説明

コンテナ及びコンテナの射出成形方法

【課題】 本発明は、リサイクル性に優れ且つ優れた剛性及び耐衝撃性を有するコンテナを提供する。
【解決手段】 本発明のコンテナAは、底面部1とこの底面部1の外周縁部から上方に向かって延設された周壁部2と、この周壁部2から外方に向かって延設された鍔部3とを有するコンテナにおいて、上記鍔部3及び上記周壁部2の上端部を除いた残余部分は、少なくとも一種のポリオレフィン系樹脂と0.01〜3.0重量%の塩素含有樹脂とを含む第一熱可塑性樹脂から構成されているコア部4と、このコア部4を被覆し且つ第二熱可塑性樹脂からなるスキン層5とから構成されている一方、上記鍔部3及び上記周壁部2の上端部21は上記第二熱可塑性樹脂から構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた剛性及び耐衝撃性を有し且つリサイクル性にも優れたコンテナ及びその射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容器包装リサイクル法の施行により、家庭から出るゴミの約6割(容積比)を占めるプラスチック製の容器包装ゴミを回収し、資源として有効利用することが定められている。プラスチック製の容器包装ゴミは、洗浄、分別及び破砕された後に比重分離されることによりポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などの比重が小さいポリオレフィン系樹脂の混合物が分離され、このようにして得られた混合物は「容器包装リサイクル材」とも言われ、新たな成形品の原料として再利用される(特許文献1)。分別工程や比重分離工程において不純物を完全に取り除くことは難しく、従って、容器包装リサイクル材には、通常、ポリオレフィン系樹脂の他にもポリ塩化ビニル及びポリ塩化ビニリデンなどの塩素含有樹脂が少量含まれる。
【0003】
しかしながら、上述した容器包装リサイクル材の主成分となるポリオレフィン系樹脂の多くは容器包装ゴミに含まれるレジ袋や商品を包むための包装用フィルムなどから得られたものである。レジ袋や包装用フィルムは薄くても丈夫であることが必要とされることから、これらの材料としては高密度ポリエチレン系樹脂、低密度ポリエチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂などの分子量が高いポリオレフィン系樹脂が用いられる。これらの分子量が高いポリオレフィン系樹脂は溶融時の流動性が悪く、結果として容器包装リサイクル材(メルトフローレイト(MFR)0.1〜3.0g/10分程度)の流動性も悪くなり、このような容器包装リサイクル材は射出成形による成形品の製造には適していないという問題があった。
【0004】
一方、物品を輸送するためにコンテナが汎用されており、このコンテナは一般的に射出成形によって成形されている。そして、コンテナは、物品を輸送するために用いられることから剛性及び耐衝撃性に優れていることが要求される。
【0005】
上述のように、地球環境の保護の観点からリサイクルが進められているが、容器包装リサイクル材は射出成形には適していない上に、容器包装リサイクル材を用いて得られた射出成形品は剛性及び耐衝撃性が不十分であるという問題があるために、重量物を収納して輸送する可能性があるコンテナに容器包装リサイクル材を用いることができなかった。
【0006】
又、容器包装リサイクル材の流動性を向上させるために、容器包装リサイクル材に高流動性ポリプロピレン系樹脂(MFR:80〜150g/10分)や高流動性ポリエチレン系樹脂(MFR:100〜170g/10分)を添加する手段も考えられる。しかしながら、これらの高流動性の樹脂によっても容器包装リサイクル材の流動性の向上は十分に図れない。さらに、上記高流動性の樹脂はコストが高く、結果として容器包装リサイクル材の再資源化にかかるコストの上昇を招くため、上記高流動性の樹脂の使用は実用的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−123412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、リサイクル性に優れ且つ優れた剛性及び耐衝撃性を有するコンテナ及びその射出成形方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のコンテナは、底面部とこの底面部の外周縁部から上方に向かって延設された周壁部と、この周壁部から外方に向かって延設された鍔部とを有するコンテナにおいて、上記鍔部及び上記周壁部の上端部を除いた残余部分は、少なくとも一種のポリオレフィン系樹脂と0.01〜3.0重量%の塩素含有樹脂とを含む第一熱可塑性樹脂から構成されているコア部と、このコア部を被覆し且つ第二熱可塑性樹脂からなるスキン層とから構成されている一方、上記鍔部及び上記周壁部の上端部は上記第二熱可塑性樹脂から構成されていることを特徴とする。
