説明

コントラストが向上した平版印刷版の調製

画像とバックグラウンドとの間のコントラストが向上した平版印刷版を、画像化すなわち露光領域を水不溶性着色剤(染料又は顔料)と着色剤が画像化された領域内に埋め込まれるか又は拡散するように画像化領域を十分に膨潤させる有機溶媒とを含有する着色性流体を用いて着色することによって調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像とバックグラウンドとの間のコントラストが向上した平版印刷版を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、すなわち「湿式の」平版印刷では、画像部として知られているインク受容領域は、親水性表面上に形成される。この表面が水で湿らされ、インクが適用された場合に、親水性領域は水を保持してインクをはじき、そしてインク受容領域はインクを受容して水をはじく。そのインクは最終的には画像が再生されるべき材料の表面に転写される。
【0003】
平版印刷版を調製するために有用な画像化可能な要素は、一般的には基板の親水性表面の上に適用される1つ又は複数の画像化可能な層を含んでいる。この画像化可能な層は、適切なバインダー中に分散することができる1つ又は複数の放射感受性成分を含んでいる。別法では、この放射感受性成分はバインダー材料でもあり得る。画像化に続いて、この画像化可能な層の画像化領域又は非画像化領域のいずれかが、適切な現像液によって取り除かれて、下にある基板の親水性表面を露出させる。画像化領域が取り除かれる場合には、この要素はポジ型とみなされる。反対に、非画像化領域が取り除かれる場合には、この要素はネガ型とみなされる。それぞれの場合において、残っている画像化可能な層の領域(すなわち、画像部)は、インク受容性であり、そして現像プロセスによって露出された親水性表面の領域は水、及び、水溶液、一般的には湿し水を受容し、インクをはじく。
【0004】
直接デジタル画像化が、印刷業界においてますます重要になってきている。平版印刷版の調製のための画像化可能な要素が、赤外レーザーで使用するために開発されており、それは、プレートセッターに接続されているコンピューター内の画像のデジタルコピーからの信号に応じて画像化する。この「CTP(computer-to-plate)」技術は、マスキングフィルムが要素を画像化するために使用されていたかつての技術を広く置き換えた。
【0005】
一般に、平版印刷版は、印刷機に取り付けられる前に光学濃度測定によって評価されるようにその画像を目に見えるようにする機能を有する着色剤(染料又は顔料)を放射感受性組成物中に含んでいる。言い換えれば、上記の着色剤は、画像とバックグラウンドとの間にコントラストを与える。ある種の平版印刷版は、様々な理由で着色剤を含むことができない。例えば、通常オンプレスで現像される画像化された印刷版前駆体は、もし着色剤が存在すると、それは現像及び印刷のために使用される平版印刷インク及び湿し水を汚染して印刷された色合いを変える結果となる可能性があるために、無色のコーティングを有する。しかしながら、時々、かかる印刷版は、オフプレスで現像されるものと同じように使用されることが必要である。そのような場合には、その画像は目で見て評価することが必要である。
【0006】
他の平版印刷版は、コントラストを与える着色剤と混和性ではない材料を含む。そのような印刷版は、陽極酸化処理したアルミニウム基板のバックグラウンドと見分けることが困難な薄色の画像を有する。この低い画像コントラストは、これらの印刷版を、版を印刷機に据えつける前に光学濃度測定を用いて測定される画像解像度等の画像品質について評価することを殆んど不可能にする。かかる「無色の」版は、それらを印刷機に据えつけるときに「見当合わせする」(整列させる)のも困難である。画像の見当合わせ(整列)は、画像のシャープネス(解像度)及び正確な色付けの色調を確保するためにカラー印刷においては非常に重要である。
【0007】
米国特許第6451491号(Dhillonら)は、コントラストを与える顔料を、特定のポリ(ビニルアセタール)ポリマー及び特定の添加溶媒混合物の組合せを用いて、画像化層中に高い割合で添加することについて記載している。かかる高い量の顔料は、それらがネガ型平版印刷版前駆体中の非画像化領域を除去するために使用される画像化化学作用又は現像液を不安定化することがあり得るので、すべての平版印刷版には適さないかもしれない。
【0008】
その他のコントラストを与える着色剤が、例えば、米国特許第7402374号(Oohashiら)、米国特許第7425406号(Oshimaら)及び米国特許第7462440号(Yamasaki)に記載されているように、酸又は熱酸発生剤の存在下で着色するロイコ染料から得られる。これらの画像化材料は、いくつかの不都合を有しており、(i)酸又はラジカルを形成する機構が、特にオンプレスで現像された印刷版において、時期尚早的に版の乾燥中に始動され、望ましくない色をもたら可能性があり、(ii)多くの場合、染料の着色した形は、版が現像液中で現像される場合過剰なコーティングの損失をもたらし、厳しい場合にはそのコーティング及び色が現像液中で洗い落とされる水に可溶性の塩であり、(iii)染料、特にトリアリールメタン系染料の着色された形のいくつかは、光に敏感であり、版の取扱いに追加の事前の注意を持ち込み、そして(iv)画像とバックグラウンドとの間の良好なコントラストを確保するために、高い割合のロイコ染料及び潜在酸をコーティングに添加しなければならない。これらの成分は、感光性のコーティングの保存寿命、力学的性質及び耐刷性に悪影響を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6451491号
【特許文献2】米国特許第7402374号
【特許文献3】米国特許第7425406号
【特許文献4】米国特許第7462440号
【特許文献5】米国特許第6582882号
【特許文献6】米国特許第6899994号
【特許文献7】米国特許第7153632号
【特許文献8】WO2007/077207
【特許文献9】EP1182033A2
【特許文献10】米国特許第6309792号
【特許文献11】米国特許第6569603号
【特許文献12】米国特許第6893797号
【特許文献13】米国特許第5629354号
【特許文献14】米国特許第4565769号
【特許文献15】米国特許第6562543号
【特許文献16】米国特許第6908726号
【特許文献17】WO2004/074929
【特許文献18】米国特許出願公開第2006/0063101号
【特許文献19】米国特許出願公開第2006/0234155号
【特許文献20】WO2006/053689
【特許文献21】WO2004/074929
【特許文献22】米国特許出願公開第2002/0068241号
【特許文献23】WO2004/101280
【特許文献24】米国特許第5086086号
【特許文献25】米国特許第5965319号
【特許文献26】米国特許第6051366号
【特許文献27】米国特許第7368215号
【特許文献28】米国特許第6884568号
【特許文献29】米国特許第5208135号
【特許文献30】米国特許第6153356号
【特許文献31】米国特許第6264920号
【特許文献32】米国特許第6787281号
【特許文献33】米国特許第7135271号
【特許文献34】米国特許第7018775号
【特許文献35】WO2004/101280
【特許文献36】米国特許第5496903号
【特許文献37】米国特許第4973572号
【特許文献38】米国特許第7049046号
【特許文献39】米国特許第7326521号
【特許文献40】米国特許第7332253号
【特許文献41】EP1182033A1
【特許文献42】米国特許第4874686号
【特許文献43】米国特許第7729255号
【特許文献44】米国特許第6916595号
【特許文献45】米国特許第7041416号
【特許文献46】米国特許出願第11/949810号
【特許文献47】米国特許第6352812号
【特許文献48】米国特許第7175949号
【特許文献49】米国特許第7005234号
【特許文献50】米国特許出願公開第2005/0003285号
【特許文献51】米国特許第7175969号
【特許文献52】米国特許出願公開第2005/0170282号
【特許文献53】WO99/06890
【特許文献54】米国特許第3458311号
【特許文献55】米国特許第4072527号
【特許文献56】米国特許第4072528号
【特許文献57】EP275147A2
【特許文献58】EP403096A2
【特許文献59】EP354475A2
【特許文献60】EP465034A2
【特許文献61】EP352630A2
【特許文献62】EP1788429
【特許文献63】EP1788431
【特許文献64】EP1788434
【特許文献65】米国特許出願公開第2005/0266349号
【特許文献66】米国特許第5488025号
【特許文献67】米国特許出願第12/104544号
【特許文献68】米国特許第6478483号
【特許文献69】米国特許第5887214号
【特許文献70】米国特許第6992688号
【特許文献71】米国特許第7261998号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】国際純正・応用化学連合(「IUPAC」)、「高分子科学の基本的術語の用語集(Glossary of Basic Terms in Polymer Science)」、Pure Appl. Chem.、68巻、1996年、2287〜2311頁
【非特許文献2】A Reiser、Photoreactive Polymers: The Science and Technology of Resists、Wiley、New York、1989年、102〜177頁
【非特許文献3】B.M. Monroe、Radiation Curing: Science and Technology、S.P. Pappas編、Plenum、New York、1992年、399〜440頁
【非特許文献4】A.B. Cohen及びP. Walker、「Polymer Imaging」、Imaging Processes and Material、J.M. Sturgeら(編)、Van Nostrand Reinhold、New York、1989年、226〜262頁
【非特許文献5】McCutcheon's Emulsifiers & Detergents、2007年版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
平版印刷版、特にネガ型平版印刷版前駆体から調製されるもの、の画像とバックグラウンドとの間のコントラストを提供するための改良された手段に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、平版印刷版の製造方法であって、順番に、
A)基板と、その上に配置されている、フリーラジカル重合性成分、放射吸収性化合物、フリーラジカル開始剤組成物及びポリマーバインダーを含む放射感受性の画像化可能層を備えるネガ型平版印刷版前駆体を画像様式で露光して、ベタ露光領域と非露光領域とを前記画像化可能層中に有しており、前記ベタ露光領域がOD1の光学濃度を有する露光済み前駆体を提供する工程と、
B)水不溶性着色剤と、前記画像化可能層の前記ベタ露光領域を膨潤可能な溶媒とを含む着色性流体を、前記画像化済み前駆体に、前記ベタ露光領域内の光学濃度がOD1より大きいOD2となるように塗布する工程と、
を含む方法を提供する。
【0013】
実施形態によっては、オンプレス現像は工程B後に行われる。その他の実施形態においては、現像はオフプレスで、例えば、以下の工程C
C)工程B)前に、工程B)と同時に又は工程B)後に、前記画像化済み前駆体を、前記画像化可能層の前記非露光領域を除去するための処理溶液を用いて現像して平版印刷版を提供する工程、により行われる。
【0014】
このオフプレス実施形態においては、前記平版印刷版は現像後水で濯ぐことができる。
【0015】
平版印刷版の画像とバックグラウンドとの間の画像コントラストを、特にネガ型平版印刷版から得られた印刷版に対して増加する有利な方法を本発明が提供することを本発明者らは見出した。かくして、この画像は、バックグラウンドから際立たせて、印刷前の評価を可能とし、様々な形体の面積百分率、例えば0.5%〜99%のスクリーン及びベタ画像の光学濃度(100%)等の測定を可能にすることができる。
【0016】
これらの利点は、画像化可能層の露光領域を膨潤可能な溶媒を含有している水不溶性着色剤(染料又は顔料)の着色性流体(溶液又は分散液)により該印刷版を処理することによって達成される。この着色剤がそれらの領域内に埋め込まれ、その膨潤は、露光領域内の過剰なコーティング重量損失、画像変化、コーティングの汚れ又は画像の完全な分解等の問題を回避するように制御されたやり方で行われる。露光(画像)領域の着色は、着色剤のコーティング中への溶解又は拡散によるか或いは単純にその色を軟化したコーティング中に加圧(例えばラビング若しくはブラッシング)又は温度によって浸透させる(埋め込む)ことによって促進することができる。
【0017】
このコントラストを高める着色性流体は、(1)画像化可能層の非露光領域のため、及び、ワンステップ処理で同時に露光領域に対する着色剤を提供するための処理溶液(例えば現像液)であるように、(2未)現像の画像化要素に塗布され、続いて適当な処理溶液中で現像される着色性溶液であるように、或いは、(3)それが画像化可能層の露光領域を着色することを唯一の目的として現像後に塗布することができるように、多様な用途を有するように配合することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
本明細書が別に定義していない限り、本明細書で使用される用語「画像化可能な要素」、「平版印刷版前駆体」及び「印刷版前駆体」は、本発明の実施形態を意図している。
【0019】
加えて、本明細書が別に定義していない限り、本明細書に記載されている様々な成分、例えば、「ポリマーバインダー」、「開始剤」、「共開始剤」、「フリーラジカル重合性成分」、「放射吸収性化合物」、「着色剤」及び類似の用語等はその混合物も包含する。したがって、本明細書の原文における不定冠詞「a」、「an」」及び定冠詞「the」の使用は、必ずしも単一の成分のみを指すつもりのものではない。
【0020】
更に、別段の定義がない限り、百分率は、乾燥重量によるパーセント、例えば、全体の固形分又は乾燥した層組成物に基づく重量%を指す。
【0021】
ポリマーに関する用語に対する定義の明確化のために、国際純正応用化学連合(「IUPAC」、the International Union of Pure and Applied Chemistry)によって出版された「高分子科学の基本的術語の用語集(Glossary of Basic Terms in Polymer Science)」、Pure Appl. Chem.、68巻、1996年、2287〜2311頁を参照すべきである。しかしながら、本明細書に明確に示されている定義は、支配的なものとみなすべきである。
【0022】
「グラフト」ポリマー又はコポリマーは、少なくとも200の分子量を有する側鎖を有するポリマーを指す。
【0023】
用語「ポリマー」は、オリゴマーを含む高分子量ポリマー及び低分子量ポリマーを指し、ホモポリマー及びコポリマーを含める。
【0024】
用語「コポリマー」は、2つ以上の異なるモノマーから生じるポリマーを指す。
【0025】
用語「主鎖」は、複数のペンダント基が結合することができるポリマー中の原子(炭素又はヘテロ原子)の鎖を指す。そのような主鎖の一例は、1つ又は複数のエチレン性不飽和重合性モノマーの重合から得られる「全部炭素の」主鎖である。しかしながら、他の主鎖は、ポリマーが縮合反応又は何らかの他の手段によって形成されてヘテロ原子を含むことができる。
【0026】
用語「着色剤」は、水不溶性染料又は顔料、並びに、染料、顔料、或いは染料及び顔料のいずれかの混合物を指す。
【0027】
