説明

コンビネーションスイッチ

【課題】小型でありながら複数の操作位置を判定することができるコンビネーションスイッチを提供する。
【解決手段】実施の形態に係るコンビネーションスイッチ2は、第1の操作方向及び第2の操作方向に操作可能となるように本体20に設けられた操作レバー23と、操作レバー23の第2の端部25に形成された第1の金属パターン251及び第2の金属パターン252と、第1の金属パターン251と対向する第1のコイルパターン261と、第2の金属パターン252と対向する第2のコイルパターン262と、重複領域253の面積の変化に応じた第1のコイルパターン261の第1のインダクタンスに基づいて出力される第1の信号を用いて第1の操作方向を判定し、間隔Wの変化に応じた第2のコイルパターン262の第2のインダクタンスに基づいて出力される第2の信号を用いて第2の操作方向を判定する判定部205と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンビネーションスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、導電性の操作部材と、配線板上に設けられた少なくとも2つのセンサコイルとを有し、操作部材とセンサコイルの距離、又は操作部材とセンサコイルの重なり合いによるセンサコイルのインダクタンスの変化に基づいて操作部材の操作位置を判定する誘導式のスイッチが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4146490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の誘導式のスイッチは、検出対象である操作部材の操作位置の数に応じてセンサコイルを設置する必要があり、小型化が求められる装置への搭載が困難であった。
【0005】
本発明の目的は、小型でありながら複数の操作位置を判定することができるコンビネーションスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するため、第1の操作方向、及び前記第1の操作方向に略直交する第2の操作方向に操作可能な操作部と、前記操作部の端部に形成された第1の金属パターン、及び前記第1の金属パターンとは異なる形状を有する第2の金属パターンと、前記第1の金属パターンと対向する第1のコイルパターンと、前記第2の金属パターンと対向する第2のコイルパターンと、前記第1の金属パターンと前記第1のコイルパターンとの重複する重複領域の面積の変化に応じた前記第1のコイルパターンの第1のインダクタンスに基づいて前記第1のコイルパターンから出力される第1の信号を用いて前記第1の操作方向の操作位置を判定し、前記第2の金属パターンと前記第2のコイルパターンとの間隔の変化に応じた前記第2のコイルパターンの第2のインダクタンスに基づいて前記第2のコイルパターンから出力される第2の信号を用いて前記第2の操作方向の操作位置を判定する判定部と、を備えたコンビネーションスイッチを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、小型でありながら複数の操作位置を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1(a)は、実施の形態に係るコンビネーションスイッチを搭載した車両内部の概略図であり、(b)は、コンビネーションスイッチの全体斜視図である。
【図2】図2(a)は、実施の形態に係るコンビネーションスイッチの端部周辺の斜視図であり、(b)は、コンビネーションスイッチの端部周辺の側面図であり、(c)は、第2の端部の上面視においてコイルパターンと金属パターンの重複を模式的に示した上面図である。
【図3】図3は、実施の形態に係る判定回路のブロック図である。
【図4】図4(a)〜(e)は、実施の形態に係る操作レバーの操作位置と重複領域の関係を示す概略図である。
【図5】図5(a)は、実施の形態に係る操作レバーが中立位置Nに位置する場合の第1のコイルパターンから出力される第1の信号に関する図であり、(b)は、操作レバーが操作位置CLに位置する場合の第1のコイルパターンから出力される第1の信号に関する図であり、(c)は、操作レバーが操作位置CLに位置する場合の復調信号に関する図であり、(d)は、操作レバーが操作位置CRに位置する場合の第1のコイルパターンから出力される第1の信号に関する図であり、(e)は、操作レバーが操作位置CRに位置する場合の復調信号に関する図である。
