コンバイン
【課題】旋回状態表示用としての特別のモニタ表示器を不要とし、構成の簡素化によって製造コストを低減する。
【解決手段】車台(7)の前部側にハンドル(1)の操作によって油圧式無段変速装置(2)を駆動させて旋回を行わせる差動装置(3)を内装した走行用ミッションケース(4)を設け、グレンタンク(10)に貯留された穀粒量およびエンジン(20)の回転数を基本画面(A)としてモニタ表示器(6)に表示している状態で、ハンドル(1)による旋回操作を旋回切替センサ(61)で検出した場合に、左右のクローラ(5a,5b)の速度差をオペレータに認識させる表示画面(B)をモニタ表示器(6)に表示させるコントローラ(83)を設ける。
【解決手段】車台(7)の前部側にハンドル(1)の操作によって油圧式無段変速装置(2)を駆動させて旋回を行わせる差動装置(3)を内装した走行用ミッションケース(4)を設け、グレンタンク(10)に貯留された穀粒量およびエンジン(20)の回転数を基本画面(A)としてモニタ表示器(6)に表示している状態で、ハンドル(1)による旋回操作を旋回切替センサ(61)で検出した場合に、左右のクローラ(5a,5b)の速度差をオペレータに認識させる表示画面(B)をモニタ表示器(6)に表示させるコントローラ(83)を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来では、油圧式無段変速装置によって駆動する差動装置を内装した走行用ミッションケースを設けている作業車等において、このミッションケースによって路上走行や操向旋回を行うときは、円滑な高速走行が可能であり移動時間を短縮できるという利点がある。また、モニタ表示器を設けることによって、機体の各装置における作用状態を基本設定画面の切り替えにより容易にチェックすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−171547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、該ミッションケースによって操向旋回を行わせる際には、パワステレバーの操作によりマイルド旋回,ブレーキ旋回,スピン旋回を連続して実行させることが可能となり、該レバーの傾動操作角度が大きいときは一気にスピン旋回を行うことになるため、速い車速のときは、左右の走行クローラの一方側が前進高速で他方側が後進高速の状態となり、速度差の大きい急旋回となることによってオペレータの危険性が大きく、機体にも大きな荷重が生じ破損の原因となる。
【0005】
なお、このため左右の走行クローラの速度差をモニタ表示器の画面に表示させようとするときは、特別のモニタ表示器を必要とする難点がある。
そこで、このような左右の走行クローラの速度差をチェックして規制を行うことにより、トラブル発生を未然に防止する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、車台(7)の下部側に左右のクローラ(5a,5b)を備えた走行装置(8)を設け、車台(7)上にはグレンタンク(10)を備えた脱穀装置(11)を設け、前記グレンタンク(10)の前側に操作席(19)を設け、該操作席(19)の下方側にエンジン(20)を設け、前記脱穀装置(11)の前方に刈取装置(17)を昇降自在に設けたコンバインにおいて、前記車台(7)の前部側にハンドル(1)の操作によって油圧式無段変速装置(2)を駆動させて旋回を行わせる差動装置(3)を内装した走行用ミッションケース(4)を設け、前記グレンタンク(10)に貯留された穀粒量およびエンジン(20)の回転数を基本画面(A)としてモニタ表示器(6)に表示している状態で、ハンドル(1)による旋回操作を旋回切替センサ(61)で検出した場合に、左右のクローラ(5a,5b)の速度差をオペレータに認識させる表示画面(B)をモニタ表示器(6)に表示させるコントローラ(83)を設けたことを特徴とするコンバインとする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によると、グレンタンク(10)に貯留された穀粒量およびエンジン(20)の回転数を基本画面(A)としてモニタ表示器(6)に表示しており、ハンドル(1)による旋回操作を旋回切替センサ(61)で検出した場合に、左右のクローラ(5a,5b)の速度差をオペレータに認識させる表示画面(B)をモニタ表示器(6)に表示させることができるため、旋回状態表示用としての特別のモニタ表示器が不要となり、構成の簡素化によって製造コストを低減することができる。
【0008】
そして、湿田等においてクローラがスリップし旋回に支障をきたす状態において、ハンドル(1)による左右のクローラ(5a,5b)の速度差を増大させる操作によって、土壌面から沈下し、脱出不能状態となるトラブルを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】走行用ミッションケースの伝動構成とその周辺機器関係を示す正面展開線図。
【図2】走行用ミッションケースの伝動構成におけるギヤの配列状態を示す側面線図。
【図3】パワステレバー(ハンドル)の全体構成とレバーアームの作用位置を示す正面図。
【図4】パワステレバーの全体構成を示す側面図。
【図5】(a)パワステレバーにおける操向クラッチの切り作用位置を示す正面図。(b)パワステレバーにおけるスピン旋回の旋回作用位置を示す正面図。
【図6】旋回時に走行クローラの出力回転数を調節する無段変速装置を示す正面図。
【図7】左右の走行クローラの速度を検出し調節制御する自動回路を示すブロック図。
【図8】操作装置における操作パネルにモニタ表示器を配置した状態を示す平面図。
【図9】左右の走行クローラの速度を検出し画面表示する自動回路を示すブロック図。
【図10】モニタ表示器の基本設定画面と速度表示画面との切り替え状態を示す画像図。
【図11】旋回作用を検出しクローラの速度画面を表示する自動回路を示すブロック図。
【図12】モニタ表示器に左右の走行クローラの各種の作用速度画面を表示する画像図。
【図13】モニタ表示器に左右の走行クローラの速度画面を棒グラフで表示する画像図。
