説明

コンフォーカル顕微鏡

【課題】ビームスプリッタの交換の度に使用者が検出側集光レンズのチルト調整機構を操作することなく、蛍光の光軸と検出側ピンホールとのずれを補正することができるコンフォーカル顕微鏡を提供すること。
【解決手段】光源と、前記光源から出射された光を波長選択手段を介して標本に集光する照明光学系と、前記標本からの光を前記波長選択手段を介して集光する集光光学系と、前記集光光学系の集光位置に配置されたピンホール板とを備えたコンフォーカル顕微鏡であって、前記ピンホール板の前に配置された集光レンズの光軸に対する傾斜角度を調整する調整機構と、前記波長選択手段の交換に伴って調整が必要となる前記傾斜角度に関する情報を前記波長手段ごとに記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記傾斜角度に関する情報に基づいて、前記調整機構を駆動する駆動手段とを備えたコンフォーカル顕微鏡。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、励起光と蛍光を分離するビームスプリッタを交換可能に配置した蛍光観察用コンフォーカル顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の蛍光観察用コンフォーカル顕微鏡では、励起光と蛍光の波長の組み合わせを観察対象に合せて選択するために、異なる分光特性を持つ複数のビームスプリッタを準備し、使用者が適宜選択しコンフォーカル顕微鏡に組み込んで使用していた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−267933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のコンフォーカル顕微鏡に用いられるこのビームスプリッタは、平行平板ガラスに蒸着膜を施した光学フィルターを使用することが一般的である。
【0004】
しかしながら、個々のビームスプリッタ毎に平行平板ガラス素材の平行度が公差範囲内でばらつくことにより透過光を光軸に対して平行に維持することができず、試料から射出した蛍光の光軸が検出側ピンホール中心からずれるため、検出光の光量が減少するという問題があり、この問題に対応するために、従来のこの種の装置では検出側集光レンズを光軸に対して傾斜調節を行うためのチルト調整機構を設け、ビームスプリッタの交換の度に使用者がこのチルト調整機構を操作し、ビームスプリッタからの射出光の検出側ピンホール中心からの光軸のズレを補正するという煩雑な作業が必要であった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて行われたものであり、ビームスプリッタの交換の度に使用者が検出側集光レンズのチルト調整機構を操作することなく、蛍光の光軸と検出側ピンホール中心とのずれを補正することができるコンフォーカル顕微鏡を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、光源と、前記光源から出射された光を波長選択手段を介して標本に集光する照明光学系と、前記標本からの光を前記波長選択手段を介して集光する集光光学系と、前記集光光学系の集光位置に配置されたピンホール板とを備えたコンフォーカル顕微鏡であって、前記ピンホール板の前に配置された集光レンズの光軸に対する傾斜角度を調整する調整機構と、前記波長選択手段の交換に伴って調整が必要となる前記傾斜角度に関する情報を前記波長手段ごとに記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記傾斜角度に関する情報に基づいて、前記調整機構を駆動する駆動手段とを備えたことを特徴とするコンフォーカル顕微鏡を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ビームスプリッタの交換の度に使用者が検出側集光レンズのチルト調整機構を操作することなく、蛍光の光軸と検出側ピンホール中心とのずれを補正することができるコンフォーカル顕微鏡を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施の形態にかかるコンフォーカル顕微鏡について図面を参照しつつ説明する。
【0009】
図1は、実施の形態にかかるコンフォーカル顕微鏡の概略構成図を示す。図2は、集光レンズを駆動するチルトアクチュエータの制御ブロック図を示す。図3は、ビームスプリッタの識別手段の一例を示す。
【0010】
図1において、レーザ光源1から射出した光は、光源側集光レンズ2で集光され、光源側共焦点ピンホール3でスポット状に絞られ、光源側コリメートレンズ4で平行光に形成され、ビームスプリッタ5で反射され、スキャナ6のスキャンミラーで二次元方向にスキャンされ、レンズ群7を経て標本8に照射される。なお、レンズ群7は、スキャンレンズ7a、第2対物レンズ7b、対物レンズ7cから構成されている。
【0011】
標本8に到達した光を励起光として標本8内で蛍光が発生し、発生した蛍光は励起光とは逆順でレンズ群7を戻り、スキャナ6でデスキャンされ、ビームスプリッタ5を透過し、検出側集光レンズ9で集光され検出側共焦点ピンホール10を透過し検出器11で検出され、不図示のメモリに記憶される。一枚の画像が記憶された後、画像処理回路で処理され、モニターに表示され観察者に観察される。
【0012】
検出側集光レンズ9はX方向(図示した矢印の方向)およびY方向(光軸Iに垂直かつ紙面に平行な回転軸を中心とした回転方向)に傾斜可能に設置され、Xチルトアクチュエータ12およびYチルトアクチュエータ13によりそれぞれ独立にチルト調整を行うことができる構成である。なお、アクチュエータ12、13には、位置制御可能なステッピングモーターを使用している。
【0013】
ビームスプリッタ5はレーザ光源1の励起光の波長成分を反射し、標本8で発生した蛍光を透過する透過/反射特性をもつ光学フィルターである。使用者は標本8の種類や観察の目的に応じて、透過/反射特性の異なる複数の光学フィルターのうちから適当な1種類を選択して光路中に組み込む。したがって、ビームスプリッタ5はコンフォーカル顕微鏡100に対して着脱可能に設置されている。
【0014】
