説明

コンバインのクラッチ操作装置

【課題】刈取系のクラッチと穀粒搬出用クラッチとを備えるコンバインにおける各クラッチの入り切り制御を誤操作少なく、かつ迅速に行えるようにする。
【解決手段】刈取クラッチ30が入り状態であると前記穀粒搬出用クラッチ50の入りを阻止し、前記穀粒搬出用クラッチ50の入り状態で前記刈取クラッチ30が入り操作されると、これに伴って前記穀粒搬出用クラッチ50を切り状態に切換操作する制御手段101を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行装置を備えた走行機体に、刈取搬送部、脱穀装置、及び穀粒貯留装置などを装備してあるコンバインにおいて、それらの各装置の駆動用クラッチを入り切り操作するために用いられるコンバインのクラッチ操作装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
上記したコンバインのクラッチ操作装置においては、従来より下記[1]及び[2]に示す構造を備えたものが知られている。
[1] 刈取クラッチや脱穀クラッチの操作とは関係なく、穀粒タンク内の穀粒を外部へ取り出すための穀粒搬出用スクリューコンベアの駆動用クラッチを独立して入り切り操作可能にしたもの(特許文献1参照)。
[2] 電動モータでカム機構を駆動して、刈取クラッチや脱穀クラッチ、及びフィードチェーンクラッチを操作するように構成したもの(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−89049号公報(段落〔0034〕、〔0039〕、図4、図5)
【特許文献2】特開2004−105021号公報(段落〔0041〕、〔0042〕、〔0045〕、〔0046〕図3、図7、図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されるように、刈取クラッチや脱穀クラッチの操作とは別に、穀粒搬出用スクリューコンベアの駆動用クラッチを独立して入り切り操作可能に構成したものでは、各クラッチを任意に操作し得る点では有用であるが、刈取脱穀の作業中に誤って穀粒搬出用スクリューコンベアの駆動用クラッチを操作してしまう虞がある。
また、特許文献2に記載のように、電動モータで駆動されるカム機構を用いて、刈取クラッチや脱穀クラッチ、及びフィードチェーンクラッチを順次的に操作するように構成したものでは、予め設定されているクラッチについては前記カム機構で設定された順序にしたがって誤操作少なく各クラッチを操作することができる。しかしながら、この特許文献2には記載されていないところの、穀粒搬出用スクリューコンベアの駆動用クラッチだけを別系統の操作具で操作するように構成すると、前記特許文献1に記載の構造のものと同様に、穀粒搬出用スクリューコンベアの駆動用クラッチを誤操作する可能性がある。
【0005】
このような誤操作を回避するには、何れかのクラッチが入り作動中には他のクラッチを入り作動させず、一旦、作動中のクラッチを切り作動してから後に、他のクラッチの入り作動を行えるように構成することが考えられる。しかしながら、各種のクラッチが存在するコンバインにおいて、先に駆動中のクラッチを切り状態に操作してから、次に動作させたいクラッチを入り状態に操作するというのは、対象とするクラッチの数が増えるほど煩雑な操作が必要となって、各クラッチを独立的に操作可能なものでは、その操作対象を間違えなくとも操作順を間違える可能性も生じ、また、各クラッチを順序動作させる構造では、不必要な他のクラッチを入り切り操作する無用な操作が生じるなど、迅速なクラッチ切換操作を行い難いという、新たな問題点がある。
【0006】
本発明の目的は、刈取系のクラッチと穀粒搬出用クラッチとを備えるコンバインにおける各クラッチの入り切り制御を誤操作少なく、かつ迅速に行えるようにしたコンバインのクラッチ操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔解決手段1〕
上記課題を解決するために講じた本発明の技術手段は、刈取搬送装置の駆動を入り切りする刈取クラッチと、穀粒貯留装置の駆動を入り切りする穀粒搬出用クラッチとを操作するコンバインのクラッチ操作装置において、前記刈取クラッチが入り状態であると前記穀粒搬出用クラッチの入りを阻止し、前記穀粒搬出用クラッチの入り状態で前記刈取クラッチが入り操作されると、これに伴って前記穀粒搬出用クラッチを切り状態に切換操作する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段1にかかる本発明のコンバインのクラッチ操作装置は、刈取クラッチが入り状態であると穀粒搬出用クラッチの入りを阻止するように構成しているので、刈取クラッチの入り作動中に穀粒搬出用クラッチが誤って操作されても、その入り作動を牽制することができる。また、穀粒搬出用クラッチを入り操作したい場合には、その入り操作前に必要な刈取クラッチの切り操作を行う必要があるので、刈取クラッチの切り忘れを生じることもない。
そして、刈取クラッチを入り操作すると、入り状態にある穀粒搬出用クラッチを自動的に切り状態に切換操作するので、穀粒搬出用クラッチの切り忘れを防止するとともに、そのような穀粒搬出用クラッチの切り操作を行ってから刈取クラッチの入り操作を行うというような煩雑な操作を要さず、迅速にクラッチの切換を行うことができる。
【0009】
したがって、刈取系のクラッチと穀粒搬出用クラッチとを備えるコンバインにおける各クラッチの入り切り制御を行うにあたり、刈取作業中に誤って穀粒が排出されてしまうような不具合を解消し得る利点がある。また、穀粒搬出を開始するに際しての刈取クラッチの切り忘れを確実の回避し得る利点がある。
そして、穀粒搬出作業終了後、もしくは排出作業中にも、刈取クラッチを作動させて直ちに刈取作業を開始したい場合には、単純に刈取クラッチの入り操作を行うだけで自動的に、穀粒搬出用クラッチを切り操作して刈取クラッチの入り操作が行われるので、誤操作なく迅速な切換操作を行える利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】自脱形コンバインの全体側面図
【図2】自脱形コンバインの全体平面図
【図3】機体フレーム上の配置関係を示す平面図
【図4】刈取クラッチを示す側面図
【図5】伝動系を示す概略図
【図6】クラッチ操作装置を示す平面図
【図7】クラッチ操作装置を示す側面図
【図8】クラッチ操作装置を示す展開図
【図9】クラッチ操作装置の作動形態を示す線図