【0010】
また、上記コンテナにおいて、第二熱可塑性樹脂は塩素含有樹脂を含有していないことを特徴とする。
【0011】
本発明のコンテナの射出成形方法は、金型のキャビティ内に第一熱可塑性樹脂及び第二熱可塑性樹脂を射出して成形するコンテナの射出成形方法において、上記キャビティは、上記コンテナの底面部を成形する底面部形成部と、この底面部形成部の外周縁部に連続し且つ周壁部を成形する周壁部形成部と、この周壁部形成部の上端部に連続し且つ鍔部を成形する鍔部形成部とを有しており、上記キャビティ内にその底面部形成部に通じるゲート口を通じて上記第二熱可塑性樹脂を射出した後に、上記キャビティ内に上記ゲート口を通じて、少なくとも一種のポリオレフィン系樹脂と0.01〜3.0重量%の塩素含有樹脂とを含む第一熱可塑性樹脂を射出して、上記第一熱可塑性樹脂及び上記第二熱可塑性樹脂を上記第一熱可塑性樹脂が上記第二熱可塑性樹脂によって被覆された状態にて上記キャビティ内を流動させ、上記鍔部形成部及びこれに接続している上記周壁部形成部の端部を上記第二熱可塑性樹脂によって充填すると共に、上記鍔部形成部及びこれに接続している上記周壁部形成部の端部を除いたキャビティの残余部分を、上記第一熱可塑性樹脂及び上記第二熱可塑性樹脂によって第一熱可塑性樹脂が第二熱可塑性樹脂によって被覆された状態に充填することを特徴とする。
【0012】
また、上記コンテナの射出成形方法において、第二熱可塑性樹脂は塩素含有樹脂を含有していないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のコンテナは、上述の構成を有しており、鍔部及び周壁部の上端部を除いた残余部分のコア部は、少なくとも一種のポリオレフィン系樹脂と0.01〜3.0重量%の塩素含有樹脂とを含む第二熱可塑性樹脂から構成されており、容器包装リサイクル材を用いることができるので、リサイクル性に優れている。
【0014】
そして、コンテナは、その鍔部を把持して持ち上げられて移動させられるために、鍔部及び周壁部の上端部にはこれらを歪ませる外力が加わり易く丈夫であることが必要である一方、鍔部及び周壁部の上端部には第一熱可塑性樹脂を用いる必要はなく、重量物を収納して持ち上げたり輸送したりする際に鍔部や周壁部の上端部が破損するようなことはなく、鍔部や周壁部の上端部は優れた剛性及び耐衝撃性を有している。
【0015】
更に、コンテナの鍔部及び周壁部の上端部を除いた残余部分は、少なくとも一種のポリオレフィン系樹脂と0.01〜3.0重量%の塩素含有樹脂とを含む第一熱可塑性樹脂から構成されているコア部と、このコア部を被覆し且つ第二熱可塑性樹脂からなるスキン層とから構成され、コア部を構成している第一熱可塑性樹脂はその剛性及び耐衝撃性が低いものの、優れた剛性及び耐衝撃性を有している第二熱可塑性樹脂からなるスキン層によってコア部が被覆、補強されており、よって、コンテナの鍔部及び周壁部の上端部を除いた残余部分は全体として優れた剛性及び耐衝撃性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のコンテナを示した斜視図である。
【図2】本発明のコンテナを示した縦断面図である。
【図3】本発明のコンテナの成形要領を示した模式断面図である。
【図4】本発明のコンテナの成形要領を示した模式断面図である。
【図5】本発明のコンテナの成形要領を示した模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のコンテナの一例を図面を参照しつつ説明する。図1及び図2に示したように、コンテナAは、平面矩形状の底面部1と、この底面部1の四方外周縁部から上方に向かって延設された断面矩形枠状の周壁部2と、この周壁部2の上端部21から外方に向かって延設された鍔部3とを有している。
【0018】
上記コンテナAにおける鍔部3及び周壁部2の上端部21を除いた残余部分、即ち、コンテナAの周壁部2のうちの上端部21を除いた残余部分及び底面部1は、コア部4とこのコア部4を被覆しているスキン層5とから構成されている。コア部4は、少なくとも一種のポリオレフィン系樹脂と0.01〜3.0重量%の塩素含有樹脂とを含む第一熱可塑性樹脂から構成されている。