【図6】図6(a)〜(c)は、実施の形態に係る操作レバーの操作位置に応じた第2の金属パターンと第2のコイルパターンの間隔に関する概略図である。
【図7】図7(a)は、実施の形態に係る操作レバーが中立位置Nに位置する場合の第2のコイルパターンから出力される第2の信号に関する図であり、(b)は、操作レバーが操作位置Hiに位置する場合の第2のコイルパターンから出力される第2の信号に関する図であり、(c)は、操作レバーが操作位置Hiに位置する場合の復調信号に関する図であり、(d)は、操作レバーが操作位置Pに位置する場合の第2のコイルパターンから出力される第2の信号に関する図であり、(e)は、操作レバーが操作位置Pに位置する場合の復調信号に関する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態の要約)
実施の形態に係るコンビネーションスイッチは、第1の操作方向、及び前記第1の操作方向に略直交する第2の操作方向に操作可能な操作部と、操作部の端部に形成された第1の金属パターン、及び前記第1の金属パターンとは異なる形状を有する第2の金属パターンと、第1の金属パターンと対向する第1のコイルパターンと、第2の金属パターンと対向する第2のコイルパターンと、第1の金属パターンと第1のコイルパターンとの重複する重複領域の面積に応じた第1のコイルパターンの第1のインダクタンスに基づいて第1のコイルパターンから出力される第1の信号を用いて第1の操作方向の操作位置を判定し、第2の金属パターンと第2のコイルパターンとの間隔に応じた第2のコイルパターンの第2のインダクタンスに基づいて第2のコイルパターンから出力される第2の信号を用いて第2の操作方向の操作位置を判定する判定部と、を備える。
【0010】
[実施の形態]
(コンビネーションスイッチの構成)
図1(a)は、実施の形態に係るコンビネーションスイッチを搭載した車両内部の概略図であり、(b)は、コンビネーションスイッチの全体斜視図である。コンビネーションスイッチ2は、例えば、車両1の進路を変更する際に使用される方向指示器の点灯及び消灯を指定することができるスイッチである。コンビネーションスイッチ2は、図1(a)に示すように、回転操作により車両1の進行方向を変更することができるステアリング10と、計器類が配置されたインスツルメントパネル11の間のステアリングコラム(図示せず)周辺に設けられている。
【0011】
コンビネーションスイッチ2は、例えば、図1(b)に示すように、下側本体21と上側本体22とから構成される本体20と、操作部としての操作レバー23と、を備える。コンビネーションスイッチ2は、上側本体22の上面220がステアリング10側、つまり、運転者側に向くように設置される。本体20は、操作位置に応じた節度を操作レバー23に付与するように構成されている。
【0012】
(操作レバーの詳細)
操作レバー23は、例えば、図1(a)の紙面に対して上下方向(以下、第1の操作方向と呼称する。)に5段階(CR、R、N、L、CL)に操作可能に構成され、さらに、ステアリング10に対してステアリング10に向かう方向と離れる方向(以下、この2つの方向を第2の操作方向と呼称する。)に3段階(P、N、Hi)に操作可能に構成されている。この第1の操作方向と第2の操作方向は、略直交している。なお、中立位置Nは、第1の操作方向及び第2の操作方向に共通である。
【0013】
ここで、中立位置Nは、方向指示器等の点灯が行われない操作位置であり、操作位置Lは、左側の方向指示器が点滅する操作位置であり、操作位置CLは、左側の方向指示器が点滅するとともに、左側のコーナリングランプが点灯する操作位置である。また、操作位置Rは、右側の方向指示器が点滅する操作位置であり、操作位置RLは、右側の方向指示器が点滅するとともに、右側のコーナリングランプが点灯する操作位置である。なお、操作レバー23の操作位置に割り付けられた機能は、上記に限定されない。
【0014】
