説明

コンベヤ装置

【課題】駆動力が大きい駆動装置や補助装置を装備することなく、小さな駆動力で物品を一定搬送速度まで加速できるようにする。
【解決手段】駆動ローラ3に載置した物品を、その駆動回転で搬送するコンベヤ装置であって、駆動ローラ3が、駆動回転する軸状部材9に対して一体回転自在、かつ、回転軸芯に沿う方向に移動自在に同芯状に装着された一対の可動回転部材10と、可動回転部材どうしが互いに離間するように弾性付勢する付勢部材11とを備え、可動回転部材の夫々は、回転軸芯Xと略同芯の円錐面状の外周部8に物品を載置するように形成され、かつ、その小径側端部どうしを互いに対向させて軸状部材に装着してあり、軸状部材には、その回転速度に応じた遠心力で揺動自在な揺動部材19を支持してあり、揺動部材に作用する遠心力で、可動回転部材どうしを弾性付勢力に抗して互いに近接移動させる移動機構23を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動ローラの外周部に載置した物品を、その駆動ローラの駆動回転で搬送するコンベヤ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記コンベヤ装置は、駆動ローラの外周部に載置した物品を駆動ローラの回転速度(回転数)に応じた一定搬送速度で搬送するものであり、駆動回転が停止している駆動ローラに載置されている物品を一定搬送速度で搬送するときには、その一定搬送速度に達するまで駆動ローラの駆動回転で物品を加速する必要があるが、駆動ローラの駆動回転を開始して、その駆動ローラに載置されている物品を一定搬送速度に達するまで加速する際には、物品を一定搬送速度で搬送している場合に比べて、駆動ローラに大きな回転負荷が掛かることになる。
従来の上記コンベヤ装置では、外径が略一定の円柱状の駆動ローラを駆動回転させることによって、その外周部に載置した物品を搬送できるように構成してある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−31054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、駆動ローラの駆動回転を開始して、その駆動ローラに載置されている物品を一定搬送速度に達するまで加速できるように、駆動ローラを駆動回転させる駆動装置として、物品を一定搬送速度で搬送しているときには必要としない大きな駆動力を備えた駆動装置を装備する必要があり、コンベヤ装置の製作コストが高くなる欠点がある。
また、駆動ローラの駆動回転を開始して、その駆動ローラに載置されている物品を一定搬送速度に達するまで加速できるように、一定搬送速度に達するまでは、大きなトルクを駆動ローラに伝達できるように、駆動ローラの回転速度を徐々に増速し、一定搬送速度に達した後は、略一定の回転速度で駆動ローラを回転させるように構成する場合は、物品を一定搬送速度で搬送しているときには必要としない大きな駆動力を備えた駆動装置を装備する必要はないものの、インバータなどの駆動ローラの回転速度を制御するための補助装置を別途装備する必要があり、この場合も、コンベヤ装置の製作コストが高くなる欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、物品を一定搬送速度で搬送しているときには必要としない大きな駆動力を備えた駆動装置やインバータなどの補助装置を装備することなく、物品を一定搬送速度で搬送できる程度の小さな駆動力を備えた駆動装置で、物品を一定搬送速度に達するまで加速することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、駆動ローラの外周部に載置した物品を、その駆動ローラの駆動回転で搬送するコンベヤ装置であって、
前記駆動ローラが、駆動回転する軸状部材と、その軸状部材に対して一体回転自在、かつ、回転軸芯に沿う方向に移動自在に同芯状に装着された一対の可動回転部材と、前記可動回転部材どうしが互いに離間するように弾性付勢する付勢部材とを備え、前記可動回転部材の夫々は、回転軸芯と略同芯の円錐面状の外周部に前記物品を載置するように形成され、かつ、その外周部の小径側における端部どうしを互いに対向させて前記軸状部材に装着してあり、前記軸状部材には、その回転速度に応じた遠心力で揺動自在な揺動部材を支持してあり、前記揺動部材に作用する遠心力で、前記可動回転部材どうしを前記付勢部材による弾性付勢力に抗して互いに近接移動させる移動機構を設けてある点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
