。
【0020】
このとき、使用する推進ジャッキ2の位置や本数によっては、コンクリート函体4の接続端面を緊結している一部のボルトに過大な目開きを起こさせる力が働き、場合によってはそのボルトの変形やボルトボックス16部分のコンクリートの破損を生じさせ、漏水の原因となる場合もある。
【0021】
また、推進ジャッキ2の推力によるコンクリート函体4のずれや目開きを防ぐことを目的として、コンクリート函体4の接続端面同士をボルトで接続したり、PC棒などによって緊結する場合には、そのためだけにボルトボックス16やPC棒緊結用の箱抜き17をコンクリート函体4に形成しなければならず、コンクリート函体4の作成に手間がかかってしまい、函体のずれ及び目開き防止対策としては効率が悪い。
【0022】
ところで、コンクリート函体4による地下構造物の敷設後には、コンクリート函体4には推進ジャッキ2の推力が加わることがないため、推進ジャッキ2の推力を受けることによるコンクリート函体4のずれ及び目開き防止を目的として使用したPC棒やボルトなどの金物類はその地下構造物においていずれ不用となるが、PC棒などの緊結部材は全体が一繋がりとなっているため、後で取り外して別の施工現場において再利用するのは不可能であり、非経済的である。
【0023】
また、コンクリート函体4の接続端面同士をボルトで接続した場合も、後でボルトを取り外すことを想定していないため、狭いボルトボックス16内で作業を行わなければならないなどボルトの取外しは非常に面倒であり、その労力を考慮すると、ボルトを後で取り外して別の施工現場において再利用するのは困難である。
【0024】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、曲線施工など特にコンクリート函体の接合端面に推力が不均一に加わる場合であっても、作業効率を悪化させることなく、また、コンクリート函体の破損も生じることなく、コンクリート函体同士のズレ及び目開きを防止でき、更に、コンクリート函体に推力が加わることがなくなった後には金物類などの部品を容易に取り外して再利用できるコンクリート函体の接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
前記目的を達成するため、請求項1記載の本発明は、地中埋設用として順次縦列に並べられ、推進ジャッキの推力を受けるコンクリート函体の接続方法において、脚部を函体に埋め込む固定金具を函体の外周面または内周面に起立させ、鋼棒の螺子端部を固定金具に貫通させて隣接する函体を跨いで架渡し、これを螺子止めすることにより、前記鋼棒を固定金具に対して着脱自在として両函体を連結固定することを要旨とするものである。
【0026】
請求項1記載の本発明によれば、隣接する函体は固定金具を介して鋼棒により連結固定されるから、曲線施工など特にコンクリート函体の接合端面に推力が不均一に加わる場合であっても、コンクリート函体同士のズレ及び目開きを防止することができる。
【0027】
なお、固定金具は脚部を函体外周面または内周面に埋め込んで取り付けるから、函体相互にずれを起こさせようとする力は、固定金具の脚部を介して函体の外周面や内周面に分散され、狭い函体接続端面に集中して力が加わることによりコンクリートが破損するということがない。
【0028】
そして、脚部を函体に埋め込むだけで固定金具を函体に取り付けることができ、後は固定金具同士を鋼棒によって接続すれば隣接する函体同士を接続固定することができるから、コンクリート函体の作成に手間がかかるなどの作業効率の悪化を招くことなく、コンクリート函体相互のずれ及び目開きを防止することができる。
【0029】
また、鋼棒は起立部に貫通させて螺子止めするものであるから、固定金具間の連結長さに合わせて螺子止め位置が調節可能であり、更に螺子止めの固さを調節することにより、連結の緊張度合いを調節することができる。
【0030】
そして、鋼棒は螺子端部を固定金具に螺子止めするから、固定金具に対して着脱自在であるとともに、固定金具および鋼棒はコンクリート函体の外周面上または内周面上に剥き出しの状態で取り付けるから、コンクリート函体による地下構造物の敷設後に鋼棒の取外し作業を容易に行うことができる。これにより、コンクリート函体に推力が加わることがなくなった後には鋼棒を取外し、他の施工現場において再利用することができ、経済的である。
【0031】