【図10】クラッチ操作装置の作動形態を示すタイムチャート
【図11】クラッチ操作装置の作動形態を示す説明図
【図12】制御構成を示すブロック図
【図13】クラッチ操作装置の制御系のメインフローチャート
【図14】クラッチ制御ルーチンのフローチャート
【図15】計器パネルの平面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
〔コンバインの全体構成〕
図1には本発明を適用した自脱型コンバインの全体側面が、図2にはその全体平面が示されている。
このコンバインは、角パイプ材などによって枠状に形成した機体フレーム1を備え、機体フレーム1の下部に左右一対のクローラ式走行装置2を装備している。機体フレーム1の前方及び左前部には昇降揺動可能に連結した刈取搬送装置3が設けられ、機体フレーム1の左後部に脱穀装置4を搭載し、機体フレーム1の右後部に穀粒貯留装置5を搭載し、さらに、機体フレーム1の右前部に設けた原動部6、原動部6の上方側に形成した搭乗運転部20などを備えている。
【0012】
図4に示すように、前記機体フレーム1の前部には、刈取搬送装置3の刈取主フレーム3Aの後端側の左右向きの横筒部分を支持して、横軸心x1回りで前後向きの縦筒部分を上下揺動可能に支持する刈取フレーム支持台17を設けてある。前記刈取主フレーム3Aには、刈取搬送装置3の引起し装置31や刈取装置32に動力を伝達するための動力伝達軸(図示せず)を内装してある。
【0013】
〔機体フレームの構成〕
機体フレーム1は、、図3に示すように、前後方向に長い角パイプ状の左右一対のメインフレーム10,10と、そのメインフレーム10,10に対して左右方向に横切る方向で交差する状態で搭載設置された多数の横向きフレーム11と、横向きフレーム11の機体外側端側に搭載設置される前後向きの側部フレーム12とを備えて格子枠状に形成されている。前記メインフレーム10,10の右側方で側部フレーム12との間には、図示しないが、断面形状がほぼ山形で連続した三角波形状の金属製板材で構成された機枠プレート13を備えている。
上記のメインフレーム10,10、横向きフレーム11、側部フレーム12、及び機枠プレート13が一体化されて機体フレーム構成材を構成している。
【0014】
機体フレーム1上には、図3に示すように、左右のメインフレーム10,10の両側に振り分けた状態で、左後部に前記脱穀装置4が、右後部に前記穀粒貯留装置5が搭載されており、右前部には原動部6が設けられている。
前記機枠プレート13は、平面視で前記穀粒貯留装置5の下方側に部分的に重なる状態で設けられているが、この重なり部分では、前記穀粒貯留装置5の底面が、横幅方向中央部箇所のスクリューコンベヤ55側ほど低くなる斜面で形成されている。このため、実際には前記穀粒貯留装置5の底面側と機枠プレート13との間には上下方向の間隔がある。機枠プレート13の上面側には、その機枠プレート13の三角波形状の谷部によって上方開放の溝状部が形成されている。そして、穀粒貯留装置5が縦軸心y回りで外側に揺動開放されると、前記機枠プレート13の上面側は、作業者がメンテナンス作業等のために搭乗することも可能な状態に開放される。
【0015】
前記機枠プレート13よりも後方側の機体フレーム1の右後端部には、前記穀粒貯留装置5の穀粒搬出用オーガ52が配設されており、機体フレーム1の左後端部には、燃料タンク16が配設されている。
前記機枠プレート13よりも前方側の機体フレーム1上には、その右側方にエンジン60、油圧ポンプ65、及びラジエータ61を搭載した原動部6が設けてあり、さらにその原動部6の前方側に延長されている機体フレーム1上に電源供給装置としてのバッテリ69が搭載してある。
また、機体フレーム1のうちのメインフレーム10,10の間には、左右のクローラ式走行装置2に対して駆動力を伝達するための駆動車軸(図外)を備えたミッションケース26を装備してあり、そのミッションケース26は、ミッションケース26内のギヤ類の潤滑及び冷却のための潤滑油を貯留するためのタンクを兼用している。
さらに、前記ミッションケース26よりも機体左側方寄りの機体フレーム1上に、各種油圧装置に対する作動油を供給するための作動油タンク27を搭載してある。
【0016】
前記メインフレーム10,10の右横側部の位置で、脱穀装置4が存在する箇所よりも右側の位置の機体フレーム1上には、各種作業クラッチを共通の電動モータ70の動力を用いて入り切り制御するためのクラッチ操作装置Aが配備されている。このクラッチ操作装置Aの存在箇所は、前記穀粒貯留装置5を後部側の縦軸心y周りで揺動させて開放姿勢としたとき、機体の右横側方から覗き込んで作業することが可能な位置である。
【0017】
〔原動部の構成〕
原動部6では、図3及び図5に示すように、機体フレーム1に搭載したエンジン60と、エンジン60の横側部に取り付けられた油圧ポンプ65と、エンジン冷却用のラジエータ61と、オイルクーラー66と、前記ラジエータ61に対する送風方向を正逆に切り換えて送風可能な送風ファン62とを備えている。前記送風ファン62に対向する箇所の機体右外側部には、図1に示すように、外部からの塵埃の吸入を抑制するための防塵網付きの外気導入用の開口部63が設けられている。
【0018】
前記エンジン60に連設されたエンジンマフラー67からは、機体後部へ向けてエンジン排気を導く排気管68を機体フレーム1の下方側へ延出している。
前記送風ファン62は、詳細は図示しないが、前記右側のエンジン出力軸60a上でスライド操作自在な操作体64を備え、その操作体64のスライド操作で送風ファン62の羽根の角度を変更して送風方向を正方向と逆方向とに切換操作自在に構成されている周知のものである。
【0019】
前記搭乗運転部20には、図示しないが送風ファン62の操作体64に対する逆流用操作具(図外)を備えてあり、その逆流用操作具が操作されている間だけ、操作体64を操作して、送風方向を逆転させることができるように構成されている。
【0020】
〔穀粒搬出用オーガの構成〕
図1,2,3に示すように、前記機枠プレート13よりも後方側の機体フレーム1の右後端部に設けられる穀粒搬出用オーガ52は、機体フレーム1側に固定されている電動アクチュエータの一例である駆動モータ5Mを備え、この駆動モータ5Mによって縦筒部分52Aが、前記穀粒貯留装置5の揺動中心である縦軸心y回りで旋回自在に、かつ、その穀粒貯留装置5のグレンタンク51に対しては相対回動自在に構成されている。