また、中立位置Nは、ヘッドライトの光軸が下向き(ロービーム)となる操作位置であり、ヘッドライト(ロービーム)は、例えば、操作レバー23の先端に設けられた回転スイッチをオンする、又は車外の照度等に基づく自動点灯によって点灯するものとする。操作位置Pは、ヘッドライトの光軸が上向きと下向きに交互となる操作位置である。さらに、操作位置Hiは、ヘッドライトの光軸が上向き(ハイビーム)となる操作位置である。なお、操作レバー23の操作位置に割り付けられた機能は、上記に限定されない。また、操作位置P及び操作位置Hiは、操作レバー12の他の操作位置CL〜操作位置CRにおいても操作可能であるとし、特に操作位置Pは、操作レバー23を操作位置Pに操作した後、操作レバー23は、中立位置Nに復帰するものとする。
【0015】
図2(a)は、実施の形態に係るコンビネーションスイッチの端部周辺の斜視図であり、(b)は、コンビネーションスイッチの端部周辺の側面図であり、(c)は、第2の端部の上面視においてコイルパターンと金属パターンの重複を模式的に示した上面図である。
【0016】
操作レバー23は、例えば、本体20に収容された部分が、四角柱形状を有し、その端部分は、中立位置Nにおいて、その上面が上側本体22の上面220と略平行となるように曲がっている。操作レバー23は、この曲がった部分である第1の端部24と、この第1の端部24の先端に設けられた第2の端部25と、を有する。この第2の端部25は、例えば、第1の端部24と同様に、中立位置Nにおいて上面220と、第2の端部25の上面250とが略平行となるように構成されている。
【0017】
操作レバー23の第1の端部24は、本体20に収容され、第1の端部24の図2(a)の紙面に対して上下に設けられた凸部240を支点として図2(a)の紙面に対して左右方向、すなわち、第1の操作方向に操作可能となり、また、両側面に設けられた凸部241を支点として図2(a)の紙面に対して上下方向、すなわち、第2の操作方向に操作可能となっている。
【0018】
(第1の金属パターン251と第2の金属パターン252の詳細)
第2の端部25の上面250には、図2(a)に示すように、第1の金属パターン251と、第2の金属パターン252と、が設けられている。
【0019】
第1の金属パターン251及び第2の金属パターン252は、例えば、金属材料を用いて形成される。この金属材料は、例えば、銅、金、銀等、又はそれらの合金が用いられる。
【0020】
第1の金属パターン251は、操作レバー23の第1の操作方向の操作位置を判定するために設けられ、例えば、二等辺三角形の頂角近傍を切り落としたような台形状を有する。第1の金属パターン251は、この切り落とされたような部分の中点と第1の金属パターン251の底辺の中点とを結ぶ線が、第1の操作方向にほぼ沿うように配置される。また、第1の金属パターン251は、凸部240を支点とする回転に対して移動量が少ない位置、つまり、第2の端部25上の第1の端部24の近くに配置される。これは、第1の操作方向の操作位置の判定は、第1の金属パターン251と第1のコイルパターン261とが上面視にて重複する重複領域253の面積の変化に応じて行われるからである。なお、第1の金属パターン251と第1のコイルパターン261との間隔は、第1の操作方向の操作により変化しないので、当該間隔は、後述する第1の金属パターン251に発生する渦電流の変化に寄与しないものとする。よって以下では、第1の操作方向の操作位置の判定は、重複領域253の面積の変化に応じてなされるものとする。
【0021】
上記の重複領域253に渦電流が発生し、発生した渦電流により渦電流損失が生じる。この渦電流損失は、重複領域253の面積に依存するので、面積が変化することにより第1のコイルパターン261の第1のインダクタンスが変化する。なお、第1の金属パターン251の形状は、上記に限定されず、図2(a)の紙面の左右を反転させた形状であっても良いし、第1の操作方向のいずれか一方の方向に沿って面積が減少する形状、又は、第1の操作方向の操作位置に応じて重複領域253の面積が段階的に変化する形状であれば良い。なお、いずれか一方の方向とは、操作位置CLに向かう方向と操作位置CRに向かう方向のいずれか一方という意味である。
【0022】
