説明

コンデンサの実装状態判別装置およびコンデンサの実装状態判別方法

【課題】コンデンサの実装・非実装の判別と共に、非実装のときには非実装のコンデンサが実装されるべき位置を判別する。
【解決手段】導体パターン11,12上の測定点P1,P2間のインピーダンスの周波数特性を測定する測定部2と、コンデンサ21〜23が正常に実装された状態での周波数特性に現れる各共振周波数f1〜f3毎に、共振周波数f1〜f3を含む判定範囲fr1〜fr3と共振周波数f1〜f3に対応するコンデンサ21,22,23とを対応付ける基準データD2が記憶された記憶部3と、コンデンサ21〜23の実装状態が未知の導体パターン11,12についての周波数特性を測定部2に測定させ、この周波数特性に現れている共振周波数と基準データD2の各判定範囲fr1〜fr3とを比較して、共振周波数を含まない判定範囲fr1〜fr3に対応付けられたコンデンサが非実装状態であると判別する処理部4とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の導体パターンによって互いに並列接続された複数のコンデンサの実装状態を判別するコンデンサの実装状態判別方法、およびコンデンサの実装状態判別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のコンデンサの実装状態判別方法として、下記特許文献1において従来技術として開示された実装状態判別(判定)方法が知られている。この実装状態判別方法は、一対の導体パターン間(電源パターンとグランドパターン間)に複数個並列に接続されている各コンデンサの並列合成容量を測定し、この測定した並列合成容量値が予め規定された良品判定基準値の範囲内であるか否かに基づいて、非実装のコンデンサの有無を検出している。
【0003】
このコンデンサの実装状態判別方法では、検出ミスが生じる可能性もあるものの、簡易に非実装のコンデンサの有無を検出することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−186483号公報(第3頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記のコンデンサの実装状態判別方法には、以下の解決すべき課題が存在している。すなわち、このコンデンサの実装状態判別方法では、非実装のコンデンサの有無を検出できた場合であっても、一対の導体パターンにおけるどこの位置に実装されるべきコンデンサが非実装なのかを判別できないという解決すべき課題が存在している。
【0006】
本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、コンデンサが実装されているか否かの判別と共に、非実装のときには実装されるべきコンデンサの位置についても判別し得るコンデンサの実装状態判別装置、およびコンデンサの実装状態判別方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく請求項1記載のコンデンサの実装状態判別装置は、一対の導体パターンにおける予め規定された位置にそれぞれ接続されることにより、当該一対の導体パターンによって互いに並列接続された複数のコンデンサの実装状態を判別するコンデンサの実装状態判別装置であって、前記各導体パターン上に1つずつ規定された一対の測定点間のインピーダンスおよび位相のうちの少なくとも一方についての周波数特性を測定する測定部と、前記複数のコンデンサのすべてが正常に実装された状態で測定された前記周波数特性に現れる複数の共振周波数毎に、当該共振周波数を含む判定範囲と当該共振周波数に対応する前記コンデンサとを対応付ける基準データが予め記憶された記憶部と、前記複数のコンデンサの実装状態が未知の前記一対の導体パターンについての前記周波数特性を前記測定部に測定させる測定処理、および当該測定された周波数特性に現れている共振周波数と前記基準データの前記各判定範囲とを比較して、共振周波数を含まない当該判定範囲が存在しているときには、当該判定範囲に対応付けられた前記コンデンサが非実装状態であると判別する判別処理を実行する処理部とを備えている。
【0008】
