説明

コンクリート型枠

【課題】組立作業や解体作業を容易に行うことができ、作業時間を短縮することができると共に、組立誤差が生じにくく、コンクリートの形状精度の向上を図ることができるコンクリート型枠を提供することを目的とする。
【解決手段】複数のパネル部材2を横方向に並べて組み立てられるコンクリート型枠1であって、横方向に隣り合うパネル部材2のうち、一方のパネル部材2の側端部に、縦方向に沿って延設された溝状の軸受け部24が設けられ、他方のパネル部材2の側端部に、縦方向に沿って延設されて軸受け部24に軸回転可能に嵌合された軸芯部25が設けられ、横方向に隣り合うパネル部材2同士が、軸受け部24及び軸芯部25を介して連結されており、軸受け部24が、横断面視においてパネル部材2の型枠面20の垂線Lに対して斜めの方向に向けて開いている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの成形に用いられるコンクリート型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート型枠として、例えば下記特許文献1に記載されているような、木質合板からなるパネル部材と、バタ材やフォームタイ(登録商標)等の支保工と、を備えた型枠が知られている。このコンクリート型枠は、複数のパネル部材を並べて配置し、それら複数のパネル部材を支保工で固定して組み立てるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−165912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のコンクリート型枠では、部品数が非常に多いため、型枠の組立作業や解体作業が煩雑であると共に、それらの作業に相当な時間を要するという問題がある。また、従来のコンクリート型枠では、組立誤差が生じやすく、精度良く型枠を組み立てるのには相当な技量が必要である。
【0005】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、組立作業や解体作業を容易に行うことができ、作業時間を短縮することができると共に、組立誤差が生じにくく、コンクリートの形状精度の向上を図ることができるコンクリート型枠を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコンクリート型枠は、複数のパネル部材を横方向に並べて組み立てられるコンクリート型枠であって、横方向に隣り合うパネル部材のうち、一方のパネル部材の側端部に、縦方向に沿って延設された溝状の軸受け部が設けられ、他方のパネル部材の側端部に、縦方向に沿って延設されて前記軸受け部に軸回転可能に嵌合された軸芯部が設けられ、横方向に隣り合うパネル部材同士が、前記軸受け部及び前記軸芯部を介して連結されており、前記軸受け部が、横断面視において前記パネル部材の型枠面の垂線に対して斜めの方向に向けて開いていることを特徴としている。
【0007】
上記したコンクリート型枠を組み立てる際には、まず、一方のパネル部材の軸受け部の開いた部分から他方のパネル部材の軸芯部を嵌入させる。このとき、双方のパネル部材は、隣り合う位置から相対的に軸芯部回りに回転させた位置に配置する。次に、双方のパネル部材を相対的に軸芯部回りに回転させて隣り合う位置に配置する。これにより、パネル部材が互いに連結された状態で横方向に並べて組み立てられる。そして、上記した組立作業を繰り返し行って、複数のパネル部材を横方向に並べて組み立てることで、コンクリート型枠が形成される。また、このコンクリート型枠を解体する際には、隣り合うパネル部材を相対的に軸芯部回りに回転させて軸芯部を軸受け部から離脱させる。これにより、隣り合うパネル部材が分離され、パネル部材が取り外される。
【0008】
また、本発明に係るコンクリート型枠は、前記パネル部材に、表側に型枠面を有する堰板部と、該堰板部の裏面に突設されていると共に縦方向に沿って延設されたリブ部と、が備えられており、前記パネル部材が押出加工によって形成されたアルミニウム製の押し出し材であり、前記堰板部と前記リブ部とが一体に形成されていることが好ましい。
これにより、パネル部材がアルミニウム製の部材であるため軽量となる。また、縦方向に延設されたリブ部によってパネル部材の縦方向の曲げ剛性が高くなる。しかも、堰板部とリブ部が押出加工によって一体に形成されているので、特に高い剛性のパネル部材が形成される。
【0009】
