説明

コンバインの刈取部昇降装置

【課題】コンバインの刈取部の高さを微調節することができるようにする。
【解決手段】刈取部昇降装置は、昇降可能な刈取部20を昇降制御する昇降制御手段17と、刈取部20の高さを微調節する操作信号を昇降制御手段17に送る微調節スイッチ14,15とを、備え、微調節スイッチ14,15を操作レバーに設けてある。昇降制御手段17が、下降用及び上昇用スイッチ21,16による下降及び上昇操作信号によって刈取部20を下降及び上昇させ、下降用及び上昇用スイッチ21,16の非作動状態における下降用及び上昇用微調節スイッチ15,14による操作信号によって刈取部20の高さを微調節するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの刈取部昇降装置、詳しくは、刈取部の高さを微調節する機能を備えた刈取部昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの刈取部昇降装置は、コンバインの運転席に設けられた操作レバーを操作することによって、刈取部を昇降制御するようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開平6−261628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の刈取部昇降装置は、刈取部の高さを微調節する機構が設けられていなかったため、オペレータが刈取部を所望の位置より高い位置、或いは低い位置に停止させたとき、オペレータが操作レバーを小刻みに操作して、刈取部を所望の高さに昇降させる必要があった。このため、従来の刈取部昇降装置は、コンバインの操作性を損ねていた。
【0005】
(目的)
本発明は、コンバインの刈取部の高さを微調節することができるようにした刈取部昇降装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、旋回走行可能な機体を旋回走行制御する機体旋回制御手段(24)と、昇降可能な刈取部(20)を昇降制御する昇降制御手段(17)と、前記機体の旋回走行操作と前記刈取部(20)の昇降操作とをする操向兼刈取部昇降用レバー(11)と、前記操向兼刈取部昇降用レバー(11)に設けられて前記刈取部(20)の高さを微調節する操作信号を前記昇降制御手段(17)に送る微調節スイッチ(14,15)と、前記操向兼刈取部昇降用レバー(11)の前方向操作によって作動して前記昇降制御手段(17)に刈取部(20)を下降させる下降操作信号を送る下降用スイッチ(21)と、前記操向兼刈取部昇降用レバー(11)の後方向操作によって作動して前記昇降制御手段(17)に刈取部(20)を上昇させる上昇操作信号を送る上昇用スイッチ(16)と、を備え、
前記操向兼刈取部昇降用レバー(11)は、左右方向操作により旋回走行操作信号を前記機体旋回制御手段(24)に送り、前記前後方向操作により前記下降及び上昇操作信号を前記昇降制御手段(17)に送り、
前記微調節スイッチ(14,15)は、下降用微調節スイッチと上昇用微調節スイッチとを有し、これら両スイッチの一方を前記操向兼刈取部昇降レバーの前記前方向操作である下降操作方向側に設け、他方を前記後方向操作である上昇操作方向側に設け、
前記昇降制御手段(17)は、前記下降用及び上昇用スイッチ(21,16)による昇降操作信号によって前記刈取部(20)を昇降させ、前記下降用及び上昇用スイッチ(21,16)の非作動状態における前記下降用及び上昇用微調節スイッチ(15,14)による下降及び上昇信号によって前記刈取部(20)の高さを微調節する、コンバインの刈取部昇降装置にある。
【0007】
本発明の刈取部昇降装置の前記昇降制御手段(17)は、前記微調節スイッチ(14,15)の操作によって、前記刈取部(20)をインチング昇降制御するようになっている。
【0008】
(作用)
刈取部(20)は、昇降制御手段(17)によって昇降する。刈取部(20)が、所望位置で停止しなかったとき、オペレータは、微調節スイッチ(14,15)を操作し、刈取部(20)の高さを微調節して刈取部(20)を所望の高さに停止させる。しかも、微調節スイッチ(14,15)は、コンバインを操作する操作レバー(11)に設けられているため、オペレータが他の操作と関係付けて操作を行える。