用語OD1は、分光濃度計を用いて測定された平版印刷版前駆体のベタ画像の光学濃度を指す。この値は、該印刷版前駆体の全域に分布しているいくつかのベタパッチ上でとった濃度計の観察値の平均である。それぞれのベタパッチは、使用される特定の機器に対する操作指示書に従う適切な濃度計の観察のために十分な大きさでなければならない。光学濃度(OD)は、適切な分光濃度計、例えばX-Rite 500(ミシガン州グランドラピッズ、X-Rite, Inc.)等を用いて測定することができる。この分光濃度計は、4つのプロセスカラー、すなわち、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの濃度を測定するために使用される4つのフィルターが取り付けられている。一般的には、当業者であれば、光学濃度を測定するときにどのフィルターを選択すべきか特定することができる。例えば、4つのフィルターのそれぞれにより独立してベタ画像部を測定し、次に、最大の光学濃度値をもたらすフィルターを選択することができる。
【0028】
用語OD2は、平版印刷版前駆体のベタの露光されてかつ着色された領域の光学濃度を指す。この値は、着色されたベタ画像部上での平均である。分光濃度計フィルターは、OD2の測定に対して、上記のように選ばれる。
【0029】
OD1とOD2との間の差は、0.1を超え、大抵は0.25以上である。
【0030】
着色性流体
以下でより詳細に記すように、この着色性流体は、処理(現像)の前、途中、又は後に画像化平版印刷版前駆体に塗布することができる。それが処理の前に塗布される場合、画像化可能な層の非露光領域は、多くの場合この塗布(工程B)の後、少なくとも部分的に保持される。
【0031】
この着色性流体は、一般に、顔料又は水不溶性染料等の水不溶性着色剤、画像化(露光された)領域の有機材料を膨潤させて染料又は顔料の拡散、溶解、又は埋め込みを可能にする溶媒、非溶媒、湿潤剤、柔軟剤及び界面活性剤を含有する。陽極酸化処理したアルミニウムの水運搬特性を維持する減感剤を添加することもできる。該画像化可能な層のコーティングと似ている溶解パラメーターを有する有機溶媒と水不溶性顔料及び染料は有用であるが本発明はそれには限定されない。画像化可能な層のコーティングを軟化し、着色剤の拡散又は埋め込みを促進する保湿剤、柔軟剤、顔料分散剤及び界面活性剤も望ましい。この着色性流体は、一般に、着色剤の埋め込みを可能にする画像化領域の軟化又は膨潤の適正量を確保するために配合される。過剰の軟化は、版の画像化領域の汚れ、スクリーンの目詰まり、埋め込まれた着色剤が画像化層の溶解する層と共に洗い落とされ、該画像化可能な層のコーティングが基板へのその接着性を失い、ドットサイズがシャープになる(過剰な溶解のため)か又は大きくなる(過剰な膨潤又は汚れのため)ことのいずれかによって変化する等の悪影響を与える。この着色性流体は、一般に水溶液である。
【0032】
油溶性染料及び溶媒染料を含む任意の種類の水不溶性染料及び顔料を使用することができる。有用な水不溶性染料の種類としては、以下に限定されないが、ジアゾ染料、フェナジン-アジン、トリフェナジン-オキサジン及びインドリン染料が挙げられ、具体例としては、スーダンブラックB及びニグロシン染料(ソルベントブラック5、ソルベントブラック7、アシッドブラック2及びカルボキシル変性ニグロシン)が挙げられる。
【0033】
有用な顔料としては、アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレート化アゾ顔料、フタロシアニン顔料、アントラキノン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、チオインジゴ顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、染色レーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、グラファイト及びカーボンブラックが挙げられるがこれらに限定されない。
【0034】
この着色性流体は、1つ又は複数の水不溶性着色剤を該着色性流体の重量基準で0.5%乃至80%、典型的には2%乃至30%、より典型的には2%乃至20%の量で含有する。有用な水不溶性染料及び顔料は、一般に、0.001乃至10μm、又は典型的には0.001乃至1μm、又はより典型的には0.001乃至0.05μmの粒径を有する。
【0035】
画像化可能な層の露光領域を膨潤させることができる有用な溶媒の例として、ブトキシエタノール、γ-ブチロラクトン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレン(又はエチレン)グリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、トルエン、ケロセン、ミネラルスピリット、ジクロロエタン及びテトラクロロエタンが挙げられるがこれらに限定されない。ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、γ-ブチロラクトン、ブトキシエタノール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、グリコールエーテル、石油留分、グリコールエステル、乳酸アルキル、トルエン、又は任意のこれらの組合せは特に有用である。1つ又は複数のこれらの溶媒が、該着色性流体中に、全体の着色性流体重量を基準として、0.5乃至80重量%、又は典型的には1乃至20重量%の量で一般に存在する。
【0036】
一定のpHを与える酸又はアルカリ化合物、並びにそのpHを維持する緩衝剤を加えることができる。このタイプの有用な化合物としては、アルカリ性のpHには、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、第一級及び第二級アミン、酸性のpHには、有機酸及び無機酸又は酸性塩が挙げられるがこれらに限定されない。この着色性流体は、1から14までのpHを、特にそれが処理溶液として、並びにコントラスト増強を提供するために使用される場合は典型的には4から10までのpHを有することができる。
【0037】
この着色性流体中に存在することができる柔軟剤の例としては、以下に限定されないが、全体の着色性流体の重量基準で、0.5乃至50重量%の量の、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジ-及びトリ-エタノールアミン、脂肪酸とそれらの塩及びエステル、プロパノール、イソプロパノール、並びにシクロヘキサノールが挙げられる。
【0038】
この着色性流体は、また、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びフッ素含有界面活性剤を含めた1つ又は複数の界面活性剤を含むことができる。有用な非イオン性界面活性剤としては、以下の種類の化合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド及びポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのコポリマー、からの1つ又は複数の化合物が挙げられる。その他の有用な非イオン性界面活性剤としては、BASFからLugalvan(登録商標)BNO 12及び24として市販されているもの等のβ-ナフトールエトキシレートが挙げられる。
【0039】
有用なアニオン性界面活性剤としては、以下に限定されないが、脂肪酸塩、アビエチン酸塩、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩、N-アルキルスルホコハク酸モノアミドジナトリウム塩、アルキル若しくはアリールスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩が挙げられる。
【0040】
有用なカチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩及びポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0041】
有用な両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、アミノカルボン酸、スルホベタイン、アミノ硫酸エステル及びイミダゾリン系界面活性剤が挙げられるがこれらに限定されない。
【0042】
有用なフッ素含有界面活性剤としては、アニオン性タイプ、例えば、フルオロアルキルカルボキシレート、フルオロアルキルスルホネート及びフルオロアルキルホスフェート;両性タイプ、例えば、フルオロアルキルベタイン;カチオン性タイプ、例えば、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩;及び非イオン性タイプ、例えば、フルオロアルキルアミンオキシド、フルオロアルキルエチレンオキシドの1から全体の置換(ペルフルオロ化合物)までの任意の数のアルキル基中の置換F原子による付加物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0043】
1つ又は複数の界面活性剤を、この着色性流体の全固形分基準で、0.001乃至20%、又は典型的には0.2乃至5重量%の量でこの着色性流体中に存在させることができる。
【0044】
存在することができる顔料分散剤の例としては、湿潤剤又は分散剤、例えば、立体障害によってか、又は、静電反発力の機構によって作用する、電荷を有するか又は有さないポリマー分散剤、アミン含有ポリマー及びカルボキシル含有ポリマー、顔料親和性基を有するシリコン系分散剤及び有機/シリコン系分散剤が挙げられるがこれらに限定されない。
【0045】
アルミニウム減感剤もこの着色性流体中に存在させることができる。例としては、ガム類(例えば、アラビアゴム及びカラギーナンガム)、デキストリン、セルロース誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース)及びリン酸が挙げられるがこれらに限定されない。これらの化合物に限定されるものではないが、アルコール類及びグリコール類を湿潤剤として存在させることができる。画像を熱分解から保護し、陽極酸化処理をしたアルミニウムバックグラウンドを再付着から保護するベーキング後の「ガム類」、例えば、Dowfax(登録商標)2A-0及びDowfax(登録商標)2A-1を、存在させることもできる。
【0046】
したがって、多くの実施形態において、この着色性流体は、グリコール、ガム、デキストリン、セルロースエステル、リン酸又はリン酸エステル、ホスホン酸又はホスホン酸エステル、クエン酸、又はクエン酸エステルの1つ又は複数を所定の実験により容易に決定される量で含む。
【0047】
画像化可能な層
本発明で使用される平版印刷版前駆体は、画像化可能な層を形成するために適当な基板上に配置された放射感受性組成物を含む。この画像化可能な要素は、適当な放射(radiation)を用いて重合可能な塗布されたコーティングに対して必要性があるところにはどこにでも、特にコーティングの非露光領域を露光領域の代わりに除去することが望まれる場合には、有用性を有することができる。
【0048】
この放射感受性組成物(及び画像化可能な層)は、1つ又は複数のフリーラジカル重合性成分を含み、そのそれぞれは、フリーラジカル開始反応を用いて重合させることができる1つ又は複数のフリーラジカル重合性基を含有する。例えば、上記のフリーラジカル重合性成分は、1つ又は複数の付加重合性エチレン性不飽和基、架橋性エチレン性不飽和基、開環重合性基、アジド基、アリールジアゾニウム塩基、アリールジアゾスルホネート基、又はそれらの組合せを有する1つ又は複数のフリーラジカル重合性のモノマー又はオリゴマーを含有することができる。同様に、上記のフリーラジカル重合性基を有する架橋性ポリマーも、使用することができる。
【0049】
重合又は架橋させることができる適切なエチレン性不飽和成分としては、ポリオールのアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル等のアルコールの不飽和エステルを含めた1つ又は複数の重合性基を有するエチレン性不飽和の重合性モノマーが挙げられる。オリゴマー及び/又はプレポリマー、例えば、ウレタンアクリレート及びメタクリレート、エポキシドアクリレート及びメタクリレート、ポリエステルアクリレート及びメタクリレート、ポリエーテルアクリレート及びメタクリレート及び不飽和ポリエステル樹脂等も使用することができる。いくつかの実施形態において、このフリーラジカル重合性成分は、カルボキシ基を含む。
【0050】
有用なフリーラジカル重合性成分としては、複数のアクリレート基及びメタクリレート基並びにそれらの混合物を含む付加重合性エチレン性不飽和基を含むフリーラジカル重合性モノマー又はオリゴマー、或いはフリーラジカル架橋性ポリマーが挙げられる。フリーラジカル重合性化合物としては、複数の重合性基を有する尿素ウレタン(メタ)アクリレート又はウレタン(メタ)アクリレートから誘導されるものが挙げられる。例えば、フリーラジカル重合性成分は、ヘキサメチレンジイソシアネート(コネティカット州ミルフォード、Bayer Corp.)に基づくDESMODUR(登録商標)N 100脂肪族ポリイソシアネート樹脂をヒドロキシエチルアクリレート及びペンタエリスリトールトリアクリレートと反応させることによって調製することができる。有用なフリーラジカル重合性化合物としては、Kowa Americanから入手できるNKエステルA-DPH(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)と、Sartomer Company, Inc.から入手可能なSartomer 399(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)、Sartomer 355(ジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート)、Sartomer 295(ペンタエリスリトールテトラアクリレート)、Sartomer 415[エトキシレート化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート]及びSartomer 602[エトキシレート化(10)ビスフェノールAジアクリレート]が挙げられる。
【0051】
同様に有用であるのは、米国特許第6582882号(Pappasら)、米国特許第6899994号(上記)、米国特許第7153632号(Saraiyaら)及びWO2007/077207に記載されている尿素ウレタン(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートである。
【0052】
多数のその他のフリーラジカル重合性成分が当業者には知られており、A Reiser、Photoreactive Polymers: The Science and Technology of Resists、Wiley、New York、1989年、102〜177頁、B.M. Monroe、Radiation Curing: Science and Technology、S.P. Pappas編、Plenum、New York、1992年、399〜440頁及びImaging Processes and Material、J.M. Sturgeら(編)、Van Nostrand Reinhold、New York、1989年、226〜262頁のA.B. Cohen及びP. Walkerによる「Polymer Imaging」を含む多数の文献に記載されている。例えば、有用なフリーラジカル重合性成分は、EP1182033A1(上記)のパラグラフ[0170]から始まる部分、米国特許第6309792号(Hauckら)、米国特許第6569603号(Furukawa)及び米国特許第6893797号(Munnellyら)にも記載されている。
【0053】
上記のフリーラジカル重合性成分に加えて、又はそれの代わりに、該放射感受性の組成物は、主鎖に結合した側鎖を含み、その側鎖は、開始剤組成物によって生じたフリーラジカルに応じて重合(架橋)させることができる(下記)1つ又は複数のフリーラジカル重合性基(例えばエチレン性不飽和基)を含有するポリマー材料を含むことができる。1分子当り少なくとも2つのこれらの側鎖が存在し得る。このフリーラジカル重合性基(又はエチレン性不飽和基)は、ポリマー主鎖に結合した脂肪族又は芳香族アクリレートの側鎖の一部であり得る。一般に、1分子当り少なくとも2つで最大で20までのこうした基が、典型的には1分子当り2乃至10のこうした基が存在する。
【0054】
