説明

コンテナ用洗浄剤組成物およびそれを用いた洗浄方法

【課題】 飲料食品等の各種食品製造工場内の作業時に用いられるコンテナ、および流通における飲料食品等の搬送時に用いられるコンテナの洗浄において、スケール付着抑制性能、洗浄性能、貯蔵安定性能およびアルミニウムの腐食抑制性能に優れたコンテナ用洗浄剤組成物およびそれを用いた洗浄方法を提供する。
【解決手段】 (a)水酸化アルカリ金属塩、(b)脂肪族カルボン酸、(c)金属イオン封鎖剤、(d)界面活性剤、(e)高分子ポリマーおよび(f)水を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビール工場、醸造工場、ジュースや清涼飲料等の飲料工場、牛乳工場、冷凍食品、レトルト食品、調味料やマヨネーズ等(以下、これらを総称して「飲料食品等」という。)の各種食品製造工場内の作業時に用いられるコンテナ、および流通における飲料食品等の搬送時に用いられるコンテナの洗浄に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンテナ用洗浄剤としては、例えば、プラスチックコンテナ表面に強固に付着すす黒ずみ汚れを浸漬或いは自動洗浄機によって除去するための界面活性剤、塩素系又は酸素系の漂白剤を主成分としたプラスチックコンテナ表面洗浄用洗浄剤組成物が特開2005−23120号公報に開示されている(特許文献1を参照)。
【0003】
また、脂肪族カルボン酸を用いた洗浄剤組成物としては、例えば、HLBが4〜18のノニオン系界面活性剤、炭素数4〜11の脂肪族モノカルボン酸塩及び/又は芳香族モノカルボン酸塩、無機又は有機アルカリビルダー及び水とからなることを特徴とする普通鋼冷延鋼板の鉱物油汚れに対する水溶性液体洗浄剤組成物が、特開平5−222397号公報に開示されている(特許文献2を参照)。
【0004】
さらに、アルミニウム等の軽金属硬表面の洗浄に適した洗浄剤組成物としては、例えば、水酸化アルカリ金属化合物を主成分とし、カルシウム化合物(好ましくは水溶性カルシウム化合物)およびポリカルボン酸またはそのアルカリ金属塩の二成分を含有し、さらに必要に応じて界面活性剤を含有してなり、前記二成分の合計含有量が水酸化アルカリ金属化合物100重量部に対して0.01〜30重量部であり、かつ、前記二成分の含有比率がカルシウム化合物と、ポリカルボン酸またはそのアルカリ金属塩との重量比が、1:10〜5:1(重量部)である、アルミニウム等、軽金属硬表面の洗浄に適した高アルカリ洗浄剤組成物であつて、特に、高アルカリ性であつて、珪酸塩を含まないにもかかわらず、軽金属硬表面の防食効果を有する洗浄剤組成物が、特開2004−51761号公報に開示されている(特許文献3を参照)。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のプラスチックコンテナ表面洗浄用洗浄剤組成物は、塩素系または酸素系の漂白剤を含有するものであるため、アルミニウム等の金属に対して腐食や変色を起こしてしまうという問題を有している。また、上記特許文献2の水溶性液体洗浄剤組成物は、普通鋼冷延鋼板の鉱物油汚れに対するものであって、本件発明との技術的課題や技術的思想等を異にするものである。そして、特許文献3の防食効果を有する洗浄剤組成物では、カルシウム化合物とポリカルボン酸またはそのアルカリ金属塩とを特定比率で含有することにより軽金属硬表面の防食効果を発現させるものであるが、カルシウム化合物を含有するために、硬水下での使用におけるスケール付着抑制にやや問題を残すものとなっていた。
【0006】
【特許文献1】特開2005−23120号公報
【特許文献2】特開平5−222397号公報
【特許文献3】特開2004−51761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
こうした問題を解決し、ビール工場、醸造工場、ジュースや清涼飲料等の飲料工場、牛乳工場、冷凍食品、レトルト食品、調味料やマヨネーズ等(飲料食品等)の各種食品製造工場内の作業時に用いられるコンテナ、および流通における飲料食品等の搬送時に用いられるコンテナ洗浄剤組成物およびそれを用いた洗浄方法が要望されている。
【0008】
このため、洗浄工程およびすすぎ工程におけるスケールの析出および付着を防止し、優れた洗浄力と貯蔵安定性を有するとともにアルミニウムの腐食抑制効果を有するコンテナ用洗浄剤組成物およびそれを用いた洗浄方法の提供を目的とする。
【0009】
本発明のコンテナ用洗浄剤組成物は、このような事情に鑑みなされたもので、ビール工場、醸造工場、ジュースや清涼飲料等の飲料工場、牛乳工場、冷凍食品・レトルト食品、調味料やマヨネーズ等(飲料食品等)の各種食品製造工場内の作業時に用いられるコンテナ、および流通における飲料食品等の搬送時に用いられるコンテナの洗浄に用いられる。
【0010】