また、本発明に係るコンクリート型枠は、前記パネル部材の裏側に嵌合された補強部材が備えられ、該補強部材に、前記堰板部と平行に配設された裏板部と、前記堰板部の裏面に対向する前記裏板部の裏面に横断面視において斜めに突設されたラチス部と、前記裏板部の裏面に配設されて前記リブ部が嵌合するリブ嵌合部と、が備えられており、前記パネル部材に、前記ラチス部が嵌合するラチス嵌合部が形成されており、前記補強部材と前記パネル部材とが、横断面視において平行弦トラス構造に形成されていることが好ましい。
これにより、平行弦トラス構造によって上述した従来のコンクリート型枠における横バタ材の機能が発揮され、パネル部材の横方向の曲げ剛性が向上する。
【0010】
また、本発明に係るコンクリート型枠は、前記パネル部材が、縦方向に複数並べて配設されており、前記補強部材が、縦方向に隣り合うパネル部材の間に亘って配設されており、前記ラチス部が、縦方向に沿って延設されていることが好ましい。
これにより、補強部材の縦方向の曲げ剛性が、ラチス部が縦方向に延設されていることで高くなる。そして、この補強部材が、縦方向に隣り合うパネル部材の間に亘って配設されることで、縦方向に隣り合うパネル部材の接続部分の曲げ剛性が補強される。これにより、コンクリート型枠が縦方向に分割された構成であっても、縦方向に連続したコンクリート型枠と同等の構造性能が発揮される。
【0011】
また、本発明に係るコンクリート型枠は、一組のパネル部材を出隅又は入り隅の形状に沿った位置に配設されて組み立てられるコンクリート型枠であって、前記一組のパネル部材の隣り合う側端部の間にコーナー部材が介装されており、該コーナー部材に、縦方向に沿って延設された溝状の軸受け部、及び、縦方向に沿って延設された軸芯部のうちの何れか一方又は両方が設けられ、前記一組のパネル部材の側端部に、前記コーナー部材に設けられた前記軸受け部又は前記軸芯部に軸回転可能に嵌合する軸芯部又は軸受け部が設けられ、該軸受け部及び前記軸芯部を介して前記一組のパネル部材と前記コーナー部材とがそれぞれ連結されており、前記軸受け部が、横断面視において前記パネル部材の型枠面の垂線に対して斜めの方向に向けて開いていることを特徴とするコンクリート型枠であってもよい。
【0012】
これにより、出隅部分や入り隅部分のコンクリート型枠を組み立てる際には、まず、軸受け部と軸芯部とを嵌合させて、コーナー部材に一組のパネル部材をそれぞれ連結する。このとき、一組のパネル部材のうちの少なくとも一方を、コーナー部材に隣接する位置から相対的に軸芯部回りに回転させた位置に配置する。次に、そのパネル部材をコーナー部材に対して相対的に軸芯部回りに回転させ、出隅や入り隅の形状に沿った位置に配置する。これにより、出隅又は入り隅を形成する一組のパネル部材が所定の位置に組み立てられる。また、このコンクリート型枠を解体する際には、一組のパネル部材のうちの少なくとも一方を、コーナー部材に隣接する位置から相対的に軸芯部回りに回転させ、パネル部材とコーナー部材とを相対的に軸芯部回りに回転させて軸芯部を軸受け部から離脱させる。これにより、パネル部材がコーナー部材から取り外される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るコンクリート型枠によれば、組立作業や解体作業を容易に行うことができ、作業時間を短縮することができる。また、組立誤差が生じにくく、コンクリートの形状精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態を説明するためのコンクリート型枠の立面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を説明するためのパネル部材の斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を説明するためのコンクリート型枠の部分断面図であって、図1に示すA−A間の横断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態を説明するための補強部材の斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態を説明するための組立・解体時のコンクリート型枠の部分断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態を説明するためのコンクリート型枠の出隅部分の横断面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態を説明するためのコンクリート型枠の入り隅部分の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るコンクリート型枠の第1から第3の実施の形態について、図面に基いて説明する。
