説明

コンジュゲートワクチン用修飾多糖

本発明は、特に対象における治療的免疫応答誘導用の医薬組成物において使用するための免疫原性複合糖質の製造方法に関する。本発明の免疫原性複合糖質は、活性アルデヒド基を介して1又は複数の担体タンパク質に結合した1又は複数のオリゴ糖又は多糖を含む。したがって、本発明は、(i)不飽和微生物N−アシル誘導体オリゴ糖又は多糖、(ii)不飽和N−アシル誘導体の新規なコンジュゲート、及び(iii)1又は複数のタンパク質への共有結合性リンカーとしての機能を果たす微生物不飽和N−アシル誘導体断片のコンジュゲート分子を含む複合糖質組成物の作製方法を提供する。本発明は、感染症の予防又は治療のための免疫原性複合糖質医薬組成物の使用をさらに包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に対象における治療的免疫応答誘導用の医薬組成物で使用するための免疫原性複合糖質(immunogenic glycoconjugate)の製造方法に関する。本発明の免疫原性複合糖質は、活性アルデヒド基を介して1又は複数の担体タンパク質に結合した1又は複数のオリゴ糖又は多糖を含む。したがって、本発明は、(i)不飽和微生物N−アシル誘導体オリゴ糖又は多糖、(ii)不飽和N−アシル誘導体の新規なコンジュゲート、及び(iii)1又は複数のタンパク質への共有結合性リンカーとしての機能を果たす微生物不飽和N−アシル誘導体の断片のコンジュゲート分子を含む複合糖質組成物の作製方法を提供する。本発明は、感染症の予防又は治療のための免疫原性複合糖質医薬組成物の使用をさらに包含する。
【背景技術】
【0002】
グラム陽性菌、例えば、連鎖球菌(Streptococcus)、ブドウ球菌(Staphylococcus)、腸球菌(Enterococcus)、バチルス(Bacillus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、リステリア(Listeria)、エリジペロスリックス(Erysipelothrix)、及びクロストリジウム(Clostridium)など、並びにグラム陰性菌、例えば、ヘモフィルス(Haemophilus)、シゲラ(Shigella)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、ナイセリア(Neisseria)及びある特定の型の大腸菌(Escherichia coli)によって生じる微生物感染症は、世界中で深刻な罹患率で発生している。連鎖球菌は、例えば、その細胞壁多糖の抗原性及び構造に基づいていくつかの群に整理されている、大きな変化に富む、グラム陽性菌の属である(Lancefield, R. C. 1933. A serological differentiation of human and other groups of hemolytic streptococci. J.Exp.Med. 57.571-595、Lancefield, R. C. 1938. A micro-precipitin technique for classifying hemolytic streptococci and improved methods for producing antigen. Proc.Soc.Exp.Biol.and Med. 38:473-478;そのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている)。
【0003】
B群連鎖球菌は、例えば、莢膜多糖に基づいていくつかの異なる型、例えば、Ia、Ib、II、III、IV、V、VI、VII、及びVIII型に分類され、これらは病原性の型の大部分を占める。多くの他のヒト細菌性病原体に関する知見と同様に、B群連鎖球菌の莢膜多糖は、ワクチンにおいて使用される場合、これらの細菌を伴う感染症に対する有効な防御を提供することができる(そのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Wessels, et al. 1990. Immunogenicity in animals of a polysaccharide-protein conjugate vaccine against type III group B Streptococcus. J. Clin. Invest. 86:1428-1433、Wessels, et al. 1993. Stimulation of protective antibodies against type Ia and Ib group B streptococci by a type Ia polysaccharide-tetanus toxoid conjugate vaccine. Infect. Immun. 61:4760-4766を参照されたい)。
【0004】
グラム陰性菌も罹患率及び死亡率の重要な原因である。ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)b型細菌(Hib)に対する多糖−タンパク質ワクチンが最近開発及び使用されるまで、Hib細菌感染症は、乳児における精神遅滞の多くの症例の原因であった。
【0005】
乳児及び幼児は、一般に、多糖抗原に対する免疫原性応答が乏しい。これらの応答は、T細胞非依存性であると特徴づけられており、したがって、その後の感染症に対する長期免疫保護を付与するのに必要である重要な特性、例えば、記憶、アイソタイプスイッチング、又は親和性成熟に関連しない。このような、乳児及び幼児における、多糖に対する有効な免疫原性応答の欠如を回避するために、当分野では、多糖細菌性抗原を担体タンパク質に非共有結合的に結合させてコンジュゲート分子を形成することによって、T細胞非依存性応答をT細胞依存性応答に変換するための手法を開発することに向けて研究が行われてきた。その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Jenningsらの、米国特許第4,356,170号明細書を参照されたい。
【0006】
アジュバントは、抗原に対する免疫応答を増強する物質であり、したがって、多くのワクチン及びワクチン候補において使用されている。アジュバントの免疫刺激作用は、多くの異なる種類の抗原に向けて免疫応答をブーストするので抗原特異的ではない。FDAによってヒトに使用するために現在認可されている唯一のアジュバントはアルミニウム塩であるが、動物のワクチン接種及びより新規なワクチン候補において使用される多くのアジュバントは、起源が微生物である(White, R. G., 1976. The adjuvant effect of microbial products on the immune response. Ann.Rev.Microbiol. 30:579-595;その全体が参照により本明細書に組み込まれている)。そのようなアジュバントには、フロイントアジュバント、コリネバクテリウム・パルヴム(Corynebacterium parvum)、ムラミルジペプチド、破傷風トキソイドなどが含まれる。
【0007】
多糖の担体タンパク質への結合は、その多糖を効果的に、より免疫原性にすることができる。当技術分野で既知の担体タンパク質として、破傷風毒素/トキソイド、CRM197、グラム陰性菌由来の外膜タンパク質、例えば、高分子量タンパク質、分類不可能なヘモフィルス・インフルエンザ菌由来のP6及びP4、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)由来のCD及びUSPA、ジフテリア毒素/トキソイド、解毒された緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)毒素A、コレラ毒素/トキソイド、百日咳毒素/トキソイド、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)外毒素/トキソイド、B型肝炎表面抗原、B型肝炎コア抗原、ロタウイルスVP7タンパク質、又は呼吸器合胞体ウイルスF及びGタンパク質が挙げられる。
【0008】
破傷風トキソイドは、その担体としての性能において数十年間使用されており、その安全性プロファイルは確立されている。
【0009】
様々な細菌感染症を標的とする莢膜多糖(CP)コンジュゲートワクチンは、現在、開発及び臨床評価中である。混合された複数のCP血清型を単一の注射に含めることは、現在研究中である。しかし、CPコンジュゲートワクチンを組み合わせて単一の多価注射にすることは、異なる成分間で競合をもたらし、任意の個々のコンジュゲートの免疫原性に悪影響を及ぼす場合がある(Fattom et al., 1999, Vaccine 17: 126-33;その全体が参照により本明細書に組み込まれている)。
【0010】
莢膜多糖をタンパク質に結合させるための様々な手順が当技術分野で記載されている。多糖の担体タンパク質への結合は、その多糖を効果的に、より免疫原性にすることができる(Robbins, J. B. and R. Schneerson. 1990. Polysaccharide-protein conjugates: A new generation of vaccines. J. Infect. Dis. 161:821-832;その全体が参照により本明細書に組み込まれている)。別の概説については、Contributions to Microbiology and Immunology, vol 10, Conjugate Vaccines, volume editions J. M. Cruse and R. E. Lewis, Jr., 1989(その全体が参照により本明細書に組み込まれている)を参照されたい。一方法では、多糖を穏やかに酸加水分解することによって、タンパク質と反応して共有結合を形成することが可能な、還元末端基が作製される(Anderson, P. A., 1983, Infect. Immun., 39:233-238;その全体が参照により本明細書に組み込まれている)。しかし、タンパク質への結合に関与する末端糖基は、ヘミアセタールとアルデヒドの間の平衡状態で存在し、したがって低効率でタンパク質に結合する。末端還元糖の低い反応性を克服するために、当技術分野では、タンパク質への結合に使用される多糖の末端位置に、安定なアルデヒド基を導入するための、穏やかな酸化に目が向けられてきた(Jenningsらの米国特許第4,356,170号明細書、上記を参照されたい)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,356,170号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Lancefield, R. C. 1933. A serological differentiation of human and other groups of hemolytic streptococci. J. Exp. Med. 57:571-595
【非特許文献2】Lancefield, R. C. 1938. A micro-precipitin technique for classifying hemolytic streptococci and improved methods for producing antigen. Proc. Soc. Exp. Biol. and Med. 38:473-478
【非特許文献3】Wessels, et al. 1990. Immunogenicity in animals of a polysaccharide-protein conjugate vaccine against type III group B Streptococcus. J. Clin. Invest. 86:1428-1433
【非特許文献4】Wessels, et al. 1993. Stimulation of protective antibodies against type Ia and Ib group B streptococci by a type Ia polysaccharide-tetanus toxoid conjugate vaccine. Infect. Immun. 61:4760-4766
【非特許文献5】White, R. G., 1976. The adjuvant effect of microbial products on the immune response. Ann.Rev.Microbiol. 30:579-595
【非特許文献6】Fattom et al., 1999, Vaccine 17: 126-33
【非特許文献7】Robbins, J. B. and R. Schneerson. 1990. Polysaccharide-protein conjugates: A new generation of vaccines. J. Infect. Dis. 161:821-832
【非特許文献8】Contributions to Microbiology and Immunology, vol 10, Conjugate Vaccines, volume editions J. M. Cruse and R. E. Lewis, Jr., 1989
【非特許文献9】Anderson, P. A., 1983, Infect. Immun., 39:233-238
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
他の利用可能な方法、例えば、いくつかの多糖のIO酸化による活性化は、1多糖分子当たり唯一の活性部位を生成することができ、結果として起こる担体タンパク質への結合により、単一末端の複合糖質ワクチンが生成される。この仕組みは、例えば、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)C型、B型、及び連鎖球菌A群に対する複合糖質ワクチンに見出される。しかし、活性部位が1分子当たり1個ということが、免疫原性増強の程度を制限する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、適当な担体タンパク質への結合によって、免疫原性の、架橋複合糖質ワクチンの生成を可能にする、複数の活性部位を有する多糖を提供する。さらに、この方法は、アミノ糖を含む任意の多糖にも適用可能であり、糖鎖中の2つの隣接する(adjacent)、即ち、隣接する(vicinal)遊離ヒドロキシ(−OH)基を必要とする現存するIO酸化法に対して明らかに有利である。
【0015】
本発明は、特に対象における治療的免疫応答誘導用の医薬組成物において使用するための免疫原性複合糖質の製造方法に関する。本発明の免疫原性複合糖質は、活性アルデヒド基を介して1又は複数の担体タンパク質に結合した1又は複数のオリゴ糖又は多糖を含む。当技術分野で既知の以前の結合方法と異なり、本発明は、少なくとも1つのアミノ糖を含む任意の多糖に適用可能な方法を提供し、この方法により、抗原性を維持する洗練された、可溶性コンジュゲートも生成される。
【0016】
本発明は、免疫原性複合糖質の作製方法であって、1又は複数のアミノ糖を含むオリゴ糖又は多糖中の少なくとも1つのN−アセチル基を脱アセチル化し、1級アミノ基を含む少なくとも1つ、好ましくは複数のアミノ糖を有するオリゴ糖又は多糖を形成するステップと;1級アミノ基の少なくとも1つを、少なくとも4炭素長の不飽和アルキル部分を含むN−アシル部分で置換し、それによって1又は複数のアルキル部分の不飽和部位において、少なくとも1つ、好ましくは複数の活性部位を含むオリゴ糖又は多糖を生成させるステップと;この化合物を酸化剤と接触させ、オリゴ糖又は多糖上の1又は複数の不飽和部位に活性アルデヒド(−CHO)基を生成するステップと;この化合物を担体タンパク質と結合させ、それによって免疫原性複合糖質を生成させるステップとを含む方法を提供する。
