説明

コンデンサユニットおよび密閉型開閉装置

【課題】小型で絶縁性能の高いコンデンサユニット、およびそのコンデンサユニットを有する密閉型開閉装置を提供する。
【解決手段】誘電体の周囲を絶縁材で被覆したコンデンサ素子3−1、・・・、3−nを複数個直列に接続してなるコンデンサ積層体3を絶縁筒4に収納し、かつ、当該コンデンサ積層体3の両端部を接続電極5a、5bを介して静電シールド電極6a、6bに接続するように構成されたコンデンサユニット2において、コンデンサ素子3−1、・・・、3−nの電極の内の一方を絶縁材とほぼ同一面にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス絶縁開閉装置の構成要素である密閉型開閉装置に用いられるコンデンサユニットに係り、特に、小型であり、絶縁性能を向上させることのできるコンデンサユニットおよび密閉型開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス絶縁開閉装置(GIS)は、大電流を遮断するスイッチ(開閉部)を有する密閉型開閉装置を構成要素の一つとして備えている。一般に1つのスイッチで遮断できる電流の大きさには自ずと限界があるので、1つのスイッチで遮断できる値以上の電流を遮断する必要がある場合には、複数個(通常は2個)のスイッチを直列接続し、これらのスイッチを同時に開極動作させる2点切りの構成が採用されている。
【0003】
以下、図11乃至図17を参照して従来の2点切りの密閉型開閉装置を例に挙げて説明する。
図11は従来の2点切り密閉型開閉装置の主回路に設けた2個のスイッチ間の静電容量を示す説明図、図12は図11に示す2個のスイッチ間の電圧を示す説明図、図13は従来の密閉型開閉装置のスイッチ間にコンデンサユニットを接続した状態を示す等価回路図、図14は従来のコンデンサユニットに用いたコンデンサ素子の断面図、図15はコンデンサユニット用にコンデンサ素子を所定個数直列接続してなるコンデンサ積層体を示す図、図16は従来のコンデンサユニットの設置状態を示す断面図、そして、図17は従来のコンデンサユニットの等電位線を示す説明図である。
【0004】
図11で示すように、主回路に設けられた2個のスイッチを直列にした密閉型開閉装置1において、2個のスイッチ1−1および1−2を開極しようとする場合、スイッチ1−1の接点間静電容量C1、スイッチ1−2の接点間静電容量C2、そして、スイッチ1−1および1−2とをつなぐ回路の対地静電容量C3が存在するので、図12で示すように、これらの静電容量C1,C2およびC3によって決まる電圧V1、電圧V2がそれぞれスイッチ1−1、スイッチ1−2の接点間に印加される。
【0005】
図12の回路においては、一般に対地静電容量C3の影響によってV1≠V2であるため、2個のスイッチ1−1、1−2が遮断する電流は均等とはなり難く、2個のスイッチ1−1、1−2の電流遮断能力を均等化して効率的に使用することが難しい。
【0006】
この問題を避け、2個のスイッチ1−1、1−2の接点間に印加される電圧V1、V2を均等化して遮断器としての電流遮断能力を効果的に利用するために、図13に示す様に各スイッチ1−1、1−2に対して対地静電容量C3よりも十分に大きい静電容量C4を有するコンデンサユニット2を並列接続する方法がとられる場合がある。
【0007】
スイッチ1−1、1−2にそれぞれ並列接続される静電容量C4を構成する方法の一つとして、図14に示す様にセラミックス等の高誘電率材で構成された誘電体3aをエポキシ樹脂等の絶縁材3bでモールドし、電極3c1、3c2を接合してなるコンデンサ素子3−1、3−2、・・・を図15に示す様に所定個数積層してコンデンサ積層体3を構成し、このコンデンサ積層体3を絶縁筒4に収納して成るコンデンサユニット2を前記スイッチ1−1、1−2と並列接続する方法が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0008】