請求項2記載の本発明は、地中埋設用として順次縦列に並べられ、推進ジャッキの推力を受けるコンクリート函体の接続方法において、函体の外周面または内周面に埋め込むアンカー金具の上端を、固定金具に螺子止めすることにより該固定金具を函体表面に起立させ、鋼棒の螺子端部を固定金具に貫通させて隣接する函体を跨いで架渡し、これを螺子止めすることにより、前記鋼棒と固定金具とアンカー金具とを互いに着脱自在として両函体を連結固定することを要旨とする。
【0032】
請求項2記載の本発明によれば、函体の外周面または内周面に埋め込むアンカー金具の上端に固定金具を螺子止めするようにしたから、前記請求項1の作用に加えて、固定金具もアンカー金具から取り外して再利用が可能となり、更に経済的である。
【0033】
請求項3記載の本発明は、地中埋設用として順次縦列に並べられ、推進ジャッキの推力を受けるコンクリート函体の接続方法において、函体の外周面または内周面に埋め込むアンカー金具の上端を、隣接する函体を跨いで配置する型鋼材に螺子止めすることにより、型鋼材をアンカー金具に対して着脱自在として両函体を連結固定することを要旨とするものである。
【0034】
請求項3記載の本発明によれば、隣接する函体はアンカー金具を介して型鋼材により連結固定されるから、曲線施工など特にコンクリート函体の接合端面に推力が不均一に加わる場合であっても、コンクリート函体同士のズレ及び目開きを防止することができる。なお、函体相互にずれを起こさせようとする力は、アンカー金具を介して函体の外周面や内周面に分散されるから、函体の狭い接続端面に集中して力が加わることによりコンクリートが破損することがない。
【0035】
そして、函体の外周面または内周面にアンカー金具を埋め込み、これを型鋼材と固定するだけで、隣接する函体同士を接続固定することができるから、コンクリート函体の作成に手間がかかるなどの作業効率の悪化を招くことなく、コンクリート函体相互のずれ及び目開きを防止することができる。
【0036】
そして、型鋼材はアンカー金具に対して螺子止めするから着脱自在であるとともに、型鋼材はコンクリート函体の外周面上または内周面上に剥き出しの状態で取り付けるから、コンクリート函体による地下構造物の敷設後に型鋼材の取外し作業を容易に行うことができる。これにより、コンクリート函体に推力が加わることがなくなった後には型鋼材を取外し、他の施工現場において再利用することができ、経済的である。
【0037】
請求項4記載の本発明は、前記請求項1ないし請求項3のいずれかに加えて、函体の外周面または内周面のうち、隅角ハンチ部において連結固定することを要旨とするものである。
【0038】
請求項4記載の本発明によれば、函体の中でも特に厚みがあり、強度の高い隅角ハンチ部に固定金具の脚部やアンカー金具を埋め込むから、函体相互にずれや目開きを起こそうとする力が固定金具の脚部やアンカー金具に加わることによりその周辺のコンクリートが破損することをより確実に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0039】
以上述べたように本発明のコンクリート函体の接続方法は、曲線施工など特にコンクリート函体の接合端面に推力が不均一に加わる場合であっても、作業効率を悪化させることなく、また、コンクリート函体の破損も生じることなく、コンクリート函体同士のズレ及び目開きを防止でき、更に、コンクリート函体に推力が加わることがなくなった後には金物類などの部品を容易に取り外して再利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明のコンクリート函体の接続方法の第1実施形態に使用するコンクリート函体および固定金具の正面図であり、図2は同上平面図である。本発明のコンクリート函体の接続方法を使用するオープンシールド工法は前記従来例と同様であるから、ここでの詳細な説明は省略する。また、前記従来例と同一の構成要素については、同一の符号を付す。
【0041】
図1に示すように、鉄筋コンクリート製のコンクリート函体4は、前記従来例と同様に左右の側板4a、4bと上下の床板4c、4dとからなるもので、前後に開口して内部が開放されており、隅角ハンチ部4fにシース孔12を備える。
【0042】
コンクリート函体4の埋設方法は前記従来例と同様であり、地中においてオープンシールド機を掘進させるとともに順次コンクリート函体4を吊り降ろし、コンクリート函体4を縦列に埋設する過程において、オープンシールド機のテール部にコンクリート函体4を吊り降ろして載置した後に、シース孔12に、緊結部材としてPC鋼棒(不図示)を挿入し、仮締めして更にオープンシールド機を掘進させた後、緊結ジャッキによりPC鋼棒を縦締め緊結する。