第2の金属パターン252は、操作レバー23の第2の操作方向の操作位置を判定するために設けられ、例えば、矩形状を有する。第2の金属パターン252は、長手方向が第1の操作方向にほぼ沿うように配置される。第2の金属パターン252は、操作レバー23の第2の操作方向の操作により、第2のコイルパターン262との間隔Wが変化するように設置される。また、第2の金属パターン252は、凸部241を支点とする回転に対して移動量が大きい位置、つまり、第2の端部25上の第1の端部24から離れた位置に配置される。これは、第2の操作方向の操作位置の判定は、第2の金属パターン252と第2のコイルパターン262の間隔Wの変化に応じて行われるからである。なお、第2の金属パターン252と第2のコイルパターン262の重複領域254の面積は、間隔Wが変化するごとに変化するが、第2の金属パターン252に発生する渦電流の変化に寄与しないほど十分に小さいものとする。よって以下では、第2の操作方向の操作位置の判定は、第2の金属パターン252と第2のコイルパターン262との間隔Wの変化に応じてなされるものとする。
【0023】
第2のコイルパターン262に渦電流が発生し、発生した渦電流により渦電流損失が生じる。この渦電流損失は、上記の間隔Wに依存するので、間隔Wが変化することにより第2のコイルパターン262の第2のインダクタンスが変化する。
【0024】
(第1のコイルパターン261と第2のコイルパターン262の詳細)
コンビネーションスイッチ2は、図2(b)に示すように、第2の端部25の上面250側に基板26を備えている。この基板26には、例えば、第2の端部25と対向する主面260側に第1のコイルパターン261と第2のコイルパターン262とが設けられている。この第2のコイルパターン262と第2の金属パターン252との間隔Wは、例えば、1cmである。
【0025】
第1のコイルパターン261と第2のコイルパターン262は、図2(c)に示すように、例えば、同じ渦巻形状を有している。第1のコイルパターン261と第2のコイルパターン262は、例えば、それぞれの両端部が、基板26の裏側の配線パターンと電気的に接続するように構成されている。また、第1のコイルパターン261と第2のコイルパターン262は、例えば、金属材料を用いて形成される。この金属材料は、例えば、銅、金、銀等、又はそれらの合金が用いられる。
【0026】
第1のコイルパターン261は、通電により、第1の金属パターン251の重複領域253に渦電流を発生させる。第1の操作方向への操作によって重複領域253の面積が変化することで、この渦電流の大きさが変わるので、第1のコイルパターン261のインダクタンス(以下、第1のインダクタンスと呼称する。)が変化する。
【0027】
第2のコイルパターン262は、通電により、第2の金属パターン252の重複領域254に渦電流を発生させる。第2の操作方向への操作によって第2の金属パターン252と第2のコイルパターン262との間隔Wが変化することで、この渦電流の大きさが変わるので、第2のコイルパターン262のインダクタンス(以下、第2のインダクタンスと呼称する。)が変化する。
【0028】
(判定回路200の詳細)
図3は、実施の形態に係る判定回路のブロック図である。この判定回路200は、例えば、コンビネーションスイッチ2に搭載されている。なお、判定回路200は、基板26に設けられても良いし、コンビネーションスイッチ2の他の配線基板に形成されても良い。判定回路200は、図3に示すように、発振部201と、切替部202と、第1のコイルパターン261及び第2のコイルパターン262と、増幅部203と、復調部204と、判定部205と、を備えて概略構成されている。
【0029】
発振部201は、例えば、交流電圧Vを生成する。生成された交流電圧Vは、切替部202を介して第1のコイルパターン261又は第2のコイルパターン262に印加される。
【0030】
切替部202は、発振部201と第1のコイルパターン261又は第2のコイルパターン262との接続を、後述する切替信号に基づいて内部のスイッチを切り替えることによって切り替えるように構成されている。第1のコイルパターン261は、この切替部202を介して発振部201から供給される交流電圧Vにより、第1の信号を増幅部203に出力する。また、第2のコイルパターン262は、この切替部202を介して発振部201から供給される交流電圧Vにより、第2の信号を増幅部203に出力する。
【0031】
増幅部203は、第1のコイルパターン261から出力される第1の信号、又は第2のコイルパターン262から出力される第2の信号を増幅した増幅信号を復調部204に出力する。
【0032】
復調部204は、増幅部203から出力された増幅信号に周期検波を行い、得られた復調信号を判定部205のA/D変換部207に出力する。
【0033】