【図14】コンバインの全体構成を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、この発明の実施例を作業車等としてのコンバインについて図面に基づき説明する。
図14はコンバインの全体構成を示すもので、車台7の下部側に土壌面を走行する左右一対の走行クローラ5(左のクローラ5a,右のクローラ5b)を張設した走行装置8を配設すると共に、該車台7上には、フィードチェン9に挟持搬送して供給される穀稈の脱穀を行い、この脱穀された穀粒を選別回収して一時貯留するグレンタンク10と、このタンク10に貯留された穀粒を機外へ排出する排穀オーガ10aを備えた脱穀装置11を載置し、この脱穀装置11の後端部に排藁処理装置12を装架構成している。
【0011】
該脱穀装置11の前方に、前端側から未刈穀稈を分草する分草体13と、分草された穀稈を引き起こす引起部14と、引き起こされた穀稈を刈り取る刈刃部15と、この刈り取られた穀稈を掻き込むと共に、搬送途上において扱深さを調節して搬送される穀稈を引き継いで該フィードチェン9へ受け渡しする供給調節搬送部16等を有する刈取装置17を、油圧駆動による刈取昇降シリンダ17aにより土壌面に対して昇降自在なるよう該車台7の前端部へ懸架構成している。
【0012】
該刈取装置17の一側にコンバインの操作制御を行う操作装置18と、この操作のための操作席19を設け、この操作席19の後方側に前記グレンタンク10を配置すると共に下方側にエンジン20を搭載し、該操作装置18と操作席19を覆うキャビン21を配設する。これら走行装置8,脱穀装置11,刈取装置17,操作装置18,エンジン20,キャビン21等によってコンバインの機体22を構成している。
【0013】
該走行装置8は車台7の前部側に走行用ミッションケース4を装架しており、このミッションケース4の伝動機構は、図1及び図2に示す如く、外部の出力軸23からの伝動を第1軸としての入力軸24に入力し、この入力軸24に軸止した入力ギヤ25と、第2軸としての中間軸26に軸止した中間ギヤ27とを噛合連動して構成させる。
【0014】
該中間軸26の軸端部に、該ケース4の外側壁4aに装着した走行用の油圧式無段変速装置28の可変ポンプ28aを連結し、この可変ポンプ28aにより一体的に駆動する油圧モータ28bに、第3軸としての変速駆動軸29を連結させると共に、この変速駆動軸29に軸止する高速駆動ギヤ30と低速駆動ギヤ31とに、各々噛合連動する2連の高低変速ギヤ32を第4軸としての変速軸33にスプライン等により摺動可能に軸回転して構成させる。
【0015】
該変速軸33に軸止した変速伝動ギヤ34と、第5軸としての操向軸35のセンターに軸止している両面にクラッチ爪36aを設けた操向センタギヤ36とを噛合連動し、この操向センタギヤ36の両側に各々左右の操向クラッチ37を摺動自在に軸承して構成させる。
【0016】
該左右の操向クラッチ37には、各々小径ギヤ37aの内側面にクラッチ爪36aと噛合接続して動力を入・切させるクラッチ爪37bを設けると共に、外側面の大径ギヤ37cと小径ギヤ37aとの間に該クラッチ37を摺動させるシフタ38を遊嵌させるシフタ溝37dを設けて構成させる。
【0017】
該操向クラッチ37の小径ギヤ37aと噛合連動する車軸ギヤ39を、第6軸としての左右の車軸40に各々軸止すると共に、この左右の車軸40の外部の軸端部に、前記走行クローラ5を駆動する左右の走行スプロケット41を軸止して構成させる。
【0018】
前記外部の出力軸23からの伝動を、該ミッションケース4の外側壁4bに装着した旋回用の油圧式無段変速装置2の可変ポンプ2aにより一体的に駆動する正逆回転可能な可変モータ2bを、第4A軸としての旋回駆動軸42に連結すると共に、この旋回駆動軸42に軸止した旋回駆動ギヤ43と、第4B軸としての旋回軸44に設けた差動装置3の駆動ギヤ3aとを噛合連動して構成させる。
【0019】
該旋回軸44の左右側に各々軸止した旋回ギヤ45と、該操向クラッチ37の大径ギヤ37cとを左右の一方側は直接噛合連動させ、他方側は一方側に対し逆回転させる逆転ギヤ46を介して噛合連動させると共に、該無段変速装置2の駆動により差動装置3を介してマイルド旋回,ブレーキ旋回,スピン旋回の各旋回モードを実行可能に構成させる。
【0020】
前記左右のシフタ38と左右のプッシュシリンダ47とを、操向クラッチ37が摺動可能なるよう連結すると共に、該無段変速装置2の可変モータ2bと正逆切替シリンダ48とを正逆転切り替え可能にリンク等を介して連結して構成させる。
【0021】
前記無段変速装置28の油圧モータ28bの軸端に変速駆動軸29の回転数を検出する入力回転センサ49を配設すると共に、前記左右の車軸ギヤ39の歯面に臨ませて車軸40の回転数を各別に検出する左右の車軸回転センサ50を配設して構成させる。
【0022】
前記操作装置18の一側に、機体22の前後進の切り替えと主変速を行う主変速レバー51を該無段変速装置28の可変ポンプ28aに変速可能に連結させ、このレバー51による前後進操作を検出する前後進スイッチ52を作用可能位置に配設すると共に、機体22の左右操向及び旋回を実行させるパワステレバー(ハンドル)1を該無段変速装置2の可変ポンプ2aに変速可能に連結して構成させる。
【0023】
該パワステレバー1の構成は、図3,図4,図5に示す如く、該操作装置18の一側に固定する基板支点53にレバー基板54を回動可能に支承し、このレバー基板54の上部側に固定する回動板支点55に扇形状のレバー回動板56を回動可能に支承し、このレバー回動板56に、下端部をL字状に折曲した棒状のレバーアーム57を固着して構成させる。
【0024】
該回動板支点55に巻掛けたトルクスプリング58の両端をレバーアーム57の折曲部分に保持させ、レバー回動板56に設けた扇形溝56aに摺動可能に遊嵌した係止ピン59を、該スプリング58を係止可能にレバー基板54に固定して構成させる。
【0025】
ポテンショメータ等により旋回モードを検出して切り替えを行う旋回切替センサ61を該操作装置18の一側に固定し、この旋回切替センサ61から回動可能に延長した作用アーム62の長溝62aに、該レバー基板54の下部側に固定したセンサ作用ピン60を摺動可能に遊嵌して構成させる。