上記のフリーラジカル重合性ポリマーは、また、その主鎖に直接結合した、又はフリーラジカル重合性側鎖以外の側鎖の一部として結合した、カルボキシ、スルホ、又はホスホ基が含まれるがこれらに限定されない親水性基を含むことができる。
【0055】
こんな風に使用することができるポリマーを含む有用な市販の製品としては、すべてBayer MaterialScienceから入手できるBayhydrol(登録商標)UV VP LS 2280、Bayhydrol(登録商標)UV VP LS 2282、Bayhydrol(登録商標)UV VP LS 2317、Bayhydrol(登録商標)UV VP LS 2348及びBayhydrol(登録商標)UV XP 2420、並びに、すべてBASFから入手できるLaromer(商標)LR 8949、Laromer(商標)LR 8983及びLaromer(商標)LR 9005が挙げられる。
【0056】
このフリーラジカル重合性成分は、該放射感受性組成物中に該組成物を放射(光)に露光した後水性現像液中に不溶性にするのに十分な量で存在する。これは、一般に、該放射感受性組成物の乾燥重量を基準として、10乃至70重量%、典型的には20乃至50重量%である。
【0057】
この放射感受性組成物は、適切な画像化放射(光)に露光した際に該ラジカル重合性成分の重合を開始するのに十分なラジカルを発生することができる開始剤組成物を含む。この開始剤組成物は、例えば、700nm乃至1400nm、典型的には700nm乃至1200nmの広いスペクトル範囲に対応する赤外スペクトル領域における電磁放射線に応答し得る。別法では、この開始剤組成物は、150乃至475nm、典型的には250乃至450nmの紫外又は青紫領域の露光放射線に応答することができる。
【0058】
一般に、IR放射及び青紫放射(光)感受性組成物のための適正な開始剤組成物は、開始剤を含み、それらとしては、アミン(例えばアルカノールアミン等)、チオール化合物、N,N-ジアルキルアミノ安息香酸エステル、N-アリールグリシン及びそれらの誘導体(例えばN-フェニルグリシン等)、芳香族ハロゲン化スルホニル、トリハロゲノメチルスルホン、イミド(例えばN-ベンゾイルオキシフタルイミド等)、ジアゾスルホネート、9,10-ジヒドロアントラセン誘導体、少なくとも2つのカルボキシ基を有しており、その少なくとも1つがアリール部分の窒素、酸素、又は硫黄原子に結合しているN-アリール、S-アリール、又はO-アリールポリカルボン酸(例えば、Westらの米国特許第5629354号に記載されているアニリンジ酢酸及びその誘導体並びにその他の「共開始剤」等)、オキシムエーテル及びオキシムエステル(例えばベンゾインから誘導されたもの等)、α-ヒドロキシ又はα-アミノアセトフェノン、トリハロゲノメチル-アリールスルホン、ベンゾインエーテル及びエステル、過酸化物(例えば過酸化ベンゾイル等)、ヒドロペルオキシド(例えばクミルヒドロペルオキシド等)、アゾ化合物(例えばアゾビス-イソブチロニトリル等)、例えば米国特許第4565769号(Dueberら)に記載されている2,4,5-トリアリールイミダゾリル二量体(ヘキサアリールビイミダゾール、又は「HABI」としても知られている)、トリハロメチル置換トリアジン、米国特許第6562543号(Ogataら)に記載されているもの等のホウ素含有化合物(例えばテトラアリールボレート及びアルキルトリアリールボレート等)及び有機ホウ酸塩、並びにオニウム塩(例えばアンモニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、アリールジアゾニウム塩及びN-アルコキシピリジニウム塩等)が挙げられるが、それらに限定されない。「青紫」感受性組成物の場合、開始剤は、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシムエステル、又はトリハロメチル置換トリアジンを含むが、それらに限定されない。
【0059】
いくつかの実施形態において、この放射感受性組成物は、フリーラジカルを発生する化合物がUV放射(光)(すなわち、少なくとも150nmであり475nm以下)感受性であるUV増感剤を含み、それによって光重合を促進する。いくつかの他の実施形態において、この放射感受性組成物は、少なくとも300nmであり450nm以下の範囲の「青紫」放射(光)に対して感光性にされる。そのような組成物に対して有用な増感剤としては、特定のピリリウム及びチオピリリウム染料並びに3-ケトクマリンが挙げられる。上記スペクトル感度に対するいくつかのその他の有用な増感剤が、例えば、米国特許第6908726号(Korionoffら)及び有用なビスオキサゾール誘導体及び類似体について記載しているWO2004/074929(Baumannら)並びに米国特許出願公開第2006/0063101号及び米国特許出願公開第2006/0234155号(両方ともBaumannら)に記載されている。
【0060】
更に別の有用な増感剤は、2つのヘテロ原子間に共役したπ-系を提供する適切な芳香族又は複素環式芳香族単位を有するWO2006/053689(Strehmelら)の中で定義されている構造(I)単位を有するオリゴマー又はポリマー化合物である。
【0061】
さらなる有用な「青紫」〜可視放射(光)増感剤は、WO2004/074929(Baumannら)に記載されている化合物である。これらの化合物は、芳香族複素環基に共役している少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含むスペーサー部分により接続している同じか又は異なる芳香族複素環基を含んでおり、上記の出版物の式(I)によってより詳細に示されている。
【0062】
該IR放射(光)感受性開始剤組成物は、スルホニウム、オキシスルホキソニウム、オキシスルホニウム、スルホキソニウム、アンモニウム、セレノニウム、アルセニウム、ホスホニウム、ジアゾニウム、又はハロニウム塩が挙げられるがこれらに限定されないオニウム塩を一般に含む。代表的な例を含めた有用なオニウム塩のさらなる詳細は、米国特許出願公開第2002/0068241号(Oohashiら)、WO2004/101280(Munnellyら)、米国特許第5086086号(Brown-Wensleyら)、米国特許第5965319号(Kobayashi)、米国特許第6051366号(Baumannら)及び米国特許第7368215号(Munnellyら)に提供されている。例えば、好適なホスホニウム塩は、4個の有機置換基を有する正帯電した超原子価のリン原子を含む。トリフェニルスルホニウム塩のような好適なスルホニウム塩は、3個の有機置換基を有する正帯電した超原子価の硫黄原子を含む。好適なジアゾニウム塩は、正帯電したアゾ基(すなわち、-N=N+)を有する。好適なアンモニウム塩は、4個の有機置換基を有する置換第四級アンモニウム塩のような正帯電した窒素原子及びN-アルコキシピリジニウム塩のような第四級窒素複素環を含む。好適なハロニウム塩は、2個の有機置換基を有する正帯電した超原子価のハロゲン原子を含む。このオニウム塩は、適切な数の負帯電した対イオン、例えば、ハライド、ヘキサフルオロホスフェート、チオサルフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロボレート、スルホネート、ヒドロキシド、パーコレート、n-ブチルトリフェニル、ボレート、テトラフェニルボレート等、及び、当業者には容易に分かるその他のものを一般に含む。
【0063】
ヨードニウム塩等の有用なハロニウム塩は、正帯電したヨードニウム、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]-部分及び適当な負帯電した対イオンを有するオニウム塩を含む。そのようなヨードニウム塩の代表例は、Ciba Specialty Chemicals (ニューヨーク州タリタウン)からIrgacure(登録商標)250として入手可能であり、それは、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートであり、75%プロピレンカーボネート溶液中で供給される。
【0064】
いくつかの有用なホウ素化合物としては、適当なカチオン例えばアルカリ金属イオン、オニウム、又はカチオン性増感染料等と対にした米国特許第6569603号(上記)に記載されているもののような有機ホウ素アニオンを含む有機ホウ素塩が挙げられる。有用なオニウムカチオンとしては、アンモニウム、スルホニウム、ホスホニウム、ヨードニウム及びジアゾニウムカチオンが挙げられるがこれらに限定されない。ヨードニウム塩、特にヨードニウムボレートは、「印刷機上」の現像(以下でより詳細に説明する)のために設計される放射感受性化合物中の開始剤化合物として有用である。
【0065】
有用なIR放射(光)感受性開始剤組成物は、1つ又は複数のジアリールヨードニウムボレート化合物を含むことができ、そのそれぞれは次の構造(I)
【0066】
【化1】

【0067】
によって表され、式中、X及びYは、独立してハロゲン原子(例えば、フルオロ、クロロ、又はブロモ)、1〜20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキル基(例えば、メチル、クロロメチル、エチル、2-メトキシエチル、n-プロピル、イソプロピル、イソブチル、n-ブチル、t-ブチル、分岐した若しくは直鎖のすべてのペンチル基、1-エチルペンチル、4-メチルペンチル、すべてのヘキシル異性体、すべてのオクチル異性体、ベンジル、4-メトキシベンジル、p-メチルベンジル、すべてのドデシル異性体、すべてのイコシル異性体、及び、置換若しくは非置換のモノ-及びポリ-、分岐及び直鎖のハロアルキル)、1〜20個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアルキルオキシ(例えば、置換若しくは非置換メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t-ブトキシ、(2-ヒドロキシテトラデシル)オキシ及び様々な他の直鎖及び分岐したアルキレンオキシアルコキシ基)、炭素環式の芳香族環中に6又は10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアリール基(例えば、モノ-及びポリハロフェニル及びナフチル基を含む、置換若しくは非置換のフェニル及びナフチル基)、又は環構造中に3〜8個の炭素原子を有する、置換若しくは非置換のシクロアルキル基(例えば、置換若しくは非置換のシクロプロピル、シクロペンチル、シクロへキシル、4-メチルシクロへキシル及びシクロオクチル基)である。例えば、X及びYは、独立して、1〜8個の炭素原子を有する、置換若しくは非置換のアルキル基、1〜8個の炭素原子を有するアルキルオキシ基、又は環中に5又は6個の炭素原子を有するシクロアルキル基であり、そしてより好ましくは、X及びYは、独立して、3〜6個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアルキル基(及び特に、3〜6個の炭素原子を有する分岐したアルキル基)である。したがって、X及びYは、同じか又は異なる基であることができ、様々なX基は、同じか、又は異なる基であることができ、そして様々なY基は、同じか、又は異なる基であることができる。本発明では、「対称」及び「非対称」の両方のジアリールヨードニウムボレート化合物が、想定されているが、「対称」の化合物が有用である(すなわち、それらは同じ基を、両方のフェニル環に有している)。
【0068】
更に、2つ以上の隣接するX若しくはY基は、それぞれのフェニル基と結合して縮合した炭素環式又は複素環式環を形成することができる。
【0069】
X及びY基は、フェニル環のどの位置にあることもできるが、一般的には、それらは、フェニル環のいずれか又は両方の2位若しくは4位及び/又は特に4位にある。
【0070】
どのタイプのX及びY基もヨードニウムカチオン中には存在するが、X及びY置換基中の炭素原子の合計は、6個から、そして好ましくは8個から40個までである。したがって、化合物によっては、1つ又は複数のX基が少なくとも6個以上の炭素原子を含むことができ、Yが存在しない(qが0である)。或いは、1つ又は複数のY基が6個以上の炭素原子を含み、Xが存在しない(pが0である)。その上、X及びYの両方の中の炭素原子の合計が6個以上であれば、1つ又は複数のX基は6個未満の炭素原子を含むことができ、そして1つ又は複数のY基は6個未満の炭素原子を含むことができる。更にまた、両方のフェニル環には、合計で6個以上の炭素原子が存在することができる。
【0071】
構造Iにおいて、p及びqは、p又はqのいずれかが1以上であることを条件として、独立して0又は1〜5の整数である。例えば、p及びqは、両方とも1であり得る。したがって、フェニル環中のX又はY基によって置換されていない炭素原子は、それらの環の位置に水素原子を有していることが理解される。
【0072】
Z-は、次の構造
【0073】
【化2】

【0074】
によって表される有機ボレートアニオンである。
【0075】
式中、R1、R2、R3及びR4は、独立して、1〜12個の炭素原子を有するフルオロアルキル基以外の置換若しくは非置換アルキル基(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、すべてのペンチル異性体、2-メチルペンチル、すべてのヘキシル異性体、2-エチルヘキシル、すべてのオクチル異性体、2,4,4-トリメチルペンチル、すべてのノニル異性体、すべてのデシル異性体、すべてのウンデシル異性体、すべてのドデシル異性体、メトキシメチル及びベンジル等)、芳香環中に6〜10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換炭素環式アリール基(例えば、フェニル、p-メチルフェニル、2,4-メトキシフェニル、ナフチル及びペンタフルオロフェニル基等)、2〜12個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルケニル基(例えば、エテニル、2-メチルエテニル、アリル、ビニルベンジル、アクリロイル及びクロトノチル(crotonotyl)基)、2〜12個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキニル基(例えば、エチニル、2-メチルエチニル及び2,3-プロピニル基等)、環構造中に3〜8個の炭素原子を有する置換若しくは非置換シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロへキシル、4-メチルシクロへキシル及びシクロオクチル基等)、又は5〜10個の炭素、酸素、硫黄及び窒素原子を有する置換若しくは非置換複素環基(芳香族及び非芳香族基の両方を含み、例えば、置換若しくは非置換ピリジル、ピリミジル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾイリル、インドリル、キノリニル、オキサジアゾリル及びベンゾオキサゾリル基)である。或いは、2つ以上のR1、R2、R3及びR4は、ホウ素原子と互いに結合して複素環を形成していてもよく、このような環は最大7個までの炭素、窒素、酸素又は窒素原子を有している。
【0076】
例えば、R1、R2、R3及びR4は、上で明示したように独立して置換若しくは非置換アルキル若しくはアリール基であるか、又はR1、R2、R3及びR4の少なくとも3つは、同じか又は異なる置換若しくは非置換アリール基(例えば、置換若しくは非置換フェニル基等)である。実施形態によっては、R1、R2、R3及びR4のすべてが同じか異なる置換若しくは非置換アリール基であり、或いはそれらの基のすべてが同じ置換若しくは非置換フェニル基である。例えばZ-は、フェニル基が置換されているか非置換であるテトラフェニルボレートである。
【0077】