【0019】
第一熱可塑性樹脂は、一般的に主成分としてポリオレフィン系樹脂を含む他に、少量の塩素含有樹脂を含む。
【0020】
ポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン系樹脂、中密度ポリエチレン系樹脂、高密度ポリエチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂、直鎖状中密度ポリエチレン系樹脂、直鎖状高密度ポリエチレン系樹脂、エチレンと他のオレフィンとの共重合体などのポリエチレン系樹脂、プロピレン単独重合体、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体などのポリプロピレン系樹脂が挙げられる。なお、ポリオレフィン系樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0021】
エチレンと共重合されるオレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィンなどが挙げられる。
【0022】
プロピレンと共重合されるオレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィンなどが挙げられる。
【0023】
なお、ポリエチレン系樹脂とは、エチレン単独重合体、及び、エチレン成分を50重量%を超えて含有する共重合体を意味する。また、ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレン単独重合体、及び、プロピレン成分を50重量%を超えて含有する共重合体を意味する。
【0024】
上述した通り、包装に用いられた合成樹脂フィルムは、薄くても丈夫であることが必要とされることから、合成樹脂フィルムの原料には分子量が比較的高く、メルトフローレイトが低いポリオレフィン系樹脂が用いられる。従って、容器包装リサイクル材の主成分であるポリオレフィン系樹脂の分子量も高く、具体的には、容器包装リサイクル材にポリオレフィン系樹脂として含まれるポリエチレン系樹脂の粘度平均分子量Mvは、通常は10万〜100万、特に10万〜50万であり、また容器包装リサイクル材にポリオレフィン系樹脂として含まれるポリプロピレン系樹脂の粘度平均分子量Mvは、通常は10万〜100万、特に10万〜50万である。
【0025】
本発明において、ポリオレフィン系樹脂の粘度平均分子量は、JIS K7367−3(1991)に準拠した方法によりポリオレフィン系樹脂の粘度を測定し、この粘度を用いてユニバーサル法に基づき算出される値をいう。例えば、次の方法を用いて測定することができる。なお、後述する非変性ポリプロピレンワックスの粘度平均分子量も同様の要領で測定することができる。
【0026】
ポリオレフィン系樹脂をデカヒドロナフタレン(135℃)に溶解し、濃度(C)6.0g/Lの溶液を調製する。デカヒドロナフタレンの流下時間(t0)が130秒のウベローデ型毛細管粘度計を用いて、25℃に設定した恒温水槽中で試料溶液の流下時間(t)を測定する。測定した流下時間(t)を用い、以下の数式により、粘度平均分子量Mvを算出する。
Mv=1.03×10-4×η0.78
a=0.438×ηsp+1
b=100×ηsp/C
ただし、ηsp:極限粘度
ηsp=t/t0−1
C=6.0(g/L)
η=b/a
【0027】
また、第一熱可塑性樹脂の主成分であるポリオレフィン系樹脂のメルトフローレイトは、具体的には5.0g/10分以下が好ましく、1.0〜3.0g/10分がより好ましい。なお、ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレイトは、JIS K7210に準拠して220℃、荷重2.16kgf(21.18N)で測定した値を意味する。
【0028】
第一熱可塑性樹脂中におけるポリオレフィン系樹脂の含有量は、第一熱可塑性樹脂の樹脂成分の全量に対して、通常は50重量%以上であるが、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95〜99.99重量%である。
【0029】
また、第一熱可塑性樹脂には、ポリ塩化ビニル、及びポリ塩化ビニリデンなどの塩素原子を分子中に含んでいる塩素含有樹脂も含まれている。第一熱可塑性樹脂における塩素含有樹脂の含有量は、第一熱可塑性樹脂の樹脂成分の全量に対して、一般的には0.01〜3.0重量%である。
