説明

コンタクト及びコネクタ

【課題】一方のコンタクトを他方のコンタクトに低い挿入力で挿入するとともに、一方のコンタクトの他方のコンタクトから引き抜く時に高い引き抜き力を必要とするコネクタ及びこれに用いられるコンタクトを得る。
【解決手段】リセプタクルコンタクトは、リセプタクル湾曲部223と、固定部222と、リセプタクル端子部と、湾曲部223d,223eを有している。プラグ湾曲部122をリセプタクル湾曲部223に嵌合したとき、屈曲部223a,223bが、側部123,124と接触する。屈曲部223aは、嵌合動作時に、プラグ湾曲部122に押圧され、湾曲部224が弾性変形することにより、屈曲部223bと反対方向に変位する。屈曲部223aは、嵌合解除動作時に、プラグ湾曲部122の移動に伴って、湾曲部223eが弾性変形することにより嵌合方向と反対の方向に変位する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相手側コンタクトと電気的に接続されるコンタクト及びそれを備えたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
2枚の基板を電気的に接続するコネクタ(基板対基板接続コネクタ)として、一方の基板に接続されるソケットと、他方の基板に接続されるプラグとを有するコネクタが知られている(例えば、特許文献1)。ソケットは、絶縁製のソケット本体と、ソケット本体に装着される導電性の接続子(コンタクト)とを有している。また、プラグは、絶縁製のプラグ本体と、プラグ本体に装着される導電性の接続子(コンタクト)とを有している。
【0003】
特許文献1に開示されたプラグの接続子には、略U字形状のプラグ湾曲部(圧入部)が形成されている。また、ソケットの接続子には、プラグに向けて開口するように湾曲したソケット湾曲部が形成されている。そして、プラグ湾曲部をソケット湾曲部に嵌合することにより、プラグ湾曲部とソケット湾曲部とが接触し、これらの間で電気的な接続が達成される。プラグ湾曲部のソケット湾曲部への嵌合動作時に、プラグ湾曲部とソケット湾曲部とは2箇所で接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−277365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたコネクタにおいて、プラグ湾曲部のソケット湾曲部への嵌合動作時及び嵌合解除動作時に、上記2箇所の接触部のうち一方の箇所では、ソケット湾曲部のプラグ湾曲部との接触部が嵌合方向と直交する方向に変位するが、上記2箇所の接触部のうち他方の箇所では、ソケット湾曲部のプラグ湾曲部との接触部が嵌合方向と直交する方向に殆ど変位しない。
【0006】
したがって、プラグ湾曲部のソケット湾曲部からの嵌合解除動作時に、上記他方の箇所ではソケット湾曲部のプラグ湾曲部との接触部が殆ど変位しないため、高い引き抜き力が必要となる。よって、プラグがソケットから外れにくい。
【0007】
しかしながら、プラグ湾曲部のソケット湾曲部への嵌合動作時に、上記他方の箇所では、ソケット湾曲部のプラグ湾曲部との接触部が嵌合方向と直交する方向に殆ど変位しないため、プラグ湾曲部をソケット湾曲部に挿入するために高い挿入力が必要となる。また、上記他方の箇所では、プラグ湾曲部とソケット湾曲部との接触部が削れるようにプラグ湾曲部がソケット湾曲部に挿入されるため、接触性能が低下するおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、一方のコンタクトを他方のコンタクトに低い挿入力で挿入することができるとともに、一方のコンタクトを他方のコンタクトから引き抜くときに高い引き抜き力を必要とするコネクタ及びこれに用いられるコンタクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のコンタクトは、ハウジングに固定されるとともに相手側コンタクトと電気的に接続される帯状導電部材であるコンタクトであり、前記コンタクトは、その長手方向の位置が互いに異なる複数個所で屈曲することで形成されており、相手側コネクタに向かって開口するように湾曲した第1湾曲部と、ハウジングに固定される固定部と、第1湾曲部と前記固定部との間に設けられた第2湾曲部とを備えており、相手側コンタクトが前記第1湾曲部に嵌合することによって、相手側コンタクトとの電気的接続が達成され、前記第1湾曲部には、その両端部に、相手側コンタクトの嵌合方向と直交し且つ互いに対向する方向を向いた第1接触部及び第2接触部が設けられており、前記第1接触部及び前記第2接触部は、相手側コンタクトの前記第1湾曲部への嵌合動作時に相手側コンタクトと接触し、前記第1接触部は、前記第1湾曲部の頂部と前記第2湾曲部との間に設けられており、前記第2湾曲部は、相手側コンタクトの前記第1湾曲部への嵌合方向と反対方向に突出するように湾曲しており、相手側コンタクトの前記第1湾曲部への嵌合動作時に前記第1接触部が相手側コンタクトに押圧されて前記第2接触部と反対方向に変位するように且つ相手側コンタクトの前記第1湾曲部からの嵌合解除動作時に前記第1接触部が相手側コンタクトの移動に伴って前記嵌合方向と反対方向へ変位するように、前記第2湾曲部は弾性変形可能であり、前記第2接触部と前記第1湾曲部の頂点との間に設けられた前記第3湾曲部は、相手側コンタクトの前記第1湾曲部への嵌合動作時に、前記第2接触部が相手側コンタクトに押圧されて前記第1接触部と反対方向に変位するように弾性変形可能である。
【0010】
本発明によると、相手側コンタクトとの嵌合動作時に、第2湾曲部及び第3湾曲部が弾性変形することにより、相手側コンタクトに押圧された第1接触部及び第2接触部が互いに反対方向に変位するため、相手側コネクタを第1湾曲部に低挿入力で挿入することができる。また、相手側コンタクトとの嵌合解除動作時に、相手側コンタクトの移動に伴って第2湾曲部が弾性変形することにより第1接触部が嵌合方向と反対方向に変位する。これにより、第1接触部は、嵌合方向に向けて相手側コンタクトを押圧する。また、これと同時に、第1接触部は第2接触部と反対の方向に変位しているため、第1接触部は第2接触部と対向する方向にも相手側コンタクトを押圧している。これらの力の合力が相手側コンタクトに作用するため、相手側コネクタを第1湾曲部から引き抜くときに高い引き抜き力を必要とすることができる。したがって、低挿入力及び高引抜力を両立することができる。