【0026】
該レバー基板54の上端部に、レバーアーム57の操作領域を規制する左右のストッパ63を固定し、このストッパ63位置まで該アーム57が回動したときは、該レバー回動板56上部の切欠ぎ部56bにOFF状態で位置させた左右のリミットスイッチ64がONすることにより、前記図1に示す如く、プッシュシリンダ47を介してシフタ38を作用させ操向クラッチ37を切り状態とするクラッチ電磁弁65を配設して構成させる。
【0027】
前記無段変速装置2の出力回転数の調節機構は、図6に示す如く、該無段変速装置2の可変ポンプ2aの軸に回転制御アーム66を軸止すると共に、この回転制御アーム66の一方側に設けた円弧状の従動ギヤ66aと、出力制御モータ67に軸止した駆動ギヤ67aとを噛合連動して構成させる。
【0028】
ポテンショメータ等により出力回転数を検出する出力回転センサ69から回動可能に延長した作用アーム70の長溝70aに、該回転制御アーム66の他方側延長端部に固定したセンサ作用ピン68を摺動可能に遊嵌して構成させる。
【0029】
図7に示す如く、CPUを主体的に配して自動回路の演算制御を行うと共に、前記左右の走行クローラ5の速度差が設定値を超えたことを検出したときは該無段変速装置2の出力回転数を規制する出力規制手段71aを内蔵したコントローラ71を設け、このコントローラ71の入力側に前記左右の車軸回転センサ50を接続すると共に、その出力側に該出力制御モータ67を接続して構成させる。
【0030】
外部の出力軸23からの動力を、走行用ミッションケース4の入力ギヤ25から中間ギヤ27を経て走行用の油圧式無段変速装置28の可変ポンプ28aへ入力し、この可変ポンプ28aの主変速レバー51操作によって油圧モータ28bの主変速駆動を行わせる。
【0031】
該油圧モータ28bから高速駆動ギヤ30と低速駆動ギヤ31及び高低変速ギヤ32による副変速駆動を経て、直進の場合は、変速伝動ギヤ34から操向センタギヤ36へ伝動し、このセンタギヤ36に接続した操向クラッチ37の小径ギヤ37aを経て車軸ギヤ39により走行スプロケット41を駆動させる。
【0032】
次に、操向旋回を行うときは、パワステレバー1によるレバーアーム57の左又は右側への傾動操作により、回動板支点55を中心にレバーアーム57がストッパ63に接当するまでレバー回動板56と共に係止ピン59に係止されたトルクスプリング58に抗して回動し、この回動板56の回動によりリミットスイッチ64がONしてクラッチ電磁弁65によりプッシュシリンダ47を介してシフタ38を作用させ、操向クラッチ37が切り状態となり旋回終了時までこの状態を保持させる。
【0033】
該操向クラッチ37の切り状態において、更にレバーアーム57の傾動角度を大きく操作するときは、該アーム57がストッパ63に接当した状態で基板支点53を中心にレバー基板54が回動してセンサ作用ピン60により旋回切替センサ61を切り替えさせる。
【0034】
該旋回切替センサ61の切り替えにより、まず、マイルド旋回モードとなり出力制御モータ67の制御によって、旋回用の該無段変速装置2の可変ポンプ2aを介して可変モータ2bを駆動し、旋回駆動ギヤ43により差動装置3を作用させ操向クラッチ37の大径ギヤ37cから小径ギヤ37aを経て車軸ギヤ39に伝動して、旋回半径の大きい旋回作用を行わせる。
【0035】
なお、操向クラッチ37の切り側が左又は右の違いによって可変モータ2bの回転方向を正逆何れかの方向に切り替える。
更に、該レバーアーム57の傾動角度を大きくしたときは、ブレーキ旋回モードとなり該無段変速装置2の駆動によって差動装置3を作用させ、旋回半径が中程度の旋回作用を行わせる。更に、レバーアーム57の傾動角度が大きくなったときは、スピン旋回モードとなり該無段変速装置2の駆動によって差動装置3を作用させ、左右の車軸ギヤ39を相互に反対方向に回転させる、旋回半径の小さい旋回作用を行わせる。
【0036】
このような、該パワステレバー1の連続した傾動操作により各旋回モードによる旋回作用を行わせるときに、前記左右の走行クローラ5の速度を左右の車軸回転センサ50の検出値により算出を行い、この算出値により左右の走行クローラ5の速度差が予め設定されている設定値を超えたときは、コントローラ71の出力規制手段71aによってこの速度差が設定値以上に増大しないよう、可変モータ2bの出力回転数を出力回転センサ69の検出により規制させる。
【0037】
このように、旋回作用時における出力回転数の規制を行うことにより、従来の如く、パワステレバー1の傾動角度が大きく一気にスピン旋回を行うとき、つまり左右の走行クローラ5が各別に前進と後進を行うため、車速が高速のときに発生する速度差の大きい急旋回を抑えて、オペレータを危険から守り、且つ機体22の破損も防止することができる。
【0038】
また、前記操作装置18は、操作席19に着座したオペレータの周囲を乗降口を除いて囲う適宜高さの操作壁72を設け、この操作壁72の前側及び左側の上面部に操作パネル73を配設して構成させる。
【0039】
該操作パネル73面には、図8に示す如く、前側列の右端位置から順次、前後傾動操作による刈取装置17の昇降作用と左右傾動操作による機体22の操向旋回作用を行わせる該パワステレバー1と、前記エンジン20のスタータスイッチ74と、各スイッチ群75とを各々配置すると共に、コーナー位置に、各装置類の作用状態を基本設定画面Aとして切り替え表示するモニタ表示器6を配置して構成させる。
【0040】
該操作パネル73面の左側列の前端位置から順次、その外側列に各スイッチ及びダイヤル群76を配置すると共に、その内側列に主変速レバー51と、エンジン20の回転制御を行うアクセルレバー77と、走行変速における副変速の切り替えを行う副変速レバー78と、刈取装置17及び脱穀装置11の作用を同時に入・切させる刈脱モノレバー79と、このレバー79の上端位置に刈取装置17のみを入・切させる刈取スイッチ79aとを各々配置して構成させる。
【0041】