【0030】
第一熱可塑性樹脂は、上述したポリオレフィン系樹脂及び塩素含有樹脂の他にも、完全に除去することが困難な不可避的不純物が含まれ得る。不可避的不純物としては、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリアミド系樹脂などの熱可塑性樹脂、無機物(例えば、金属)が挙げられる。第一熱可塑性樹脂における不可避的不純物の含有量は、第一熱可塑性樹脂の全量に対して、一般的に0〜5重量%、特に0〜2重量%である。
【0031】
また、容器包装リサイクル材は第一熱可塑性樹脂として用いることができる。容器包装リサイクル材は、自治体が回収したプラスチックゴミに分別、洗浄、破砕及び比重分離などの前処理を行って得ることができ、さらに造粒工程を行うことによりペレット状、減容品状(破砕品を圧縮し固形化)など所定の形状に成形された上で原料として用いられてもよい。
【0032】
更に、第一熱可塑性樹脂には非変性ポリプロピレンワックスが含有されていてもよい。非変性ポリプロピレンワックスは、プロピレンを重合した粘度平均分子量が5,000〜30,000のポリプロピレンであり、このようなポリプロピレンは一般的にポリプロピレンワックスと言われる。また、非変性ポリプロピレンワックスは、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸などの酸モノマーで変性されておらず且つ酸化変性もされておらず、従って、末端や主鎖にカルボニル基(>C=O)、カルボキシル基(−COOH)、ヒドロキシル基(−OH)を有していない。
【0033】
また、非変性ポリプロピレンワックスは、新製品として製造されたものであり、成形品を原料として得られたものではなく、いわゆる未使用のものであり、一度でも容器や包装に成形されることにより使用されたポリオレフィン系樹脂やこれを含む容器包装リサイクル材とは異なるものである。
【0034】
非変性ポリプロピレンワックスを構成するポリプロピレンの粘度平均分子量は、5,000〜20,000が好ましく、5,000〜10,000がより好ましい。粘度平均分子量が高すぎるポリプロピレンからなる非変性ポリプロピレンワックスは、ポリオレフィン系樹脂との相溶性が低いだけでなく、第一熱可塑性樹脂の溶融時の流動性を十分に向上させることができない恐れがある。また、粘度平均分子量が低すぎるポリプロピレンからなる非変性ポリプロピレンワックスは得られたコンテナの表面にブリードアウトする恐れがある。
【0035】
非変性ポリプロピレンワックスとしては、プロピレン単独重合体、プロピレン成分を50重量%以上含有してなるプロピレンと他のオレフィンとの共重合体などが挙げられる。プロピレンと他のオレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、及び1−デセンなどのα−オレフィンなどが挙げられる。プロピレンと他のモノマーとの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体の何れであってもよい。
【0036】
なかでも、非変性ポリプロピレンワックスとしては、プロピレンとエチレンとの共重合体が好ましく挙げられる。プロピレンとエチレンとの共重合体によれば、第一熱可塑性樹脂の溶融時の流動性を高く向上させることができる。
【0037】
非変性ポリプロピレンワックスは、ポリオレフィン系樹脂と塩素含有樹脂の総量100重量部に対して、好ましくは1〜10重量部、より好ましくは3〜10重量部、特に好ましくは3〜6重量部用いられる。このような量で非変性ポリプロピレンワックスを用いることにより、機械的強度に優れるコンテナを提供することができ、且つ溶融時の流動性にも優れる第一熱可塑性樹脂を得ることができる。
【0038】
非変性ポリプロピレンワックスの軟化点は、140〜160℃が好ましく、148〜158℃がより好ましい。非変性ポリプロピレンワックスの軟化点が高過ぎると第一熱可塑性樹脂の溶融時の流動性を十分に向上させることができない恐れがある。また、非変性ポリプロピレンワックスの軟化点が低過ぎると、コンテナの表面に上記ワックスがブリードアウトする恐れがある。
【0039】
なお、非変性ポリプロピレンワックスの軟化点は、JIS K2207に準拠して測定した値とする。
【0040】