【0016】
[第1の実施の形態]
図1に示すコンクリート型枠1は、構造物のコンクリートの成形に用いられる型枠である。具体的に説明すると、コンクリート型枠1は、例えば壁や柱、橋脚等のような略鉛直に立設されるコンクリート構造物を形成するための型枠である。このコンクリート型枠1の概略構成としては、横方向(図1に示すX方向)及び縦方向(図1に示すY方向)にそれぞれ並べて配設された複数のパネル部材2と、それら複数のパネル部材2の裏面に組み付けられた複数の補強部材3と、を備えている。
【0017】
パネル部材2は、一方向(縦方向、図2に示すY方向)に長く前記一方向に直交する方向(横方向、図2に示すX方向)に短い縦長の長方形部材である。このパネル部材2の概略構成としては、図1及び図2に示すように、矩形状の堰板部21と、堰板部21の裏面(型枠面20の反対側の面)に突設された複数のリブ部22と、堰板部21の両側の縁部(長辺側の縁部)からそれぞれ裏側に向けて突設された側板部23と、一方の側板部23の先端部に設けられた溝状の軸受け部24と、他方の側板部23の先端部に設けられた軸芯部25と、堰板部21の裏面に複数設けられた凹溝状のラチス嵌合部26と、を備えている。
【0018】
堰板部21は、平板状の板部であり、堰板部21の表面は、コンクリートを成形する型枠面20(図3に示す)となっている。
リブ部22は、堰板部21に対して垂直に突設された板状のリブであり、図2に示すように長手方向(縦方向)に沿って堰板部21の全長に亘って延設されている。このリブ部22は、図3に示すように横断面視略T字状に形成されており、リブ部22の先端には、堰板部21に対して平行する平板状のリブ先端部22aが形成され、このリブ先端部22aが後述するリブ嵌合部32の内側に嵌合されている。また、複数のリブ部22は、短手方向に間隔をあけて平行に並設されている。
【0019】
側板部23は、堰板部21に対して垂直に突設されていると共に長手方向(縦方向)に沿って堰板部21の全長に亘って延設された板状の壁部である。
軸受け部24は、半円筒形状の溝部であり、断面視略半円弧(U字)状に形成されている。この軸受け部24は、長手方向(縦方向)に沿って側板部23の全長に亘って延設されている。また、軸受け部24は、図3に示すように横断面視において、パネル部材2の型枠面20の垂線Lに対して斜めの方向に向けて開いている。つまり、断面視U字状の軸受け部24が、パネル部材2の短手方向(幅方向)の内側に約45度傾けた向きで設けられている。
【0020】
軸芯部25は、当該パネル部材2に隣接するパネル部材2の軸受け部24の内側に軸回転可能に嵌合された軸部であり、円柱形状に形成されている。この軸芯部25は、長手方向(縦方向)に沿って側板部23の全長に亘って延設されている。
ラチス嵌合部26は、後述するラチス部31のラチス先端部31aが嵌合するCチャネル状の溝部であり、長手方向(縦方向)に沿って堰板部21の全長に亘って延設されていると共に堰板部21に対して垂直な方向に向けて開いている。また、複数のラチス嵌合部26は、短手方向に間隔をあけて平行に並設されており、両側のラチス嵌合部26は側板部23の基端部に隣接する位置に配設されており、それら両側のラチス嵌合部26の間に配設されたラチス嵌合部26は、リブ部22の基端部に隣接する位置に配設されている。
【0021】
上記した構成からなるパネル部材2は、アルミニウムを押し出しながら成形する押出加工によって形成されたアルミニウム製の押し出し材であり、上記した堰板部21、リブ部22、側板部23、軸受け部24、軸芯部25及びラチス嵌合部26が一体に形成されている。
【0022】
また、図1に示すように、上記したパネル部材2には、縦方向(長手方向)の寸法が異なる複数のパネル部材2A〜2Cがある。詳しく説明すると、パネル部材2には、長い規格寸法のパネル部材2Aと、短い規格寸法のパネル部材2Bと、任意の長さに切断された調整用のパネル部材2Cと、がある。なお、本実施の形態では、長い規格寸法のパネル部材2Aが最下段に配設され、短い規格寸法のパネル部材2Bが中段に配設され、調整用のパネル部材2Cが最上段に配設されている。
【0023】
