説明

コンクリート製建物の構築方法,コンクリート製建物の構築方法に用いられる外型枠及びコンクリート製建物

【課題】 コンクリートに結露が生じようとしてもこれを速やかに吸収できるようにして、断熱パネルとなる外型枠の損傷を抑制し、耐久性の向上を図る。
【解決手段】 熱交換流体が流される配管Hが埋設されたコンクリート製建物Bの壁Baを構築する際、内型枠Jと外型枠Kとの間の空間に配管Hを配設し、その後、この空間に流動コンクリートを打設し、コンクリートが固化した後に外型枠Kをコンクリートを覆う断熱パネルとして構成する。外型枠Kを、コンクリートに密着する通気性の樹脂からなる通気層1と、通気層1の外側に付設される樹脂製の断熱層2と、断熱層2の外側に付設される化粧板3とを備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばマンションなどに代表されるコンクリート製建物の壁を加温あるいは冷却可能にして暖冷房を行い室内の温度を快適なものにする技術に係り、特に、熱交換流体が流される配管が埋設されたコンクリート製の壁を有したコンクリート製建物の構築方法,このコンクリート製建物の構築方法に用いられる外型枠及びコンクリート製建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコンクリート製建物としては、先に、本願出願人が提案した例えば特開2005−42511号公報(特許文献1)に記載された技術が知られている。
このコンクリート製建物は、図6に示すように、熱交換流体が流される配管100が埋設された壁110を有している。この配管100には、熱交換流体を循環供給するポンプ101が接続されているとともに、熱交換流体の循環過程で熱交換流体と加温用水もしくは冷却用水との間で熱交換する熱交換器102が接続されている。熱交換器102の熱源供給手段103としては、例えば、建物の地下に設けられた地下タンクに貯蔵された水を水源として、これを50℃程度に加熱して加温用水とする電気給湯器(図示せず)と、5℃程度に冷して冷却用水とする製氷機(図示せず)とが用いられる。
【0003】
そして、このコンクリート製建物の壁110を構築する際は、内型枠(図示せず)と外型枠111とを設置し、次に、内型枠と外型枠111との間の空間に熱交換流体が流される配管100を配設し、その後、空間に流動コンクリートを打設し、コンクリートが固化した後に、内型枠は外して内装を施し、外型枠111はコンクリートを覆う断熱パネルとしてそのまま残す。外型枠111は、断熱パネルとなるように、例えば、図7に示すように、コンクリートに密着する難燃性又は不燃性の断熱樹脂層104に、長手方向に延びる複数条のスペーサ105を介して、タイルなどの外装材の直張りが可能な耐火性耐力面材106を付設したものが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−42511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のコンクリート製建物にあっては、断熱パネルとなる外型枠111を、コンクリートに密着する断熱樹脂層104に複数条のスペーサ105を介して耐火性耐力面材106を付設して形成しているので、スぺーサ105部分に通気経路が形成されるとはいっても、コンクリートに直接断熱層104が密着するので、熱交換流体が流される配管100の温度変化によって、コンクリートに結露が生じようとすると、これを吸収できずに、断熱樹脂層104やこれとコンクリートとの間に損傷が生じやすくなり、耐久性に劣るという問題があった。また、配管100が折曲する主に建物のコーナ部においては、結露により損傷が生じると、修復や交換が容易ではないという問題もあった。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、コンクリートに結露が生じようとしてもこれを速やかに吸収できるようにして、断熱パネルとなる外型枠の損傷を抑制し、耐久性の向上を図ったコンクリート製建物の構築方法,コンクリート製建物の構築方法に用いられる外型枠及びコンクリート製建物を提供することを目的とする。また、必要に応じ、配管が折曲する主に建物のコーナ部において、結露による損傷の発生を防止するようにする点も課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するための本発明のコンクリート製建物の構築方法は、熱交換流体が流される配管が埋設されたコンクリート製の壁を有したコンクリート製建物を構築するコンクリート製建物の構築方法において、