【0011】
また、本発明において、前記第1接触部は、前記第2接触部に向けて突出するように湾曲しており、前記第2湾曲部は、前記第1接触部の頂部から前記固定部にかけて、相手側コンタクトの前記第1湾曲部への嵌合方向と反対方向に突出するように湾曲している。これによると、相手側コンタクトの第1湾曲部への嵌合動作時に第1接触部が第2接触部と反対方向に変位するように、且つ、相手側コンタクトの第1湾曲部からの嵌合解除動作時に第1接触部が嵌合方向と反対方向へ変位するように、第2湾曲部が確実に弾性変形する。よって、低挿入力及び高引抜力の両立を確実に実現することができる。
【0012】
さらに、本発明において、前記コンタクトの長手方向に沿って前記固定部に対して前記第2湾曲部と反対側に設けられ、回路基板にハンダ接合される端子部をさらに有しており、前記第1湾曲部は、前記第1接触部と前記第1湾曲部の頂部との間に設けられた第4湾曲部をさらに有しており、前記第4湾曲部は、前記端子部に向けて突出するように湾曲している。これにより、コンタクトの第4湾曲部が、固定部が固定されたハウジングの固定部分に作用する力を軽減することができる。よって、ハウジングの破損を抑止することができる。
【0013】
加えて、本発明において、第1接触部には、相手側コネクタとの係合を図るための係合段部が形成されている。これにより、相手側コンタクトの第1湾曲部からの嵌合解除動作時に、第1接触部と相手側コネクタとが係合するため、第1接触部に嵌合方向に向かって作用する力が確実に生じる。これにより、相手側コネクタを第1湾曲部から引き抜くときにより一層高い引き抜き力を必要とすることができる。
【0014】
本発明のコネクタは、第1ハウジングと、前記第1ハウジングに固定された導電部材である第1コンタクトとを有する第1コネクタと、第2ハウジングと、前記第2ハウジングに固定された導電部材である第2コンタクトとを有する第2コネクタとを備えたコネクタであり、前記第1コンタクトは、その長手方向の位置が互いに異なる複数個所で屈曲することで形成されており、前記第2コネクタに向かって開口するように湾曲した第1湾曲部と、前記第1ハウジングに固定される固定部と、前記第1湾曲部と前記固定部との間に設けられた第2湾曲部とを備えており、前記第2コンタクトは、前記第1コネクタに向かって突出するように湾曲した第1突出部を有し、前記第1突出部はその内側から前記第2ハウジングによって支持されており、前記第2コンタクトの前記第1突出部が前記第1コンタクトの前記第1湾曲部に嵌合することによって、前記第1コンタクトと前記第2コンタクトとの電気的接続が達成され、前記第1湾曲部には、その両端部に、それぞれ、前記第1突出部の嵌合方向と直交し且つ互いに対向する方向を向いた第1接触部及び第2接触部が設けられており、前記第1接触部は、前記第1湾曲部の頂部と前記第2湾曲部との間に設けられており、前記第1接触部及び第2接触部は、それぞれ、互いに反対方向を向くように前記第2コンタクトの前記第1突出部に設けられた第3接触部及び第4接触部と、前記第1突出部の前記第1湾曲部への嵌合動作時に接触し、前記第1接触部と、前記第1突出部の前記第1湾曲部への嵌合動作時に前記第1接触部と接触する第3接触部との少なくとも一方に、前記第1接触部と前記第3接触部との係合を図るための係合段部が形成されており、前記第2湾曲部は、前記第1突出部の前記第1湾曲部への嵌合方向と反対方向に突出するように湾曲しており、前記第1突出部の前記第1湾曲部への嵌合動作時に前記第1接触部が前記第1突出部に押圧されて前記第2接触部と反対方向に変位するように且つ前記第1突出部の前記第1湾曲部からの嵌合解除動作時に前記第1接触部が前記第1突出部の移動に伴って前記嵌合方向と反対方向へ変位するように、前記第2湾曲部は弾性変形可能であり、前記第2接触部と前記第1湾曲部の頂点との間に設けられた前記第3湾曲部は、前記第1突出部の前記第1湾曲部への嵌合動作時に、前記第2接触部が前記第1突出部に押圧されて前記第1接触部と反対方向に変位するように弾性変形可能である。
【0015】
これによると、第1突出部の第1湾曲部への嵌合動作時に、第2湾曲部及び第3湾曲部が弾性変形することにより、第1突出部に押圧された第1接触部及び第2接触部が互いに反対方向に変位するため、第1突出部を第1湾曲部に低挿入力で挿入することができる。また、第1突出部の第1湾曲部からの嵌合解除動作時に、第1突出部の移動に伴って第2湾曲部が弾性変形することにより第1接触部が嵌合方向と反対方向に変位しようとするため、第1接触部が嵌合方向に向けて第1突出部を押圧する。また、これと同時に、第1接触部は第2接触部と反対の方向に変位しているため、第1接触部は第2接触部と対向する方向にも第1突出部を押圧している。これらの力の合力が第2コンタクトに作用するため、第2コンタクトの第1突出部を第1コンタクトの第1湾曲部から引き抜くときに高い引き抜き力を必要とすることができる。したがって、低挿入力及び高引抜力を両立することができる。
【0016】
また、本発明のコネクタにおいて、前記第1接触部は、前記第2接触部に向けて突出するように湾曲しており、前記第2湾曲部は、前記第1接触部の頂部から前記固定部にかけて、前記嵌合方向と反対方向に突出するように湾曲している。これにより、第1突出部の第1湾曲部への嵌合動作時に第1接触部が第2接触部と反対方向に変位するように、且つ、第1突出部の第1湾曲部からの嵌合解除動作時に第1接触部が嵌合方向と反対方向へ変位するように、第2湾曲部が確実に弾性変形する。よって、低挿入力及び高引抜力の両立を確実に実現することができる。
【0017】
