説明

コンデンサおよびその製造方法

【課題】折り曲げ加工されるリード端子の曲げ応力の緩和とともに、リード端子とコンデンサ素子側との接続強度の劣化防止を図る。
【解決手段】 コンデンサ素子(4)を封止する外装部材(6)と、前記コンデンサ素子に接続されかつ前記外装部材または該外装部材に併置されたベース部材(30)から引き出され、折り曲げ加工されたリード端子(10A、10B)とを備え、前記リード端子は、偏平部(23)と、該偏平部の折り曲げ方向の面部に形成された第1の凹部(ノッチ24)と、前記折り曲げ方向と反対方向の面部に形成された第2の凹部(ノッチ26)とを備え、これら第1の凹部と第2の凹部とが前記外装部材の端子引出し面部(18)から異なった位置に設定され、第1の凹部を支点(起点)にしてリード端子(10A、10B)が折り曲げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ型コンデンサなど、外装部材から引き出されたリード端子を成形加工してチップ化されたコンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チップ型コンデンサでは、そのリード端子がフェイスボンディング用端子に成形されて提供されている。たとえば、リード端子がコンデンサの外装部材上に折り曲げられ、または外装部材に設置されたベース部材上に折り曲げられ、配線基板への面実装を可能にしている。
【0003】
このようなリード端子の折り曲げ加工に関し、特許文献1にはリード端子に切欠部や肉薄部を形成することが記載され、また、特許文献2には楔状の折り曲げ溝を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−162323号公報
【特許文献2】特開2000−21683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、リード端子の折り曲げ加工に関し、リード端子に切欠部や肉薄部(特許文献1)や、楔状の折り曲げ溝(特許文献2)を形成すれば、リード端子の折り曲げが容易化するものの、この折り曲げの内側面部には圧縮、外面面部には伸長を伴い、折り曲げられるリード端子には大きな曲げ応力を生じる。この曲げ応力は曲げられるリード端子と外装部材つまりモールド樹脂との間に作用し、リード端子と樹脂モールド(外装部材)との密着性を低下させたり、外装部材にクラックを生じさせて気密性を損なうなどの課題がある。
【0006】
また、この曲げ応力がリード端子からリード端子とコンデンサ素子との接続部(具体的にはコンデンサ素子の電極箔とリード端子との接続部)に作用すると、リード端子とコンデンサ素子との接続強度の低下や、接続抵抗の増加など、接続の信頼性が損なわれるという課題もある。
【0007】
折り曲げの容易化のために形成された楔状の折り曲げ溝がリード端子の曲げ方向と反対側にも形成された場合には(特許文献2)、リード端子の曲げ応力は低下ないし応力緩和を図ることができるものの、リード端子の折り曲げ部の脆弱化を来たし、リード端子の機械的強度や基板側導体との接続強度の低下を来すことも予想されるなどの課題がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、斯かる課題に鑑み、折り曲げ加工されるリード端子の曲げ応力の緩和とともに、リード端子とコンデンサ素子側との接続強度の劣化防止を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のコンデンサは、コンデンサ素子を封止する外装部材と、前記コンデンサ素子に接続されかつ前記外装部材または該外装部材に併置されたベース部材から引き出され、折り曲げ加工されたリード端子とを備え、前記リード端子は、折り曲げ加工前に、偏平部と、該偏平部の折り曲げ方向の面部に形成された第1の凹部と、前記折り曲げ方向と反対方向の面部に形成された第2の凹部とを備え、これら第1の凹部と第2の凹部とが前記外装部材の端子引出し面部から異なった位置に設定されている。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のコンデンサにおいて、前記第1の凹部は、前記端子引出し面部に対して前記第2の凹部より近い位置に設定されてもよい。