該操作パネル73面の左側列の後端部に、前記排穀オーガ10aの旋回作用を行わせるオーガ旋回レバー80と、穀粒の機外排出作用を行わせる穀粒排出レバー81と、前記排藁処理装置12をノッタ装置又はカッタ装置に切り替え作用させる排藁切替レバー82とを各々配置して構成させる。
【0042】
図9に示す如く、CPUを主体的に配して自動回路の演算制御を行うと共に、前記左右の走行クローラ5の速度差が設定値を超えたことを検出したときは、このときの走行クローラ5の速度を画面に表示する画面切替手段83aを内蔵したコントローラ83を設け、このコントローラ83の入力側に前記左右の車軸回転センサ50を接続すると共に、その出力側に前記モニタ表示器6を接続して構成させる。
【0043】
該モニタ表示器6は通常では、例えば、前記グレンタンク10に貯留する穀粒量の状態、グレンタンク10の穀粒を機外へ排出する排穀オーガ10aの作用状態、機体22の前後又は左右への傾斜状態、前記エンジン20スタート時のグローの状態、エンジン20の回転数の状態、脱穀済排藁の搬送詰りの状態等を各々交互に基本設定画面(基本画面)Aとして表示させる。
【0044】
前記左右の走行クローラ5の速度を左右の車軸回転センサ50の検出値により算出を行い、この算出値により左右の走行クローラ5の速度差が予め設定されている設定値を超えたときは、コントローラ83の画面切替手段83aによって、図10に示す如く、該基本設定画面Aから左右の走行クローラ5の速度を表示する速度表示画面(表示画面)Bに切り替えると共に、左右の走行クローラ5の速度差が設定値以内に復したときは再び基本設定画面Aに戻させる。
【0045】
このように、該左右の走行クローラ5の速度差が設定値を超えたときは、モニタ表示器6の基本設定画面Aを該クローラ5の速度表示画面Bに切り替えることにより、必要時のみ該画面Bを該画面Aに割り込み共用化できるから、特別に該クローラ5の速度表示用のモニタ表示器は不要であり、構成が簡素化されコスト低減が可能となる。
【0046】
また、図11に示す如く、CPUを主体的に配して自動回路の演算制御を行うと共に、前記パワステレバー1の傾動操作による旋回作用を検出したときは、このときの左右の走行クローラ5の速度を画面に表示する画面切替手段84aを内蔵したコントローラ84を設け、このコントローラ84の入力側に前記旋回切替センサ61と左右の車軸回転センサ50とを接続すると共に、その出力側に前記モニタ表示器6を接続して構成させる。
【0047】
前記の如く、通常では、各装置の作用状態を基本設定画面Aに表示させるモニタ表示器6において、該パワステレバー1による旋回作用時の傾動操作を前記旋回切替センサ61により検出(前記図3参照)したときは、該コントローラ84の画面切替手段84aによって、前記図10に示す如く、基本設定画面Aから左右の走行クローラ5の速度を表示する速度表示画面Bに切り替えると共に、予め設定された時間を経過したときは、再び基本設定画面Aに戻させる。
【0048】
このように、該パワステレバー1の傾動操作による旋回作用を検出したときは、モニタ表示器6の基本設定画面Aを該左右の走行クローラ5の速度表示画面Bに切り替えることにより、必要時のみ該画面Bを該画面Aに割り込み共用化できるから、特別に該クローラ5の速度表示用のモニタ表示器は不要であり、構成が簡素化されコスト低減が可能となる。
【0049】
また、前記の如く、差動装置3によって操向旋回を行うものにおいて、該左右の走行クローラ5の速度(又は回転数)を、図12に示す如く、モニタ表示器6に図形等で表示させることにより、オペレータが左右の走行クローラ5の速度を容易に認識することができる。
【0050】
また、前記の如く、左右の走行クローラ5の速度(又は回転数)をモニタ表示器6に図形等で表示させるときに、図13に示す如く、この図形等を棒グラフの高さa及びbでオペレータが認識できるようにすることで、一層その認識を高めることができる。
【0051】
このように、オペレータが該左右の走行クローラ5の速度を容易に認識することができるから、走行クローラ5が直進状態であるか,方向修正状態であるかの判定、及び旋回モードがマイルド旋回,ブレーキ旋回,スピン旋回の何れであるかの判定を容易に行うことができるから、走行クローラ5の状態を的確に把握してミスの少ない対応をすることができる。
【0052】
このような対応が可能となることにより、該パワステレバー(又はハンドル)1によって左右方向の修正や旋回操作を行うときに、従来の如く、湿田等において走行クローラ5がスリップし旋回に支障をきたす状態において、一段と、左右の走行クローラ5の速度差を増大させる操作により、土壌面から機体22が沈下し脱出不能状態となるトラブルを回避することができる。(特に、ブレーキ旋回のように片側の走行クローラ5を停止させるものでトラブル発生が大である)
【符号の説明】
【0053】
1 パワステレバー(ハンドル)
2 油圧式無段変速装置
3 差動装置
4 走行用ミッションケース
5a 左のクローラ
5b 右のクローラ
6 モニタ表示器
7 車台
8 走行装置
10 グレンタンク
11 脱穀装置
17 刈取装置
19 操作席
20 エンジン
61 旋回切替センサ
83 コントローラ
A 基本設定画面(基本画面)
B 速度表示画面(表示画面)
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来では、油圧式無段変速装置によって駆動する差動装置を内装した走行用ミッションケースを設けている作業車等において、このミッションケースによって路上走行や操向旋回を行うときは、円滑な高速走行が可能であり移動時間を短縮できるという利点がある。また、モニタ表示器を設けることによって、機体の各装置における作用状態を基本設定画面の切り替えにより容易にチェックすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−171547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、該ミッションケースによって操向旋回を行わせる際には、パワステレバーの操作によりマイルド旋回,ブレーキ旋回,スピン旋回を連続して実行させることが可能となり、該レバーの傾動操作角度が大きいときは一気にスピン旋回を行うことになるため、速い車速のときは、左右の走行クローラの一方側が前進高速で他方側が後進高速の状態となり、速度差の大きい急旋回となることによってオペレータの危険性が大きく、機体にも大きな荷重が生じ破損の原因となる。
