説明

コンバータ

【課題】簡単な回路構成により、温度状態に応じた出力電圧制御を行うことができるコンバータを提供する。
【解決手段】トランス11と、トランスの一次側に接続され、入力直流電圧をスイッチングして交流電圧に変換するスイッチング素子15〜18と、トランスの二次側に接続され、交流電圧を整流平滑して出力直流電圧を生成する整流平滑部22と、第1および第2の抵抗R21、R22が直列接続された分圧回路が整流平滑部と蓄電池とを繋ぐ出力結線L1から分岐した分岐結線L2の先に接続され、出力直流電圧を検出する出力電圧検出部25と、第1および第2の抵抗R21、R22の分圧点の電圧が一定となるようにスイッチング素子15〜18を制御するスイッチング制御部20と、出力結線L1から分圧回路に向かう方向が順方向となるように分岐結線L2上に介挿されたダイオードD21とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンバータに関し、例えば、エンジンおよびモータを組み合わせた自動車や電気自動車のDC−DCコンバータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンおよびモータを組み合わせた自動車やモータのみを駆動源とする電気自動車等においては、密閉型のニッケル・水素蓄電池等の蓄電池セルを多数接続して構成した高電圧の組電池が電源として用いられている。この組電池は、例えば、240個のニッケル・水素蓄電池セルをすべて直列に接続して、約288Vの公称電圧を得るようになされている。
【0003】
この組電池の電圧を、DC−DCコンバータによって、降圧変換して出力することにより、灯火類やオーディオ等の電装品の電源としての補機用バッテリ(12Vの鉛蓄電池等)を充電するようになされている。
【0004】
補機用バッテリを充電する場合、高温時に高い電圧で充電すると、バッテリの劣化等の不都合が発生する場合があるため、バッテリ周辺の温度が高い場合には、低い電圧で充電し、これに対して、バッテリ周辺の温度が低い場合には、比較的高い電圧で充電することが望ましい。
【0005】
この点について、ニッケル・水素蓄電池の高温の場合の充電電圧の上限値を、所定の温度範囲と、充電電流の上限値および下限値について定めたテーブルをあらかじめ作成しておき、充電時の温度および電流に基づいて、前記のテーブルから電圧上限値を知り、充電電圧がその電圧上限値以上になると充電を停止するように構成した充電制御装置(特許文献1参照)、または、充電対象である二次電池の温度が高い場合は充電量が少なくなるように制御する充電制御方法(特許文献2参照)が考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−140283号公報
【特許文献2】特開2002−51478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の装置の場合、温度に応じて充電制御を行うために、充電中の電池の端子電圧を検出する電圧検出手段、充電対象の電池の温度を測定する温度センサ、充電電流を検出する電流検出手段、電圧検出手段および電流検出手段の検出結果に基づいて充電電力を制御する充電電源制御回路、充電中の温度変化率を演算する温度変化率演算手段、充電中の温度変化率と予め設定された変化率を比較する比較手段等を必要とし、回路構成が複雑になる問題があった。
【0008】
また、高温域では、充電電圧が温度および電流に関してあらかじめ定められた電圧上限値を超えたことにより充電の切換時点を検知し、次の充電過程(定電流による補足充電等)に移行するメカニズムが複雑であり、取り扱い、保守が煩雑になる問題があった。
【0009】
また、特許文献2記載の機器の場合、温度に応じて充電量を制御するために、充電対象である二次電池への充電電流および充電電圧を制御する充電制御部、二次電池の端子電圧を測定する電圧検知部、二次電池に流入または流出する電流を検知する電流検知部、二次電池の温度を検知する温度検知部、電圧検知部と電流検知部が検知した情報に基づき残量の計算や二次電池の状態を通知する制御部、制御部の情報に基づき二次電池に定電圧充電した後に定電流充電に切り換えて充電を行う電源制御部等を必要とし、回路構成が複雑になる問題があった。
【0010】
また、上記の複雑な回路構成により、二次電池の温度が高い場合は充電量が少なくなるよう制御する方法が複雑であり取り扱いが難しい問題があった。
【0011】