本発明で有用な代表的なヨードニウムボレート化合物としては、4-オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、[4-[(2-ヒドロキシテトラデシル)-オキシ]フェニル]フェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフェニルボレート、4-メチルフェニル-4'-へキシルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、4-メチルフェニル-4'-シクロへキシルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、ビス(t-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-ヘキシルフェニル-フェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、4-メチルフェニル-4'-シクロヘキシルフェニルヨードニウムn-ブチルトリフェニルボレート、4-シクロへキシルフェニル-フェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、2-メチル-4-t-ブチルフェニル-4'-メチルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、4-メチルフェニル-4'-ペンチルフェニルヨードニウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、4-メトキシフェニル-4'-シクロへキシルフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタ-フルオロフェニル)ボレート、4-メチルフェニル-4'-ドデシルフェニルヨードニウムテトラキス(4-フルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート及びビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(1-イミダゾリル)ボレートが挙げられるが、これらには限定されない。有用な化合物としては、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフェニルボレート、4-メチルフェニル-4'-へキシルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、2-メチル-4-t-ブチルフェニル-4'-メチルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート及び4-メチルフェニル-4'-シクロへキシルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、が挙げられる。これらの化合物の2つ以上の混合物もまた、開始剤組成物中で使用することができる。
【0078】
1つ又は複数の開始剤化合物を含有するこの開始剤組成物は、該放射感受性組成物中に、該放射感受性組成物の全固形分又は該コートした画像化可能な層の乾燥重量を基準として、0.5%乃至30%の量で一般に存在する。例えば、該開始剤組成物は、2%乃至20重量%の量で存在する。様々な開始剤成分の最適量は、様々な化合物及び望ましい放射感受性組成物の感度に対して異なり得るものであり、当業者には容易に分かるであろう。
【0079】
フリーラジカル発生化合物(開始剤)は、単独又は様々な共開始剤、例えば、米国特許第6884568号(Timpeら)に記載されているもののような、メルカプトトリアゾール、メルカプトベンズイミダゾール、メルカプトベンゾキサゾール、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾキサジアゾール、メルカプトテトラゾールを含めた複素環式メルカプト化合物等の様々な共開始剤との組合せで、放射感受性組成物の全固形分を基準として少なくとも0.5重量%から10重量%以下の量で使用することができる。有用なメルカプトトリアゾールとしては、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、4-メチル-3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、5-メルカプト-1-フェニル-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-3-メルカプト-1,2,4,-トリアゾール、3-メルカプト-1,5-ジフェニル-1,2,4-トリアゾール及び5-(p-アミノフェニル)-3-メルカプト-1,2,4-トリアゾールが挙げられる。
【0080】
IR放射(光)感受性組成物の感度は、画像化放射(光)を吸収するか、又は該組成物を、700nmから1400nm以下、典型的には700nm乃至1200nmのλmaxを有する画像化赤外線に感光させる1つ又は複数の赤外線吸収性化合物、発色団、又は増感剤の存在によって提供される。
【0081】
有用なIR放射(光)吸収性発色団としては、様々なIR感受性染料(「IR染料」)が挙げられる。望ましい発色団を含んでいる適当なIR染料の例としては、アゾ染料、スクアリリウム染料、クロコネート染料、トリアリールアミン染料、チオアゾリウム染料、インドリウム染料、オキソノール染料、オキサゾリウム染料、シアニン染料、メロシアニン染料、フタロシアニン染料、インドシアニン染料、インドトリカルボシアニン染料、オキサトリカルボシアニン染料、チオシアニン染料、チアトリカルボシアニン染料、クリプトシアニン染料、ナフタロシアニン染料、ポリアニリン染料、ポリピロール染料、ポリチオフェン染料、カルコゲノピリロアリーリデン染料及びビス(カルコゲノピリロ)ポリメチン染料、オキシインドリジン染料、ピリリウム染料、ピラゾリンアゾ染料、オキサジン染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、キノンイミン染料、メチン染料、アリールメチン染料、スクアリン染料、オキサゾール染料、クロコニン染料、ポルフィリン染料及び上記の染料の種類の任意の置換型又はイオン型が挙げられるが、これらに限定されない。適切な染料は、例えば米国特許第5208135号(Patelら)、米国特許第6153356号(Uranoら)、米国特許第6264920号(Achilefuら)、米国特許第6309792号(Hauckら)、米国特許第6569603号(上記)、米国特許第6787281号(Taoら)、米国特許第7135271号(Kawaushiら)及びEP1182033A2(上記)に記載されている。赤外線吸収性N-アルキルサルフェートシアニン染料は、例えば、米国特許第7018775号(Tao)に記載されている。適切なシアニン染料の一類の概要が、WO2004/101280(Munnellyら)のパラグラフ[0026]に式で示されている。
【0082】
低分子量のIR吸収性染料に加えて、ポリマーに結合したIR染料発色団も同様に使用することができる。更に、IR染料カチオンも同様に使用することができる。すなわち、このカチオンは、側鎖にカルボキシ、スルホ、ホスホ、又はホスホノ基を含んでいるポリマーとイオン的に相互作用する染料塩のIR吸収性部分である。
【0083】
近赤外線吸収性シアニン染料も有用であり、例えば米国特許第6309792号(上記)、米国特許第6264920号(Achilefuら)、米国特許第6153356号(上記)及び米国特許第5496903号(Watanabeら)に記載されている。適切な染料は、通常の方法と出発物質を用いて形成することができ、或いは、American Dye Source(カナダ、ケベック州Baie D'Urfe)及びFEW Chemicals(ドイツ)等の様々な商業的供給源から入手可能である。近赤外ダイオードレーザービーム用の他の有用な染料は、例えば、米国特許第4973572号(DeBoer)に記載されている。
【0084】
更にその他の有用な赤外線吸収性化合物は、共有結合しているアンモニウム、スルホニウム、ホスホニウム、又はヨードニウムカチオンを含むことができるコポリマー及び2個又は4個のスルホネート若しくはサルフェート基を有する赤外線吸収性シアニンアニオン、或いは、例えば米国特許第7049046号(Taoら)に記載されているような赤外線吸収性オキソノールアニオンである。
【0085】
この放射吸収性化合物(又は増感剤)は、その放射感受性組成物(又は画像化可能な層)中に、該画像化可能な層の全乾燥重量にも相当するその組成物中の全固形分を基準として、一般に、少なくとも0.5%で15%以下、典型的には少なくとも1%で10%以下の量で存在させることができる。この目的に対して必要な詳しい量は、当業者には容易に分かるであろう。
【0086】
この放射感受性組成物としては、一般に皮膜形成性の連続ポリマーとしてか又は離散した粒子として存在する1つ又は複数のポリマーバインダーが挙げられる。以下に記載されているポリマーバインダーはこの様式において特に有用であるがこれは網羅的なリストではない。
【0087】
I. (a)(メタ)アクリロニトリル、(b)(メタ)アクリル酸のポリ(アルキレンオキシド)エステル及び場合によって(c)(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン及びその誘導体、並びに例えば米国特許第7326521号(Taoら)に記載されているような(メタ)アクリルアミドの組合せ又は混合物の重合によって形成されたポリマー。この種類におけるいくつかの特に有用なポリマーバインダーは、1つ又は複数の(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン及びその誘導体、ビニルカルバゾール並びにポリ(アルキレンオキシド)(メタ)アクリレートから誘導される。
【0088】
II. 米国特許第7332253号(Taoら)に記載されているようなペンダントアリルエステル基を有するポリマー。かかるポリマーは、また、上記特許のコラム8の31行からコラム10の3行までに記載されているような様々なその他のモノマーから誘導されたペンダントシアノ基を含むか又は繰り返し単位を有することができる。
【0089】
III. 全部炭素の主鎖を有するポリマーであって、その全部炭素の主鎖を形成している炭素原子の少なくとも40モル%で最大100モル%まで(そして典型的には40乃至50モル%)が第三級炭素原子であり、その全部炭素の主鎖中の残りの炭素原子が非三級炭素原子であるポリマー。「第三級炭素」により、発明者らは、ラジカル又は水素原子(これは4番目の手をふさいでいる)以外の原子によってふさがっている3本の手を有するこの全部炭素の主鎖中の炭素原子を指す。「非第三級炭素」により、発明者らは、水素原子によってふさがっている3本の手を有する第一級炭素、第二級炭素(水素原子によってふさがっている2本の手を有する)又は第四級炭素(結合した水素原子を有さない)であるこの全部炭素の主鎖中の炭素原子を意味する。典型的には、非第三級炭素原子の殆どは、第二級炭素原子である。
【0090】
第三級炭素原子を含む代表的な繰り返し単位は、ビニルカルバゾール、スチレン及びその誘導体(炭素-炭素重合性ペンダント基を提供するジビニルベンゼン及び類似のモノマー以外)、アクリル酸、アクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸エステル及びメチルビニルケトンから選択される1つ又は複数のエチレン性不飽和重合性モノマーから誘導することができる。上で記したように、2つ以上の異なる繰り返し単位を使用することができる。同様に、第二級又は第四級炭素原子を有する代表的な繰り返し単位は、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、メタクリルアミド及びα-メチルスチレンから選択される1つ又は複数のエチレン性不飽和重合性モノマーから誘導することができる。
【0091】
IV. ポリマー主鎖に結合した1つ又は複数のエチレン性不飽和ペンダント基(反応性ビニル基)を有するポリマーバインダー。かかる反応性基は、フリーラジカルの存在下で重合又は架橋を受けることができる。このペンダント基は、そのポリマー主鎖に炭素-炭素直接結合、又は特に限定されない連結基(「X」)を介して直接結合させることができる。この反応性ビニル基は、少なくとも1つのハロゲン原子、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、又はアルキル、アリール、アルコキシ若しくはアリールオキシ基、及び、特に1つ又は複数のアルキル基によって置換することができる。実施形態によっては、この反応性ビニル基は、例えば、米国特許第6569603号(Furukawaら)に記載されているように、フェニレン基を介してそのポリマー主鎖に結合する。その他の有用なポリマーバインダーは、ペンダント基中にビニル基を有しており、そのことは、例えば、EP1182033A1(Fujimakiら)、米国特許第4874686号(Urabeら)、米国特許第7729255号(Taoら)、米国特許第6916595号(Fujimakiら)及び米国特許第7041416号(Wakataら)に記載されており、これらを本明細書に、特にEP1182033A1に記されている一般式(1)〜(3)に関して引用する。
【0092】
いくつかの有用な反応性のペンダントビニル基としては、非限定で、アリルエステル、スチリル、及び、(メタ)アクリロイル基を含むアルケニル基が挙げられる。例えば、そのような基は、アリル(メタ)アクリレートによるか、又はポリマー前駆体をハロゲン化アリル、4-ビニルベンジルクロリド、又は(メタ)アクリロイルクロリドと、当業者には明らかであろう条件を用いて反応させることによって提供することができる。
【0093】
V. ポリマーバインダーは、米国特許出願第11/949810号(Baumannら)に記載されているようにペンダント1H-テトラゾール基を有することができる。
【0094】
VI. 更にその他の有用なポリマーバインダーは、一様で、すなわち、コーティング溶媒に溶解された状態であり得るか、又は離散した粒子として存在し、(メタ)アクリル酸及び酸エステル樹脂[例えば(メタ)アクリレート等]、ポリビニルアセタール、フェノール樹脂、スチレン、N-置換環状イミド又は無水マレイン酸から誘導されたポリマー、例えば、EP1182033(上記)、米国特許第6309792号(Hauckら)、米国特許第6352812号(Shimazuら)、米国特許第6569603号(上記)及び米国特許第6893797号(Munnellyら)に記載されているもの等を含むがこれらに限定されない。同様に有用であるのは、米国特許第7175949号(Taoら)に記載されているビニルカルバゾールポリマーである。微粒子型をしているポリエチレングリコールメタクリレート/アクリロニトリル/スチレンのコポリマー、溶解した、カルボキシフェニルメタクリルアミド/アクリロニトリル/-メタクリルアミド/N-フェニルマレイミドから誘導されたコポリマー、ポリエチレングリコールメタクリレート/アクリロニトリル/ビニルカルバゾール/スチレン/メタクリル酸から誘導されたコポリマー、N-フェニルマレイミド/メタクリルアミド/メタクリル酸から誘導されたコポリマー、ウレタン-アクリル中間体A(p-トルエンスルホニルイソシアネートとヒドロキシルエチルメタクリレートとの反応生成物)/アクリロニトリル/N-フェニルマレイミドから誘導されたコポリマー及びN-メトキシメチルメタクリルアミド/メタクリル酸/アクリロニトリル/n-フェニルマレイミドから誘導されたコポリマーが有用である。
【0095】
その他の有用なポリマーバインダーは、該画像化可能な層全域にわたって分布(通常は均一に)している微粒子状のポリ(ウレタン-アクリル)ハイブリッドである。これらのハイブリッドのそれぞれは、50,000乃至500,000の分子量を有しており、その粒子は、10乃至10,000nmの平均粒径を有する。いくつかのポリ(ウレタン-アクリル)ハイブリッドが、Air Products and Chemicals, Inc.(ペンシルベニア州アレンタウン)から、分散液の形で、例えば、ポリ(ウレタン-アクリル)ハイブリッド粒子のHybridur(登録商標)540、560、570、580、870、878、880ポリマー分散液として市販されている。
【0096】
1乃至500nm、典型的には150乃至450nmの平均粒径を有する離散した粒子として存在し、一般にその層内に均一に分布しているものを含むがそれらに限定されないオンプレス現像を容易にするその他のポリマーバインダーを使用することができる。この微粒子状のポリマーバインダーは、室温で離散した粒子として、例えば水分散液中に存在する。しかしながら、この粒子は、また、例えばコートした画像化可能な配合物を乾燥するために使用される温度で部分的に融合又は変形させることもできる。この環境においてさえもこの粒子構造は破壊されない。そのようなポリマーバインダーは、一般に、少なくとも5,000〜100,000の分子量(Mn)を有する。
【0097】