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明のコンデンサにおいて、前記外装部材または前記ベース部材と前記リード端子の前記偏平部との間に非偏平部を備え、前記第1の凹部が非偏平部の近傍に形成されてもよい。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明のコンデンサにおいて、前記偏平部が、前記第1の凹部側に形成されているとともに、前記第1の凹部が非偏平部の近傍に形成されてもよい。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明のコンデンサにおいて、前記外装部材は、モールド樹脂であってもよい。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明のコンデンサにおいて、前記第1の凹部および前記第2の凹部は、アルミニウムからなるリード端子に形成され、該リード端子の偏平部には、金属めっき層が形成されてもよい。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明のコンデンサの製造方法は、コンデンサ素子に接続されかつ前記コンデンサ素子を覆う外装部材から引き出されたリード端子に偏平部を形成する工程と、前記リード端子の面部に第1の凹部を形成するとともに、前記第1の凹部を折り曲げ方向とし、折り曲げ方向と反対方向の面部に第2の凹部を前記外装部材または前記ベース部材の面部から異なる位置に形成する工程と、前記リード端子を前記曲げ方向に屈曲させる工程とを含んでいる。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明のコンデンサの製造方法において、前記外装部材または前記ベース部材と前記リード端子の前記偏平部との間に非偏平部を形成する工程を含んでもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のコンデンサまたはその製造方法によれば、次のいずれかの効果が得られる。
【0018】
(1) リード端子の曲げ応力を緩和できるとともに、リード端子とコンデンサ素子との接続強度の低下や、接続抵抗の増加を抑制できる。
【0019】
(2) リード端子の曲げ応力の緩和により、外装部材とリード端子との密着部分へのリード端子からの応力作用を軽減でき、外装部材とリード端子との間の気密性低下を防止できる。
【0020】
(3) リード端子の曲げ加工に伴う製品不良を抑制でき、歩留りの向上を図ることができる。
【0021】
そして、本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付図面及び各実施の形態を参照することにより、一層明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施の形態に係るコンデンサおよびそのリード端子の成形加工の一例を示す図である。
【図2】第2の実施の形態に係るコンデンサおよびそのリード端子の成形加工の一例を示す図である。
【図3】リード端子の各ノッチのバリエーションおよび成形型の一例を示す図である。
【図4】リード端子の各ノッチのバリエーションおよび機能の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1の実施の形態〕
【0024】
第1の実施の形態は、外装部材に樹脂モールドを用いたチップ型コンデンサの場合である。図1は、第1の実施の形態に係るコンデンサおよびそのリード端子の成形加工の一例を示している。図1に示す構成は一例であって、係る構成に本発明が限定されるものではない。
【0025】
図1に示すコンデンサ2はたとえば、モールドタイプのチップ型コンデンサである。このコンデンサ2では、コンデンサ素子4に封止樹脂で形成された外装部材6により外装が施され、封止されている。コンデンサ素子4はたとえば、陽極側および陰極側の電極箔の間にセパレータを挟み込んで巻回し、たとえば、電極箔間に固体電解質層を生成させた固体コンデンサ素子や、駆動用電解液を含浸した電解コンデンサ素子などのコンデンサ素子である。
【0026】