さらに、本発明のコネクタにおいて、前記コンタクトの長手方向に沿って前記固定部に対して前記第2湾曲部と反対側に設けられ、回路基板にハンダ接合される端子部をさらに有しており、前記第1湾曲部は、前記第1接触部と前記第1湾曲部の頂部との間に設けられた第4湾曲部をさらに有しており、前記第4湾曲部と前記固定部とは、前記第1ハウジングの前記固定部が固定された部分を挟んで互いに対向するように設けられており、前記第4湾曲部は、前記端子部に向けて突出するように湾曲している。これにより、第1コンタクトの第4湾曲部が、固定部が固定された第1ハウジングの固定部分に作用する力を軽減することができる。よって、第1ハウジングに作用する力を軽減することができるため、第1ハウジングの破損を抑止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のコンタクト及びコネクタによると、相手側コンタクトとの嵌合動作時に、第2湾曲部及び第3湾曲部が弾性変形することにより、相手側コンタクトに押圧された第1接触部及び第2接触部とが互いに反対方向に変位するため、相手側コネクタを第1湾曲部に低挿入力で挿入することができる。また、相手側コンタクトとの嵌合解除動作時に、相手側コンタクトの移動に伴って第2湾曲部が弾性変形することにより第1接触部が嵌合方向と反対方向に変位しようとするため、第1接触部が嵌合方向に向けて相手側コンタクトを押圧する。また、これと同時に、第1接触部は第2接触部と反対の方向に変位しているため、第1接触部は第2接触部と対向する方向にも相手側コンタクトを押圧している。これらの力の合力が相手側コンタクトに作用するため、相手側コネクタを第1湾曲部から引き抜くときに高い引き抜き力を必要とすることができる。したがって、低挿入力及び高引抜力を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係るコネクタの外観斜視図であり、(a)は、プラグコネクタをリセプタクルコネクタへ嵌合した時を示しており、(b)は、プラグコネクタをリセプタクルコネクタへ嵌合する前の状態を示している。
【図2】図1に示したコネクタのプラグコネクタを示しており、(a)は図1のプラグコネクタを下方からみた外観斜視図であり、(b)は図1のプラグコネクタを上方からみた外観斜視図であり、(c)は図2(b)のIIC‐IIC線に沿った断面図である。
【図3】図2に示したプラグコンタクトを示しており、(a)は外観斜視図であり、(b)は側面図である。
【図4】(a)は図1に示したコネクタのリセプタクルコネクタの外観斜視図であり、(b)は、図4(a)のIVB‐IVB線に沿った断面図である。
【図5】リセプタクルコンタクトを示しており、(a)は外観斜視図であり、(b)は側面図であり、(c)は背面図である。
【図6】プラグコネクタのリセプタクルコネクタへの嵌合動作を順に示す図である。
【図7】プラグコネクタのリセプタクルコネクタへの嵌合動作の一部を示す図である。
【図8】プラグコネクタのリセプタクルコネクタへの嵌合動作の一部を示す図である。
【図9】プラグコネクタのリセプタクルコネクタからの嵌合解除動作を順に示す図である。
【図10】プラグコネクタのリセプタクルコネクタからの嵌合解除動作の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1(a),(b)に示すように、コネクタ100は、プラグコネクタ10と、プラグコネクタ10が嵌合するリセプタクルコネクタ20とを備えている。コネクタ100は、図示しない2枚の回路基板を電気的に接続するコネクタ(基板対基板接続コネクタ)である。プラグコネクタ10及びリセプタクルコネクタ20は、それぞれ、図示しない異なる回路基板に実装される。
【0022】
(プラグコネクタ)
図2(a),(b)に示すように、プラグコネクタ(第2コネクタ)10は、プラグハウジング(第2ハウジング)11と、プラグハウジング11に固定された複数のプラグコンタクト(第2コンタクト)12とを有している。複数のプラグコンタクト12は、前後方向に、所定のピッチで配列されている。
【0023】
<プラグハウジング>
絶縁性の樹脂から構成されたプラグハウジング11は、その周縁に沿って形成された略矩形状の環状壁15と、底壁16とを有している。環状壁15は、底壁16の右端から立設した右側壁15aと、底壁16の左端から立設した左側壁15bと、底壁16の前端から立設した前壁15cと、底壁16の後端から立設した後壁15dとを有している。そして、環状壁15及び底壁16により、環状壁15の内方に凹部17が形成されている。右側壁15a及び左側壁15bには、それぞれ、その側面に沿って、略U字状の複数の溝18が形成されている。複数の溝18は、右側壁15a及び左側壁15bのそれぞれの長手方向に沿って(図2(a)に示す前後方向に)、所定の間隔で配列されている。
【0024】
次に、図2(c)及び図3を参照しつつ、プラグコンタクト12について説明する。
【0025】
<プラグコンタクト>
プラグコンタクト12は、所定の厚みを有する金属の帯状導電部材であって、その長手方向に互いに異なる箇所で屈曲することにより形成されている。プラグコンタクト12は、回路基板にハンダ接合されるプラグ端子部121と、プラグ端子部121の一端から下方に向けて突出するように湾曲した略U字状のプラグ湾曲部(第1突出部)122とを有している。プラグ湾曲部122は、図6,8に示すように、リセプタクルコネクタ20(リセプタクル湾曲部223)に向かって突出するように湾曲している。また、図2(c)に示すように、プラグ湾曲部122は、プラグハウジング11に装着されたとき、右側壁15a又は左側壁15bにより内側から支持されている。
【0026】
プラグ湾曲部122は、左右方向に互いに対向する側部123,124を有している。図3に示すように、側部123は、プラグ端子部121とプラグ湾曲部122の頂部122cとの間に設けられている。
【0027】
側部123の外側面には、側部123の長手方向に沿って凹部123sが形成されている。凹部123sは、プラグコンタクト12に、その厚み方向に圧潰加工を施すことにより形成されている。図3に示すように、凹部123sは、底面123t(第3接触部)と、上側面123pと、下側面123qとを有している。そして、図3(b)に示すように、底面123t及び下側面123qにより、段部Q(係合段部)が形成されている。
【0028】
側部124の外側面(第4接触部)124tは、凹凸のない平坦面となっている。側部123の底面123tと側部124の外側面124tとは、左右方向に互いに反対方向を向いている。なお、左右方向とは、プラグコンタクト12がリセプタクルコンタクト22と嵌合する方向と直交する方向である(図6,8参照)。