なかでも、コンテナ用洗浄機を用いたプラスチック製および金属製のコンテナの洗浄に用いるのに適している。「プラスチック製」としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、フェノール樹脂等がのプラスチック材質が挙げられ、また「金属製」としては、アルミニウム、ステンレス等の金属材質が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明は、(a)水酸化アルカリ金属塩、(b)脂肪族カルボン酸、(c)金属イオン封鎖剤、(d)界面活性剤、(e)高分子ポリマーおよび(f)水を含有するコンテナ用洗浄剤組成物を第1の要旨とする。
【0012】
上記(b)成分の脂肪族カルボン酸が、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸およびデカン酸から選ばれる少なくとも一種であるコンテナ用洗浄剤組成物を第2の要旨とし、また、上記(c)成分の金属イオン封鎖剤が、アミノポリカルボン酸およびその塩から選ばれる少なくとも一種であるコンテナ用洗浄剤組成物を第3の要旨とする。
【0013】
そして、上記(d)成分の界面活性剤が非イオン界面活性剤であるコンテナ用洗浄剤組成物を第4の要旨とし、なかでも、上記非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体から選ばれる少なくとも一種であるコンテナ用洗浄剤組成物を第5の要旨とする。
【0014】
また、上記(e)成分の高分子ポリマーが、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリアクリル酸アルカリ金属塩、ポリマレイン酸アルカリ金属塩、アクリル酸マレイン酸共重合体、およびアクリル酸マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも一種であるコンテナ用洗浄剤組成物を第6の要旨とする。
【0015】
そしてまた、上記要旨1〜6のいずれかに記載のコンテナ用洗浄剤組成物を水または湯にて0.05〜1質量%濃度に希釈した洗浄剤水溶液を用いたコンテナの洗浄方法を第7の要旨とする。さらに、自動洗浄機を用いる上記コンテナの洗浄方法を第8の要旨とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のコンテナ用洗浄剤組成物(以下、「洗浄剤組成物」ということもある。)は、飲料食品等の各種食品製造工場内の作業時に用いられるコンテナ、および流通における飲料食品等の搬送時に用いられるコンテナの洗浄における洗浄工程およびすすぎ工程において、スケールの析出および付着を防止し、優れた洗浄力と貯蔵安定性を有するとともにアルミニウムの腐食抑制効果を有するコンテナ用洗浄剤組成物およびそれを用いた洗浄を効果的におこなうことができる。また、コンテナ用洗浄機を用いたコンテナの洗浄に好適に用いることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0018】
まず、本発明の洗浄剤組成物に用いられる(a)成分である水酸化アルカリ金属塩としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属塩が挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの水酸化アルカリ金属塩としては、市販のフレーク状、パール状、ミクロパール状および液状(通常48質量%品)のものを用いることができる。
【0019】
これら(a)成分の水酸化アルカリ金属塩の配合割合は、洗浄剤組成物中に2〜25質量%に設定される。すなわち、2質量%未満では、良好な洗浄性能が得られず、また、25質量%を超えると、アルミニウムの腐食抑制性能が低下するため好ましくない。そしてまた、貯蔵安定性と経済性の点から水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとを組み合わせて用いることが好ましい。
【0020】
本発明の洗浄剤組成物に用いられる(b)成分である脂肪族カルボン酸としては、ペンタン酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸(ペラルゴン酸)、デカン酸、2−ブチル−5−メチルペンタン酸、2−イソブチル−5−メチルペンタン酸、4,6−ジメチルペンタン酸、2,3−ジメチルオクタン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ヘキセン酸、ヘプテン酸、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、メチルペンテン酸、メチルヘキセン酸、メチレンヘキセン酸、3,4−ジメチル−3−ペンテン酸、2−メチル−2−ヘプテン酸、3−メチル−2−ノネン酸、2−ヘキシン酸、ヘプチン酸、オクチン酸、2−ノニン酸、2−デシン酸等およびこれらの塩が挙げられる。
なかでも、貯蔵安定性の点から、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸およびデカン酸が好ましい。
【0021】
