説明

コンデンサ素子製造装置

【課題】ハイブリッド自動車等に使用される金属化フィルムコンデンサに関し、巻き出し状態が変動してしわが入り、コンデンサ特性が劣化するという課題を解決し、優れた性能のコンデンサ素子を製造できるコンデンサ素子製造装置を提供することを目的とする。
【解決手段】フィルムを送り出す第1・第2の供給部と、この供給部から送り出される2枚のフィルムを一対で重ね合わせて巻回する巻き取り部とを有し、上記供給部から送り出されるフィルムをガイドする2本のローラを備え、漸減するフィルム残量に追従して移動し、フィルムの巻き出し状態を常に一定に保つことができるため、薄いフィルムでもフィルムにしわが入らず、安定した性能のコンデンサ素子を製造することができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子機器、電気機器、産業機器、自動車等に使用され、特に、ハイブリッド自動車のモータ駆動用インバータ回路の平滑用、フィルタ用、スナバ用として最適な金属化フィルムコンデンサを製造する際に使用されるコンデンサ素子製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、あらゆる電気機器がインバータ回路で制御され、省エネルギー化、高効率化が進められている。中でも自動車業界においては、電気モータとエンジンで走行するハイブリッド車(以下、HEVという)が市場導入される等、地球環境に優しく、省エネルギー化、高効率化に関する技術の開発が活発化している。
【0003】
このようなHEV用の電気モータは使用電圧領域が数百ボルトと高いため、このような電気モータに関連して使用されるコンデンサとして、高耐圧で低損失の電気特性を有する金属化フィルムコンデンサが注目されており、さらに市場におけるメンテナンスフリー化の要望からも極めて寿命が長い金属化フィルムコンデンサを採用する傾向が目立っている。
【0004】
そして、この種の金属化フィルムコンデンサは、樹脂からなる誘電体フィルム上に金属蒸着電極を形成した金属化フィルムを一対の金属蒸着電極が誘電体フィルムを介して対向するように巻回することによりコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子の両端面に金属溶射によるメタリコンからなる取り出し電極を夫々形成することにより構成されるものであり、このようなコンデンサ素子を製造する装置について以下に説明する。
【0005】
図4はこの種の従来のコンデンサ素子製造装置の構成を示した正面図であり、図4において、例えば、掛軸15に金属化フィルムの材料巻回物16を装填し、掛軸17にセパレータフィルムの材料巻回物18を装填した後、それぞれ誘導ローラ19を経て合わせローラ20に導かれ、ローター21の巻芯軸22に巻回されてコンデンサ素子23が作られるというものである。
【0006】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平7−74065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記従来のコンデンサ素子製造装置では、誘導ローラ19は装置本体に固定された構成であるため、材料巻回物16である金属化フィルムを順次供給してコンデンサ素子23を作製するに伴って金属化フィルムの残量は漸減してしまう。そして、この金属化フィルムの残量が漸減することにより、図5に示すように、巻回された状態から順次送り出される金属化フィルムの巻き出し状態は、使用前の径が最大の状態16aと残量がゼロになる直前の状態16bとでは全く異なる状態になるものであった。
【0008】
この金属化フィルムの巻き出し状態の差は、巻回状態から開放されて誘導ローラ19までの短い距離において、金属化フィルムに加わる負荷が大きく変動することになり、特に薄い金属化フィルムを用いた場合には金属化フィルムにしわが入るという症状で現れ、結果的にコンデンサ特性に悪影響を与えるという課題があった。
【0009】
なお、このような問題を解決する目的で、巻回された金属化フィルムの外周面を加圧する図示しないゴム製の加圧ローラを設けることも考えられるが、特に薄い金属化フィルムを用いた場合には金属化フィルムに傷が入るようになるために好ましくないものであった。
【0010】