【0017】
代替の実施形態では、本発明は、免疫原性複合糖質の作製方法であって、1又は複数のアミノ糖を含むオリゴ糖又は多糖中の少なくとも1つのN−アセチル基を、少なくとも4炭素長の不飽和アルキル部分を含むN−アシル部分で置換し、それによって1又は複数のアルキル部分の不飽和部位において、少なくとも1つ、好ましくは複数の活性部位を含むオリゴ糖又は多糖を生成させるステップと;この化合物を酸化剤と接触させ、オリゴ糖又は多糖上のアルキル部分の1又は複数の不飽和部位に活性アルデヒド(−CHO)基を生成させるステップと;この化合物を担体タンパク質と結合させ、それによって免疫原性複合糖質を生成させるステップとを含む方法を提供する。
【0018】
本発明の方法によれば、N−アシル部分は、不飽和アルキル部分を含む。ある特定の実施形態では、不飽和アルキル部分は、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、又はC11部分であり、炭素主鎖内に1又は複数の二重結合を含むことができる。ある特定の実施形態では、不飽和アルキル部分は、ただ1つの二重結合、即ち、1つの不飽和部位を含む。他の実施形態では、N−アシル部分は、N−ペンテノイル部分である。不飽和N−アシル部分は、本明細書に記載されているか、又は不飽和部位の活性アルデヒドへの酸化、及びその後の担体タンパク質への結合に適していると、当技術分野で知られている任意の不飽和アルキル部分、例えば、不飽和アシル無水物(例えば、ペンテン酸無水物(pentenoic anhydride))又は不飽和ハロゲン化アシル(例えば、塩化ペンテノイル、塩化アクロロイル(acroloyl chloride))を含むことができる。
【0019】
本発明の分子の酸化は、不飽和N−アシル部分の二重結合(即ち、不飽和アルキル部分の不飽和部位(複数も))の酸化に限定されることが好ましく、したがって、本明細書で定義され、又は当技術分野で知られているような穏やかな条件下で実施される。例えば、4〜9.5のpH範囲の過ヨウ素酸塩を使用する酸化が、当技術分野で知られている。穏やかな酸化条件のために、アシル基に非常に近く位置する不飽和部位は、酸化せず、且つ/又は活性アルデヒド基を形成しないことによって、その後の担体タンパク質への結合が可能になる。したがって、本発明の方法における使用に関しては、不飽和アルキル基の不飽和部位(即ち、二重結合の位置)は、不飽和アルキル基の炭素1と2の間でも、炭素2と3の間でもない(例えば、当技術分野で認められ、本明細書で使用するアルキル基の番号付けについては図1を参照されたい)。ある特定の実施形態では、不飽和アルキル部分は、ただ1つの二重結合を含む。他の実施形態では、不飽和アルキル部分は、主炭素鎖の末端の2つの炭素の間に二重結合を含む。
【0020】
本発明は、
i)前記1又は複数のアミノ糖のN−アセチル基を脱アセチル化し、ii)得られるアミノ糖の1級アミノ基を、少なくとも4炭素の不飽和アルキル基を含むN−アシル基で置換し、iii)前記不飽和アルキル基を酸化することによって、主鎖の末端に活性アルデヒド基を有する、少なくとも3炭素のアルキル基を生成させることによって調製される、a)1又は複数のアミノ糖を含む少なくとも1つのオリゴ糖又は多糖と、b)これに結合した担体タンパク質とを含む免疫原性複合糖質をさらに提供する。本発明の方法によれば、不飽和アルキル基の不飽和部位、即ち、二重結合は、主鎖の炭素1と2の間でも炭素2と3の間でもない(例えば、炭素の番号付けについては図1を参照されたい)。好適な実施形態では、不飽和アルキル鎖は、少なくとも5炭素長である。他の実施形態では、酸化前の不飽和部位又はアルキル鎖は、不飽和アルキル鎖の末端の2つの炭素の間にある。本発明の方法によれば、担体タンパク質は、当技術分野で知られており、且つ/又は本明細書に記載されている任意の方法によって、活性アルデヒド基を介して、少なくとも1つの多糖又はオリゴ糖に結合される。
【0021】
本発明は、a)1又は複数のN−アセチル基を含む1又は複数のアミノ糖を含む、少なくとも1つのオリゴ糖又は多糖であって、前記1又は複数のN−アセチル基が、前記アルキル基主鎖の末端で活性アルデヒド基を含む少なくとも3炭素のアルキル基を含むN−アシル基で置換されているオリゴ糖又は多糖と、b)これに結合した担体タンパク質とを含む免疫原性複合糖質も提供する。好適な実施形態では、活性アルデヒド基を含むアルキル鎖は、少なくとも4炭素長である。本発明の方法によれば、担体タンパク質は、当技術分野で既知の任意の方法、例えば還元的アミノ化、及び/又は本明細書に記載される任意の方法によって、活性アルデヒド基を介して少なくとも1つの多糖又はオリゴ糖に結合される。
【0022】
本発明によれば、多糖又はオリゴ糖の1又は複数のアミノ糖上の少なくとも1つのN−アセチル基は、置換されることによって以下の(式I)の化合物を形成する:
【0023】
【化1】

【0024】
(式中、Rは、不飽和のC、C、C、C、C、C、C、C10、又はC11アルキル部分であり、[sugar]は、多糖又はオリゴ糖の前記1又は複数のアミノ糖を表す)。ある特定の実施形態では、前記1又は複数のアミノ糖は、多糖又はオリゴ糖の反復単位の成分である。他の実施形態では、前記1又は複数のアミノ糖は、多糖又はオリゴ糖の反復単位の成分ではない。特定の実施形態では、RはC又はCであり、例えば、その結果それぞれ、N−ブテノイル基又はN−ペンテノイル基が形成される。他の実施形態では、Rは唯一の二重結合、即ち、不飽和部位を含み、この二重結合は、アルキル主鎖の末端の2つの炭素の間に位置する。
【0025】
不飽和N−アシル部分は、活性アルデヒド基に対する不飽和部位の酸化、及びその後の担体タンパク質への結合を介した、オリゴ糖又は多糖を前記タンパク質と結合させる連結部分としての機能を果たす。アルキル部分の不飽和部位の酸化は、本明細書に記載されており、且つ/又は当技術分野で知られている任意の方法によって、例えば過ヨウ素酸塩を用いて実施することができる。酸化は、多糖鎖を切断することができるので、本発明によって包含される酸化ステップは、穏やかな条件下でのみ、例えば、約4〜約9.5のpH範囲で、低温(例えば、約4℃〜約27℃)で実施される。穏やかな酸化的な条件のために、不飽和部位が効率的に酸化されるためには、不飽和アルキル部分の二重結合は、不飽和アルキル主鎖の炭素1と2の間、及び炭素2と3の間とすることはできない(例えば、炭素の番号付けについては図1を参照されたい)。Rが不飽和のC部分である(式1においてN−ブテノイル基を形成する)、この実施形態による非限定例では、N−アシル基は、アルキル主鎖の炭素3と4の間に二重結合を含む。Rが3炭素を超える鎖を含む他の実施形態では、不飽和部位は、炭素4より大きい位置とすることができる。
【0026】
本発明の生成物及び方法によれば、酸化及び結合の後、複合糖質のタンパク質とオリゴ糖又は多糖は、以下に示すような連結を通じて共有結合的に連結されている(四角に囲まれている;式II):
【0027】
【化2】

【0028】
(式中、Rは、飽和したC、C、C、C、C、C、C、C又はC10アルキル部分であり、NH(四角で囲まれている)は、タンパク質の1級NH基、例えば、リシニル又はアルギニル残基の1つに属する)。式IIの[sugar]は、多糖又はオリゴ糖の前記1又は複数のアミノ糖を表す。ある特定の実施形態では、前記1又は複数のアミノ糖は、多糖又はオリゴ糖の反復単位の成分である。他の実施形態では、前記1又は複数のアミノ糖は、多糖又はオリゴ糖の反復単位の成分ではない。式IIのRは、式IのRに由来する。式IのR(即ち、不飽和アルキル部分)は、当技術分野で知られおり、且つ/又は本明細書に記載されるような酸化及び結合の後、所望の連結部分R又は式II(即ち、飽和アルキル部分)が生じるように選択される。
【0029】
本発明の方法によれば、多糖又はオリゴ糖の1又は複数のアミノ糖のN−アセチルは、糖の1、2、3、4、又は5を含めた任意の位置でアミノ糖に連結することができる。アミノ糖の構造は、当技術分野で公知であり、したがって、前記連結の位置は、ごく普通に決定することができる。例えば、アミノ糖がGlcNAcである場合、糖のN−アセチル基は炭素2にあり、アミノ糖がシアル酸である場合、糖のN−アセチル基は炭素4にある。
【0030】
特定の実施形態では、糖分子のN−アセチル基は、N−ペンテノイル基で置換され、このN−ペンテノイル基は、オリゴ糖又は多糖を担体タンパク質と結合させるため、例えば、還元的アミノ化による結合の連結部分としての機能を果たす。特定の実施形態では、酸化及び結合の後の連結基は、飽和したC主鎖を有する飽和N−アシル基である。本発明の方法によれば、置換されるN−アセチル基は、それだけに限らないが、GlcNAc、ManNAc、GalNAc、及びシアル酸を含めた任意のアミノ糖のN−アセチル基とすることができる。
【0031】
本発明のある特定の実施形態では、N−アセチル基の置換は、アルカリを用いて実施される。
【0032】
本発明は、免疫原性コンジュゲートワクチンにおける使用に適しており、T細胞非依存性免疫応答からT細胞依存性免疫応答に変換するように機能する、当技術分野で知られており、且つ/又は本明細書に記載される任意の担体タンパク質の使用を包含する。ある特定の実施形態では、担体タンパク質は、細菌タンパク質又はその断片、例えば、細菌毒素若しくはトキソイド又はその断片である。本発明の方法に従って使用することができる担体タンパク質の非限定例として、破傷風毒素又はトキソイド、CRM197、グラム陰性菌に由来する外膜タンパク質、分類不可能なヘモフィルス・インフルエンザ菌に由来するP6及びP4、ヘモフィルス・インフルエンザ菌B型に由来するタンパク質、モラクセラ・カタラーリスに由来するCD及びUSPA、ジフテリア毒素/トキソイド、解毒された緑膿菌毒素A、コレラ毒素/トキソイド、百日咳毒素/トキソイド、ウェルシュ菌外毒素/トキソイド、B型肝炎表面抗原、B型肝炎コア抗原、ロタウイルスVP7タンパク質、並びに呼吸器合胞体ウイルスFタンパク質及びGタンパク質が挙げられる。
【0033】
ある特定の実施形態では、本発明の方法に従って使用されるオリゴ糖又は多糖は、細菌又はその抗原断片に由来する多糖である。そのような細菌として、それだけに限らないが、連鎖球菌、ブドウ球菌、腸球菌、バチルス、コリネバクテリウム、リステリア、エリジペロスリックス、クロストリジウム、シゲラ、クレブシエラ、コレラ菌、ナイセリア、及びエシェリキア(Escherichia)が挙げられる。関係する実施形態では、オリゴ糖又は多糖は、任意の莢膜細菌に由来する莢膜多糖は、例えば、B群連鎖球菌Ia、Ib、II、III、V、VI、若しくはVIII型;A群連鎖球菌;髄膜炎菌B、C、Y、若しくはW135型;肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)III、IV若しくはXIV型;又は大腸菌K1である。好適な実施形態では、オリゴ糖又は多糖は、これが由来する細菌に対する免疫応答を誘導することができるように選択される。ある特定の実施形態では、オリゴ糖又は多糖は、天然に存在するオリゴ糖又は多糖ではなく、例えば、当技術分野で既知の任意の技法によって合成することができ、又は天然に存在する化合物に由来するが、修飾の結果得られるオリゴ糖又は多糖は、天然には見い出されない。例えば、多糖又はオリゴ糖は、修飾する結果、野生型の多糖又はオリゴ糖類縁体に対する抗原性を増大させる、例えば、免疫応答の増大を誘導することができる。本発明の方法によれば、有用な多糖は、免疫特異的応答を誘導することができる少なくとも1つの抗原エピトープを含む。そのような多糖又はオリゴ糖は、少なくとも7つの糖部分を含むことが好ましいが、2つという少ない糖部分でも活性を示すことができる。多糖又はオリゴ糖は、非分岐状又は分岐状とすることができ、約1000〜数百万ダルトンの分子量を有することができる。ある特定の実施形態では、多糖又はオリゴ糖は、1又は複数の化学修飾を有する。本発明によって包含される化学修飾の非限定例には、多糖のカルボキシル化、スルホン化、硫酸化、及びリン酸化誘導体、これらの塩、並びにこれらの混合物が含まれる。
【0034】
本発明は、対象において免疫応答を誘導するための治療上有効な濃度で1又は複数の免疫複合糖質(immuno-glycoconjugate)を含む組成物、特に医薬組成物の使用も包含する。免疫複合糖質のオリゴ糖又は多糖に対する免疫応答の誘導は、オリゴ糖又は多糖が由来する病原体(複数も)による感染症の治療及び/又は予防に有用である。したがって、ある特定の実施形態では、本発明の複合糖質は、予防用ワクチン又は治療剤として使用することができる。ある特定の実施形態では、免疫複合糖質は、2以上の細菌の型又は系統に由来する、複数の多糖及び/又はオリゴ糖を含み、それによって1つを超える細菌の種/型又は系統に対する免疫応答を誘導する。他の実施形態では、本発明の免疫複合糖質の製造において使用されるオリゴ糖又は多糖は、細菌及び/又は他の病原体、例えば、原虫の複数の種/系統に由来する複数の抗原ドメインを含む結果、対象に投与すると多価免疫応答を生じるように合成される。
【0035】
本発明は、ヒト又は動物のための免疫原性製剤、特に、本発明の1又は複数の免疫複合糖質を含む免疫原性組成物にも関する。ある特定の実施形態では、免疫原性製剤は、複数の免疫複合糖質及び/又は複数の担体タンパク質を含む。免疫複合糖質は、細菌の複数の型又は系統に由来する多糖若しくはオリゴ糖を含むように操作し、且つ/又はキメラの多糖若しくはオリゴ糖(即ち、細菌の複数の型及び/若しくは系統に由来するエピトープを含む多糖若しくはオリゴ糖)を含むように操作することができるので、本発明の免疫原性製剤は、複数の細菌型、1又は複数の系統変異体に対する予防又は療法のために操作することができる。それだけに限らないが、鼻腔内、イントラトラキアル(intratrachial)、経口、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内及び皮下の経路を含めた、当技術分野で公知及び通常の多くの方法を、本発明の免疫原性製剤を用いて対象を免疫するのに使用することができる。
【0036】
3.1 専門用語
本明細書で使用する場合、用語「約(about)」又は「約(approximately)」は、数値とともに使用されるとき、基準数値の1、5若しくは10%以内、又は前記数値を測定及び/又は判定するのに使用される標準的な方法の一般的な実験誤差の範囲内の任意の数値を指す。
【0037】
用語「担体」、「担体タンパク質」又は「担体ポリペプチド」は、多糖抗原が共有結合的に連結されているポリペプチド部分を指すのに互換的に使用される。担体タンパク質は、多くの場合免疫原性であり、したがって、ワクチン力価に寄与することもできる。担体タンパク質の連結により、一般に、結合された炭水化物分子の抗原性が増大する。担体タンパク質は、それに連結した多糖と同じ標的生物体に由来することができ、又は異なる生物体に由来することができる。例えば、担体タンパク質は、それだけに限らないが、細菌毒素又はトキソイドを含めた細菌タンパク質とすることができる。好適な実施形態では、担体タンパク質は、T細胞非依存性免疫応答をT細胞依存性免疫応答に変換するように機能するように選択される。
【0038】
本明細書で使用する場合、対象への療法(複数も)の投与の脈絡において、用語「組み合わせて」は、1つを超える療法(例えば、1つを超える予防剤及び/又は治療剤)の使用を指す。用語「組み合わせて」の使用により、療法(例えば、予防剤及び/又は治療剤)が対象に投与される順序は制限されない。第1の療法(例えば、第1の予防剤又は治療剤)は、第2の療法(例えば、第2の予防剤又は治療剤)の前に(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間前)、第2の療法と同時に、又は第2の療法に続いて(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間)対象に投与することができる。特定の実施形態では、本発明の免疫原性複合糖質は、1又は複数の追加の療法、例えば、感染症、例えば、細菌の1又は複数の種/系統を含む感染症によって生じる疾患の予防又は治療について当技術分野で知られているワクチンと組み合わせて使用することができる。