有用なポリマーバインダーは、ペンダントポリ(アルキレンオキシド)側鎖、シアノ側鎖、又はその両方が結合している疎水性主鎖を有するポリマーエマルジョン又はポリマー分散液を一般に含んでおり、それらは、例えば、米国特許第6582882号(Pappasら)、米国特許第6899994号(Huangら)、米国特許第7005234号(Hoshiら)、米国特許第7368215号(Munnellyら)及び米国特許出願公開第2005/0003285号(Hayashiら)に記載されている。より具体的には、そのようなポリマーバインダーとしては、疎水性セグメントと親水性セグメントの両方を有するグラフトコポリマー、ポリエチレンオキシド(PEO)セグメントを有するブロックコポリマー及びグラフトコポリマー、ペンダントポリ(アルキレンオキシド)セグメントとシアノ基の両方を有するポリマー、並びに様々な親水性基、例えば、ヒドロキシル、カルボキシ、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、アミノ、アミノエチル、アミノプロピル、カルボキシメチル、スルホノ等、又は当業者には容易にわかるその他の基を有することができる様々な親水性ポリマーバインダーが挙げられるがそれらに限定されない。
【0098】
これらのポリマーバインダーは、少なくとも2,000〜500,000の分子量(Mn)を一般に有する。
【0099】
この1つ又は複数のポリマーバインダーは、放射感受性組成物(及び画像化可能な層)中に、その組成物及び層中の全固形分を基準として、少なくとも5重量%で最大70重量%まで、典型的には、10乃至50重量%の量で一般に存在する。
【0100】
この放射感受性組成物(画像化可能な層)は、更に、1つ又は複数のホスフェート(メタ)アクリル酸モノエステル、ジエステル、又はトリエステルを含むことができ、そのそれぞれは、一般に200を超え、典型的には少なくとも300、そして1000以下の分子量を有する。「ホスフェート(メタ)アクリレート」により、発明者らは、「ホスフェートメタクリレート」及びそのアクリレート部分の中のビニル基に置換基を有するその他の誘導体を含めることを意味する。発明者らは、ポリ(エチレンオキシド)基又はポリ(プロピレンオキシド)基を含んでいるホスフェート(メタ)アクリレートを含めることも意味する。そのような化合物及び画像化可能な層中でのそれらの使用は、米国特許第7175969号(Rayら)により詳細に記載されている。
【0101】
このホスフェート(メタ)アクリレートは、該放射感受性組成物中に、全体の乾燥組成物重量を基準として、少なくとも0.5%で20%以下、典型的には少なくとも0.9%で10%以下の量で存在することができる。
【0102】
この画像化可能な層は、少なくとも200で4000以下の分子量を有するポリ(アルキレングリコール)又はそのエーテル若しくはエステルである「1次添加剤(primary additive)」を含むこともできる。この1次添加剤は、該画像化可能な層の全体の乾燥重量を基準として、少なくとも2重量%で50重量%以下の量で存在する。特に有用な1次添加剤としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールモノメタクリレートの1つ又は複数が挙げられるが、これらに限定されない。同様に有用なのは、それらのすべてがSartomer Company, Inc.から入手可能であるSR9036(エトキシル化(30)ビスフェノールAジメタクリレート)、CD9038(エトキシル化(30)ビスフェノールAジアクリレート)及びSR494(エトキシル化(5)ペンタエリトリトールテトラアクリレート)並びに類似の化合物である。実施形態によっては、この1次添加剤は、それが重合性ビニル基を含まないことを意味する「非反応性」であってもよい。
【0103】
この画像化可能な層は、また、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルイミダゾール)、又はポリエステルである「2次添加剤」を、この画像化可能な層の全体の乾燥重量を基準として20質量%以下の量で含むこともできる。
【0104】
この画像化可能な層に対するさらなる添加剤としては、発色現像液又は酸性化合物が挙げられる。発色現像液として、発明者らは、例えば、米国特許出願公開第2005/0170282号(Innoら)に記載されている単量体フェノール化合物、有機酸又はその金属塩、オキシ安息香酸エステル、酸性白土及びその他の化合物が挙げられることを意味する。フェノール化合物の具体例としては、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4'-イソプロピリデン-ジフェノール(ビスフェノールA)、p-t-ブチルフェノール、2,4,-ジニトロフェノール、3,4-ジクロロフェノール、4,4'-メチレン-ビス(2,6'-ジ-t-ブチルフェノール)、p-フェニルフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキセン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2'-メチレンビス(4-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(α-フェニル-p-クレゾール)チオジフェノール、4,4'-チオビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)スルホニルジフェノール、p-ブチルフェノール-ホルマリン縮合物及びp-フェニルフェノール-ホルマリン縮合物が挙げられるがこれらに限定されない。有用な有機酸又はその塩の例としては、フタル酸、無水フタル酸、マレイン酸、安息香酸、没食子酸、o-トルイル酸、p-トルイル酸、サリチル酸、3-t-ブチルサリチル酸、3,5-ジ-3-t-ブチルサリチル酸、5-α-メチルベンジルサリチル酸、3,5-ビス(α-メチルベンジル)サリチル酸、3-t-オクチルサリチル酸、並びにそれらの亜鉛、鉛、アルミニウム、マグネシウム及びニッケル塩が挙げられるがこれらに限定されない。オキシ安息香酸エステルの例としては、p-オキシ安息香酸エチル、p-オキシ安息香酸ブチル、p-オキシ安息香酸ヘプチル及びp-オキシ安息香酸ベンジルが挙げられるがこれらに限定されない。そのような発色現像液は、全体の画像化可能な層の乾燥重量を基準として0.5乃至5重量%の量で存在することができる。
【0105】
この画像化可能な層は、分散剤、保湿剤、殺生物剤、可塑剤、被覆性又はその他の特性のための界面活性剤、粘度上昇剤、書き込まれた画像の可視化を可能にする染料又は着色剤(例えば、クリスタルバイオレット、メチルバイオレット、エチルバイオレット、ビクトリアブルー、マラカイトグリーン及びブリリアントグリーン等)、pH調整剤、乾燥剤、消泡剤、防腐剤、酸化防止剤、現像助剤、レオロジー調整剤、又はこれらの組合せ、或いは平版印刷技術で通常使用されている他の添加剤等を従来の量で含むが、これらに限定されない任意選択の様々な化合物を含むこともできる。有用な粘度上昇剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びポリ(ビニルピロリドン)が挙げられる。
【0106】
画像化可能な要素
この画像化可能な要素は、画像化可能な層を形成するための適切な基板に上記のような放射感受性組成物を適切に塗布することによって形成することができる。この基板は、該放射感受性組成物を塗布する前に親水性を改良するために下記のような様々な方法で処理又は被覆することができる。一般的には、該放射感受性組成物を含む画像化可能な層は1層だけ存在する。この基板が、接着性又は親水性を改善するための「中間層」を提供するように処理されている場合は、その塗布される画像化可能な層は、その上に配置されるが、これらの中間層は「画像化可能な層」とはみなされない。
【0107】
この要素は、その画像化可能な層上に配置されている従来上塗りとして知られるもの(「酸素不浸透性のトップコート」又は「酸素バリヤー層」としても知られる)を場合によって含む。そのような上塗り層は、主なポリマーバインダーとして1つ又は複数のポリ(ビニルアルコール)を含むことができ、そのそれぞれは、最大で99%まで、典型的には60%から90%以下、より典型的には75%から85%以下の加水分解度を有する。「加水分解度」によって、発明者らは、ヒドロキシル基に転化したポリマー中のアセテート部分の明確な割合を指している。かくして、酢酸ビニルは、重合してポリ(酢酸ビニル)を形成し、水酸化物(通常は水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム)を用いて酢酸エステル基をヒドロキシル基に転化する。
【0108】
上記のポリ(ビニルアルコール)は、上塗りの全体の乾燥重量の最大100%まで含むことができるが、通常、それらは上塗りの全体の乾燥重量の少なくとも60%で95%以下である。この上塗りは、したがって、最大40重量%までの、その他のポリマーバインダー、例えば、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(ビニルイミダゾール)、ビニルピロリドン、エチレンイミン及びビニルイミダゾールの2つ以上からのコポリマー、並びに上記ポリマーの混合物等、そして他にカチオン性、アニオン性及び非イオン性湿潤剤若しくは界面活性剤、流動性向上剤若しくは増粘剤、消泡剤、着色剤、酸化アルミニウム及び二酸化ケイ素等の粒子、並びに殺生物剤を含むがそれらに限定されないその他の成分を含むことができる。そのような追加物についての詳細は、WO99/06890(Pappasら)に提供されている。
【0109】
この乾燥した上塗りコーティングの重量は、一般に少なくとも0.1g/m2で4g/m2以下、典型的には0.5乃至2g/m2である。
【0110】
この上塗りは、適切な溶媒又は溶媒の混合物(例えば、イソプロピルアルコール、水、又はその両方)中に望ましいポリ(ビニルアルコール)及び任意のその他の成分を含有するコーティング配合物を乾燥した画像化可能な層に塗布し、適切な乾燥手順を経ることによって配置することができる。
【0111】
その他の上塗り層ポリマーバインダーもまた、米国特許第3458311号(Alles)、米国特許第4072527号(Fanni)、米国特許第4072528号(Bratt)、EP275147A2(Wadeら)、EP403096A2(Ali)、EP354475A2(Zertaniら)、EP465034A2(Uedaら)、EP352630A2(Zertaniら)、EP1788429(Loccufierら)、EP1788431(Van Dammeら)、EP1788434(Van Dammeら)及び米国特許出願公開第2005/0266349号(Van Dammeら)に記載されている。
【0112】
殆どの実施形態において、該画像化可能な層は、平版印刷版前駆体の最外層である。
【0113】
この基板は、一般に、親水性表面、又は少なくとも画像化面に塗布された画像化可能な層よりもより親水性である表面を有する。この基板は、平版印刷版等の画像化可能な要素を調製するために標準的に使用される任意の材料から構成することができる支持体を含む。それは、通常、シート、フィルム、又はホイル(又はウェブ)の形をしており、強く、安定で、かつフレキシブルであり、使用条件下での寸法変化に耐性を示し、その結果、色の記録はフルカラーの画像を残す。一般的に、この支持体は、ポリマーフィルム(例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースエステルポリマー及びポリスチレンのフィルム等)、ガラス、セラミックス、金属シート若しくはホイル、又は薄板紙(樹脂コート紙及び金属化紙を含む)、或いは任意のこれら材料の積層物(例えば、ポリエステルフィルム上のアルミニウム箔の積層物)を含めた任意の自己支持性材料であり得る。金属支持体としては、アルミニウム、銅、亜鉛、チタン及びそれらの合金のシート又はホイルが挙げられる。
【0114】
ポリマーフィルム支持体は、片方又は両方の平面を「サビング」層により変性して親水性を高めることができ、又は、紙支持体は、平面性を高めるために同様にコートすることができる。サビング層材料の例としては、アルコキシシラン、アミノ-プロピルトリエトキシシラン、グリシジオキシプロピル-トリエトキシシラン及びエポキシ官能性ポリマー、並びにハロゲン化銀写真用フィルムで使用されている標準的な親水性サビング材料(例えば、ゼラチン及びその他の天然に存在するか合成の親水性コロイド及び塩化ビニリデンコポリマーを含めたビニルポリマー等)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0115】
1つの有用な基板は、物理的(機械的)研磨、電気化学的研磨、又は化学的研磨によるいくつかのタイプの粗面化を含めた通常は酸陽極酸化処理が後に続く当該技術分野で既知の技術を用いて処理することができるアルミニウム支持体で構成される。このアルミニウム支持体は、物理的又は電気化学的研磨によって粗面化し、次いでリン酸又は硫酸及び従来の手順を用いて陽極酸化処理することができる。有用な親水性平版基板は、平版印刷のための親水性表面を提供する電気化学的に研磨され、硫酸又はリン酸陽極酸化処理されたアルミニウム支持体である。
【0116】
そのアルミニウム支持体の硫酸陽極酸化処理は、一般に1.5乃至5g/m2、より典型的には3乃至4.3g/m2の表面上の酸化物重量(付着量)を提供する。リン酸陽極酸化処理は、一般に1.5乃至5g/m2、より典型的には1乃至3g/m2の表面上の酸化物重量を提供する。陽極酸化処理のために硫酸が使用されるときは、より高い酸化物重量(少なくとも3g/m2)が、より長いプレス寿命を提供する。
【0117】
中間層は、このアルミニウム支持体を、例えば、シリケート、デキストリン、フッ化ジルコニウムカルシウム、ヘキサフルオロケイ酸、ポリ(ビニルホスホン酸)(PVPA)、ビニルホスホン酸コポリマー、ポリ[(メタ)アクリル酸]、又はアクリル酸コポリマー溶液で処理して親水性を増すことによって形成することができる。更にその上、このアルミニウム支持体は、無機フッ化物(PF)を更に含有することができるホスフェート溶液により処理することができる。このアルミニウム支持体は、電気化学的に研磨し、硫酸陽極酸化処理し、既知の手順を用いてPVPA又はPFにより処理して表面親水性を改良することができる。
【0118】
基板の厚さは変えることができるが、印刷による摩耗に耐えるのに差し支えなく、印刷版に巻きつけられるように十分薄くなければならない。有用な実施形態としては、少なくとも100μmで700μm以下の厚さを有する処理されたアルミニウム箔が挙げられる。
【0119】
画像化可能な要素の取扱いと「触感」を改善するために、基板の裏面(非画像化側)に帯電防止剤及び/又はスリップ層若しくはマット層をコートすることができる。
【0120】
上記の成分を含有する放射感受性組成物は、コーティング液中の溶液又は分散液として任意の適当な機器及び手順、例えば、スピンコーティング、ナイフコーティング、グラビアコーティング、ダイコーティング、スロットコーティング、バーコーティング、ワイヤロッドコーティング、ローラーコーティング又は押出ホッパーコーティング等を用いて、該基板に塗布することができる。組成物は、また、適切な支持体(例えばオンプレス印刷シリンダー)上に吹き付けることによって塗布することもできる。
【0121】
かかる製造法の例は、フリーラジカル重合性成分、主要なポリマーバインダー、開始剤組成物、放射吸収性化合物及び該放射感受性組成物の任意のその他の成分を、水、有機溶媒[例えば、1-メトキシプロパン-2-オールを含めたグリコールエーテル、メチルエチルケトン(2-ブタノン)、メタノール、エタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトン、γ-ブチロラクトン、n-プロパノール、テトラヒドロフラン、及び、当業界ではすぐに分かる他のもの、並びにこれらの混合物等]、又はそれらの混合物を含む適切なコーティング溶媒中で混合し、得られた溶液を基板に塗布し、適切な乾燥条件下で蒸発により溶媒を除去するものである。いくつかの代表的なコーティング溶媒及び画像化可能な層配合物を、下記実施例に記載する。適切な乾燥後、その画像化可能な層のコーティング重量は一般に少なくとも0.1g/m2で5g/m2以下、又は少なくとも0.5g/m2で3.5g/m2以下である。この画像化可能な層中に存在するどの微粒子状主ポリマーバインダーも、乾燥工程中に部分的に融合するか又は変形され得る。