また、前記縦筒部分52Aの上端側に接続される横筒部分52Bは、横軸心x回りで起伏揺動自在に構成してあり、その起伏動作は、前記縦筒部分52Aと横筒部分52Bとの間にわたって設けた油圧アクチュエータとしての油圧駆動式の伸縮シリンダ5Sによって行われる。
【0021】
〔搭乗運転部の構成〕
図2に示すように、前記搭乗運転部20では、機体の前後進変速操作を行う変速レバー21、ならびに機体の操向操作を行う操向操作レバー22を備えるとともに、各種作業装置の駆動の入り切りや作動順を指令するための操作盤23を備えている。
【0022】
この操作盤23には、枕扱き脱穀開始ボタンB1、低速刈取脱穀開始ボタンB2、高速刈取脱穀開始ボタンB3、穀粒搬出用ボタンB4、作業開始・終了ボタンB5がそれぞれ装備されている。これらの各ボタンB1,B2,B3,B4,B5は、押し込み操作で入り状態となり、再度の押し操作で元の切り状態に復帰するように構成されている。そして、後述する制御装置100に対して人為操作による指令である操作信号を入力して、制御装置100によってクラッチ操作装置Aの作動を制御し、各種作業装置の駆動の有無ならびに駆動開始順を制御する。
【0023】
作業開始・終了ボタンB5は、制御装置100による制御対象の各作業装置のどれもが駆動されていない状態で押し操作されると、脱穀装置4のみの駆動を開始し、他の作業装置は停止させた状態とする。そして、この作業開始・終了ボタンB5以外の前記各ボタンB1,B2,B3,B4の何れかが入り操作された後に、この作業開始・終了ボタンB5が押し操作されると、その駆動中の作業装置を停止するように機能する。
【0024】
前記枕扱き脱穀開始ボタンB1を操作すると、脱穀装置4と、フィードチェーン42とが駆動され、他の作業装置は停止状態であって、機体を停止させた状態での手扱き脱穀作業が可能な状態となる。そして、前記低速刈取脱穀開始ボタンB2が操作されると、上記の脱穀装置4及びフィードチェーン42の他に、刈取搬送装置3が駆動される状態となる。
高速刈取脱穀開始ボタンB3を操作すると、刈取変速機構35が高速側に切り換えられて、上記の刈取脱穀作業を高速で行うことができる。
さらに、穀粒搬出用ボタンB4は、上記の刈取作業関連機器の全ての作動が停止されている状態で穀粒貯留装置5のみを駆動し、穀粒を排出する作業状態となる。
上記の制御形態については、制御系の構成とともに後述する。
【0025】
〔伝動系の構成〕
図3に示すように、エンジン60は、その出力軸60aの軸心方向が左右向きになる姿勢で機体フレーム1に搭載されている。そのエンジン60から左右の各クローラ式走行装置2への伝動は、図5に示すように、機体の左右中央部に向けて突出するエンジン60の出力軸60aの左端部から、左右の各クローラ式走行装置2の駆動輪2Aにわたる走行用の伝動系を介して行われる。走行用の伝動系は、ベルト式の伝動装置24、主変速装置として備えた静油圧式無段変速装置25、及び、ミッションケース26に副変速装置として内装したギヤ式変速装置(図示せず)、などによって構成されている。
【0026】
左右の各クローラ式走行装置2は、搭乗運転部20に装備した変速レバー21を前後方向に揺動操作することで、静油圧式無段変速装置25による無段階の変速操作と前後進の切り換え操作とを行うことができ、又、搭乗運転部20に装備した操向操作レバー22を左右方向に揺動操作することで、ミッションケース26内のギヤ式変速装置による直進状態、左右の緩旋回状態、及び左右の急旋回状態の切り換えを行えるように構成されている。
【0027】
刈取搬送装置3は、静油圧式無段変速装置25による変速後の動力がワンウェイクラッチ25aやベルトテンション式の刈取クラッチ30などを介して伝達されることで、複数の引起装置31、バリカン形の刈取装置32、及び穀稈搬送装置33などが駆動され、機体の走行に伴って、その前端に装備された複数の分草具34が倒伏した植立穀稈を分草し、各引起装置31が分草後の植立穀稈を引き起こし、刈取装置32が引き起こされた植立穀稈の株元側を切断し、穀稈搬送装置33が刈取穀稈を起立姿勢から横倒し姿勢に切り換えながら後方の脱穀装置4に向けて搬送するように構成され、又、操向操作レバー22を前後方向に揺動操作することで、リフトシリンダ18の作動により刈取搬送装置3の昇降操作を行えるようになっている。
【0028】
刈取搬送装置3への動力伝達構造は次のように構成されている。
図4及び図5に示すように、静油圧式無段変速装置25による変速後の動力がミッションケース26の上部横側部に設けてある刈取用出力プーリ36aから出力され、図4に示すように、その刈取用出力プーリ36aと、刈取主フレーム3Aに支持される刈取用入力プーリ36bと、前記刈取用出力プーリ36aと刈取用入力プーリ36bとの間に巻回した伝動ベルト37と、テンション輪38とで構成される刈取クラッチ30を介して、刈取主フレーム3A内の動力伝達軸(図外)に伝達される。
【0029】
前記刈取クラッチ30の前記テンション輪38を伝動ベルト37側へ押圧付勢するためのテンションアーム39は、長さ方向の中間部が刈取フレーム支持台17に対して、揺動支点となる横軸17a回りで揺動自在に枢支されていて、伝動ベルト37に対して遠近移動するテンション輪38が一端側に装着され、他端側に操作ワイヤー30aが連結されている。したがって、前記操作ワイヤー30aが後述するクラッチ操作装置Aのカム機構8で引っ張られるとテンション輪38が伝動ベルト37の外周面へ下方側から押しつけられてクラッチ入り状態となる。操作ワイヤー30aが緩められると、テンション輪38が伝動ベルト37の外周面から離れる下方側へ移行してクラッチ切りとなる。
【0030】
上記の刈取搬送装置3における刈取速度を、前記静油圧式無段変速装置25による無段階での変速のみならず、圃場の条件や茎稈の倒伏状況などに応じて大きく変化させたい場合には、ミッションケース26内に装備させた専用のギヤ変速機構で構成された刈取変速機構35による高低2段の変速操作で行えるように構成してある。
この刈取変速機構35による高低2段の変速操作は、周知のシフト操作具(図示せず)を、後述するクラッチ操作装置Aに対して操作ワイヤー35aを介して連係させてあり、クラッチ操作装置Aの操作によって、高速での刈取作業と低速での刈取作業とを選択できるように構成してある。
【0031】
脱穀装置4は、ベルトテンション式の脱穀クラッチ40を介して伝達されるエンジン60からの動力で、扱胴41などが駆動され、後述のフィードチェーン47で株元側を挟持搬送される穀稈の穂先側を扱き処理し、かつ選別処理して得られた穀粒を、一番回収スクリュー(図外)などを介して穀粒貯留装置5のグレンタンク51に供給搬送する周知の構造によって構成されている。