本発明はこのような従来の課題を解決し、フィルムの残量に関係なく、コンデンサ素子を安定して作製することが可能なコンデンサ素子製造装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明は、少なくとも、ボビンまたはリールに巻回されたフィルムを送り出す第1の供給部と、同様に構成された第2の供給部と、この第1・第2の供給部から夫々送り出される2枚のフィルムを一対として重ね合わせて巻回する巻き取り部とを有したコンデンサ素子製造装置において、上記供給部から送り出されるフィルムの搬送をガイドする少なくとも2本のローラを備え、順次供給されることにより漸減するフィルムの残量に追従して供給部の中心に向かって移動することにより、供給部から送り出されるフィルムの巻き出し状態を常に一定に保つように構成された追従ローラ部を第1・第2の供給部に夫々隣接して設けた構成にしたものである。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明によるコンデンサ素子製造装置は、少なくとも2本のローラを備えた追従ローラ部が漸減するフィルムの残量に追従して移動することにより、供給部から送り出されるフィルムの巻き出し状態を常に略一定に保つことができるようになるためにフィルムに加わる負荷が大きく変動することがなく、薄いフィルムを用いた場合でもフィルムにしわが入ることがなく、安定した性能のコンデンサを製造することができるようになるという効果が得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1を用いて、本発明の特に請求項1、2、4に記載の発明について説明する。
【0014】
図1は本発明の実施の形態1によるコンデンサ素子製造装置の構成を示した概念図、図2は同装置の追従ローラ部の動作を説明するための概念図であり、図1と図2において、1はボビンまたはリールに巻回されて巻き出し軸2に装填された金属化フィルムであり、本実施の形態では、この金属化フィルム1を2枚一対として重ね合わせて巻回する構成のものであるため、2組の金属化フィルム1を夫々充填できるように、巻き出し軸2が2本備えられた構成になっているものである。
【0015】
また、本実施の形態ではこの金属化フィルム1として、ポリプロピレンからなる誘電体フィルムの片面に金属蒸着電極を形成することによって構成された、幅80mm、厚さ3μmのものを用いた。
【0016】
3は上記金属化フィルム1の搬送経路に複数本設けられて金属化フィルム1の搬送をガイドするガイドローラ、4はダンサーローラ、5は加圧ローラである。6は巻き取り部を構成する巻芯、7はこの巻芯6により巻回されたコンデンサ素子である。
【0017】
8は追従ローラ部、9はこの追従ローラ部8に設けられた2本の追従ローラ、10はこの追従ローラ部8に設けられたセンサ、11はこの追従ローラ部8の下面に設けられた溝と噛み合って追従ローラ部8を移動させるためのギヤである。
【0018】
このように構成された本実施の形態によるコンデンサ素子製造装置の動作について説明すると、まず、ボビンまたはリールに巻回されて巻き出し軸2に装填された金属化フィルム1はボビンまたはリールから巻き出され、追従ローラ部8の追従ローラ9→ガイドローラ3→ダンサーローラ4→ガイドローラ3→加熱ローラ5を経て図中の左方向の巻芯6へと搬送され、2枚の金属化フィルム1を一対として重ね合わせた状態で巻芯6上に巻回されてコンデンサ素子7が作製されるものである。
【0019】
また、このようにしてコンデンサ素子7を連続して作製すると、当然のことながらボビンまたはリールに巻回された金属化フィルム1は漸減し、残量が減少していくため、本実施の形態によるコンデンサ素子製造装置では、図2に示すように、追従ローラ部8に設けたセンサ10により金属化フィルム1の残量を常に検知し、検知した残量に応じてギヤ11を回転させて追従ローラ部8を図中の右方向へ移動させることにより、追従ローラ部8に設けた追従ローラ9が巻回された金属化フィルム1の外周面と接触することなく、常に略一定の距離を保って追従するようにしているものである。
【0020】
このように本実施の形態によるコンデンサ素子製造装置は、ボビンまたはリールに巻回されて順次供給されることにより漸減する金属化フィルム1の残量と無関係に、金属化フィルム1の巻き出し状態を常に略一定に保つことができるようになり、これにより、金属化フィルム1に加わる負荷が変動することもないため、薄い金属化フィルムを用いた場合でもしわが入ったりすることがなくなり、優れた性能のコンデンサ素子を安定して製造することができるようになるものである。
【0021】
なお、本実施の形態では、金属化フィルム1として、ポリプロピレンからなる誘電体フィルムの片面に金属蒸着電極を形成することによって構成された、幅80mm、厚さ3μmのものを用いた例で説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、誘電体フィルムの両面に金属蒸着電極を形成した金属化フィルムとセパレータフィルムとを2枚一対で用いたり、幅や厚みが異なる金属化フィルムを用いることも可能であり、同様の効果が得られるものである。