これら特許文献1,2に記載の方法は、直列に接続するコンデンサ素子3−1、3−2、・・・の個数を調整することによって、必要とする静電容量および耐電圧性能のコンデンサユニット2を構成しようとするものである。
【0009】
コンデンサユニット2の設置状態は、図16に示すように、絶縁筒4の中にコンデンサ積層体3を配置した状態で両端を接続電極5a、5bを介して静電シールド電極6a、6b間に固定されている。なお、7はエポキシ樹脂等で構成された支持絶縁物である。
【0010】
ところで、密閉型開閉装置1は、コストダウンを目的として装置全体を小型化することが求められている。密閉型開閉装置全体の小型化を図るためには、コンデンサユニット2の寸法を短くすることが有効である。なお、コンデンサユニット2の寸法を短くすることを目的として、高誘電率材料である非直線抵抗素子で構成されたコンデンサ素子3同士を導電性材料を挟んで熱処理して接合して電極3c2を無くすようにした構造とするものが提案されている(例えば、特許文献3,4参照)。
【特許文献1】特開平06−338436号公報、
【特許文献2】特開平07−161268号公報、
【特許文献3】特開平10−275737号公報、
【特許文献4】特公昭62−59455号公報、
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この特許文献3あるいは4に記載の方法では、高誘電率材料同士を導電性接着剤を介して積み重ね焼き付ける必要があるが、高電圧遮断器の様に電圧の高い遮断器に適用されるコンデンサユニットにおいては、直列に接続されるコンデンサ素子3の数が多くなるため、長尺の焼付け熱処理が必要になってコストが増大する欠点がある。
また、遮断器の操作時には、トン(t)オーダの大きな衝撃が生じるため、長尺の焼き付け高誘電材料の場合、接合部の信頼性確保が難しくなる。
【0012】
しかも、このような構成のコンデンサユニット2を用いた密閉型開閉装置1においては、全体の長さを短くして小型化するために、図16のようにコンデンサユニット2(2−1、2−2)の端部、すなわちコンデンサ積層体3の端部コンデンサ素子を静電シールド電極6a、6bの内部へ配置することが多い。遮断器のスイッチ間に電圧が印加された場合、コンデンサユニット2に沿った電位分担は、コンデンサ素子3−1、3−2、・・・の静電容量によって決まる。
【0013】
この結果、特許文献3あるいは4に記載の方法では、図17に示す様に等電位線Eが静電シールド電極6a、6b内部に入り込んで、静電シールド電極6a、6b内部に配置された端部近傍のコンデンサ素子3−1、3−2、3−n−1、3−nに電界が強くなりやすい領域Dが生じ、密閉型開閉装置1の絶縁性能を低下させやすくなるという課題が新たに生じることが判明した。
【0014】
そこで、本発明は上記従来技術の課題を解決するために、密閉型開閉装置に使用されているコンデンサユニットに関し、小型で絶縁性能の高いコンデンサユニット、およびそのコンデンサユニットを有する密閉型開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、請求項1の記載に係るコンデンサユニットの発明は、誘電体の周囲を絶縁材で被覆したコンデンサ素子を複数個直列に接続してなるコンデンサ積層体を絶縁筒に収納し、かつ、コンデンサ積層体の両端部を接続電極を介して静電シールド電極に接続するように構成されたコンデンサユニットにおいて、前記コンデンサ素子の前記誘電体に接続される電極の内の一方を前記絶縁材とほぼ同一面にしたことを特徴とする。
【0016】
また、請求項2の記載に係るコンデンサユニットの発明は、コンデンサ素子を複数個直列に接続してなるコンデンサ積層体を絶縁筒に収納し、かつ、当該コンデンサ積層体の両端部を接続電極を介して静電シールド電極に接続するように構成されたコンデンサユニットにおいて、前記コンデンサ積層体の両端部およびその近傍のコンデンサ素子の静電容量を中央部のコンデンサ素子の静電容量よりも大きくしたことを特徴とする。
【0017】