判定部205は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等から構成され、切替制御部206と、A/D変換部207と、を有する。
【0034】
判定部205は、後述するデジタル変換された復調信号と記憶されたしきい値とを比較することにより操作レバー23の操作位置を判定し、この判定結果を判定信号として車両LANに出力する。車両LANに出力された判定信号は、例えば、車両1の制御部に送られ、判定信号を取得した車両1の制御部は、操作レバー23の操作位置に応じた制御信号を被制御装置に出力する。なお、しきい値は、例えば、判定部205のRAM又はROM等に記憶されている。
【0035】
切替制御部206は、切替部202のスイッチを切り替える切替信号を生成し、切替部202に出力する。切替部202は、この切替信号に基づいてスイッチを周期的に切り替える。
【0036】
A/D変換部207は、アナログ信号をデジタル信号に変換するものであり、復調部204から出力される復調信号をデジタル変換する。
【0037】
以下に、本実施の形態に係るコンビネーションスイッチの動作を説明する。
【0038】
(動作)
図4(a)〜(e)は、実施の形態に係る操作レバーの操作位置と重複領域の関係を示す概略図である。図5(a)は、実施の形態に係る操作レバーが中立位置Nに位置する場合の第1のコイルパターンから出力される第1の信号に関する図であり、(b)は、操作レバーが操作位置CLに位置する場合の第1のコイルパターンから出力される第1の信号に関する図であり、(c)は、操作レバーが操作位置CLに位置する場合の復調信号に関する図であり、(d)は、操作レバーが操作位置CRに位置する場合の第1のコイルパターンから出力される第1の信号に関する図であり、(e)は、操作レバーが操作位置CRに位置する場合の復調信号に関する図である。図5(a)〜(e)における横軸は時間tであり、図5(a)、(b)及び(d)における縦軸は第1のコイルパターン261から出力される第1の信号の電圧Vであり、図5(c)及び(e)における縦軸は復調後の電圧Vである。
【0039】
なお、コンビネーションスイッチ2は、発振部201と第1のコイルパターン261及び第2のコイルパターン262との接続を周期的に切り替えているので、第1の操作方向の操作位置の判定の説明では、第1のコイルパターン261に接続されていることを前提としている。また、第2の操作方向の操作位置の判定の説明では、第2のコイルパターン262に接続されていることを前提としている。
【0040】
また、以下における第1の操作方向の操作位置の判定においては、第1の金属パターン251と第1のコイルパターン261の間隔は、変化しないので、間隔の変化による第1のコイルパターン261の第1のインダクタンスの変化は無視することができるものとする。
【0041】
さらに、以下における第2の操作方向の操作位置の判定においては、第2の金属パターン252と第2のコイルパターン262とが重複する重複領域254の面積は、変化が小さいので、面積の変化による第2のコイルパターン262の第2のインダクタンスの変化は無視することができるものとする。
【0042】
まず、基準となる、操作レバー23が中立位置Nに位置する場合の第1の操作方向の操作位置の判定について説明し、続いて、他の第1の操作方向の操作位置CL、操作位置L、操作位置CR及び操作位置Rの判定について説明する。
【0043】
(中立位置Nの判定)
操作レバー23が中立位置Nに位置するとき、図4(c)に示すように、第1の金属パターン251の中央近傍に重複領域253が形成され、この重複領域253に渦電流が生じる。この渦電流による渦電流損失により、第1のコイルパターン261から出力される第1の信号は、図5(a)に示すように、供給される交流電圧Vよりも小さい電圧Vと電圧−Vを周期的に繰り返す信号となる。この第1の信号を復調した復調信号は、例えば、図5(c)に示す定電圧Vとなる。判定部205は、この復調信号をデジタル化した信号に基づいて操作位置をNと判定し、判定結果を判定信号として出力する。
【0044】
(操作位置CLの判定)