【0122】
現像性を高めるため、又は断熱層として作用するように、該画像化可能な層の下に層が存在してもよい。この下位層は、現像液中に可溶性であるか又は少なくとも分散性であるべきであり、一般的には相対的に低い熱伝導係数を有する。
【0123】
画像化条件
使用中、この画像化可能な要素は、特定の感度を与えるため、放射感受性組成物中に存在する放射吸収性化合物に依存した、つまり、150乃至475nm又は700乃至1400nmの波長の適切な露光放射源に露光される。例えば、画像化は、少なくとも750nmで1400nm以下、及び、一般的には少なくとも700nmで1200nm以下の波長の赤外レーザー(又は一連のレーザー)からのような画像化放射(光)若しくは露光放射線を用いて行われ得る。画像化は、必要に応じて複数の波長の画像化放射(光)を同時に使用して行うことができる。
【0124】
この画像化可能な要素を露光するために使用されるレーザーは、ダイオードレーザーシステムの信頼性及び低保守のために、通常はダイオードレーザーであるが、その他のレーザー、例えば、気体又は固体レーザー等も使用することができる。レーザー画像化に対する出力、強度及び露光時間の組合せは、当業者には容易に分かるであろう。現在、市販のイメージセッターで使用される高性能レーザー又はレーザーダイオードは、少なくとも800nmで850nm以下又は少なくとも1040nmで1120nm以下の赤外線を放つ。
【0125】
画像化装置は、ドラムの内側又は外側のシリンダー状表面に取り付けられた画像化可能な部材を有する平台式レコーダーとしてか又はドラム式レコーダーとして構成することができる。有用な画像化装置の例は、830nmの波長の近赤外線を放つレーザーダイオードを含有するEastman Kodak Company(カナダ、ブリティッシュコロンビア州、バーナビー)から入手できるCreo Trendsetter (登録商標)プレートセッターのモデルとして入手可能である。その他の適切な画像化源としては、1064nmの波長で作動するCrescent 42Tプレートセッター(イリノイ州、シカゴ、Gerber Scientificから入手可能)及びScreen PlateRite 4300シリーズ又は8600シリーズのプレートセッター(イリノイ州、シカゴ、Screenから入手可能)が挙げられる。
【0126】
赤外線放射による画像化は、一般に、該画像化可能な層の感度に応じて少なくとも30mJ/cm2で500mJ/cm2以下、典型的には少なくとも50mJ/cm2で300mJ/cm2以下の画像化エネルギーで行うことができる。
【0127】
有用なUV及び「青紫」画像化装置としては、Prosetter(ドイツ、Heidelberger Druckmaschinenから)、Luxel V-8(日本、FUJIから)、Python(英国、Highwater)、MakoNews、Mako 2、Mako 4又はMako 8(米国、ECRMから)、Micra(日本、Screenから)、Polaris及びAdvantage(ベルギー、AGFAから)、LaserJet(ドイツ、Krauseから)及びAndromeda(登録商標)A750M(ドイツ、Lithotechから)のイメージセッターが挙げられる。
【0128】
UVから可視領域、特にUV領域(例えば、少なくとも150nmで475nm以下)のスペクトルにおける画像化放射は、一般に少なくとも0.01mJ/cm2で0.5mJ/cm2以下、典型的には、少なくとも0.02mJ/cm2で0.1mJ/cm2以下のエネルギーを使って行うことができる。例えば、UV/可視光感受性の画像化可能な要素を、エネルギー源(青紫レーザー又はエクシマー源)に応じて、少なくとも0.5kW/cm2で50kW/cm2以下、典型的には少なくとも5kW/cm2で30kW/cm2以下の範囲の出力密度で画像化することが望ましかろう。
【0129】
レーザー画像化は、本発明の実行において望ましいけれども、熱的画像化を画像様式の仕方で熱エネルギーを提供する任意のその他の手段によって提供することができる。例えば、画像化は、例えば、米国特許第5488025号(Martinら)に記載されている「サーマルプリンティング」として知られるものにおいて熱抵抗ヘッド(サーマルプリンティングヘッド)を用いて達成することができる。サーマルプリントヘッドは、市販されている(例えば、Fujitsu Thermal Head FTP-040 MCS001及びTDK Thermal Head F415 HH7-1089)。
【0130】
ネガ型の画像化可能な要素の画像化後、潜像の形成を促進するために加熱工程が使用され得る。この加熱工程は、別の機械であるか又は画像化された要素を現像する処理装置中に組み込むことができるいわゆる「プレヒートユニット」中で実現することができる。様々なタイプのプレヒートユニットが存在する。最も普通のものは、画像化された要素を加熱するために赤外線放射又は熱風循環、或いはそれらの組合せを使用する。この目的のために使用される温度は、70乃至200℃、典型的には90乃至160℃である。
【0131】
画像化された要素を現像する前に、プレリンス工程を、特に保護用の酸素バリヤー又はトップコートを有するネガ型要素に対して行うことができる。このプレリンス工程は、独立型の装置中で又は画像化された要素を手作業で、水ですすぐことができ、又は、このプレリンス工程は、画像化された要素を現像するために使用される処理装置中に組み込まれている洗浄ユニット中で行うことができる。フリーラジカルを発生する放射感受性組成物及び画像化可能な要素のために、このプレヒートユニット及びこのプレリンスユニットは、両方とも通常は画像化された要素を現像するために使用される処理装置中に組み込まれる。
【0132】
現像及び印刷
画像化後、その画像化された要素は、本明細書に記載されている適切な処理溶液を用いて「オフプレスで」処理することができる。そのような処理は、基板の親水性表面を露出するために、画像化された画像化可能な層の非露光領域のみを主に除去するには十分であるが、露光領域の有意量を除去するには十分でない長さの時間行われる。その露光された親水性表面は、インクをはじき、一方、露光領域はインクを受容する。したがって、除去されるべき非露光領域は、処理溶液中に「可溶性」又は「除去可能」であり、それは、それらが残留すべき領域より一層容易にその中に除去、溶解、又は分散されるためである。この用語の「可溶性」は、「分散性」をも意味する。実施形態によっては、現像(工程C)は、着色性流体の塗布(工程B)の後に行われる。
【0133】
現像は、「マニュアル」現像、「ディップ」現像として知られているものを用いるか、又は自動現像装置(処理装置)で処理することによって達成することができる。「マニュアル」現像の場合、現像は画像化された要素全体を適当な現像液(下記)を十分に含浸させたスポンジ又はコットンのパッドでラビングし、続いて水ですすぐことによって行われる。「ディップ」現像は、画像化された要素を適切な現像液を含有するタンク又はトレー中に撹拌下で10〜60秒(特に20乃至40秒)間浸し、続いてスポンジ又はコットンのパッドでラビングするか又はラビングしないで水ですすぐことを含む。自動現像装置の使用はよく知られており、現像液又は処理溶液を現像タンク中にポンプで送り込み、又はそれをスプレーノズルから放出することを一般に含む。画像化された要素を、現像液と適切なやり方で接触させる。その装置は、また、適切なラビング機構(例えば、ブラシ又はローラー)及び適切な数の運搬ローラーを含むことができる。現像装置によっては、レーザー露光手段を含み、その装置は画像化区域と現像区域とに分割されている。
【0134】
現像液又は処理溶液は、通常、界面活性剤、キレート剤(例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸の塩等)、有機溶媒(例えば、ベンジルアルコール等)及びアルカリ成分(例えば、無機メタケイ酸塩、有機メタケイ酸塩、水酸化物及び重炭酸塩等)を含有する。その現像液のpHは、一般に7より大きく最大14までである。画像化された要素は、一般に従来の処理条件を用いて現像する。水性アルカリ現像液及び有機溶媒含有現像液の両方を使用することができる。
【0135】
有用なアルカリ水性現像液としては、3000現像液、9000現像液、GOLDSTAR現像液、GREENSTAR現像液、ThermalPro現像液、PROTHERM現像液、MX1813現像液及びMX1710現像液(すべてEastman Kodak Companyから入手可能)が挙げられる。これらの組成物は、また、一般に、界面活性剤、キレート剤(例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸の塩等)及びアルカリ成分(例えば、無機メタケイ酸塩、有機メタケイ酸塩、水酸化物及び重炭酸塩等)を含有し、必要に応じて使用前に水で希釈することができる。
【0136】
有機溶媒含有現像液は、一般に、水と混和性の1つ又は複数の有機溶媒の単相の処理溶液である。有用な有機溶媒としては、フェノールのエチレンオキシド及びプロピレンオキシドとの反応生成物[例えばエチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)]、ベンジルアルコール、エチレングリコール及びプロピレングリコールの6個以下の炭素原子を有する酸とのエステル、並びにエチレングリコール、ジエチレングリコール及びプロピレングリコールの6個以下の炭素原子を有するアルキル基とのエーテル、例えば2-エチルエタノール及び2-ブトキシエタノール等が挙げられる。この有機溶媒は、一般に、現像液の全体重量を基準として、0.5%から最高15%までの量で存在する。この有機溶媒含有現像液は、pHが中性、アルカリ性、又はわずかに酸性であり得、好ましくは、それらはpHがアルカリ性である。
【0137】
代表的な溶媒系現像液としては、ND-1 Developer、Developer 980、Developer 1080、2 in 1 Developer、955 Developer及びD29 Developer(下記)、956 Developer(すべてEastman Kodak Companyから入手可能)が挙げられる。これらの現像液は、必要に応じて水で希釈することができる。
【0138】
いくつかの例において、単一の処理溶液が、主に非露光領域を除去することによって画像化要素を現像するためと、また、画像化されて現像された外側表面全体を覆う保護層又はコーティングを提供するためのどちらにも使用される。この態様において、この処理溶液は、印刷版上の平版画像を汚染又は損傷(例えば、酸化、指紋、粉塵、又は擦り傷)に備えて保護することができるいわばゴムのように挙動することができる。そのような処理溶液は、例えば、同時係属で同一出願人による米国特許出願第12/104544号(K. Ray, Yu及びSaraiyaにより2008年4月17日出願)に記載されている。そのような処理溶液は、一般に、適切な量の酸又は塩基を用いて調節されて、2を超え最高11まで、典型的には、6乃至11、又は6乃至10.5のpHを有する。それらは、一般に、1つ又は複数のアニオン性界面活性剤を含むが、とはいえ、必要に応じて任意選択の成分(例えば非イオン性界面活性剤等)を存在させることができる。有用なアニオン性界面活性剤としては、カルボン酸、スルホン酸、又はホスホン酸基を有するもの(又はそれらの塩)が挙げられる。スルホン酸(又はその塩)基を有するアニオン性界面活性剤は、特に有用である。例えば、そのようなアニオン性界面活性剤としては、脂肪酸の塩、アビエチン酸塩、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルオキシドジスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、分枝アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルフェノキシポリオキシ-エチレンプロピルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホノフェニルエーテルの塩、N-メチル-N-オレイルタウリン酸ナトリウム、モノアミドジナトリウムN-アルキルスルホコハク酸塩、石油スルホネート、硫酸化ヒマシ油、硫酸化獣脂、脂肪族アルキルエステルの硫酸エステルの塩、アルキル硫酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル、脂肪族モノグリセリドの硫酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステルの塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルの硫酸エステルの塩、アルキルリン酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステルの塩、ポリオキ
シエチレンアルキルフェニルエーテルのリン酸エステルの塩、スチレン-無水マレイン酸コポリマーの部分けん化化合物、オレフィン-無水マレイン酸コポリマーの部分けん化化合物及びナフタレンスルホネートホルマリン縮合物を挙げることができる。アルキルジフェニルオキシドジスルホン酸塩(例えば、ドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸ナトリウム等)、アルキル化ナフタレンスルホン酸、スルホン化アルキルジフェニルオキシド及びメチレンジナフタレンスルホン酸は、主要なアニオン性界面活性剤として特に有用である。そのような界面活性剤は、McCutcheon's Emulsifiers & Detergentsの2007年版に記載されているような様々な供給業者から得ることができる。
【0139】
これらの1つ又は複数のアニオン性界面活性剤が、少なくとも1重量%、典型的には5重量%から若しくは8重量%から最大45重量%まで、若しくは最大30重量%(固形分%)までの量で一般に存在することができる。実施形態によっては、これらの1つ又は複数のアニオン性界面活性剤は、8乃至20重量%の量で存在することができる。
【0140】
この処理溶液(又は現像液)は、画像化された要素に、ラビング、吹き付け、ジェッティング、ディッピング、浸漬、スロットダイコーティング(例えば、Maruyamaらの米国特許第6478483号の図1及び2を参照)又はリバースロールコーティング(Kuruiらの米国特許第5887214号の図4に記載されている)によるか、又は外層を処理溶液と共に拭うか又はそれをローラー、含浸させたパッド、又はゴムを含んでいる塗布器と接触させることによって塗布することができる。例えば、この画像化された要素は、処理溶液と共にブラッシングすることができ、又はその溶液は、画像化された表面に、例えばEP1788431A2(上記)の[0124]及び米国特許第6992688号(Shimazuら)に記載されているようなスプレーノズルシステムを用いて十分な力で注ぐか吹き付けることによって塗布して、非露光領域を除去することができる。上記のようにこの画像化された要素は、処理溶液中に浸して手で、又は装置を用いてラビングすることができる。
【0141】
この処理溶液は、また、その処理溶液が塗布される間は、画像化された要素をラビング又はブラッシングするための少なくとも1つのローラーを有する適切な装置中の処理ユニット(又はステーション)の中で塗布することもできる。そのような処理ユニットを使用することによって、画像化された層の非露光領域は、基板からより完全にかつ素早く除去することができる。残りの処理溶液は、除去するか(例えば、スキージ又はニップローラーを用いて)又はすすぎの工程なしで得られた印刷版上に残すことができる。過剰の処理溶液は、タンク内に集め、数回使用し、必要になったら容器から補給することができる。この処理溶液の補充液は、処理で使用されるものと同じ濃度のものであるか、又は高濃度の形で提供して適切なときに水で希釈することができる。
【0142】
実施形態によっては、上記の着色性流体が、工程BとCが同時に行われるように現像のために使用されもする。言い換えれば、この着色性流体は、処理溶液でもある。この現像工程は、この着色性流体の存在下での画像化可能な層の非露光領域の除去を促進するために、画像化された印刷版前駆体の機械的又は手作業のラビング又はブラッシングを含むこともできる。この着色性流体は、水ですすぎ落とすか又はゴムローラー若しくはスキージの作用によってすすぎなしで除去することができる。この着色性流体は、また、印刷版を擦り傷及び酸化に備えてそれが印刷機に取り付けられるまで保護するゴム(上で説明した)を含むこともできる。