【0039】
本明細書で使用する場合、用語「管理する」、「管理すること」、及び「管理」は、対象が療法(例えば、予防剤又は治療剤)から得る有益な効果を指し、これは、疾患の治癒をもたらさない。ある特定の実施形態では、対象は、1又は複数の療法(例えば、本発明の組成物などの予防剤又は治療剤)を投与されることによって、感染症、又はそれに関連する病状若しくは症状を「管理し」、その結果疾患/障害の進行又は悪化を予防する。
【0040】
本明細書で使用する場合、用語「予防する」、「予防すること」及び「予防」は、療法(例えば、予防組成物又は治療組成物)の投与の結果としての、対象における疾患/障害(例えば、細菌による感染症)の発症、再発の予防、疾患/障害の1又は複数の症状の低減を指す。本明細書で使用する場合、「予防」は、ワクチンとしての本発明の免疫複合体の使用に関連した、細菌の1又は複数の型及び/又は系統による感染症の予防も包含する。
【0041】
用語「多糖」及び「オリゴ糖」は、本明細書で使用する場合、限定はされないが、2〜2,000超の反復単位を有する糖類をはじめとする、複数の反復単位を含む糖類を指す、その最も広い意味において使用される。一般に、当技術分野で認められているように、及び本明細書で使用する場合、用語「多糖」は、約50〜約2,000以上の反復単位を有する糖類を指す。当技術分野で認められているように、及び本明細書で使用する場合、用語「オリゴ糖」は、約5〜約40、45又は50の反復単位を有する糖類を指す。多糖の反復単位は、単一の単糖分子とすることができ、又は二糖分子とすることができる。ある特定の実施形態では、反復単位は、3個以上の単糖分子である。本発明の方法によれば、細菌の異なる型及び/又は系統に由来する多糖又はオリゴ糖の断片は、化学的に結合、又は人工的に合成することによって、断片が最初に得られ、且つ/又は同定された細菌の、複数の型及び/又は系統に由来する複数のエピトープを含む、単一の多糖鎖又はオリゴ糖鎖を形成することができ、したがって、本発明の多糖又はオリゴ糖の反復単位(複数も)の組成は、糖鎖全体にわたって一定である必要はない。本発明の方法によって包含される多糖又はオリゴ糖は、1又は複数のアミノ糖を含む。ある特定の実施形態では、前記1又は複数のアミノ糖は、多糖又はオリゴ糖の反復単位の成分である。他の実施形態では、前記1又は複数のアミノ糖は、多糖又はオリゴ糖の反復単位の成分ではない。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「対象」又は「患者」は互換的に使用される。本明細書で使用する場合、用語「対象(subject)」及び「対象(subjects)」は、動物(例えば、哺乳動物)を指す。いくつかの実施形態では、対象は、非霊長類(例えば、ラクダ、ロバ、シマウマ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット、及びマウス)並びに霊長類(例えば、サル、チンパンジー、及びヒト)を含む哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象は非ヒト哺乳動物である。他の実施形態では、対象はヒトである。ある特定の実施形態では、対象は、ヒト乳児、幼児、青年、女性、又は妊娠中の女性である。
【0043】
用語「治療的免疫応答」は、本明細書で使用する場合、複合糖質に向けられている、標準的な技法によって測定した場合の、体液及び/又は細胞の免疫の増大を指す。限定するものではないが、複合糖質に向けられた体液免疫の誘導レベルは、好ましくは、対象に本発明の組成物を投与する前の、複合糖質に向けられた体液免疫レベルの少なくとも4倍、8倍、又は10倍、好ましくは少なくとも16倍である。免疫応答は、適当なインビトロ又はインビボアッセイの手段によって定性的に測定することもでき、対象における感染症又はその症状の進行の停止、又は緩解は、治療的免疫応答の誘導を示すとみなされる。
【0044】
本明細書で使用する場合、用語「療法(therapies)」及び「療法(therapy)」は、疾患/障害(例えば、細菌感染症又はそれに関連する病状若しくは症状)の予防、治療、管理、又は寛解において使用することができる、任意のプロトコル(複数も)、方法(複数も)、及び/又は薬剤(複数も)を指すことができる。ある特定の実施形態では、用語「療法(therapies)」及び「療法(therapy)」は、生物学的療法、支持療法、及び/又は当業者に知られている、疾患又はそれに関連する病状若しくは症状(複数も)、感染症又はそれに関連する病状若しくは症状の治療、管理、予防、又は寛解において有用な他の療法を指す。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「治療剤(therapeutic agent)」及び「治療剤(therapeutic agents)」は、疾患(例えば、細菌感染症又はそれに関連する病状若しくは症状)の予防、治療、管理、又は寛解において使用することができる任意の薬剤(複数も)を指す。疾患又はそれに関連する症状(例えば、細菌感染症又はそれに関連する病状若しくは症状)の予防、治療、管理、又は寛解のために有用であると知られている、又は使用されてきた、又は現在使用されている薬剤であることが好ましい。
【0046】
本明細書で使用する場合、疾患に対する対象への療法の投与の脈絡における用語「治療する」、「治療」、「治療すること」は、前記疾患/障害(例えば、細菌性の障害)の症状の根絶、低減、又は寛解を指す。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】N−アシル化複合糖質の合成の一般的な方法の概略の流れ図であり、図中n=反復単位の数値であり、これは、オリゴ/多糖の種類に応じて変化し、1〜1,000以上とすることができる。
【図2】多糖−タンパク質結合の一般的な方法、例えばN−ペンテノイル化(pentenoylation)を介した、A群連鎖球菌多糖−タンパク質コンジュゲートの調製の概略の流れ図である。n=反復単位の数値であり、これは、多糖又はオリゴ糖の性質に依存し、1〜1,000以上とすることができる。
【図3】天然及び修飾A群連鎖球菌多糖の600MHzのH NMRスペクトルを示す図である。
【図4】多糖−タンパク質結合の一般的な方法、例えば、N−ペンテノイル化を介した髄膜炎菌B多糖−タンパク質コンジュゲートの調製の概略の流れ図であり、図中n=反復単位の数値である。
【図5】修飾髄膜炎菌B多糖の600MHzのH NMRスペクトルを示す図である。
【図6】BalbCマウスにおける、A群連鎖球菌多糖−破傷風トキソイドコンジュゲートを含むワクチン接種によって生成される多糖に対する免疫応答を示す図である。説明文:免疫前:コンジュゲートで免疫化する前のA群連鎖球菌多糖に対する血清IgG濃度。GASP−TT:従来の方法(天然多糖の還元、及び穏やかなNa−メタ過ヨウ素酸塩酸化による1多糖分子当たり唯一の活性部位の生成)によって調製されたA群連鎖球菌多糖−タンパク質コンジュゲートで免疫化した後のA群連鎖球菌多糖に対する血清IgG濃度。N−ブト−GASP−TT(1):新規の方法(N−ペンテノイル化による1多糖分子当たり複数の活性部位の生成、及び天然多糖の酸化)によって調製されたA群連鎖球菌多糖タンパク質コンジュゲートで免疫化した後のA群連鎖球菌−多糖に対する血清IgG濃度。GlcNAc残基の約5〜10%がペンテノイル化された。N−ブト−GASP−TT(2):新規の方法(N−ペンテノイル化による1多糖分子当たり複数の活性部位の生成、及び天然多糖の酸化)によって調製されたA群連鎖球菌多糖−タンパク質コンジュゲートで免疫化した後のA群連鎖球菌多糖に対する血清IgG濃度。GlcNAc残基の約15〜20%がペンテノイル化された。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明は、一般に、(i)不飽和微生物N−アシル誘導体オリゴ糖又は多糖;(ii)担体タンパク質に共有結合的に結合した不飽和N−アシル誘導体多糖又はオリゴ糖に由来する新規な免疫原性コンジュゲート;並びに(iii)本発明の分子及び薬学的に許容される担体を含む免疫原性複合糖質組成物の作製方法を提供する。本発明は、ワクチンとしてのこれらの組成物の使用方法をさらに包含する。本明細書に開示されるように、本発明は、1又は複数のタンパク質、例えば、担体タンパク質への結合のための、1オリゴ糖又は1多糖当たりの複数の活性部位の生成を促進することができる方法を提供する。本発明は、複数の活性化部位を有するオリゴ糖又は多糖の形成方法も提供し、これは、1又は複数の適当な担体タンパク質と結合されるとき、当技術分野で以前に知られている製造方法と比較した場合、架橋複合糖質ワクチンを増強された効率で生成する。ある特定の実施形態では、本発明の方法は、当技術分野で既知の同様のワクチンと比較して増強された免疫原性を示す複合糖質ワクチンも生成する。本明細書に提示される方法は、少なくとも1つのアミノ糖を含む任意の多糖にも適用可能であり、糖鎖中の2つの隣接する遊離ヒドロキシ基を必要とする、現存する過ヨウ素酸塩酸化法に対して明らかに有利である。
【0049】
N−アセチル基を有する少なくとも1つのアミノ糖を含むオリゴ糖又は多糖(例えば、それだけに限らないが、GlcNAc、ManNAc、GalNAc、及び/又はシアル酸の1又は複数を含むもの)は、処理されて1又は複数のN−アセチル基が脱アセチル化されることによって、オリゴ糖又は多糖中に少なくとも1つの好ましくは複数の、1級アミノ基を含むアミノ糖(複数も)が生成される。次いで少なくとも1つの1級アミノ基(複数も)は、N−アシル部分で置換されることによって、1多糖分子又は1オリゴ糖分子当たり少なくとも1つの、好ましくは複数の活性部位が生成される。その後の酸化を可能にするために、N−アシル化は、少なくとも5炭素の不飽和脂肪族鎖を使用して実施される(例えば、ペンテノイル化)。長さが5炭素超の不飽和脂肪族鎖の使用も、本発明によって包含されており(例えば、6−、7−、8−、9−、10−、11−、12、13−若しくは14−又はそれ以上の炭素の不飽和脂肪族鎖)、ただし不飽和部位は、前記部分の炭素1と2の間、又は炭素2と3ではない(図1を参照されたい、又は式Iによれば、アルデヒド基の炭素とRのCの間又はRのCとCの間)。酸化は、多糖又はオリゴ糖鎖を切断することができるので、本発明によって包含される酸化方法は、不飽和脂肪族鎖の不飽和部位(複数も)のみを酸化するように選択される(本明細書に記載され、且つ/又は当技術分野で知られているように)。そのような酸化条件は、通常当技術分野で「温和な」と呼ばれ、日常の実験によって決定することができる。したがって、本発明の方法は、前記アルキル部分の不飽和部位(複数も)に活性アルデヒド(−CHO)基を生成するために、穏やかな条件下で(例えば、強緩衝液中、約4℃〜約27℃の温度範囲及び約4〜約9.5のpH範囲で)、不飽和基を酸化する酸化剤の使用(例えば、O(オゾン分解用)又はHの使用)を包含する。ある特定の実施形態では、アルキル部分の不飽和部位は、アルキル主鎖の末端の2つの炭素の間にある。二重結合の酸化により、不飽和部位で主アルキル鎖が切断され、新しいアルキル鎖末端で活性アルデヒド基が生成される。例えば、不飽和脂肪族鎖が炭素CとCの間に1つの二重結合を有するCである実施形態では、酸化によりCにアルデヒドを有する4炭素の鎖が生じる。不飽和脂肪族鎖が1つを超える二重結合、即ち不飽和部位を有する実施形態では、酸化反応は、1つ又は両方の不飽和部位に影響する場合があるが、反応により主炭素鎖が切断されるので、アルデヒド基は、新しく形成される脂肪族鎖の末端に常にあることになる。したがって、不飽和基を含む主鎖が、1つを超える不飽和部位を有する場合、酸化反応により、異なる長さの不飽和又は飽和N−アシルが生じる場合があるが(それぞれ、1つ又はすべての不飽和部位が酸化されたかどうか、及び二重結合の位置に依存する)、それぞれの部分は、脂肪族の主鎖の末端に活性アルデヒド基を含む。
【0050】
本発明の多糖又はオリゴ糖は、本明細書で記載され、且つ/又は当技術分野で既知の任意の方法(例えば、還元的アミノ化)によって担体タンパク質に結合されることによって、免疫原性複合糖質を生成する。一般的な方法の概略の流れ図を図1に示す。
【0051】
したがって、本発明は、式Iの微生物不飽和N−アシル誘導体オリゴ糖又は多糖に関する:
【0052】
【化3】

【0053】
(式中、Rは、少なくとも1つの不飽和炭素を含む、不飽和のC、C、C、C、C、C、C、C10又はC11アルキル部分であり、[sugar]は、多糖又はオリゴ糖の前記1又は複数のアミノ糖を表す。ある特定の実施形態では、前記1又は複数のアミノ糖は、多糖又はオリゴ糖の反復単位の成分である。他の実施形態では、前記1又は複数のアミノ糖は、多糖又はオリゴ糖の反復単位の成分ではない。本発明は、複数の不飽和炭素(即ち、複数の二重結合)を含むRを包含するが、本明細書に提供される方法によれば、Rは、1つの不飽和炭素(即ち、1つの二重結合;この二重結合は、RのCとC間にはない)を有することのみ必要である。本発明のある特定の実施形態では、式IのRは、1つの二重結合を含む、不飽和のC、C、C、C、C、C、C、C10又はC11アルキル部分である。本発明のさらなる実施形態では、式IのRは、不飽和のC、C、C、C、C、C、C、C10又はC11アルキル部分であり、二重結合の位置は、脂肪族鎖の末端の2つの炭素の間である。
【0054】
特定の実施形態では、不飽和N−アシル部分は、酸化されてアルデヒド基になることによって(アルキル部分の主鎖の末端で)、化合物を担体タンパク質と結合させることにおけるリンカーとしての機能を果たす。次いで、N−アシル部分上のアルデヒド基は、当技術分野で知られており、且つ/又は本明細書に記載される任意の結合方法、例えば、還元的アミノ化によって担体タンパク質と連結することができる。
【0055】
さらに別の実施形態では、アミノ(NH)基は、糖の1、2、3、4、又は5を含めた任意の位置で、オリゴ糖又は多糖の糖残基に連結される。アミノ糖の構造は、当技術分野で公知であり、したがって前記連結の位置はごく普通に決定することができる。例えば、アミノ糖がGlcNAcである場合、糖のN−アセチル基は炭素2にあり、アミノ糖がシアル酸である場合、糖のN−アセチル基は炭素4にある。
【0056】
本発明で有用な式Iの修飾多糖、例えば、N−アシル誘導体多糖の非限定例は、以下の式IIIに示すような、少なくとも1つのN−ペンテノイル(CH=CH−CH−CH−CONH−)基を含む、N−ペンテノイル化誘導体多糖である:
【0057】
【化4】

【0058】
(式中、N−ペンテノイル基は、コンジュゲートタンパク質に対するリンカーとしての機能を果たす)。
【0059】
任意の結合様式を、修飾オリゴ糖又は多糖を担体タンパク質と結合させるのに使用することができる。活性アルデヒド基を形成するために末端の隣接するヒドロキシル基の存在に依存する一例示的方法は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第4,356,170号明細書(’170特許)に記載されている。’170特許には、多糖中への末端アルデヒド基の導入、及び還元的アミノ化によるアルデヒド基のタンパク質アミノ基へのカップリングが記載されている。多糖とタンパク質は、それによって、式IIで以下に示すような基(四角で囲まれた)を通じて連結される:
【0060】
【化5】

【0061】
(式中、Rは、飽和したC、C、C、C、C、C、C、C、又はC10アルキル部分であり、四角で囲まれていないNH(四角で囲まれた)は、タンパク質の1級NH基(例えば、リシニル又はアルギニル残基)の1つに属する)。式IIの[sugar]は、多糖又はオリゴ糖の前記1又は複数のアミノ糖を表す。ある特定の実施形態では、前記1又は複数のアミノ糖は、多糖又はオリゴ糖の反復単位の成分である。他の実施形態では、前記1又は複数のアミノ糖は、多糖又はオリゴ糖の反復単位の成分ではない。
