説明

コンダクターロール

【課題】 ロール部とシャフト部とを着脱自在に構成し、コンダクターロールの交換時に腐食したロール部のみを交換し、交換作業の簡略化と交換部品を少なくし、経費の節減と共に製品コストを低くすることができるコンダクターロールを提供する。
【解決手段】 金属板・フィルムへのめっき、または金属箔・フィルムへの電解表面処理を行う電解表面処理装置1に使用されるコンダクターロール2において、金属板または箔、またはフィルムに当接するロール部10とシャフト部20とを着脱自在とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板の電気めっきや金属箔の電解表面処理装置に使用されるコンダクターロールに関するものであり、特にロール部とシャフト部とを着脱自在としたコンダクターロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンダクターロールは、連続めっきラインにおいて使用されるため、ロール表面はめっき液に常時接触しており腐食しやすく、鋼板を接触移動させるために摩耗しやすい。そのためロール表面が粗くなり、鋼板表面の性状不良が発生すると共に、ロールの耐用年数が短くなり生産効率が低下する原因となっていた。
そのため、従来より耐食性及び耐摩耗性に優れたコンダクターロールの改良が提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−27592号公報
【0004】
前記特許文献1に記載の発明に係る電解表面処理装置用コンダクターロールは、電解表面処理装置のバックアップロールと対向した位置に該バックアップロールと対をなして配設され、被処理材と常時接触していることにより該被処理材に通電するコンダクターロールにおいて、中空円筒をしたロール基体の外周面に放電加工を施すことによって導電層を形成し、前記導電層の表面に保護層を形成したものである。
【0005】
前記発明は、電気抵抗が小さいとともに均一な電流密度を確保できて消費電力を低減し、表面の硬度が大きくなってエッジ傷が生じにくく、寿命の長いコンダクターロールを提供することを目的としている。
【0006】
しかしながら、前記特許文献1記載の発明は、ロール基体の外周面に導電層と保護層を形成したものであるから、これらの表面層が腐食や摩耗した場合には、シャフト部分を含めたコンダクターロール全体を交換しなくてはならず、多大な費用と手間がかかるという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来例の欠点に基づいて発明されたもので、ロール部とシャフト部とを着脱自在に構成したことで、ロール部の腐食や摩耗に対して根本的な解決を図るコンダクターロールを提供すものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、金属板やフィルムのめっき或いは金属箔やフィルムの電解表面処理装置に使用されるコンダクターロールにおいて、金属板、箔またはフィルムに当接するロール部とシャフト部とを着脱自在に構成したことコンダクターロールである。
【0009】
また本発明は、前記コンダクターロールの一端または両端にロール部とシャフト部の接続部を設けたコンダクターロールである。
【0010】
また本発明は、前記接続部を、ロール部の内周面に設けたテーパー面とシャフト部の外周面に設けたテーパー面との間に形成された嵌合部と、この嵌合部に挿入嵌合される環状の嵌合部材とによって構成したコンダクターロールである。
【0011】
また本発明は、前記シャフト部の周囲にネジ部を形成すると共に、このネジ部に螺合するネジ部を形成した環状の押圧部材を構成し、前記押圧部材を前記シャフト部のネジ部に螺着して、前記嵌合部材を嵌合部に圧入するコンダクターロールである。
【0012】
また本発明は、前記嵌合部材にネジ穴を設けると共に、前記押圧部材における前記ネジ穴に相対する位置にボルト貫通穴を設けたコンダクターロールである。
【0013】
また本発明は、前記接続部を、ロール部の一端または両端の内周面に固定した第1の環状部材と、この第1の環状部材に当接する第2の環状部材とによって構成し、前記第2の環状部材にロール部の外側に伸びるシャフト部を固定し、前記第1の環状部材と第2の環状部材とを固定具にて着脱自在に固着するコンダクターロールである。
【0014】