上記壁を構築する際、内型枠と外型枠とを用い、該外型枠を、コンクリートに密着する通気性の樹脂からなる通気層と、該通気層の外側に付設される樹脂製の断熱層と、該断熱層の外側に付設される化粧板とを備えて構成し、
先ず、上記内型枠と外型枠とを設置し、次に、上記内型枠と外型枠との間の空間に上記熱交換流体が流される配管を配設し、その後、該空間に流動コンクリートを打設し、該コンクリートが固化した後に上記外型枠を該コンクリートを覆う断熱パネルとして構成している。
【0008】
このようにして構築されたコンクリート製建物において、例えば、冬期においては、熱交換流体を、適宜の加温手段により加温して配管内に流通させ、コンクリートの壁を加温する。これにより、壁が加温されるので、室内が暖房される。この場合、外型枠は断熱パネルとして構成されるので、外部に熱が逃げにくく暖房効率が向上させられる。
一方、夏期においては、熱交換流体を、適宜の冷却手段により冷却して配管内に流通させ、コンクリートの壁を冷却する。これにより、壁が冷却されるので、室内が冷房される。この場合、外型枠は断熱パネルとして構成されるので、外部から熱が伝達されにくく冷房効率が向上させられる。
【0009】
この暖冷房時においては、熱交換流体が流される配管の温度変化によって、コンクリートに結露が生じようとすることがあるが、断熱パネルを構成する外型枠の通気層がコンクリートに密着しているので、この通気層に介在する空気に水分が吸収され、そのため、通気層やこれとコンクリートとの間に損傷が生じる事態が防止され、外型枠の耐久性が大幅に向上させられる。
【0010】
そして、必要に応じ、上記外型枠において、通気層を、発泡スチロール樹脂の多数の粒状物を通気通路が形成されるように接合して形成した構成としている。この通気層は板状であり、これを作成するときは、例えば周知の蒸気プレス機を用い、発泡スチロールの粒状物を粒状物間に隙間が生じるように疎の状態にして熱で接合して製造する。そのため、製造が極めて容易になるとともに、比較的安価に作成できる。また、通気経路が通気層全体に満遍なく形成されるので、確実に結露の発生を抑止することができる。
【0011】
そしてまた、必要に応じ、上記外型枠において、断熱層を、非通気性の発泡スチロール樹脂で形成した構成としている。この断熱層は板状であり、これを作成するときは、例えば周知の蒸気プレス機を用い、発泡スチロールの粒状物を密になるようにして熱で接合して製造する。そのため、一般的な発泡スチロール樹脂板を用いることができ、製造が極めて容易になるとともに、比較的安価に作成できる。
【0012】
また、必要に応じ、上記配管の折曲する部位の全部もしくは一部を、常温で可撓性を有する樹脂パイプを用いて構成している。樹脂パイプは、例えば、常温で可撓性を有する熱可塑性樹脂からなり、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、熱可塑性樹脂エラストマー等の材質からなる。
これにより、折曲部の配管においては、この樹脂パイプを用いることができるので、曲げの自由度があり、曲げ加工が極めて容易になり、そのため、施工性が大幅に向上させられる。また、樹脂パイプなので、金属パイプに比較して熱伝導率がやや小さくなるが、それだけ、樹脂パイプの配管部においては、結露の発生がより一層確実に防止される。特に、配管が折曲する主に建物のコーナ部においては、結露により損傷が生じると、修復や交換が容易ではないので、極めて有用になる。
【0013】
更に、必要に応じ、上記樹脂パイプを、保護管で被覆した構成としている。樹脂パイプの強度によっては、流動コンクリートの打設時に、樹脂パイプがコンクリートの圧力により潰されることもあるが、樹脂パイプが保護管で被覆されるので、コンクリートの圧力により樹脂パイプが潰される事態が防止され、熱交換流体の流通が確実に確保される。