【0062】
本発明の、得られるN−アシル化−多糖−タンパク質コンジュゲートは、マウスにおいてインビボで試験されており、従来技術において既知のN−プロピオニル化多糖(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,902,586号明細書に記載されているもの)と比較した場合、改善された免疫原性を有することが一般に示されている。したがって、本発明のワクチンは、B群髄膜炎菌又は大腸菌K1生物体によって引き起こされる髄膜炎に対して有用であることが予期される。特に興味深いのは、細菌感染症(例えば、細菌性髄膜炎)のリスクが最もある対象、例えば、免疫無防備状態の個体及び乳児を保護するためのワクチンである。
【0063】
本発明の特定の限定されない実施形態では、免疫応答を最適化するために、2種以上のオリゴ糖若しくは多糖、及び/又は2以上の担体タンパク質を含めることが望ましい場合がある。そのような手法は、免疫応答の回避をもたらす突然変異の急速な発生を特徴とする感染症、例えば、原虫感染の予防又は治療において特に有用となり得る。さらに、本発明の免疫原性複合糖質は、2以上の免疫原性/抗原ドメイン及び/又は2以上のエピトープを含むことができる。例えば、本発明は、異なる抗原に特異的な少なくとも2つの異なる多糖又はオリゴ糖が、1つの担体分子に結合されており、且つ/又は異なる抗原に特異的な2つの異なる多糖又はオリゴ糖が合わさって、担体タンパク質に結合された1つの多糖又はオリゴ糖になっている多価コンジュゲートを包含する。本発明は、複数の多糖若しくはオリゴ糖、及び又は複数の担体タンパク質を含むコンジュゲートをさらに包含する。本発明の方法により、1多糖分子又は1オリゴ糖分子当たり、少なくとも1つの、好ましくは複数の活性部位が生成されるので、多糖又はオリゴ糖は、1又は複数の部位で担体タンパク質に共有結合的に結合することができ、さらに、多糖又はオリゴ糖は、1又は複数の担体タンパク質に結合することができる。したがって、ある特定の実施形態では、コンジュゲートは、多糖分子及び担体タンパク質の格子である。
【0064】
本発明の複合糖質組成物中に使用するための多糖又はオリゴ糖は、サイズを変更することができる。本明細書で定義するように、本発明で使用するためのオリゴ糖は、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10の反復単位(例えば、糖残基)、好ましくは10〜約50の反復単位を含む。多糖は、本明細書で定義するように、50を超える反復単位であり、約600〜約2,000の反復単位、又はそれ以上の大きさであってもよい。場合によっては、大きなコンストラクトが、免疫原性の増強のために望ましい。本発明の方法は、非常に大きな多糖の使用を提供するが、これは、多くの反応部位を1つの多糖中に導入することができるためである。
【0065】
5.1 多糖及びその単離
好適な実施形態において使用するのに適した多糖には、被包性細菌由来の多糖及びオリゴ糖が含まれる。多糖及びオリゴ糖は、任意の供給源由来とすることができ、例えば、これらは、天然に存在する細菌、遺伝子操作された細菌から得ることができ、又は合成的に作製することができる。多糖及びオリゴ糖は、活性化する前に1又は複数の処理ステップ、例えば、精製、機能付与、穏やかな酸化条件を使用する脱重合、脱アセチル化などにかけることができる。必要に応じて、修理後ステップも使用することができる。適当な多糖及びオリゴ糖を合成、調製、及び/又は精製するために、当技術分野で既知の任意の方法を使用することができる。
【0066】
本発明の方法に従って使用するための多糖及びオリゴ糖として、それだけに限らないが、例えば、血清型1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F及び33Fの肺炎球菌多糖;血清型A、B、C、W135、及びYの髄膜炎菌多糖、ヘモフィルス・インフルエンザb型、多糖ポリリボシルリビトールホスフェート、血清型III及びVのB群連鎖球菌多糖、並びにチフス菌(Salmonella typhi)Vi多糖が挙げられる。肺炎球菌及びB群連鎖球菌の血清型、並びに髄膜炎菌の血清型の他の多糖も本明細書で使用するのに適しており、他の一般にT非依存性の多糖及びオリゴ糖抗原、例えば、A群連鎖球菌、ブドウ球菌、腸球菌、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、大腸菌、緑膿菌、及び炭疽菌(Bacillus anthracis)に由来する多糖又はオリゴ糖も同様である。細菌性の多糖及びオリゴ糖は、特に好適であるが、グラム(−)細菌性のリポ多糖及びリポオリゴ糖、並びにその多糖及びオリゴ糖誘導体、並びにウイルス性の多糖及びオリゴ糖も使用することができる。
【0067】
多糖は、当技術分野で既知の方法によって、細菌莢膜から単離される。例えば、1つのそのような方法では、B群髄膜炎菌(系統981B)などの細菌は、蒸留水1リットル当たり30gの脱水Todd Hewitt Broth(Difco Laboratories社製、Detroit, Mich.)を使用して、発酵槽中、37℃で増殖される。発酵槽での増殖の前に、凍結乾燥した系統が、5%(v/v)のヒツジ血液寒天(Difco Laboratories社製、Detroit, Mich.)プレート上で、37℃で、ろうそく瓶中で最初に増殖される。次いで細菌は、エルレンマイヤーフラスコ中の1.0リットルのTodd Hewitt Broth(上記)に移され、これは、37℃で、190r.p.m.で7時間振盪される。次いで接種材料は、発酵槽に移される。発酵槽での増殖後(16時間)、細菌は、0.75%の最終濃度までホルマリンを添加することによって死滅される。タンパク質が、高温(50〜60℃)の代わりに、低温(4℃)の90%のフェノールを用いて未精製の多糖の溶液を撹拌することによって抽出されることを除き、Bundle et al, J. Biol. Chem., 249, 4797-4801 (1974)に記載されているように、細菌は、連続的な遠心分離によって除去され、多糖は、上澄から単離され、本質的に精製される。後者のプロセスにより、高分子量形態の多糖、例えば、高分子量形態のB群髄膜炎菌多糖(GBMP)が生成されることが保証される。
【0068】
他の特定の実施形態では、多糖又はオリゴ糖は、蒸留水中37g/リットルの濃度で、ブレインハートインフュージョン(BHI)(Difco Laboratories社製、Detroit, Mich.)を含む発酵槽内で、37℃で培養することによって、細菌、例えば、大腸菌(018:K1:H7)(NRCC4283)から単離することができる。試験用培養物(working culture)は、エルレンマイヤーフラスコ中の50mlのBHI溶液(上記を参照されたい)中で原料及び初期培養物を再構成することによって、凍結乾燥原料から開始することができ、これは、37℃で、200r.p.m.で7時間振盪される。次いで培養物は、1.5リットルのBHI(上記)に移され、上述した同じ条件下で7時間増殖される。次いで接種材料は、発酵槽に移される。これらの条件下で培養された細菌、例えば、大腸菌K1の莢膜多糖の単離及び精製は、当技術分野で知られ、且つ/又は本明細書に記載される任意の方法によるものとすることができる。
【0069】
上述した単離及び精製手順は、利用することができる唯一のものではなく、他の公開された手順、例えば、それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Watson et al, J. Immunol., 81, 331 (1958)によって、及び上述した米国特許第4,727,136号において記載されているものも利用可能であることが理解される。
【0070】
5.2 オリゴ糖又は多糖中のN−アセチル基の置換:
天然のオリゴ糖又は多糖中のN−アセチル基は、置換することによって、分子のシアル酸残基中に反応性アミン基を提供することができる。置換は、任意の既知の方法によって、例えば、アルカリによって、例えば、塩基性水媒質中で、高温、例えば、約90℃〜110℃で、及び約13〜14のpHで実施することができる。ある特定の実施形態では、置換は、1級アミノ基を形成するための、N−アセチル基の脱アセチル化を包含する。塩基性水媒質は、水性アルカリ金属水酸化物溶液、例えば、約2Mの濃度の水酸化ナトリウムを含むことができる。或いは、水溶液中のヒドラジンを使用することができる。本発明によって使用することができる塩基の非限定例は、NaOH、KOH、LiOH、NaHCO、NaCO、KCO、KCN、EtN、NH、H、NaH、NaOMe、NaOEt又はKOtBuである。塩基、例えば、NaOH、KOH、LiOH、NaH、NaOMe又はKOtBuなどは、0.5N〜5.0Nの範囲で最も有効に使用される。塩基、例えば、NaHCO、NaCO、KCO及びKCNは、その溶解度が許容する高さの濃度で使用することができる。NH又はHなどの塩基は、100%を含めたほとんど任意の濃度で使用することができる。溶媒、例えば水、アルコール(好ましくはC−C)、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド又はこれらの混合物及び他の有機溶媒を使用することができる。水を含む塩基溶液が最も好適である。
【0071】
特定の実施形態では、多糖又はオリゴ糖のN−アセチル基の置換について好適なpH範囲は、約9〜約14であり、最適pHは約12である。N−置換多糖はその後、当技術分野で既知の標準的な方法によって、膜又は透析を使用する超高純度化によって、残留反応物から精製される。N−アセチル基置換の程度は、少なくとも1つのN−アセチル基の置換から、オリゴ糖又は多糖のN−アセチル基の最大100%の置換及び100%の置換を含めて変化し得る。ある特定の実施形態では、N−アセチル基置換の程度は、約2%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%又は約100%である。天然のN−アセチル基の90〜99%が置換されることが好ましい。置換されたオリゴ糖又は多糖は、例えば、冷却、中和、精製、及び凍結乾燥によって回収される。N−アセチル置換の程度の分析及び置換された生成物の精製は、当技術分野で知られており、且つ/又は本明細書に記載される任意の方法によって実施することができる。例えば、オリゴ糖及び/又は多糖は、精製/回収のために、Spectra/Por(登録商標)膜MWCO:3,500を用いて、脱イオン水に対して透析することができる。N−脱アセチル化の程度は、当技術分野で公知の方法によって、500MHzのH−NMRによって分析することができる。
【0072】
N−アセチル基置換手順の前に、天然のオリゴ糖又は多糖は、例えば、約1,000〜約1,000,000ダルトンの範囲で、広範囲の平均分子量を有し、この平均分子量は、N−アセチル基置換反応によって実質的に低減される。例えば、B群髄膜炎菌多糖(GBMP)は、約500,000〜約800,000ダルトンの平均分子量を有し、本発明の方法によるN−アセチル基置換後に、約3,000〜約50,000ダルトンの範囲の平均分子量を有する、N−アセチル置換多糖の断片が通常生成される。多糖の全長又は断片は、本発明の方法によって使用される。例えば、全長の多糖又はオリゴ糖は、断片化することによって、コンジュゲートワクチンにおいて使用するのにより適したサイズを生成することができる。例えば、10,000〜40,000ダルトン、好ましくは約10,000〜約15,000ダルトンの平均分子量のN−アシル化材料が使用される。所望のサイズの断片は、例えば、遠心分離法又は濾過法を含めた、当技術分野で既知の任意の方法によって得ることができる。ある特定の実施形態では、所望の分子量範囲のサイズで分類された分画又は分別は、分留カラムを使用することによって、出発物質、例えば、N−アシル化GBMP物質が導入されたサイジングカラム(例えば、分子篩)の溶出液の分画を収集することによって得ることができる。ある特定の実施形態では、より高い平均分子量、例えば、30,000〜40,000ダルトンの範囲のN−アシル化物質は、本発明の方法において使用するために収集される。
【0073】
次いで、N−アセチル基置換多糖の断片又は多糖の全長は、N−アシル化されることによって、対応するN−アシル化生成物が生成される。N−アシル化は、穏やかな塩基性条件下で水性緩衝媒質中にN−アセチル基置換多糖を溶解させることによって実施することができる。そのような穏やかな緩衝水溶液は、約7.5〜9.0のpHを有することが好ましい。次いでアシル反応物は、糖含有溶液に添加され、反応が完了するまで10℃未満に冷却される。アシル反応物は、結合完了時の所望のアルキル基、例えば、式IIの所望のRに基づいて選択される。アシル反応物の不飽和部位は、酸化されて活性アルデヒドになり、したがって、Rの長さを決定する。例えば、アシル反応物は、不飽和アシル無水物(例えば、アセチル無水物若しくはプロピオニル無水物)又は不飽和ハロゲン化アシル(例えば、塩化ペンテノイル)とすることができる。この反応物は、溶解度を増大させるために、場合によりアルコールと混合される。必要に応じて、反応媒質は、当技術分野で既知の任意の方法によって精製することができる。利用することができる精製方法の非限定例は、透析とその後の凍結乾燥によるN−アシル化生成物の回収である。反応は、約10〜20時間以内に実質的に完了する。次いでN−アセチル基のN−アシル化の程度は、当技術分野で既知の分析方法、例えば、高分解能、例えば、500MHzのH NMRによって求められ、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは約100%である。前記N−アシル化反応では、断片の顕著な分子量低減は全く生じない。
【0074】
5.3 担体タンパク質
多糖が結合されているタンパク質(複数も)は、ワクチンの糖成分に対するT細胞非依存性免疫応答を、T細胞依存性の免疫応答に変換するのに適するように選択される。本発明のある特定の実施形態では、担体タンパク質は、天然の毒素又は解毒された毒素(即ち、トキソイド)とすることができる。また、タンパク質毒素の無毒性の突然変異形態も使用することができる。そのような突然変異は、天然の毒素のエピトープを保持していることが好ましい。そのような突然変異した毒素は「交差反応物質」、即ちCRMと呼ばれる。CRM197は、活性ジフテリア毒素から1つのアミノ酸変化を有し、活性毒素から免疫学的に区別不能である。CRM197は、ヘモフィルス・インフルエンザ菌コンジュゲートワクチンの成分として、乳児において広く使用されている。
【0075】
活性化された多糖又はオリゴ糖は、タンパク質に結合されることによってコンジュゲートワクチンを生じる。適当なタンパク質は、対象に投与するために、化学的又は遺伝学的手段によって安全にされた、免疫学的に有効な担体である細菌毒素が含まれる。例として、不活化された細菌毒素、例えば、ジフテリアトキソイド、CRM197、破傷風トキソイド、百日咳トキソイド、大腸菌LT、大腸菌ST、緑膿菌由来の外毒素Aなどが挙げられる。細菌性外膜タンパク質、例えば外膜複合体c(OMPC)、ポリン、トランスフェリン結合タンパク質、肺剥離、肺炎球菌表面タンパク質A(PspA)、肺炎球菌アドヘシンタンパク質(PsaA)、又は肺炎球菌表面タンパク質BVH−3及びBVH−11なども使用することができる。他のタンパク質、例えば炭疽菌の防御抗原(PA)、オボアルブミン、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン(BSA)及びツベルクリンの精製タンパク誘導体(PPD)なども使用することができる。タンパク質は、無毒性であり、非反応原性であり、好適な実施形態の結合方法に適用できる、十分な量及び純度で得られるタンパク質が好ましい。例えば、ジフテリア毒素は、ジフテリア菌(Corynebacteria diphtheriae)の培養物から精製し、ホルムアルデヒトを使用して化学的に解毒することによって、適当なタンパク質を得ることができる。