駆動ローラが、駆動回転する軸状部材と、その軸状部材に対して一体回転自在に同芯状に装着された一対の可動回転部材とを備え、可動回転部材の夫々は、その外周部に物品を載置するように形成されているので、駆動ローラに載置した物品は、その物品のうちの、物品下面側において回転軸芯に沿う方向で対向している左右の物品角部の夫々が、可動回転部材の外周部に接触する姿勢で、各可動回転部材の外周部に亘って支持されることになる。
また、一対の可動回転部材は、その外周部を回転軸芯と略同芯の円錐面状に形成して、その外周部の小径側における端部どうしを互いに対向させて軸状部材に装着してあるので、駆動ローラに載置した物品は、左右の物品角部の夫々が、各可動回転部材における円錐面状の外周部のうちの外径が大きい外周部分、つまり、周速度が速くなる外周部分に接触する姿勢で支持されているほど、速い搬送速度で搬送できるが、一対の可動回転部材が軸状部材に対して回転軸芯に沿う方向に移動自在に同芯状に装着され、可動回転部材どうしが互いに離間するように弾性付勢する付勢部材を備えているので、駆動ローラに載置した物品の搬送速度は、付勢部材による弾性付勢力に抗して可動回転部材どうし近接移動させるほど速くなる。
そして、軸状部材には、その回転速度に応じた遠心力で揺動自在な揺動部材を支持してあり、その揺動部材に作用する遠心力で、可動回転部材どうしを付勢部材による弾性付勢力に抗して互いに近接移動させる移動機構を設けてあるので、駆動ローラに載置した物品の搬送速度は、揺動部材に作用する遠心力が小さくなる駆動ローラの回転速度が遅いほど遅く、揺動部材に作用する遠心力が大きくなる駆動ローラの回転速度が速いほど速くなる。
つまり、図6(a)に例示するように、駆動回転が停止している駆動ローラ3は、揺動部材19に遠心力が作用しないので、可動回転部材10どうしが付勢部材11による弾性付勢力で互いに離間移動しており、その駆動ローラ3に載置されている物品Aは、左右の物品角部A1の夫々が、可動回転部材10の外周部8のうちの、外径が小さい外周部分に接触している姿勢で支持されている。
そして、駆動ローラ3の駆動回転を開始すると、駆動回転の開始直後は、駆動ローラ3の回転負荷が大きいので、駆動ローラ3の回転速度が遅く、揺動部材19に作用する遠心力も小さいが、物品Aに作用する慣性力で駆動ローラ3の回転負荷が徐々に小さくなるので、駆動ローラ3の回転速度が徐々に速くなり、揺動部材19に作用する遠心力も徐々に大きくなって、可動回転部材10どうしが付勢部材11による弾性付勢力に抗して徐々に互いに近接移動し、図6(b)に例示するように、物品Aの左右の物品角部A1の夫々が、可動回転部材10の外周部8のうちの、外径が大きい外周部分に接触している姿勢で支持されるようになって、物品Aを一定搬送速度に達するまで加速できる。
従って、物品を一定搬送速度で搬送しているときには必要としない大きな駆動力を備えた駆動装置やインバータなどの補助装置を装備することなく、物品を一定搬送速度で搬送できる程度の小さな駆動力を備えた駆動装置で、物品を一定搬送速度に達するまで加速することができる。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記可動回転部材の夫々に、その外周部の大径側における端部に開口する中空部を形成してあり、その中空部の内側に、可動回転部材の外周部の大径側ほど回転軸芯から離間する傾斜ガイド面を回転軸芯側に向けて形成してあり、
前記移動機構は、前記可動回転部材毎に対応する揺動部材を前記遠心力で回転軸芯から離間する方向に揺動自在支持して、前記遠心力で揺動している揺動部材の揺動端側で前記可動回転部材夫々の傾斜ガイド面を押圧することにより、前記可動回転部材どうしを前記付勢部材による弾性付勢力に抗して互いに近接移動させるように構成してある点にある。
【0008】
〔作用及び効果〕