【0043】
なお、このPC鋼棒による緊結作業は連設されるコンクリート函体4全体を縦締めして一体化することを目的とするものであり、オープンシールド機の推進ジャッキの推力によるコンクリート函体4同士の接合部におけるずれや目開きを効果的に防止するものではない。
【0044】
このコンクリート函体4の前後方向の端部付近において、内周下面と外周上面の隅角ハンチ部4fに、ハンドドリルを使用して、取付け孔23を設する。なお、取付け孔23は1箇所につき2本、幅方向に連設する。
【0045】
この取付け孔23の上に配置する固定金具20は図3にも示すように、断面L字形の金属板により構成し、一方の面をコンクリート函体4表面に載置するベース部26とし、他方の面をコンクリート函体4の表面上から立ち上がる起立部24として形成する。また、固定金具20の両端には、ベース部26と起立部24との間を塞ぐようにして、金属板による補強片25を溶接して取り付ける。
【0046】
更に、ベース部26には、起立部24の内側をコンクリート函体4の前後方向外側に向けて固定金具20を配置した状態で、取付け孔23に対応する位置にボルト孔26aを2つ設ける。また、起立部24には、その中央に貫通孔24aを設ける。
【0047】
このようにして構成される固定金具20をコンクリート函体4に取り付けるには、まず図3に示すように、取付け孔23に接着剤を注入し、アンカー金具としてのアンカーボルト21を埋め込む。
【0048】
次に固定金具20を取付け孔23上に配置し、ボルト孔26aからアンカーボルト21の頭部を突出させ、ワッシャー30を挟んでナット27により螺子締めすることにより、アンカーボルト21に固定金具20を固定する。これにより、固定金具20の下面にアンカーボルト21が取り付けられた状態となる。
【0049】
次に、図3および図4に示すように、隣接する両コンクリート函体4において、対向する固定金具20の起立部24同士を、鋼棒としての全ネジボルト22により連結固定する。なお、全ネジボルト22は起立部24の貫通孔24aに貫通挿入して、ワッシャー29を挟んでナット28により螺子締めすることにより、起立部24に対して着脱自在に固定される。
【0050】
このように、隣接する両コンクリート函体4は固定金具20を介して全ネジボルト22により連結固定されるから、曲線施工など特にコンクリート函体4の接合端面に推力が不均一に加わる場合であっても、コンクリート函体4同士のズレ及び目開きを防止することができる。
【0051】
なお、推進ジャッキの推力により、コンクリート函体4相互にずれを起こさせようとする力は、固定金具20の脚部としてのアンカーボルト21を介してコンクリート函体4の外周面や内周面に分散されるから、狭い接続端面に集中して力が加わることによりコンクリートが破損することがない。
【0052】
そして、コンクリート函体4の外周面または内周面にアンカーボルト21を埋め込むだけで固定金具20をコンクリート函体4に取り付けることができ、後は固定金具20の起立部24同士を全ネジボルト22によって接続すれば、隣接するコンクリート函体4同士を接続固定することができるから、コンクリート函体4の作成に手間がかかるなどの作業効率の悪化を招くことなく、コンクリート函体4相互のずれ及び目開きを防止することができる。
【0053】
そして、全ネジボルト22は固定金具20に対して着脱自在であるとともに、固定金具20および全ネジボルト22はコンクリート函体4の外周面上または内周面上に剥き出しの状態で取り付けるから、コンクリート函体4による地下構造物の敷設後にこれらの取外し作業を容易に行うことができる。これにより、コンクリート函体4に推力が加わることがなくなった後には全ネジボルト22および固定金具20の金物類を取外し、他の施工現場において再利用することができるので、経済的である。
【0054】
なお、コンクリート函体4の表面に取り付ける部材としては、前記のように固定金具20と全ネジボルト22とを別途使用せず、型鋼材のみを使用するようにしても良い。
【0055】
例えば型鋼材として図5に示すように、ウエブ31cの両側縁にフランジ31a、31bを備えるH形鋼31を、一方のフランジ31bを下側にして隣接するコンクリート函体4に跨って架渡し、このフランジ31bにボルト孔(不図示)を穿設して、コンクリート函体4に埋め込んだアンカー金具としてのアンカーボルト21の頭部に、ワッシャー30を挟んでナット27によりボルト締めして固定する。
