説明

コーティングパイプ用の方法および組成物

多層プラスチックパイプを製造するための組成物および方法について記載する。一部の組成物の実施形態は、架橋形成可能なポリマー系(例えば、アクリラートまたはエポキシ化学試薬に基づく)と、光開始剤と、顔料、酸化防止剤、光安定剤、または他の添加剤など、1つ以上の添加剤とを含む。代表的な多層プラスチックパイプの製造方法では、ベースパイプ(例えば、架橋ポリエチレンを含む)は、酸化工程(少なくともベースパイプの外面が酸化される)、コーティング工程(プレポリマー系がベースパイプの外面に付けられる)、および硬化工程(プレポリマーが硬化されてパイプの層を形成する)を通じて運ばれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層状のプラスチックパイプまたは管製品に付けられる放射線硬化可能なコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
押出プラスチックパイプまたは管は様々な用途に用いられる。例えば、そのようなプラスチックパイプは水の輸送、より詳細には、特に、飲用の温水および/または冷水、放射床暖房、廃水、および消火スプリンクラーシステムの送達システムにおいて利用される。そのようなプラスチックパイプは、地域暖房パイプや食品産業における製造パイプとしても、また気体およびスラリーなど水以外の液体の運搬を含む他の用途においても用いられることが可能である。そのようなプラスチックパイプの製造に用いられる熱可塑性ポリマーの例には、ポリエチレン(PE)(例えば、耐熱性ポリエチレン、すなわち、PE−RT)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン(PB)、およびそれらの共重合体、ポリ(エチレン−無水マレイン酸)共重合体などポリオレフィン共重合体、ポリ塩化ビニル(PVC)、および塩素化PVC(すなわち、CPVC)などのポリオレフィンが含まれる。そのような熱可塑性ポリマーは、用いられるポリマー系および完成したパイプの所望の特性に応じて、架橋されている場合もあり、架橋されていない場合もある。
【0003】
架橋ポリマーの一例として、架橋されたポリエチレン(PEX)はプラスチックパイプに一般に用いられる。複数の異なる架橋化学試薬および加工技術を利用する様々なPEXが存在する。様々なPEXグレードには、さらに、様々な濃度および組み合わせによる酸化防止剤など他の添加剤および/または安定剤パッケージが含まれる。パイプ用途のPEXについて知られている3つの品種は、PEX−a,PEX−b,PEX−cである。
【0004】
PEX−aの製法(「エンゲル(Engel)法」)では、架橋は熱および高圧の影響下、過酸化物によって誘導される。得られるPEX−a組成物は、炭素−炭素結合を通じて架橋されており、架橋されたポリマー網を形成する。PEX−aの架橋過程は、PEX−b,PEX−cの初期架橋過程とは対照的に、溶融段階において行われる。初期反応は過酸化物(PEX−aについての定義により存在する)の分解によるフリーラジカルの生成であり、それに続いて、このフリーラジカルがPEポリマー鎖から水素を引き抜く。この水素の引き抜きによって新たな炭素ラジカルが与えられ、この新たな炭素ラジカルが近傍のPE鎖と結合して安定な炭素−炭素結合(すなわち、架橋)を形成する。この架橋は、PEX−aでは均一かつ一様であると考えられ、実用用途については70〜90%の範囲の架橋度(通常、CCLと呼ばれる)を与える。PEX−aについては70%を超えるCCLが必要であると、ASTMのF867−04、「架橋ポリエチレン(PEX)管に関する国際標準規格(International’s Standard for Crosslinked Polyethylene(PEX) Tubing)」(2004年5月1日承認)に定められている。
【0005】
PEX−bの製法では、架橋は通常「サウナ雰囲気」において行われ、より長い所定の時間を通じて湿分および熱によって誘導される。最も一般に使用される方法は、それぞれSioplas(登録商標)法(2工程)およびMonosil法(1工程)と呼ばれている。Sioplas法では、パイプ押出の前に、シラン(例えば、ビニルシランなど)がHDPE樹脂にグラフトされる。Monosil法では、パイプ押出中にシランがHDPE樹脂とブレンドされる。両方法では、架橋前工程が化学的に異なるが、実際の架橋の基本原理は実質的に同一である。すなわち、架橋は、熱および湿分の組み合わせによって加速される、押出後の第2の過程において生じる。この組み合わせは活性な「試薬」であ