また、請求項2記載のコンデンサの実装状態判別方法は、一対の導体パターンにおける予め規定された位置にそれぞれ接続されることにより、当該一対の導体パターンによって互いに並列接続された複数のコンデンサの実装状態を判別するコンデンサの実装状態判別方法であって、前記複数のコンデンサのすべてが正常に実装された状態において、前記各導体パターン上に1つずつ規定された一対の測定点間のインピーダンスおよび位相のうちの少なくとも一方についての周波数特性を測定すると共に、当該周波数特性に現れる複数の共振周波数毎に当該共振周波数を含む判定範囲と当該共振周波数に対応する前記コンデンサとを対応付けて作成した基準データを用いて、前記複数のコンデンサの実装状態が未知の前記一対の導体パターンについての当該コンデンサの実装状態を検査する際に、前記一対の測定点間の前記周波数特性を測定し、当該測定した周波数特性に現れている共振周波数と前記基準データの前記各判定範囲とを比較し、当該共振周波数を含まない当該判定範囲が存在しているときには、当該判定範囲に対応付けられた前記コンデンサが非実装状態であると判別する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載のコンデンサの実装状態判別装置および請求項2記載のコンデンサの実装状態判別方法では、複数のコンデンサのすべてが正常に一対の導体パターン間に実装された状態において測定された一対の測定点間のインピーダンスまたは位相の周波数特性に現れる共振周波数毎に各共振周波数を含む判定範囲と各共振周波数に対応するコンデンサとを対応付けて作成した基準データを用いて、各コンデンサの実装状態が未知のときのこの一対の導体パターンについてのコンデンサの実装状態を検査する際に、上記したインピーダンスまたは位相の周波数特性を測定し、測定した周波数特性に現れている共振周波数と基準データの判定範囲とを比較し、判定範囲のなかに共振周波数を含まない判定範囲が存在しているときには、この判定範囲に対応付けられたコンデンサが非実装状態であると判別する。
【0010】
したがって、このコンデンサの実装状態判別方法およびコンデンサの実装状態判別装置によれば、インピーダンスまたは位相の周波数特性に現れる共振周波数は、各コンデンサの静電容量および各コンデンサの一対の測定点からの距離(導体パターンの長さ)に対応して決まるものであるため、一対の導体パターン間に実装されるべき複数のコンデンサのなかに非実装のコンデンサが存在しているか否かの判別だけでなく、非実装のコンデンサが存在しているときには、どのコンデンサ(どの位置に実装されるべきコンデンサ)が非実装なのかについても判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実装状態判別装置1の構成図である。
【図2】図1における回路基板13のW−W線断面図である。
【図3】図1の導体パターン11,12および各コンデンサ21,22,23の等価回路である。
【図4】図3の等価回路における各コンデンサ21,22,23の静電容量が異なる場合であって、非実装のコンデンサのないときのインピーダンスおよび位相の周波数特性図である。
【図5】図3の等価回路においる各コンデンサ21,22,23の静電容量が異なる場合であって、コンデンサ22が非実装状態のときのインピーダンスおよび位相の周波数特性図である。
【図6】図3の等価回路における各コンデンサ21,22,23の静電容量が同じ場合であって、非実装のコンデンサのないときのインピーダンスおよび位相の周波数特性図である。
【図7】図3の等価回路においる各コンデンサ21,22,23の静電容量が同じ場合であって、コンデンサ22が非実装状態のときのインピーダンスおよび位相の周波数特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、コンデンサの実装状態判別装置1およびコンデンサの実装状態判別方法の実施の形態について説明する。
【0013】
まず、実装状態判別装置1の構成について図1を参照して説明する。
【0014】