また、請求項3の記載に係るコンデンサユニットの発明は、コンデンサ素子を複数個直列に接続してなるコンデンサ積層体を絶縁筒に収納し、かつ、当該コンデンサ積層体の両端部を接続電極を介して静電シールド電極に接続するように構成されたコンデンサユニットにおいて、前記絶縁筒の壁面に非直線抵抗体層を施したことを特徴とする。
【0018】
また、請求項4の記載に係るコンデンサユニットの発明は、コンデンサ素子を複数個直列に接続してなるコンデンサ積層体を絶縁筒に収納し、かつ、当該コンデンサ積層体の両端部を接続電極を介して静電シールド電極に接続するように構成されたコンデンサユニットにおいて、前記絶縁筒は、前記絶縁材に非直線抵抗体を充填して構成されることを特徴とする。
【0019】
また、請求項5の記載に係るコンデンサユニットの発明は、コンデンサ素子を複数個直列に接続してなるコンデンサ積層体を絶縁筒に収納し、かつ、当該コンデンサ積層体の両端部を接続電極を介して静電シールド電極に接続するように構成されたコンデンサユニットにおいて、前記コンデンサ素子の表面に非直線抵抗体層を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コンデンサ素子相互間の電気的接続を確実にしたままコンデンサ素子積層方向の寸法を短くして小型化するとともに、絶縁信頼性が高いコンデンサユニットおよびコンデンサユニットを備えた密閉型開閉装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図を通して、既に説明した図11乃至図17と同一部分には同一符号を付すことにより、重複説明は適宜省略するものとする。
【0022】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明が適用される密閉型開閉装置の結線図、図2は本発明の第1の実施の形態に係るコンデンサユニットの断面図であって、前述した図16の上半分の一方の図に相当する図である。そして、図3はコンデンサ素子の拡大断面図である。
【0023】
図1において、1は密閉型開閉装置であり、主回路に直列接続した2個のスイッチ1−1、1−2と、これらスイッチ1−1、1−2にそれぞれ並列接続されたコンデンサユニット2−1、2−2とから構成されている。
【0024】
図2に示すコンデンサユニット2は、2個のコンデンサユニット2−1、2−2のいずれか一方を示すもので、エポキシ樹脂製の絶縁筒4内に複数個の短尺円柱状のコンデンサ素子3−1、・・・、3−nを一列に積み重ねて成るコンデンサ積層体3を収納し、かつ、このコンデンサ積層体3の両端部に位置するコンデンサ素子3−1および3−nと接続する接続電極5a、5bを配置することによって構成されている。
【0025】
そして、このコンデンサユニット2のコンデンサ積層体3は接続電極5a、5bを介して静電シールド電極6aおよび6bにそれぞれ電気的に接続されたうえで機械的に支持されるようになっている。
【0026】
なお、接続電極5aおよび5bの内部については図示していないが、スプリング等の弾性部材を内蔵しており、スプリングの復元力によってコンデンサ素子3−1、3−2・・・3−n−1、3−n間の接触圧力およびコンデンサ積層体3と静電シールド電極6a、6bとの接触圧力を適切に維持するように構成されている。
【0027】
ところで、本実施の形態のコンデンサ積層体3を構成する各コンデンサ素子例えば3−1は、一対の電極のうちの一方を突出させずに絶縁材の端面とほぼ同一面となるよう薄くし、他方の電極を絶縁材から突出させるように構成したことを特徴としたものである。
【0028】
すなわち、コンデンサ素子3−1は、図3で示すようにセラミックス等の高誘電率材で構成された短尺円柱状の誘電体3aの一方の端面(図示、上端面)および他方の端面(図示、下端面)に電極3c1、3c2をそれぞれ設け、さらに誘電体3aおよび電極3c1、3c2の外周をエポキシ樹脂でモールドして被覆することにより絶縁材3bを形成したものである。なお、誘電体3aに電極3c1、3c2を設ける方法は種々あるが、一例として、特許文献3のように、誘電体3aの端面に導電層を形成し、この導電層に電極材3c1、3c2を接合する方法が適用できる。なお、前述のように電極材3c1は絶縁材3bよりも外部に突出する寸法に作られ、一方電極材3c2は、絶縁材3bとほぼ同一面となるように薄く作られている。