そして、上記(b)成分である脂肪族カルボン酸は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、その配合割合は、洗浄剤組成物中に1〜10質量%に設定される。すなわち、1質量%未満では、所望の貯蔵安定性が得られず、また、10質量%を超えると、さらなる貯蔵安定性の向上は得られず、また、経済的にも好ましくない。
【0022】
本発明の洗浄剤組成物に用いられる(c)成分の金属イオン封鎖剤としては、クエン酸,リンゴ酸,コハク酸,グルコン酸,酒石酸,フマル酸等の有機酸およびこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、若しくはアルカノールアミン塩等のヒドロキシカルボン酸化合物があげられる。
また、アミノカルボン酸化合物としては、ニトリロ三酢酸,グルタミン酸−N,N−ジ酢酸,ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸,エチレンジアミン四酢酸,プロピレンジアミン四酢酸,ジエチレントリアミン五酢酸,グリコールエーテルジアミン四酢酸,トリエチレンテトラミン六酢酸,ビス(2−ヒドロキシフェニル酢酸)エチレンジアミン,ジエンコル酸,イミノジ酢酸,ヒドロキシエチルイミノジ酢酸等のアミノポリ酢酸およびこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、若しくはアルカノールアミン塩等があげられる。
【0023】
さらに、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタンヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸等のホスホン酸化合物、またはこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩もしくはアルカノールアミン塩、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸等のホスホノカルボン酸化合物、またはこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩もしくはアルカノールアミン塩等があげられる。
【0024】
なかでも、スケール防止性能、洗浄性能の点から、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、グルタミン酸−N,N−二酢酸四ナトリウムを用いることが好適である。
【0025】
そして、上記(c)成分である金属イオン封鎖剤は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、その配合割合は、洗浄剤組成物中に2〜20質量%に設定される。すなわち、2質量%未満では、所望のスケール防止性能および洗浄性能が得られず、また、20質量%を超えると、他の成分とのバランスから、さらなる洗浄性能の向上は得られず、また、経済的にも好ましくない。
【0026】
本発明の洗浄剤組成物に用いられる(d)成分である界面活性剤としては、この界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。陰イオン界面活性剤としては、洗浄に用いられる水に含まれるカルシウムと反応して水難溶性の塩を生成しにくく、また比較的沈殿され難いものが好ましく、具体的には、パラフインスルホネート等のスルホン酸塩、高級アルキルエーテルサルフェート等の硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、あるいはリン酸エステル等が挙げられる。また、非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、アルキルアミンオキサイド、アルキルポリグリコシド等が挙げられる。そして、両性界面活性剤としては、具体的にはアルキルカルボキシベタイン、アルキルスルホベタイン等が挙げられる。
【0027】
また、上記(d)成分である界面活性剤は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、なかでも、特に非イオン界面活性剤が好ましく、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテルおよびポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体を好ましく用いることができる。また、その配合割合は、洗浄剤組成物中に0.3〜6質量%に設定される。すなわち、0.3質量%未満では、所望の洗浄性能が得られず、また、6質量%を超えると、他の成分とのバランスから、さらなる洗浄性能の向上は得られず、また、経済的にも好ましくない。
【0028】