前記ベルトテンション式の脱穀クラッチ40は、エンジン側の出力プーリ60bと脱穀装置4の入力プーリ42との間に掛張された伝動ベルト43と、テンションプーリ44とで構成されている。そして、前記テンションプーリ44を引き操作してクラッチ入り状態に切換え操作するための操作ワイヤ−40aを後述するクラッチ操作装置Aに連係させている。
【0032】
フィードチェーン47は、前記脱穀装置4への伝動系から伝動ベルト48で分岐された伝動系によって、かつテンションクラッチ式のフィードチェーンクラッチ49を介してエンジン60からの動力が伝達されるように構成してある。そして、前記フィードチェ−ンクラッチ49を操作することにより、脱穀装置4の駆動開始あるいは終了時点とタイミングをずらして駆動できるように構成されている。
【0033】
穀粒貯留装置5は、グレンタンク51と穀粒搬出用オーガ52とを備え、この穀粒搬出用オーガ52に対してエンジン60の動力が伝達されるように構成してある。つまり、前記エンジン60の出力軸60aのうち、右側横側方から機体外側に向けて突出させた部分から穀粒貯留装置5の入力部53にわたって伝動ベルト54を掛張し、その伝動ベルト54による動力伝達を入り切り操作するベルトテンション式の穀粒搬出用クラッチ50を備えたものである。
【0034】
前記グレンタンク51は、その後部に備えた縦軸心y周りに、その全体がエンジン60の後方に位置する作業位置と、その前部側が機体フレーム1の右外方に張り出してエンジン60の後方を開放するメンテナンス位置とにわたって揺動変位可能に、かつ、図外のロック機構によって作業位置及びメンテナンス位置での位置保持が可能となるように構成されている。
このように揺動変位するグレンタンク51の底部に備えられたスクリューコンベヤ55や前記穀粒搬出用オーガ52に対する入力部53は、グレンタンク51の前記縦軸心y周りでの揺動を許容するための係脱構造を備えている。
【0035】
すなわち、図5に示すように、伝動ベルト54が掛張される入力プーリ56、及びその入力プーリ56に対して一体回転可能に、かつ相対摺動可能にスプライン嵌合される伝動軸57は機体フレーム1側に設けた軸受けブラケット10bに支持されている。
前記伝動軸57に伝えられた動力は、その伝動軸57に対して軸端側を係脱される入力伝動軸58に伝えられ、かつ、その入力伝動軸58のベベルギヤ58aと前記スクリューコンベヤ55の軸端側に設けられたベベルギヤ55aを介して前記スクリューコンベヤ55や前記穀粒搬出用オーガ52伝達されるように構成されている。
前記入力伝動軸58は、グレンタンク51側に支持されていて、前記伝動軸57に対して抜き差し可能な凹入係合部58bを備えていて、伝動軸57からの回転動力は伝達されながら、軸線方向での抜き差しは可能に構成されているので、前記縦軸心y周りでのグレンタンク51の揺動に伴なう係脱を許容することができる。
図中の符号59は、伝動軸57を入力伝動軸58側へ押しつけ付勢するための押圧用スプリングである。
【0036】
〔クラッチ操作装置の構成〕
図6乃至図11に示すように、本発明では、上記の各種作業装置が備えるクラッチを入り切り操作するためのコンバインのクラッチ操作装置としてカム駆動式のクラッチ操作装置Aを採用している。このクラッチ操作装置Aは、駆動力を発生する駆動装置7と、その駆動装置7によって駆動されるカム機構8とによって構成されている。
【0037】
駆動装置7は、動力源としての電動モータ70と、その電動モータ70の動力をカム機構8に伝えるギヤ機構72と、電動モータ70で駆動されたカム機構8の作動状態を検出する検出機構としてのポテンショメータ73とを備えるとともに、電動モータ70の作動を制御する手段として、後述するマイクロコンピュータからなる制御装置100に制御プログラムとして備えられたモータ制御回路とで構成されている。
前記電動モータ70は、前記操縦盤20Cに備えられた各種操作ボタンB1〜B5の操作信号が制御装置100に入力されると、その操作信号に基づく制御指令が制御装置100から出力され、電動モータ70が正転方向、もしくは逆転方向に駆動操作される。電動モータ70の駆動力は、モータ出力軸71に装着された出力ギヤ74の回転動力として出力される。この出力ギヤ74と、後述するカム機構8のカム板の外周の一部に形成されたギヤ部75とで前記ギヤ機構72が構成されている。
出力ギヤ74によるカム機構8の駆動状態は、カム軸80の軸端に装備されたポテンショメータ73で検出され、その検出結果に基づくフィードバック信号が前記制御装置100に伝達される。
【0038】
前記カム機構8は、共通のカム軸80に対して一体回動するように装着された第1カム板81、第2カム板82、及び第3カム板83の組み合わせで構成されるカム板群と、それらの各カム板81,82,83のそれぞれに対して接触するカムフォロワ群との組み合わせで構成されている。
カムフォロワ群のうち、第1カム板81に対しては、カム軸80よりも機体前方側で接触して案内される穀粒搬出用クラッチ50を操作するグレンタンク系カムフォロワ84と、カム軸80よりも機体後方側で接触して案内される脱穀クラッチ40を操作する脱穀系カムフォロワ85とが備えられている。
第2カム板82に対しては、カム軸80よりも機体前方側で接触して案内されるフィードチェ−ンクラッチ49を操作するフィード系カムフォロワ86と、カム軸80よりも機体後方側で接触して案内される刈取クラッチ30を操作する刈取系カムフォロワ87とが備えられている。
第3カム板83に対しては、カム軸80よりも機体前方側にはカムフォロワはなく、カム軸80よりも機体後方側で接触して案内される刈取変速機構35のシフト操作手段を操作する刈取変速系カムフォロワ88が備えられている。また、前記電動モータ70の出力ギヤ74と共にギヤ機構72を構成するギヤ部75は、この第3カム板83の外周縁の一部に形成されている。
【0039】
前記カム軸80よりも機体前方側に存在するカムフォロワ84,86は、それぞれ断面U字状に折り曲げ形成された揺動片84a,86aの長手方向の中間部を、クラッチケース76に対して機体の右横外方側から挿抜可能に装着された枢支軸77によって、その枢支軸77周りで揺動自在に取り付けられている。また、各揺動片84a,86aの長手方向での上端側には、折り曲げられたU字状部分に入り込んだ状態で、前記カム板81,82の外周縁側に接触するローラ84b,86bが設けてある。前記各揺動片84a,86aの長手方向での下端側には、それぞれ、穀粒搬出用クラッチ50、及びフィードチェ−ンクラッチ49を入り切り操作するための操作ワイヤー50a,44aを連結してある。