【0009】
微調節スイッチ(14,15)が、昇降操作レバー(11)に設けられていると、微調節スイッチ(14,15)は、昇降レバー(11)の操作に引き続いて操作される。
【0010】
昇降制御手段(17)が、微調節スイッチ(14,15)の操作による刈取部(20)の昇降速度を、操作レバー(11)による刈取部(20)の昇降速度より、遅くなるように制御するようになっていると、刈取部(20)は、高さを微調節するとき、ゆっくりと昇降し、所望の位置に確実に停止する。
【0011】
昇降制御手段(17)が、微調節スイッチ(14,15)の操作によって、刈取部(20)をインチング昇降制御するようになっていると、刈取部(20)は、高さを微調節するとき、段階的に昇降し、所望の位置に確実に停止する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコンバインの刈取部昇降装置は、刈取部(20)の刈り高さを微調節する微調節スイッチ(14,15)を有しているので、刈取部(20)を所望の高さに速やかに且つ正確に調節することができ、コンバインの操作性を向上させることができる。また、刈り取り始め時に起こりがちな、泥刈りや高刈りを防止することができる。さらに、微調節スイッチ(14,15)が操作レバー(11)に設けられているため、コンバインを操作中、微調節スイッチ(14,15)の位置を容易に探し出すことができ、コンバインの操作性を損なうようなことがない。
【0013】
また、本発明のコンバインの刈取部昇降装置において、上記操作レバー(11)が、昇降制御手段(17)に刈取部(20)の高さを調節する操作信号を送る昇降操作レバー(11)であると、昇降操作レバー(11)に微調節スイッチ(14,15)が設けられていることになり、昇降操作レバー(11)を操作しながら微調節スイッチ(14,15)も操作することができるので、刈取部(20)を所望の高さに速やかに且つ正確に調節することができ、コンバインの操作性を向上させることができる。
【0014】
さらに、本発明のコンバインの刈取部昇降装置において、昇降制御手段(17)が、微調節スイッチ(14,15)の操作による刈取部(20)の昇降速度を、操作レバー(11)による刈取部(20)の昇降速度より、遅く制御するようになっていると、刈取部(20)の高さの微調節を容易に行うことができる。
【0015】
また、本発明のコンバインの刈取部昇降装置において、昇降制御手段(17)が、微調節スイッチ(14,15)の操作によって、刈取部(20)をインチング昇降制御するようになっていると、刈取部(20)を段階的に昇降させて刈取部(20)の高さの微調節を容易に行うことができ、コンバインの操作性を向上させることができる。
【0016】
なお、上述した括弧内の符号は、図面を参照するために付したものであって、何ら構成を限定するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の刈取部昇降装置を図に基づいて説明する。
【0018】
コンバインの運転台10には、図1に示すように、操向兼刈取部昇降用レバー(操作レバー、昇降操作レバー)11、刈高ポジション設定ダイヤル12等が設けられている。操向兼刈取部昇降用レバー11の握り部には、押釦式の上昇用微調節スイッチ14及び下降用の微調節スイッチ15が設けられている。
【0019】
操向兼刈取部昇降用レバー11は、矢印マル1の方向へ傾けると、操向兼刈取部昇降用レバー11に連動する下降用リフトスイッチ21を作動させ、昇降制御手段17によって下降用リフトバルブ22を制御し、油圧シリンダ19を作動させて、刈取部20を下降させることができるようになっている。
【0020】
また、操向兼刈取部昇降用レバー11は、矢印マル2の方向へ傾けると、操向兼刈取部昇降用レバー11に連動する上昇用リフトスイッチ16を作動させ、昇降制御手段17によって上昇用リフトバルブ18を制御し、油圧シリンダ19を作動させて、刈取部20を上昇させることができるようになっている。
【0021】