また、図3に示すように、コンクリート型枠1には、パネル部材2を保持して堰板部21の膨出変形を抑えるための保持手段4が備えられている。この保持手段4には、パネル部材2の型枠面20に係合した化粧座金40と、化粧座金40の表面に突設された円錐台形状のモッコン41と、モッコン41の先端面から突出したセパレータ42と、化粧座金40の裏面に重ね合わせられた座金43と、この座金43と化粧座金40とモッコン41を連結するボルト44と、裏板部30の表面に係合した内部座金45と、内部座金45と座金43とを連結する締結ボルト46と、が備えられている。なお、堰板部21には、前記した座金43が挿通される円形状の開口21aが形成されており、この開口21aの縁部に化粧座金40が全周に亘って当接している。
【0024】
また、図1に示すように、上記した保持手段4は、上記した複数の規格寸法のパネル部材2A、2Bに対してそれぞれ取り付けられている。具体的には、長い規格寸法のパネル部材2Aに設けられた保持手段4は、パネル部材2Aの中心よりも下方の位置に配設されている。また、短い規格寸法のパネル部材2Bに設けられた保持手段4は、パネル部材2Bの中心位置に配設されている。
【0025】
また、図3に示すように、横方向に隣り合うパネル部材2,2同士は、各々の側板部23同士が重ね合わせられると共に各々の型枠面20が面一になる位置に配設されている。また、一方のパネル部材2の軸受け部24の内側に他方のパネル部材2の軸芯部25が嵌合されており、隣り合うパネル部材2,2同士は前記した軸受け部24及び軸芯部25を介して連結されている。
【0026】
図1に示すように、補強部材3は、縦方向に短く横方向に長い横長の長方形部材であり、パネル部材2の裏側に嵌合されている。この補強部材3の概略構成としては、図1、図4に示すように、矩形状の裏板部30と、裏板部30の裏面(堰板部21の裏面に対向する面)に突設された複数のラチス部31と、裏板部30の裏面に複数設けられた凹溝状のリブ嵌合部32と、を備えている。なお、補強部材3の幅寸法(横方向の寸法)は、パネル部材2の幅寸法(横方向の寸法)と略同じ大きさである。
【0027】
裏板部30は、平板状の板部であり、堰板部21の表面は、コンクリートを成形する型枠面20となっている。
ラチス部31は、図4に示すように短手方向(縦方向)に沿って裏板部30の全長に亘って延設された板状部であり、図3に示すように横断面視において裏板部30に対して斜めに突設されている。詳しく説明すると、ラチス部31は、図3に示すように横断面視において、隣り合うリブ部22,22のうちの一方のリブ部22のリブ先端部22aの位置から他方のリブ部22の基端部の位置に向かって突出されている。そして、このラチス部31の先端には、裏板部30に対して平行する平板状のラチス先端部31aが形成されており、このラチス先端部31aが前記したラチス嵌合部26の内側に嵌合されている。
【0028】
リブ嵌合部32は、前記したリブ部22のリブ先端部22aが嵌合するCチャネル状の溝部であり、図4に示すように短手方向(縦方向)に沿って裏板部30の全長に亘って延設されていると共に裏板部30に対して垂直な方向に向けて開いている。このリブ嵌合部32は、前記したラチス部31の基端部の位置に配設されており、リブ部22の基端部に隣接する位置に配設されている。
【0029】
図3に示すように、横断面視において、上記したラチス部31と裏板部30とリブ部22(側板部23)、及び、上記したラチス部31とリブ部22と堰板部21が、それぞれ略三角形状に形成されており、上記したパネル部材2及び補強部材3が平行弦トラス構造に形成されている。
【0030】
上記した構成からなる補強部材3は、アルミニウムを押し出しながら成形する押出加工によって形成されたアルミニウム製の押し出し材であり、上記した裏板部30、ラチス部31及びリブ嵌合部32が一体に形成されている。
【0031】
また、図1に示すように、上記した補強部材3には、縦方向に隣り合うパネル部材2,2の接続部分に取り付けられるジョイント用の補強部材3Aと、型枠下端部(最下段のパネル部材2Aの下端部)を補強する根巻き用の補強部材3Bと、型枠上端部(最上段の調整用のパネル部材2Cとその下のパネル部材2Bとの接続部分)を補強する上端用の補強部材3Cと、各パネル部材2の縦方向中間部を補強する一対のパネル中間用の補強部材3D,3Dと、がある。
【0032】
上記したジョイント用の補強部材3Aは、縦方向に隣り合うパネル部材2,2の間に亘って延設されている。上記した上端用の補強部材3Cは、調整用のパネル部材2Cとその下のパネル部材2Bとの間に亘って延設されている。また、上記した根巻き用の補強部材3Bの裏板部30の下端部には、堰板部21側に向けて垂直に突出してパネル部材2Aの下側小口を閉塞する図示せぬ小口板が付設されており、また、上記した上端用の補強部材3Cの裏板部30の上端部には、堰板部21側に向けて垂直に突出してパネル部材2Cの下側小口を閉塞する図示せぬ小口板が付設されている。一対のパネル中間用の補強部材3D,3Dは、縦方向に間隔をあけて平行に延設されており、一対のパネル中間用の補強部材3D,3Dの間に保持手段4の締結ボルト46が挿通され、これら一対のパネル中間用の補強部材3D,3Dに内部座金45が当接されている。