【0040】
前記カム軸80よりも機体後方側に存在するカムフォロワ85,87,88は、それぞれ断面U字状に折り曲げ形成された揺動片85a,87a,88aの長手方向での下端部を、外装ボックス76に対して機体の右横外方側から挿抜可能に装着された枢支軸78によって、その枢支軸78周りで揺動自在に取り付けられている。
また、各揺動片85a,87a,88aの長手方向での中間部には、折り曲げられたU字状部分に入り込んだ状態で、前記カム板81,82、83の外周縁側に接触するローラ85b,87b,88bが設けてある。そして、各揺動片85a,87a,88aの長手方向での上端側には、それぞれ、脱穀クラッチ40を操作するための操作ワイヤー40a、及び刈取クラッチ30を入り切り操作するための操作ワイヤー30a、刈取変速機構35の変速操作手段を操作するための操作ワイヤー35aを連結してある。
【0041】
前記第1カム板81には、その外周縁に、グレンタンク系カムフォロワ84を操作するためのグレンタンク系カム面81aと、脱穀系カムフォロワ85を操作するための脱穀系カム面81bとが、カム軸80を挟んでほぼ対向する箇所に形成してある。
前記第2カム板82には、その外周縁に、フィード系カムフォロワ86を操作するためのフィード系カム面82aと、刈取系カムフォロワ87を操作するための刈取系カム面82bとが、カム軸80を挟んでほぼ対向する箇所に形成してある。
前記第3カム板83には、その外周縁に、刈取変速系カムフォロワ88を操作するための刈取変速系カム面83aが設けてあるとともに、この第3カム板83、及び前記第1カム板81、第2カム板82に駆動力を伝達するためのギヤ部75を形成してある。
【0042】
〔クラッチ操作装置による動作〕
次に、上記クラッチ操作装置Aによる作動形態を図9乃至図11に基づいて説明する。
図9は、前記第3カム板83に形成されたギヤ部75の付設範囲によって設定されるカム軸80の回転角度範囲内における各カム板81,82,83の各カム面81a,81b,82a,82b,83aと、各カムフォロワ84,85,86,87,88とで現出される機能が発揮される範囲を、前記回転角度範囲内での角度分布図で表したものである。
図10は、作業装置の種別を縦軸に、操作タイミングを横軸にとったタイムチャートである。また、図11は、各カム板とカムフォロワとの関連動作状態を、横軸に作業装置の種類を、縦軸に時間軸をとって図示したグラフである。
【0043】
図9に示す符号Nの位置は、このクラッチ操作装置Aによって操作される全てのクラッチ等が作動側には操作されていず、何れの作業装置も駆動されていない状態である中立位置を示している。同様の中立位置Nは、図10、及び図11にも同じ符号Nで示している。
【0044】
図9における符号aは、第1カム板81を、前記中立位置Nから反時計回りに回動させて、グレンタンク系カム面81aがグレンタンク系カムフォロワ84を操作して穀粒搬出用クラッチ50が入りとなった位置を示すものであり、図10においても同じ符号aで示す位置に相当する。また、図11においては、最上位に図示されている符号aの段における第1カム板81とグレンタンク系カムフォロワ84との接触状態で示されている。
このとき、第2カム板82や第3カム板83の位置に関しては、図9では直接的には示されていないが、図10では、脱穀クラッチ40と穀粒搬出用クラッチ50の動作を示す線が第1カム板81に関係したものであり、刈取変速機構35の動作を示す線が第3カム板83に関係したものであることが分かる。
したがって、この図10をみても、前記aの位置では、穀粒搬出用クラッチ50のみが「入」で、他の全てのクラッチは「切」となっており、刈取変速機構35は低速状態である。
図11では、符号aの段において、第2カムフォロワ86が第2カム板82のフィード系カム面82aに接した状態であるが、フィードチェ−ンクラッチ49は、もともと入り側に付勢されているので、前記フィード系カム面82aが第2カムフォロワ86を切り側へ操作して、フィードチェ−ンクラッチ49を切り状態に保っている。
【0045】
図9における符号bは、第1カム板81を、前記中立位置Nから時計回りに回動させて、グレンタンク系カム面81aがグレンタンク系カムフォロワ84から外れた位置に移行して穀粒搬出用クラッチ50が切りとなった位置にあり、脱穀系カム面81bが脱穀系カムフォロワ85を操作して脱穀クラッチ40が入りとなった位置である。
図10においても同じ符号bで示す位置が同じ状態に相当する。また、図11においては、上から3段目に図示されている符号bの段における第1カム板81と脱穀系カムフォロワ85との接触状態で示されている。
このとき、第2カム板82は、図10及び図11に示すように、フィードチェ−ンクラッチ49も刈取クラッチ30もクラッチ切りの状態に維持している。
また、第3カム板83は、図10及び図11に示すように、刈取変速機構35の低速状態を維持したままである。
【0046】
図9における符号cの位置では、第1カム板81を、前記中立位置Nから時計回りに回動させて、脱穀系カム面81bが脱穀系カムフォロワ85を操作して、脱穀クラッチ40の入り状態を引き続いて維持している。
そして、このとき、時計回りに回動する第2カム板82では、フィード系カム面82aがフィード系カムフォロワ86の切り操作状態を解除し、フィードチェ−ンクラッチ49をクラッチ入りの状態に切換操作する。
このとき、第2カム板82の刈取系カム面82bは、刈取系カムフォロワ87を作用する状態には至っておらず、刈取系カムフォロワ87は刈取クラッチ30の切り状態を維持している。
図10においても同じ符号cで示す位置が同じ状態に、つまり、脱穀クラッチ40とフィードチェ−ンクラッチ49がクラッチ入りの状態で、かつ刈取クラッチ30が切りの状態を示している。
図11においては、符号cの段における第1カム板81と脱穀系カムフォロワ85との接触状態で脱穀クラッチ40の入りが維持されている状態が示されている。これとともに第2カム板82のフィード系カム面82aがフィード系カムフォロワ86の切り操作を解除し、フィードチェ−ンクラッチ49をクラッチ入りの状態に切換操作している状態が示されている。そして、第2カム板82の刈取系カム面82bは、刈取系カムフォロワ87を作用する状態には至っておらず、刈取系カムフォロワ87は刈取クラッチ30の切り状態を維持している。
また、第3カム板83は、図10及び図11に示すように、刈取変速機構35の低速状態を維持したままである。
【0047】