【0029】
本実施の形態のように、コンデンサ素子3−1の一方の電極3c1を絶縁材3bよりも外部に突出するようにし、他方の電極3c2を絶縁材3bとほぼ同一面になるよう薄くすると、コンデンサ素子3−1、・・・を積み重ねる際、平面度が問題になる。一般に樹脂や熱処理した高誘電率材料では平面度を高くするのが難しく、積み重ねた時に接合面に微小なギャップができやすい。遮断器のコンデンサユニット2には種々の要因で高周波サージも印加されるが、接合面に微小なギャップが存在すると、高周波サージによって接合面で放電が生じやすく、コンデンサ素子の寿命を低下させやすくなる。
【0030】
しかしながら、本実施の形態では、コンデンサ素子1の一方の電極3c1を従来通り絶縁材3bから突出させ、他方の電極3c2を絶縁材3bとほぼ同一面となるように薄くしたことによって、コンデンサユニット2におけるコンデンサ素子3−1、・・・3−n間に微小なギャップができ難く、電気的接続を確実にした状態でコンデンサ積層体3の寸法を、従来例よりも短くすることができる。コンデンサ積層体3の寸法を短くすることができれば、それに合わせて絶縁筒4の長さ寸法も短くすることができるので、コンデンサユニット2の寸法を短くすることができ、この結果、密閉型開閉装置1も小型にすることができる。
【0031】
しかし、コンデンサユニット2の寸法を短くしただけでは、静電シールド電極6a、6b内に収容されるコンデンサ素子の数、言い換えれば静電シールド電極6a、6bで包囲されるコンデンサ積層体3端部のコンデンサ素子の数は減少しないため、コンデンサ積層体3の端部近傍には、電界が強くなりやすい領域Dが依然として生じることとなる。したがって、このままでは密閉型開閉装置1の小型化は図れても、絶縁性能を低下させやすいという課題は解決できない。
【0032】
そこで、本実施の形態では、接続電極5a、5bの寸法を従来装置の寸法よりも長くすることによって、静電シールド電極6a、6b内に収容されるコンデンサ積層体3端部のコンデンサ素子の数を減少させ、併せてコンデンサユニット2の寸法も短くするように構成したものである。
【0033】
この結果、静電シールド電極6a、6b近傍の電界が強くなりやすい領域Dにおけるコンデンサ素子の数を減少させることができるので、小型化が図れたうえで絶縁信頼性の高いコンデンサユニット2を備えた密閉型開閉装置1を得ることができる。
【0034】
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施の形態に係るコンデンサユニットの断面図である。
図4において、本実施の形態は、絶縁筒4内に複数個の短尺円柱状のコンデンサ素子3−1、3−2、・・・、3−n−1、3−nを一列に積み重ねて成るコンデンサ積層体3の両端部およびその近傍に位置するコンデンサ素子3−1、3−2、・・・、3−n−1、3−nの静電容量を、中央部分に位置するコンデンサ素子の静電容量よりも大きくしたことを特徴としたものである。
【0035】
図4の構成では、両端部における電位分布が中央部の電位分布よりも10%程度以上低くなるように、両端部のコンデンサ素子3−1、3−2および3−n−1、3−nの静電容量を中央部に位置するコンデンサ素子の静電容量よりも大きくすることにより、両端部での電位分担を小さくし、等電位線Eの歪みが減少して電界が強くなりやすい領域Dが生じ難くなるようにしたものである。この結果、コンデンサ素子3−1、・・・の積層数すなわち、コンデンサユニット2の寸法を小さくしたまま、絶縁性能を高くすることができる。
以上述べたように、本実施の形態によれば、小型でありながら絶縁信頼性の高いコンデンサユニット2を備えた密閉型開閉装置を得ることができる。
【0036】
(第3の実施の形態)