【0029】
なお、上述したように、プラグコンタクト12には、凹部123sを形成するために、圧潰加工が施されている。圧潰加工は、帯状導電部材を屈曲する前に、一直線状となった帯状導電部材に施される。凹部123sが形成された一直線状の帯状導電部材をその長手方向に互いに異なる複数個所で屈曲することにより、プラグコンタクト12が得られる。
【0030】
プラグコンタクト12をプラグハウジング11に装着するときは、図2に示すように、プラグコンタクト12(プラグ湾曲部122)をプラグハウジング11の溝18に嵌め、圧入する。これにより、プラグコンタクト12がプラグハウジング11に固定される。
【0031】
(リセプタクルコネクタ)
図4(a)に示すように、リセプタクルコネクタ(第1コネクタ)20は、リセプタクルハウジング(第1ハウジング)21と、リセプタクルハウジング21に固定された複数のリセプタクルコンタクト(第2コンタクト)22とを有している。複数のリセプタクルコンタクト22は、前後方向に、プラグコンタクト12と略同じ所定のピッチで配列されている。
【0032】
<リセプタクルハウジング>
図4(a),(b)に示すように、絶縁性の樹脂から構成されたリセプタクルハウジング21は、その周縁に沿って連続的に形成された略矩形状の環状の環状壁25と、底壁26と、環状壁25の内側に形成された中間壁27とを有している。環状壁25は、底壁26の右端から立設した右側壁25aと、底壁26の左端から立設した左側壁25bと、底壁26の前端から立設した前側壁25cと、底壁26の後端から立設した後側壁25dとを有している。中間壁27は、前後方向に延在した略矩形状の部材である。また、中間壁27は、その前端及び後端が、それぞれ、前側壁25c及び後側壁25dに固定されることによって、環状壁25と一体になっている。また、中間壁27と右側壁25aとの間、及び中間壁27と左側壁25bとの間には、プラグコンタクト12(プラグ湾曲部122)を挿入可能な隙間が形成されている。
【0033】
右側壁25a及び左側壁25bには、それぞれ、それらの内側面に沿って、複数の溝28が形成されている。複数の溝28は、前後方向に所定のピッチで配列されている。また、中間壁27には、それらの右側面及び左側面に沿って、複数の溝29が形成されている。複数の溝29は、前後方向に所定のピッチで配列されている。溝28のピッチ及び溝29のピッチは、溝18(図2(a))のピッチと略同じピッチとなっている。
【0034】
また、右側壁25aの外側面及び左側壁25bの外側面において、溝28が形成されていない部分には、それぞれ、保持壁50a,50bが設けられている。保持壁50a,50bは、リセプタクルハウジング21の高さ方向(嵌合方向)に沿って設けられている。図4(a)に示すように、保持壁50a,50bの幅は、前後方向に隣り合う2つの溝28の間隔より大きい。リセプタクルコンタクト22をリセプタクルハウジング21に装着するときは、リセプタクルコンタクト22の固定部222(図4(b)参照)を保持壁50a,50bに沿って溝28に挿入する。
【0035】
次に、図4(b)及び図5を参照しつつ、リセプタクルコンタクト22について説明する。
【0036】
<リセプタクルコンタクト>
リセプタクルコンタクト22は、所定の厚みを有する金属の板状導電部材であって、その長手方向に互いに異なる複数の個所で屈曲することにより形成されている。リセプタクルコンタクト22は、回路基板P2(図4(c)に二点鎖線で示した回路基板P2)にハンダ接合されるリセプタクル端子部221と、リセプタクルハウジング21に固定される固定部222と、上方に向けて開口するように湾曲したリセプタクル湾曲部(第1湾曲部)223とを有している。リセプタクル端子部221、固定部222及びリセプタクル湾曲部223は、これらの順に、リセプタクルコンタクト22にその長手方向に沿って設けられている。また、固定部222とリセプタクル湾曲部223との間には、上方に向けて突出するように湾曲した湾曲部(第2湾曲部)224が設けられている。
【0037】
[固定部222]
固定部222をリセプタクルハウジング21の溝28に圧入することにより、固定部222がリセプタクルハウジング21に固定される。また、図5(a),(c)に示すように、固定部222には、その両側面から幅方向に突出した突起222a〜222dが形成されている。リセプタクルコンタクト22をリセプタクルハウジング21に装着したとき、固定部222の突起222a〜222dがリセプタクルハウジング21の保持壁50a,50bに接することにより、リセプタクルコンタクト22がその厚み方向(図4(a)及び図5に示す左右方向)に移動することを規制することができる。
【0038】
[リセプタクル湾曲部223]
図4及び図5(a),(b)に示すように、リセプタクル湾曲部223は、湾曲部224の一端から斜め下方に延在し、その後、緩やかに水平方向へ屈曲した後、上方へ立ち上がった形状を有している。図5(a),(b)に示すように、リセプタクル湾曲部223は、その両端部にそれぞれ設けられた屈曲部223a,223bと、底部(頂部)223cと、底部223cと屈曲部(第1接触部)223aとの間に設けられた湾曲部(第4湾曲部)223dと、底部223cと屈曲部(第2接触部)223bとの間に設けられた湾曲部(第3湾曲部)223eとを有している。湾曲部223dと湾曲部223eとは、左右方向に互いに対向する方向を向いて配置されている。
【0039】
屈曲部223a,223bは、左右方向に互いに対向する方向を向いて配置されている。屈曲部223aは、湾曲部224と、リセプタクル湾曲部223の底部223cとの間に設けられている。また、屈曲部223aは、屈曲部223bに向けて突出するように屈曲している。屈曲部223aは、湾曲部224によって、左右方向及び上下方向に変位可能となっている。
【0040】
屈曲部223bは、屈曲部223aに向けて突出するように屈曲している。屈曲部223bの内側面には、その長手方向に沿って、幅方向についての両端部に、一対の凹み223sが形成されている。また、屈曲部223bは、湾曲部223eによって、左右方向に変位可能となっている。
【0041】