このコンデンサ素子4の素子端面8には、コンデンサ素子4の陽極側および陰極側に接続されたリード端子10A、10Bが引き出されている。一例としてリード端子10Aは陽極側、リード端子10Bは陰極側である。各リード端子10A、10Bは、コンデンサ素子4の陽極側または陰極側の電極箔に接続される部分を偏平にし、コンデンサ素子4から引き出された部分(つまり図示されている部分および成形前)は原形形状としてしかも円柱状外部端子として機能させるため、機械的な強度を持つ円柱状(丸棒状)である。
【0027】
<成形型>
【0028】
各リード端子10A、10Bの成形には図1の(A)に示すように、成形型(金型)12が用いられる。この金型12には第1の成形型として一つの中型12Mと、第2の成形型として二つの外型12A、12Bとを備えている。第1の実施の形態では、単一の中型12Mに対して二つの外型12A、12Bを用いることにより、単一の成形処理で、各リード端子10A、10Bの偏平化加工と、ノッチ(notch :切り込み、窪み)成形加工とを行う。ノッチ成形は凹部成形の一例である。
【0029】
各リード端子10A、10Bの間には中型12Mが配置され、この中型12Mの表裏面との間にリード端子10A、10Bを挟んで一対の外型12A、12Bが配置されている。つまり、中型12Mを中心に各リード端子10A、10Bを挟んで、中型12Mと各外型12A、12Bとでサンドイッチ構造が構成されている。
【0030】
中型12Mは直方体で構成され、外型12A、12Bと対向する表裏面に二つの成形面14A、14Bと、少なくとも一つの基準面16と、成形面14A、14Bを平行に維持する基準幅W1 を備える。成形面14A、14Bは基準面16に対して直交関係にある。この基準面16は平坦面であり、外装部材6の端子引出し面18に当接される。成形面14A、14Bは、平坦成形部142と、この平坦成形部142より突出させたノッチ成形部144とを備えている。ノッチ成形部144は、一例として断面V字形のノッチを形成するための三角形状の突部である。このノッチ成形部144は高さh1 を有する。ノッチ成形部144は基準面16から間隔t1を設けて形成され、その幅はW2である。
【0031】
外型12A、12Bは共に直方体で構成され、中型12Mに対向する一面に一つの成形面20と、少なくとも一つの基準面22とを有する。成形面20は基準面22に対して直交関係にある。この基準面22は外装部材6の端子引出し面18との間に一定の間隔t2が設定されている。成形面20は、平坦成形部202と、ノッチ成形部204とを備えている。ノッチ成形部204は、一例として断面方形形状のノッチを形成するための方形状の突部である。このノッチ成形部204は高さh2 、幅W3 に設定されている。
【0032】
中型12Mの成形面14A、14Bと外型12A、12Bの成形面20とは一定の間隔t3 が設定され、平坦成形部142と平坦成形部202とが互いに平行面を構成する。つまり、この間隔t3 がリード端子10A、10Bの成形厚み(つまり、リード端子10A、10Bの潰し幅)となる。
【0033】
<リード端子10A、10Bの成形加工>
【0034】
各リード端子10A、10Bの間には図1の(A)に示すように、中型12Mが設置され、この中型12Mの基準面16をコンデンサ2の外装部材6の端子引出し面18に当て、中型12Mが位置決めされる。この中型12Mに対向させる外型12A、12Bは、前記端子引き出し面18に当てて位置決めされた中型12Mの基準面16を基準にして外型12A、12Bの基準面22を外装部材6の端子引出し面18から間隔t2 だけ離して位置決めする。つまり中型12Mと外型12A、12Bの基準面16、22間には間隔t2 が設定される。
【0035】
中型12Mに対して外型12A、12Bを中型12Mの挟み込み方向に移動させ、加圧力Fを作用させることにより、各リード端子10A、10Bを押し潰す。中型12Mと各外型12A、12Bとの間隔をt3 に維持することにより、各リード端子10A、10Bを厚みt3 の偏平形に成形加工をする。これにより、各リード端子10A、10Bには偏平部23が形成される。
【0036】
この成形加工と同時に、各リード端子10A、10Bの偏平部23には、外型12Aまたは12Bにより第1の凹部としてノッチ24が成形されるとともに、中型12Mにより第2の凹部としてノッチ26が成形される。つまり、ノッチ24は各リード端子10A、10Bの折り曲げ方向の面部に成形され、ノッチ26は各リード端子10A、10Bの折り曲げ方向と反対方向の面部に成形される。これらノッチ24、26は、外装部材6の端子引出し面18からリード端子10A、10Bの長さ方向に異なった位置に形成され、詳細に述べれば、ノッチ26のリード端子引出し面18に最も近い最深部は、ノッチ24のリード端子引出し面に最も近い最深部より遠ざかった位置に形成される。