非変性ポリプロピレンワックスは、好ましくは、チーグラー触媒を用いて製造された重量平均分子量が50,000〜150,000の高分子量のポリプロピレンを不活性ガス中、300〜450℃で熱分解させることにより得られる。熱分解により得られた非変性ポリプロピレンワックスによれば、溶融時の流動性に優れ、得られるコンテナの機械的強度を向上させることができる第一熱可塑性樹脂を提供できる。この他にも、非変性ポリプロピレンワックスとしては、メタロセン触媒を用いて製造されたメタロセン系ポリプロピレンワックスなども用いられる。従来では、非変性ポリプロピレンワックスは、一般的には、静電複写用のトナー材料、紙質向上剤、インキ用耐磨耗性向上剤、ホットメルト粘着剤用添加物などとして用いられており、本発明のように第一熱可塑性樹脂の溶融時の流動性を向上させるためには用いられていない。
【0041】
上述した非変性ポリプロピレンワックスは、市販品を用いることができ、例えば、三洋化成工業株式会社製の(製品名)ビスコール330−P、ビスコール550−P、ビスコール660−P、三井化学株式会社製の(製品名)三井ハイワックスNP055、三井ハイワックスNP105、三井ハイワックスNP805、ヘキスト社製造の(製品名)ヘキストワックスPP230などが挙げられる。
【0042】
上記スキン層5は第二熱可塑性樹脂から構成されている。第二熱可塑性樹脂は、新製品として製造されたものであっても、成形品を原料として得られたものであってもよいが、射出成形に適切な熱可塑性樹脂を選択できることから、新製品として製造されたものであることが好ましい。
【0043】
上述の新製品として製造された第二熱可塑性樹脂とは、成形品を原料として得られたものではなく、いわゆる未使用のものであり、一度でも成形品に成形されることにより使用された熱可塑性樹脂は除かれる。
【0044】
第二熱可塑性樹脂としては、従来からサンドイッチ射出成形に用いられている熱可塑性樹脂であれば、特に限定されず、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられ、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。なお、熱可塑性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。ポリオレフィン系樹脂は、上述したものと同様であるので説明を省略する。
【0045】
そして、第二熱可塑性樹脂には、第二熱可塑性樹脂が新製品として製造された場合及び成形品を原料として得られた場合の何れにおいても塩素含有樹脂を含有していないことが好ましい。このような塩素含有樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの塩素原子を分子中に含んでいる熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0046】
第二熱可塑性樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、小さいと、キャビティ内において第二熱可塑性樹脂が滞留して良好な成形品を得ることができないことがあり、大きいと、得られるコンテナにバリが発生することがあるので、5〜80g/10分が好ましく、10〜30g/10分がより好ましい。なお、第二熱可塑性樹脂のメルトフローレイトは、JIS K7210:1999に準拠して測定された値をいう。
【0047】
このように、本発明のコンテナAにおいて、周壁部2のうちの上端部21を除いた残余部分及び底面部1は、第一熱可塑性樹脂から構成されているコア部4と、このコア部4を被覆し且つ第二熱可塑性樹脂から構成されているスキン層5とから構成されており、コア部4は容器包装リサイクル材などのリサイクル原料を用いることができ、リサイクル性に優れていると共に、コア部4の剛性及び耐衝撃性の低下をコア部4を被覆しているスキン層5によって補完している。
【0048】
そして、コンテナAの使用にあたって、鍔部3や周壁部2の上端部21とは異なり、周壁部2のうちの上端部21を除いた残余部分及び底面部1にはこれらを歪ませる外力がそれ程加わるようなことはなく、コア部4をスキン層5によって被覆して剛性及び耐衝撃性の補完をすることによって、コンテナAの使用に充分耐えることができる。
【0049】
本発明のコンテナAの鍔部3及び周壁部2の上端部21はその全体が上述した第二熱可塑性樹脂から構成されており、鍔部3及び周壁部2の上端部21を除いた残余部分における上記スキン層5と同様の構成を有しており、鍔部3及び周壁部2の上端部21を除いた残余部分にあるようなコア部は存在していない。