実装状態判別装置1は、図1に示すように、測定部2、記憶部3、処理部4および表示部5を備え、一対の導体パターン11,12によって互いに並列接続された複数(本例では一例として3個)のコンデンサ21,22,23の実装状態を判別する。この場合、一対の導体パターン11,12は、図1に示すように、予め規定されたパターン形状で回路基板13に形成されている。本例では一例として、導体パターン11は、回路基板13の内層グランドパターンとして平面状のパターン形状に形成されている。一方、導体パターン12は、電源ラインとして直線状のパターン形状に形成されている。また、各コンデンサ21,22,23は、図1に示すように、一対の導体パターン11,12における予め規定された位置に接続されている。この場合、各コンデンサ21,22,23は、一例として、図1,2に示すように、導体パターン11にはビア14aおよびランド15を介して接続され、また導体パターン12にはビア14bおよびランド15を介して接続されている。以下、ビア14a,14bを特に区別しないときには、「ビア14」ともいう。
【0015】
測定部2は、図1に示すように一対のプローブ6,7を介して、一対の導体パターン11,12上に1つずつ規定された一対の測定点P1,P2(本例では、図1,2に示すように、ビア14a,14bを介して導体パターン11,12に接続されたランド15上に規定された測定点P1,P2)に接続される。また、測定部2は、一対のプローブ6,7から一対の導体パターン11,12間に交流定電流をその周波数をスイープ(変化)させつつ供給すると共に、一対の導体パターン11,12間に発生する交流電圧を一対のプローブ6,7を介して交流定電流の周波数毎に測定する。また、測定部2は、このようにして測定した周波数毎の交流電圧と、上記の交流定電流とに基づいて、一対の導体パターン11,12間のインピーダンスについての周波数特性を測定する。また、測定部2は、測定したこのインピーダンスの周波数特性を示す特性データD1を処理部4へ出力する。
【0016】
記憶部3は、一例として半導体メモリやハードディスク装置を用いて構成されて、処理部4のための動作プログラムおよび基準データD2を記憶する。
【0017】
次に、記憶部3に記憶される基準データD2について、具体的に説明する。
【0018】
図1,2に示すように、複数(本例では3個)のコンデンサ21,22,23のすべてが一対の導体パターン11,12間に正常に実装されている状態において、測定部2によって一対の測定点P1,P2間のインピーダンスについての周波数特性を測定した場合、その周波数特性には、原則として、一対の導体パターン11,12間に並列接続されているコンデンサの数と同数の共振周波数毎に、インピーダンスの極小点が現れる。
【0019】
例えば、図1,2に示すように、一対の導体パターン11,12間に3つのコンデンサ21,22,23が並列接続されている回路は、図3に示す等価回路として表される。なお、この等価回路において、L1,L2,L3は、各コンデンサ21,22,23と各導体パターン11,12とを接続する各ビア14のインダクタンスを表し、またL4,L5は、各コンデンサ21,22,23間を接続する各導体パターン11,12のインダクタンスを表している。
【0020】
図4において実線で示される周波数特性図は、この等価回路においてコンデンサ21の静電容量を0.1μFとし、コンデンサ22の静電容量を0.5μFとし、コンデンサ23の静電容量を1μFとし、各導体パターン11,12のインダクタンスL4,L5を20nHとし、各ビア14のインダクタンスL1,L2,L3を10nHとしたときに、一対の測定点P1,P2で測定されるこの等価回路についてのインピーダンスの周波数特性を表している。
【0021】
図4の周波数特性図から明らかなように、図3の等価回路についてのインピーダンスの周波数特性には、コンデンサ21,22,23の数と同数の極小点が共振周波数f1,f2,f3毎に現れている。本例のように各コンデンサ21,22,23の静電容量が互いに相違する場合には、原則として、静電容量の小さなコンデンサほど対応する共振周波数が高くなる。なお、各コンデンサ21,22,23の静電容量が互いに相違する場合であっても、差が小さいときには、各導体パターン11,12のインダクタンスL4,L5の影響を受けて、上記の原則が崩れる場合もある。本例では、各コンデンサ21,22,23の静電容量が互いに大きく相違しているため、原則の通り、静電容量の最も小さいコンデンサ21に対応する共振周波数f1が最も高くなり、静電容量が次に小さいコンデンサ22の共振周波数f2が次に高くなり、静電容量が最も大きいコンデンサ23の共振周波数f3が最も低くなる。