【0037】
そして、各リード端子10A、10Bには、外型12A、12Bと非接触であり、加圧力Fを受けない部分として、外装部材6の端子引出し面18とノッチ24との間にt2 の幅で非成形面部28が形成される。この非成形面部28は、偏平化された各リード端子10A、10Bに対し、原形状の円柱形に対して半径方向に肉厚となり、突出する突部を形成している。つまり、偏平部23に対して非偏平部としての非成形面部28が形成されている。なお、この間隔t2は、成形応力の波及を回避するため、0.05〜0.15〔mm〕が好ましい。既述のとおり、リード端子10A、10Bを成形した際に、外型12A、12Bで成形加工されるリード端子10A、10Bの非成形面部28に成形応力が加わる。そこで、外装部材6との間に既述の間隔t2を備えれば、非成形面部28への成形応力を外装部材6とリード端子10A、10Bとの接触面に加わることを低減でき、成形応力が密封性に影響することを緩和できる。
【0038】
<リード端子10A、10Bの材料>
【0039】
リード端子10A、10Bにはアルミニウムからなる丸棒部材が用いられ、その一端を偏平状に成形して偏平状部分とし、この偏平状部分にコンデンサ素子を構成する電極箔をステッチ、超音波溶接、冷間圧接等により接続し、他端を外装部材6より導出されている。リード端子には他の構成として外装部材6より導出した丸棒部位に他の金属線を溶接した形態のものを用いることができるが、このような形態では溶接部位の長さ分だけコンデンサの形状(寸法)が大きくなるので、前述のとおり、アルミニウムの丸棒状の素材にて、外装部材8よりそのままリード端子を導出することが好ましい。
【0040】
<リード端子10A、10Bの折り曲げ加工>
【0041】
図1の(B)に示すように、既述の成形加工工程で成形された各リード端子10A、10Bは、外装部材6の端子引き出し面18に対して直交方向に突出しているので、折り曲げ方向に形成されたノッチ24を折り曲げ支点(起点)にし、各リード端子10A、10Bを外装部材6の端子引出し面18に対して平行方向に折り曲げる。ノッチ24側の曲率半径は小さく、ノッチ26側の曲率半径は各リード端子10A、10Bの厚みt3 だけ大きくなるので、ノッチ26はリード端子10A、10Bの湾曲に沿って伸長され、ノッチ26は周辺の面部と同様のなだらかな面部に成形される。
【0042】
〈リード端子10A、10Bの金属めっき〉
【0043】
各リード端子10A、10Bは外装部材6の端子引き出し面18に対して平行方向に折り曲げられる。折り曲げにより成形された各リード端子10A、10Bにはその下面側にはんだ付け層としてたとえば、ニッケルめっき層および錫めっき層を形成する。このようなニッケルめっき層および錫めっき層の形成のため、各リード端子10A、10Bの下面には、サンドブラスト、ローレット加工、エッチング処理など、凹凸面化(粗面化)処理を施すことにより、凹凸面を形成すれば、この凹凸面によりニッケルめっき層および錫めっき層の密着性を高めることができ、はんだ付け強度を高めることができる。
【0044】
<第1の実施の形態の効果>
【0045】
以上述べた第1の実施の形態によれば、次のような効果が得られる。
【0046】
(1) リード端子10A、10Bをノッチ24側に折り曲げると、ノッチ24側が圧縮状態、ノッチ26側が伸長状態となる。つまり、曲げによる圧縮応力はノッチ24側に作用し、伸長応力はノッチ24より離間したノッチ26に作用する。各リード端子10A、10Bの曲げの中心線を基準とすれば、対称位置に圧縮応力と伸長応力とが集中し、ノッチ24、26で曲げ応力が吸収される。このため、各リード端子10A、10Bから外装部材6側への応力伝播が回避される。この結果、外装部材6とリード端子10A、10Bとの間の密着性の低下を防止でき、リード端子10A、10Bとコンデンサ素子4との接続強度の低減を防止できる。外装部材6とリード端子10A、10Bとの境界面の密着性を損うことがなく、外装部材6の気密性を損なうことがない。
【0047】