【0076】
担体タンパク質の非限定例として、破傷風毒素/トキソイド、CRM197、Cα、Cβタンパク質(例えば、非IgA結合C−βタンパク質を含めた、B群連鎖球菌由来)、ジフテリアトキソイド、α溶血素、又はPanton-Valentineロイコシジン(PVL)、グラム陰性菌由来の外膜タンパク質、例えば、髄膜炎菌外膜タンパク質、高分子量タンパク質、分類不可能なヘモフィルス・インフルエンザ菌由来のP6及びP4、モラクセラ・カタラーリス由来のCD及びUSPA、ジフテリア毒素/トキソイド、解毒された緑膿菌毒素/トキソイドA、コレラ毒素/トキソイド、百日咳毒素/トキソイド、ウェルシュ菌外毒素/トキソイド、B型肝炎表面抗原、B型肝炎コア抗原、ロタウイルスVP7タンパク質、呼吸器合胞体ウイルスF、Gタンパク質、コレラ毒素サブユニットB、ニューモリソイド(pneumolysoid)、百日咳トキソイド、リシン又はシステイン残基を含有する合成タンパク質などが挙げられる。担体タンパク質は、天然タンパク質、化学的に修飾されたタンパク質、解毒されたタンパク質又は組換えタンパク質とすることができる。タンパク質成分に関して、本発明によって調製されるコンジュゲート分子は、単量体、二量体、三量体及びより高度に架橋された分子とすることができる。
【0077】
本発明は、担体タンパク質がN−アセチル含有多糖又はオリゴ糖に連結されているコンジュゲート分子の作製を可能にする。多糖又はオリゴ糖のサイズは、大きく変化し得る。1又は多数の多糖又はオリゴ糖は、1又は多数のタンパク質と架橋することができる。本発明のコンジュゲートは、格子構造であることが好ましい。
【0078】
5.4 コンジュゲート
活性化された多糖を結合させるための多くの方法、即ち、少なくとも1つの部分を、タンパク質に供給結合的に結合することができるようにすることが必要である方法は、当技術分野で知られており、本明細書で使用するのに適している。例えば、Jenningsに発行された米国特許第4,356,170号明細書には、シアノボロヒドリドを使用する還元的アミノ化による、活性アルデヒド基を含む多糖の担体タンパク質への結合が記載されている。
【0079】
本発明の方法は、1多糖分子又は1オリゴ糖分子当たり、少なくとも1つの、好ましくは複数の活性部位(即ち、活性アルデヒド基)の生成を可能にする。活性化された多糖分子は、1又は複数の担体タンパク質と反応し、このタンパク質への1つを超える連結を形成することができる。したがって、ある特定の実施形態では、コンジュゲート生成物は、様々な架橋されたマトリックス型又は格子構造の混合物とすることができる。
【0080】
結合後に、コンジュゲートは、任意の適当な方法によって精製することができる。精製は、未反応の多糖、タンパク質、又は小分子の反応副生物を除去するために用いられる。精製方法には、当技術分野で知られているように、限外濾過、サイズ排除クロマトグラフィー、密度勾配遠心分離、疎水性相互作用クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム分画などが含まれる。ある特定の実施形態では、精製はまったく必要でない場合があり、又は軽微な程度の精製のみが望ましい場合がある。コンジュゲートは、濃縮、又は希釈、又は処理して、所望の通りに、医薬組成物において使用するのに適した任意の形態にすることができる。
【0081】
5.5 医薬組成物
組成物(例えば、医薬組成物)は、混合物として、薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤、及び活性成分として、本明細書に記載されているような、生物活性剤(例えば、複合糖質、オリゴ糖、多糖、ポリペプチド、又はペプチド)の1又は複数を含むことが好ましい。活性成分として生物活性剤を含む医薬組成物の調製は、当技術分野でよく理解されている。一般に、そのような組成物は、液体溶液又は懸濁液として調製されるが、投与における溶液又は懸濁液、投与前の液体にとって適した固体形態も調製することができる。配合物は、乳化することもできる。活性治療成分は、薬学的に許容され、活性成分、例えば、浸透エンハンサーと適合する賦形剤と混合されることが多い。適当な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、及びこれらの組合せである。本発明の好適な担体、賦形剤、及び希釈剤は、生理食塩水(即ち、0.9%のNaCl)を含む。さらに、必要に応じて、組成物は、軽微な量の補助物質例えば、湿潤剤又は乳化剤、pH−緩衝剤などを含むことができ、これは、活性成分の有効性を増強する。
【0082】
本発明の組成物には、医薬組成物の製造に有用なバルク薬剤組成物(例えば、純粋でない又は滅菌していない組成物)、及び単位剤形の調製に使用することができる医薬組成物(即ち、対象又は患者への投与に適した組成物)が含まれる。そのような組成物は、本明細書で開示される予防有効量若しくは治療有効量の予防剤並びに/若しくは治療剤又は、これらの薬剤及び薬学的に許容される担体の組合せを含む。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、免疫原性量の少なくとも1つの免疫原性複合糖質、及び場合により、薬学的に許容される担体を含む。他の実施形態では、本発明の組成物は、予防有効量又は治療有効量の少なくとも1つの免疫原性複合糖質、及び場合により、薬学的に許容される担体を含む。
【0083】
特定の実施形態では、用語「薬学的に許容される」は、生理的に適合性であることを意味する。好ましくは、薬学的に許容されるは、動物、より詳細にはヒトにおいて使用するために、連邦又は州政府の管理機関によって認可されているか、米国薬局方又は他の一般に認知された薬局方において列挙されていることを意味する。用語「担体」は、希釈剤、賦形剤、浸透エンハンサー(上述したような当技術分野における)、又は一緒に治療剤が投与される媒体を指す。そのような医薬担体として、それだけに限らないが、滅菌液体、例えば、水、及び石油、動物、植物又は合成起源のものを含めた油、例えば、ラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などが挙げられる。一般的な適当な薬学的賦形剤として、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。組成物は、必要に応じて、軽微な量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤も含むことができる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、ピル、カプセル、粉末、徐放製剤などの形態をとることができる。
【0084】
上記に示した免疫原性複合糖質を含む本発明の医薬組成物は、本明細書では「ワクチン」と呼ばれる。用語ワクチンは、本発明の組成物が、予防的な又は治療的免疫応答を誘導するのに使用することができることを示すのに使用される。本発明のワクチンは、1つの抗原ドメイン若しくはエピトープを有する複合糖質、又は複数の抗原ドメイン若しくはエピトープを有する複合糖質を含むことができる。さらに、ワクチンは、1つ若しくは複数の抗原ドメイン若しくはエピトープを有する複合糖質の混合物、又は前述の任意の組合せを含むことができる。本発明のコンジュゲートワクチンを含む医薬組成物は、弱免疫原性抗原(例えば、細菌性多糖又はオリゴ糖)の免疫原性の増強、使用される抗原の量の潜在的な低減、頻度の少ないブースター免疫化、効力の改善、免疫の選択的刺激又は免疫応答の潜在的な標的化を含めて、従来のワクチンに対して様々な利点を提供することができる。
【0085】
本発明による1又は複数の免疫原性複合糖質を含むワクチン組成物は、皮膚、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、非経口的、肺内(intrapulmonarily)、膣内、直腸内、経鼻的、経口的又は局所的に投与することができる。ワクチン組成物は、注射、粒子ボンバードメントによって、経口的に、又はエアロゾルによって送達することができる。
【0086】
本発明によるワクチン組成物は、薬学的に許容される担体などの様々な追加の物質をさらに含むことができる。適当な担体には、任意の標準的な薬学的に許容された担体、例えば、リン酸緩衝食塩溶液、水、エマルジョン、例えば、油/水エマルジョン又はトリグリセリドエマルジョンなど、様々な種類の湿潤剤、錠剤、コーティングされた錠剤及びカプセルが含まれる。化合物の静脈内及び腹腔内投与において有用な許容されるトリグリセリドエマルジョンの例は、Intralipid.RTM.として商業的に知られているトリグリセリドエマルジョンである。一般に、そのような担体は、賦形剤、例えば、デンプン、ミルク、糖、ある特定の種類の粘土、ゼラチン、ステアリン酸、タルク、植物性脂肪若しくは油、ゴム、グリコール、又は他の既知の賦形剤などを含む。そのような担体は、香味用添加物及び着色添加物、又は他の成分も含むことができる。
【0087】
本発明のワクチン組成物は、適当な希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント(例えば、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、若しくは硫酸アルミニウム)及び/又は担体も含むことができる。そのような組成物は、液体又は凍結乾燥した、若しくは他の方法で乾燥した製剤の形態とすることができ、様々な緩衝液内容物(例えば、トリス−HCl、アセテート、ホスフェート)、pH及びイオン強度の希釈剤、表面への吸収を防止するための、アルブミン又はゼラチンなどの添加剤、界面活性剤(例えば、Tween 20、Tween 80、Pluronic F68、胆汁酸塩)、可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリセロール)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、増量物質又は張性調節剤(例えば、ラクトース、マンニトール、ソルビトール)、タンパク質へのポリエチレングリコールなどのポリマーの共有結合性結合、金属イオンとの錯体形成、或いはポリマー化合物、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ヒドロゲルなどの微粒子配合物中若しくは配合物上、又はリポソーム、マイクロエマルジョン、ミセル、単層若しくは多層ベシクル、赤血球ゴースト、若しくはスフェロプラスト上への物質の取り込みを含むことができる。そのような組成物は、物理的状態、溶解度、安定性、インビボ放出速度、及びインビボクリアランス速度に影響する。組成物の選択は、ワクチンの物理的及び化学的性質に依存する。例えば、膜結合形態の多糖及び/又は担体タンパク質に由来する生成物は、界面活性剤を含む製剤を必要とする場合がある。制御放出又は徐放組成物は、親油性デポー(例えば、脂肪酸、ワックス、油)中の製剤を含む。本発明の組成物の他の実施形態は、筋肉内、非経口、肺、経鼻、及び経口を含めた様々な投与経路ために、微粒子形態、保護コーティング、プロテアーゼ阻害剤又は浸透エンハンサーを組み入れる。
【0088】
本発明の組成物は、中性又は塩形態として製剤化することができる。薬学的に許容される塩として、それだけに限らないが、陰イオン、例えば、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するものなどで形成されるもの、及び陽イオン、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するものなどで形成されるものが挙げられる。
【0089】
本発明の組成物、例えば、ワクチンは、組成物の免疫原性有効性を増強するための1又は複数のアジュバントをさらに含むことができる。アジュバントは、多糖ベースのワクチンとともに使用するのに適していることが当技術分野で既知の任意のアジュバントを用いることができる(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,773,007号明細書を参照されたい)。適当なアジュバントとして、それだけに限らないが、水中油型エマルジョン製剤(他の特定の免疫賦活剤、例えばムラミルペプチド又は細菌性細胞壁成分の有無にかかわらず)、例えば、(a)5%のスクアレン、0.5%のTween 80、及び0.5%のSpan 85(場合によりMTP-PEを含む)を含み、微小流動化剤(microfluidizer)を使用してサブミクロン粒子に製剤化された、MF59.M.(国際公開第90/14837号パンフレット;Chapter 10 in Vaccine design: the subunit and adjuvant approach, eds. Powell & Newman, Plenum Press 1995)(b)10%のスクアラン、0.4%のTween 80、5%のプルロニックブロックポリマーL121、及びthr-MDPを含み、微小流動化してサブミクロンエマルジョンにされたか、より大きな粒径エマルジョンを生成するためにボルテックスされたSAF、及び(c)2%のスクアレン、0.2%のTween 80、及び1又は複数の細菌性細胞壁成分、例えば、モノホスホリリピド(monophosphorylipid)A(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、及び細胞壁骨格(CWS)、好ましくはMPL+CWS(Detox.TM.)などを含むRIBI.TM.アジュバント系(RAS)、(Ribi Immunochem社製、Hamilton, Mont.)などが挙げられる。他のアジュバントとして、サポニンアジュバント(QS21若しくはStimulon.TM.(Cambridge Bioscience社製、Worcester, Mass.)