時間tにおいて、操作レバー23が中立位置Nから操作位置CLに操作されたとき、図4(a)に示すように、第1の金属パターン251の先端が切り落とされたような二等辺三角形の頂角近傍に重複領域253が形成され、この重複領域253に渦電流が生じる。この重複領域253の面積が、中立位置Nの重複領域253の面積(図4(c)参照)よりも小さくなる。このため、操作位置CLの渦電流損失は、中立位置Nの渦電流損失よりも小さくなる。よって、第1のインダクタンスが、中立位置Nのインダクタンスよりも小さいので、判定回路200のインピーダンスが小さくなり、第1の信号の最大電圧Vは、中立位置Nの最大電圧Vよりも大きくなる。
【0045】
つまり、第1のコイルパターン261から出力される第1の信号は、図5(b)に示すように、時間tを境に、電圧Vと電圧−Vを繰り返す信号から、電圧V(>電圧V)と電圧−Vを繰り返す信号へと変化する。この第1の信号を復調した復調信号は、例えば、図5(c)に示すように、操作が行われる時間tまでは、定電圧Vとなり、t以降からは定電圧Vよりも大きい定電圧Vとなる。判定部205は、この復調信号をデジタル化した信号に基づいて操作位置をCLと判定し、判定結果を判定信号として出力する。
【0046】
(操作位置Lの判定)
操作レバー23が中立位置Nから操作位置Lに操作されたとき、図4(b)に示すように、中立位置Nの重複領域253の面積と操作位置CLの重複領域253の面積との間の面積となるような重複領域253が形成され、この重複領域253に渦電流が生じる。このため、操作位置Lの渦電流損失は、中立位置Nの渦電流損失と操作位置CLの渦電流損失の間の値となる。よって、第1のインダクタンスが、中立位置Nのインダクタンスと操作位置CLのインダクタンスの間の値となるので、判定回路200のインピーダンスが中立位置Nのインダクタンスと操作位置CLのインダクタンスの間の値となり、第1の信号の最大電圧Vは、中立位置Nの電圧Vと操作位置CLの電圧Vの間の値となる。
【0047】
よって、この第1の信号を復調した復調信号は、例えば、定電圧Vと定電圧Vの間の定電圧となる。判定部205は、この復調信号をデジタル化した信号に基づいて操作位置をLと判定し、判定結果を判定信号として出力する。
【0048】
(操作位置CRの判定)
操作レバー23が中立位置Nから時間tにおいて操作位置CRに操作されたとき、図4(e)に示すように、第1の金属パターン251の二等辺三角形の底辺近傍に重複領域253が形成され、この重複領域253に渦電流が生じる。この重複領域253の面積が、中立位置Nの重複領域253の面積よりも大きくなる。このため、操作位置CRの渦電流損失は、中立位置Nの渦電流損失よりも大きくなる。よって、第1のインダクタンスが、中立位置Nのインダクタンスよりも大きいので、判定回路200のインピーダンスが大きくなり、第1の信号の最大電圧Vは、中立位置Nの最大電圧Vよりも小さくなる。
【0049】
つまり、第1のコイルパターン261から出力される第1の信号は、図5(d)に示すように、時間tを境に、電圧Vと電圧−Vを繰り返す信号から、電圧V(<電圧V)と電圧−Vを繰り返す信号へと変化する。この第1の信号を復調した復調信号は、例えば、図5(e)に示すように、操作が行われる時間tまでは、定電圧Vとなり、t以降からは定電圧Vよりも小さい定電圧Vとなる。判定部205は、この復調信号をデジタル化した信号に基づいて操作位置をCRと判定し、判定結果を判定信号として出力する。
【0050】
(操作位置Rの判定)
操作レバー23が中立位置Nから操作位置Rに操作されたとき、図4(d)に示すように、中立位置Nの重複領域253の面積と操作位置CRの重複領域253の面積との間の面積となるような重複領域253が形成され、この重複領域253に渦電流が生じる。このため、操作位置Rの渦電流損失は、中立位置Nの渦電流損失と操作位置CRの渦電流損失の間の値となる。よって、第1のインダクタンスが、中立位置Nのインダクタンスと操作位置CRのインダクタンスの間の値となるので、判定回路200のインピーダンスが中立位置Nのインダクタンスと操作位置CRのインダクタンスの間の値となり、第1の信号の最大電圧Vは、中立位置Nの電圧Vと操作位置CRの電圧Vの間となる。
【0051】
よって、この第1の信号を復調した復調信号は、例えば、定電圧Vと定電圧Vの間の電圧を有する信号となる。判定部205は、この復調信号をデジタル化した信号に基づいて操作位置をRと判定し、判定結果を判定信号として出力する。
【0052】
なお、コンビネーションスイッチ2は、一例として、中立位置Nの復調後の電圧Vから、操作位置が変わるごとに復調後の電圧が0.5Vずつ変化するように構成される。
