説明

コンバイン

【課題】コンバインの基本構成を変更することなく、排気処理装置を、その外形形状や配置位置を工夫することによって、コンバインの機体に装着する。
【解決手段】機体の最前部に刈取装置(12)を刈取支持台(8)で昇降可能に支持し、この刈取装置(12)の後側で走行車体(11)上の左右一側に操縦部(14)とグレンタンク(15)を前後に配置し、走行車体(11)上の左右他側には脱穀装置(13)を搭載したコンバインにおいて、操縦部(14)にディーゼルエンジン(1)を搭載し、脱穀装置(13)と刈取支持台(8)の間に酸化触媒とディーゼルパティキュレートフィルタを備えた第1排気浄化装置(3)とNOx触媒を内装した第2排気浄化装置(9)を上下或いは前後に横向きに配置し、ディーゼルエンジン(1)から第1排気浄化装置(3)に排気管(4)を配管する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ディーゼルエンジンを搭載したコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気ガス処理装置として、排気ガス中の黒煙を主体とする粒子状物質等をディーゼルパティキュレートフィルタ(以下「DPF」という)によって捕集し、酸化触媒(以下「DOC」という)による酸化反応により連続的に燃焼させる技術が開発されている。また、排気ガス中のNOx処理として、HC選択還元式NOx触媒やNOx吸蔵還元型触媒でN2(窒素)とH2Oに還元して排出する技術が有る。
【0003】
例えば、コンバインのエンジンルームに搭載したディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置として、エンジンの本体上方側に近接位置するようマフラーを配置接続すると共に、このマフラーにDOCとDPFを内装する技術が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−31955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンバインは、機体の前側に刈取装置を設け、クローラ走行装置を装備した走行車体上の右側に前側から操縦部とグレンタンクを設け、左側に脱穀装置を設けた構成が一般的である。そして、操縦部においてエンジンをエンジンルームで覆い、このエンジンルームの上に作業者が搭乗する座席を設けている。
【0006】
DOCとDPFやNOx触媒を内装したマフラーはかなり大きく、また、コンバインは藁屑が発生するので、エンジンやマフラー等の高温になる装置を隔離した防火構造としなければならない。
【0007】
そこで、本発明は、コンバインの基本構成を変更することなく、排気処理装置を外形形状や配置位置を工夫して装着することによって、コンバインのディーゼルエンジン排気ガス処理装置に適した構成を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、機体の最前部に刈取装置(12)を刈取支持台(8)で昇降可能に支持し、この刈取装置(12)の後側で走行車体(11)上の左右一側に操縦部(14)とグレンタンク(15)を前後に配置し、走行車体(11)上の左右他側には脱穀装置(13)を搭載したコンバインにおいて、前記操縦部(14)にディーゼルエンジン(1)を搭載し、脱穀装置(13)と刈取支持台(8)の間に酸化触媒とディーゼルパティキュレートフィルタを備えた第1排気浄化装置(3)とNOx触媒を内装した第2排気浄化装置(9)を上下或いは前後に横向きに配置し、前記ディーゼルエンジン(1)から第1排気浄化装置(3)に排気管(4)を配管してなるコンバインとした。
【0009】
この構成で、操縦部14とグレンタンク15と脱穀装置13の従来からの配置構成を変えることなく、走行車体11と刈取支持台8と脱穀装置13に囲まれた藁屑等の塵埃が溜まり難い位置に第1排気浄化装置3と第2排気浄化装置9を配置して、火災発生の危険性を回避できる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、機体の最前部に刈取装置(12)を刈取支持台(8)で昇降可能に支持し、この刈取装置(12)の後側で走行車体(11)上の左右一側に操縦部(14)とグレンタンク(15)を前後に配置し、走行車体(11)の左右他側には脱穀装置(13)を搭載したコンバインにおいて、前記操縦部(14)にディーゼルエンジン(1)を搭載し、脱穀装置(13)とグレンタンク(15)の間に酸化触媒とディーゼルパティキュレートフィルタ及びNOx触媒を備えた第3排気浄化装置(27)を前後方向に配置してなるコンバインとした。
【0011】
この構成で、操縦部14とグレンタンク15と脱穀装置13の従来からの配置構成を変えることなく、走行車体11上の脱穀装置13とグレンタンク15に囲まれた藁屑等の塵埃が溜まり難い位置に第3排気浄化装置27を配置して、火災発生の危険性を回避できる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記グレンタンク(15)の金属製底タンク(15a)の一部として或いは金属製底タンク(15a)に接触して第3排気浄化装置(27)を配置してなる請求項2に記載のコンバインとした。
【0013】
