説明

コンベヤベルトおよびコンベヤベルトの製造方法

【課題】設計の自由度を高めること。
【解決手段】一対のカバーゴム層2と、これらのカバーゴム層2同士の間に配設された中間ゴム層3と、該中間ゴム層3内に、ベルト幅方向Hに間隔をあけて複数埋設されたスチールコード4と、を備え、スチールコード4は、接着性ゴムで形成された接着ゴム膜5により被覆されるとともに、該接着ゴム膜5を介して中間ゴム層3に接着されているコンベヤベルト1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤベルトおよびコンベヤベルトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるようなコンベヤベルトが知られている。このコンベヤベルトは、一対のカバーゴム層と、これらのカバーゴム層同士の間に配設された中間ゴム層と、該中間ゴム層内に、ベルト幅方向に間隔をあけて複数埋設されたスチールコードと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−248427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のコンベアベルトでは、スチールコードを中間ゴム層に接着させるため、中間ゴム層を、スチールコードとの良好な接着性を具備する接着性ゴムで形成する必要があるため、中間ゴム層を形成するゴム材料の選択が制限され、コンベヤベルトの設計に制約があった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、設計の自由度を高めることができるコンベアベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るコンベヤベルトは、一対のカバーゴム層と、これらのカバーゴム層同士の間に配設された中間ゴム層と、該中間ゴム層内に、ベルト幅方向に間隔をあけて複数埋設されたスチールコードと、を備えるコンベヤベルトであって、前記スチールコードは、接着性ゴムで形成された接着ゴム膜により被覆されるとともに、該接着ゴム膜を介して前記中間ゴム層に接着されていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、スチールコードが、接着ゴム膜を介して中間ゴム層に接着されているので、中間ゴム層を接着性ゴムとは異なるゴム材料により形成しても、スチールコードを中間ゴム層に確実に接着させることができる。したがって、中間ゴム層を形成するゴム材料の選択の幅を広げることが可能になり、コンベヤベルトの設計の自由度を高めることができる。
なお、中間ゴム層を形成するゴム材料として、接着性ゴムよりもコストが低いゴム材料を採用する場合には、前記従来技術のように、中間ゴム層を接着性ゴムで形成する場合に比べて、コンベヤベルトの低コスト化を図ることができる。
【0008】
また、前記中間ゴム層は、低物性ゴムにより形成されていてもよい。
【0009】
この場合、当該コンベヤベルトが、ベルト長手方向に両端部を有する有端帯状に形成されている場合で、かつ、これらの両端部を接合し、当該コンベヤベルトを無端帯状に形成するいわゆるエンドレス施工時に、その作業性を向上させることができる。すなわち、エンドレス施工時には、コンベヤベルトの両端部において中間ゴム層を除去することから、中間ゴム層が、低物性ゴムにより形成されている場合、前記従来技術のように、中間ゴム層が接着性ゴムで形成されている場合に比べて、エンドレス施工の作業性を向上させることができる。
【0010】
また、前記中間ゴム層は、高物性ゴムにより形成されていてもよい。
【0011】
この場合、中間ゴム層が、高物性ゴムにより形成されているので、前記従来技術のように、中間ゴム層が接着性ゴムで形成されている場合に比べて、当該コンベヤベルトの耐久性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明に係るコンベヤベルトの製造方法は、前記コンベヤベルトを形成するコンベヤベルトの製造方法であって、未加硫の一対のカバーゴム部材同士の間に、未加硫の中間ゴム部材と、未加硫のゴム膜部材により被覆された前記スチールコードと、を挟み込み、これらを挟込み方向に加圧して加硫する加硫工程を有し、該加硫工程の前に、前記スチールコードを前記ゴム膜部材により被覆するコード被覆工程を有することを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、加硫工程の前に、コード被覆工程を有しているので、ゴム膜部材によりスチールコードを高精度に被覆することが可能になり、接着性ゴムを介してスチールコードを中間ゴム層に確実に接着させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るコンベヤベルトによれば、設計の自由度を高めることができる。
また、本発明に係るコンベヤベルトの製造方法によれば、接着性ゴムを介してスチールコードを中間ゴム層に確実に接着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンベヤベルトの断面図である。
【図2】図1に示すコンベヤベルトを形成するコンベヤベルトの製造方法を説明する断面図である。