【0022】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2を用いて、本発明の特に請求項3に記載の発明について説明する。
【0023】
本実施の形態は、上記実施の形態1で説明したコンデンサ素子製造装置の巻芯の構成が一部異なるようにしたものであり、これ以外の構成は実施の形態1と同様であるために同一部分には同一の符号を付与してその詳細な説明は省略し、異なる部分についてのみ以下に図面を用いて説明する。
【0024】
図3は本発明の実施の形態2によるコンデンサ素子製造装置の巻芯の構成を示した正面図であり、図3において、12は円柱状に形成された巻芯の本体部、12aはこの本体部12に分割構造で対向するように組み込まれ、お互いに中心に向かって(図中の左右方向に)スライド自在に構成された可動部である。
【0025】
このように構成された本実施の形態による巻芯は、巻芯を分割構造の円柱状とし、この分割された巻芯の少なくとも対向する一部に可動部12aを設け、この可動部12aがお互いに中心に向かってスライドするようにした構成により、巻回を終えたコンデンサ素子を巻芯から抜き取る際に、可動部12aを中心に向かってスライドさせることにより部分的に径が小さくなるためにコンデンサ素子を抜き取り易くすることができるようになるという格別の効果を奏するものである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によるコンデンサ素子製造装置は、供給部から送り出される金属化フィルムの巻き出し状態を常に略一定に保つことができるようになるために、金属化フィルムの残量によって金属化フィルムに加わる負荷が大きく変動するということがなく、薄い金属化フィルムを用いた場合でもしわが入ったりすることがなくなり、優れた性能のコンデンサ素子を安定して製造することができるようになるという効果を有し、特に、HEV用の金属化フィルムコンデンサ等を製造する製造装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態1によるコンデンサ素子製造装置の構成を示した概念図
【図2】同装置の追従ローラ部の動作を説明するための概念図
【図3】本発明の実施の形態2によるコンデンサ素子製造装置の巻芯の構成を示した正面図
【図4】従来のコンデンサ素子製造装置の構成を示した正面図
【図5】従来の誘導ローラ部の動作を説明するための概念図
【符号の説明】
【0028】
1 金属化フィルム
2 巻き出し軸
3 ガイドローラ
4 ダンサーローラ
5 加圧ローラ
6 巻芯
7 コンデンサ素子
8 追従ローラ部
9 追従ローラ
10 センサ
11 ギヤ
12 巻芯の本体部
12a 可動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ボビンまたはリールに巻回されたフィルムを送り出す第1の供給部と、同様に構成された第2の供給部と、この第1・第2の供給部から夫々送り出される2枚のフィルムを一対として重ね合わせて巻回する巻き取り部とを有したコンデンサ素子製造装置において、上記供給部から送り出されるフィルムの搬送をガイドする少なくとも2本のローラを備え、順次供給されることにより漸減するフィルムの残量に追従して供給部の中心に向かって移動することにより、供給部から送り出されるフィルムの巻き出し状態を常に一定に保つように構成された追従ローラ部を第1・第2の供給部に夫々隣接して設けたコンデンサ素子製造装置。
【請求項2】
漸減するフィルムの残量を検知するセンサを追従ローラ部に設けた請求項1に記載のコンデンサ素子製造装置。
【請求項3】
巻き取り部でフィルムを巻回する巻芯を分割構造の円柱状とし、この分割された巻芯の少なくとも対向する一部どうしがお互いに中心に向かってスライドするようにした請求項1に記載のコンデンサ素子製造装置。
【請求項4】
少なくとも、第1・第2の供給部のいずれか一方に装填するフィルムとして、誘電体フィルム上に金属蒸着電極を形成した金属化フィルムを用いる請求項1に記載のコンデンサ素子製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−123379(P2007−123379A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−310769(P2005−310769)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】