また本発明は、前記接続部を、ロール部の一端または両端の内周面に固定した第3の環状部材と、この第3の環状部材に当接する第4の環状部材とによって構成し、第4の環状部材の外周部と、その外周部に相対する第3の環状部材の内周部とに相互に螺合するネジ部を形成し、前記第4の環状部材にロール部の外側に伸びるシャフト部を固定し、前記第4の環状部材を第3の環状部材の内周面に着脱自在に螺着したコンダクターロールである。
【0015】
また本発明は、前記第4の環状部材の外周面に形成したネジ部を互いに逆ネジとして、ロール部の両端に固定したコンダクターロールである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、ロール部とシャフト部とを着脱自在に構成したことで、コンダクターロールの交換時に腐食したロール部のみを交換し、シャフト部はそのまま使用することができるので、交換作業の簡略化と交換部品を少なくすることができ、経費の節減と共に製品コストを低くすることができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、前記コンダクターロールの一端または両端にロール部とシャフト部の接続部を設けたため、ロール部とシャフト部の取り付け、取り外し作業が容易に行える。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、前記接続部を、テーパー面によって画成された嵌合部と、この嵌合部に嵌合する環状の嵌合部材とによって構成したから、ロール部とシャフト部の接続状態が確実で、安定した電解表面処理作業が行える。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、シャフト部に螺合する環状の押圧部材によって嵌合部材を嵌合部に圧入するため、嵌合部材はより確実に嵌合し、電解表面処理作業中に嵌合部材が外れたりすることもない。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、簡単な構成と方法によって、嵌合部材の取り外しが確実に、かつ迅速に行える。
【0021】
請求項6記載の発明によれば、前記接続部を、ロール部の内周面に固定した第1の環状部材と、この第1の環状部材に当接する第2の環状部材とによって構成したから構造簡易となり、接続部の取り付け、取り外しも容易に行える。
【0022】
請求項7記載の発明によれば、前記接続部を、ロール部の内周面に固定した第3の環状部材と、この第3の環状部材の内周面に、第4の環状部材をネジ部によって着脱するようにしたから構造簡易となり、接続部の取り付け、取り外しも容易に行える。
【0023】
請求項8記載の発明によれば、前記第4の環状部材の外周面に形成したネジ部を互いに逆ネジとして、ロール部の両端に固定したから、コンダクターロールの回転に伴うネジ部の緩みが未然に防げ、安定した電解表面処理作業が行える。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】電解表面処理作業を示す模式図
【図2】本発明の実施形態1の断面側面図
【図3】本発明の実施形態1の構成要素の分解説明図
【図4】本発明の実施形態1の接続部の断面側面図
【図5】本発明の実施形態1の正面図
【図6】本発明の実施形態1の嵌合部材を取り外す方法を示す断面側面図
【図7】本発明の実施形態2の接続部の断面側面図
【図8】本発明の実施形態2の正面図
【図9】本発明の実施形態3の一部切欠断面側面図
【図10】本発明の実施形態3の正面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、図1に示すような金属板・フィルムへのめっき、または金属箔・フィルムへの電解表面処理を行う電解表面処理装置1に使用されるコンダクターロール2において、金属板または箔、またはフィルムに当接するロール部とシャフト部とを着脱自在としたものである。
以下図面に基づいて各実施形態を詳細に説明する。
【0026】
本発明の実施形態1は、図2乃至図6に示すもので、コンダクターロール2のロール部10の一端開口部の内周面に、ロール部10の外側(図3の左方)に向かって広がっているテーパー面14を設ける。
【0027】
シャフト部20は、前記ロール部10の内部に挿入されるものであり、装着時にロール部10の開口部より外側に突出する部分に、表面にネジ部21aを設けた基部21を構成する。この基部21の内側(図3の右方)のロール部10内に収容される部分に固定部22を設け、この固定部22の外周面に内側に向かって広がっているテーパー面23を形成している。