【0056】
このようにすることで、H形鋼31をコンクリート函体4に対して着脱自在に固定することができ、推進ジャッキの推力を受ける間はH形鋼31を取り付けておく事により、コンクリート函体4同士のずれおよび目開きを防止することができ、コンクリート函体4の敷設後、推進ジャッキの推力を受けなくなると、ボルト締めを解除してナット27を取り外せば、H形鋼31は取り外して再利用することができる。
【0057】
また、使用するのは建設現場で広く使用されているアンカーボルト21とH形鋼31、およびナット27だけであるから、別途専用の金具を作成せずに容易に実現することができる。なお、型鋼材としてはH形鋼の他、板状のI形鋼など、アンカーボルト21に取り付けられるものであれば各種のものが使用可能である。
【0058】
また、図6に示すように、アンカー金具を固定金具と別体とせず、固定金具と一体の脚部として固定金具の下面に設けるようにしても良い。コの字形の支持部材32の両側縁に金属板33を溶接固定し、これを固定金具20の下面に溶接固定することにより、固定金具20に強固に固定する脚部45とすることができる。
【0059】
この脚部45をコンクリート函体4の成形時に予め埋め込んでおけば、施工現場において全ネジボルト22で固定金具20の起立部24同士を接続し、ワッシャー29を挟んでナット28によりボルト締めして着脱自在に固定するだけで、隣接するコンクリート函体4同士のずれおよび目開きを防止することができる。
【0060】
そしてこのようにすることで、全ネジボルト22をコンクリート函体4に対して着脱自在とすることができ、コンクリート函体4の敷設後、推進ジャッキの推力を受けなくなると、ボルト締めを解除してナット27を取り外せば、全ネジボルト22を取り外して再利用することができる点については、前記と同様である。
【0061】
また、固定金具20の起立部24同士を連結する鋼棒として、全ネジボルト22ではなく、図7に示すように、PC棒14を示すようにしても良い。例えばこの場合、2枚の金属板をT字形に溶接して支持部材34とし、その下部を延長するように金属板33を溶接固定して構成する脚部46の上面と、固定金具20の下面とを全周に渡って溶接固定することにより結合を強固なものとして、固定金具20の下面に脚部46を設ける。
【0062】
なお、1対の固定金具20のうち、一方には緊結ジャッキ13を載置するため、ベース部26を前後方向に長くし、その分、脚部46も前後に2つ、設けるようにする。
【0063】
そして、コンクリート函体4の成形時に、脚部46を予め埋め込み、施工現場において一方の固定金具20上に緊結ジャッキ13を載置し、両固定金具20の起立部24間にPC棒14を架渡して貫通させ、ナット15によりもう一方の固定金具20の起立部24にPC棒14の一端を固定し、緊結ジャッキ13により両固定金具20の起立部24同士を緊結する。
【0064】
このようにすることにより、両固定金具20間に緊結力が加わり、両コンクリート函体4間の自由度を下げて、より強固にコンクリート函体4同士のずれおよび目開きを防止することができる。また、固定金具20と脚部46とは溶接により強固に固定されるから、固定金具20自身も緊結力に絶え得るものとなる。
【0065】
そしてこのようにすることで前記同様、PC棒14をコンクリート函体4に対して着脱自在とすることができ、コンクリート函体4の敷設後、推進ジャッキの推力を受けなくなると、ボルト締めを解除してナット15を取り外せば、PC棒14を取り外して再利用することができる。
【0066】
更に、前記実施例においては固定金具20の起立部24を前後方向に向けて配置し、全ネジボルト22やPC棒14などの鋼棒も前後方向に向けて配置したが、図8に示すように、全ネジボルト22(またはPC棒14)をブレース状に配置するように配置するようにしても良い。この場合、起立部24は横方向に向けて配置する。
【0067】
これにより、鋼棒としての全ネジボルト22は斜めに架渡されることになり、全ネジボルト22は隣接する両コンクリート函体4同士を縦締めするだけでなく、コンクリート函体4相互の横方向の動きも規制するから、コンクリート函体4が横方向に移動することによるずれや目開きを効果的に防止することができる。
【0068】