なお、左右方向とは、プラグコンタクト12がリセプタクルコンタクト22に嵌合する方向と直交する方向であり、上下方向とは、プラグコンタクト12がリセプタクルコンタクト22に嵌合する方向(下方向)及びそれと反対の方向(上方向)である(図6,8参照)。
【0042】
図4(b)に示すように、リセプタクルコンタクト22をリセプタクルハウジング21に装着したとき、リセプタクルコンタクト22の底部223cの下方には、リセプタクルハウジング21の底壁26が配置されていることから、リセプタクルコネクタ20を回路基板P2に実装したとき、底部223cと回路基板P2との間に底壁26が介在する。これにより、頂部41と回路基板P2との間が絶縁状態となるため、回路基板P2の配線パターンの自由度を高めることができる。また、底部223cの下方に底壁26が存在するため、プラグコンタクト12(プラグ湾曲部122)をリセプタクル湾曲部223に嵌合するときに(図6参照)、底部223cの変形を抑止することができる。
【0043】
湾曲部223dは、屈曲部223aと底部223cとの間に設けられた領域であり、図4(b)に示すように、湾曲部223dと固定部222とは、リセプタクルハウジング21の右側壁25a又は左側壁25bを挟んで互いに対向するように設けられている。湾曲部223dは、リセプタクル端子部221に向けて突出するように緩やかに湾曲している。したがって、リセプタクルコンタクト22をリセプタクルハウジング21に装着したとき、リセプタクルコンタクト22の屈曲部223aと底部223cとの間の領域は、底部223cに近付くにつれて、リセプタクルコンタクト22の固定部222が固定された右側壁25a又は左側壁25bに近付くように形成されている。このように、リセプタクルコンタクト22の湾曲部223dは、回路基板P2にハンダ接合されたリセプタクル端子部221に近い位置に設けられている。したがって、リセプタクルコンタクト22に外力が作用し、湾曲部223dが右側壁25aの壁面又は左側壁25bの壁面に仮に接触したとしても、湾曲部223dは右側壁25a又は左側壁25bの動きにくい部分で側壁25a及び左側壁25bに接触する。したがって、湾曲部223dから右側壁25a及び左側壁25bに作用する力を軽減でき、リセプタクルハウジング21の右側壁25a及び左側壁25bの破損を抑止することができる。
【0044】
図5(b)に示すように、湾曲部223eは、湾曲部223dに向けて開口するように緩やかに湾曲している。そのため、湾曲部223eは、底部223cを中心に回転するように弾性変形可能である。湾曲部223eが弾性変形することにより、屈曲部223bが左右方向に変位する。
【0045】
[湾曲部224]
図4(b)及び図5(b)に示すように、湾曲部224は、屈曲部223aの頂部から固定部222にかけて、上方に向けて湾曲している。詳細には、湾曲部224は、屈曲部223aの頂部から斜め上方に向けて延在した後、山型を形成するように、斜め下方に向けて延び、その後、固定部222に連接している。リセプタクルコンタクト22をリセプタクルハウジング21に装着したとき、図4(b)に示すように、湾曲部224と、リセプタクルコンタクト22が装着された右側壁25a又は左側壁25bとの間には、空間が形成されている。上記構成から、湾曲部224は、屈曲部223aが左右方向に変位するように且つ上下方向に変位するように弾性変形可能となっている。
【0046】
なお、リセプタクルコンタクト22には、一対の凹み223sを形成するために、圧潰加工が施されている。圧潰加工は、帯状導電部材を屈曲する前に、一直線状となった帯状導電部材に施される。一対の凹み223sが形成された一直線状の帯状導電部材を、その長手方向に互いに異なる複数個所で屈曲させることにより、リセプタクルコンタクト22が得られる。
【0047】
リセプタクルコンタクト22をリセプタクルハウジング21に装着するときは、リセプタクルコンタクト22を溝28に嵌め、圧入する。
【0048】
次に、図6〜10を参照しつつ、プラグコネクタ10のリセプタクルコネクタ20への嵌合動作時及び嵌合解除動作時について説明する。
【0049】
初めに、図6〜8を参照しつつ、プラグコネクタ10のリセプタクルコネクタ20への嵌合動作時について説明する。図7には、図6(b)に示すリセプタクルコンタクト22の変位前の状態及び変位後の状態の状態を示しており、図8には、図6(c)に示すリセプタクルコンタクト22の変位前の状態及び変位後の状態を示している。また、図7,8では、変位前のリセプタクルコンタクト22を点線で示しており、変位後のリセプタクルコンタクト22を実線で示している。
【0050】
(プラグコネクタ10のリセプタクルコネクタ20への嵌合動作)
図6(a)に示すように、プラグコネクタ10をリセプタクルコネクタ20に向けて下方へ移動し、プラグ湾曲部122をリセプタクル湾曲部223内部に挿入する。
【0051】
図6(b)に示すように、リセプタクル湾曲部223の屈曲部223aの内側面とプラグ湾曲部122の側部123の外側面とが接触すると共に、リセプタクル湾曲部223の屈曲部223bの内側面とプラグ湾曲部122の側部124の外側面124tとが接触する。このとき、屈曲部223bと側部124(外側面124t)との接触に先駆けて、屈曲部223aと側部123とが接触する。プラグ湾曲部122をリセプタクル湾曲部223内部にさらに挿入するにしたがって、図7に示すように、湾曲部224が弾性変形することにより屈曲部223aが屈曲部223bと反対方向(嵌合方向と直交する方向であり且つ屈曲部223bと反対の方向)に変位するとともに、湾曲部223eが弾性変形することにより屈曲部223bが屈曲部223aと反対方向(嵌合方向と直交する方向であり且つ屈曲部223aと反対の方向)に変位する。すなわち、プラグ湾曲部122のリセプタクル湾曲部223内部への挿入時に、屈曲部223aと屈曲部223bとが、互いに反対方向に変位する。したがって、プラグ湾曲部122をリセプタクル湾曲部223内部に低挿入力で挿入することができる。
【0052】