本発明の洗浄剤組成物に用いられる(e)成分である高分子ポリマーとしては、ポリアクリル酸,ポリアコニット酸,ポリイタコン酸,ポリシトラコン酸,ポリフマル酸,ポリマレイン酸,ポリメタコン酸,ポリ−α−ヒドロキシアクリル酸,ポリビニルホスホン酸,スルホン化ポリマレイン酸,アクリル酸マレイン酸共重合体,マレイン酸ジイソブチレン共重合体,マレイン酸スチレン共重合体,マレイン酸メチルビニルエーテル共重合体,マレイン酸エチレン共重合体,マレイン酸イソアミレン共重合体,マレイン酸エチレンクロスリンク共重合体,マレイン酸酢酸ビニル共重合体,マレイン酸アクリロニトリル共重合体,マレイン酸アクリル酸エステル共重合体,マレイン酸ブタジエン共重合体,マレイン酸イソプレン共重合体,無水マレイン酸と一酸化炭素から誘導されるポリ−β−ケトカルボン酸,イタコン酸エチレン共重合体,イタコン酸アコニット酸共重合体,イタコン酸マレイン酸共重合体,イタコン酸アクリル酸共重合体,マロン酸メチレン共重合体,イタコン酸フマール酸共重合体,エチレングリコールエチレンテレフタレート共重合体,ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体等、およびこれらのアルカリ金属塩等があげられる。なお、これらのアルカリ金属塩は部分中和物であっても完全中和物であってもよい。
【0029】
本発明においては、このうち、他の成分とのバランスや貯蔵安定性の点から、ポリアクリル酸および/またはポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸マレイン酸共重合体のナトリウム塩が好ましく、なかでも、平均分子量が1,200〜15,000のポリアクリル酸および/またはポリアクリル酸ナトリウム、平均分子量が3,000〜80,000のアクリル酸マレイン酸共重合体のナトリウム塩が特に好ましく使用できる。
【0030】
また、上記(e)成分である高分子ポリマーは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、その配合割合は、洗浄剤組成物中に1〜15質量%に設定される。すなわち、1質量%未満では、所望の貯蔵安定性能、スケール防止性能およびアルミニウム腐食抑制性能が得られず、また、15質量%を超えて配合しても、他の成分とのバランスから、さらなる貯蔵安定性能や洗浄性能の向上は得られず、また、経済的にも好ましくない。
【0031】
本発明の洗浄剤組成物に用いられる(f)成分である水としては、純水、イオン交換水、軟水、蒸留水、水道水等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、「水」は、本発明の洗浄剤組成物を構成する各成分に由来する結晶水や水溶液の形で含まれる水と、その他の外から加えられる水との総和であり、組成物全体が100質量%となるよう配合される。
【0032】
本発明の洗浄剤組成物においては、積極的に可溶化剤としてのクメンスルホン酸ナトリウム、メタキシレンスルホン酸ナトリウムや、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、アルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリコールエーテル等の水溶性溶剤を配合しなくとも、−10℃の低温においても貯蔵安定性(低温安定性)に優れたものとなっているという点にも特徴を有している。
【0033】
本発明の洗浄剤組成物には、任意成分として、染料、顔料、香料、可溶化剤、腐食抑制剤、防腐剤等を含有してもよい。
【0034】
本発明の洗浄剤組成物は、スケールの析出および付着を防止し、優れた洗浄力と貯蔵安定性を有するとともにアルミニウムの腐食抑制効果に優れているので、ビール工場、醸造工場、ジュースや清涼飲料等の飲料工場、牛乳工場、冷凍食品・レトルト食品、調味料やマヨネーズ等(飲料食品等)の各種食品製造工場内の作業時に用いられるコンテナ、および流通における飲料食品等の搬送時に用いられるコンテナの洗浄に用いるのに好適である。
【0035】
本発明の洗浄方法では、汚れの種類や汚れ度合いに応じて、上記洗浄剤組成物を水または湯にて0.05〜1質量%濃度に希釈した洗浄剤水溶液を用いて各種コンテナを洗浄する方法である。
詳しくは、予めシンクや浸漬槽に調整した洗浄剤水溶液に浸漬する方法、ブラシやスポンジ等を用いて擦り洗いする方法や、高圧洗浄機によるスプレー洗浄する方法などの洗浄方法をとることができる。また、作業性や経済性の点からコンテナ用洗浄機を用いた洗浄方法をとることができる。なお、上記シンクや浸漬槽には、洗浄剤水溶液に水流を起こさせるためにエアーを吹き込んだり、ポンプによる水流を与えてもよいし、また、洗浄効率を高める目的で超音波振動装置を付設してもよい。なかでも、本発明の洗浄剤組成物は低泡性を兼ね備えているため、コンテナ用自動洗浄機を用いた洗浄方法においても、好適に使用することができ、安定した被洗浄物(コンテナ)の仕上がりが得られ、また、作業効率の高い洗浄方法を提供することができる。
【実施例】
【0036】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0037】