【0143】
オフプレス現像の後、得られた平版印刷版は、UV光又は可視光にブランケット有りの露光又は無しのすなわちフラッド様式露光(floodwise exposure)をすることによってポストベークすることができる。別法では、ブランケットUV光又は可視光照射を、ポストベーク操作なしで行うことができる。
【0144】
印刷は、平版印刷インク及び湿し水を画像化して現像した要素の印刷表面に適用することによって行うことができる。湿し水は、非画像化領域、すなわち、画像化及び処理工程によって露出した親水性基板の表面によって取り上げられ、インクは、画像化した層の画像化(除去されなかった)領域によって取り上げられる。そのインクは、次に、適切な受容性材料(例えば、布、紙、金属、ガラス、又はプラスチック等)に転移されてその上に所望の画像の刷りを提供する。必要な場合は、中間の「ブランケット」ローラーを使用してインクを画像化部材から受容性材料に転移させることができる。この画像化部材は、必要な場合は、通常の洗浄手段を用いて刷りの間に洗浄することができる。
【0145】
本発明で使用されるいくつかの画像化可能な要素は、特にその要素が画像化可能な層中に離散した粒子の形をしたポリマーバインダーを含有するときは、「オンプレスで」現像可能である。その画像化要素は、工程Bの後印刷機に直接取り付けられ、最初の試し刷り(printed impressions)が行われるときに、画像化可能な層中の非露光領域が、適当な湿し水、平版印刷インク、又はその両方の組合せによって除去される。湿し水の典型的な含有物としては、pH緩衝剤、減感剤、界面活性剤及び湿潤剤、保湿剤、低沸点溶媒、殺生物剤、消泡剤、並びに金属イオン封鎖剤が挙げられる。湿し水の代表例は、Varn Litho Etch 142W + Varn PAR(アルコール代用品)(イリノイ州、アディソン、Varn Internationalから入手可能)である。そのようなオンプレス現像は、上記のように着色性流体が塗布された後に行われる。
【0146】
本発明は、少なくとも以下の実施形態を提供する。
実施形態1:平版印刷版を調製する方法であって、
A)基板と、その上に配置されている、フリーラジカル重合性化合物、放射吸収性化合物、フリーラジカル開始剤組成物及びポリマーバインダーを含む放射感受性の画像化可能層とを備えるネガ型平版印刷版前駆体を画像様式で露光して、ベタ露光領域と非露光領域とを前記画像化可能層中に有しており、前記ベタ露光領域がOD1の光学濃度を有する露光済み前駆体を提供する工程と、
B)水不溶性着色剤及び前記画像化可能層の前記ベタ露光領域を膨潤可能な溶媒を含む着色性流体を、前記露光済み前駆体に、前記ベタ露光領域内の光学濃度がOD1より大きいOD2となるように塗布する工程と
を含む方法。
実施形態2:前記画像化可能層の前記非露光領域が工程B後に少なくとも部分的に保持されている実施形態1に記載の方法。
実施形態3:工程B後、前記露光済み前駆体を、平版印刷インク、湿し水又はその両方を用いてオンプレスで現像する実施形態1又は2に記載の方法。
実施形態4:C)工程B前に、工程Bと同時に又は工程B後に、前記露光済み前駆体を前記画像化可能層の前記非露光領域を除去するための処理溶液を用いてオフプレスで現像して平版印刷版を提供する工程を更に含む実施形態1に記載の方法。
実施形態5:前記露光済み前駆体を現像後、水ですすぐ工程を更に含む実施形態4に記載の方法。
実施形態6:前記非露光領域を工程B後に除去する実施形態4又は5に記載の方法。
実施形態7:工程Cを工程B前に行う実施形態4から6のいずれかに記載の方法。
実施形態8:前記処理溶液が前記平版印刷版の外表面を現像及び保護する実施形態4から7のいずれかに記載の方法。
実施形態9:前記水不溶性着色剤が顔料又は水不溶性染料である実施形態1から8のいずれかに記載の方法。
実施形態10:前記露光済み画像化可能層を膨潤可能な前記溶媒が、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、γ-ブチロラクトン、ブトキシエタノール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、グリコールエーテル、グリコールエステル、乳酸アルキル、トルエン、石油留分又は任意のこれらの組合せである実施形態1から9のいずれかに記載の方法。
実施形態11:前記着色性流体が、界面活性剤、湿潤剤若しくは分散剤、アルミニウム減感剤又はそれらの任意の組合せを更に含む実施形態1から10のいずれかに記載の方法。
実施形態12:前記着色性流体が、グリコール、ゴム、デキストリン、セルロースエーテル若しくはエステル、リン酸若しくはリン酸エステル、ホスホン酸又はホスホン酸エステル、クエン酸又はクエン酸エステルの1つ又は複数を更に含む実施形態1から11のいずれかに記載の方法。
実施形態13:前記着色性流体が非イオン性界面活性剤を含む実施形態1から12のいずれかに記載の方法。
実施形態14:前記水不溶性着色剤が前記着色性流体中に少なくとも0.5重量%の量で存在する実施形態1から13のいずれかに記載の方法。
実施形態15:OD1とOD2との間の差が、0.1を超える実施形態1から14のいずれかに記載の方法。
実施形態16:OD1とOD2との間の差が、0.25を超える実施形態1から15のいずれかに記載の方法。
実施形態17:前記工程Bが、前記露光済み前駆体を、前記着色性流体の存在下で機械的に又は手作業でブラッシング又はラビングする工程を更に含む実施形態1から16のいずれかに記載の方法。
実施形態18:前記画像化可能層中のポリマーバインダーが、皮膜形成性の連続ポリマーとして又は離散した粒子として存在する実施形態1から17のいずれかに記載の方法。
実施形態19:前記平版印刷版前駆体がオンプレスで現像可能である実施形態1から3のいずれかに記載の方法。
実施形態20:前記放射感受性画像化可能層が前記ネガ型平版印刷版前駆体の最外層である実施形態1から19のいずれかに記載の方法。
実施形態21:前記放射感受性画像化可能層が150nm乃至475nm又は750nm乃至1400nmの波長での画像化に感受性である実施形態1から20のいずれかに記載の方法。
【0147】
以下の例を、本発明を説明するために提供するが、それをどのような形でも限定はしない。
【実施例】
【0148】
(比較例1)
電気化学的に研磨し、リン酸陽極酸化処理して、ポリ(アクリル酸)により後処理されているアルミニウム基板に画像化可能な層の配合物をコートした。得られた印刷版前駆体をKodak(登録商標)Trendsetter 3244xプレートセッター上で320mJ/cm2でベタを画像化した。
【0149】
この汎用の画像化可能な層の配合物は、米国特許第7261998号(Hayashiら)の実施例18に記載されているものである。
【0150】
この画像化印刷版前駆体は、水中に9%のγ-ブチロラクトンを含有する現像液中、6秒間、軽い圧力でのスクラビングによる手作業で現像した。画像光学濃度(OD)を、シアンフィルターを取り付けた分光濃度計モデル500を用いて測定した。得られた画像は、現像前に0.39、現像後に0.36の光学濃度を有していた。画像化領域の光学濃度(0.36)とバックグラウンドのそれ(0.21)との間の差は、0.15であり、画像とバックグラウンドとの間の非常に小さいコントラストを示している。このことは、その印刷版画像部を、それを印刷機に取り付ける前に検査することを非常に困難にした。
【0151】
(比較例2)
Ciba製の水性顔料分散液(IJX 1409、883及び1281)を、320mJ/cm2でベタを画像化した比較例1に記載した印刷版前駆体にラビングした。この印刷版前駆体を次に水中ですすいだ。上記の顔料分散液は、該画像化前駆体を現像しなかったが、それらはシアンフィルターを取り付けた分光濃度計モデル500により測定してベタ画像部にOD1=0.39からOD2=0.46までのささやかな光学濃度の増加を与えた。
【0152】
(比較例3)
比較例1で記載した印刷版前駆体を、320mJ/cm2で画像化し、ベタ領域に低い光学濃度OD1=0.39の画像を形成した。この画像化した前駆体を、軽い圧力で、20%のカーボンブラックを含有するアメリカのOrient Corp.製の水性分散液Micropigmo WMBK-5により1分間ラビングした。得られた印刷版を水中ですすいだ。この顔料分散液は、画像化した前駆体を現像しなかった。ベタ領域のOD2は、0.44になり、それは版の印刷前の評価の一部として画像の特徴を分光濃度計により分析するためには不十分であった。この画像光学濃度は、シアンフィルターを取り付けた分光濃度計モデル500により測定した。
【0153】
(比較例4)
比較例1で記載した印刷版前駆体を、320mJ/cm2で細長くベタに画像化し、低い光学濃度OD1=0.39の画像を形成した。その印刷版を切断して断片とし、それを様々な種類の水溶性染料の水溶液:(i)スルホンフタレイン:ブロモクレゾールパープル(5,5'-ジブロモ-o-クレゾールスルホンフタレインNa塩)8%及びブロモチモールブルー(3,3'-ジブロモチモールスルホンフタレインナトリウム塩)6%;(ii)ブリリアントブルーR(アシッドブルー83)等のトリフェニルメタン染料5%;(iii)カチオン系チアジンの種類:メチレンブルー(3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムクロリド)5%、並びに(iv)アニオン系モノアゾの種類:酸アリザリンバイオレットN(モーダントバイオレット5) 6%及びヒドロキシナフトールブルージナトリウム塩9%、と共に1分間ラビングした。これらの溶液は、版を現像しなかった。染料が、すすぎの工程の間に水中に失われたために、ODの増加は、非常にわずか(OD1=0.39から最大のOD2=0.42まで)であった。画像の光学濃度は、ブルーの色合いに対してはシアンフィルターを、レッドとパープルの色合いに対してはマゼンタフィルターを取り付けた分光濃度計モデル500により測定した。
【0154】
(比較例5)
この例は、アメリカのOrient Corp.製のスルホン化によって水溶性になったニグロシン染料、Water Black 510 (Acid Black 2)を使用した。20%のWater Black 510、9%のBLO及び71%の水を含む着色強化溶液を調製した。印刷版前駆体を比較例1と同様に調製し、320mJ/cm2でのIRレーザーによりベタで画像化した。この画像化した要素を、該着色強化溶液中で60秒間ラビングし、水中ですすいだ。この画像化要素をこの着色した現像液中で現像したが、そのベタの画像の光学濃度はその処理の前後で0.39のままであった。この水溶性染料は、そのコーティングに浸透せずに、すすぎ水の中で洗い落とされた。この画像光学濃度は、シアンフィルターを取り付けた分光濃度計モデル500により測定した。
【0155】
(実施例1)
これは、ワン工程で現像して着色する例である。比較例1に記載した印刷版前駆体の試料を、320mJ/cm2のエネルギーでのIRダイオードレーザーを用いてベタ画像で画像化した。この画像化した前駆体を、次に、水中に10%のCIピグメントレッド17、0.5%のDisperbyk(登録商標)191(Byk Chemie)及び9%のγ-ブチロラクトン(BLO)を含有する現像液-着色性流体中で、軽い圧力でのスクラビングにより手作業で現像した。バックグラウンドは6秒で除去され、そのベタ画像の光学濃度は処理前のOD1=0.39から処理後のOD2=0.54までの光学濃度増加を示した。ラビング時間を60秒まで増すことによって、ベタ画像部のOD2は、0.95まで増加した。この印刷版を水中ですすぎ、1%〜99%のスクリーンのドット面積を、マゼンタフィルターを取り付けた分光濃度計モデル500により読み取り、±1%の精度内の正確な値を示した。その印刷版をAB Dick印刷機に取り付け、200枚まで印刷するために使用し、最初の1枚からのきれいな印刷と5枚後の画像部の完全なインク受容性を示した。印刷で使用した平版印刷インクは、オランダのRoyal Dutch Printing Ink Factoriesから得られたVS506パントンリフレックスブルーであり、湿し水は、USAのDay, International Inc.製のSupreme Fount 6038及びPAR濃縮物が1:1、それぞれ4オンス/ガロン、でつくられている。同じインク及び湿し水を、他に特定されていない限り、以下の実施例においても使用した。
【0156】
(実施例2)
比較例1に記載した印刷版前駆体の試料を、320mJ/cm2のエネルギーでのIRダイオードレーザーを用いて画像化し、次に、レッド顔料、リン酸、ベンジルアルコール及びBLOを他の成分に混じって含有するWestern Litho (Mitsubishi)から得られた市販の有色素の現像液-着色性流体のEnvirotech Red Developer中で、適度のスクラビングにより手作業で現像した。バックグラウンドを、6秒以内で除去し、その画像を着色した。その印刷版を次に水ですすいだ。そのベタ画像の光学濃度は、ラビングの6秒後にOD1=0.39からOD2=0.65まで増加した。ラビング時間を60秒まで増すことによってその光学濃度はOD2=1.00まで増加した。この得られた印刷版を水ですすぎ、1%〜99%のスクリーンのドット面積を、マゼンタフィルターを有する分光濃度計モデル500により読み取り、±1%の精度内の正確な値を示した。その印刷版をAB Dickオンプレスで使用して200枚を印刷し、5枚以内でインク受容性を示し、1枚目からきれいなバックグラウンドを示した。
【0157】
この肯定的な結果は、現像-着色性流体が版上で過剰なコーティングの軟化及び汚れを引き起こし、色調の変化をもたらした比較例6の結果と対照をなしている。
【0158】
(実施例3)
比較例1に記載した印刷版前駆体の試料を、320mJ/cm2のエネルギーでのIRダイオードレーザーを用いて画像化し、次に、ブラック顔料、エチレングリコール、リン酸、ジ-プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)及びBLOを他の成分と共に含有するWestern Litho製の市販の有色素の現像液のBlack Diamond Developer中で、適度のスクラビングにより手作業で現像した。バックグラウンドを、6秒以内で除去し、その画像を、ブラックに着色すると、ベタの画像化領域の光学濃度がOD1=0.39からOD2=0.65まで増加した。ラビング時間を60秒まで増すことによってその光学濃度は0.95まで増加した。この印刷版を水中ですすぎ、1%〜99%のスクリーンのドット面積を、シアンフィルターを取り付けた分光濃度計モデル500により読み取り、±1%の精度内の正確な値を示した。その印刷版をAB Dickオンプレスで使用して200枚を印刷し、5枚以内でインク受容性を示し、1枚目からきれいなバックグラウンドを示した。
【0159】
(実施例4)
この例は、画像の最上層を適切な溶媒で軟化すると水性顔料による版の着色のための条件を生み出すことを示す。そうでなければ、比較例2と同様に版をラビングしたとき殆んど着色をもたらさない。
【0160】
比較例1に記載した印刷版前駆体の試料を、320mJ/cm2で画像化し、1%のベンジルアルコールを含む20% 955現像液を用いて現像した。得られた印刷版を、軟化した画像の最上層を保存するためにすすぎなしで軽くたたいて乾燥させた。その印刷版を次に着色性流体としてのCiba製のIJX 883分散液により30秒間軽くラビングした。そのベタ画像領域の光学濃度を、シアンフィルターを取り付けた分光濃度計モデル500を用いて測定した。その光学濃度は、着色前のOD1=0.36から着色後のOD2=0.56まで増加した。
【0161】
(実施例5)
この例は、比較例2からの改良を示す。現像液-着色性流体を、Ciba製の水性顔料分散液IJX 883に1%のベンジルアルコールを添加することによって調製した。比較例1に記載の印刷版前駆体の試料を、320mJ/cm2で画像化し、次に、6秒以内でのワン工程で現像及び着色をした。光学濃度は、シアンフィルターを取り付けた分光濃度計モデル500により測定し、OD1=0.39からOD2=0.59まで増加した。
【0162】
(実施例6)