なお、屈曲部223aの変位後は、屈曲部223aは、湾曲部224により、変位する前の位置(図6(a)に示す位置)に戻ろうとして、言い換えると、屈曲部223bに向けて変位しようとして力Fa1でプラグ湾曲部122の側部123を押圧する。また、屈曲部223bの変位後は、屈曲部223bは、湾曲部223eにより、変位する前の位置(図6(a)に示す位置)に戻ろうとして、言い換えると、屈曲部223aに向けて変位しようとして力Fでプラグ湾曲部122の側部124を押圧する。
【0053】
そして、図6(b)及び図7に示す状態から、プラグ湾曲部122をリセプタクル湾曲部223内部にさらに挿入するにしたがって、屈曲部223aは、下側面123qに接触した後、図6(c)に示すように、屈曲部223aは底面123tに接触する。このとき、図8に示すように、下側面123qは、底面123tに近づくにつれて屈曲部223aから離れるように傾斜しているため、プラグ湾曲部122をリセプタクル湾曲部223内部にさらに挿入するにしたがって湾曲部224が弾性変形することにより、屈曲部223aは、屈曲部223bに向かって変位する。これにより、屈曲部223bは、プラグ湾曲部122をリセプタクル湾曲部223内部に挿入する前の状態(図6(a)に示す状態)から屈曲部223bと反対側に向けて少し変位した状態となる。したがって、屈曲部223bは、屈曲部223bに向けて変位しようとする力Fa2でプラグ湾曲部122の側部123を押圧する(Fa1>Fa2)。また、屈曲部223bには、湾曲部223eにより、屈曲部223aに向けて変位しようとして力Fでプラグ湾曲部122の側部124を押圧している。
【0054】
上述の動作により、プラグ湾曲部122のリセプタクル湾曲部223への嵌合動作が終了する。また、リセプタクル湾曲部223の屈曲部223aとプラグ湾曲部122の側部123との接触、及び、リセプタクル湾曲部223の屈曲部223bとプラグ湾曲部122の側部124との接触により、プラグ湾曲部122とリセプタクル湾曲部223との電気的接続が可能となる。
【0055】
続いて、図9,10を参照しつつ、プラグコネクタ10のリセプタクルコネクタ20からの嵌合解除動作時について説明する。図10には、図9(b)に示す状態において、リセプタクルコンタクト22からプラグコンタクト12に作用する力を示している。また、図10では、変位前のリセプタクルコンタクト22を実線で示しており、変位後のリセプタクルコンタクト22を点線で示している。
【0056】
(プラグコネクタ10のリセプタクルコネクタ20への嵌合解除動作)
図9(a)に示すように、プラグコネクタ10がリセプタクルコネクタ20に嵌合した状態から、プラグコネクタ10を上方(嵌合方向と反対の方向)へ移動させ、プラグ湾曲部122をリセプタクル湾曲部223から引き抜く。ここで、屈曲部223aは、プラグ湾曲部122をリセプタクル湾曲部223内部に挿入する前の状態(図6(a)に示す状態)から屈曲部223bと反対側に向けてやや変位した状態となっているため、屈曲部223bは、屈曲部223bに向けて変位しようとして力Fa2で(図8に示す力Fa2)プラグ湾曲部122の側部123を押圧している。また、屈曲部223bは、湾曲部223eにより、屈曲部223aに向けて変位しようとしてプラグ湾曲部122の側部124を押圧している。
【0057】
プラグ湾曲部122をリセプタクル湾曲部223からさらに引き抜いたら、屈曲部223aがプラグ湾曲部122の段部Qに係合する(ロック機構)。
【0058】
そして、プラグ湾曲部122をリセプタクル湾曲部223からさらに引き抜いたら、図9(b)に示すように、リセプタクル湾曲部223の移動とともに、段部Qの下側面123qにより屈曲部223aが引き上げられ、湾曲部224が弾性変形することにより、屈曲部223aが上方に向けてやや変位する。
【0059】
このとき、図10に示すように、屈曲部223aは、湾曲部224により、屈曲部223aが引き上げられる前の位置(図8(b)に示す位置)に戻ろうとして、下方向への力Fa3でプラグ湾曲部122の下側面123qを押圧する。また、下側面123qは、凹部123sの縁に近づくにつれて屈曲部223aに近づくように傾斜しているため、屈曲部223aと段部Qとの係合解除動作時に、屈曲部223aは、湾曲部224が弾性変形することにより屈曲部223bと反対方向に変位する。これにより、屈曲部223aは、湾曲部224により、変位する前の位置(図9(a)に示す位置)に戻ろうとして、言い換えると、屈曲部223bに向けて変位しようとして力Fa4でプラグ湾曲部122の下側面123qを押圧する。そして、力Fa3と力Fa4の合力Fが、プラグ湾曲部122の側部123に作用する。合力Fは、側部123向けて且つ斜め下方向に作用している。
【0060】
また、図10に示すように、屈曲部223bは、湾曲部223eにより、プラグ湾曲部122をリセプタクル湾曲部223に挿入する前の変位していない状態(図6(a)に示す状態)に戻ろうとして、言い換えると、屈曲部223aに向けて変位しようとして力Fでプラグ湾曲部122の側部124を押圧している。力Fは、プラグ湾曲部122の外側面124tに作用している。
【0061】
したがって、プラグ湾曲部122をリセプタクル湾曲部223から引き抜くとき、特に、図8(b)及び図9に示すように、屈曲部223aと段部Qとの係合解除動作時には、リセプタクル湾曲部223の移動に伴って、屈曲部223aが合力Fでプラグ湾曲部122の側部123(下側面123q)を押圧すると共に、屈曲部223bが力Fでプラグ湾曲部122の外側面124tを押圧するため、プラグ湾曲部122をリセプタクル湾曲部223から引き抜くために高い引き抜き力を必要とする。
【0062】
そして、プラグ湾曲部122をリセプタクル湾曲部223からさらに引き抜くことにより、図8(c)に示すように、プラグコネクタ10のリセプタクルコネクタ20からの嵌合が解除される。
【0063】