【0022】
また、各コンデンサ21,22,23のうちのいずれかが非実装のときには、インピーダンスの周波数特性には、実装されているコンデンサに対応する極小点のみが対応する共振周波数毎に現れる。言い換えれば、非実装のコンデンサに対応する極小点がインピーダンスの周波数特性から消滅する(この極小点に対応する共振周波数が消滅する)。一例として、コンデンサ22(静電容量:0.5μF)のみが非実装のときのインピーダンスの周波数特性についてのシミュレーション結果を図5に示す。図5の周波数特性図から明らかなように、図4の周波数特性図と比較して、非実装としたコンデンサ22に対応する極小点のみ(この極小点に対応する共振周波数f2のみ)が周波数特性から消滅し、コンデンサ21に対応する極小点(この極小点に対応する共振周波数f1)は図4で示される周波数特性のときの周波数から若干変化するものの、コンデンサ23に対応する極小点(この極小点に対応する共振周波数f3)と共に周波数特性に現れたままの状態となっている。
【0023】
また、各コンデンサ21,22,23に対応する共振周波数f1,f2,f3は、実際の回路基板では、製造公差に起因したコンデンサ21,22,23の静電容量のばらつきや各ビア14のインダクタンスのばらつきや導体パターン11,12のインダクタンスのばらつきなどによって若干変動する。また、上記したように、他のコンデンサが非実装状態にあるか否かによっても若干変動する。したがって、各共振周波数f1,f2,f3の変動範囲を含む最小の周波数範囲(判定領域)fr1,fr2,fr3を、各コンデンサ21,22,23に対応させて基準データD2として規定する。
【0024】
また、各コンデンサ21,22,23の静電容量が同一の場合にも、一対の測定点P1,P2から各コンデンサ21,22,23までの一対の導体パターン11,12の長さが相違することに起因して(つまり、インダクタンスL4,L5の存在に起因して)、コンデンサ21,22,23の数と同数の共振周波数f1,f2,f3が各コンデンサ21,22,23に対応して発生する。このため、インピーダンスの周波数特性には、各コンデンサ21,22,23の数と同数の極小点が共振周波数f1,f2,f3毎に現れる。
【0025】
図6において実線で示される周波数特性図は、図3の等価回路において各コンデンサ21,22,23の静電容量を同一の0.1μFとし、各導体パターン11,12のインダクタンスL4,L5を20nHとし、各ビア14のインダクタンスL1,L2,L3を10nHとしたときに、一対の測定点P1,P2で測定されるこの等価回路についてのインピーダンスの周波数特性を表している。
【0026】
図6の周波数特性図から明らかなように、図3の等価回路についてのインピーダンスの周波数特性には、コンデンサ21,22,23の数と同数の極小点が共振周波数f1,f2,f3毎に現れている。本例のように各コンデンサ21,22,23の静電容量が同じ場合には、測定点P1,P2に近いコンデンサほど、このコンデンサまでの各導体パターン11,12のインダクタンスが小さくなるため、対応する共振周波数が高くなる。したがって、測定点P1,P2に最も近いコンデンサ21についての共振周波数f1が最も高くなり、次に近いコンデンサ22についての共振周波数f2が次いで高くなり、最も遠いコンデンサ23についての共振周波数f3が最も低くなる。
【0027】
また、各コンデンサ21,22,23のうちのいずれかが非実装のときには、インピーダンスの周波数特性には、実装されているコンデンサに対応する極小点のみが対応する共振周波数毎に現れる。一例として、コンデンサ22のみが非実装のときのインピーダンスの周波数特性についてのシミュレーション結果を図7に示す。図7の周波数特性図から明らかなように、図6の周波数特性図と比較して、非実装としたコンデンサ22に対応する極小点のみ(この極小点に対応する共振周波数f2のみ)が周波数特性から消滅し、コンデンサ21に対応する極小点(この極小点に対応する共振周波数f1)は図6で示される周波数特性のときの周波数から若干変化するものの、コンデンサ23に対応する極小点(この極小点に対応する共振周波数f3)と共に周波数特性に現れたままの状態となっている。