後記の表1〜表6に示す組成(各表の数値の単位は質量%であり、以下、「%」と略すことがある。)実施例1〜15および比較例1〜11の供試洗浄剤組成物を調製し、そのスケール付着抑制性能、洗浄性能、貯蔵安定性能およびアルミニウムの腐食抑制性能の4項目について試験し、評価した。その結果を後記の表1〜表6に併せて示す。なお、各項目の試験方法、評価方法は、以下に示すとおりである。
また、表中の「水」は、洗浄剤組成物を構成する各種成分に由来する結晶水や水溶液の形で含まれる水と外から加えられる水との総和であり、洗浄剤組成物全体が100%となるようバランスとして示される。
【0038】
なお、後記の表1〜表6において、用いた各種成分とその有効純分(%)の詳細は、下記の通りであり、表中の数値は、有り姿で示したものである。
【0039】
・水酸化ナトリウム(a成分)
商品名:苛性ソーダ、東ソー社製(有効成分100%)
・水酸化カリウム(a成分)
商品名:苛性カリ、旭硝子社製(有効成分100%)
【0040】
・2−エチルヘキサン酸(b成分)
商品名:オクチル酸、協和発酵社製(有効成分100%)
・ヘキサン酸(b成分)
商品名:n−カプロン酸、協和発酵社製(有効成分100%)
・ヘプタン酸(b成分)
商品名:n−ヘプタン酸、和光純薬工業社製(有効成分100%)
・3,5,5−トリメチルヘキサン酸(b成分)
商品名:3,5,5−トリメチルヘキサン酸、和光純薬工業社製(有効成分100%)
・デカン酸(b成分)
商品名:デカン酸、和光純薬工業社製(有効成分100%)
【0041】
・ニトリロ三酢酸三ナトリウム(c成分)
商品名:トリロンA92R、BASF社製(有効成分92%)
・エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(c成分)
商品名:EDTA液、昭和電工社製(有効成分38%)
・グルタミン酸−N,N−二酢酸四ナトリウム(c成分)
商品名:GLDA−4Na−R、昭和電工社製(有効成分40%)
【0042】
・界面活性剤1(d成分)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル
商品名:プルラファックLF403、BASF社製(有効成分100%)
・界面活性剤2(d成分)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル
商品名:ブラウノンEL−1303、青木油脂社製(有効成分100%)
・界面活性剤3(d成分)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体
商品名:アデカプルロニックL62、旭電化工業社製(有効成分100%)
・界面活性剤4(d成分)
ポリオキシエチレンアルキルフェニエーテル(炭素数9、EO付加モル数8モル)
商品名:アデカトールNP683、旭電化工業社製(有効成分100%)
・界面活性剤5(d成分)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル
商品名:セドランLF109、三洋化成工業社製(有効成分100%)
【0043】
・ポリアクリル酸ナトリウム−1(e成分)
商品名:アクアリックDL−40S、日本触媒社製(有効成分44%、分子量5,000)
・ポリアクリル酸ナトリウム−2(e成分)
商品名:ソカランPA40、BASF社製(有効成分40%、分子量15,000)
・アクリル酸マレイン酸共重合体−1(e成分)
商品名:ソカランCP12S、BASF社製(有効成分50%、分子量3,000)
・アクリル酸マレイン酸共重合体のナトリウム塩−2(e成分)
商品名:ソカランCP45、BASF社製(有効成分45%、分子量70,000)
【0044】
・ スケール付着抑制性能試験
〔試験方法〕
供試洗浄剤組成物をイオン交換水で希釈した0.2質量%の洗浄剤水溶液100mlを、100ml容量のガラス瓶に入れる。これらに塩化カルシウム111mg(Ca2+として40mg/g)と、炭酸水素ナトリウム165mg(HCO3−として60mg/g)を加え、60℃の恒温器に静置する。そして、静置24時間後におけるガラス瓶の内壁に付着したスケールの付着度合いを以下の基準により評価した。また、上記0.2質量%洗浄剤水溶液を100倍に希釈した(0.002質量%)洗浄剤水溶液についても同様に操作し、評価した。
〔評価基準〕
評価基準は、
◎:付着が認められない。
○:ごく微量の付着が認められる。
△:はっきりと付着が認められる。
×:著しい付着が認められる。
とし、評価基準が、◎および○を実用性のあるものと判断する。
【0045】
・ 洗浄性能試験
〔試験方法〕
ステンレス片(5cm×8cm)に、油脂汚れ(JIS−K3362:1998−9.2のモデル汚れ)を500mg/枚で付着させ、25℃で18時間、乾燥させたものをテストピースとした。
供試洗浄剤組成物をイオン交換水で希釈した0.2質量%洗浄剤水溶液300ml(60℃)を、300ml容量のビーカーに入れた。このビーカーに上記テストピースを10分間浸漬した後、流水ですすぎ、自然乾燥させる。
その後、洗浄前と洗浄後における重量変化に基づき、次式から洗浄効率(%)を算出し、以下の基準により評価した。