又はそれから生成される粒子、例えば追加の界面活性剤を欠いていてもよいISCOM(免疫賦活性複合体)など(例えば、国際公開第00/07621号パンフレット);完全フロイントアジュバント(CFA)及び不完全なフロイントアジュバント(IPA);サイトカイン(インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12(国際公開第99/44636号パンフレット)など)、インターフェロン(例えば、γインターフェロン)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)など);モノホスホリル脂質A(MPL)又は3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)(例えば、肺炎球菌糖とともに使用される場合、場合によりミョウバンの実質的な非存在下での、英国特許2220221号明細書、欧州特許出願公開第0689454号明細書、例えば、国際公開第00/56358号パンフレット);3dMPLと、例えば、QS21及び/又は水中油型エマルジョン(例えば、欧州特許出願公開第0835318号明細書、欧州特許出願公開第0735898号明細書、欧州特許出願公開第0761231号明細書)との組合せ;CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチド(Krieg Vaccine 2000, 19, 618-622;Krieg Curr opin Mol Ther2001 3:15-24;Roman et al., Nat. Med, 1997, 3, 849-854;Weiner et al., PNAS USA, 1997, 94, 10833-10837;Davis et al, J. Immunol, 1998, 160, 810-876;Chu et al., J. Exp. Med, 1997, 186, 1623-1631;Lipford et al, Ear. J. Immunol., 1997, 27, 2340-2344;Moldoveami et al., Vaccine, 1988, 16, 1216-1224、Krieg et al., Nature, 1995, 374, 546-549;Klinman et al., PNAS USA, 1996, 93, 2879-2883;Balks et al, J. Immunol, 1996, 157, 1840-1845;Cowdery et al, J. lmmunol, 1996, 156, 4570-4575;Halpern et al, Cell Immunol, 1996, 167, 72-78;Yamamoto et al, Jpn. J. Cancer Res., 1988, 79, 866-873;Stacey et al, J. Immunol., 1996, 157,2116-2122;Messina et al, J. Immunol, 1991, 147, 1759-1764;Yi et al, J. Immunol, 1996, 157,4918-4925;Yi et al, J. Immunol, 1996, 157, 5394-5402;Yi et al, J. Immunol, 1998, 160, 4755-4761;及びYi et al, J. lmmunol, 1998, 160, 5898-5906;国際特許出願、国際公開第96/02555号パンフレット、国際公開第98/16247号パンフレット、国際公開第98/18810号パンフレット、国際公開第98/40100号パンフレット、国際公開第98/55495号パンフレット、国際公開第98/37919号パンフレット及び国際公開第98/52581号パンフレット、即ち、少なくとも1つのCGジヌクレオチドを含み、シトシンはメチル化されていない);ポリオキシエチレンエーテル若しくはポリオキシエチレンエステル(例えば、国際公開第99/52549号パンフレット);オクトキシノールと組み合わせたポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(国際公開第01/21207号パンフレット)、若しくはポリオキシエチレンアルキルエーテル、若しくはオクトキシノールなどの少なくとも1つの追加の非イオン性界面活性剤と組み合わせたエステル界面活性剤(国際公開第01/21152号パンフレット);サポニン及び免疫促進オリゴヌクレオチド(例えば、CpGオリゴヌクレオチド)(国際公開第00/62800号パンフレット);免疫賦活剤及び金属塩の粒子(例えば、国際公開第00/23105号パンフレット);サポニン及び水中油型エマルジョン、例えば、国際公開第99/11241号パンフレット;サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IM2(場合により+ステロール)、例えば国際公開第98/57659号パンフレット;並びに/又は組成物の効力を増強するために免疫賦活剤として作用する他の物質が挙げられる。
【0090】
医薬組成物は、生理的条件に近づけることが必要な場合、薬学的に許容される補助物質、例えば、pH調整剤及び緩衝剤、毒性調整剤など、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含むことができる。これらの製剤の抗原の濃度は、広く変更することができ(例えば、約0.1重量%未満から、通常約2重量%又は少なくとも約2重量%、20重量%〜50重量%又はそれ以上の程度まで)、選択される特定の投与様式及び患者の必要性に従って、流体の体積、粘度、体重などに主に基づいて選択される。得られる組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、ピル、カプセル、粉末、ゲル、クリーム、ローション剤、軟膏、又はエアロゾルの形態とすることができる。
【0091】
好適な実施形態によって調製されるコンジュゲートは、免疫学的に有効用量で、適当な形態で対象に投与されることによって、感染症を治療及び/又は予防する。用語「対象」は、本明細書で使用する場合、哺乳動物などの動物を指す。例えば、企図される哺乳動物には、ヒト、霊長類、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、ウマ、マウス、ラット、ウサギ、モルモットなどが含まれる。用語「対象」、「患者」、及び「宿主」は互換的に使用される。本明細書で使用する場合、コンジュゲートワクチンの「免疫学的に有効な」用量は、免疫応答を誘導するのに適した用量である。特定の投与量は、治療される対象の年齢、体重及び医学的状態並びに投与方法に依存する。適当な用量は、当業者によって容易に決定することができる。
【0092】
特定の疾患の治療及び/又は予防のための免疫化プロトコルを実行することにおいて、治療有効量のコンジュゲートが対象に投与される。本明細書で使用する場合、用語「有効量」は、患者にとって意味のある利益、例えば、関連した医学的状態(疾患、感染症など)の免疫応答の増強、治療、治癒、予防若しくは寛解又はそのような状態の治療、治癒、予防若しくは寛解の速度の増加などを示すのに十分な治療剤(例えば、コンジュゲート)又は他の活性成分の総量を意味する。「有効量」が、単独で投与される個々の治療剤に適用されるとき、この用語は、その治療剤単独を指す。組合せに適用されるとき、この用語は、組合せ、連続的又は同時のいずれで投与されても、治療効果をもたらす成分の合わせた量を指す。本明細書で使用する場合、治療剤の「有効量を投与すること」という語句は、対象が、疾患、感染症、又は障害の重症度を反映する少なくとも1つの指標において、改善、好ましくは持続性の改善を誘導するのに十分な量及び時間、前記治療剤(複数も)を用いて治療されることを意味する。
【0093】
本発明のコンジュゲートワクチンは、単一用量として、又は1若しくは複数の追加免疫を含む連続で投与することができる。例えば、乳児又は小児に、年少期に単一用量を投与し、次いで最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10年後以上に追加免疫用量を投与することができる。追加免疫用量により、初回抗原刺激を受けたB細胞由来の抗体、即ち、既往応答が生じる。コンジュゲートワクチンは、乳児又は小児において、高い一次の機能抗体応答を誘導し、追加免疫投与後に既往応答を誘導することができ、コンジュゲートワクチンによって誘導される防御免疫反応が長続きすることを実証する。
【0094】
本発明のワクチンは、製剤化して、例えば、経口(oral)、経鼻、肛門、直腸、頬側、膣、経口(peroral)、胃内、粘膜、舌下、肺胞、歯肉、嗅覚、又は呼吸器粘膜の投与用の液体製剤にすることができる。そのような投与に適した形態には、懸濁液、シロップ、及びエリキシル剤が含まれる。コンジュゲートワクチンは、非経口、皮下、皮内、筋肉内、腹腔内又は静脈内の投与、注射可能投与、インプラントからの徐放、点眼剤による投与用にも製剤化することができる。そのような投与に適した形態には、滅菌した懸濁液及びエマルジョンが含まれる。そのようなコンジュゲートワクチンは、適当な担体、希釈剤、又は賦形剤、例えば滅菌した水、生理食塩水、グルコースなどとの混合物とすることができる。コンジュゲートワクチンは、凍結乾燥することもできる。コンジュゲートワクチンは、望まれる投与経路及び製剤に応じて、補助物質、例えば湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、ゲル化添加剤又は粘性増強添加剤、保存剤、香味剤、染料などを含むことができる。標準的な教科書、例えばその全体が参照により本明細書に組み込まれている、"Remington: The Science and Practice of Pharmacy", Lippincott Williams & Wilkins; 20th edition (Jun. 1, 2003)並びに"Remington's Pharmaceutical Sciences", Mack Pub. Co.;18th and 19th editions (それぞれ、December 1985、及びJune 1990)を、過度の実験を伴うことなく、適当な製剤を調製するために調べることができる。そのような製剤は、錯化剤、金属イオン、ポリマー化合物、例えばポリ酢酸、ポリグリコール酸、ヒドロゲル、デキストランなど、リポソーム、マイクロエマルジョン、ミセル、単層若しくは多層ベシクル、赤血球ゴースト、又はスフェロブラストを含むことができる。リポソーム製剤用に適した脂質として、制限なく、モノグリセリド、ジグリセリド、スルファチド、リゾレシチン、リン脂質、サポニン、胆汁酸などが挙げられる。そのような追加成分の存在は、物理的状態、溶解度、安定性、インビボ放出速度、インビボクリアランス速度に影響することができ、したがって、意図された用途によって選択され、その結果、担体の特徴は、選択された投与経路に適応される。
【0095】
本発明の医薬組成物は、レシピエントの血液又は他の体液と等張性であることが好ましい。組成物の等張性は、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコール又は他の無機若しくは有機溶質を使用して得ることができる。塩化ナトリウムは、特に好適である。酢酸及び塩、クエン酸及び塩、ホウ酸及び塩、並びにリン酸及び塩などの緩衝剤を使用することができる。非経口媒体には、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース。デキストロースと塩化ナトリウム、乳酸加リンガー液又は固定油が含まれる。静脈内媒体には、流体及び栄養分補給物、電解液補給物(リンガーデキストロースに基づくものなど)などが含まれる。
【0096】
本発明の医薬組成物及び/又はワクチンは、疾患又は障害(例えば、細菌感染症)を罹患するリスクのある対象に投与することによって、疾患及び/又はそれに関連する症状若しくは合併症の発症を予防又は少なくとも部分的に停止することができる。治療用途に有効な量は、例えば、抗原組成物、投与様式、患者の体重及び健康の一般的な状態、並びに処方医師の判断に依存する。単一又は複数の用量の抗原組成物を、患者によって必要とされ、耐容性が示される投与量及び頻度、並びに投与経路に応じて投与することができる。
【0097】
5.5.1 免疫化レジメン
本発明の医薬組成物及び/又はワクチンは、検出可能な宿主の自己抗体をわずかしか、又はまったく生成することなく、選択的な抗多糖又は抗オリゴ糖抗体を生成する様式で宿主に投与される。
【0098】
特定の実施形態では、本明細書に記載されるワクチン組成物は、連続的に投与される。最初に、免疫原性的に(immunogenically)有効な用量の本発明のワクチンが対象に投与される。この第1の用量は、一般に、免疫応答(例えば、活性化T細胞)を誘導するのに有効な量で投与される。初回免疫化のための量は、一般に、70キログラムの患者当たり約0.001mg〜約1.0mg、より一般には、70キログラムの患者当たり約0.001mg〜約0.2mg、通常、70キログラムの患者当たり約0.005mg〜約0.015mgの範囲である。特に抗原が、体腔又は器官の管腔中など、血流中に投与されない場合、患者1人当たり、1日あたり、0.001〜最大約10mgの投与量を使用することができる。実質的により高い投与量(例えば、10〜100mg又はそれ以上)が、経口、経鼻、又は局所投与において可能である。
【0099】
第1のワクチン投与量を投与した後、治療上有効な第2の用量の本発明のワクチンが、対象が、第1の用量への暴露によって免疫学的に初回抗原刺激を受けた後に対象に投与される。患者の応答及び状態に応じて、追加免疫を、最初に免疫化して数日、数週間、又は数カ月後に投与することができる。
【0100】
第1のワクチン投与に対する免疫応答の存在は、既知の方法によって判定することができる(例えば、最初の免疫化の前後に個体から血清を得、個体の免疫状態の変化を示し(例えば、免疫沈降法アッセイ、若しくはELISA、若しくは殺菌アッセイ、若しくはウエスタンブロット、若しくはフローサイトメトリーアッセイなど)、且つ/又は第2の注射に対する免疫応答の規模が、第2の注射に使用した物質の組成物で最初に免疫化された対照動物の免疫応答の規模より高いことを示すことによって(例えば、免疫学的なプライミング))。第1のワクチン投与に対する免疫性のプライミング及び/又は免疫応答の存在は、以前の経験に基づいて、免疫応答及び/又はプライミングを起こさせるのに十分な時間である、第1の免疫化後の期間、例えば、2、4、6、10又は14週間待つことによって仮定することもできる。第2の免疫化の追加免疫投与量は、免疫原の性質及び免疫化の経路に応じて、一般に、約0.001mg〜約1.0mgの抗原である。
【0101】
ある特定の実施形態では、個体が、初回抗原刺激を受け、且つ/又は第2のワクチン組成物に対する免疫応答を開始した後、治療有効用量の第3のワクチン組成物が対象に投与される。第3の追加免疫は、対象の応答及び状態に応じて、第2の免疫化から数日、数週間、又は数カ月後に投与することができる。
【0102】
本発明は、同じ又は異なるワクチン製剤を使用した、第4、第5、第6又はそれ以上の追加免疫の使用をさらに企図する。
【0103】
ある特定の実施形態では、抗原組成物は、免疫複合体の多糖又はオリゴ糖の細菌源に対して免疫学的に未処置の哺乳動物対象(例えば、ヒト)に投与される。特定の実施形態では、哺乳動物は、約5歳以下、好ましくは約2歳以下のヒト小児であり、抗原組成物は、以下の時間の任意の1又は複数に投与される:生後2週間、1カ月、2、3、4、5、6、7、8、9、10、若しくは11カ月、又は1年若しくは15、18、若しくは21カ月、又は2、3、4、若しくは5歳。
【0104】
好適な実施形態では、任意の哺乳動物への投与は、疾患症状の最初の徴候の前、又は感染症若しくは疾患への予想される若しくは実際の暴露(例えば、ナイセリア若しくは大腸菌K1による暴露又は感染症による)の最初の徴候時に開始される。
【0105】
薬剤組成物又はワクチン組成物は、投与製剤と適合性の様式で、及び治療有効量で投与することができる。投与される量は、治療される対象、対象の免疫系の、活性成分を利用する能力、及び必要とされる調節の程度に依存する。投与されるのに必要な正確な量は、専門家の判断に依存し、それぞれの個体に特定的である。しかし、ヒト乳児については、本発明の医薬組成物内の免疫原性複合糖質の、治療上の有効用量は、体重1kg当たり、約5〜約7.5μg、約5〜約10μg、約5〜約12.5μg、約5〜約15μg、約5〜約17.5μg、約5〜約20μg、約5〜約25μg、約5〜約30μg、約5〜約35μg、約5〜約40μg、約5〜約45μg、若しくは約5〜約50μgを含み、及び/又は約1〜約1.5μg、約1〜約2μg、約1〜約2.5μg、約1〜約3μg、約1〜約3.5μg、約1〜約4μg、約1〜約5μg、約1〜約6μg、約1〜約7μg、約1〜約8μg、約1〜約9μg、若しくは約1〜約10μgの範囲で含む。
【0106】
本発明の薬剤組成物又はワクチン組成物は、ヒト対象を意図していても、非ヒト対象を意図していても、現在使用されている、又は開発中の様々なワクチンと組み合わせて投与することができる。ヒト対象用、かつ感染症に対するワクチンの例として、ジフテリア及び破傷風トキソイド混合ワクチン;百日咳全細胞ワクチン;不活化されたインフルエンザワクチン;23価肺炎球菌ワクチン;麻疹生ワクチン;流行性耳下腺炎生ワクチン;風疹生ワクチン;カルメット・ゲラン桿菌(Bacille Calmette-Guerin)(BCG)結核ワクチン;A型肝炎ワクチン;B型肝炎ワクチン;C型肝炎ワクチン;狂犬病ワクチン(例えば、ヒト二倍体細胞ワクチン);不活化されたポリオワクチン;髄膜炎菌多糖ワクチン;四価髄膜炎菌ワクチン;黄熱病生ワクチン;腸チフス死菌全細胞ワクチン;コレラワクチン;B型日本脳炎死滅ウイルスワクチン;アデノウイルスワクチン;サイトメガロウイルスワクチン;ロタウイルスワクチン;水痘ワクチン;炭疽ワクチン;天然痘ワクチン;並びに他の市販ワクチン及び実験的ワクチンが挙げられる。