【0050】
コンテナAの使用にあたって、コンテナAの鍔部3が把持されて持ち上げられ、この際、鍔部3及びこの鍔部3に連続している周壁部2の上端部21に歪み応力が加えられるが、これらを構成している第二熱可塑性樹脂は、上述の通り、優れた剛性及び耐衝撃性を有していることから容易に破損するようなことはなく、コンテナAを安定して使用することができる。
【0051】
次に、上記コンテナAの成形方法を説明する。コンテナAの製造方法としては、例えば、図3に示したように、金型6のキャビティ7内に、コンテナAの底面部1、好ましくはコンテナAの底面部1の中央部を形成する部分に通じるゲート口を通じて、鍔部3及び周壁部2の上端部21を除く残余部分のスキン層5、並びに、鍔部3及び周壁部2の上端部21を構成する第二熱可塑性樹脂T2を射出した後に、上記キャビティ7内に上記ゲート口を通じて、鍔部3及び周壁部2の上端部21を除く残余部分のコア部4を構成する第一熱可塑性樹脂T1を射出して、上記第二熱可塑性樹脂T2及び上記第一熱可塑性樹脂T1を上記キャビティ7内にて層状に流動させてコンテナAを成形することができる。この成形工程において、第一熱可塑性樹脂T1は、金型6のキャビティ7内において第二熱可塑性樹脂T2に被覆された状態で流動する。第二熱可塑性樹脂T2に塩素含有樹脂が含有されていない場合には、塩素含有樹脂が金型に接触することはなく、塩素含有樹脂が金型に接触することによって塩素含有樹脂が分解して生じる塩素により金型が腐食という問題を防止することができる。なお、金型6のキャビティ7は、図3に示したように、コンテナAの底面部1を成形する底面部形成部71と、この底面部形成部71の外周縁部に連続し且つ周壁部2を成形する周壁部形成部72と、この周壁部形成部72の上端部に連続し且つ鍔部3を成形する鍔部形成部73とを有している。
【0052】
コンテナAの製造方法では、汎用のサンドイッチ射出成形機が用いられる。サンドイッチ射出成形機としては、例えば、同一の金型に二機の押出機を接続し、これらの押出機から別々に熱可塑性樹脂を金型のキャビティ内に射出充填できるように構成されてなるサンドイッチ射出成形機が挙げられる。
【0053】
具体的には、先ず、第二熱可塑性樹脂をサンドイッチ射出成形機の一方の押出機に供給して溶融混練した後、押出機から金型6のキャビティ7内に、コンテナAの底面部1、好ましくはコンテナAの底面部1の中央部を形成する部分に通じるゲート口7aを通じて、第二熱可塑性樹脂T2を射出、充填する(図3参照)。この金型6のキャビティ7内には、続いて第一熱可塑性樹脂T1が他方の押出機から射出、充填されるので、第二熱可塑性樹脂T2は、キャビティ7内にこのキャビティ7内が完全に充填されない程度に射出、充填される。なお、金型6のキャビティ7内への熱可塑性樹脂の充填は、キャビティ7の底面部形成部71の中央部から行われる。
【0054】
そして、第二熱可塑性樹脂T2が、新製品として製造されたものである場合には、溶融状態において特に優れた流動性を有しており、後述するように、金型6のキャビティ7内に第一熱可塑性樹脂T1を射出、充填した時に、第二熱可塑性樹脂T2はキャビティ7内において滞留するようなことはなく、キャビティ7の形状に沿って円滑に流動してキャビティ7内に隙間なく充填され、その結果、優れた外観を有するコンテナAを得ることができる。
【0055】
次に、サンドイッチ射出成形機の他方の押出機に第一熱可塑性樹脂T1を供給して溶融混練した後、既に第二熱可塑性樹脂T2が充填されている金型6のキャビティ7内に上記ゲート口を通じて第一熱可塑性樹脂T1を押出機から射出、充填する(図4参照)。
【0056】
すると、第一熱可塑性樹脂T1のキャビティ7内への射出、充填に伴って第二熱可塑性樹脂T2はキャビティ7内に押し込まれるが、上述の通り、第二熱可塑性樹脂T2は溶融状態において流動性に優れているのでキャビティ7内において滞留することなくキャビティ7の形状に沿って流動してキャビティ7内の隙間を埋めることができると共に、第二熱可塑性樹脂T2は第一熱可塑性樹脂T1と殆ど混じることはなく、第一熱可塑性樹脂T1と第二熱可塑性樹脂T2とは互いに層状を形成しながら流動する(図4、5参照)。
【0057】