図9における符号dの位置では、第1カム板81を、前記中立位置Nから時計回りに回動させて、脱穀系カム面81bが脱穀系カムフォロワ85を操作して、脱穀クラッチ40の入り状態を引き続いて維持している。
時計回りに回動する第2カム板82のフィード系カム面82aはフィード系カムフォロワ86の切り操作を解除した状態であり、フィードチェ−ンクラッチ49をクラッチ入りに切換操作した状態を維持している。
そして、このとき、第2カム板82の刈取系カム面82bが、刈取系カムフォロワ87を操作し、刈取クラッチ30を、クラッチ入りの状態に切換操作する。
図10においても同じ符号dで示す位置が同じ状態に、つまり、脱穀クラッチ40に加えて、フィードチェ−ンクラッチ49と刈取クラッチ30とが、共にクラッチ入りの状態に切換操作された状態を示している。
図11においては、符号dの段における第1カム板81と脱穀系カムフォロワ85との接触状態で脱穀クラッチ40の入りが維持されている状態が示されている。これとともに第2カム板82の刈取系カム面82bが、刈取系カムフォロワ87を操作し、同時にフィード系カム面82aがフィード系カムフォロワ86の切り操作を解除し、フィードチェ−ンクラッチ49と刈取クラッチ30とを、共にクラッチ入りの状態に切換操作している状態が示されている。
また、第3カム板83は、図10及び図11に示すように、刈取変速機構35の低速状態を維持したままである。
【0048】
図9における符号eの位置では、第1カム板81を、前記中立位置Nから時計回りに回動させて、脱穀系カム面81bが脱穀系カムフォロワ85を操作して、脱穀クラッチ40の入り状態を引き続いて維持している。
引き続き時計回りに回動する第2カム板82の刈取系カム面82bが、刈取系カムフォロワ87を操作し、同時にフィード系カム面82aがフィード系カムフォロワ86の切り操作を解除していて、フィードチェ−ンクラッチ49と刈取クラッチ30とが、共にクラッチ入りの状態に切換られた状態を維持している。
そして、このとき第3カム板83の刈取変速系カム面83aが、刈取変速系カムフォロワ88を操作して、刈取変速機構35の操作用シフタを高速側に操作する。
図10においても同じ符号eで示す位置が同じ状態に、つまり、フィードチェ−ンクラッチ49と刈取クラッチ30とが、共にクラッチ入りの状態であり、刈取変速機構35が高速側に操作されている状態を示している。
図11においては、符号eの段における第1カム板81と脱穀系カムフォロワ85との接触状態で脱穀クラッチ40の入りが維持されている状態が示されている。これとともに第2カム板82の刈取系カム面82bが、刈取系カムフォロワ87を操作し、同時にフィード系カム面82aがフィード系カムフォロワ86の切り操作を解除し、フィードチェ−ンクラッチ49と刈取クラッチ30とを、共にクラッチ入りの状態に切換操作している状態が示されており、第3カム板83の刈取高速系カム面(図外)が、刈取変速系カムフォロワ(図外)を操作して、刈取変速機構35の操作用シフタを高速側に操作している。
【0049】
〔制御系の構成〕
図12に示すように、刈取クラッチ30、脱穀クラッチ40、フィードチェ−ンクラッチ49、穀粒搬出用クラッチ50、及び刈取変速機構35を操作するカム機構8の動力源である電動モータ70の作動を制御するモータ制御回路101を、制御プログラムとしてインプットされているマイクロコンピュータからなる制御装置100は次のように構成されている
【0050】
搭乗運転部20の操作盤23に備えられる枕扱き脱穀開始ボタンB1、低速刈取脱穀開始ボタンB2、高速刈取脱穀ボタンB3、穀粒搬出用ボタンB4、及び作業開始・終了ボタンB5のそれぞれは操作スイッチによって構成されており、その操作信号が制御装置100に入力されるように構成されている。
制御装置100では、前記各ボタンB1,B2,B3,B4,B5の何れが操作されたかの判断に基づいて、また、ポテンショメータ73での検出結果に基づいて、前記制御回路がクラッチ操作装置Aの電動モータ70に対して次のように制御指令を出力する。
【0051】
枕扱き脱穀開始ボタンB1が操作されたことを検出した場合には、ポテンショメータ73で検出されるカム軸80の検出位置が、図9における符号cの位置(便宜上、枕扱き脱穀開始位置cという)よりも時計回りで中立位置から離れている位置でない場合には、電動モータ70がギヤ機構72を駆動し、カム機構8のカム軸80を時計回りに回転させる。そして、枕扱き脱穀開始位置cに達したことがポテンショメータ73で検出されると電動モータ70に停止指令を出力する。
前記ポテンショメータ73で検出されるカム軸80の検出位置が、枕扱き脱穀開始位置cよりも時計回りで中立位置から離れている位置である場合には、電動モータ70が逆回転でギヤ機構72を駆動し、カム機構8のカム軸80を反時計回りに回転させる。そして、枕扱き脱穀開始位置cに達したことがポテンショメータ73で検出されると電動モータ70に停止指令を出力する。また、前記ポテンショメータ73で検出されるカム軸80の検出位置が、枕扱き脱穀開始位置cである場合には、電動モータ70に対する駆動指令は出力されない。
この状態では、第1カム板81の脱穀系カム面81bが脱穀系カムフォロワ85を操作して、脱穀クラッチ40が入り操作されている。その後、作業開始・終了ボタンB5が操作されたことを検出すると、電動モータ70を駆動してカム軸80を反時計回りに回転させ、中立位置Nに達したことが検出されると、その位置で停止するように指令する。
【0052】
低速刈取脱穀開始ボタンB2が操作されたことを検出した場合には、ポテンショメータ73で検出されるカム軸80の検出位置が、図9における符号dの位置(便宜上、低速刈取脱穀開始位置dという)よりも時計回りで中立位置から離れている位置でない場合には、電動モータ70がギヤ機構72を駆動し、カム機構8のカム軸80を時計回りに回転させる。そして、低速刈取脱穀開始位置dに達したことがポテンショメータ73で検出されると電動モータ70に停止指令を出力する。
前記ポテンショメータ73で検出されるカム軸80の検出位置が、低速刈取脱穀開始位置d、もしくは低速刈取脱穀開始位置dよりも時計回りで中立位置から離れている位置である場合には、電動モータ70に対する駆動指令は出力されない。
この状態では、第1カム板81の脱穀系カム面81bが脱穀系カムフォロワ85を操作して、脱穀クラッチ40が入り操作された状態を維持しているとともに、第2カム板82の刈取系カム面82bが、刈取系カムフォロワ87を操作し、同時にフィード系カム面82aがフィード系カムフォロワ86の切り操作を解除し、フィードチェ−ンクラッチ49と刈取クラッチ30とを、共にクラッチ入りの状態に切換操作している。