【図3】図1に示すコンベヤベルトにおけるエンドレス施工を説明する上面図である。
【図4】図1に示すコンベヤベルトにおけるエンドレス施工を説明する上面図である。
【図5】図1に示すコンベヤベルトにおけるエンドレス施工を説明する拡大上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係るコンベヤベルトを説明する。
図1に示すように、コンベヤベルト1は、一対のカバーゴム層2と、これらのカバーゴム層2同士の間に配設された中間ゴム層3と、該中間ゴム層3内に、ベルト幅方向Hに間隔をあけて複数埋設されたスチールコード4と、を備えている。本実施形態では、コンベヤベルト1は、ベルト長手方向に両端部を有する有端帯状に形成されている。
【0017】
カバーゴム層2、中間ゴム層3およびスチールコード4は、いずれもベルト長手方向に延在している。また、カバーゴム層2および中間ゴム層3は、いずれも単層構造であるとともに、これらのゴム層2、3のうち、ベルト厚さ方向で隣り合うもの同士は、互いに加硫接着されており、コンベヤベルト1は、全体で3層のゴム層が積層された積層構造となっている。
またスチールコード4には、例えば亜鉛メッキやブラスメッキなどの表面処理が施されている。
【0018】
そして本実施形態では、スチールコード4は、接着性ゴムで形成された接着ゴム膜5により被覆されるとともに、該接着ゴム膜5を介して中間ゴム層3に接着されている。
接着ゴム膜5は、スチールコード4をベルト長手方向の全長にわたって被覆する筒状に形成されており、ベルト幅方向Hに隣り合うスチールコード4を被覆する接着ゴム膜5同士は、中間ゴム層3を介してベルト幅方向Hに隣り合っている。
【0019】
また、各接着ゴム膜5において、ベルト幅方向Hの両側に位置する各部分は、中間ゴム層3にそれぞれ加硫接着されるとともに、ベルト厚さ方向の両側に位置する各部分は、カバーゴム層2にそれぞれ加硫接着されており、接着ゴム膜5は、中間ゴム層3をベルト厚さ方向に縦断した状態で該中間ゴム層3内に配設されている。
なお接着ゴム膜5の膜厚は、例えば0.5mm〜2.0mm程度が好ましい。
【0020】
ここで、カバーゴム層2および中間ゴム層3はそれぞれ、接着性ゴムとは異なるゴム材料により各別に形成されており、カバーゴム層2は、耐摩耗性および耐カット性に優れる耐久性ゴムにより形成されるとともに、中間ゴム層3は、低物性ゴムにより形成されている。なお、低物性ゴムの引張強力および引裂強力はそれぞれ、接着性ゴムの引張強力および引裂強力よりも低くなっており、低物性ゴムの引張強力は、例えば1.5〜8MPa程度とされ、低物性ゴムのDIN53507に準拠した引張強力は、例えば2〜12N/mm程度となっている。
【0021】
そして、接着ゴム膜5を形成する接着性ゴムは、前述のように表面処理が施されたスチールコード4に対して良好な接着性を具備するとともに、中間ゴム層3を形成するゴム材料である前記低物性ゴム、およびカバーゴム層2を形成するゴム材料である前記耐久性ゴムそれぞれに加硫接着可能となっている。本実施形態では、これらの接着性ゴム、低物性ゴムおよび耐久性ゴムは、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、イソプレンゴム(IR)もしくはクロロプレンゴム(CR)等、またはこれらの2種以上の混合物を、共通の主成分として含有している。
【0022】
次に、前記コンベヤベルト1を形成するコンベヤベルトの製造方法について説明する。
はじめに図2に示すように、接着ゴム膜5となる未加硫のゴム膜部材15によりスチールコード4を被覆して、被覆コード10を形成するコード被覆工程を行う。このとき例えば、スチールコード4が予め巻き取られてなるコードリールから、スチールコード4を引き出しながら、該スチールコード4に、未加硫の接着性ゴムを接着させてゴム膜部材15を形成することにより、被覆コード10を形成する。
【0023】
その後、一対のカバーゴム層2となる未加硫の一対のカバーゴム部材12同士の間に、被覆コード10と、中間ゴム層3となる未加硫の中間ゴム部材13と、を挟み込み、これらを挟込み方向Bに加圧して加硫を行う。
なお図示の例では、中間ゴム部材13は、一対のカバーゴム部材12同士の間に間隔をあけて挟み込まれる一対の積層部材13aにより構成されている。
【0024】
以上説明したように、本実施形態に係るコンベヤベルト1によれば、スチールコード4が、接着ゴム膜5を介して中間ゴム層3に接着されているので、中間ゴム層3を接着性ゴムとは異なるゴム材料により形成しても、スチールコード4を中間ゴム層3に確実に接着させることができる。したがって、中間ゴム層3を形成するゴム材料の選択の幅を広げることが可能になり、コンベヤベルト1の設計の自由度を高めることができる。
【0025】
なお本実施形態のように、中間ゴム層3が、低物性ゴムにより形成されていている場合、
ベルト長手方向の両端部を接合し、当該コンベヤベルト1を無端帯状に形成するいわゆるエンドレス施工時に、その作業性を向上させることができる。
【0026】
すなわちエンドレス施工時には、まず図3に示すように、コンベヤベルト1のベルト長手方向の両端部1aにおける中間ゴム層3を除去する除去工程を行う。このとき、スチールコード4におけるベルト長手方向の両端部4aを、接着ゴム膜5により被覆された状態で中間ゴム層3から露出させる。