そして、第一熱可塑性樹脂T1は、上述の通り、流動性が比較的悪いことから、金型6のキャビティ7内の全体に行き渡ることはなく、キャビティ7の底面部形成部71には全体的に行き渡るものの、周壁部形成部72の上端部までは十分に行き渡ることができず、キャビティ7の周壁部形成部72の上端部及び鍔部形成部73には第二熱可塑性樹脂T2のみが充填された状態となる。一方、キャビティ7の周壁部形成部72の上端部及び鍔部形成部73以外を除いたキャビティの残余部分は、第一熱可塑性樹脂T1及び第二熱可塑性樹脂T2によって充填されていると共に、第一熱可塑性樹脂T1は第二熱可塑性樹脂T2によって被覆された状態となっており、第一熱可塑性樹脂T1によってコア部4が形成され且つ第二熱可塑性樹脂T2によってコア部4を被覆しているスキン層5が形成されている。
【0058】
更に、第一熱可塑性樹脂T1は流動性が比較的悪いものの、第一熱可塑性樹脂T1は、キャビティ7内において第二熱可塑性樹脂T2に被覆された状態となっているので、コンテナAのコア部4を構成し外部から視認されず、コンテナAの外観に影響を及ぼすことはなく、よって、リサイクルを図りながら、外観に優れたコンテナAを容易に製造することができる。
【0059】
このようにして成形されたコンテナAは、その鍔部3及び周壁部2の上端部21にはコア部が形成されておらず、第二熱可塑性樹脂T2のみから構成されており、鍔部3及び周壁部2の上端部21は優れた剛性及び耐衝撃性を有しており、コンテナAの使用にあたって、鍔部3及び周壁部2の上端部21に歪み応力が加えられた場合にあっても破損するようなことはなく、コンテナAに所望物品を収納した上で安定的に用いることができる。
【0060】
そして、コンテナAは、その鍔部3及び周壁部2の上端部21を除いた残余部分において、コア部に容器包装リサイクル材などのリサイクル原料を用いることができてリサイクル性に優れていると共に、コア部4をスキン層5によって被覆してコア部4の剛性及び耐衝撃性の不足をスキン層5が補完して全体的にコンテナとして必要な剛性及び耐衝撃性を備えており、よって、コンテナAは、リサイクル性に優れていると共に全体としてコンテナに必要な剛性及び耐衝撃性を備えている。
【実施例】
【0061】
次に本発明の実施例を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0062】
(実施例1)
同一の金型6に二機の押出機が接続されてなるサンドイッチ射出成形機を用意した。金型6のキャビティ7は、図3に示したように、コンテナAの底面部1を成形する平面長方形状の底面部形成部71と、この底面部形成部71の外周縁部に連続し且つ周壁部2を成形する断面四角枠状の周壁部形成部72と、この周壁部形成部72の上端部に連続し且つ鍔部3を成形する四角枠状の鍔部形成部73とを有している。キャビティ7には、熱可塑性樹脂をキャビティ7内に射出、充填するためのゲート口7aが底面部形成部71の中央部に形成されており、このゲート口7aからキャビティ7内に熱可塑性樹脂が射出、充填可能に構成されていた。
【0063】
第二熱可塑性樹脂として、新製品として製造され且つ塩素含有樹脂を含有しないポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ社製 商品名「BC3LS」、メルトフローレイト:10g/10分)100重量部をサンドイッチ射出成形機の一方の押出機に供給して溶融混練し、第二熱可塑性樹脂T2を金型6のキャビティ7内にゲート口7aを通じて射出し充填した。なお、射出条件は、押出機内の樹脂温度220℃、金型6の温度30℃、射出速度50mm/秒、射出圧力100MPa及び射出時間4秒であった。
【0064】
次に、第一熱可塑性樹脂として容器包装リサイクル材(メルトフローレイト:1.7g/10分、組成:ポリエチレン系樹脂55重量%、ポリプロピレン系樹脂43重量%、ポリ塩化ビニル0.3重量%、及び不可避的不純物1.7重量%)30重量部をサンドイッチ射出成形機の他方の押出機に供給して溶融混練し、第一熱可塑性樹脂T1を金型6のキャビティ7内にゲート口7aを通じて射出し充填した。なお、射出条件は、押出機内の樹脂温度220℃、金型6の温度30℃、射出速度50mm/秒、射出圧力100MPa及び射出時間4秒であった。
【0065】
すると、金型6のキャビティ7内において、先に充填されていた第二熱可塑性樹脂T2は、後続してキャビティ7内に射出、充填された第一熱可塑性樹脂T1の射出、充填圧力によってキャビティ7内に押し込まれてキャビティ7内をその形状に沿って流動してキャビティ7内を隙間なく埋めると共に、第一熱可塑性樹脂T1は第二熱可塑性樹脂T2に全体的に被覆された状態でキャビティ7内を流動し、金型6のキャビティ7内は第二熱可塑性樹脂T2と第一熱可塑性樹脂T1とが層状を形成しつつ両者によって隙間なく充填された状態となった。金型6のキャビティ7内において、第一熱可塑性樹脂T1は第二熱可塑性樹脂T2によって全面的に被覆された状態で流動していた。