換言すれば、位置をずらし且つ形状が同一のダブルノッチでもよく、また形状が異なるダブルノッチつまり、ノッチ24、26を備えたリード端子10A、10Bの折り曲げ成形では、各ノッチ24、26により曲げ(圧縮)と伸び(伸張または伸長)とが容易化され、曲げ応力を集中させて外装部材6への波及や影響を緩和できる。この場合、曲げによる伸びには、リード端子10A、10Bの長さ方向の伸びと幅方向の広がりの双方が含まれる。したがって、リード端子10A、10Bとコンデンサ素子4との接続部機能を低下させることがなく、コンデンサの信頼性を維持できる。
【0048】
(2) ノッチ24、26の形成位置が異なっているので、リード端子10A、10Bを脆弱化させることもなく、リード端子10A、10Bの折り曲げ加工の容易化と、リード端子10A、10Bの機械的強度の低下を防止できる。
【0049】
(3) ノッチ24と端子引出し面18との間に非成形面部28を介在させたので、この非成形面部28で曲げ応力の波及をくい止めることができる。つまり、間隔t2 の設定により、非成形面部28が形成されるが、このような非成形面部28を備えれば、曲げ仕上がり状態でのスプリングバックを考慮でき、寸法安定性が担保できる。しかも、折り曲げ部分の内側の圧縮と、外側の伸びが外装部材6の外側、つまりモールドに掛かることがなく、この結果、リード端子10A、10Bの引っ張り強度の低下や、外装部材6の気密性低下を防止できる。また、非成形面部28に隣接してノッチ24が形成されているため、この非成形面部28からのノッチ24の深さが大きくなり、ノッチ24をリード端子を折り曲げる際の支点(起点)となり、生産工程で折り曲げ位置のずれを防止できるなど、折り曲げ精度が向上する。
【0050】
なお、この実施の形態では、成形型12によりリード端子10A、10Bの偏平化成形と、ノッチ成形とを単一の成形処理で行っているが、成形型12を偏平化成形型と、ノッチ成形型とを別個に設定すれば、偏平化成形の後、ノッチ成形を行う成形処理を行うことができる。
【0051】
既述のように、単一化処理とすれば、用意すべき成形型が少なく、成形処理も一度で済むという利点に対し、偏平化処理とノッチ成形処理とを別個に行えば、それぞれの成形の自由度が得られ、ノッチ位置を必要に応じて調整できる利点もある。
【0052】
〔第2の実施の形態〕
【0053】
第2の実施の形態はベース部材を併用したチップ型コンデンサの場合である。
【0054】
図2は、第2の実施の形態に係るコンデンサおよびそのリード端子の成形加工の一例を示している。図2に示す構成は一例であって、係る構成に本発明が限定されるものではない。
【0055】
この実施の形態のコンデンサ2では、外装部材として金属ケース7にコンデンサ素子4が封入されており、金属ケース7がアルミニウムなどの導体で形成されているため、封口体29側に絶縁部材としてベース部材30(図2の(B))が配置されてフェイスボンディング可能なチップ型コンデンサを構成する。
【0056】
この第2の実施の形態では金属ケース7とリード端子10A、10Bとの間に設置される既述のベース部材30(図2の(B))が介在する、その厚みW4 分だけノッチ24、26の位置を外装部材6の端子引出し面18からシフトさせている。
【0057】
この場合、中型12Mにあるノッチ成形部144と基準面16との距離t4 が第1の実施の形態では間隔t2 であるのに対し、ベース部材30の介在幅W4 に対応して間隔t4(>t2 )となっている。
【0058】
また、外型12A、12Bにあるノッチ成形部204と基準面22との距離が第1の実施の形態においては間隔が0であるのに対し、この実施の形態では間隔t5が設定されている。この間隔t5の大きさは既述のベース部材30の介在幅W4に対応している。
【0059】
このような構成によれば、図2の(B)に示すように、ベース部材30を貫通させたリード端子10A、10Bをベース部材30にある貫通孔31から引き出し、端子収納凹部32の内部で第1の実施の形態と同様にノッチ24を支点に折り曲げ、ベース部材30の端子収納凹部32に配置することができる。このようなベース部材30を用いた場合にもリード端子10A、10Bの折り曲げによる曲げ応力は、折り曲げ方向の面に対して反対面にあるノッチ26で吸収でき、外装部材6やコンデンサ素子4との接続部分への波及を抑制でき、外装部材6の気密性の低下やコンデンサ素子4との接続強度を低下させることがなく、コンデンサ2の信頼性を維持することができる。