【0107】
5.6 治療剤有用性の特徴づけ及び実証
いくつかの態様の本発明の医薬組成物は、ヒトに使用する前に、所望の治療活性について、インビトロで、例えば、細胞培養系において、次いでインビボで、例えば、げっ歯類動物モデル系などの動物モデル生物体において試験されることが好ましい。特定のワクチン組成物に対する治療的免疫応答を生じる可能性を評価するのに使用することができるアッセイは、当技術分野で公知である。
【0108】
予防剤及び/又は治療剤の組合せは、ヒトにおいて使用する前に適当な動物モデル系において試験することができる。そのような動物モデル系には、それだけに限らないが、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ブタ、イヌ、ウサギなどが含まれる。当技術分野で公知の任意の動物系を使用することができる。本発明の特定の実施形態では、予防剤及び/又は治療剤の組合せは、マウスモデル系において試験される。予防剤及び/又は治療剤は、繰り返して投与することができる。予防剤及び/又は治療剤を投与する時間的な投与法、及びそのような薬剤が別々に又は混合物として投与されるかどうかなどの手順のいくつかの側面は、変更することができる。
【0109】
5.7 毒性研究
本発明の組成物の毒性及び/又は効力は、例えば、LD50(集団の50%に対して致死性の用量)及びED50(集団の50%において治療上有効な用量)を求めるために、細胞培養又は実験動物において、標準的な薬学の手順によって求めることができる。毒性作用と治療効果の用量比は治療指数であり、これは、比LD50/ED50として表すことができる。大きな治療指数を示す療法が好適である。毒性副作用を示す療法を使用することができるが、非感染細胞の潜在的な損傷を最小限にし、それによって副作用を低減するために、そのような薬剤を患部組織の部位に向ける送達系を設計するように注意を払うべきである。
【0110】
動物研究から得たデータは、対象において使用するために、様々な投与量の療法を製剤化することに使用することができる。そのような薬剤の投与量は、毒性をわずかしか、又はまったく含まないED50を含む、様々な濃度内にあることが好ましい。投与量は、使用される剤形及び利用される投与経路に応じて、この範囲内で変更することができる。本発明の方法において使用される任意の療法について、治療上有効な用量は、動物アッセイから最初に推定することができる。用量は、動物モデルにおいて処方することによって、動物モデルで求めた場合のIC50(即ち、症状の最大半量の阻害を実現する試験化合物の濃度)を含む、投与される濃度範囲を実現することができる。そのような情報は、対象(例えば、ヒト)における有用な用量をより正確に求めるために使用することができる。
【0111】
5.8 キット
本発明は、点滴注入する前の混合の利便性のため、及び滅菌性を維持するための適切な包装及び取扱いデバイスと一緒に、所望の投与量に可溶性又は希釈可能な貯蔵に安定した形態で存在する単位用量の組成物を有するキットも包含する。そのようなキットは、例えば、原液中の単位用量又は凍結乾燥粉末としての単位用量として、安定な貯蔵形態で活性成分を含む第1の容器と;別々又は混合された希釈剤、又は溶媒と希釈剤を含む第2の容器であって、その体積は、投与に適切な体積で単位用量の治療化合物を提供する第2の容器と;希釈剤を原液又は凍結乾燥粉末と混合する手段と、必要に応じ、患者に用量を投与するための手段とを含むことができる。希釈剤を原液又は凍結乾燥粉末に移す手段として、それだけに限らないが、活性成分を希釈剤と分離している破壊可能な(breachable)内部封止剤を有するシリンジ又は多室(multi-chambered)容器を挙げることができる。
【0112】
本発明は、本発明の医薬組成物又はその一部で満たされた1又は複数の容器を含む医薬品パック又はキットを提供する。さらに、疾患又は障害の治療に有用な1又は複数の他の予防剤又は治療剤も、医薬品パック又はキット中に含めることができる。本発明は、本発明の医薬組成物の1又は複数の成分で満たされた1又は複数の容器を含む医薬品パック又はキットも提供する。医薬品又は生物学的製品の製造、使用又は販売を統制する行政機関によって規定された形態での通知書を、そのような容器(複数も)に付随させてもよく、この通知書はヒトへの投与ための製造、使用又は販売の機関による認可を反映する。
【0113】
一般に、発明の組成物の成分は、例えば、活性薬剤の量を示している、アンプル又はサシェなどの気密封止して密閉された容器中の凍結乾燥粉末又は無水濃縮物として、別々に、又は単位剤形中に一緒に混合して供給することができる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、凍結乾燥後の取扱いを容易にするのに十分な物質を提供するために、増量剤、例えば、塩化ナトリウム、マンニトール、ポリビニルピロリドンなどをさらに含む。
【0114】
本発明は、上記方法において使用することができるキットを提供する。一実施形態では、キットは、1又は複数の本発明の医薬組成物を含む。別の実施形態では、キットは、1又は複数の容器中に、感染症又はそれに関連する症状の治療に有用な1又は複数の他の予防剤又は治療剤をさらに含む。
【0115】
本発明を、特定の実施形態の例によって開示してきたが、他の実施形態、方法、組成物、活性成分、指示、組成物及びキットは、当業者に明らかになるであろう。すべてのそのような変更及び拡張は、本明細書に開示し、主張したように、本発明に含まれる。
[実施例]
【0116】
6.1 実施例I:結合:
図1は、全般的な本発明の方法の概略の流れ図を表す。多糖中のN−アセチル基の少なくとも1つ(例えば、GlcNAc、ManNAc、GalNAc、及びサイル酸(sailic acid)由来の)は、アルカリを使用し、その後にN−ペンテノイル化(5炭素の不飽和脂肪族鎖を使用して)によって、N−アシル部分と置換することによって式Iの化合物を形成する。次いで得られるアシル化化合物を酸化することによって、ペンテノイル基の不飽和部位に活性アルデヒド基を生成する。次いで酸化化合物を、活性化された多糖の還元的アミノ化によって担体タンパク質と結合させ、これにより免疫原性複合糖質を生成する。生成物の免疫原性は、動物モデル(下記)を使用して実証することができる。
【0117】
すべての実験について、結合の進行は、スパロース12カラムを備えたBiologicシステム(Bio-Rad社製)を用いて分析した。多糖の抗原タンパク質への結合は、カラムの空隙容積中で溶出して、280nmでのUV吸光度の測定によってモニターした、ピークの漸進的増大によって示した。結合が完了した後、0.1NのHClを用いて溶液をpH7に中和し、次いでPBSに対して透析した。コンジュゲートは、Superdex 200PG(Pharmacia社製)の1.6×60cmのカラムを通過させることによって精製し、0.01%のチメロサールを含むPBSを用いて溶出した。空隙−容積ピークに対応する分画をプールした。コンジュゲート中の炭水化物及びタンパク質含量は、Dubois et al. (51)のフェノール−硫酸アッセイ、及びBradford (9)のクーマシーアッセイによって推定した。
【0118】
6.2 実施例II.A群連鎖球菌(GAS)多糖−タンパク質コンジュゲート:
GAS多糖のN−アセチル基の一部(35〜40%)の置換:
0.012NのNaOH中のGAS多糖(30mg/ml)を、室温((RT)約20〜25℃)で攪拌しながら、NaBH(8mg/ml)で75分間処理した。3NのNaOH(0.012NのNaOHの体積の1/2)を攪拌しながら反応混合物中に添加することによって、20mg/mlのGAS多糖の最終濃度を実現した。次いでこの反応混合物を80℃に1時間維持した。次いでこれをRTに冷却し、水で希釈することによって、4mg/mlの最終GAS多糖濃度にした。これを、Stir-cell中の3K再生セルロース膜を使用して水に対してダイアフィルトレートした。15倍の体積の水をダイアフィルトレーションのために使用することによって、24mg/mlのGASの濃度を実現した。N−アセチル基の1級アミノ基との置換の程度は、H−NMR分光法によってモニターした。
【0119】
N−アセチル基置換GAS多糖のN−アシル化(例えば、N−ペンテノイル化)(15〜25%):
1,4−ジオキサン(4−塩化ペンテノイル1ml当たり1ml)中の4−塩化ペンテノイル(多糖100mg当たり1ml)を、N−アセチル基置換GAS多糖の溶液(24mg/ml)に、RTで攪拌しながら75分にわたって液滴で添加した。溶液のpHは、3NのNaOHを液滴で添加することによって6.8〜9.5に維持した。反応混合物のpHを、3NのNaOHを液滴で添加することによって12.7に上昇させ、RTで45分間撹拌した状態にした。次いで反応混合物のpHを、RTで1NのHClを液滴で添加することによって、7.8に下げた。この反応混合物を水で希釈することによって、4mg/mlのGAS多糖の最終濃度にし、水を使用して、stircell中の3K膜を使用してダイアフィルトレートした。10倍の体積の水を浸透液として収集した。最後に、保持液を濃縮することによって、24mg/mlの多糖濃度にし、−20℃で貯蔵した。
【0120】
N−アセチル基置換(例えば、N−ペンテノイル化)−GAS多糖の任意選択のキャッピング(例えば、N−アセチル化)(図2を参照されたい):
無水酢酸(多糖100mg当たり0.6ml)をN−ペンテノイル化GAS多糖の撹拌した溶液(24mg/ml)に、RTで75分の時間にわたって液滴で添加した。この溶液のpHを、3NのNaOHを液滴で添加することによって6.8〜9.5に維持した。次いで反応混合物のpHを、3NのNaOHを液滴で添加することによって12.7に上昇させ、RTで60分間撹拌した状態にした。次いで反応混合物のpHを、RTで1NのHClを液滴で添加することによって、7.7に下げた。この反応混合物を水で希釈することによって、4mg/mlのGAS多糖の最終濃度にし、水を使用して、stircell中の3K膜を使用してダイアフィルトレートした。15倍の体積の水を浸透液として収集した。最後に、保持液を濃縮することによって、24mg/mlの多糖濃度にし、−20℃で貯蔵した。多糖中のペンテノイル基の取り込みは、600MHzのH−NMR分析によって推定した(図3を参照されたい)。
【0121】
N−アシル基置換(例えば、N−ペンテノイル化)GAS多糖の酸化(図2を参照されたい):
メタノール(多糖溶液の体積の1/2)を、N−ペンテノイルGAS多糖の撹拌した水溶液(24mg/ml)に、RTで徐々に添加した。この混合物を、ドライアイス−エタノール浴を使用して、約−15〜−20℃に冷却した。温度を−15〜−20℃で維持しながら、オゾン(オゾン製造機(ozonolyzer)Ozomax 1を使用して空気から生成した)を、徐々に撹拌している反応混合物に通して40分間バブリングした。次いで窒素を、混合物に通して10分間バブリングすることによって、過剰のオゾンを排出した。次いでこの反応物を水で希釈することによって、5mg/mlの多糖の最終濃度にし、水を使用して、stircell中の3K膜を使用してダイアフィルトレートした。25倍の体積の水を浸透液として収集し、保持液を濃縮することによって、20mg/mlの多糖濃度にした。次いでこれを凍結乾燥して次のステップで使用した。
【0122】
破傷風トキソイド/組換え破傷風トキソイド断片Cへの結合:
0.2mMのリン酸緩衝液(pH7.7)中のN−ブチルオキシ(N−BuO)GAS多糖(96mg/ml、1ml)(N−ペンテノイルGAS多糖の酸化から生じる)を、リン酸緩衝液(pH7.7)中の破傷風トキソイド(濃縮された120mg/ml、0.25ml)の溶液に添加した。ナトリウムシアノボロヒドリド(40mg)をこの溶液に添加し、反応混合物を撹拌することによって均一な混合物を実現した。この反応混合物を、穏やかに振盪しながら37℃で24時間インキュベートした。24時間後に、別の16mgのナトリウムシアノボロヒドリドを添加し、この反応をさらに48時間進めさせた。48時間後に、追加の4mgのナトリウムシアノボロヒドリドを添加し、反応物を37℃で振盪しながらさらに24時間放置した。
【0123】
次いで0.05NのNaOH(0.5ml)中の水素化ホウ素ナトリウムの5%溶液を添加し、RTで1時間穏やかに撹拌した。次に、1Nの酢酸(3部分で0.72ml)をRTで攪拌しながら添加した。反応物をPBS(pH7.4)で希釈して32mlにし、30K膜を使用して、Labscale TFFシステム中で精製した。30倍の体積の浸透液を収集した。保持液(30ml)を、0.2ミクロンのフィルターを通して濾過し、PBS(0.3ml)中のチメロサールの10%溶液を、コンジュゲート溶液に添加した。コンジュゲート溶液は、2〜8℃で貯蔵した。GAS多糖−タンパク質コンジュゲートの組成を表1に示す。
【0124】
6.3 実施例III.髄膜炎菌B多糖−タンパク質コンジュゲート:
N−アセチル基置換−基置換髄膜炎菌B多糖のN−アシル化(例えば、N−ペンテノイル化)(15〜25%):
1,4−ジオキサン(4−塩化ペンテノイル1ml当たり1ml)中の4−塩化ペンテノイル(多糖100mg当たり1ml)を、N−アセチル基置換多糖の溶液(24mg/ml)に、RTで攪拌しながら75分にわたって液滴で添加した。溶液のpHは、3NのNaOHを液滴で添加することによって6.8〜9.5に維持した。次いで反応混合物のpHを、3NのNaOHを液滴で添加することによって12.7に上昇させ、RTで45分間撹拌した状態にした。次いで反応混合物のpHを、RTで1NのHClを液滴で添加することによって、7.7に下げた。次いでこの反応混合物を水で希釈することによって、4mg/mlの多糖の最終濃度にし、水を使用して、stircell中の3K膜を使用してダイアフィルトレートした。10倍の体積の水を浸透液として収集した。最後に、保持液を濃縮することによって、24mg/mlの多糖濃度にし、−20℃で貯蔵した。
【0125】
N−アセチル基置換(例えば、N−ペンテノイル化)−髄膜炎菌B多糖の任意選択のキャッピング(例えば、N−プロピオニル化)(図4を参照されたい):
無水プロピオン酸−エタノール混合物(2.5:1、多糖100mg当たり0.84ml)をN−ペンテノイル化多糖の溶液(24mg/ml)に、RTで撹拌しながら75分にわたって液滴で添加した。この溶液のpHを、3NのNaOHを液滴で添加することによって6.8〜9.5に維持した。次いで反応混合物のpHを、3NのNaOHを液滴で添加することによって12.7に上昇させ、RTで60分間撹拌した状態にした。次いで反応混合物のpHを、RTで1NのHClを液滴で添加することによって、7.7に下げた。この反応混合物を水で希釈することによって、4mg/mlの多糖の最終濃度にし、水を使用して、stircell中の3K膜を使用してダイアフィルトレートした。15倍の体積の水を浸透液として収集した。最後に、保持液を濃縮することによって、24mg/mlの多糖濃度にし、−20℃で貯蔵した。多糖中のペンテノイル基の取り込みは、600MHzのH NMR分析によって推定した(図5を参照されたい)。
【0126】
N−アシル基置換(例えば、N−ペンテノイル化)及び任意選択のキャップ化(例えば、N−プロピオニル化)−B群髄膜炎菌B多糖(GBMP)の酸化(図4を参照されたい):