【0033】
次に、上記した構成からなるコンクリート型枠1の作用について説明する。
【0034】
上記したコンクリート型枠1を組み立てる際には、まず、図5に示すように、一方のパネル部材2の軸受け部24の開いた部分から他方のパネル部材2の軸芯部25を嵌入させる。このとき、双方のパネル部材2,2は、隣り合う位置から相対的に軸芯部25回りに回転させた位置に配置する。
次に、双方のパネル部材2,2を相対的に軸芯部25回りに回転させて図3に示す隣り合う位置に配置する。これにより、パネル部材2,2が互いに連結された状態で横方向に並べて組み立てられる。
そして、上記した組立作業を繰り返し行って、図1に示すように複数のパネル部材2Aを横方向に並べて組み立てる。
【0035】
また、このコンクリート型枠1を解体する際には、隣り合うパネル部材2,2を相対的に軸芯部25回りに回転させて軸芯部25を軸受け部24から離脱させる。これにより、横方向に隣り合うパネル部材2,2が分離され、パネル部材2が取り外される。
【0036】
上述したコンクリート型枠1によれば、組立作業や解体作業を容易に行うことができ、作業時間を短縮することができる。また、組立誤差が生じにくく、コンクリートの形状精度の向上を図ることができる。
【0037】
また、上記したコンクリート型枠1では、パネル部材2がアルミニウム製の部材であるため軽量である。このため、組立、解体、運搬作業を軽減することができ、施工性を向上させることができる。
また、パネル部材2は、リブ部22が長手方向(縦方向)に沿って延設されているので、パネル部材2の長手方向(縦方向)の曲げ剛性が高い。しかも、堰板部21とリブ部22が押出加工によって一体に形成されているので、特に高い剛性のパネル部材2が形成される。したがって、長方形状の堰板部21が長手方向に曲げ変形しにくくなり、コンクリートの形状精度を向上させることができる。
【0038】
また、上記したコンクリート型枠1では、パネル部材2と補強部材3が、横断面視において平行弦トラス構造に形成されているため、この平行弦トラス構造によって従来の横バタ材の機能が発揮され、横方向の曲げ剛性が向上する。これにより、堰板部21が横方向に曲げ変形しにくくなり、コンクリートの形状精度を向上させることができる。
【0039】
また、上記したコンクリート型枠1では、補強部材3のラチス部31が縦方向に延設されているので、補強部材3の縦方向の曲げ剛性が高い。そして、この補強部材3が、縦方向に隣り合うパネル部材2,2の間に亘って配設されることで、縦方向に隣り合うパネル部材2,2の接続部分の曲げ剛性が補強される。これにより、コンクリート型枠1が縦方向に分割された構成であっても、縦方向に連続したコンクリート型枠と同等の構造性能が発揮される。したがって、コンクリート型枠1の縦方向の曲げ剛性を確保しつつ、パネル部材2を大型化することなく、縦方向寸法が大きいコンクリート型枠1を形成することができる。
【0040】
[第2の実施の形態]
図6に示すコンクリート型枠101は、柱や壁の出隅部のコンクリートの成形に用いられる型枠である。このコンクリート型枠101の概略構成としては、図6に示すように、出隅部の形状に沿った位置に配設される一組のパネル部材2,2と、それら一組のパネル部材2,2の側板部23,23の間に配設されたコーナー部材5と、パネル部材2の裏面に組み付けられた補強部材3と、を備えている。
【0041】
一組のパネル部材2,2は、互いに直交する向きに配設されている。これら一組のパネル部材2,2のうち、一方のパネル部材2の側板部23の先端部には軸受け部24が設けられ、他方のパネル部材2の側板部23の先端部には軸芯部25が設けられている。なお、一方のパネル部材2の軸受け部24は、横断面視において、一方のパネル部材2の型枠面20の垂線に対して斜めの方向に向けて開いている。つまり、断面視U字状の軸受け部24が、パネル部材2の短手方向(幅方向)の内側に約45度傾けた向きで設けられている。
【0042】