なお、前記において、起立部は固定金具の一部を部分的に上方に立ち上げて形成したが、これに限らず、鋼棒の端部が貫通可能な形状であれば足りる。例えば、固定金具の厚みを全体的に大きくすることにより固定金具全体を起立させて、鋼棒の端部を貫通可能とするようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明のコンクリート函体の接続方法の第1実施形態に使用するコンクリート函体および固定金具の正面図である。
【図2】本発明のコンクリート函体の接続方法の第1実施形態に使用するコンクリート函体および固定金具の平面図である。
【図3】脚部が着脱自在の固定金具と全ネジボルトを使用して連結固定されたコンクリート函体を示す縦断側面図である。
【図4】アンカーボルトと固定金具と全ネジボルトを使用して連結固定されたコンクリート函体を示す平面図である。
【図5】アンカーボルトとH形鋼を使用して連結固定されたコンクリート函体を示す縦断側面図である。
【図6】脚部と一体型の固定金具と全ネジボルトを使用して連結固定されたコンクリート函体を示す縦断側面図である。
【図7】脚部と一体型の固定金具とPC棒を使用して連結固定されたコンクリート函体を示す縦断側面図である。
【図8】鋼棒をブレース状に配置したコンクリート函体が推力を受ける様子を示す平面図である。
【図9】オープンシールド工法の概略を示す縦断側面図である。
【図10】従来のコンクリート函体の斜視図である。
【図11】新オープンシールド工法によりコンクリート函体の接合部にズレを生じさせる力が働く様子を示す平面図である。
【符号の説明】
【0070】
1 オープンシールド機 1a 側壁板
1b 底板 1c テール部
2 推進ジャッキ
3 隔壁 4 コンクリート函体
4a 左側板 4b 右側板
4c 上床板 4d 下床板
4e 端面部 4f 隅角ハンチ部
4g 角部 5 埋戻土
6 グラウト材 7 高さ調整材
8 プレスバー 9 掘削機
10 開口 11 刃口
12 シース孔 13 緊結ジャッキ
14 PC棒 15 ナット
16 ボルトボックス 17 箱抜き
20 固定金具 21 アンカーボルト
22 全ネジボルト 23 取付け孔
24 起立部 24a 貫通孔
25 補強片
26 ベース部 26a ボルト孔
27、28 ナット 29、30 ワッシャー
31 H形鋼 31a、31b フランジ
31c ウエブ
32 支持部材 33 金属板
34 支持部材
45、46 脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中埋設用として順次縦列に並べられ、推進ジャッキの推力を受けるコンクリート函体の接続方法において、脚部を函体に埋め込む固定金具を函体の外周面または内周面に起立させ、鋼棒の螺子端部を固定金具に貫通させて隣接する函体を跨いで架渡し、これを螺子止めすることにより、前記鋼棒を固定金具に対して着脱自在として両函体を連結固定することを特徴とするコンクリート函体の接続方法。
【請求項2】
地中埋設用として順次縦列に並べられ、推進ジャッキの推力を受けるコンクリート函体の接続方法において、函体の外周面または内周面に埋め込むアンカー金具の上端を、固定金具に螺子止めすることにより該固定金具を函体表面に起立させ、鋼棒の螺子端部を固定金具に貫通させて隣接する函体を跨いで架渡し、これを螺子止めすることにより、前記鋼棒と固定金具とアンカー金具とを互いに着脱自在として両函体を連結固定することを特徴とするコンクリート函体の接続方法。
【請求項3】
地中埋設用として順次縦列に並べられ、推進ジャッキの推力を受けるコンクリート函体の接続方法において、函体の外周面または内周面に埋め込むアンカー金具の上端を、隣接する函体を跨いで配置する型鋼材に螺子止めすることにより、型鋼材をアンカー金具に対して着脱自在として両函体を連結固定することを特徴とするコンクリート函体の接続方法。
【請求項4】
函体の外周面または内周面のうち、隅角ハンチ部において連結固定する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のコンクリート函体の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−114642(P2009−114642A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285854(P2007−285854)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000189903)
【出願人】(501200491)
【Fターム(参考)】