ビームスプリッタ5は平行平板ガラスに蒸着膜を施した光学フィルターであるが、ガラス素材の平行度の公差により(入射面と出射面とが完全な平行面でないため)ビームスプリッタ5の透過光は光軸から角度をなして射出される。その結果検出側集光レンズ9を透過して集光された蛍光は検出側共焦点ピンホール10の中心からずれた位置に投影される。そのため検出器11に到達する光量が減少し、得られるコンフォーカル像の画質低下を招いてしまう。
【0015】
本実施の形態にかかるコンフォーカル顕微鏡100は、以下の手順により検出側集光レンズ9の光軸に対するチルト調整を行うことで、ビームスプリッタ5による結像位置のずれを補正することを可能にしている。
【0016】
図2に示すブロック図において、前記透過/反射特性の異なる複数のビームスプリッタ5にはそれぞれの個体を識別するための識別コードが記録され、特定のビームスプリッタがコンフォーカル顕微鏡100に設置されると、例えば、コンフォーカル顕微鏡100内に設置された、図3に示す識別コード検出手段21により識別コードが読み取られる。
【0017】
図3に示す識別コード検出手段21は、ビームスプリッタ5に設けられた3つの穴5a、5b、5cを、本体から突出している3本のスイッチ5aa、5bb、5ccで検出するように構成されてる。例えば、穴がある場合にはスイッチがONとなり、穴がない場合にはスイッチがOFFとなるように設定すると、3個の穴では二進法で8個のビームスプリッタ5を識別することが可能になる。図3に示す場合には、5aaがON、5bbがOFF、5ccがOFFとなり、二進法の(100)を示す。なお、図3は、識別コード検出手段21の一例であり、その他の検出手段を適宜使用することも可能である。
【0018】
制御手段22は識別コード検出手段21で読み取られた識別コードにより設置されたビームスプリッタ5の種類を判別する。制御手段22には記憶手段23が接続されている。記憶手段23には、予めビームスプリッタ5の識別コードに対応したXチルトアクチュエータ12およびYチルトアクエータ13の最適位置情報(補正量情報)が記憶されている。
【0019】
最適位置情報の記憶は、コンフォーカル顕微鏡の調整工程において以下のように行う。
【0020】
あるビームスプリッタ5を装着した状態で、Xチルトアクチュエータ12およびYチルトアクチュエータ13をそれぞれ駆動し、検出器11で得られる光量が最大になる位置を探し出し、そのときの位置情報を記憶手段23に記憶する。この作業を全てのビームスプリッタについて繰り返して行う。
【0021】
制御手段22は検出された識別コードに対応したXチルトアクチュエータ12およびYチルトアクチュエータ13の制御位置情報を記憶手段23より読み取り、駆動手段(ドライバ)24に転送する。駆動手段24は転送された最適位置情報(補正量情報)に基づいてXチルトアクチュエータ12およびYチルトアクチュエータ13をそれぞれ駆動し、検出側集光レンズのチルト調整が行われ、ビームスプリッタ5を透過した蛍光の光軸を共焦点側ピンホール中心に位置決めする。
【0022】
以上述べたように、実施の形態にかかるコンフォーカル顕微鏡100によれば、複数のビームスプリッタの中から蛍光観察に必要な励起波長を反射する特性を有するビームスプリッタを選択して、装置に装着した際、装置内に設けられた識別コード検出手段でビームスプリッタの識別コードが検出される。この検出結果に基づき、検出器側集光レンズのチルト調整を行うことにより蛍光の集光位置が共焦点ピンホールの中心にくるように補正することが可能になる。この結果、ビームスプリッタ5の交換による画質低下を良好にかつ自動的に補正するコンフォーカル顕微鏡100を達成することが可能になる。また、上記の補正は、装置内で自動的に行われるため、使用者はチルト調整を行うという煩雑な作業を行う必要がない。
【0023】
なお、上述の実施の形態は例に過ぎず、上述の構成や形状に限定されるものではなく、本発明の範囲内において適宜修正、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施の形態にかかるコンフォーカル顕微鏡の概略構成図を示す。
【図2】集光レンズを駆動するチルトアクチュエータの制御ブロック図を示す。
【図3】ビームスプリッタの識別手段の一例を示す。
【符号の説明】
【0025】
1 レーザ光源
2 光源側集光レンズ
3 光源側共焦点ピンホール
4 光源側コリメートレンズ
5 ビームスプリッタ
6 スキャナ
7 レンズ群
8 標本
9 検出器側集光レンズ
10 検出器側共焦点ピンホール
11 光検出器
12 Xチルトアクチュエータ
13 Yチルトアクチュエータ
21 識別コード検出手段
22 制御手段
23 記憶手段
24 駆動手段(ドライバ)
100 コンフォーカル顕微鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から出射された光を波長選択手段を介して標本に集光する照明光学系と、
前記標本からの光を前記波長選択手段を介して集光する集光光学系と、
前記集光光学系の集光位置に配置されたピンホール板とを備えたコンフォーカル顕微鏡であって、
前記ピンホール板の前に配置された集光レンズの光軸に対する傾斜角度を調整する調整機構と、
前記波長選択手段の交換に伴って調整が必要となる前記傾斜角度に関する情報を前記波長手段ごとに記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記傾斜角度に関する情報に基づいて、前記調整機構を駆動する駆動手段とを備えたことを特徴とするコンフォーカル顕微鏡。
【請求項2】
前記傾斜角度の調整は、前記光軸に直交する2つの軸を中心にそれぞれ独立に駆動可能であることを特徴とする請求項1に記載のコンフォーカル顕微鏡。
【請求項3】
前記波長選択手段は、識別手段を備えることを特徴とする請求項1まはた2に記載のコンフォーカル顕微鏡。
【請求項4】
前記傾斜角度に関する情報は、前記傾斜角度の調整量であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のコンフォーカル顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−36978(P2009−36978A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200990(P2007−200990)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】