【0028】
したがって、このように各コンデンサ21,22,23の静電容量が同じ場合においても、各共振周波数f1,f2,f3の変動範囲を含む最小の周波数範囲(判定範囲)fr1,fr2,fr3を、各コンデンサ21,22,23に対応させて基準データD2として規定する。
【0029】
処理部4は、一例としてCPUを用いて構成されて、一対の導体パターン11,12についての周波数特性の測定を測定部2に対して実行させる測定処理、および測定部2によって測定された周波数特性を示す特性データD1および基準データD2に基づいて、一対の導体パターン11,12間に実装されるべきコンデンサ(本例では一例としてコンデンサ21,22,23)の中に非実装のコンデンサが存在しているか否かを判別する判別処理を実行する。また、処理部4は、判別処理の結果を表示部5に表示させる表示処理を実行する。
【0030】
次に、実装状態判別装置1の動作について図面を参照して説明する。なお、一例として、図1に示すように、正常状態であれば3つのコンデンサ21,22,23が実装される導体パターン11,12についてのコンデンサの実装状態を判別する例を挙げて説明する。
【0031】
また、この導体パターン11,12、ビア14および各コンデンサ21,22,23は、上記したように図3に示す等価回路で表され、また、同図に示される各コンデンサ21,22,23の静電容量はそれぞれ0.1μF、0.5μF、1μFであり、各ビア14のインダクタンスL1,L2,L3は10nHであり、各導体パターン11,12のインダクタンスL4,L5は20nHであるものとする。これにより、上記したように、すべてのコンデンサ21,22,23が正常に実装されているときの一対の測定点P1,P2で測定されるこの等価回路についてのインピーダンスの周波数特性として、図4に示す周波数特性が測定される。このため、記憶部3には、基準データD2として、図4に示す周波数範囲(判定領域)fr1,fr2,fr3が各コンデンサ21,22,23に対応させて記憶されているものとする。
【0032】
実装状態判別装置1では、まず、処理部4は、測定処理を実行する。この測定処理では、処理部4は、測定部2に対して一対の導体パターン11,12間のインピーダンスについての周波数特性を測定させる。この場合、測定部2は、プローブ6,7を介して各測定点P1,P2でのインピーダンスの周波数特性を測定し、測定したこの周波数特性を示す特性データD1を処理部4へ出力する。この特性データD1で示される周波数特性には、導体パターン11,12間に実装されているコンデンサに対応する極小点が、コンデンサ21,22,23に対応する共振周波数の位置に現れている。
【0033】
次いで、処理部4は、判別処理を実行する。この判別処理では、処理部4は、測定部2で測定された特性データD1に現れている極小点での周波数(共振周波数)と、記憶部3から読み出した基準データD2の各周波数範囲(判定範囲)fr1,fr2,fr3とを比較する。この場合、最も高い周波数範囲fr1は、上記したように静電容量の最も小さいコンデンサ21(0.1μF)の極小点での周波数(共振周波数f1)に対応するものである。このため、処理部4は、この周波数範囲fr1に含まれる極小点(共振周波数f1)が特性データD1で示される周波数特性に現れているときには、コンデンサ21は実装されている(実装状態である)と判別し、この周波数範囲fr1に含まれる極小点(共振周波数f1)が特性データD1に現れていないときには、コンデンサ21は実装されていない(非実装状態にある)と判別する。
【0034】
また、次に高い周波数範囲fr2は、上記したように静電容量が次に小さいコンデンサ22(0.5μF)の極小点での周波数(共振周波数f2)に対応するものである。このため、処理部4は、この周波数範囲fr2に含まれる極小点(共振周波数f2)が特性データD1で示される周波数特性に現れているときには、コンデンサ22は実装状態であると判別し、この周波数範囲fr2に含まれる極小点(共振周波数f2)が特性データD1で示される周波数特性に現れていないときには、コンデンサ22は非実装状態にあると判別する。
【0035】