【0053】
続いて、基準となる、操作レバー23が中立位置Nに位置する場合の第2の操作方向の操作位置の判定について説明し、続いて、他の第2の操作方向の操作位置Hi及び操作位置Pの判定について説明する。
【0054】
(中立位置Nの判定)
図6(a)〜(c)は、実施の形態に係る操作レバーの操作位置に応じた第2の金属パターンと第2のコイルパターンの間隔に関する概略図である。図7(a)は、実施の形態に係る操作レバーが中立位置Nに位置する場合の第2のコイルパターンから出力される第2の信号に関する図であり、(b)は、操作レバーが操作位置Hiに位置する場合の第2のコイルパターンから出力される第2の信号に関する図であり、(c)は、操作レバーが操作位置Hiに位置する場合の復調信号に関する図であり、(d)は、操作レバーが操作位置Pに位置する場合の第2のコイルパターンから出力される第2の信号に関する図であり、(e)は、操作レバーが操作位置Pに位置する場合の復調信号に関する図である。図7(a)〜(e)における横軸は時間tであり、図7(a)、(b)及び(d)における縦軸は第2のコイルパターン262から出力される第2の信号の電圧Vであり、図7(c)及び(e)における縦軸は復調後の電圧Vである。まず、操作レバー23が中立位置Nに位置する場合の第2の操作方向の操作位置判定について説明する。
【0055】
操作レバー23が中立位置Nに位置するとき、図6(b)に示すように、第2の金属パターン252と第2のコイルパターン262の間隔はWとなり、重複領域254(図2(c)参照)の面積と間隔Wとに応じた渦電流が生じる。この渦電流による渦電流損失により、第2のコイルパターン262から出力される第2の信号は、図7(a)に示すように、供給された交流電圧Vよりも小さい電圧V10と電圧−V10を周期的に繰り返す信号となる。この第1の信号を復調した復調信号は、例えば、図7(c)に示す定電圧V12となる。判定部205は、この復調信号をデジタル化した信号に基づいて操作位置をNと判定し、判定結果を判定信号として出力する。
【0056】
(操作位置Hiの判定)
時間tにおいて、操作レバー23が中立位置Nから操作位置Hiに操作されたとき、図6(a)に示すように、第2の金属パターン252と第2のコイルパターン262の間隔がW(<W)に変化し、操作位置Hiの渦電流損失は、中立位置Nの渦電流損失よりも大きくなる。よって、第2のインダクタンスが、中立位置Nのインダクタンスよりも大きいので、判定回路200のインピーダンスが大きくなり、第2の信号の最大電圧V11は、中立位置Nの最大電圧V10よりも小さくなる。
【0057】
つまり、第2のコイルパターン262から出力される第2の信号は、図7(b)に示すように、時間tを境に、電圧V10と電圧−V10を繰り返す信号から、電圧V11(<電圧V10)と電圧−V11を繰り返す信号へと変化する。この第2の信号を復調した復調信号は、例えば、図7(c)に示すように、操作が行われる時間tまでは、定電圧V12となり、t以降からは定電圧V12よりも小さい定電圧V13となる。判定部205は、この復調信号をデジタル化した信号に基づいて操作位置をHiと判定し、判定結果を判定信号として出力する。
【0058】
(操作位置Pの判定)
時間tにおいて、操作レバー23が中立位置Nから操作位置Pに操作されたとき、図6(c)に示すように、第2の金属パターン252と第2のコイルパターン262の間隔がW(>W)に変化し、操作位置Pの渦電流損失は、中立位置Nの渦電流損失よりも小さくなる。よって、第2のインダクタンスが、中立位置Nのインダクタンスよりも小さいので、判定回路200のインピーダンスが小さくなり、第2の信号の最大電圧V14は、中立位置Nの最大電圧V10よりも大きくなる。
【0059】
つまり、第2のコイルパターン262から出力される第2の信号は、図7(d)に示すように、時間tを境に、電圧V10と電圧−V10を繰り返す信号から、電圧V14(>電圧V10)と電圧−V14を繰り返す信号へと変化する。この第2の信号を復調した復調信号は、例えば、図7(e)に示すように、操作が行われる時間tまでは、定電圧V12となり、t以降は定電圧V12よりも大きい定電圧V15となる。判定部205は、この復調信号をデジタル化した信号に基づいて操作位置をPと判定し、判定結果を判定信号として出力する。
【0060】
なお、復調後の電圧は、操作位置が変わるごとに、およそ0.5V程度増減するようにコンビネーションスイッチ2は構成されている。