コーナー部材5は、縦方向に延在する支柱状の部材であり、横断面視略三角形状に形成されている。このコーナー部材5の概略構成としては、出隅部の角部を成形する面木部50と、面木部50の両側の側端部からパネル部材2の側板部23に沿ってそれぞれ突設された側板部51,51と、これらの側板部51,51の先端部の間に配設された背板部52と、面木部50の両側の側端部と背板部52の内面との間にそれぞれ配設されたリブ板部53と、を備えている。
【0043】
面木部50は、横断面視円弧状に湾曲した板部であり、縦方向に沿って延設されている。側板部51は、パネル部材2の側板部23に重ね合わせられる平板状の板部であり、縦方向に沿って面木部50の全長に亘って延設されている。背板部52は、横断面視において側板部51,51に対して45度傾いた向きに配設された平板状の板部であり、この背板部52の両側の側端部は、側板部51,51の先端部に連結されている。リブ板部53は、背板部52に対して垂直に配設されている。
【0044】
また、前記した背板部52と側板部51との角部分には、軸受け部24または軸芯部25が設けられている。詳しく説明すると、前記した一方のパネル部材2の側板部23に重ね合わせられた側板部51と背板部52との角部分には、一方のパネル部材2の軸受け部24の内側に軸回転可能に嵌合する軸芯部25が設けられている。また、前記した他方のパネル部材2の側板部23に重ね合わせられた側板部51と背板部52との角部分には、軸受け部24が設けられ、この軸受け部24の内側に、前記した他方のパネル部材2の軸芯部25が軸回転可能に嵌合されている。コーナー部材5の軸受け部24は、横断面視において、他方のパネル部材2の型枠面20の垂線に対して斜めの方向に向けて開いている。つまり、この断面視U字状の軸受け部24が、パネル部材2の短手方向(幅方向)の外側に約45度傾けた向きで設けられている。
【0045】
上記した構成のコーナー部材5は、アルミニウムを押し出しながら成形する押出加工によって形成されたアルミニウム製の押し出し材であり、上記した面木部50、側板部51,51、背板部52、リブ板部53、軸受け部24及び軸芯部25が一体に形成されている。
【0046】
上記した構成のコンクリート型枠101の作用について説明する。
【0047】
上記したコンクリート型枠101を組み立てる際には、まず、コーナー部材5の軸芯部25を一方のパネル部材2の軸受け部24に嵌入させると共に、コーナー部材5の軸受け部24に他方のパネル部材2の軸芯部25を嵌入させる。このとき、一組のパネル部材2,2は、コーナー部材5に対して相対的に軸芯部25回りに回転させた位置にそれぞれ配置する。次に、それらのパネル部材2,2をコーナー部材5に対して相対的に軸芯部25回りに回転させ、出隅部の形状に沿った位置に配置する。これにより、出隅部を形成する一組のパネル部材2,2が所定の位置に組み立てられる。
【0048】
また、上記したコンクリート型枠101を解体する際には、一組のパネル部材2,2のうちの少なくとも一方を、コーナー部材5に隣接する位置から相対的に軸芯部25回りに回転させ、軸芯部25を軸受け部24から離脱させる。これにより、パネル部材2,2がコーナー部材5から取り外され、コンクリート型枠101が解体される。
【0049】
上記したコンクリート型枠101によれば、角部の締めを行わなくても角部の強度が十分に得られる。また、出隅部のコンクリート型枠101の組立作業や解体作業を容易に行うことができ、作業時間を短縮することができる。また、出隅部のコンクリート型101枠の組立誤差が生じにくく、出隅部のコンクリートの形状精度の向上を図ることができる。
【0050】
[第3の実施の形態]
図7に示すコンクリート型枠201は、壁等の入り隅部のコンクリートの成形に用いられる型枠である。このコンクリート型枠201の概略構成としては、図7に示すように、入り隅部の形状に沿った位置に配設される一組のパネル部材2,2と、それら一組のパネル部材2,2の側板部23,23の間に配設されたコーナー部材6と、パネル部材2の裏面に組み付けられた補強部材3と、を備えている。
【0051】
一組のパネル部材2,2は、互いに直交する向きに配設されている。これら一組のパネル部材2,2のうち、一方のパネル部材2の側板部23の先端部には軸受け部24が設けられ、他方のパネル部材2の側板部23の先端部には軸芯部25が設けられている。なお、一方のパネル部材2の軸受け部24は、横断面視において、一方のパネル部材2の型枠面20の垂線に対して斜めの方向に向けて開いている。つまり、断面視U字状の軸受け部24が、パネル部材2の短手方向(幅方向)の内側に約45度傾けた向きで設けられている。
【0052】