【0014】
また、上記課題を解決するため、本発明は、上記のコンクリート製建物の構築方法に用いられる外型枠にある。上述もしたように、この外型枠によれば、通気層がコンクリートに密着しているので、暖冷房時において、熱交換流体が流される配管の温度変化によって、コンクリートに結露が生じようとしても、この通気層に介在する空気に水分が吸収され、そのため、通気層やこれとコンクリートとの間に損傷が生じる事態が防止され、外型枠の耐久性が大幅に向上させられる。
【0015】
更にまた、本発明は、上記のコンクリート製建物の構築方法によって構築されたコンクリート製建物にある。上述もしたように、このコンクリート製建物の断熱パネルとして構成される外型枠は、通気層がコンクリートに密着しているので、暖冷房時において、熱交換流体が流される配管の温度変化によって、コンクリートに結露が生じようとしても、この通気層に介在する空気に水分が吸収され、そのため、通気層やこれとコンクリートとの間に損傷が生じる事態が防止され、外型枠の耐久性が大幅に向上させられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、断熱パネルとして構成される外型枠は、通気層がコンクリートに密着しているので、暖冷房時において、熱交換流体が流される配管の温度変化によって、コンクリートに結露が生じようとしても、この通気層に介在する空気に水分が吸収され、そのため、通気層やこれとコンクリートとの間に損傷が生じる事態が防止され、外型枠の耐久性を大幅に向上させることができる。
また、配管の折曲する部位の全部もしくは一部を、常温で可撓性を有する樹脂パイプを用いて構成した場合には、折曲部の配管において、パイプの曲げ加工が極めて容易になり、そのため、施工性を大幅に向上させることができる。また、樹脂パイプなので、金属パイプに比較して熱伝導率がやや小さくなるが、それだけ、樹脂パイプの配管部においては、結露の発生がより一層確実に防止される。そのため、特に、配管が折曲する主に建物のコーナ部においては、結露により損傷が生じると、修復や交換が容易ではないので、極めて有用になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係るコンクリート製建物の構築方法において、コンクリートの打設前の状態を示す部分断面斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るコンクリート製建物を示す部分断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るコンクリート製建物の構築方法において、配管の折曲部におけるパイプの接続状態を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るコンクリート製建物の構築方法において、保護管の一例を示し、(a)は非使用時の状態を示す図、(b)は使用時の状態を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るコンクリート製建物の暖冷房システムの一例を模式的に示す図である。
【図6】従来のコンクリート製建物の暖冷房システムの一例を模式的に示す図である。
【図7】従来のコンクリート製建物の外型枠の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係るコンクリート製建物の構築方法,このコンクリート製建物の構築方法に用いられる外型枠及びコンクリート製建物について詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、本発明の実施の形態に係るコンクリート製建物Bの構築方法は、熱交換流体が流される配管Hが埋設されたコンクリート製の壁Baを有したコンクリート製建物Bを構築するもので、壁Baを構築する際、内型枠Jと外型枠Kとを用いる。内型枠Jとしては、例えば、周知の木製パネルが用いられる。
【0019】