また、最も低い周波数範囲fr3は、上記したように静電容量が最大のコンデンサ23(1μF)の極小点での周波数(共振周波数f3)に対応するものである。このため、処理部4は、この周波数範囲fr3に含まれる極小点(共振周波数f3)が特性データD1で示される周波数特性に現れているときには、コンデンサ23は実装状態であると判別し、この周波数範囲fr3に含まれる極小点(共振周波数f3)が特性データD1で示される周波数特性に現れていないときには、コンデンサ23は非実装状態にあると判別する。一例として、図5に示すように、周波数範囲fr1,fr3に含まれる各極小点(共振周波数f1,f3)が特性データD1で示される周波数特性に現れているが、周波数範囲fr2に含まれる極小点(共振周波数f2)がこの周波数特性に現れていないため、コンデンサ21,23は実装状態であり、コンデンサ22は非実装状態であると判別する。
【0036】
最後に処理部4は、表示処理を実行して、各コンデンサ21,22,23についての実装状態の判別結果を表示部5に表示させる。これにより、実装状態判別装置1によるコンデンサの実装状態の判別が完了する。なお、この判別結果の表示部5での表示に際しては、回路基板13を平面視した状態での各コンデンサ21,22,23の配置図を画面上に表示させると共に、この配置図上において非実装状態のコンデンサを実装状態のコンデンサと区別し得る表示態様で表示させる手法を採用したり、図3に示す等価回路を表示させて、この等価回路上において非実装状態のコンデンサを実装状態のコンデンサと区別し得る表示態様で表示させる手法を採用することができる。また、非実装状態のコンデンサの識別情報のみを表示させる簡易な手法を採用することもできる。
【0037】
このように、この実装状態判別装置1および実装状態判別方法では、コンデンサ21,22,23のすべてが正常に実装された状態において測定された各導体パターン11,12間(具体的には、一対の測定点P1,P2間)のインピーダンスの周波数特性に現れる各極小点(共振周波数f1,f2,f3)毎にこの極小点(共振周波数f1,f2,f3)を含む判定範囲(周波数範囲fr1,fr2,fr3)と極小点(共振周波数f1,f2,f3)に対応するコンデンサ21,22,23とを対応付けて作成した基準データD2を用いて、コンデンサ21,22,23の実装状態が未知の導体パターン11,12についてのコンデンサの実装状態を検査する際に、上記したインピーダンスの周波数特性を測定し、測定した周波数特性に現れている極小点の周波数(共振周波数)と基準データD2の各周波数範囲fr1,fr2,fr3とを比較し、周波数範囲fr1,fr2,fr3のなかに極小点(共振周波数)を含まない周波数範囲が存在しているときには、この周波数範囲に対応付けられたコンデンサが非実装状態であると判別する。
【0038】
したがって、この実装状態判別装置1および実装状態判別方法によれば、インピーダンスの周波数特性に現れる各共振周波数f1,f2,f3は、各コンデンサ21,22,23の静電容量および各コンデンサ21,22,23の一対の測定点P1,P2からの距離(導体パターン11,12の長さ)に対応して決まるものであるため、導体パターン11,12間に実装されるべきコンデンサ21,22,23のなかに非実装のコンデンサが存在しているか否かの判別だけでなく、非実装のコンデンサが存在しているときには、どの位置に実装されるべきコンデンサが非実装なのか(実装されていないのか)についても判別することができる。
【0039】
なお、上記の実装状態判別装置1では、導体パターン11,12上に規定された一対の測定点P1,P2間のインピーダンスの周波数特性に基づいて、導体パターン11,12間に実装されるべきコンデンサ21,22,23の実装状態および非実装状態を判別しているが、位相の周波数特性に基づいて判別することもできる。具体的には、コンデンサ21,22,23の存在に対応して発生する共振周波数では、インピーダンスが上記したように極小点となると共に、図4,5,6,7において破線で示すように、位相が−90°から+90°に急激に変化する(変位点となる)。つまり、位相の周波数特性では、コンデンサ21,22,23に対応して発生する共振周波数f1,f2,f3毎に変位点が現れる。
【0040】