コーナー部材6は、縦方向に延在する支柱状の部材であり、このコーナー部材6には、横断面視略三角形状の面木部材7と、この面木部材7に対して取り外し可能に接合された横断面視略台形状の連結部材8と、が備えられている。
【0053】
面木部材7は、直角に配設された一対の堰板部70,70と、一対の堰板部70,70の側端部の間に配設された背板部71と、を備えている。一対の堰板部70,70には、パネル部材2の型枠面20と面一な型枠面72がそれぞれ形成されている。背板部71には、後述するボルト9が螺着される雌ねじ部73が形成されている。
【0054】
連結部材8は、面木部材7の背板部71に重ね合わせられる裏板部80と、裏板部80に対向配置された表板部81と、裏板部80の側端部と表板部81の側端部との間に配設された両側の側板部82,82と、裏板部80から表板部81にかけて貫通した貫通孔83と、を備えている。この連結部材8は、貫通孔83に挿通されて上記した雌ねじ部73に螺合されたボルト9によって面木部材7に締結されている。
【0055】
また、前記した表板部81と側板部82,82との角部分には、軸受け部24または軸芯部25が設けられている。詳しく説明すると、前記した一方のパネル部材2の側板部23に重ね合わせられた側板部82と表板部81との角部分には、一方のパネル部材2の軸受け部24の内側に軸回転可能に嵌合する軸芯部25が設けられている。また、前記した他方のパネル部材2の側板部23に重ね合わせられた側板部82と表板部81との角部分には、軸受け部24が設けられ、この軸受け部24の内側に、前記した他方のパネル部材2の軸芯部25が軸回転可能に嵌合されている。連結部材8の軸受け部24は、横断面視において、他方のパネル部材2の型枠面20の垂線に対して斜めの方向に向けて開いている。つまり、この断面視U字状の軸受け部24が、パネル部材2の短手方向(幅方向)の外側に約45度傾けた向きで設けられている。
【0056】
なお、上記した面木部材7及び連結部材8は、アルミニウムを押し出しながら成形する押出加工によって形成されたアルミニウム製の押し出し材である。
【0057】
上記した構成のコンクリート型枠201の作用について説明する。
【0058】
上記したコンクリート型枠201を組み立てる際には、まず、面木部材7と連結部材8とをボルト9で締結してコーナー部材6を組み立てる。その後、そのコーナー部材6(コーナー部材6)の軸芯部25を一方のパネル部材2の軸受け部24に嵌入させると共に、コーナー部材6(連結部材8)の軸受け部24に他方のパネル部材2の軸芯部25を嵌入させる。このとき、一組のパネル部材2,2は、コーナー部材6に対して相対的に軸芯部25回りに回転させた位置にそれぞれ配置する。次に、それらのパネル部材2,2をコーナー部材6に対して相対的に軸芯部25回りに回転させ、入り隅部の形状に沿った位置に配置する。これにより、入り隅部を形成する一組のパネル部材2,2が所定の位置に組み立てられる。
【0059】
また、上記したコンクリート型枠201を解体する際には、一組のパネル部材2,2のうちの一方のパネル部材2を、コーナー部材6に隣接する位置から相対的に軸芯部25回りに回転させ、軸芯部25を軸受け部24から離脱させる。これにより、一方のパネル部材2がコーナー部材6から取り外されて解体される。続いて、ボルト9を取り外した後、他方のパネル部材2及び連結部材8を、他方のパネル部材2のコーナー部材6側の反対側に形成された図示せぬ軸受け部に嵌合する軸芯部回りに一体で回転させ、その軸芯部を軸受け部から離脱させる。これにより、他方のパネル部材2及び連結部材8が一体で解体される。その後、面木部材7を取り外すことで、コンクリート型枠201が解体される。
【0060】
上記したコンクリート型枠201によれば、角部の締めを行わなくても角部の強度が十分に得られる。また、入り隅部のコンクリート型枠201の組立作業や解体作業を容易に行うことができ、作業時間を短縮することができる。また、入り隅部のコンクリート型枠201の組立誤差が生じにくく、入り隅部のコンクリートの形状精度の向上を図ることができる。
【0061】
以上、本発明に係るコンクリート型枠の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記した実施の形態では、パネル部材2の一方の側端部に軸受け部24が設けられ、他方の側端部に軸芯部25が設けられているが、本発明は、両側の側端部に軸受け部24がそれぞれ設けられた第一のパネル部材と、両側の側端部に軸芯部25がそれぞれ設けられた第二のパネル部材と、を横方向に交互に並べて組み立てられるコンクリート型枠であってもよい。
【0062】