外型枠Kは、コンクリートに密着する通気性の樹脂からなる通気層1と、通気層1の外側に付設される樹脂製の断熱層2と、断熱層2の外側に付設される化粧板3とを備えて構成されている。図1及び図2には、コンクリート製建物Bのコーナ部に用いられる外型枠Kを示しており、断面L字状に形成されている。コンクリート製建物Bの平面部には、平面板状の外型枠Kが用いられる。これらの外型枠Kは、予め工場において生産され、建物の形状に合わせて適宜接合して設けられる。
【0020】
この外型枠Kにおいて、通気層1は、例えば、ウレタンフォーム,フェノールフォーム、セルロースファイバー,ロックウール,グラスウールや発泡スチロールなど適宜の材料で形成されて良い。実施の形態では、通気層1は、発泡スチロール樹脂の多数の粒状物を通気通路が形成されるように接合して板状に形成されている。粒状物は、数mmの直径を有し、その密度は、例えば、0.5〜0.7に設定される。
この通気層1を作成するときは、例えば周知の蒸気プレス機を用い、発泡スチロールの粒状物を粒状物間に隙間が生じるように疎の状態にして熱で接合して製造する。そのため、製造が極めて容易になるとともに、比較的安価に作成できる。
【0021】
また、外型枠Kにおいて、断熱層2は、例えば、ウレタンフォーム,フェノールフォーム、セルロースファイバー,ロックウール,グラスウールや発泡スチロールなど適宜の材料で形成されて良い。実施の形態では、断熱層2は、非通気性の発泡スチロール樹脂で板状に形成されている。この断熱層2を作成するときは、例えば周知の蒸気プレス機を用い、発泡スチロールの粒状物を密になるようにして熱で接合して製造する。そのため、一般的な発泡スチロール樹脂板を用いることができ、製造が極めて容易になるとともに、比較的安価に作成できる。
【0022】
化粧板3としては、例えば、金属製や樹脂製のもの、あるいは窯業系材料よりなる周知の材料のものが用いられる。金属製や樹脂製のものは、その加工性や成形性が優れており、またその表面に種々の模様を有するプラスチックフィルムをラッピングしたものなどデザイン性に富んでいる。実施の形態では、例えば、アルミニウム製の板材で形成されている。そして、この化粧板3に、上記の断熱層2及び通気層1が順次接着剤を介して積層形成される。
【0023】
また、配管Hは、一般部は、例えば、直径16mmの金属パイプ10が用いられる。実施の形態においては、配管Hの折曲する部位の全部もしくは一部を、常温で可撓性を有する樹脂パイプ11を用いて構成している。折曲部Haは、建物のコーナ部を初め、建物の平板状の部位においても斜めに折曲する部分があり、特に、折曲角度の大きい部分には、この樹脂パイプ11が用いられる。樹脂パイプ11は、例えば、常温で可撓性を有する熱可塑性樹脂からなり、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、熱可塑性樹脂エラストマー等の材質からなる。図3に示すように、折曲部Haにおいて、樹脂パイプ11は、金属パイプ10と接続されるが、金属パイプ10には、樹脂パイプ11が挿入されて固着される樹脂パイプ11の内径より大径のアダプタ12が溶接あるいはねじ結合により固定されており、このアダプタ12に樹脂パイプ11を挿通させることにより接続される。
【0024】
更に、樹脂パイプ11は、その接続時に、保護管20で被覆される。保護管20は、例えば、図4に示すように、樹脂パイプ11が貫通可能な内径を有して塩ビ等の樹脂により一体成型されており、図4(a)に示すように、初期状態においては直線状であり、図4(b)に示すように、使用時に折曲可能になっている。保護管20には、長手方向に沿って、等間隔で、長手方向に沿った一部分で互いに連設された複数個の保持部21が形成されている。この複数個の保持部21は、直線状では隣り合う保持部21とは互いに離間しており、互いに向き合う部分には、折曲状態で、互いに係合する係合凹部22と係合凸部23とが夫々形成されている。この係合により、例えば、樹脂パイプ11を90度に折曲した状態で保持する。
【0025】
そして、壁Baを構築する際には、内型枠Jと外型枠Kとを所定間隔で設置し、次に、内型枠Jと外型枠Kとの間の空間に熱交換流体が流される配管Hを配設する。この配管の際、配管Hの折曲部Haにおいては、樹脂パイプ11を用いることができる。樹脂パイプ11は、曲げの自由度があり、曲げ加工が極めて容易になり、そのため、施工性が大幅に向上させられる。また、この樹脂パイプ11の接続の際には、樹脂パイプ11に保護管20を被覆する。尚、内型枠Jと外型枠Kとの間の空間には、適宜鉄筋を配設する。