そのため、シャフト部20をロール部10内に挿入した場合に、前記ロール部10のテーパー面14とシャフト部20のテーパー面23の間に、縦断面が楔型をなした環状の嵌合部13が形成されるのである。
図中、符号R1、R2は、シール部材である
【0028】
一方、中央に孔29を設けた環状の嵌合部材25を構成する。この嵌合部材25は、外周面に外側に向かって広がっているテーパー面26を形成し、内周面に内側に向かって広がっているテーパー面27を形成して、前記嵌合部13と嵌合する形状を構成している。
また、前記嵌合部材25には貫通しない4個のネジ穴28を構成する。
【0029】
この嵌合部材25と前記嵌合部13とで接続部を構成している。この接続部は、本実施形態ではロール部10の一端に設けたが、両端に設けることもできる。
【0030】
一方、前記嵌合部材25を嵌合部13に押圧するための押圧部材30を構成する。この押圧部材30はロール部10より小径で、中央に孔32を構成した環状部材である。この孔32の内周面にネジ部32aを構成してあり、このネジ部32aが前記シャフト部20のネジ部21aと螺合するのである。
押圧部材30には、4個のボルト貫通孔31を穿設してある。これらボルト貫通孔31は押圧部材30の前記ネジ穴28に相対する位置に設けられ、後述のように、嵌合部材25を外すときに使用するものである。
【0031】
このように構成した本実施形態の作用を説明する。
まず、ロール部10とシャフト部20を接続する場合を説明する。
図4に示すように、ロール部10とシャフト部20の間に形成された嵌合部13に、嵌合部材25を外側(図4左側)より内側へ挿入し嵌合せしめる(図4参照)。
【0032】
このとき、前記押圧部材30を、シャフト20の基部21のネジ部21aに螺合させて、嵌合部材25の表面を押圧することで嵌合を迅速に行い、かつ嵌合状態では嵌合部材25は押圧部材30によって、常に押圧された状態となっているから嵌合部材25が緩んだり、抜け落ちたりするおそれはない。この状態で装置に装着して安定した電解表面処理作業を行う。
【0033】
次に、ロール部10をシャフト部20より取り外す場合を説明する。
図6に示すように、押圧部材30を、ネジ部21a上を外側に移動させて嵌合部材25との間に間隙を作る。
次いで、押圧部材30の表面外側にナット34を取り付けてから、押圧部材30のボルト貫通孔31にボルト33を貫通して、その先端を前記嵌合部材25のネジ穴28に螺着する。
【0034】
その後、前記ナット34を回転すると、押圧部材30はネジ部21a上に固定されていると共に、ボルト33は回転しないから、ボルト33は外側(矢印A方向)に移動する。そのため、ボルト33と結合している嵌合部材25も矢印A方向に移動して、嵌合部13より抜けて図6の状態となるのである。
【0035】
このように実施形態1によれば、嵌合部材25を押圧部材30によって嵌合部13へ迅速に嵌合し、かつ嵌合状態を確実に保持できるから、ロール部10とシャフト部20の接続作業が容易にでき、安定した電解表面処理作業を行うことができる。
【0036】
本発明の実施形態2を、図7、図8に基づいて説明する。
本実施形態は、ロール部50の一端に、中央に開口部を有し、周囲にボルト穴54を構成した第1の環状部材53を固定する。
【0037】
前記第1の環状部材53に当接する第2の環状部材55を構成する。この第2の環状部材55の開口部にはコンダクターロール2の外側に伸びるシャフト部51を固定すると共に、周囲にはボルト穴56を構成する。この第1の環状部材53と第2の環状部材55とで接続部を構成する。図中、符号R3はシール部材である。
【0038】
シャフト部51とロール部50を接続するときには、前記第2の環状部材55の表面55aを第1の環状部材53の表面53aに当接させて、その後ボルト59によって締結すれば良い。
また、取り外しに際しては、ボルト59を外すことで容易に作業が行える。
【0039】
このように実施形態2によれば、シャフト部51とロール部50の接続が容易にかつ確実に行えると共に、取り外しも容易迅速に行えるのである。本実施形態の接続部は、本実施形態ではロール部50の一端に設けたが、両端に設けることもできる。
【0040】
本発明の実施形態3を、図9、図10に基づいて説明する。
ロール部60の両端に、中央に開口部を有し、内周面にはネジ部65を構成した第3の環状部材63を固定する。図中、符号R3はシール部材である。なお図示はしないが、前記第3の環状部材63をロール部60の一端にのみ設けた構成とすることもできる。
【0041】