【0066】
しかる後、金型6内において第二熱可塑性樹脂T2及び第一熱可塑性樹脂T1を冷却、固化させることによって、平面長方形状の底面部1と、この底面部1の外周縁部から上方に向かって延設されてなる周壁部2と、この周壁部2の上端から外方に向かって延設された鍔部3とを有するコンテナAを得た。
【0067】
得られたコンテナAにおいて、鍔部3及び周壁部2の上端部21は第二熱可塑性樹脂T2のみから構成されていると共に、鍔部3及び周壁部2の上端部21を除いた残余部分は、第一熱可塑性樹脂から構成されたコア部4と、このコア部4をゲート口7aに対応する部分を除いて全面的に被覆しているスキン層5とから構成されていた。
【0068】
(比較例1)
金型6に押出機が接続されてなる射出成形機を用意した。容器包装リサイクル材(メルトフローレイト1.7g/10分、組成:ポリエチレン系樹脂55重量%、ポリプロピレン系樹脂43重量%、ポリ塩化ビニル0.3重量%、及び不可避的不純物1.7重量%)を射出成形機の押出機に供給して溶融混練し、容器包装リサイクル材を金型のキャビティ内に射出して充填し、金型を冷却して容器包装リサイクル材からなるコンテナを製造しようとしたが、容器包装リサイクル材がキャビティ内において滞留してコンテナを得ることができなかった。なお、射出条件は、押出機内の樹脂温度220℃、金型6の温度30℃、射出速度50mm/秒、射出圧力100MPa及び射出時間4秒とした。
【符号の説明】
【0069】
1 底面部
2 周壁部
21 上端部
3 鍔部
4 コア部
5 スキン層
6 金型
7 キャビティ
7a ゲート口
71 底面部形成部
72 周壁部形成部
73 鍔部形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面部とこの底面部の外周縁部から上方に向かって延設された周壁部と、この周壁部から外方に向かって延設された鍔部とを有するコンテナにおいて、上記鍔部及び上記周壁部の上端部を除いた残余部分は、少なくとも一種のポリオレフィン系樹脂と0.01〜3.0重量%の塩素含有樹脂とを含む第一熱可塑性樹脂から構成されているコア部と、このコア部を被覆し且つ第二熱可塑性樹脂からなるスキン層とから構成されている一方、上記鍔部及び上記周壁部の上端部は上記第二熱可塑性樹脂から構成されていることを特徴とするコンテナ。
【請求項2】
第二熱可塑性樹脂は塩素含有樹脂を含有していないことを特徴とする請求項1に記載のコンテナ。
【請求項3】
金型のキャビティ内に第一熱可塑性樹脂及び第二熱可塑性樹脂を射出して成形するコンテナの射出成形方法において、上記キャビティは、上記コンテナの底面部を成形する底面部形成部と、この底面部形成部の外周縁部に連続し且つ周壁部を成形する周壁部形成部と、この周壁部形成部の上端部に連続し且つ鍔部を成形する鍔部形成部とを有しており、上記キャビティ内にその底面部形成部に通じるゲート口を通じて上記第二熱可塑性樹脂を射出した後に、上記キャビティ内に上記ゲート口を通じて、少なくとも一種のポリオレフィン系樹脂と0.01〜3.0重量%の塩素含有樹脂とを含む第一熱可塑性樹脂を射出して、上記第一熱可塑性樹脂及び上記第二熱可塑性樹脂を上記第一熱可塑性樹脂が上記第二熱可塑性樹脂によって被覆された状態にて上記キャビティ内を流動させ、上記鍔部形成部及びこれに接続している上記周壁部形成部の端部を上記第二熱可塑性樹脂によって充填すると共に、上記鍔部形成部及びこれに接続している上記周壁部形成部の端部を除いたキャビティの残余部分を、上記第一熱可塑性樹脂及び上記第二熱可塑性樹脂によって第一熱可塑性樹脂が第二熱可塑性樹脂によって被覆された状態に充填することを特徴とするコンテナの射出成形方法。
【請求項4】
第二熱可塑性樹脂は塩素含有樹脂を含有していないことを特徴とする請求項3に記載のコンテナの射出成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−23266(P2013−23266A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161184(P2011−161184)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(390033112)積水テクノ成型株式会社 (48)
【Fターム(参考)】