洗浄効率(%)=〔洗浄前の重量(g)−洗浄後の重量(g)〕/〔洗浄前の重量(g)−清浄なステンレス片の重量(g)〕×100
〔評価基準〕
評価基準は、
◎:90%以上除去された
○:70%以上、90%未満除去された
△:50%以上、70%未満除去された
×:50%未満除去された
とし、評価基準が、◎および○を実用性のあるものと判断する。
【0046】
・ 貯蔵安定性能試験
〔試験方法〕
供試洗浄剤組成物について、貯蔵安定性能試験を次のようにして行った。
250ml容量のポリエチレン製容器に、供試洗浄剤組成物200mlを入れて、−10℃、−5℃および50℃に設定されたそれぞれのインキュベーターに、1週間配置後の沈殿、濁りおよび凍結の有無について、以下の基準により評価した。
〔評価基準〕
◎:−10℃、−5℃および50℃にて、沈殿、濁りおよび凍結なし
○:−5℃および50℃にて、沈殿、濁りおよび凍結なし
×:−5℃あるいは50℃にて、沈殿、濁りおよび凍結が認められる
とし、評価基準が◎および○を実用性のあるものと判断する。
【0047】
・ アルミニウムの腐食抑制性能試験
〔試験方法〕
供試洗浄剤組成物をイオン交換水で希釈した0.2質量%の洗浄剤水溶液100ml(60℃)を、100ml容量のビーカーに入れた。このビーカーに、表面清浄なアルミニウム合金板(JIS:6063/大きさ:4cm×5cm/質量:1.6g)を24時間浸漬し、流水ですすぎ、自然乾燥させた後、浸漬前と浸漬後との質量変化(減少)を計量し、以下の評価基準により評価した。
〔評価基準〕
評価基準は、
◎:2mg未満の質量減少であった。
○:2mg以上、8mg未満の質量減少があった。
△:8mg以上、40mg未満の質量減少があった。
×:40mg以上の質量減少があった。
とし、評価基準が、◎および○を実用性のあるものと判断する。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
【表5】

【0053】
【表6】

【0054】
表1〜6の結果より、本発明のコンテナ用洗浄剤組成物の実施例品1〜15は、いずれもが、スケール付着抑制性能、洗浄性能、貯蔵安定性能およびアルミニウムの腐食抑制性能の全ての試験項目において、優れた性能を有していることがわかる。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水酸化アルカリ金属塩、(b)脂肪族カルボン酸、(c)金属イオン封鎖剤、(d)界面活性剤、(e)高分子ポリマーおよび(f)水を含有することを特徴とするコンテナ用洗浄剤組成物。
【請求項2】
上記(b)成分の脂肪族カルボン酸が、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸およびデカン酸から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1記載のコンテナ用洗浄剤組成物。
【請求項3】
上記(c)成分の金属イオン封鎖剤が、アミノポリカルボン酸およびその塩から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1または2に記載のコンテナ用洗浄剤組成物。
【請求項4】
上記(d)成分の界面活性剤が、非イオン界面活性剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のコンテナ用洗浄剤組成物。
【請求項5】
上記非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、アルキルアミンオキサイド、アルキルポリグリコシドから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項4に記載のコンテナ用洗浄剤組成物。
【請求項6】
上記(e)成分の高分子ポリマーが、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリアクリル酸アルカリ金属塩、ポリマレイン酸アルカリ金属塩、アクリル酸マレイン酸共重合体、およびアクリル酸マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のコンテナ用洗浄剤組成物。
【請求項7】
上記請求項1〜6のいずれかに記載のコンテナ用洗浄剤組成物を水または湯にて0.05〜1質量%濃度に希釈した洗浄剤水溶液を用いることを特徴とするコンテナの洗浄方法。
【請求項8】
自動洗浄機を用いることを特徴とする請求項7に記載のコンテナの洗浄方法。


【公開番号】特開2006−335896(P2006−335896A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162914(P2005−162914)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000205683)大三工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】