り、主な加水分解および縮合反応に関与する。概して、押出されたパイプは温水および蒸気浴に暴露される。PEX−aに対する根本的な差は、PEX−bでは、得られる架橋が炭素−炭素結合間ではなく、酸素−ケイ素共有結合(シロキサン「ブリッジ」)が形成されることである。PEX−aと比較して、PEX−bの架橋密度(CCL)は幾らか低く(65〜70%)、また架橋はそれほど一様でない。
【0006】
PEX−cの製法では、架橋は一般に「冷たい」方法と呼ばれる。PEX−cの製法では、架橋過程を進行させるのに化学試薬は不要であり、水素引き抜きおよび続く架橋を起こすのに必要なフリーラジカルを生成するために高エネルギーの電子ビーム(EB)照射が利用される。この高エネルギーの電子ビームは非選択的である。すなわち、化学結合の開裂は制御されない手法で行われる。これによって、目的とする反応(すなわち、HDPEの架橋)と共に副反応を起こす結果となる。PEX−cの架橋密度は、通常、70〜75%の範囲であり、暴露が長すぎると製品の変色および/または脆化を生じ得るので照射時間について注意を払う必要がある。PEX−cは、製造条件が幾らか過酷であるにもかかわらず、長年にわたり成功裡に用いられている。
【0007】
現在、PEX管は、23℃(73.4°F)で約1.10MPa(160psi)、82.2℃(180°F)で約0.69MPa(100psi)、93.3℃(200°F)で約0.55MPa(80psi)の温度および圧力性能を有する。最小破裂性能は、23℃(73.4°F)で約3.275MPa(475psi)(約1.59センチメートル(5/8インチ)以上)である。PEXパイプおよび管に関するさらなる性能特性および要求は、F876−04、「架橋ポリエチレン(PEX)管に関する標準規格(Standard for Crosslinked Polyethylene(PEX)
Tubing)」(2004年5月1日承認)、およびISO9080により与えられる。
【0008】
様々なプラスチックパイプは、多層プラスチックパイプの形態で製造される場合があり、その層のうちの1つ以上は、上述のように押出された熱可塑性プラスチックのプラスチックパイプを含む。多層プラスチックパイプはその産業分野においてよく知られており、本明細書に記載の全用途において用いられている。現在、様々な所望の特性(例えば、酸素バリア性、UV光保護、耐ひっかき性、および機械的性能の向上、長期安定性(F876およびASTM2023による耐塩素性として知られている)、審美的価値を生じるためおよび/またはラベル付けのためなど外観など)を提供するために追加の層が用いられている。
【0009】
酸素バリアについての一例では、そのような追加の層は熱可塑性の架橋されていないポリエチルビニルアルコールから形成され得る。同じ目的で、金属層(例えば、アルミニウムまたはステンレス鋼)が用いられることが可能である。そのような場合の金属層は、酸素バリア性だけでなく、選択された外観も提供する。一部の例では、真空蒸着を用いて金属コーティングが施される場合もあり、最終の金属コーティングはナノメートル範囲の厚さを有する。金属層は強化層としても機能する場合があり、その場合、金属層はより厚くなる、すなわち、マイクロメートル範囲となる。加えて、着色したパイプ(通常、飲用の冷水用には青、温水用には赤)を製造するために、一般に、着色した低密度ポリエチレン樹脂が用いられる。さらに、外部のコーティング層は、架橋されたポリエチレン(例えば、PEX−b)の形態で施される場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
いずれの場合にも、この目的では一般に熱可塑性ポリマー(EvOH、ポリエチレン、PEX−bプレポリマーなど)の共押出技術が用いられる。共押出は、ポリマーパイプに
環形のダイを通過させるときに、そのダイを通じてポリマーベースの材料を押し出すことによって、コーティング層をポリマーパイプ(例えば、PEXパイプ)に施す製法である。共押出製法によって薄いコーティング層を得ることは困難であるため、コーティング層の厚さに関する実際的な下限値は約100μmである。共押出には、例えば、運転条件および使用原料の融通性が限定されていること、高いエネルギーを必要とすること、立ち上げ時間およびパージが必要で高コストであること、また品質管理が困難であること(例えば、一定なコーティング層厚を得ることや、パイプ表面の有効なレベリングが不可能であること)など、他の問題も存在する。PEX−b技術が外側の層に用いられる場合、時間を消費し高コストである第2の運転工程が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一部の実施形態では、可撓性の管状部材は、可撓性の管状ポリマー基材であって、約0.79センチメートル(5/16インチ)以上の外径と、23℃にて約3.275MPa(475psi)以上の破裂強度とを有する基材と、該管状基材の外面上に配置されたコーティングであって、放射線硬化によって架橋された100マイクロメートル未満の厚さを有する1つ以上のポリマー層を含むコーティングと、を備える。