メタノール(多糖溶液の体積の1/2)を、N−ペント−N−Pr GBMPの水溶液(24mg/ml)に、RTで攪拌しながら徐々に添加した。次いでこの混合物を、ドライアイス−エタノール浴を使用して、約−15〜−20℃に冷却した。温度を約−15〜−20℃で維持しながら、オゾン(オゾン製造機Ozomax 1を使用して空気から生成した)を、穏やかに撹拌した反応混合物に通して40分間バブリングした。次いで窒素を、混合物に通して10分間バブリングすることによって、過剰のオゾンを排出した。この反応物を水で希釈することによって、5mg/mlの多糖の最終濃度にし、水を用いて、stircell中の3K膜を使用してダイアフィルトレートした。25倍の体積の水を浸透液として収集し、保持液を濃縮することによって、20mg/mlの多糖濃度にした。次いでこれを凍結乾燥して次のステップで使用した。
【0127】
髄膜炎菌由来の組換え髄膜炎菌タンパク質(rPorB)/外膜タンパク質(OMPC)への結合:
HEPES緩衝液(pH8.5)中の活性N−ブタノイルオキシ−(NbuO)N−Pr GBMP(N−ブト−[−CH=O]−N−Pr−GBMP、17mg/ml、1ml)を、HEPES緩衝液(pH8.5)中のrPorB/OMPC(濃縮された15mg/ml)の溶液に添加した。反応混合物中のタンパク質と多糖の最終濃度は1:3であった。ナトリウムシアノボロヒドリド(多糖の質量の0.5倍)を添加し、反応混合物を撹拌することによって均一な混合物を保証した。この反応混合物を、穏やかに振盪しながら37℃で24時間インキュベートした。24時間後に、ナトリウムシアノボロヒドリド(多糖の質量の0.125倍)を再び添加し、この反応をさらに48時間続けた。48時間後に、さらなる量のナトリウムシアノボロヒドリドを混合物に添加し(多糖の質量の0.032倍)、反応物を37℃で振盪しながら24時間維持した。
【0128】
次いで0.05NのNaOH中の水素化ホウ素ナトリウムの5%溶液(最初の反応体積の0.2倍)を添加し、RTで1時間穏やかに撹拌した。1Nの酢酸の溶液(3部分で最初の反応体積の0.3倍)をRTで攪拌しながら添加した。反応物をPBS(pH7.4)で希釈し、次いで30K膜を使用して、Labscale TFFシステム中で精製した。30倍の体積の浸透液を収集した。保持液を、0.2ミクロンのフィルターを通して濾過し、PBS中のチメロサールの10%溶液(チメロサール0.01%の最終濃度)を、コンジュゲート溶液に添加した。コンジュゲート溶液は、2〜8℃で貯蔵した。髄膜炎菌B多糖−タンパク質コンジュゲートの組成を表1に示す。
【0129】
6.4 実施例IV.髄膜炎菌C多糖−タンパク質コンジュゲート:
N−アセチル基の一部の置換、アシル化、酸化、及びタンパク質との結合を、上述した手順に従って行った。髄膜炎菌C多糖−タンパク質コンジュゲートの組成を表1に示す。
【0130】
6.5 実施例V.B群連鎖球菌III型多糖−タンパク質コンジュゲート:
上述した同様の実験手順に従って、B群連鎖球菌III型多糖−タンパク質の活性化及び結合を実施した。B群連鎖球菌III型多糖−タンパク質コンジュゲートの組成を表1に示す。
【0131】
【表1】

【0132】
6.6 実施例VI.GASP−TTコンジュゲートを用いたBALB Cマウスの免疫化:
コンジュゲート(PBS緩衝液中、10μg/ml)をアンヒドロゲル(anhydrogel)(1mg/ml)を用いて製剤化した。アンヒドロゲル中のコンジュゲート溶液(200ml、2μg当量のコンジュゲート多糖)の懸濁液を、2週間間隔でBalbCマウス中に注射した。3回の連続した注射の後、最後の注射から1週間後に血液試料を収集した。血清を試料から分離し、血清中の抗多糖抗体をELISAによって定量化した。BalbCマウスにおける、多糖に対するA群連鎖球菌多糖−破傷風トキソイドコンジュゲートによって誘導された免疫応答の結果を図6に示す。
【0133】
6.7 実施例VII.MENGB−RPORBコンジュゲートを用いたCDIマウスの免疫化:
コンジュゲート(PBS緩衝液中10μg/ml)をアンヒドロゲル(1mg/ml)を用いて製剤化した。アンヒドロゲル中のコンジュゲート溶液(200ml、2μg当量のコンジュゲート多糖)の懸濁液を、2週間間隔でCDIマウス中に注射した。3回の連続した注射の後、最後の注射から1週間後に血液試料を収集し、血清を分離した。血清中の多糖特異的抗体をELISAによって求めた。血清の細菌活性は、血清の存在下で、チョコレート寒天をコーティングしたプレートにおける細菌増殖の阻害を測定することによって判定した。CDIマウスにおける、髄膜炎菌B多糖−rPorBコンジュゲートによって上昇した血清の殺菌活性を表2に示す。
【0134】
本発明によって調製した3つの別個のロットのNPr−(NbuO)−GBMP−rPorBコンジュゲート、即ちロット1〜ロット3によって生じた血清の血清殺菌活性(SBA)は、シアル酸鎖末端の従来の還元的アミノ化によって調製したNPr−GBMP−rPorBコンジュゲートから生じた血清のSBAより、42と52日目で抜血した後に著しく高かった(表2を参照されたい)。本発明によって調製されたコンジュゲートは、多糖鎖に沿って複数の部位で活性化された、比較的大きなサイズの多糖部分の使用により、免疫応答の改善をもたらし、コンジュゲートの架橋結合を改善すると考えられる。
【0135】
【表2】

【0136】
記述、具体的な実施例、及びデータは、例示的な実施形態を示すが、例として示されており、本発明を限定することは意図されていないことが理解されるべきである。本発明の範囲内の様々な変更及び改変は、本明細書に含まれる考察、開示、及びデータから当業者に明らかとなり、したがって本発明の一部とみなされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫原性複合糖質の作製方法であって、
a)1又は複数のアミノ糖を含む抗原オリゴ糖又は抗原多糖上の少なくとも1つのN−アセチル基を脱アセチル化することによって、1級アミノ基を含む少なくとも1つのアミノ糖を有するオリゴ糖又は多糖を形成するステップと、
b)前記少なくとも1つの1級アミノ基を、少なくとも4炭素の不飽和アルキル部分を含むN−アシル部分で置換するステップであって、二重結合が、前記不飽和アルキル部分の炭素1と2の間以外又は炭素2と3の間以外の2つの炭素の間に位置するステップと、
c)前記オリゴ糖又は多糖を酸化剤と接触させることによって、前記アルキル部分の不飽和部位において、少なくとも1つの活性アルデヒド基を生成させるステップと、
d)前記少なくとも1つの活性アルデヒド基を介して前記オリゴ糖又は多糖を担体タンパク質と結合させるステップと
を含み、それによって免疫原性複合糖質を生成させる方法。
【請求項2】
免疫原性複合糖質の作製方法であって、
a)1又は複数のアミノ糖を含む抗原オリゴ糖又は抗原多糖上の少なくとも1つのN−アセチル基を、少なくとも4炭素の不飽和アルキル部分を含むN−アシル部分で置換するステップであって、二重結合が、前記不飽和アルキル部分の炭素1と2の間以外又は炭素2と3の間以外の2つの炭素の間に位置するステップと、
b)前記オリゴ糖又は多糖を酸化剤と接触させることによって、前記アルキル部分の不飽和部位において、少なくとも1つの活性アルデヒド基を生成させるステップと、
c)前記少なくとも1つの活性アルデヒド基を介して前記オリゴ糖又は多糖を担体タンパク質と結合させるステップと
を含み、それによって免疫原性複合糖質を生成させる方法。
【請求項3】
1級アミノ基が、不飽和N−アシル基で置換されることによって式Iを形成する、請求項1に記載の方法:
【化1】


(式中、Rは、不飽和のC、C、C、C、C、C、C、C10、又はC11アルキル部分であり、[sugar]は、前記1又は複数のアミノ糖を表す)。
【請求項4】
N−アセチル基が、不飽和N−アシル基で置換されることによって式Iを形成する、請求項2に記載の方法:
【化2】


(式中、Rは、不飽和のC、C、C、C、C、C、C、C10、又はC11アルキル部分であり、[sugar]は、前記1又は複数のアミノ糖を表す)。
【請求項5】
不飽和アルキルが、5炭素長である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
二重結合が、不飽和アルキル部分の末端の2つの炭素の間に位置する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
二重結合が、不飽和アルキル部分の末端の2つの炭素の間に位置する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
不飽和アルキル部分が1つの二重結合を有し、この二重結合が、前記アルキル部分の末端の2つの炭素の間に位置する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
不飽和アルキル部分が1つの二重結合を有し、この二重結合が、前記アルキル部分の末端の2つの炭素の間に位置する、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
活性アルデヒド基が、アルキル部分の末端部にある、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
活性アルデヒド基が、アルキル部分の末端部にある、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
アミノ基が、1又は複数のアミノ糖に、前記1又は複数のアミノ糖の1、2、3、4、又は5位で連結されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項13】
不飽和アルキル部分を含むN−アシル部分が、酸化されることによってアルデヒド基を含み、前記N−アシル部分が、オリゴ糖又は多糖と担体タンパク質とを結合させる際のリンカーとしての機能を果たす、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項14】
オリゴ糖又は多糖が、還元的アミノ化によって、N−アシル部分のアルデヒド基を介して、担体タンパク質に結合されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項15】
複合糖質の担体タンパク質とオリゴ糖又は多糖が、以下のような連結によって共有結合的に連結されている、請求項1又は2に記載の方法:
【化3】

(式中、Rは、不飽和のC、C、C、C、C、C、C、C、又はC10アルキル部分であり、前記連結のNHは、前記タンパク質の1級NH基に属し、[sugar]は、前記1又は複数のアミノ糖を表す)。
【請求項16】
N−アセチル基が、N−ペンテノイル基で置換されており、前記N−ペンテノイル基が、化合物と担体タンパク質とを結合させる際のリンカーとしての機能を果たす、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
N−アセチル基が、1又は複数のアミノ糖の一部であり、前記1又は複数のアミノ糖が、GlcNAc、ManNAc、GalNAc、及びシアル酸の1又は複数である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項18】
アルカリを使用してN−アシル部分で置換することにより、N−アセチル基が式Iを形成する、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
担体タンパク質が、破傷風毒素/トキソイド、CRM197、グラム陰性菌由来の外膜タンパク質、分類不能型ヘモフィルス・インフルエンザ菌由来のP6及びP4、モラクセラ・カタラーリス由来のCD及びUSPA、ジフテリア毒素/トキソイド、解毒された緑膿菌毒素A、コレラ毒素/トキソイド、百日咳毒素/トキソイド、ウェルシュ菌外毒素/トキソイド、B型肝炎表面抗原、B型肝炎コア抗原、ロタウイルスVP7タンパク質、若しくは呼吸器合胞体ウイルスF及びGタンパク質、又はこれらの活性部分である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項20】
オリゴ糖又は多糖が、細菌由来のオリゴ糖又は多糖である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項21】
細菌が、連鎖球菌、ブドウ球菌、腸球菌、バチルス、コリネバクテリウム、リステリア、エリジペロスリックス、クロストリジウム、ヘモフィルス、シゲラ、クレブシエラ、コレラ菌、ナイセリア、又はエシェリキアである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
オリゴ糖又は多糖が、B群連鎖球菌、A群連鎖球菌、髄膜炎菌、肺炎連鎖球菌、又は大腸菌に由来する莢膜多糖である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
莢膜多糖が、B群連鎖球菌Ia、Ib、II、III、V、VI、又はVIII型に由来する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
莢膜多糖が、髄膜炎菌B、C、Y、又はW135型に由来する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
莢膜多糖が、肺炎連鎖球菌III、IV、又はXIV型に由来する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
莢膜多糖が大腸菌K1に由来する、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
担体タンパク質が、同じ又は異なる抗原オリゴ糖又は抗原多糖に予め結合されている、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
担体タンパク質が、同じ又は異なる抗原オリゴ糖又は抗原多糖に予め結合されている、請求項2に記載の方法。
【請求項29】
請求項1、2、27、又は28に記載の免疫原性複合糖質、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項28】
複数のオリゴ糖又は多糖を含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
複数の担体タンパク質を含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項30】
複数の担体タンパク質を含む、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項31】
複数の免疫原性複合糖質を含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項32】
1又は複数のアジュバントをさらに含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項33】
1又は複数の型の細菌に対する免疫応答の誘導方法であって、その必要のある対象に、治療有効量の請求項27に記載の医薬組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項34】
細菌感染症を治療又は予防する必要のある対象における、細菌感染症の治療又は予防方法であって、前記対象に、治療有効量の請求項27に記載の医薬組成物を投与するステップを含む方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2010−532793(P2010−532793A)
【公表日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513375(P2010−513375)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/067315
【国際公開番号】WO2008/157590
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(508211580)バクスター ヘルスケア エス.エイ. (2)
【Fターム(参考)】