本発明は、簡単な回路構成により、温度状態に応じた出力電圧制御を行うことができるコンバータを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のコンバータは、入力直流電圧を交流電圧に変換し、該交流電圧から出力直流電圧を生成して蓄電池に充電するコンバータであって、トランスと、トランスの一次側に接続され、入力直流電圧をスイッチングして交流電圧に変換するスイッチング部と、トランスの二次側に接続され、交流電圧を整流平滑して出力直流電圧を生成する整流平滑部と、第1および第2の抵抗が直列接続された分圧回路が整流平滑部と蓄電池とを繋ぐ出力結線から分岐した分岐結線の先に接続され、出力直流電圧を検出する出力電圧検出部と、第1および第2の抵抗の分圧点の電圧が一定となるようにスイッチング部を制御するスイッチング制御部と、出力結線から分圧回路に向かう方向が順方向となるように分岐結線上に介挿されたダイオードとを備えたことを特徴としている。
【0013】
ここで、ダイオードの順方向電圧は、温度上昇により低下し、温度低下により上昇するという温度特性を有する。
【0014】
この構成によれば、出力直流電圧が充電電圧として蓄電池に充電されるが、分岐結線上に介挿されたダイオードの順方向電圧が有する温度特性により、出力直流電圧が変化する。すなわち、高温になるとダイオードの順方向電圧が低下して充電電圧を低下させ、低温になるとダイオードの順方向電圧が上昇して充電電圧を上昇させる。このため、高温時には充電電圧を低下させることができ、蓄電池の劣化等の不具合を回避することができる一方、低温時には充電電圧を高めることができ、蓄電池に対して速やかに充電することが可能となる。よって、分岐結線上にダイオードを介挿するだけの簡単な構成により、充電対象である蓄電池の周辺温度に適応した充電電圧を出力することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコンバータによると、分岐結線上にダイオードを介挿するだけの簡単な構成により、充電対象である蓄電池の周辺温度に適応した充電電圧を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のコンバータを示す回路図である。
【図2】本発明のコンバータに用いられる電圧制御用のダイオードの温度特性を示す特性曲線図である。
【図3】本発明のコンバータによる温度および出力電圧の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面に基づき詳細に説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態に係るコンバータ(DC−DCコンバータ)を示す回路図である。図1において、DC−DCコンバータ10は、エンジンおよびモータを組み合わせた自動車やモータのみを駆動源とする電気自動車に用いられるものである。図1に示すように、DC−DCコンバータ10は、トランス11の一次側に直流電源12が接続され、トランス11の二次側には、充電対象である蓄電池13が接続される。
【0019】
本実施の形態の場合、一次側の直流電源12は、例えば、240個のニッケル・水素蓄電池セルをすべて直列に接続して、約288Vの公称電圧を得るようになされた組電池が用いられ、また、二次側の蓄電池13は、搭載対象である自動車の灯火類やオーディオ等の電装品の電源としての補機用バッテリ(12Vの鉛蓄電池)である。
【0020】
トランス11の1次側には、スイッチング素子15および抵抗R11、R12からなる第1のスイッチング回路と、スイッチング素子16および抵抗R13、R14からなる第2のスイッチング回路と、スイッチング素子17および抵抗R15、R16からなる第3のスイッチング回路と、スイッチング素子18および抵抗R17、R18からなる第4のスイッチング回路とが接続されて、入力直流電圧をスイッチングして交流電圧に変換するスイッチング部を構成しており、スイッチング制御部20の制御によってスイッチング動作する。このスイッチング動作により、トランス11に供給される交流電力が制御される。
【0021】
トランス11の二次側には、ダイオードD11およびD12からなる整流回路22と、リアクトルL11およびコンデンサC11の直列回路とが接続されており、コンデンサC11の出力側両端に蓄電池13が接続される。これにより、トランス11によって電圧変換された交流電力が整流平滑され、整流平滑された直流電力(充電電力)が蓄電池13に供給され、当該蓄電池13が充電される。この実施形態によれば、整流回路22とコンデンサC11とが、本発明の「整流平滑部」として機能する。