その後、図4に示すように、コンベヤベルト1の前記両端部1aを突き合わせる突き合わせ工程を行う。このとき、コンベアベルト1の両端部1aのうちの一端部1a側において中間ゴム層3から露出したスチールコード4の端部4aと、他端部1a側において中間ゴム層3から露出したスチールコード4の端部4aと、をベルト幅方向Hに交互に配置する。
そして図5に示すように、ベルト幅方向Hに隣り合うスチールコード4の端部4a同士の間に、中間ゴム層3となる未加硫のゴム部材14を配置して加硫することにより、コンベヤベルト1を無端帯状に形成する。
【0027】
ここで本実施形態では、前述のように、中間ゴム層3が、低物性ゴムにより形成されていているので、前記除去工程の際、中間ゴム層3を、例えば治具を用いずに手作業などにより容易に除去することが可能になり、エンドレス施工の作業性を向上させることができる。
これに対して、前記従来技術のように中間ゴム層が接着性ゴムにより形成されている場合には、中間ゴム層が低物性ゴムにより形成されている場合に比べて手間がかかる。
またこの場合、前記除去工程の際、中間ゴム層においてベルト幅方向に隣り合うスチールコードの端部同士の間に位置する間部分だけを除去しなくてはならず、一層手間がかかる。さらにこのとき、前記間部分を除去するために、例えば、治具を用いて該間部分を切り出す場合などには、スチールコードの端部を治具により損傷させないように慎重に作業する必要があり、より一層手間がかかる。
【0028】
また本実施形態では、ベルト幅方向Hで隣り合うスチールコード4を被覆する接着ゴム膜5同士が、中間ゴム層3を介してベルト幅方向Hに隣り合っているので、これらの接着ゴム膜5同士の間に中間ゴム層3が介在せず、これらの接着ゴム膜5同士が一体になっている場合に比べて、中間ゴム層3を形成するゴム材料である低物性ゴムの物性を効果的に奏功させることができる。
【0029】
また、中間ゴム層3を形成するゴム材料である低物性ゴムとして、接着性ゴムよりもコストが低いゴム材料を採用する場合には、前記従来技術のように、中間ゴム層3を接着性ゴムで形成する場合に比べて、コンベヤベルト1の低コスト化を図ることができる。
【0030】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、中間ゴム層3が、低物性ゴムにより形成されているものとしたが、これに限られるものではない。
例えば、中間ゴム層3が、高物性ゴムにより形成されていてもよい。該高物性ゴムの引張強力および引裂強力はそれぞれ、接着性ゴムの引張強力および引裂強力よりも高くなっており、高物性ゴムの引張強力は、例えば14〜30MPa程度となっている。
この場合、前記従来技術のように、中間ゴム層3が接着性ゴムで形成されている場合に比べて、当該コンベヤベルト1の耐久性を向上させることができる。
【0031】
また前記実施形態では、接着ゴム膜5が、中間ゴム層3をベルト厚さ方向に縦断した状態で該中間ゴム層3内に配設されているものとしたが、これに限られるものではない。例えば、接着ゴム膜5の全体が中間ゴム層3内に配設されていてもよい。
【0032】
また前記実施形態では、カバーゴム層2および中間ゴム層3は、いずれも単層構造であるとしたが、積層構造であってもよい。この場合、各層を互いに異なるゴム材料により形成してもよい。
さらに前記実施形態では、コンベヤベルト1が、ベルト長手方向に両端部を有する有端帯状に形成されているものとしたが、無端帯状であってもよい。
【0033】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 コンベヤベルト
2 カバーゴム層
3 中間ゴム層
4 スチールコード
5 接着ゴム膜
12 カバーゴム部材
13 中間ゴム部材
15 ゴム膜部材
B 挟込み方向
H ベルト幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のカバーゴム層と、
これらのカバーゴム層同士の間に配設された中間ゴム層と、
該中間ゴム層内に、ベルト幅方向に間隔をあけて複数埋設されたスチールコードと、を備えるコンベヤベルトであって、
前記スチールコードは、接着性ゴムで形成された接着ゴム膜により被覆されるとともに、該接着ゴム膜を介して前記中間ゴム層に接着されていることを特徴とするコンベヤベルト。
【請求項2】
請求項1記載のコンベヤベルトを形成するコンベヤベルトの製造方法であって、
未加硫の一対のカバーゴム部材同士の間に、未加硫の中間ゴム部材と、未加硫のゴム膜部材により被覆された前記スチールコードと、を挟み込み、これらを挟込み方向に加圧して加硫する加硫工程を有し、
該加硫工程の前に、前記スチールコードを前記ゴム膜部材により被覆するコード被覆工程を有することを特徴とするコンベヤベルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−218942(P2012−218942A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90300(P2011−90300)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】