このため、インピーダンスの周波数特性に代えて位相の周波数特性を使用すると共に、測定した位相の周波数特性に現れている変位点の周波数(共振周波数)と基準データD2の各周波数範囲fr1,fr2,fr3とを比較することにより、周波数範囲fr1,fr2,fr3のなかに変位点(共振周波数)を含まない周波数範囲が存在しているときには、この周波数範囲に対応付けられたコンデンサが非実装状態であると判別することができる。したがって、位相の周波数特性を使用する構成においても、導体パターン11,12間に実装されるべきコンデンサ21,22,23のなかに非実装のコンデンサが存在しているか否かの判別と、非実装のコンデンサが存在しているときには、どの位置に実装されるべきコンデンサが実装されていないのかを判別することもできる。この場合、測定部2は、上記したように測定した周波数毎の交流電圧と、上記の交流定電流との間の位相を検出することにより、一対の導体パターン11,12間における位相の周波数特性を測定し、この測定したこの位相の周波数特性を示す特性データD1を処理部4へ出力する。
【0041】
また、上記の例では、インピーダンスの周波数特性および位相の周波数特性のいずれか一方のみを使用してコンデンサ21,22,23の実装状態を判別しているが、インピーダンスの周波数特性および位相の周波数特性を併用する構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0042】
1 実装状態判別装置
2 測定部
3 記憶部
4 処理部
11,12 導体パターン
21,22,23 コンデンサ
D2 基準データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の導体パターンにおける予め規定された位置にそれぞれ接続されることにより、当該一対の導体パターンによって互いに並列接続された複数のコンデンサの実装状態を判別するコンデンサの実装状態判別装置であって、
前記各導体パターン上に1つずつ規定された一対の測定点間のインピーダンスおよび位相のうちの少なくとも一方についての周波数特性を測定する測定部と、
前記複数のコンデンサのすべてが正常に実装された状態で測定された前記周波数特性に現れる複数の共振周波数毎に、当該共振周波数を含む判定範囲と当該共振周波数に対応する前記コンデンサとを対応付ける基準データが予め記憶された記憶部と、
前記複数のコンデンサの実装状態が未知の前記一対の導体パターンについての前記周波数特性を前記測定部に測定させる測定処理、および当該測定された周波数特性に現れている共振周波数と前記基準データの前記各判定範囲とを比較して、共振周波数を含まない当該判定範囲が存在しているときには、当該判定範囲に対応付けられた前記コンデンサが非実装状態であると判別する判別処理を実行する処理部とを備えているコンデンサの実装状態判別装置。
【請求項2】
一対の導体パターンにおける予め規定された位置にそれぞれ接続されることにより、当該一対の導体パターンによって互いに並列接続された複数のコンデンサの実装状態を判別するコンデンサの実装状態判別方法であって、
前記複数のコンデンサのすべてが正常に実装された状態において、前記各導体パターン上に1つずつ規定された一対の測定点間のインピーダンスおよび位相のうちの少なくとも一方についての周波数特性を測定すると共に、当該周波数特性に現れる複数の共振周波数毎に当該共振周波数を含む判定範囲と当該共振周波数に対応する前記コンデンサとを対応付けて作成した基準データを用いて、
前記複数のコンデンサの実装状態が未知の前記一対の導体パターンについての当該コンデンサの実装状態を検査する際に、前記一対の測定点間の前記周波数特性を測定し、当該測定した周波数特性に現れている共振周波数と前記基準データの前記各判定範囲とを比較し、当該共振周波数を含まない当該判定範囲が存在しているときには、当該判定範囲に対応付けられた前記コンデンサが非実装状態であると判別するコンデンサの実装状態判別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−189354(P2012−189354A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51222(P2011−51222)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】