【0005】
なお、このため左右の走行クローラの速度差をモニタ表示器の画面に表示させようとするときは、特別のモニタ表示器を必要とする難点がある。
そこで、このような左右の走行クローラの速度差をチェックして規制を行うことにより、トラブル発生を未然に防止する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、車台(7)の下部側に左右のクローラ(5a,5b)を備えた走行装置(8)を設け、車台(7)上にはグレンタンク(10)を備えた脱穀装置(11)を設け、前記グレンタンク(10)の前側に操作席(19)を設け、該操作席(19)の下方側にエンジン(20)を設け、前記脱穀装置(11)の前方に刈取装置(17)を昇降自在に設けたコンバインにおいて、前記車台(7)の前部側にハンドル(1)の操作によって油圧式無段変速装置(2)を駆動させて旋回を行わせる差動装置(3)を内装した走行用ミッションケース(4)を設け、前記グレンタンク(10)に貯留された穀粒量およびエンジン(20)の回転数を基本画面(A)としてモニタ表示器(6)に表示している状態で、ハンドル(1)による旋回操作を旋回切替センサ(61)で検出した場合に、左右のクローラ(5a,5b)の速度差をオペレータに認識させる表示画面(B)をモニタ表示器(6)に表示させるコントローラ(83)を設けたことを特徴とするコンバインとする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によると、グレンタンク(10)に貯留された穀粒量およびエンジン(20)の回転数を基本画面(A)としてモニタ表示器(6)に表示しており、ハンドル(1)による旋回操作を旋回切替センサ(61)で検出した場合に、左右のクローラ(5a,5b)の速度差をオペレータに認識させる表示画面(B)をモニタ表示器(6)に表示させることができるため、旋回状態表示用としての特別のモニタ表示器が不要となり、構成の簡素化によって製造コストを低減することができる。
【0008】
そして、湿田等においてクローラがスリップし旋回に支障をきたす状態において、ハンドル(1)による左右のクローラ(5a,5b)の速度差を増大させる操作によって、土壌面から沈下し、脱出不能状態となるトラブルを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】走行用ミッションケースの伝動構成とその周辺機器関係を示す正面展開線図。
【図2】走行用ミッションケースの伝動構成におけるギヤの配列状態を示す側面線図。
【図3】パワステレバー(ハンドル)の全体構成とレバーアームの作用位置を示す正面図。
【図4】パワステレバーの全体構成を示す側面図。
【図5】(a)パワステレバーにおける操向クラッチの切り作用位置を示す正面図。(b)パワステレバーにおけるスピン旋回の旋回作用位置を示す正面図。
【図6】旋回時に走行クローラの出力回転数を調節する無段変速装置を示す正面図。
【図7】左右の走行クローラの速度を検出し調節制御する自動回路を示すブロック図。
【図8】操作装置における操作パネルにモニタ表示器を配置した状態を示す平面図。
【図9】左右の走行クローラの速度を検出し画面表示する自動回路を示すブロック図。
【図10】モニタ表示器の基本設定画面と速度表示画面との切り替え状態を示す画像図。
【図11】旋回作用を検出しクローラの速度画面を表示する自動回路を示すブロック図。
【図12】モニタ表示器に左右の走行クローラの各種の作用速度画面を表示する画像図。
【図13】モニタ表示器に左右の走行クローラの速度画面を棒グラフで表示する画像図。
【図14】コンバインの全体構成を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、この発明の実施例を作業車等としてのコンバインについて図面に基づき説明する。
図14はコンバインの全体構成を示すもので、車台7の下部側に土壌面を走行する左右一対の走行クローラ5(左のクローラ5a,右のクローラ5b)を張設した走行装置8を配設すると共に、該車台7上には、フィードチェン9に挟持搬送して供給される穀稈の脱穀を行い、この脱穀された穀粒を選別回収して一時貯留するグレンタンク10と、このタンク10に貯留された穀粒を機外へ排出する排穀オーガ10aを備えた脱穀装置11を載置し、この脱穀装置11の後端部に排藁処理装置12を装架構成している。
【0011】
該脱穀装置11の前方に、前端側から未刈穀稈を分草する分草体13と、分草された穀稈を引き起こす引起部14と、引き起こされた穀稈を刈り取る刈刃部15と、この刈り取られた穀稈を掻き込むと共に、搬送途上において扱深さを調節して搬送される穀稈を引き継いで該フィードチェン9へ受け渡しする供給調節搬送部16等を有する刈取装置17を、油圧駆動による刈取昇降シリンダ17aにより土壌面に対して昇降自在なるよう該車台7の前端部へ懸架構成している。
【0012】
該刈取装置17の一側にコンバインの操作制御を行う操作装置18と、この操作のための操作席19を設け、この操作席19の後方側に前記グレンタンク10を配置すると共に下方側にエンジン20を搭載し、該操作装置18と操作席19を覆うキャビン21を配設する。これら走行装置8,脱穀装置11,刈取装置17,操作装置18,エンジン20,キャビン21等によってコンバインの機体22を構成している。
【0013】
該走行装置8は車台7の前部側に走行用ミッションケース4を装架しており、このミッションケース4の伝動機構は、図1及び図2に示す如く、外部の出力軸23からの伝動を第1軸としての入力軸24に入力し、この入力軸24に軸止した入力ギヤ25と、第2軸としての中間軸26に軸止した中間ギヤ27とを噛合連動して構成させる。
【0014】