【0022】
蓄電池13に供給される充電電圧(コンデンサC11の出力電圧Vout)は、スイッチング制御部20によるスイッチング素子15〜18のスイッチング動作によって制御される。
【0023】
ここで、コンデンサC11の出力端と蓄電池13とを繋ぐ出力結線L1から分岐した分岐結線L2の先には、出力電圧Voutを検出するための出力電圧検出部(分圧回路)25が接続されている。出力電圧検出部25は、直列接続された第1の抵抗R21および第2の抵抗R22によって構成され、第1の抵抗R21および第2の抵抗R22の分圧点の電圧(検出電圧Vref)を検出し、スイッチング制御部20に入力するようにされている。
【0024】
本実施の形態においては、分岐結線L2上に、電圧制御用のダイオードD21が介挿されている。この電圧制御用のダイオードD21は、出力結線L1からコンデンサC11の出力端から出力電圧検出部25に向かって順方向に電流が流れるように接続される。
【0025】
スイッチング制御部20は、出力電圧検出部25から検出される検出電圧Vrefの値が一定となるように、スイッチング素子15〜18をスイッチング制御することにより、電圧制御用のダイオードD21の温度特性に応じた出力電圧Voutを蓄電池13の充電電圧として出力するようにされている。
【0026】
ここで、電圧制御用のダイオードD21の温度特性に応じた出力電圧Voutが出力される原理について説明する。
【0027】
検出電圧Vrefは、出力電圧Voutから電圧制御用のダイオードD21の順方向電圧VFを引き算して、その電圧を抵抗R21と抵抗R22で分圧した電圧であり、次式によって表される。
【0028】
【数1】

【0029】
また、上記〔数1〕の式から、出力電圧Voutは、次式によって表される。
【0030】
【数2】

【0031】
図2に示すように、ダイオードの順方向電圧の温度特性は、一般に、温度が上がると、順方向電圧VFは下がり、温度が下がると、順方向電圧VFは上がる。なお、本実施の形態においては、電圧制御用のダイオードD21として東芝製 1SS352を用いる。図2は、このダイオードの温度特性を示すものであるが、ダイオードの順方向電圧VFの温度特性は、一般に同様の特性を示すものである。
【0032】
この温度特性を、上記〔数2〕の式にあてはめると、検出電圧Vrefを一定に制御した場合、電圧制御用のダイオードD21の温度が上がると、出力電圧Voutは下がり、電圧制御用のダイオードD21の温度が下がると、出力電圧Voutは上がることになる。
【0033】
すなわち、電圧制御用のダイオードD21が接続されていないとした場合、スイッチング制御部20によって検出電圧Vrefを一定に制御すると、出力電圧Voutも常に一定の電圧となるのに対して、本実施の形態における構成においては、電圧制御用のダイオードD21を接続したことにより、スイッチング制御部20によって検出電圧Vrefを一定に制御した場合、電圧制御用のダイオードD21の温度特性の分だけ、出力電圧Voutが変化することになる。
【0034】
すなわち、電圧制御用のダイオードD21の温度が上がると、低い順方向電圧VFが出力電圧検出部25の入力端P1(図1)に加算されることになり、これに対して、電圧制御用のダイオードD21の温度が下がると、高い順方向電圧VFが出力電圧検出部25の入力端P1(図1)に加算されることになり、この温度に依存した順方向電圧VFの加算によって、出力電圧Voutが変化することになる。
【0035】
図3は、DC−DCコンバータ10の電圧制御用のダイオードD21の環境温度Taが−30℃の場合、+25℃の場合、+80℃の場合の各々における出力電圧Voutを示すグラフである。図3に示すように、環境温度が高くなると、出力電圧Voutは低くなり、環境温度が低くなると、出力電圧Voutは高くなる。
【0036】
このような電圧制御用のダイオードD21の温度特性は、蓄電池13に対する充電電圧(出力電圧Vout)の望ましい変化をもたらすことになる。
【0037】
蓄電池13においては、当該蓄電池13の周辺温度が高くなると、低い充電電圧で充電することが望ましく、周辺温度が低くなると、高い充電電圧で充電することが望ましい。この充電電圧に要求される温度特性は、上述した順方向電圧の温度特性を有する電圧制御用のダイオードD21を付加することにより実現される。
【0038】