図5は、本発明の第3の実施の形態に係るコンデンサユニットの断面図である。
図5において、本実施の形態は、コンデンサユニット2の構成要素である絶縁筒4の壁面に非直線抵抗体のテープを貼付、または非直線抵抗体の粉末を塗布して非直線抵抗体層8を設けたことを特徴としたものである。なお、図5では絶縁筒4の内壁面に非直線抵抗体によって非直線抵抗体層8を設けるようにしたが、内壁面に替えて、外壁面に設けるようにしてもよい。
【0037】
非直線抵抗体層8は、電界が強い領域Dでは抵抗値が小さくなり、電界が弱い部分では抵抗値が大きくなる特性を有している。この特性は、電界が強い部分の電位分担を減少させる作用を持つ。
【0038】
このため、内壁または外壁に非直線抵抗体のテープを貼付、または非直線抵抗体の粉末を塗布してなる非直線抵抗体層8を設けた絶縁筒4を使用すれば、等電位線Eの変歪が減少し、電界の強い部分が減少し、コンデンサ素子3−1、・・・の積層数すなわち、コンデンサユニット2の寸法を小さくしたまま絶縁性能を高くすることができる。
以上述べたように、本実施の形態によれば、小型でありながら絶縁信頼性の高いコンデンサユニット2を備えた密閉型開閉装置を得ることができる。
【0039】
(第4の実施の形態)
図6は、本発明の第4の実施の形態に係るコンデンサユニットの断面図である。
図6において、本実施の形態は、コンデンサユニット2の構成要素である絶縁筒9を非直線抵抗特性を有する粉末を充填材として主材であるエポキシ樹脂等の絶縁材に充填し、硬化させることによって構成したことを特徴としている。
【0040】
エポキシ樹脂に充填された非直線抵抗体の粉末は、電界が強い部分では抵抗値が小さくなり、電界が弱い部分では抵抗値が大きくなる特性を有している。この特性は、電界が高い部分の電位分担を減少させ等電位線Eの歪を減少させる作用を持ち、電界の高い部分が減少する。この結果、非直線抵抗特性を有する粉末を主材に充填して構成された絶縁筒9を使用する本実施の形態では、コンデンサ素子3−1、・・・の積層数すなわち、コンデンサユニット2の寸法を小さくしたまま絶縁性能を高くすることができる。
以上述べたように、本実施の形態によれば、小型でありながら絶縁信頼性の高いコンデンサユニット2を備えた密閉型開閉装置を得ることができる。
【0041】
(第5の実施の形態)
図7は、本発明の第5の実施の形態に係るコンデンサユニットの断面図であり、図8は本実施の形態におけるコンデンサ素子の一例を示す図である。
【0042】
図7および図8において、本実施の形態に係るコンデンサユニット2は、コンデンサ積層体3を構成するコンデンサ素子3−1、・・・の絶縁材3bの表面に非直線抵抗体で形成されたテープを貼付する、又は、非直線抵抗体の粉末を塗布する等によって、非直線抵抗体層10を形成したことを特徴とするものである。
【0043】
非直線抵抗体で形成された非直線抵抗体層10は、電界が強い部分では抵抗値が小さくなり、電界が弱い部分では抵抗値が大きくなる特性を有している。この特性は、電界が強い部分の電位分担を減少させる作用を持つ。
【0044】
このため、表面に非直線抵抗体で非直線抵抗体層10を形成したコンデンサ素子3−1、・・・によりコンデンサ積層体3を構成すれば、コンデンサ積層体3両端部の等電位線Eの歪が減少して、電界の強い部分が減少するので、コンデンサ素子3−1、・・・の積層数すなわち、コンデンサユニット2を小型にすることができる。
以上述べたように、本実施の形態によれば、小型でありながら絶縁信頼性の高いコンデンサユニット2を備えた密閉型開閉装置を得ることができる。
【0045】
(第6の実施の形態)
図9は、本発明の第6の実施の形態に係るコンデンサユニットに施した非直線抵抗体の電圧−電流特性を示す特性図である。
【0046】
本実施の形態は、前述した第3の実施の形態ないし第5の実施の形態に係るコンデンサユニットの構成要素である絶縁筒あるいはコンデンサ素子に施した非直線抵抗体としての非直線抵抗体テープもしくは非直線抵抗体粉末の抵抗値が急減する電圧を、非直線抵抗体テープもしくは非直線抵抗体粉末に含まれるZnO(酸化亜鉛)粒子の大きさや含有割合を変化させることによってコンデンサユニットに雷インパルス過電圧が印加された場合の電圧となるように調整したことを特徴としたものである。