該中間軸26の軸端部に、該ケース4の外側壁4aに装着した走行用の油圧式無段変速装置28の可変ポンプ28aを連結し、この可変ポンプ28aにより一体的に駆動する油圧モータ28bに、第3軸としての変速駆動軸29を連結させると共に、この変速駆動軸29に軸止する高速駆動ギヤ30と低速駆動ギヤ31とに、各々噛合連動する2連の高低変速ギヤ32を第4軸としての変速軸33にスプライン等により摺動可能に軸回転して構成させる。
【0015】
該変速軸33に軸止した変速伝動ギヤ34と、第5軸としての操向軸35のセンターに軸止している両面にクラッチ爪36aを設けた操向センタギヤ36とを噛合連動し、この操向センタギヤ36の両側に各々左右の操向クラッチ37を摺動自在に軸承して構成させる。
【0016】
該左右の操向クラッチ37には、各々小径ギヤ37aの内側面にクラッチ爪36aと噛合接続して動力を入・切させるクラッチ爪37bを設けると共に、外側面の大径ギヤ37cと小径ギヤ37aとの間に該クラッチ37を摺動させるシフタ38を遊嵌させるシフタ溝37dを設けて構成させる。
【0017】
該操向クラッチ37の小径ギヤ37aと噛合連動する車軸ギヤ39を、第6軸としての左右の車軸40に各々軸止すると共に、この左右の車軸40の外部の軸端部に、前記走行クローラ5を駆動する左右の走行スプロケット41を軸止して構成させる。
【0018】
前記外部の出力軸23からの伝動を、該ミッションケース4の外側壁4bに装着した旋回用の油圧式無段変速装置2の可変ポンプ2aにより一体的に駆動する正逆回転可能な可変モータ2bを、第4A軸としての旋回駆動軸42に連結すると共に、この旋回駆動軸42に軸止した旋回駆動ギヤ43と、第4B軸としての旋回軸44に設けた差動装置3の駆動ギヤ3aとを噛合連動して構成させる。
【0019】
該旋回軸44の左右側に各々軸止した旋回ギヤ45と、該操向クラッチ37の大径ギヤ37cとを左右の一方側は直接噛合連動させ、他方側は一方側に対し逆回転させる逆転ギヤ46を介して噛合連動させると共に、該無段変速装置2の駆動により差動装置3を介してマイルド旋回,ブレーキ旋回,スピン旋回の各旋回モードを実行可能に構成させる。
【0020】
前記左右のシフタ38と左右のプッシュシリンダ47とを、操向クラッチ37が摺動可能なるよう連結すると共に、該無段変速装置2の可変モータ2bと正逆切替シリンダ48とを正逆転切り替え可能にリンク等を介して連結して構成させる。
【0021】
前記無段変速装置28の油圧モータ28bの軸端に変速駆動軸29の回転数を検出する入力回転センサ49を配設すると共に、前記左右の車軸ギヤ39の歯面に臨ませて車軸40の回転数を各別に検出する左右の車軸回転センサ50を配設して構成させる。
【0022】
前記操作装置18の一側に、機体22の前後進の切り替えと主変速を行う主変速レバー51を該無段変速装置28の可変ポンプ28aに変速可能に連結させ、このレバー51による前後進操作を検出する前後進スイッチ52を作用可能位置に配設すると共に、機体22の左右操向及び旋回を実行させるパワステレバー(ハンドル)1を該無段変速装置2の可変ポンプ2aに変速可能に連結して構成させる。
【0023】
該パワステレバー1の構成は、図3,図4,図5に示す如く、該操作装置18の一側に固定する基板支点53にレバー基板54を回動可能に支承し、このレバー基板54の上部側に固定する回動板支点55に扇形状のレバー回動板56を回動可能に支承し、このレバー回動板56に、下端部をL字状に折曲した棒状のレバーアーム57を固着して構成させる。
【0024】
該回動板支点55に巻掛けたトルクスプリング58の両端をレバーアーム57の折曲部分に保持させ、レバー回動板56に設けた扇形溝56aに摺動可能に遊嵌した係止ピン59を、該スプリング58を係止可能にレバー基板54に固定して構成させる。
【0025】
ポテンショメータ等により旋回モードを検出して切り替えを行う旋回切替センサ61を該操作装置18の一側に固定し、この旋回切替センサ61から回動可能に延長した作用アーム62の長溝62aに、該レバー基板54の下部側に固定したセンサ作用ピン60を摺動可能に遊嵌して構成させる。
【0026】
該レバー基板54の上端部に、レバーアーム57の操作領域を規制する左右のストッパ63を固定し、このストッパ63位置まで該アーム57が回動したときは、該レバー回動板56上部の切欠ぎ部56bにOFF状態で位置させた左右のリミットスイッチ64がONすることにより、前記図1に示す如く、プッシュシリンダ47を介してシフタ38を作用させ操向クラッチ37を切り状態とするクラッチ電磁弁65を配設して構成させる。
【0027】
前記無段変速装置2の出力回転数の調節機構は、図6に示す如く、該無段変速装置2の可変ポンプ2aの軸に回転制御アーム66を軸止すると共に、この回転制御アーム66の一方側に設けた円弧状の従動ギヤ66aと、出力制御モータ67に軸止した駆動ギヤ67aとを噛合連動して構成させる。
【0028】
ポテンショメータ等により出力回転数を検出する出力回転センサ69から回動可能に延長した作用アーム70の長溝70aに、該回転制御アーム66の他方側延長端部に固定したセンサ作用ピン68を摺動可能に遊嵌して構成させる。
【0029】
図7に示す如く、CPUを主体的に配して自動回路の演算制御を行うと共に、前記左右の走行クローラ5の速度差が設定値を超えたことを検出したときは該無段変速装置2の出力回転数を規制する出力規制手段71aを内蔵したコントローラ71を設け、このコントローラ71の入力側に前記左右の車軸回転センサ50を接続すると共に、その出力側に該出力制御モータ67を接続して構成させる。
【0030】
外部の出力軸23からの動力を、走行用ミッションケース4の入力ギヤ25から中間ギヤ27を経て走行用の油圧式無段変速装置28の可変ポンプ28aへ入力し、この可変ポンプ28aの主変速レバー51操作によって油圧モータ28bの主変速駆動を行わせる。
【0031】
該油圧モータ28bから高速駆動ギヤ30と低速駆動ギヤ31及び高低変速ギヤ32による副変速駆動を経て、直進の場合は、変速伝動ギヤ34から操向センタギヤ36へ伝動し、このセンタギヤ36に接続した操向クラッチ37の小径ギヤ37aを経て車軸ギヤ39により走行スプロケット41を駆動させる。
【0032】