可動回転部材の夫々に、その外周部の大径側における端部に開口する中空部を形成してあり、その中空部の内側に、可動回転部材の外周部の大径側ほど回転軸芯から離間する傾斜ガイド面を回転軸芯側に向けて形成してあるので、可動回転部材夫々の傾斜ガイド面を押圧することにより、可動回転部材どうしを付勢部材による弾性付勢力に抗して互いに近接移動させることができる。
そして、可動回転部材夫々の傾斜ガイド面を押圧するにあたって、可動回転部材毎に対応する揺動部材を遠心力で回転軸芯から離間する方向に揺動自在支持して、遠心力で揺動している揺動部材の揺動端側で可動回転部材夫々の傾斜ガイド面を押圧する移動機構を設けてあるので、例えば、揺動部材をリンク機構などで可動回転部材の移動操作具に連係させて、揺動部材に作用する遠心力で、可動回転部材どうしを付勢部材による弾性付勢力に抗して互いに近接移動させるような移動機構を設けてある場合に比べて、構造の簡略化を図って、コンパクトに組み付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1,図2は、物品Aを載置搬送する本発明による駆動式のコンベヤ装置を示し、搬送方向に沿わせて設けてある左右一対のフレーム部1と、それらフレーム部1の間において搬送方向に直交する回転軸芯X周りで回転自在にベアリング2で軸支され、かつ、搬送方向に等間隔で並べてある複数の駆動ローラ3とを備えている。
【0010】
前記駆動ローラ3夫々の一端側にスプロケット4を固定して、各スプロケット4に亘ってチェーン5を巻き掛けてあり、搬送方向の両端に位置する駆動ローラ3のうちの、搬送方向終端側の駆動ローラ3(3a)の一端側には、スプロケット4よりも小径の小径スプロケット6をスプロケット4と共に同じ回転軸芯X周りで一体回転するように固定してある。
【0011】
そして、フレーム部1に設けてある駆動用電動モータ7で小径スプロケット6を駆動させることにより、複数の駆動ローラ3の夫々を駆動回転させて、駆動ローラ3の外周部8に載置した物品Aを、その駆動ローラ3の駆動回転で搬送できるように構成してある。
【0012】
前記駆動ローラ3の夫々は、図3〜図5に示すように、駆動回転させる略円柱状の軸状部材9と、物品Aが外周部8に載置される一対の可動回転部材10と、可動回転部材10どうしが互いに離間するように弾性付勢する付勢部材11とを備え、軸状部材9の両端部の夫々をベアリング2で支持して、それらの軸状部材9の一端側にスプロケット4や小径スプロケット6を固定してある。
【0013】
前記可動回転部材10の夫々は、円錐状筒体12の小径側端部に底板13を一体に備えた円錐台形状に形成して、物品Aが載置される外周部8を回転軸芯Xと略同芯の円錐面状に形成してあるとともに、外周部8の大径側における端部に開口する中空部14を内側に形成してあり、一対の矩形切欠き部15を径方向で互いに対向する箇所に備えた略円形の貫通孔16を底板13に回転軸芯Xと同芯状に形成してある。
【0014】
そして、回転軸芯X方向に沿って長い一対のキー部材17を軸状部材9の外周面に一体に設けて、各キー部材17が矩形切欠き部15に係合するように、軸状部材9を貫通孔16に挿通して、一対の可動回転部材10を、外周部8の小径側における端部どうしを互いに対向させて、軸状部材9に対して一体回転自在、かつ、回転軸芯Xに沿う方向に移動自在に同芯状に装着してある。
【0015】
また、一対の可動回転部材10の夫々における底板13の内面側との接当で、可動回転部材10の軸状部材9からの抜け出しを阻止する抜け止め用フランジ18を軸状部材9に設けてあり、この抜け止め用フランジ18の夫々に、軸状部材9の回転速度に応じた遠心力で揺動自在な揺動部材19を支持してある。
【0016】
前記付勢部材11は、一対の可動回転部材10の底板13どうしの間において、軸状部材9の外周側に遊嵌してある圧縮コイルスプリングで構成してあり、この圧縮コイルスプリング11で各可動回転部材10の底板13を押圧して、可動回転部材10どうしが互いに離間移動するように弾性付勢してある。
【0017】
前記揺動部材19は、球形錘20を先端部に備えた揺動アームで構成してあり、この揺動アーム19の各可動回転部材10毎に対応する一対を、抜け止め用フランジ18夫々の径方向で互いに対向する位置に、可動回転部材10の中空部14内において遠心力で回転軸芯Xから離間する方向に揺動自在に支持し、各揺動アーム19との接当でその回転軸芯X側への揺動範囲を規制する鍔21を設けてある。