【0026】
この状態で、内型枠Jと外型枠Kとの間の空間に流動コンクリートを打設する。この流動コンクリートの打設時に、樹脂パイプ11が保護管20で被覆されるので、コンクリートの圧力により樹脂パイプ11が潰される事態が防止され、熱交換流体の流通が確実に確保される。そして、コンクリートを養生する。養生が終わってコンクリートが固化したならば、内型枠Jは外して内装を施す。例えば、コンクリート面にシーラ処理をし、クロス等の内装材Mを貼付する。一方、外型枠Kはコンクリートを覆う断熱パネルとしてそのまま残す。
【0027】
次に、このコンクリート製建物Bの暖冷房システムについて説明する。図5に示すように、壁Baに埋設された配管Hには、例えば不凍液を混合した水等の熱交換流体が流され、この熱交換流体を循環供給する循環ポンプ30と、加温用水及び冷却用水の熱で熱交換流体を加温冷却する熱交換器31,32とが接続されている。循環ポンプ30は、熱交換流体をヘッダ33を介して建物を複数に区分した夫々の区画ごとに分岐して循環させるようになっている。熱交換器31,32の熱源供給手段としては、建物の地下に設けられた地下タンク34に貯蔵された水を水源として、これを電気給湯器35で50℃程度に加熱した加温用温水や、製氷機36で5℃程度に冷した冷却用水を熱交換器31,32に循環供給する熱源ポンプ37を備えて構成されている。製氷機36は、地下タンク34から供給された冷却用水の一部が製氷用水として還流され、製造した氷が地下タンク34に落下されてその水温を下げるようになっている。電気給湯器35及び製氷機36の電源としては、屋上に設置した風力発電機やソーラ発電機等によって発電された電力、割安な夜間電力を利用することができる。また、実施の形態では、熱源供給手段の一部として、地下タンク34に貯蔵された水を水源として、これをポンプ38で循環させ、太陽集熱装置39により加熱できるようにもしている。図5中、40は電気給湯器35を冬季は導通させ夏季はバイパスさせる流路切換バルブ、41は夏季に製氷機36に対して冷却用水の一部を製氷用水として供給する流路切換バルブ、42は室内温度センサ43により開閉制御される温度コントロール用の流量制御弁である。
【0028】
このようにして構築されたコンクリート製建物Bにおいて、例えば、冬期においては、循環ポンプ30,熱交換器31,32,電気給湯器35,熱源ポンプ37,ポンプ38,太陽集熱装置39を適宜作動させて、熱交換流体を加温して配管H内に流通させ、コンクリートの壁Baを加温する。これにより、壁Baが加温されるので、室内が暖房される。この場合、外型枠Kは断熱パネルとして構成されるので、外部に熱が逃げにくく暖房効率が向上させられる。即ち、熱交換流体の温熱がコンクリートから屋外に逃げることなく蓄熱され、コンクリートに蓄熱された温熱は、熱の供給を停止した後でも室内側に放熱されるので、屋内を例えば20℃前後の快適な温度に維持することができる。
【0029】
一方、夏期においては、循環ポンプ30,熱交換器31,32,熱源ポンプ37を適宜作動させて、井戸水又は地下タンクに貯蔵された例えば15℃前後の水により、熱交換流体を冷却して配管H内に流通させ、コンクリートの壁Baを冷却する。さらに気温を下げたい場合は、循環ポンプ30,熱交換器31,32,製氷機36,熱源ポンプ37を適宜作動させて、熱交換流体を冷却して配管H内に流通させ、コンクリートの壁Baを冷却する。これにより、壁Baが冷却されるので、室内が冷房される。この場合、外型枠Kは断熱パネルとして構成されるので、外部から熱が伝達されにくく冷房効率が向上させられる。即ち、室内の熱がコンクリートの壁Baに吸収されて室内温度が下がり、屋内を例えば25℃前後の快適な温度に維持することができる。
【0030】
この暖冷房時においては、熱交換流体が流される配管Hの温度変化によって、コンクリートに結露が生じようとすることがあるが、断熱パネルを構成する外型枠Kの通気層1は、断熱材として機能するとともに、この通気層1がコンクリートに密着しているので、この通気層1に介在する空気に水分が吸収され、そのため、通気層1やこれとコンクリートとの間に損傷が生じる事態が防止され、外型枠Kの耐久性が大幅に向上させられる。また、通気層1においては、通気経路が通気層1全体に満遍なく形成されるので、確実に結露の発生を抑止することができる。