次に、操向旋回を行うときは、パワステレバー1によるレバーアーム57の左又は右側への傾動操作により、回動板支点55を中心にレバーアーム57がストッパ63に接当するまでレバー回動板56と共に係止ピン59に係止されたトルクスプリング58に抗して回動し、この回動板56の回動によりリミットスイッチ64がONしてクラッチ電磁弁65によりプッシュシリンダ47を介してシフタ38を作用させ、操向クラッチ37が切り状態となり旋回終了時までこの状態を保持させる。
【0033】
該操向クラッチ37の切り状態において、更にレバーアーム57の傾動角度を大きく操作するときは、該アーム57がストッパ63に接当した状態で基板支点53を中心にレバー基板54が回動してセンサ作用ピン60により旋回切替センサ61を切り替えさせる。
【0034】
該旋回切替センサ61の切り替えにより、まず、マイルド旋回モードとなり出力制御モータ67の制御によって、旋回用の該無段変速装置2の可変ポンプ2aを介して可変モータ2bを駆動し、旋回駆動ギヤ43により差動装置3を作用させ操向クラッチ37の大径ギヤ37cから小径ギヤ37aを経て車軸ギヤ39に伝動して、旋回半径の大きい旋回作用を行わせる。
【0035】
なお、操向クラッチ37の切り側が左又は右の違いによって可変モータ2bの回転方向を正逆何れかの方向に切り替える。
更に、該レバーアーム57の傾動角度を大きくしたときは、ブレーキ旋回モードとなり該無段変速装置2の駆動によって差動装置3を作用させ、旋回半径が中程度の旋回作用を行わせる。更に、レバーアーム57の傾動角度が大きくなったときは、スピン旋回モードとなり該無段変速装置2の駆動によって差動装置3を作用させ、左右の車軸ギヤ39を相互に反対方向に回転させる、旋回半径の小さい旋回作用を行わせる。
【0036】
このような、該パワステレバー1の連続した傾動操作により各旋回モードによる旋回作用を行わせるときに、前記左右の走行クローラ5の速度を左右の車軸回転センサ50の検出値により算出を行い、この算出値により左右の走行クローラ5の速度差が予め設定されている設定値を超えたときは、コントローラ71の出力規制手段71aによってこの速度差が設定値以上に増大しないよう、可変モータ2bの出力回転数を出力回転センサ69の検出により規制させる。
【0037】
このように、旋回作用時における出力回転数の規制を行うことにより、従来の如く、パワステレバー1の傾動角度が大きく一気にスピン旋回を行うとき、つまり左右の走行クローラ5が各別に前進と後進を行うため、車速が高速のときに発生する速度差の大きい急旋回を抑えて、オペレータを危険から守り、且つ機体22の破損も防止することができる。
【0038】
また、前記操作装置18は、操作席19に着座したオペレータの周囲を乗降口を除いて囲う適宜高さの操作壁72を設け、この操作壁72の前側及び左側の上面部に操作パネル73を配設して構成させる。
【0039】
該操作パネル73面には、図8に示す如く、前側列の右端位置から順次、前後傾動操作による刈取装置17の昇降作用と左右傾動操作による機体22の操向旋回作用を行わせる該パワステレバー1と、前記エンジン20のスタータスイッチ74と、各スイッチ群75とを各々配置すると共に、コーナー位置に、各装置類の作用状態を基本設定画面Aとして切り替え表示するモニタ表示器6を配置して構成させる。
【0040】
該操作パネル73面の左側列の前端位置から順次、その外側列に各スイッチ及びダイヤル群76を配置すると共に、その内側列に主変速レバー51と、エンジン20の回転制御を行うアクセルレバー77と、走行変速における副変速の切り替えを行う副変速レバー78と、刈取装置17及び脱穀装置11の作用を同時に入・切させる刈脱モノレバー79と、このレバー79の上端位置に刈取装置17のみを入・切させる刈取スイッチ79aとを各々配置して構成させる。
【0041】
該操作パネル73面の左側列の後端部に、前記排穀オーガ10aの旋回作用を行わせるオーガ旋回レバー80と、穀粒の機外排出作用を行わせる穀粒排出レバー81と、前記排藁処理装置12をノッタ装置又はカッタ装置に切り替え作用させる排藁切替レバー82とを各々配置して構成させる。
【0042】
図9に示す如く、CPUを主体的に配して自動回路の演算制御を行うと共に、前記左右の走行クローラ5の速度差が設定値を超えたことを検出したときは、このときの走行クローラ5の速度を画面に表示する画面切替手段83aを内蔵したコントローラ83を設け、このコントローラ83の入力側に前記左右の車軸回転センサ50を接続すると共に、その出力側に前記モニタ表示器6を接続して構成させる。
【0043】
該モニタ表示器6は通常では、例えば、前記グレンタンク10に貯留する穀粒量の状態、グレンタンク10の穀粒を機外へ排出する排穀オーガ10aの作用状態、機体22の前後又は左右への傾斜状態、前記エンジン20スタート時のグローの状態、エンジン20の回転数の状態、脱穀済排藁の搬送詰りの状態等を各々交互に基本設定画面(基本画面)Aとして表示させる。
【0044】
前記左右の走行クローラ5の速度を左右の車軸回転センサ50の検出値により算出を行い、この算出値により左右の走行クローラ5の速度差が予め設定されている設定値を超えたときは、コントローラ83の画面切替手段83aによって、図10に示す如く、該基本設定画面Aから左右の走行クローラ5の速度を表示する速度表示画面(表示画面)Bに切り替えると共に、左右の走行クローラ5の速度差が設定値以内に復したときは再び基本設定画面Aに戻させる。
【0045】
このように、該左右の走行クローラ5の速度差が設定値を超えたときは、モニタ表示器6の基本設定画面Aを該クローラ5の速度表示画面Bに切り替えることにより、必要時のみ該画面Bを該画面Aに割り込み共用化できるから、特別に該クローラ5の速度表示用のモニタ表示器は不要であり、構成が簡素化されコスト低減が可能となる。
【0046】
また、図11に示す如く、CPUを主体的に配して自動回路の演算制御を行うと共に、前記パワステレバー1の傾動操作による旋回作用を検出したときは、このときの左右の走行クローラ5の速度を画面に表示する画面切替手段84aを内蔵したコントローラ84を設け、このコントローラ84の入力側に前記旋回切替センサ61と左右の車軸回転センサ50とを接続すると共に、その出力側に前記モニタ表示器6を接続して構成させる。