【0018】
そして、可動回転部材10夫々の中空部14の内側に、可動回転部材10の外周部8の大径側ほど回転軸芯Xから離間する傾斜ガイド面22を回転軸芯X側に向けて形成し、揺動アーム19に作用する遠心力で、可動回転部材10どうしを圧縮コイルスプリング11による弾性付勢力に抗して互いに近接移動させる移動機構23を設けてある。
【0019】
前記移動機構23は、遠心力で揺動している揺動アーム19の揺動端側、つまり、球形錘20で可動回転部材10夫々の傾斜ガイド面22を圧縮コイルスプリング11側に向けて押圧することにより、可動回転部材10どうしを圧縮コイルスプリング11による弾性付勢力に抗して互いに近接移動させるように構成してある。
【0020】
尚、傾斜ガイド面22は、遠心力で球形錘20が入り込むガイド溝24を径方向で互いに対向する二箇所に設けて、各ガイド溝24の溝底面で形成してある。
【0021】
〔その他の実施形態〕
1.本発明によるコンベヤ装置は、揺動部材に作用する遠心力で可動回転部材の回転軸芯方向端部を直に押圧して、一対の可動回転部材どうしを付勢部材による弾性付勢力に抗して互いに近接移動させる移動機構を設けてあっても良い。
2.本発明によるコンベヤ装置は、揺動部材をリンク機構やワイヤーなどで可動回転部材の移動操作具に連係させて、その揺動部材に作用する遠心力で、可動回転部材どうしを付勢部材による弾性付勢力に抗して互いに近接移動させるような移動機構を設けてあっても良い。
3.本発明によるコンベヤ装置は、一対の可動回転部材に共通の揺動部材を設け、その揺動部材に作用する遠心力で可動回転部材どうしを付勢部材による弾性付勢力に抗して互いに近接移動させる移動機構を設けてあっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】コンベヤ装置の縦断面図
【図2】コンベヤ装置の平面図
【図3】駆動ローラの一部断面側面図
【図4】図3のIV−IV線矢視図
【図5】図3のV−V線矢視図
【図6】作用の説明図
【符号の説明】
【0023】
3 駆動ローラ
8 外周部
9 軸状部材
10 可動回転部材
11 付勢部材
14 中空部
19 揺動部材
22 傾斜ガイド面
23 移動機構
A 物品
X 回転軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ローラの外周部に載置した物品を、その駆動ローラの駆動回転で搬送するコンベヤ装置であって、
前記駆動ローラが、駆動回転する軸状部材と、その軸状部材に対して一体回転自在、かつ、回転軸芯に沿う方向に移動自在に同芯状に装着された一対の可動回転部材と、前記可動回転部材どうしが互いに離間するように弾性付勢する付勢部材とを備え、
前記可動回転部材の夫々は、回転軸芯と略同芯の円錐面状の外周部に前記物品を載置するように形成され、かつ、その外周部の小径側における端部どうしを互いに対向させて前記軸状部材に装着してあり、
前記軸状部材には、その回転速度に応じた遠心力で揺動自在な揺動部材を支持してあり、
前記揺動部材に作用する遠心力で、前記可動回転部材どうしを前記付勢部材による弾性付勢力に抗して互いに近接移動させる移動機構を設けてあるコンベヤ装置。
【請求項2】
前記可動回転部材の夫々に、その外周部の大径側における端部に開口する中空部を形成してあり、その中空部の内側に、可動回転部材の外周部の大径側ほど回転軸芯から離間する傾斜ガイド面を回転軸芯側に向けて形成してあり、
前記移動機構は、前記可動回転部材毎に対応する揺動部材を前記遠心力で回転軸芯から離間する方向に揺動自在支持して、前記遠心力で揺動している揺動部材の揺動端側で前記可動回転部材夫々の傾斜ガイド面を押圧することにより、前記可動回転部材どうしを前記付勢部材による弾性付勢力に抗して互いに近接移動させるように構成してある請求項1記載のコンベヤ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−126706(P2009−126706A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307405(P2007−307405)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】