【0031】
また、建物のコーナ部等、折曲部Haの配管Hにおいては樹脂パイプ11なので、金属パイプ10に比較して熱伝導率がやや小さくなるが、それだけ、結露の発生がより一層確実に防止される。特に、配管Hが折曲する主に建物のコーナ部においては、結露により損傷が生じると、修復や交換が容易ではないので、極めて有用になる。
【0032】
尚、上記の実施の形態において、配管Hの折曲する部位の全部もしくは一部を、常温で可撓性を有する樹脂パイプ11を用いて構成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、金属パイプ10を直接曲げ、あるいは、エルボ管等を用いて接続するなど、適宜変更して差支えない。また、熱源供給手段としては、電気給湯器35,太陽集熱装置39や製氷機36に限定されるものではなく、どのようなものを用いても良いことは勿論である。また、熱交換器31,32を用いて、熱交換媒体を間接的に加温若しくは冷却しているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、直接加温若しくは冷却するように構成しても良く、適宜変更して差支えない。
【符号の説明】
【0033】
B コンクリート製建物
Ba 壁
H 配管
Ha 折曲部
J 内型枠
K 外型枠
1 通気層
2 断熱層
3 化粧板
10 金属パイプ
11 樹脂パイプ
12 アダプタ
20 保護管
21 保持部
22 係合凹部
23 係合凸部
30 循環ポンプ
31,32 熱交換器
33 ヘッダ
34 地下タンク
35 電気給湯器
36 製氷機
37 熱源ポンプ
38 ポンプ
39 太陽集熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換流体が流される配管が埋設されたコンクリート製の壁を有したコンクリート製建物を構築するコンクリート製建物の構築方法において、
上記壁を構築する際、内型枠と外型枠とを用い、該外型枠を、コンクリートに密着する通気性の樹脂からなる通気層と、該通気層の外側に付設される樹脂製の断熱層と、該断熱層の外側に付設される化粧板とを備えて構成し、
先ず、上記内型枠と外型枠とを設置し、次に、上記内型枠と外型枠との間の空間に上記熱交換流体が流される配管を配設し、その後、該空間に流動コンクリートを打設し、該コンクリートが固化した後に上記外型枠を該コンクリートを覆う断熱パネルとして構成したことを特徴とするコンクリート製建物の構築方法。
【請求項2】
上記外型枠において、通気層を、発泡スチロール樹脂の多数の粒状物を通気通路が形成されるように接合して形成したことを特徴とする請求項1記載のコンクリート製建物の構築方法。
【請求項3】
上記外型枠において、断熱層を、非通気性の発泡スチロール樹脂で形成したことを特徴とする請求項1または2記載のコンクリート製建物の構築方法。
【請求項4】
上記配管の折曲する部位の全部もしくは一部を、常温で可撓性を有する樹脂パイプを用いて構成したことを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のコンクリート製建物の構築方法。
【請求項5】
上記樹脂パイプを、保護管で被覆したことを特徴とする請求項4記載のコンクリート製建物の構築方法。
【請求項6】
上記請求項1乃至5記載のコンクリート製建物の構築方法に用いられる外型枠。
【請求項7】
上記請求項1乃至5記載のコンクリート製建物の構築方法によって構築されたコンクリート製建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−58289(P2011−58289A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210197(P2009−210197)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(503268154)株式会社菅野工務店 (1)
【Fターム(参考)】