【0047】
前記の如く、通常では、各装置の作用状態を基本設定画面Aに表示させるモニタ表示器6において、該パワステレバー1による旋回作用時の傾動操作を前記旋回切替センサ61により検出(前記図3参照)したときは、該コントローラ84の画面切替手段84aによって、前記図10に示す如く、基本設定画面Aから左右の走行クローラ5の速度を表示する速度表示画面Bに切り替えると共に、予め設定された時間を経過したときは、再び基本設定画面Aに戻させる。
【0048】
このように、該パワステレバー1の傾動操作による旋回作用を検出したときは、モニタ表示器6の基本設定画面Aを該左右の走行クローラ5の速度表示画面Bに切り替えることにより、必要時のみ該画面Bを該画面Aに割り込み共用化できるから、特別に該クローラ5の速度表示用のモニタ表示器は不要であり、構成が簡素化されコスト低減が可能となる。
【0049】
また、前記の如く、差動装置3によって操向旋回を行うものにおいて、該左右の走行クローラ5の速度(又は回転数)を、図12に示す如く、モニタ表示器6に図形等で表示させることにより、オペレータが左右の走行クローラ5の速度を容易に認識することができる。
【0050】
また、前記の如く、左右の走行クローラ5の速度(又は回転数)をモニタ表示器6に図形等で表示させるときに、図13に示す如く、この図形等を棒グラフの高さa及びbでオペレータが認識できるようにすることで、一層その認識を高めることができる。
【0051】
このように、オペレータが該左右の走行クローラ5の速度を容易に認識することができるから、走行クローラ5が直進状態であるか,方向修正状態であるかの判定、及び旋回モードがマイルド旋回,ブレーキ旋回,スピン旋回の何れであるかの判定を容易に行うことができるから、走行クローラ5の状態を的確に把握してミスの少ない対応をすることができる。
【0052】
このような対応が可能となることにより、該パワステレバー(又はハンドル)1によって左右方向の修正や旋回操作を行うときに、従来の如く、湿田等において走行クローラ5がスリップし旋回に支障をきたす状態において、一段と、左右の走行クローラ5の速度差を増大させる操作により、土壌面から機体22が沈下し脱出不能状態となるトラブルを回避することができる。(特に、ブレーキ旋回のように片側の走行クローラ5を停止させるものでトラブル発生が大である)
【符号の説明】
【0053】
1 パワステレバー(ハンドル)
2 油圧式無段変速装置
3 差動装置
4 走行用ミッションケース
5a 左のクローラ
5b 右のクローラ
6 モニタ表示器
7 車台
8 走行装置
10 グレンタンク
11 脱穀装置
17 刈取装置
19 操作席
20 エンジン
61 旋回切替センサ
83 コントローラ
A 基本設定画面(基本画面)
B 速度表示画面(表示画面)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車台(7)の下部側に左右のクローラ(5a,5b)を備えた走行装置(8)を設け、車台(7)上にはグレンタンク(10)を備えた脱穀装置(11)を設け、前記グレンタンク(10)の前側に操作席(19)を設け、該操作席(19)の下方側にエンジン(20)を設け、前記脱穀装置(11)の前方に刈取装置(17)を昇降自在に設けたコンバインにおいて、前記車台(7)の前部側にハンドル(1)の操作によって油圧式無段変速装置(2)を駆動させて旋回を行わせる差動装置(3)を内装した走行用ミッションケース(4)を設け、前記グレンタンク(10)に貯留された穀粒量およびエンジン(20)の回転数を基本画面(A)としてモニタ表示器(6)に表示している状態で、ハンドル(1)による旋回操作を旋回切替センサ(61)で検出した場合に、左右のクローラ(5a,5b)の速度差をオペレータに認識させる表示画面(B)をモニタ表示器(6)に表示させるコントローラ(83)を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項1】
車台(7)の下部側に左右のクローラ(5a,5b)を備えた走行装置(8)を設け、車台(7)上にはグレンタンク(10)を備えた脱穀装置(11)を設け、前記グレンタンク(10)の前側に操作席(19)を設け、該操作席(19)の下方側にエンジン(20)を設け、前記脱穀装置(11)の前方に刈取装置(17)を昇降自在に設けたコンバインにおいて、前記車台(7)の前部側にハンドル(1)の操作によって油圧式無段変速装置(2)を駆動させて旋回を行わせる差動装置(3)を内装した走行用ミッションケース(4)を設け、前記グレンタンク(10)に貯留された穀粒量およびエンジン(20)の回転数を基本画面(A)としてモニタ表示器(6)に表示している状態で、ハンドル(1)による旋回操作を旋回切替センサ(61)で検出した場合に、左右のクローラ(5a,5b)の速度差をオペレータに認識させる表示画面(B)をモニタ表示器(6)に表示させるコントローラ(83)を設けたことを特徴とするコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−273471(P2009−273471A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188587(P2009−188587)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【分割の表示】特願2000−321270(P2000−321270)の分割
【原出願日】平成12年10月20日(2000.10.20)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【分割の表示】特願2000−321270(P2000−321270)の分割
【原出願日】平成12年10月20日(2000.10.20)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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