【0012】
他の実施形態では、可撓性の管状部材は、架橋されたポリエチレンを含む可撓性の管状基材と、該管状基材の外面上に配置されたコーティングであって、該管状基材の外面上に配置された放射線硬化によって架橋されたアクリラートベースポリマー層と、該ベース層の上方に配置された放射線硬化によって架橋されたポリマートップコート層とを含むコーティングと、を備える。ベース層および該トップコート層の厚さは各々60マイクロメートル未満であり、かつ、全厚さは100マイクロメートル未満である。管状基材と該架橋されたポリマー層との間の剥離強度は約2.07MPa(300psi)以上である。
【0013】
他の実施形態では、可撓性の管状部材は、ポリマーを含む可撓性の管状基材と、可撓性の管状基材の外面の上方に配置された金属層と、金属層の外面上に配置されたコーティングであって、放射線硬化によって架橋された100マイクロメートル未満の厚さを有する1つ以上のポリマー層を含むコーティングと、を備える。
【0014】
さらに他の実施形態では、架橋されたコーティングを有する可撓性の管状部材を製造するための方法は、可撓性の管状基材の外面を酸化させる工程であって、基材は架橋されたポリエチレンを含む工程と、酸化した該外面上に放射線によって硬化可能なプレポリマー配合物の第1の層を配置する工程と、第1の層を放射線に曝露し、60マイクロメートル未満の厚さを有する第1の架橋されたコーティング層を生成する工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一部の実施形態による多層のプラスチックパイプの斜視図。
【図2】本発明の一部の実施形態による別の多層のプラスチックパイプの断面図。
【図3】本発明の一部の実施形態による多層のプラスチックパイプを製造する方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
幾つかの実施形態を開示するが、本発明の例示的な実施形態を図示および説明する以下の詳細な説明から、当業者にはさらに他の本発明の実施形態も明らかである。したがって、図面および詳細な説明は例示的な性質と見なされるものであり、限定的なものとして見なされるものではない。
【0017】
本発明の一部の実施形態では、所望の特性を提供すべく、放射線硬化されたコーティング層がベースパイプの表面に施される。この放射線硬化されたコーティング層は特定の用
途に応じて様々な程度に架橋され、所定のコーティング層厚を有するように製造されてよい、および/または複数の層を用いて製造されてよい。
【0018】
本発明の一部の実施形態では、ベースパイプ上に1つ以上の層が配置される。そのような実施形態の一部では、ベースパイプはポリオレフィン材料を含む。そのようなパイプは、ポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレン(HDPE))から製造されてよい。しかしながら、本発明は多層のプラスチックパイプの製造に任意の種類のポリエチレン(低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、PE100、およびPE80を含む)が用いられる場合に適用可能である。上述のポリエチレングレードの各々について、ポリマー鎖は三次元のポリマー網を形成するように架橋されてよい(例えば、PEX−a,PEX−b,PEX−cなどのPEXパイプ)。
【0019】
本明細書に記載の放射線硬化されたコーティング層(およびそれらのコーティング層を施すために用いられる方法)は、従来用いられている広範なパイプ寸法および構成に適用可能である(例えば、外径(OD)、内径(ID)、壁厚、最終のパイプ構成における層の数に関連するもの、およびそれらの組み合わせ)。
【0020】
本明細書に記載の完成したパイプは、特定の破裂強度性能(例えば、ASTM876−04により与えられる破裂強度性能)を有してよい。例えば、23℃での破裂強度は、約2.76MPa(400psi)以上、約3.275MPa(475psi)以上、または約3.79MPa(550psi)以上であってよい。
【0021】
図1には、本発明の実施形態による多層のプラスチックパイプの斜視図を示す。多層のプラスチックパイプ20は管状部材22を備え、管状部材22の外面上に第1の層24が配置されている。第1の層24は、本明細書に記載のコーティング層のいずれかであってよい。
【0022】