【0061】
(実施の形態の効果)
上記に記載の実施の形態に係るコンビネーションスイッチ2によれば、組となる金属パターンとコイルパターンを2つ備えることで、組の数以上の操作位置を判定することができる。コンビネーションスイッチ2は、2組の金属パターンとコイルパターンを備えるので、複数の操作位置を検出するためのセンサを、操作位置と同じ数組み込む必要があるスイッチと比べて、構造が簡単で、さらに、小型化することが容易である。
【0062】
なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されず、本発明の技術思想を逸脱あるいは変更しない範囲内で種々の変形及び組み合わせが可能である。
【0063】
例えば、上記のコンビネーションスイッチ2は、方向指示器の点灯・消去を指示するスイッチであったが、これに限定されない。また、操作位置の数は、上記に記載の数に限定されず、用途に応じて変更可能である。
【0064】
また、例えば、第1のコイルパターン261及び第2のコイルパターン262が形成された基板26は、操作レバー23の第2の端部25の上面250の上方に配置されたが、これに限定されず、上面250の裏面に第1の金属パターン251及び第2の金属パターン252を形成し、基板26の主面260が第2の端部25の裏面と対向するように基板26を配置しても良い。
【0065】
また、コンビネーションスイッチ2は、例えば、第2の端部25に第1のコイルパターン261及び第2のコイルパターン262が形成され、基板26に第1の金属パターン251及び第2の金属パターン252が形成されても良い。
【0066】
さらに、コンビネーションスイッチ2は、例えば、第1の端部24に近い方に第2の金属パターン252を形成しても良い。
【符号の説明】
【0067】
1…車両、2…コンビネーションスイッチ、10…ステアリング、11…インスツルメントパネル、12…操作レバー、20…本体、21…下側本体、22…上側本体、23…操作レバー、24…第1の端部、25…第2の端部、26…基板、200…判定回路、201…発振部、202…切替部、203…増幅部、204…復調部、205…判定部、206…切替制御部、207…変換部、220…上面、240…凸部、241…凸部、250…上面、251…第1の金属パターン、252…第2の金属パターン、253…重複領域、254…重複領域、261…第1のコイルパターン、262…第2のコイルパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の操作方向、及び前記第1の操作方向に略直交する第2の操作方向に操作可能な操作部と、
前記操作部の端部に形成された第1の金属パターン、及び前記第1の金属パターンとは異なる形状を有する第2の金属パターンと、
前記第1の金属パターンと対向する第1のコイルパターンと、
前記第2の金属パターンと対向する第2のコイルパターンと、
前記第1の金属パターンと前記第1のコイルパターンとの重複する重複領域の面積の変化に応じた前記第1のコイルパターンの第1のインダクタンスに基づいて前記第1のコイルパターンから出力される第1の信号を用いて前記第1の操作方向の操作位置を判定し、前記第2の金属パターンと前記第2のコイルパターンとの間隔の変化に応じた前記第2のコイルパターンの第2のインダクタンスに基づいて前記第2のコイルパターンから出力される第2の信号を用いて前記第2の操作方向の操作位置を判定する判定部と、
を備えたコンビネーションスイッチ。
【請求項2】
前記第1の金属パターンは、前記第1の操作方向のいずれか一方の方向に沿って面積が減少する形状を有する請求項1に記載のコンビネーションスイッチ。
【請求項3】
交流電圧を生成する発振部と、
前記発振部と前記第1のコイルパターン又は前記第2のコイルパターンとの接続を切り替える切替部と、を備えた請求項1又は2に記載のコンビネーションスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−49950(P2012−49950A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191994(P2010−191994)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】