【0047】
図9の電圧−電流特性においては、通常の商用運転電圧においては、非直線抵抗体テープもしくは非直線抵抗体粉末の抵抗値が大きく低下することがないため、運転電圧によって非直線抵抗体に大きな電流が流れることがなく、非直線テープや非直線粉末を取り付けた部分での熱的な損傷が生じにくい。
【0048】
この結果、本実施形態による電圧−電流特性を有する非直線抵抗体を施したコンデンサユニット2を採用すれば、コンデンサ素子3−1、・・・の積層数すなわち、コンデンサユニットの寸法を小さくしたまま絶縁性能を高くすることができ、密閉型開閉装置の絶縁信頼性を高くすることができる。
【0049】
(第7の実施の形態)
図10は、本発明の第7の実施の形態に係るコンデンサユニットに施した非直線抵抗体の電圧−電流特性を示す特性図である。
【0050】
本実施の形態は、前述した第3の実施の形態ないし第5の実施の形態に係るコンデンサユニット2の構成要素である絶縁筒4および9、あるいはコンデンサ素子3−1に施した非直線抵抗体である非直線抵抗体テープもしくは非直線抵抗体粉末の抵抗値が急減する前の領域での抵抗値を、その抵抗値と非直線抵抗体テープもしくは非直線抵抗体粉末の誘電率との積で決まる材料の時定数が商用周波数の周期よりも大きくなる範囲でできるだけ小さくなる様に調整したことを特徴としたものである。具体的には、ZnO粒子の大きさや含有割合を変化させることによって、電圧−電流特性を変化させる。これは抵抗値を調整することに対応する。誘電率は、アルミナ等の絶縁物を充填することによって調整する。これらの調整の結果、抵抗値と誘電率の積である時定数も調整することができる。
【0051】
図10の特性の非直線抵抗体テープまたは非直線抵抗体粉末では、商用周波電圧に対しては、非直線抵抗体テープもしくは非直線抵抗体粉末が誘電体として作用するため電界設計しやすくなる。また、ガス絶縁開閉装置の遮断器と断路器との間に生じやすい残留直流電圧に対しては、非直線抵抗体テープもしくは非直線抵抗体粉末が抵抗として作用して、残留直流電圧を非直線抵抗体を通して効率的に放電させ除去することができる。
【0052】
この結果、本実施形態による電圧−電流特性を有する非直線抵抗体を施したコンデンサユニット2を採用すれば、コンデンサ素子3−1、・・・の積層数すなわち、コンデンサユニット全体の寸法を小型にしたまま残留直流電圧に対する絶縁性能を高めることができ、密閉型開閉装置の絶縁信頼性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明装置が適用される密閉型開閉装置の結線図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るコンデンサユニットの断面図。
【図3】本発明の第1の実施の形態で採用するコンデンサ素子の断面図。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るコンデンサユニットの断面図。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係るコンデンサユニットの断面図。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係るコンデンサユニットの断面図。
【図7】本発明第5の実施の形態に係るコンデンサユニットの断面図。
【図8】本発明第5の実施の形態で採用するコンデンサ素子の断面図。
【図9】本発明第6の実施の形態に係るコンデンサユニットに施した非直線抵抗体の電圧−電流特性を示す特性図。
【図10】本発明第7の実施の形態に係るコンデンサユニットに施した非直線抵抗体の電圧−電流特性を示す特性図。
【図11】従来の密閉型開閉装置の遮断器接点の静電容量を示す説明図。
【図12】遮断器接点の電圧を示す説明図。