以上に述べたように、本実施形態のコネクタ100によると以下の効果を奏する。プラグ湾曲部122のリセプタクル湾曲部223への嵌合動作時に、側部123に押圧された湾曲部224が弾性変形することにより屈曲部223aが弾性変形すると共に、側部124に押圧された湾曲部223eが弾性変形することにより屈曲部223bが弾性変形する。これにより、屈曲部223a,223bが互いに反対方向に変位するため、プラグ湾曲部122をリセプタクル湾曲部223へ低挿入力で挿入することができる。また、プラグ湾曲部122のリセプタクル湾曲部223からの嵌合解除動作時に、プラグ湾曲部122の移動に伴って屈曲部223aがプラグ湾曲部122(段部Q)により引き上げられる。これにより、湾曲部224が弾性変形することによって、屈曲部223aが上方に向けてやや変位するため、屈曲部223aは、湾曲部224によって元の位置から変位しないように下方向への力Fa3で下側面123qを押圧する。また、屈曲部223aと段部Qとの係合解除動作時に、下側面123qが凹部123sの縁に近づくにつれて屈曲部223aに近づくように傾斜しているため、湾曲部224が弾性変形することにより屈曲部223aが屈曲部223bと反対方向に変位する。これにより、屈曲部223aは、屈曲部223bに向けて変位しようとして力Fa4で下側面123qを押圧する。したがって、力Fa3と力Fa4の合力Fが、プラグ湾曲部122の側部123に作用する。また、屈曲部223bは、湾曲部223eにより、屈曲部223aに向けて変位しようとして力Fで側部124を押圧している。力Fは、プラグ湾曲部122の外側面124tに作用している。したがって、プラグ湾曲部122のリセプタクル湾曲部223からの嵌合解除動作時には、屈曲部223aからプラグ湾曲部122の側部123に合力Fが作用すると共に、屈曲部223bからプラグ湾曲部122の外側面124tに力Fが作用するため、プラグ湾曲部122をリセプタクル湾曲部223から引き抜くために高い引き抜き力を必要とする。したがって、低挿入力及び高引抜力を両立することができる。
【0064】
また、屈曲部223aは、屈曲部223bに向けて突出するように湾曲しており、湾曲部224は、屈曲部223aの頂部から固定部222にかけて、上方に向けて突出するように湾曲している。これにより、プラグ湾曲部122のリセプタクル湾曲部223への嵌合動作時に屈曲部223aが屈曲部223bと反対方向に変位するように、且つ、プラグ湾曲部122のリセプタクル湾曲部223からの嵌合解除動作時に屈曲部223aが上下方向へ変位するように、湾曲部224が確実に弾性変形する。よって、低挿入力及び高引抜力の両立を確実に実現することができる。
【0065】
さらに、湾曲部223dは、リセプタクル端子部221に向けて突出するように湾曲している。これにより、リセプタクルコンタクト22に対して左右方向に向けて力が加えられたとき、湾曲部223dは、リセプタクル端子部221に近い位置で、リセプタクルコンタクト22が装着された右側壁25a又は左側壁25bに接する。したがって、湾曲部223dからリセプタクルハウジング21の右側壁25a又は左側壁25bに作用する力を軽減することができる。よって、リセプタクルハウジング21の破損を抑止することができる。
【0066】
以上、本発明の好適な実施形態及び変形例について説明したが、本発明は上述の実施形態及び変形例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0067】
例えば、本実施形態では、プラグコンタクト12の側部123とリセプタクルコンタクト22の屈曲部223aとの接触部において、プラグコンタクト12の側部123に、これらの係合を図る段部Qが形成されている場合について説明したが、これには限られない。プラグコンタクト12の側部123とリセプタクルコンタクト22の屈曲部223aとの少なくとも一方に、これらの係合を図る係合段部が形成されていてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、プラグコンタクト12の側部123に、段部(係合段部)Qとして凹部123sが形成されている場合について説明したが、段部Qの形状はこれには限られない。例えば、係合段部は、凸形状であってもよい。
【0069】
また、本実施形態では、プラグコンタクト12の側部124とリセプタクルコンタクト22の屈曲部223bとの接触部において、これらの係合を図る係合段部が形成されていない場合について説明したが、プラグコンタクト12の側部124とリセプタクルコンタクト22の屈曲部223bとの少なくとも一方に、これらの係合を図る係合段部が形成されていてもよい。
【0070】
また、本実施形態では、湾曲部224が上方に向けて突出するように湾曲している場合について説明したが、湾曲部224の形状は上記形状に限られない。例えば、湾曲部224が、下方に向けて開口するように且つ円弧状に湾曲していてもよい。また、リセプタクルハウジング21の右側壁25a及び左側壁25bの高さをさらに低くしてもよい。これにより、湾曲部224とそのリセプタクルコネクタ20が装着された右側壁25a又は左側壁25bとの間の空間をさらに大きくすることができることから、湾曲部224が確実に弾性変形する。
【0071】
また、本実施形態では、基板対基板接続コネクタ100について説明したが、発明のコネクタは、基板対基板接続用のものに限られない。
【符号の説明】
【0072】
10 プラグコネクタ(第1コネクタ)
11 プラグハウジング(第1ハウジング)
12 プラグコンタクト(第1コンタクト)
20 リセプタクルコネクタ(第2コネクタ)
21 リセプタクルハウジング(第2ハウジング)
22 リセプタクルコンタクト(第2コンタクト)
122 プラグ湾曲部(第1突出部)
122c 頂部
123s 凹部
123t 底面(第3接触部)
123p 上側面
123q 下側面
124 側部
124t 外側面(第4接触部)
221 リセプタクル端子部
222 固定部
223 リセプタクル湾曲部(第1湾曲部)
223a 屈曲部(第1接触部)
223b 屈曲部(第2接触部)
223c 底部(頂部)
223d 湾曲部(第4湾曲部)
223e 湾曲部(第3湾曲部)
224 湾曲部(第2湾曲部)
100 コネクタ
Q 段部(係合段部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに固定されるとともに相手側コンタクトと電気的に接続される帯状導電部材であるコンタクトであり、
前記コンタクトは、その長手方向の位置が互いに異なる複数個所で屈曲することで形成されており、
相手側コネクタに向かって開口するように湾曲した第1湾曲部と、
ハウジングに固定される固定部と、