この構成で、操縦部14とグレンタンク15と脱穀装置13の従来からの配置構成を変えることなく、走行車体11上の脱穀装置13とグレンタンク15に囲まれた藁屑等の塵埃が溜まり難い位置に第3排気浄化装置27を配置して、火災発生の危険性を回避でき、第3排気浄化装置27の発生する熱でグレンタンク15内の穀粒を乾燥する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によると、コンバインの基本的な操縦部14とグレンタンク15と脱穀装置13の配置構成を変えることなく、酸化触媒とディーゼルパティキュレートフィルタを内装した第1排気浄化装置3に排気管4を通じてディーゼルエンジン1の排気ガスが送られて排気ガス中の黒煙を主体とする粒子状物質等を燃焼し、さらにNOx触媒を内装した第2排気浄化装置9を通して排気ガス中のNOxを浄化することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によると、コンバインの基本的な操縦部14とグレンタンク15と脱穀装置13の配置構成を変えることなく、ディーゼルエンジン1の排気ガスを第3排気浄化装置27を通して、排気ガス中の黒煙を主体とする粒子状物質等を燃焼し、さらに排気ガス中のNOxを浄化することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によると、上記請求項2に記載の発明の効果に加えて、グレンタンク15内の収穫穀粒を乾燥させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第一実施例を示すコンバインの左側面図である。
【図2】第一実施例を示すコンバインの背断面図である。
【図3】第二実施例を示すコンバインの背断面図である。
【図4】第二実施例を示すコンバインの一部拡大背断面図である。
【図5】第三実施例を示すコンバインの一部拡大背断面図である。
【図6】第四実施例を示すコンバインの背断面図である。
【図7】第四実施例を示すコンバインの一部破断右側面図である。
【図8】第五実施例を示すコンバインの背断面図である。
【図9】第六実施例を示すコンバインの一部背断面図である。
【図10】第七実施例を示すコンバインの一部破断右側面図である。
【図11】第八実施例を示すコンバインの一部破断右側面図である。
【図12】第九実施例を示す一部破断左側面図である。
【図13】第九実施例を示すコンバインの背断面図である。
【図14】第十実施例を示す一部破断左側面図である。
【図15】第十一実施例を示すコンバインの正面図である。
【図16】第十一実施例を示すコンバインの左側面図である。
【図17】第十一実施例を示すコンバインの正断面図である。
【図18】第十二実施例を示すコンバインの正断面図である。
【図19】第十三実施例を示すコンバインの右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。
なお、機体の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左側右側と表現する。
図1と図2に示す実施例で、コンバインは、クローラ走行装置10を装備した走行車台11上の前に刈取装置12を設け、走行車台11の左側に脱穀装置13を設け、右側に操縦部14とグレンタンク15を前後して設けている。操縦部14は、操向レバー16を立設した操縦台17の後下部に作業者が搭乗するステップフロアを設け、その後側でディーゼルエンジン1を走行車台11に搭載し、このディーゼルエンジン1前後と上部を覆う原動ボックスを設け、この原動ボックス上に作業者が座る座席5を設けている。
【0019】
グレンタンク15は脱穀装置13で収穫する穀粒を貯留し、後部に立設する揚穀筒19とこの揚穀筒19の上端から前方に伸びるオーガ20で貯留した穀粒を外部に取り出すようにしている。
【0020】
ディーゼルエンジン1は、クローラ走行装置10と刈取装置12と脱穀装置13等の全ての駆動部を駆動する動力を生じる。このディーゼルエンジン1の右側に冷却ファンを設けその右外側にラジエータ2を設け、原動ボックス6の開口した右側を下端で開閉可能に枢支したサイドカバーで覆っている。
【0021】
機体の最前部に設ける刈取装置12は、走行車台11の前部に立設した刈取支持台8にその刈取フレーム18を枢支し、昇降シリンダ(図示省略)で昇降する。
脱穀装置13は全体をボックス状の機壁で覆って、その前外壁と刈取支持台8の間において、酸化触媒とディーゼルパティキュレートフィルタを内装した第1排気浄化装置3とNOx 触媒を内装した第2排気浄化装置9を上下或いは前後に配置し、第1排気浄化装置3とディーゼルエンジン1を排気管4で連結し、第1排気浄化装置3と第2排気浄化装置9を機体の外側で連結管24で繋ぎ、機体の中央側で第2排気浄化装置9から後方へ外部排気管25を突出させている。
【0022】
なお、第1排気浄化装置3とディーゼルエンジン1を繋ぐ排気管4は、機体フレームを構成する角パイプや丸パイプで代用しても良い。
図3と図4に示す実施例では、グレンタンク15の上部を樹脂製上タンク15bで、下部を金属製底タンク15aで構成し、この金属製底タンク15aの一部を第3排気浄化装置27の一部で共用している。金属製底タンク15aの内部には横送り螺旋26を軸支している。なお、第3排気浄化装置27は酸化触媒とディーゼルパティキュレートフィルタ及びNOx触媒を内装している。