因みに、本実施の形態の場合、電圧制御用のダイオードD21は、蓄電池13の比較的近傍に配置されることにより、ダイオードD21の温度環境は、蓄電池13の周辺温度と同様とみなすことができる。これにより、ダイオードD21の温度特性を、蓄電池13の周辺温度に適応した充電電圧の制御に反映させることができる。
【0039】
かくして、出力電圧検出部25に電圧制御用のダイオードD21を付加したDC−DCコンバータ10を用いることにより、蓄電池13に対して、周辺温度に適応した充電電圧を供給することができる。
【0040】
以上の構成によれば、出力電圧検出部25に電圧制御用のダイオードD21を付加するだけで蓄電池13の周辺温度に適応した充電電圧を出力することができ、従来のように、温度センサおよびこの温度センサの出力に基づいて温度状況を特定して出力電圧を決定するための複雑な回路を設ける場合に比べて、回路構成を簡単にすることができる。
【0041】
また、スイッチング制御部20によって、出力電圧検出部25の分圧点の検出電圧Vrefを一定に制御するだけの簡単な制御方法によって、蓄電池13の周辺温度に適応した充電電圧(出力電圧Vout)を出力することができる。
【0042】
なお、上述の実施の形態においては、充電対象である蓄電池13として、鉛蓄電池を用いる場合について述べたが、これに限られるものではなく、例えば、リチウムイオン電池等、種々の蓄電池を充電する場合に本発明を適用することができる。
【0043】
また、上述の実施の形態においては、トランスの一次側に接続される直流電源として、240個のニッケル・水素蓄電池セルをすべて直列に接続して、約288Vの公称出力電圧を得るようになされた組電池を用いる場合について述べたが、これに限られるものではなく、リチウムイオン電池等、種々の電池を用いることができる。
【0044】
また、上述の実施の形態においては、本発明を、エンジンおよびモータを組み合わせた自動車や電気自動車のDC−DCコンバータに適用する場合について述べたが、これに限られるものではなく、航空機や船舶など他の乗り物に搭載されるDC−DCコンバータに適用することもでき、さらには、他の電子機器に搭載されるDC−DCコンバータに広く適用することができる。
【0045】
また、上述の実施の形態においては、本発明を、DC−DCコンバータに適用する場合について述べたが、これに限られるものではなく、要は、充電対象に充電電圧を供給する装置に広く適用することができる。また、AC−DCコンバータ等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
10 DC−DCコンバータ
11 トランス
12 直流電源
13 蓄電池
15〜18 スイッチング素子
20 スイッチング制御部
22 整流回路
25 出力電圧検出部(分圧回路)
D21 電圧制御用のダイオード
L1 出力結線
L2 分岐結線
Vout 出力電圧
Vref 検出電圧
P1 出力電圧検出部の接続点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力直流電圧を交流電圧に変換し、該交流電圧から出力直流電圧を生成して蓄電池に充電するコンバータにおいて、
トランスと、
前記トランスの一次側に接続され、前記入力直流電圧をスイッチングして前記交流電圧に変換するスイッチング部と、
前記トランスの二次側に接続され、前記交流電圧を整流平滑して前記出力直流電圧を生成する整流平滑部と、
第1および第2の抵抗が直列接続された分圧回路が前記整流平滑部と前記蓄電池とを繋ぐ出力結線から分岐した分岐結線の先に接続され、前記出力直流電圧を検出する出力電圧検出部と、
前記第1および第2の抵抗の分圧点の電圧が一定となるように前記スイッチング部を制御するスイッチング制御部と、
前記出力結線から前記分圧回路に向かう方向が順方向となるように前記分岐結線上に介挿されたダイオードと、
を備えたことを特徴とするコンバータ。
【請求項2】
前記ダイオードの順方向電圧は、温度上昇により低下し、温度低下により上昇することを特徴とする請求項1記載のコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−166982(P2011−166982A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28630(P2010−28630)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【Fターム(参考)】