その後、作業開始・終了ボタンB5が操作されたことを検出すると、電動モータ70を駆動してカム軸80を反時計回りに回転させ、中立位置Nに達したことが検出されると、その位置で停止するように指令する。
【0053】
高速刈取脱穀開始ボタンB3が操作されたことを検出した場合には、ポテンショメータ73で検出されるカム軸80の検出位置が、図9における符号eの位置(便宜上、高速刈取脱穀位置eという)よりも時計回りで中立位置から離れている位置でない場合には、電動モータ70がギヤ機構72を駆動し、カム機構8のカム軸80を時計回りに回転させる。そして、高速刈取脱穀位置eに達したことがポテンショメータ73で検出されると電動モータ70に停止指令を出力する。
この状態では、第1カム板81の脱穀系カム面81bが脱穀系カムフォロワ85を操作して、脱穀クラッチ40が入り操作された状態を維持しているとともに、第2カム板82の刈取系カム面82bが、刈取系カムフォロワ87を操作し、同時にフィード系カム面82aがフィード系カムフォロワ86の切り操作を解除し、フィードチェ−ンクラッチ49と刈取クラッチ30とを、共にクラッチ入りの状態に切換操作している。
また、この高速刈取脱穀位置eへの操作に伴って第3カム板83の刈取高速系カム面83aが、刈取変速系カムフォロワ88を操作して、刈取変速機構35の操作用シフタを高速側に操作している。
その後、作業開始・終了ボタンB5が操作されたことを検出すると、電動モータ70を駆動してカム軸80を反時計回りに回転させ、中立位置Nに達したことが検出されると、その位置で停止するように指令する。
【0054】
穀粒搬出開始ボタンB4が操作されたことを検出した場合には、ポテンショメータ73で検出されるカム軸80の検出位置が、図9における符号aの位置(便宜上、穀粒搬出位置aという)よりも反時計回りで中立位置から離れている位置でない場合には、電動モータ70がギヤ機構72を駆動し、カム機構8のカム軸80を反時計回りに回転させる。そして、穀粒搬出位置aに達したことがポテンショメータ73で検出されると電動モータ70に停止指令を出力する。
前記ポテンショメータ73で検出されるカム軸80の検出位置が、穀粒搬出位置aである場合には、電動モータ70に対する駆動指令は出力されない。この状態では、第1カム板81のグレンタンク系カム面81aがグレンタンク系カムフォロワ84を操作して穀粒搬出用クラッチ50が入りとなっている。
その後、作業開始・終了ボタンB5が操作されたことを検出すると、電動モータ70を駆動してカム軸80を時計回りに回転させ、中立位置Nに達したことが検出されると、その位置で停止するように指令する。
【0055】
〔モータ制御回路の制御形態〕
クラッチ操作装置Aのモータ制御回路101による制御の流れを、図13及び図14のフローチャートに基づいて説明する。
[1]図13に示すように、モータ制御回路101のメインルーチンでは、制御開始直後のステップ#1で、フラグf=0を初期設定し、次のクラッチ制御ルーチン#2を開始する。クラッチ制御ルーチン#2を脱出した後は、キースイッチ(図外)切りなどの制御終了条件の有無を判断し、終了でなければ再度クラッチ制御ルーチン#2を実行する。
【0056】
図14に示すクラッチ制御ルーチン#2では、次のように制御が行われる。
[2]まず、作業開始・終了ボタンB5がON(入り)操作されたことを検出し、かつ、ONが検出されると、フラグfの値を判断する(ステップ#4,#5)。
[3]前記フラグfの値がf=0である場合に、枕扱き脱穀開始ボタンB1がOFF(切り)でなければ、つまり枕扱き脱穀開始ボタンB1がONであれば、フィードチェーン47の駆動を開始し、前記フラグfの値をf=1にセットする(ステップ#6,#7、#17)。逆に、枕扱き脱穀開始ボタンB1がOFF(切り)であれば、次の低速刈取脱穀開始ボタンB2の操作状態を判別する(ステップ#6,#8)。
[4]低速刈取脱穀開始ボタンB2がOFF(切り)でなければ、つまり低速刈取脱穀開始ボタンB2がONであれば、穀粒搬出用クラッチ50をOFF(切り)操作した後、刈取クラッチ30をON(入り)操作するとともに、刈取変速機構35を低速側へ切換操作する。逆に、低速刈取脱穀開始ボタンB2がOFF(切り)であれば、次の高速刈取脱穀開始ボタンB3の操作状態を判別する(ステップ#8,#9,#10,#11)。
[5]高速刈取脱穀開始ボタンB3がOFF(切り)でなければ、つまり高速刈取脱穀開始ボタンB3がONであれば、穀粒搬出用クラッチ50をOFF(切り)操作した後、刈取クラッチ30をON(入り)操作するとともに、刈取変速機構35を高速側へ切換操作し、前記フラグfの値をf=1にセットする(ステップ#11,#12,#13,#17)。逆に、高速刈取脱穀開始ボタンB3がOFF(切り)であれば、次の穀粒搬出用ボタンB4の操作状態を判別する(ステップ#11,#14)。
[6]穀粒搬出用ボタンB4がOFF(切り)でなければ、つまり穀粒搬出用ボタンB4がONであれば、穀粒搬出用クラッチ50をON(入り)操作した後、前記フラグfの値をf=1にセットする(ステップ#15,#17)。
[7]穀粒搬出用ボタンB4がOFF(切り)であれば、つまり、上記各ボタンB1,B2,B3,B4の何れもがOFF(切り)であれば、脱穀クラッチ40のみをON(入り)操作した後、前記フラグfの値をf=1にセットする(ステップ#16,#17)。
【0057】
[8]前記ステップ#5において、フラグfの値がf=1であれば、枕扱き脱穀開始ボタンB1がOFF(切り)でなければ、つまり枕扱き脱穀開始ボタンB1がONであれば、フィードチェーンクラッチ49をOFF(切り)にしてフィードチェーン47の駆動を停止するとともに、脱穀クラッチ40をOFF(切り)にし、前記フラグfの値をf=0にセットする(ステップ#18,#19,#27)。逆に、枕扱き脱穀開始ボタンB1がOFF(切り)であれば、次の低速刈取脱穀開始ボタンB2の操作状態を判別する(ステップ#18,#20)。
[9]低速刈取脱穀開始ボタンB2がOFF(切り)でなければ、つまり低速刈取脱穀開始ボタンB2がONであれば、刈取クラッチ30をOFF(切り)操作し、前記フラグfの値をf=0にセットする(ステップ#20,#21,#27)。逆に、低速刈取脱穀開始ボタンB2がOFF(切り)であれば、次の高速刈取脱穀開始ボタンB3の操作状態を判別する(ステップ#20,#22)。