また、上記した実施の形態では、パネル部材2が縦方向に長い長方形状に形成されているが、本発明は、他の形状のパネル部材であってもよい。例えば、正方形状のパネル部材であってもよい。また、例えば梁形や開口縁等に沿って切り欠かれた切欠き部が形成された形状であってもよい。
【0063】
また、上記した実施の形態では、壁や柱等の鉛直方向に立設する構造体を形成するコンクリート型枠1,101,201について説明しているが、本発明は、梁やスラブを形成するコンクリート型枠であってもよい。
【0064】
また、上記した実施の形態では、パネル部材2や補強部材3がアルミニウム製の部材であるが、本発明は、他の材質のパネル部材や補強部材を用いることも可能である。例えば合成樹脂製や鋼製、木製のパネル部材や補強部材を用いることも可能である。なお、鋼製のパネル部材や補強部材の場合には、リブ部やラチス部を堰板部や裏板部に対して溶接等によって接合させることができる。
【0065】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1,101,201 コンクリート型枠
2 パネル部材
3 補強部材
5,6 コーナー部材
20 型枠面
21 堰板部
22 リブ部
24 軸受け部
25 軸芯部
26 ラチス嵌合部
30 裏板部
31 ラチス部
32 リブ嵌合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパネル部材を横方向に並べて組み立てられるコンクリート型枠であって、
横方向に隣り合うパネル部材のうち、一方のパネル部材の側端部に、縦方向に沿って延設された溝状の軸受け部が設けられ、他方のパネル部材の側端部に、縦方向に沿って延設されて前記軸受け部に軸回転可能に嵌合された軸芯部が設けられ、横方向に隣り合うパネル部材同士が、前記軸受け部及び前記軸芯部を介して連結されており、
前記軸受け部が、横断面視において前記パネル部材の型枠面の垂線に対して斜めの方向に向けて開いていることを特徴とするコンクリート型枠。
【請求項2】
請求項1に記載のコンクリート型枠において、
前記パネル部材に、表側に型枠面を有する堰板部と、該堰板部の裏面に突設されていると共に縦方向に沿って延設されたリブ部と、が備えられており、
前記パネル部材が押出加工によって形成されたアルミニウム製の押し出し材であり、前記堰板部と前記リブ部とが一体に形成されていることを特徴とするコンクリート型枠。
【請求項3】
請求項2に記載のコンクリート型枠において、
前記パネル部材の裏側に嵌合された補強部材が備えられ、
該補強部材に、前記堰板部と平行に配設された裏板部と、前記堰板部の裏面に対向する前記裏板部の裏面に横断面視において斜めに突設されたラチス部と、前記裏板部の裏面に配設されて前記リブ部が嵌合するリブ嵌合部と、が備えられており、
前記パネル部材に、前記ラチス部が嵌合するラチス嵌合部が形成されており、
前記補強部材と前記パネル部材とが、横断面視において平行弦トラス構造に形成されていることを特徴とするコンクリート型枠。
【請求項4】
請求項3に記載のコンクリート型枠において、
前記パネル部材が、縦方向に複数並べて配設されており、
前記補強部材が、縦方向に隣り合うパネル部材の間に亘って配設されており、
前記ラチス部が、縦方向に沿って延設されていることを特徴とするコンクリート型枠。
【請求項5】
一組のパネル部材を出隅又は入り隅の形状に沿った位置に配設されて組み立てられるコンクリート型枠であって、
前記一組のパネル部材の隣り合う側端部の間にコーナー部材が介装されており、
該コーナー部材に、縦方向に沿って延設された溝状の軸受け部、及び、縦方向に沿って延設された軸芯部のうちの何れか一方又は両方が設けられ、
前記一組のパネル部材の側端部に、前記コーナー部材に設けられた前記軸受け部又は前記軸芯部に軸回転可能に嵌合する軸芯部又は軸受け部が設けられ、
該軸受け部及び前記軸芯部を介して前記一組のパネル部材と前記コーナー部材とがそれぞれ連結されており、
前記軸受け部が、横断面視において前記パネル部材の型枠面の垂線に対して斜めの方向に向けて開いていることを特徴とするコンクリート型枠。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−2035(P2012−2035A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140519(P2010−140519)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】