第1湾曲部と前記固定部との間に設けられた第2湾曲部とを備えており、
相手側コンタクトが前記第1湾曲部に嵌合することによって、相手側コンタクトとの電気的接続が達成され、
前記第1湾曲部には、その両端部に、相手側コンタクトの嵌合方向と直交し且つ互いに対向する方向を向いた第1接触部及び第2接触部が設けられており、
前記第1接触部及び前記第2接触部は、相手側コンタクトの前記第1湾曲部への嵌合動作時に相手側コンタクトと接触し、
前記第1接触部は、前記第1湾曲部の頂部と前記第2湾曲部との間に設けられており、
前記第2湾曲部は、相手側コンタクトの前記第1湾曲部への嵌合方向と反対方向に突出するように湾曲しており、
相手側コンタクトの前記第1湾曲部への嵌合動作時に前記第1接触部が相手側コンタクトに押圧されて前記第2接触部と反対方向に変位するように且つ相手側コンタクトの前記第1湾曲部からの嵌合解除動作時に前記第1接触部が相手側コンタクトの移動に伴って前記嵌合方向と反対方向へ変位するように、前記第2湾曲部は弾性変形可能であり、
前記第2接触部と前記第1湾曲部の頂点との間に設けられた前記第3湾曲部は、相手側コンタクトの前記第1湾曲部への嵌合動作時に、前記第2接触部が相手側コンタクトに押圧されて前記第1接触部と反対方向に変位するように弾性変形可能であることを特徴とするコンタクト。
【請求項2】
前記第1接触部は、前記第2接触部に向けて突出するように湾曲しており、
前記第2湾曲部は、前記第1接触部の頂部から前記固定部にかけて、相手側コンタクトの前記第1湾曲部への嵌合方向と反対方向に突出するように湾曲していることを特徴とする請求項1に記載のコンタクト。
【請求項3】
前記コンタクトの長手方向に沿って前記固定部に対して前記第2湾曲部と反対側に設けられ、回路基板にハンダ接合される端子部をさらに有しており、
前記第1湾曲部は、前記第1接触部と前記第1湾曲部の頂部との間に設けられた第4湾曲部をさらに有しており、
前記第4湾曲部は、前記端子部に向けて突出するように湾曲していることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンタクト。
【請求項4】
前記第1接触部には、相手側コネクタとの係合を図るための係合段部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンタクト。
【請求項5】
第1ハウジングと、前記第1ハウジングに固定された導電部材である第1コンタクトとを有する第1コネクタと、
第2ハウジングと、前記第2ハウジングに固定された導電部材である第2コンタクトとを有する第2コネクタとを備えたコネクタであり、
前記第1コンタクトは、
その長手方向の位置が互いに異なる複数個所で屈曲することで形成されており、
前記第2コネクタに向かって開口するように湾曲した第1湾曲部と、
前記第1ハウジングに固定される固定部と、
前記第1湾曲部と前記固定部との間に設けられた第2湾曲部とを備えており、
前記第2コンタクトは、
前記第1コネクタに向かって突出するように湾曲した第1突出部を有し、
前記第1突出部はその内側から前記第2ハウジングによって支持されており、
前記第2コンタクトの前記第1突出部が前記第1コンタクトの前記第1湾曲部に嵌合することによって、前記第1コンタクトと前記第2コンタクトとの電気的接続が達成され、
前記第1湾曲部には、その両端部に、それぞれ、前記第1突出部の嵌合方向と直交し且つ互いに対向する方向を向いた第1接触部及び第2接触部が設けられており、
前記第1接触部は、前記第1湾曲部の頂部と前記第2湾曲部との間に設けられており、
前記第1接触部及び第2接触部は、それぞれ、互いに反対方向を向くように前記第2コンタクトの前記第1突出部に設けられた第3接触部及び第4接触部と、前記第1突出部の前記第1湾曲部への嵌合動作時に接触し、
前記第1接触部と、前記第1突出部の前記第1湾曲部への嵌合動作時に前記第1接触部と接触する第3接触部との少なくとも一方に、前記第1接触部と前記第3接触部との係合を図るための係合段部が形成されており、
前記第2湾曲部は、前記第1突出部の前記第1湾曲部への嵌合方向と反対方向に突出するように湾曲しており、
前記第1突出部の前記第1湾曲部への嵌合動作時に前記第1接触部が前記第1突出部に押圧されて前記第2接触部と反対方向に変位するように且つ前記第1突出部の前記第1湾曲部からの嵌合解除動作時に前記第1接触部が前記第1突出部の移動に伴って前記嵌合方向と反対方向へ変位するように、前記第2湾曲部は弾性変形可能であり、
前記第2接触部と前記第1湾曲部の頂点との間に設けられた前記第3湾曲部は、前記第1突出部の前記第1湾曲部への嵌合動作時に、前記第2接触部が前記第1突出部に押圧されて前記第1接触部と反対方向に変位するように弾性変形可能であることを特徴とするコネクタ。
【請求項6】
前記第1接触部は、前記第2接触部に向けて突出するように湾曲しており、
前記第2湾曲部は、前記第1接触部の頂部から前記固定部にかけて、前記嵌合方向と反対方向に突出するように湾曲していることを特徴とする請求項5に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記コンタクトの長手方向に沿って前記固定部に対して前記第2湾曲部と反対側に設けられ、回路基板にハンダ接合される端子部をさらに有しており、
前記第1湾曲部は、前記第1接触部と前記第1湾曲部の頂部との間に設けられた第4湾曲部をさらに有しており、
前記第4湾曲部と前記固定部とは、前記第1ハウジングの前記固定部が固定された部分を挟んで互いに対向するように設けられており、
前記第4湾曲部は、前記端子部に向けて突出するように湾曲していることを特徴とする請求項5又は6に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−99276(P2012−99276A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244424(P2010−244424)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(390033318)日本圧着端子製造株式会社 (457)
【Fターム(参考)】