この例は、着色性流体中に溶媒の最適濃度があることを示す。3つの有色素現像液-着色性流体を、Cibaの分散液IJX 883にBLOを1%、9%及び14%の濃度で添加することによって調製した。比較例1に記載の印刷版前駆体の試料を320mJ/cm2で画像化し、次いで上記の着色した現像液を用いて16秒以内で現像した。1%BLO濃度の現像液を用いると、そのベタ画像部の光学濃度は、OD1=0.39からOD2=0.47まで増加し、版は完全には現像されなかった。9%BLOの現像液と16秒の現像時間を用いると、その画像化された前駆体は、きれいなバックグラウンドを伴ってよく現像され、着色した画像のOD2は、0.51であった。現像液中のBLOの濃度を14%に増加すると、より低い0.40のOD2がもたらされ、それは、画像の上部の有色素層の一部が洗い流されてすすぎ水を着色したためであった。これは、BLO溶媒の高過ぎる濃度によるコーティングの過剰の軟化が原因であった。
【0163】
画像化された前駆体を9%のBLOを含む有色素現像液中、26秒以内で現像したとき、その版の光学濃度は、画像化された前駆体を16秒以内で現像したときのOD1=0.39からOD2=0.51までの増加と比較して、OD1=0.39からOD2=0.60まで増加した。そのベタの画像化領域の光学濃度は、シアンフィルターを取り付けた分光濃度計モデル500を用いて測定した。
【0164】
(実施例7)
顔料濃縮物を、20%のIrgalite(登録商標)GLVOフタロシアニン顔料(Ciba)、2%のSolsperse(登録商標)20000ポリマー分散剤及び78%のメトキシプロパノールから調製した。有色素現像液-着色性流体をこの顔料濃縮物を用いて調製した。この有色素現像液は、4%のベンジルアルコール、5%のIrgalite(登録商標)GLVO、0.5%のSolsperse(登録商標)20000ポリマー分散剤、19.5%のメトキシプロパノール及び100%までの残りは水、を含有した。比較例1に記載の印刷版前駆体の試料を320mJ/cm2で画像化し、次いでこの有色素現像液中で20秒間現像及び着色をし、版のベタの画像化領域に対してOD1=0.39からOD2=0.50までの光学濃度増加を与えた。そのベタの画像化領域の光学濃度は、シアンフィルターを取り付けた分光濃度計モデル500を用いて測定した。
【0165】
(実施例8)
この例は、疎水性コーティング中に拡散することができずに結局すすぎ水中に洗い流された水溶性染料を用いた比較例4及び5とは対照的に疎水性コーティング中に拡散することができる油溶性染料を使用した。
【0166】
トルエン中に20%のOil Black 860(Solvent Black 3)、アメリカのOrient Corp.から得たニグロシン染料、を含有する着色性流体を調製した。比較例1に記載の印刷版前駆体の試料を、320mJ/cm2で画像化し、1:4で水中に希釈し、希釈後1%のベンジルアルコールを含ませた955現像液を用いて現像した。その版を水中ですすぎ、乾燥させた。その版を、次に、陽極酸化処理したアルミニウムのバックグラウンドを保護するために湿し水で湿潤させ、次にその着色性流体により30秒間ラビングし、水中ですすぎ、乾燥させた。その版は、きれいなバックグラウンド及びOD1=0.36からOD2=1.50までの光学濃度の増加を有した。そのベタの画像化領域の光学濃度は、シアンフィルターを取り付けた分光濃度計モデル500を用いて測定した。
【0167】
(実施例9)
これは、版を、適切な現像液中で現像する前に着色する例である。20%のOil Black 860を、80%のベンジルアルコール中に予め溶解し、Oil Black 860(2%)、ベンジルアルコール(8%)、Dysperbyk(登録商標)191(0.26%)、Lugalvan(登録商標)BNO 24(BASF)(1%)及び100%までの残りの水を含有する着色性流体を調製するための色濃縮物として使用した。印刷版前駆体を比較例1に記載したようにして調製し、320mJ/cm2で画像化した。得られた版を、画像化した前駆体に着色はしたがそれを現像はしなかった着色性流体により60秒間ラビングした。その前駆体を直ちに955現像液中で12秒間現像し、次いで水中ですすいで乾燥させた。そのベタの画像化領域の光学濃度は、シアンフィルターを取り付けた分光濃度計モデル500を用いて測定した。
【0168】
その印刷版は、OD1=0.39からOD2=0.65までのベタ画像の光学濃度の増加を示した。そのバックグラウンドはきれいであり、Dmin(処理して現像したバックグラウンドと未処理で現像したバックグラウンドの光学濃度間の差)は、0.002であった。その印刷版をAB Dick印刷機に取り付け、200枚刷りの印刷をするために使用した。印刷物は最初の1枚からきれいであり、2〜98%のハイライトが、それらの値の±1%の範囲内にそれらが相当する値を読み取った。
【0169】
(実施例10)
着色性流体濃縮物を、20%のOil Black 860及び80%のベンジルアルコールから調製し、Oil Black 860(2%)、ベンジルアルコール(8%)、Dysperbyk(登録商標)191(0.26%)及びLugalvan(登録商標)BNO 24(1%)並びに100%までの残りは水を含む使用強度の着色性流体を調製するために使用した。印刷版前駆体を比較例1に記載したようにして調製し、320mJ/cm2で画像化した。この前駆体の細片を、ラビングアームに取り付けられている500gの重りを備えたSutherland磨耗試験機中で着色性流体により、15秒、30秒及び60秒間ラビングした。その時間が経過後、その画像化された要素を、直ちに955現像液中で現像し、水中ですすぎ、乾燥させた。その画像は、ブルーに着色されており、その画像のベタ領域の光学濃度は、着色前のOD1=0.39から着色後のOD2=0.65までラビング時間には関係なく増加した。そのベタの画像化領域の光学濃度は、シアンフィルターを取り付けた分光濃度計モデル500を用いて測定した。
【0170】
(実施例11)
着色性流体濃縮物を、20%のOil Black 860及び80%のフェノキシエタノールから調製し、Oil Black 860(2%)、フェノキシエタノール(8%)、Dysperbyk(登録商標)191(0.26%)、Lugalvan(登録商標)BNO12(1%)及び100%までの残りとして水を含む着色性流体を調製するために使用した。印刷版前駆体を比較例1に記載したようにして調製し、320mJ/cm2で画像化した。この着色性流体をその上で15秒間ラビングし、次いで直ちに955現像液中で現像した。その印刷版をすすいで乾燥させた。そのベタの画像化領域の光学濃度は、シアンフィルターを取り付けた分光濃度計モデル500を用いて測定した。
【0171】
その画像のベタ領域の光学濃度は、非着色版のOD1=0.39から、着色された版に対してAB Dick印刷機にそれを取り付ける前にそれが完全に読み取ることができるようにするOD2=0.75まで増加した。その印刷機を使用して、2%〜98%のスクリーンのそれらの公称値の±1%の範囲内の良好な表示をもって200枚刷りまで印刷した。
【0172】
(実施例12)
着色性流体濃縮物を、20%のOil Black 860及び80%のメチルセロソルブから調製した。その濃縮物を使用して、Oil Black 860(2%)、メチルセロソルブ(8%)、Dysperbyk(登録商標)163(0.26%)、Lugalvan(登録商標)BNO 12(2%)及び100%までの残りの水を含む使用強度の着色性流体を調製した。印刷版前駆体を比較例1に記載したようにして調製し、320mJ/cm2で画像化した。着色性流体を画像化した版内で30秒間ラビングし、次いで直ちに955現像液中で現像した。その印刷版をすすぎ、乾燥させた。画像のベタ領域の光学濃度は、非着色版のOD1=0.39から着色版に対するOD2=0.75まで増加した。そのベタの画像化領域の光学濃度は、シアンフィルターを取り付けた分光濃度計モデル500を用いて測定した。
【0173】
(実施例13)
着色性流体濃縮物を、20%のOil Black 860及び80%のフェノキシエタノールから調製し、Oil Black 860(2%)、フェノキシエタノール(8%)、Dysperbyk(登録商標)191(0.26%)、Lugalvan(登録商標)BNO 24(1%)及び水(88.74%)を含む着色性流体を調製するために使用した。印刷版前駆体を比較例1に記載したようにして調製し、320mJ/cm2で画像化した。着色性流体を、その中で15秒又は30秒間ラビングし、次いで955現像液中で現像し、水中ですすぎ、乾燥させた。そのベタの画像化領域の光学濃度を、シアンフィルターを取り付けた分光濃度計モデル500を用いて測定した。
【0174】
その版は、ラビング時間に関係なく画像のベタ領域上でOD1=0.30からOD2=0.75までの光学濃度の増加を有した。着色した版と比較例1におけるように調製した着色されていない参照用の版を、Miehle印刷機に取り付け、Gans Ink and Supply Co.製の1.5%の炭酸カルシウムを含有する促進磨耗ブラックインク#9により印刷した。着色した版は、ベタがわずかな磨耗を示す前に、着色されていない参照用と同じランレングス、25,000の刷り、を有した。2〜50%のスクリーン上のドット面積の測定は、25,000の刷りまでの印刷を通してドット面積は一定のままであり、着色性流体によりラビングされた印刷版並びに着色されていない参照についてドットの先鋭化又はドットの増加はなかった。
【0175】
(実施例14)
これは、現像後に着色性流体を使用する例である。比較例1に記載のようにして印刷版前駆体を調製し、320mJ/cm2で画像化した。その画像化した要素を、1:4で水と希釈した955現像液中で現像した。この印刷版を次に水中ですすぎ、乾燥させた。着色性流体を0.5%のDisperbyk(登録商標)191及び1%のベンジルアルコールを含有する90%の水溶液中に10%のCIピグメントレッド17を分散させることによって調製した。陽極酸化処理したアルミニウムのバックグラウンドを保護するために版を湿し水で湿潤させ、次にこの着色性流体で30秒間ラビングし、水中ですすぎ、乾燥させた。画像のベタ領域の光学濃度は、着色前のOD1=0.39から色処理後のOD2=0.60まで増加した。そのベタの画像化領域の光学濃度は、マゼンタフィルターを取り付けた分光濃度計モデル500を用いて測定した。
【0176】
(実施例15)
市販の印刷版前駆体、Eco MaxT/Pro T(Fujifilm)、をKodak(登録商標)Trendsetterプレートセッターを用いて160mJ/cm2で画像化した。20%のOil Black 860及び80%のフェノキシエタノールを含有する濃縮物を調製した。この濃縮物から、2%のOil Black 860、8%のフェノキシエタノール、0.26%のDysperbyk(登録商標)191、6%のLugalvan(登録商標)24界面活性剤及び100%までの水を含有する着色性流体を調製した。画像化した印刷版前駆体をこの着色性流体中に浸した布により45秒間軽くラビングし、次いで直ちに、殆どのブラック染料及び非画像化コーティングを除去するために、955現像液中に浸した布でその前駆体を2回拭うことによって現像した。その平版印刷版を次に水ですすぎ、乾燥させた。その画像化した印刷版の光学濃度OD1は、0.63であった。着色したベタ画像のOD2は、1.20であった。0.5%〜99%のハイライトの百分率ドット面積は、シアンフィルターを取り付けた分光濃度計モデル500を用いて読み取り、1%の範囲内の正確な値を示した。
【0177】
参照用の平版印刷版を、上記のようにして画像化したEco MaxT前駆体を955現像液中で現像することによって調製した。着色した印刷版及び参照用印刷版を、それぞれAB Dick印刷機に取り付け、200枚を印刷するために使用した。参照用印刷版及び着色した印刷版の両方とも、10枚が印刷されるうちにインク密度はいっぱいになり、200の印刷枚数までの試験を通してすべての印刷される形体を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平版印刷版の製造方法であって、
A)基板と、その上に配置される、フリーラジカル重合性化合物、放射吸収性化合物、フリーラジカル開始剤組成物及びポリマーバインダーを含む放射感受性の画像化可能層とを備えるネガ型平版印刷版前駆体を画像様式露光して、ベタ露光領域と非露光領域とを前記画像化可能層中に有しており、前記ベタ露光領域がOD1の光学濃度を有する露光済み前駆体を提供する工程と、
B)水不溶性着色剤及び前記画像化可能層の前記ベタ露光領域を膨潤可能な溶媒を含む着色性流体を、前記露光済み前駆体に、前記ベタ露光領域内の光学濃度がOD1より大きいOD2となるように塗布する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記画像化可能層の前記非露光領域が工程B後に少なくとも部分的に保持されている請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程B後、前記露光済み前駆体を、平版印刷インク、湿し水又はその両方を用いてオンプレスで現像する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
C)工程B前に、工程Bと同時に又は工程B後に、前記露光済み前駆体を、前記画像化可能層の前記非露光領域を除去するための処理溶液を用いてオフプレスで現像して平版印刷版を提供する工程を更に含む請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記露光済み前駆体を現像後、水ですすぐ工程を更に含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記非露光領域を工程B後に除去する請求項4に記載の方法。
【請求項7】
工程Cを工程B前に行う請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記処理溶液が前記平版印刷版の外表面を現像及び保護する請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記水不溶性着色剤が顔料又は水不溶性染料である請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記露光済み画像化可能層を膨潤可能な前記溶媒が、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、γ-ブチロラクトン、ブトキシエタノール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、グリコールエーテル、グリコールエステル、乳酸アルキル、トルエン、石油留分又は任意のこれらの組合せである請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記着色性流体が、グリコール、ガム、デキストリン、セルロースエーテル若しくはエステル、リン酸若しくはリン酸エステル、ホスホン酸若しくはホスホン酸エステル、クエン酸又はクエン酸エステルの1つ又は複数を更に含む請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記着色性流体が非イオン性界面活性剤を含む請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記水不溶性着色剤が前記着色性流体中に少なくとも0.5重量%の量で存在する請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
OD1とOD2との間の差が0.1を超える請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記工程Bが、前記露光済み前駆体を、前記着色性流体の存在下で機械的に又は手作業でブラッシング又はラビングする工程を更に含む請求項1から14のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2012−529668(P2012−529668A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514935(P2012−514935)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/001582
【国際公開番号】WO2010/144117
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】