[10]高速刈取脱穀開始ボタンB3がOFF(切り)でなければ、つまり高速刈取脱穀開始ボタンB3がONであれば、刈取クラッチ30をOFF(切り)操作するとともに、刈取変速機構35を低速側へ切換操作し、前記フラグfの値をf=0にセットする(ステップ#22,#23,#27)。逆に、高速刈取脱穀開始ボタンB3がOFF(切り)であれば、次の穀粒搬出用ボタンB4の操作状態を判別する(ステップ#22,#24)。
[11]穀粒搬出用ボタンB4がOFF(切り)でなければ、つまり穀粒搬出用ボタンB4がONであれば、穀粒搬出用クラッチ50をOFF(切り)操作した後、前記フラグfの値をf=0にセットする(ステップ#24,#25,#27)。
[12]穀粒搬出用ボタンB4がOFF(切り)であれば、つまり、上記各ボタンB1,B2,B3,B4の何れもがOFF(切り)であれば、脱穀クラッチ40のみをOFF(切り)操作した後、前記フラグfの値をf=0にセットする(ステップ#24,#26,#27)。
【0058】
〔その他〕
図15は、搭乗運転部20における計器パネル9を示している。
この計器パネル9には、中央部に車速を示す作業速度計90と、負荷メータ91とを備え、左側部にエンジン回転計92を備え、右側部に燃料計93を備えて構成されている。
【0059】
前記作業速度計90は車速センサー95で検出される車速が指針90aによりアナログ表示され、前記負荷メータ91は、その外周縁近くに円弧状に配置された多数のLED94によって構成されている。このLED94は、図中に示す軽負荷範囲94aでは緑色に、その軽負荷よりも大きい中負荷範囲94bでは黄色に、さらに大きい大負荷範囲94cでは、赤色に発光するように、かつ各色の濃度も負荷が大きくなるほど濃くなるように、該当する色のLED94を用いて設けられている。
【0060】
図12に示すように、前記負荷メータ91は、無負荷状態で所定のエンジン回転数が得られるように踏み込み位置をセットされたアクセルペダル28の操作位置を検出するアクセルセット位置検出器96からの検出信号と、エンジン回転数を検出するエンジン回転数検出センサー97の検出結果とから、負荷検出を行うように構成されている。つまり、アクセルペダル28の操作位置での無負荷時におけるのエンジン回転数から、そのアクセルペダル28の操作位置でどの程度エンジン回転数が低下しているのかを制御装置100の表示演算回路102で算出し、その偏差の大きさに基づいて負荷の度合いを表示するようにしてある。
【0061】
前記表示演算回路102では、負荷メータ91によって表示される負荷の増減をLED94で表すときの表示速度が、負荷の大きさの度合いによって異なるように設定してある。
つまり、表示演算回路102で算出された偏差が大きい範囲である大負荷範囲94cでは、赤色のLED94の表示動作は、負荷の変動とほぼ同期して敏感に行われる。そして、前記偏差が大負荷範囲94cよりも小さい中負荷範囲94bでは、黄色のLED94の表示動作が、大負荷範囲94cでの表示速度よりも鈍感になるように、適宜遅延回路(図示せず)などを介して表示速度を遅くしている。さらに、表示演算回路102で算出された偏差が最も少ない範囲である軽負荷範囲94aでは、緑色のLED94の表示動作は、中負荷範囲94bでの表示速度よりも鈍感で、最も遅くなるように、適宜遅延回路(図示せず)などを介して表示速度をさらに遅くしている。
【0062】
上記のように負荷メータ91によって表示される負荷の増減をLED94で表すときの表示速度が、負荷の大きさの度合いによって異なるように設定してあるのは、この負荷メータ91を見ながら操縦者が静油圧式無段変速装置25の変速レバー21を操作して、負荷の増減を調節する際の便を図るためである。
つまり、負荷メータ91の動きがあまりに敏感すぎると調節操作を行い難いのであるが、この構造のものでは、緊急を要する虞の高い大負荷範囲94cでの負荷変動は敏感に表示し、負荷の大きさがそれほど大きくない中負荷範囲94bや軽負荷範囲94aでの負荷変動は鈍感に表示することにより、負荷メータ91の表示を見やすくして、調節操作を行い易くしている。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のコンバインのクラッチ操作装置を適用する可能性としては、実施の形態で示したような自脱型コンバインに限らず、例えば、全杆投入型の普通型コンバインにも適用可能である。また、稲麦などの穀物に限らず、大豆や菜種などの収穫を行うコンバインにも採用することができる。
【0064】
〔別実施形態の1〕
本発明の駆動装置7としては、単一の電動モータ70、もしくは複数個の電動モータ70で駆動されるカム駆動式のものに限らず、例えば、制御対象の全てのものを、電動モータ70やソレノイドなどの各種アクチュエータを用いて、各別に操作するようにした構造のものでもよい。
【0065】
〔別実施形態の2〕
負荷メータ91で表示される負荷の検出対象としては、上述のような、アクセルセット位置とエンジン回転数とから演算するものに限らず、例えば、脱穀処理対象の穀物量と車速との比較に基づいて、あるいは、排ワラ量と車速との比較に基づいてなど、エンジン回転数に影響を及ぼす要因となる種々のものを対象として負荷を演算するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
3 刈取搬送装置
4 脱穀装置
5 穀粒貯留装置
20 搭乗運転部
30 刈取クラッチ
50 穀粒搬出用クラッチ
51 グレンタンク
52 穀粒搬出用オーガ
100 制御装置
101 モータ制御回路
A クラッチ操作装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取搬送装置の駆動を入り切りする刈取クラッチと、穀粒貯留装置の駆動を入り切りする穀粒搬出用クラッチとを操作するコンバインのクラッチ操作装置であって、
前記刈取クラッチが入り状態であると前記穀粒搬出用クラッチの入りを阻止し、前記穀粒搬出用クラッチの入り状態で前記刈取クラッチが入り操作されると、これに伴って前記穀粒搬出用クラッチを切り状態に切換操作する制御手段を備えたことを特徴とするコンバインのクラッチ操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−166866(P2010−166866A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13306(P2009−13306)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】