【0060】
〔他の実施の形態〕
【0061】
(1) リード端子10A、10Bのノッチ24、26の形状について、図3の(A)に示すように、ともに断面方形形状としてもよく、図3の(B)に示すように、ノッチ24を断面V字形状、ノッチ26を断面方形形状としてもよい。また、図3の(C)に示すように、ノッチ24を断面方形形状、ノッチ26を断面半円形状としてもよい。図示しないが、ノッチ24、26をともに断面V字形状、断面半円形状としてもよい。図3の(A)ないし(C)において、Bxはリード端子10A、10Bの曲げ方向を示している。
【0062】
(2) 中型12Mおよび外型12A、12Bのノッチ成形部144、204の寸法について、一例として、25〔WV〕−15〔μF〕用素子:丸棒部素子化成、重合素子、外装部材6(モールド樹脂)エポキシ樹脂、リード端子10A、10Bの潰し厚み:600〔μm〕とすることができる。この場合、中型12M、外型12A、12Bの寸法は、図3の(D)に示すとおりである。各部の寸法は、t1=0.15〔mm〕、W2=0.3〔mm〕、W3=0.3〔mm〕、h2=0.05〔mm〕である。
【0063】
(3)リード端子10A、10Bのノッチ24が既述のとおり、リード端子10A、10Bの折り曲げ方向の面部に形成されて内側に折り曲げられる。その際、コンデンサ2の外装部材6に最も近いノッチ24の最深部(ノッチエッジ)24dの位置が折り曲げ支点(起点)となる。このため、図4の(A)および(B)に示すように、ノッチ24の最深部24dに対し、ノッチ26の最深部26dのエッジが外装部材6から等距離にある場合には各ノッチ24、26の幅が異なってもリード端子10A、10Bが脆弱化するなど、好ましくない。各ノッチ24,26の外装部材6側のエッジを同一の位置とした場合には、曲げ加工の際に、リード端子10A、10Bのノッチ24のエッジ24dを支点として加わる折り曲げ応力が、該エッジ24dと同一位置のエッジ26dに普及しやすくなり、これにより各リード端子10A、10Bの非偏平部28に折り曲げ応力が加わるため、その曲げ応力が外装部材6とリード端子10A、10Bとの接触面や、リード端子10A、10Bとコンデンサ素子2の電極箔の接続部に加わることになる。このため、ノッチ24のエッジ24dとノッチ26のノッチ26dの位置をずらすことが好ましい。
【0064】
また、ノッチ24に対し、ノッチ26は、ノッチ24の折り曲げ支点(起点)から所定角度としてたとえば、リード端子10A、10Bを90〔°〕折り曲げるため、30〔°〕から60〔°〕の位置に変位していることが好ましい。たとえば、図4の(C)、(D)または(E)の形態である。特にノッチ26のエッジ26dがノッチ24の折り曲げ支点から45〔°〕の位置に存在することが好ましい。図4の(C)に示すように、ノッチ24に対し、既述の変位があればノッチ26は同一深さで同一長さであってもよく、ノッチ26の幅が曲げ加工の際の伸張(長さ)領域となる。図4の(c)に示すように、ノッチ26は、ノッチ24の折り曲げ支点に対し、45〔°〕の位置に形成されており、また図4の(D)に示すように、ノッチ26は、そのエッジ26dがノッチ24の折り曲げ支点に対し、45〔°〕の位置に形成されている。また、図4の(E)に示すように、ノッチ26を鈍角状の断面V字形としてもよく、この場合、最深部26dはV字状のノッチ26の中間部分(ノッチボトム)となり、方形状のノッチ26と同様に伸張領域となる。
【0065】
このノッチ26側の伸張について、図4の(C)に示すように、リード端子10A、10Bの厚みt3に対して、1.2〜1.4倍の長さ領域で伸張が生じるが、このときノッチ26の幅は、リード端子10A、10Bの厚みt3に対して0.4〜1.5倍とすれば、伸縮応力を軽減することができる。
【0066】
また、ノッチ24の幅は、リード端子10A、10Bの厚みt3に対して、0.2〜1.2倍がよい。ノッチ24、26の幅については、(ノッチ24の幅)<(ノッチ26幅)が好ましい。
【0067】
各ノッチ24、26の深さ(h1、h2)は、リード端子10A、10Bの強度を低下させないために、たとえば、0.15〔mm〕以下に設定することが好ましい。