さらに、操向兼刈取部昇降用レバー11は、矢印マル3の方向へ傾けると、操向兼刈取部昇降用レバー11に連動する右旋回用スイッチ23をONにし、機体旋回制御手段24によって右旋回用クラッチバルブ25を制御して、コンバインを右旋回走行させることができるようになっている。
【0022】
そして、操向兼刈取部昇降用レバー11は、矢印マル4の方向へ傾けると、操向兼刈取部昇降用レバー11に連動する左旋回用スイッチ26をONにし、機体旋回制御手段24によって左旋回用クラッチバルブ27を制御して、コンバインを左旋回走行させることができるようになっている。
【0023】
なお、スイッチ16,21は、操向兼刈取部昇降用レバー11が傾けられた間、ONになっているスイッチである。また、スイッチ14,15も、同様に、押圧されている間、ONになっているスイッチである。
【0024】
上記昇降制御手段17は、刈取部20を昇降制御するようになっている。また、上記機体旋回制御手段24は、コンバインを左右方向に旋回走行制御するようになっている。これらの制御手段17,24は、コンバインを制御するコントロールユニット28に組み込まれている。
【0025】
刈高ポテンション設定ダイヤル12は、刈取部20の下降規制位置である刈高位置を設定するダイヤルで、それらの位置は昇降制御手段17に記憶されるようになっている。なお、刈取部20の昇降位置は、刈取部20の動きにともなって、可変する可変抵抗器からなるリフトポテンショメータ29の可変位置によって検知され、昇降制御部17によって判断されるようになっている。上昇規制位置は、不図示の機械的手段によって設定されている。
【0026】
次に、刈取部昇降装置の動作を図3のフローチャートに基づいて説明する。
【0027】
(刈取部の上昇制御)
刈高解除フラグの初期値は0である(S11)。操向兼刈取部昇降用レバー11を矢印マル2方向に傾けると、上昇用リフトスイッチ16が作動し(S12)、昇降制御手段17によって、刈取部(刈取部はフローチャートにおいて「前処理」と称する)20が上昇させられる(S13)。前処理20は、上記機械的手段によって設定された上昇規制位置まで上昇すると、上記機械的手段によって停止させられる。
【0028】
(刈取部の下降制御)
操向兼刈取部昇降用レバー11を矢印マル1方向に傾けると、下降用リフトスイッチ21が作動する(S14)。上昇用微調節スイッチ(S3)14と下降用微調節スイッチ(S4)15との何れもOFF(S15、S16)で、且つ前処理20が下降規制位置(リフトポテンション)に到達していないとき(S17)、前処理20は、昇降制御手段17によって下降制御させられる(S18)。前処理20は、下降規制位置まで下降すると、下降したことがリフトポテンショメータ29によって検知され、昇降制御手段17によって停止させられる。
【0029】
(刈取部の上昇制御、下降制御におけるインチング制御)
前処理20の上昇中、或いは下降中、ONになっている上昇用リフトスイッチ16又は下降用リフトスイッチ21をOFF(S12、S14)にし、上昇用微調節スイッチ(S3)14或いは下降用微調節スイッチ(S4)15をONにすると(S19、S20)、前処理20は、昇降制御手段17によって小刻みに上昇(インチング上昇)或いは小刻みに下降(インチング下降)させられる(S21、S22、S23)。前処理20が所望の高さに位置調節できたとき、ONになっている上昇用微調節スイッチ(S3)14或いは下降用微調節スイッチ(S4)15をOFFにすると、前処理20は、所望の高さに停止する。なお、その所望の高さ位置が、上昇規制位置或いは下降規制位置になったとき、前処理20は、昇降制御手段17によって、自動的に停止させられる。
【0030】
(刈取部の下降規制位置よりさらなる下降制御−刈高解除制御)
操向兼刈取部昇降用レバー11を矢印マル1方向に傾けて下降用リフトスイッチ21をONにし(S14)、上昇用微調節スイッチ(S3)14又は下降用微調節スイッチ(S4)15をONにすると(S15、S16)、刈高解除フラグが0から1に変わり(S24)、前処理20が下降を継続する(S25、S26)。
【0031】