【0023】
図5の実施例では、金属製底タンク15aの外壁に第3排気浄化装置27を取り付けている。なお、金属製底タンク15aに対して樹脂製上タンク15bの連結部は熱の影響が無い上部にしている。
【0024】
この構成では、第3排気浄化装置27が発生する熱が金属製底タンク15a内の穀粒を乾燥する効果が有る。
図6と図7に示す実施例では、第3排気浄化装置27をグレンタンク15の底面から離して、グレンタンク15と脱穀装置13と走行車台11が形成する三角空間に合った断面形状としている。また、図8に示す実施例では、第3排気浄化装置27をグレンタンク15の底面から離して、グレンタンク15の外側下部に第3排気浄化装置27を設け、外側を側部カバー28で覆っている。
【0025】
この構成も第3排気浄化装置27から発する熱でグレンタンク15の内部を暖めて穀粒を乾燥する効果が期待できる。
図9に示す実施例では、ディーゼルエンジン1の機体側部に設けるラジエータ2の下部に、断熱材29を介して断面四角形状の第3排気浄化装置27を設けている。なお、第3排気浄化装置27は断面形状が丸型でも良い。この機体側部を覆うラジエータカバー30は、ラジエータ2の部分を目抜き鉄板とし第3排気浄化装置27側を盲鉄板にする。
【0026】
図10に示す実施例では、ディーゼルエンジン1とグレンタンク15の間で、第3排気浄化装置27を横置きに配置している。
図11に示す実施例では、ディーゼルエンジン1とグレンタンク15の間で、第3排気浄化装置27を横置きに配置し、グレンタンク15の下部を第3排気浄化装置27上まで張り出して覆い部15cを形成している。
【0027】
図12と図13に示す実施例では、操縦部14の左側機体中央のサイド操作パネル31の下側にエンジンフレームに支持した支持フレーム33を立設し、この支持フレーム33に第3排気浄化装置27の後部を取り付け、前後方向に配置している。サイド操作パネル31には主変速レバー32等を立設している。第3排気浄化装置27の前後方向は水平でも図14の如く後方へ下り傾斜させても良い。
【0028】
図15と図16及び図17に示す実施例では、第3排気浄化装置27を脱穀装置13の上部に前後方向へ横架して、この第3排気浄化装置27をグレンタンク15内に通じる排気浄化筒カバー34で覆い、第3排気浄化装置27で発生する加熱空気をグレンタンク15内に導入して内部の穀粒を乾燥するようにしている。
【0029】
なお、図18に示す如く、排気浄化筒カバー34を脱穀装置13内に通じるようにして、脱穀中の穀稈を乾燥するようにしても良い。35は扱胴で、排気浄化筒カバー34の脱穀装置13への通口36にはスリット或いは細かな穴を設けて脱穀装置13内藁屑が第3排気浄化装置27側へ侵入しないようにしている。
【0030】
図19は、グレンタンク15の後部に設ける揚穀筒19に沿わせて第3排気浄化装置27を設け、機体の後部に設けるディーゼルエンジン1から排気ガスを導入して上端から後方へ浄化後の排気ガスを排出するようにしている。
【符号の説明】
【0031】
1 ディーゼルエンジン
3 第1排気浄化装置
4 排気管
8 刈取支持台
9 第2排気浄化装置
11 走行車体
12 刈取装置
13 脱穀装置
14 操縦部
15 グレンタンク
15a 金属製底タンク
27 排気浄化筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の最前部に刈取装置(12)を刈取支持台(8)で昇降可能に支持し、この刈取装置(12)の後側で走行車体(11)上の左右一側に操縦部(14)とグレンタンク(15)を前後に配置し、走行車体(11)上の左右他側には脱穀装置(13)を搭載したコンバインにおいて、前記操縦部(14)にディーゼルエンジン(1)を搭載し、脱穀装置(13)と刈取支持台(8)の間に酸化触媒とディーゼルパティキュレートフィルタを備えた第1排気浄化装置(3)とNOx触媒を内装した第2排気浄化装置(9)を上下或いは前後に横向きに配置し、前記ディーゼルエンジン(1)から第1排気浄化装置(3)に排気管(4)を配管してなるコンバイン。
【請求項2】
機体の最前部に刈取装置(12)を刈取支持台(8)で昇降可能に支持し、この刈取装置(12)の後側で走行車体(11)上の左右一側に操縦部(14)とグレンタンク(15)を前後に配置し、走行車体(11)の左右他側には脱穀装置(13)を搭載したコンバインにおいて、前記操縦部(14)にディーゼルエンジン(1)を搭載し、脱穀装置(13)とグレンタンク(15)の間に酸化触媒とディーゼルパティキュレートフィルタ及びNOx触媒を備えた第3排気浄化装置(27)を前後方向に配置してなるコンバイン。
【請求項3】
前記グレンタンク(15)の金属製底タンク(15a)の一部として或いは金属製底タンク(15a)に接触して第3排気浄化装置(27)を配置してなる請求項2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−229433(P2011−229433A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101100(P2010−101100)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】