【0068】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施の形態等について説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のコンデンサおよびその製造方法は、リード端子の折り曲げ方向の面部とその反対方向の面部に対し、外装部材のリード引出し面から最も近い折り曲げ面のノッチ最深部を支点にリード端子を折り曲げると折り曲げ面の反対面にあるリード引出し面から最も近いノッチ最深部に一番大きな折り曲げ応力がかかるので、折り曲げ面の反対面にあるノッチが伸張し、リード引出し面側に延びる応力が軽減される。また、リード端子とコンデンサ素子との接続強度の低下を防止できるなど、信頼性の高いコンデンサを提供することができ、有用である。
【符号の説明】
【0070】
2 コンデンサ
4 コンデンサ素子
6 外装部材
7 金属ケース
8 素子端面
10A、10B リード端子
12 成形型(金型)
12M 中型
12A、12B 外型
14A、14B 成形面
16 基準面
18 端子引出し面
20 成形面
142 平坦成形部
144 ノッチ成形部
202 平坦成形部
204 ノッチ成形部
22 基準面
23 偏平部
24 第1のノッチ
26 第2のノッチ
28 非成形面部
29 封口体
30 ベース部材
31 貫通孔
32 端子収納凹部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ素子を封止する外装部材と、
前記コンデンサ素子に接続されかつ前記外装部材または該外装部材に併置されたベース部材から引き出され、折り曲げ加工されたリード端子とを備え、
前記リード端子は、折り曲げ加工前に、偏平部と、該偏平部の折り曲げ方向の面部に形成された第1の凹部と、前記折り曲げ方向と反対方向の面部に形成された第2の凹部とを備え、これら第1の凹部と第2の凹部とが前記外装部材の端子引出し面部から異なった位置に設定されていることを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
前記第1の凹部は、前記端子引出し面部に対して前記第2の凹部より近い位置に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
前記外装部材または前記ベース部材と前記リード端子の前記偏平部との間に非偏平部を備え、前記第1の凹部が非偏平部の近傍に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項4】
前記偏平部が、前記第1の凹部側に形成されているとともに、前記第1の凹部が非偏平部の近傍に形成されていることを特徴とする、請求項1ないし3に記載のコンデンサ。
【請求項5】
前記外装部材は、モールド樹脂であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のコンデンサ。
【請求項6】
前記第1の凹部および前記第2の凹部は、アルミニウムからなるリード端子に形成され、該リード端子の偏平部には、金属めっき層が形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のコンデンサ。
【請求項7】
コンデンサ素子に接続されかつ前記コンデンサ素子を覆う外装部材から引き出されたリード端子に偏平部を形成する工程と、
前記リード端子の面部に第1の凹部を形成するとともに、前記第1の凹部を折り曲げ方向とし、折り曲げ方向と反対方向の面部に第2の凹部を前記外装部材または前記ベース部材の面部から異なる位置に形成する工程と、
前記リード端子を前記曲げ方向に屈曲させる工程と、
を含むことを特徴とする、コンデンサの製造方法。
【請求項8】
前記外装部材または前記ベース部材と前記リード端子の前記偏平部との間に非偏平部を 形成する工程を含むことを特徴とする、請求項7に記載のコンデンサの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−26293(P2013−26293A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157213(P2011−157213)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000228578)日本ケミコン株式会社 (514)
【Fターム(参考)】