前記第3の環状部材63に当接する第4の環状部材64を構成する。この第4の環状部材64の開口部にはコンダクターロール2の外側に伸びるシャフト部61を固定すると共に、外周面にはネジ部66を構成する。この第3の環状部材63と第4の環状部材64とで接続部を構成する。
【0042】
シャフト部61とロール部60を接続するときには、それぞれのネジ部66、65で相互に螺着し、前記第4の環状部材64の表面64aを第3の環状部材63の表面63aに当接させれば良い。また、取り外しに際しては、螺着状態を解除することで容易に行える。
【0043】
このように実施形態3によれば、シャフト部61とロール部60の接続が容易にかつ確実に行えると共に、取り外しも容易迅速に行えるのである。
さらに本実施形態では、第3の環状部材63をロール部60の両端に構成し、前記ネジ部66、65をコンダクターロール2の両端部で、それぞれ逆ネジとしたから、回転に伴うネジ部の緩みが未然に防げ安定した電解表面処理作業が行えるのである。
【符号の説明】
【0044】
1 電解表面処理装置
2 コンダクターロール
10 ロール部
13 嵌合部
14 テーパー面
20 シャフト部
21 基部
21a ネジ部
22 固定部
23 テーパー面
25 テーパー面(嵌合部材)
26 テーパー面(外周面)
27 内周面
28 ネジ穴
29 孔
30 押圧部材
31 ボルト貫通孔
32 孔
32a ネジ部
33 ボルト
34 ナット
50 ロール部
51 シャフト部
53 第1の環状部材
54 ボルト穴
55 第2の環状部材
56 ボルト穴
59 ボルト
60 ロール部
61 シャフト部
63 第3の環状部材
64 第4の環状部材
65 ネジ部
66 ネジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板やフィルムのめっき或いは金属箔やフィルムの電解表面処理装置に使用されるコンダクターロールにおいて、
金属板、箔またはフィルムに当接するロール部とシャフト部とを着脱自在に構成したことを特徴とするコンダクターロール。
【請求項2】
前記コンダクターロールの一端または両端にロール部とシャフト部の接続部を設けたことを特徴とする請求項1記載のコンダクターロール。
【請求項3】
前記接続部を、ロール部の内周面に設けたテーパー面とシャフト部の外周面に設けたテーパー面との間に形成された嵌合部と、この嵌合部に挿入嵌合される環状の嵌合部材とによって構成したことを特徴とする請求項2記載のコンダクターロール。
【請求項4】
前記シャフト部の周囲にネジ部を形成すると共に、このネジ部に螺合するネジ部を形成した環状の押圧部材を構成し、
前記押圧部材を前記シャフト部のネジ部に螺着して、前記嵌合部材を嵌合部に圧入することを特徴とする請求項3記載のコンダクターロール。
【請求項5】
前記嵌合部材にネジ穴を設けると共に、前記押圧部材における前記ネジ穴に相対する位置にボルト貫通穴を設けたことを特徴とする請求項4記載のコンダクターロール。
【請求項6】
前記接続部を、ロール部の一端または両端の内周面に固定した第1の環状部材と、この第1の環状部材に当接する第2の環状部材とによって構成し、
前記第2の環状部材にロール部の外側に伸びるシャフト部を固定し、
前記第1の環状部材と第2の環状部材とを固定具にて着脱自在に固着することを特徴とする請求項2記載のコンダクターロール。
【請求項7】
前記接続部を、ロール部の一端または両端の内周面に固定した第3の環状部材と、この第3の環状部材に当接する第4の環状部材とによって構成し、
第4の環状部材の外周部と、その外周部に相対する第3の環状部材の内周部とに相互に螺合するネジ部を形成し、
前記第4の環状部材にロール部の外側に伸びるシャフト部を固定し、
前記第4の環状部材を第3の環状部材の内周面に着脱自在に螺着したことを特徴とする請求項2記載のコンダクターロール。
【請求項8】
前記第4の環状部材の外周面に形成したネジ部を互いに逆ネジとして、ロール部の両端に固定したことを特徴とする請求項7記載のコンダクターロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−225937(P2011−225937A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97151(P2010−97151)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(591114847)赤星工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】