その後、S11に戻り、刈高解除フラグが0になる。そして、下降用リフトスイッチ21、ONになっている上昇用微調節スイッチ(S3)14又は下降用微調節スイッチ(S4)15をOFFにすると(S19、S20)、刈高解除フラグが0であり、ONになっていた上昇用微調節スイッチ(S3)14又は下降用微調節スイッチ(S4)15をOFFにする前の刈高解除フラグが1であるので(S27)、前処理20が下降規制位置よりさらに下降したその位置から下降規制位置に復帰上昇に変わるのに要する時間が復帰タイマにセットされる(S28)。そして、その復帰タイマにセットされた時間が終了していれば(S29)、前処理20が、下降規制位置より低い位置にあるか否かが判断され(S30)、下降規制位置より下降していれば、刈高さに上昇復帰させられる(S31)。しかし、上記時間が経過していないとき、或いは前処理20が、下降規制位置より高
い位置にあるとき、S11に戻り、前処理20は、下降を継続させられる。
【0032】
なお、以上の説明において、刈取部20は、高さを微調節するとき、昇降制御手段17の制御によって、小刻みに昇降(インチング昇降)するようになっているが、小刻みに昇降せずに、微調節しない通常の昇降速度より遅く連続的に昇降するようにしても、小刻みに昇降しているときと同様に、微調節が可能である。
【0033】
また、小刻みに昇降するときも、微調節しない通常の昇降速度より遅く小刻みに昇降するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の刈取部制御装置の操向兼刈取部昇降用レバーと、その周辺との斜視図である。
【図2】本発明の刈取部制御装置の制御ブロック図である。
【図3】本発明の刈取部制御装置の動作フローチャートである。
【符号の説明】
【0035】
11 操向兼刈取部昇降用レバー(操作レバー、昇降操作レバー)
12 刈高ポジション設定ダイヤル
14 上昇用微調節スイッチ
15 下降用微調節スイッチ
16 上昇用リフトスイッチ
17 昇降制御手段
20 刈取部
21 下降用リフトスイッチ
24 機体旋回制御手段
28 コントロールユニット
29 リフトポテンショメータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回走行可能な機体を旋回走行制御する機体旋回制御手段と、
昇降可能な刈取部を昇降制御する昇降制御手段と、
前記機体の旋回走行操作と前記刈取部の昇降操作とをする操向兼刈取部昇降用レバーと、
前記操向兼刈取部昇降用レバーに設けられて前記刈取部の高さを微調節する操作信号を前記昇降制御手段に送る微調節スイッチと、
前記操向兼刈取部昇降用レバーの前方向操作によって作動して前記昇降制御手段に刈取部を下降させる下降操作信号を送る下降用スイッチと、
前記操向兼刈取部昇降用レバーの後方向操作によって作動して前記昇降制御手段に刈取部を上昇させる上昇操作信号を送る上昇用スイッチと、を備え、
前記操向兼刈取部昇降用レバーは、左右方向操作により旋回走行操作信号を前記機体旋回制御手段に送り、前記前後方向操作により前記下降及び上昇操作信号を前記昇降制御手段に送り、
前記微調節スイッチは、下降用微調節スイッチと上昇用微調節スイッチとを有し、これら両スイッチの一方を前記操向兼刈取部昇降レバーの前記前方向操作である下降操作方向側に設け、他方を前記後方向操作である上昇操作方向側に設け、
前記昇降制御手段は、前記下降用及び上昇用スイッチによる下降及び上昇操作信号によって前記刈取部を下降及び上昇させ、前記下降用及び上昇用スイッチの非作動状態における前記下降用及び上昇用微調節スイッチによる操作信号によって前記刈取部の高さを微調節する、
ことを特徴とするコンバインの刈取部昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−142091(P2008−142091A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24610(P2008−24610)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【分割の表示】特願2000−11495(P2000−11495)の分割
【原出願日】平成12年1月20日(2000.1.20)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】