【図13】遮断器接点にコンデンサユニットを接続した状態を示す等価回路図。
【図14】従来のコンデンサユニットに用いるコンデンサ素子の断面図。
【図15】従来のコンデンサユニットのコンデンサ積層体を示す図。
【図16】従来のコンデンサユニットの断面図。
【図17】従来のコンデンサユニットの等電位線を示す図。
【符号の説明】
【0054】
1…密閉型開閉器、2…コンデンサユニット、3…コンデンサ積層体、3−1、…3−n…コンデンサ素子、3a誘電体、3b…絶縁材、3c1,3c2…電極、4…絶縁筒、5a、5b…接続電極、6a、6b…静電シールド電極、7…支持絶縁物、8…非直線抵抗体層、9…非直線抵抗体材料を充填した絶縁筒、10…非直線抵抗体層、D…電界が強くなりやすい領域、E…等電位線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体の周囲を絶縁材で被覆したコンデンサ素子を複数個直列に接続してなるコンデンサ積層体を絶縁筒に収納し、かつ、当該コンデンサ積層体の両端部を接続電極を介して静電シールド電極に接続するように構成されたコンデンサユニットにおいて、
前記コンデンサ素子の前記誘電体に接続される電極の内の一方を前記絶縁材とほぼ同一面にしたことを特徴とするコンデンサユニット。
【請求項2】
コンデンサ素子を複数個直列に接続してなるコンデンサ積層体を絶縁筒に収納し、かつ、当該コンデンサ積層体の両端部を接続電極を介して静電シールド電極に接続するように構成されたコンデンサユニットにおいて、
前記コンデンサ積層体の両端部およびその近傍のコンデンサ素子の静電容量を中央部のコンデンサ素子の静電容量よりも大きくしたことを特徴とするコンデンサユニット。
【請求項3】
コンデンサ素子を複数個直列に接続してなるコンデンサ積層体を絶縁筒に収納し、かつ、当該コンデンサ積層体の両端部を接続電極を介して静電シールド電極に接続するように構成されたコンデンサユニットにおいて、
前記絶縁筒の壁面に非直線抵抗体層を施したことを特徴とするコンデンサユニット。
【請求項4】
コンデンサ素子を複数個直列に接続してなるコンデンサ積層体を絶縁筒に収納し、かつ、当該コンデンサ積層体の両端部を接続電極を介して静電シールド電極に接続するように構成されたコンデンサユニットにおいて、
前記絶縁筒は、前記絶縁材に非直線抵抗体を充填して構成されることを特徴とするコンデンサユニット。
【請求項5】
コンデンサ素子を複数個直列に接続してなるコンデンサ積層体を絶縁筒に収納し、かつ、当該コンデンサ積層体の両端部を接続電極を介して静電シールド電極に接続するように構成されたコンデンサユニットにおいて、
前記コンデンサ素子の表面に非直線抵抗体層を設けたことを特徴とするコンデンサユニット。
【請求項6】
前記非直線抵抗体の抵抗値が急減する電圧を、コンデンサユニットに雷インパルス過電圧が印加された場合の電圧となるように調整したことを特徴とする請求項3、4、5のいずれかに記載のコンデンサユニット。
【請求項7】
前記非直線抵抗体の抵抗値が急減する前の領域での抵抗値を、その抵抗値と当該非直線抵抗体の誘電率との積で決まる材料の時定数が商用周波数の周期よりも大きくなる範囲で可能な限り小さくなるように調整したことを特徴とする請求項3、4、5のいずれかに記載のコンデンサユニット。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載のコンデンサユニットを、静電シールド電極間に接続し、当該静電シールド電極を主回路のスイッチに並列接続したことを特徴とする密閉型開閉装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2009−54400(P2009−54400A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219698(P2007−219698)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】