加えて、他のコーティング構成も可能である。例えば、図2には、本発明の一部の実施形態による別の多層のプラスチックパイプ20’の断面図を示す。パイプ20’は管状部材22’を備える。管状部材22’は、第1のコーティング層24’と、第1のコーティング層24’の上方に配置された第2のコーティング層26とを備える。さらに以下に説明するように、そのような多層パイプ20’は、管状部材22’に複数のコーティングステージを通過させることによって製造されてよい。加えて、この複数の層は、第1の層24’が1つ以上の特性を提供し第2の層26が第1の層24’と同じまたは異なる1つ以上の特性を提供するように、様々な特性を提供すべく組み合わせられてよい。
【0023】
他の実施形態では、ベースポリマーパイプ(例えば、本明細書に記載のベースポリマーパイプのうちのいずれか)は、ベースポリマーパイプの外面上に配置された金属層を有する。次いで、1つ以上の層からなるコーティングが、金属層の外面上に配置されてよい。例えば、本明細書に記載のコーティング系は(本明細書に記載の異なるコーティング配合物のいずれか、以下に提供される複数のコーティング層のいずれか、および本明細書に記載のコーティング層の組み合わせのいずれかを含む)、金属層の外面上に配置されるコーティング系として用いられてよい。金属層自体は、アルミニウムまたはステンレス鋼など、任意の適切な金属を含んでよい。
【0024】
特定の実施形態では、プラスチックパイプは、厚さを通じて非常に精密に制御された、薄い硬化コーティング層厚で製造されてよい。例えば、コーティング全厚は、100マイクロメートル未満、80マイクロメートル未満、60マイクロメートル未満、50マイクロメートル未満、40マイクロメートル未満、30マイクロメートル未満、20マイクロ
メートル未満、10マイクロメートル未満、7〜80マイクロメートルの間、7〜60マイクロメートルの間、7〜40マイクロメートルの間、7〜30マイクロメートルの間、7〜20マイクロメートルの間、または7〜15マイクロメートルの間であってよい。コーティング全厚は1つのコーティング層によって形成されてもよく、複数のコーティング層によって形成されてもよく、各層の厚さはそれぞれ50マイクロメートル未満、40マイクロメートル未満、30マイクロメートル未満、20マイクロメートル未満、10マイクロメートル未満、7〜50マイクロメートルの間、7〜40マイクロメートルの間、7〜30マイクロメートルの間、7〜20マイクロメートルの間、または7〜15マイクロメートルの間であってよい。対照的に、典型的な共押出システムでは、100〜200マイクロメートルの間の最小厚さが提供され、より大きな層厚の変動性が伴うので、したがって、パイプの外径の変動性もより大きい。
【0025】
一部の実施形態では、共押出製法に比べ、グレード間の切り替えを短時間で単純かつ簡便に行うことができる。例えば、異なるプレポリマー配合物は、異なる特性を提供する異なる添加剤を含有してよい。コーティング系から古い配合物を除去して新たな配合物を導入するための時間および材料は、共押出製法に比べ、比較的少ない。
【0026】
本明細書に記載のコーティング層の一部は、着色する材料を含んでよい。さらに、多層のプラスチックパイプは、随意の光沢度および/または平滑仕上げを具備してよい。一部の実施形態ではコーティング組成物は透明であり、他の実施形態ではコーティング組成物は色を有する。色の程度は随意であり、色設計の融通性は限定されない。一部の実施形態では、色の層は半透明であってよい。そのような半透明なコーティング層では、パイプ上にコーティング層を通じて視認可能な印刷を行うことができるので、その印刷は摩滅および物理的な損傷から保護される。
【0027】
本発明の一部の実施形態では、多層のプラスチックパイプには、UV抵抗性を与える1つ以上の層が提供されてよい。UV抵抗性は、例えば、ヒンダードアミン光安定剤(一般にHALS化合物と呼ばれる)、ナノ粒子(酸化亜鉛など)、またはUV損傷を減少させる他の化合物または物質を添加することによって得られてよい。
【0028】
一部の実施形態では、コーティング層のうちの1つ以上は酸素バリア性を提供する。酸素バリア性コーティングはPEX管および他のプラスチックパイプに対し施されてよく、一部の実施形態では床下暖房システムに用いられる。酸素バリア性によって、プラスチックパイプを通じてパイプ内の液体に酸素が達するのが防止または遅延される。一般的に、パイプ内の液体に入り込む酸素の減少によって、ボイラー、配管、および鉄分を含む他の周辺部品が腐食から保護される。
【0029】
加えて、層のうちの1つ以上によって、耐ひっかき性および耐摩滅性、向上した機械的性能、抗微生物性、帯電防止性、接着性、パイプ表面のレベリングが提供されてよい。また、上述の機能のうちの2つ以上が単一の層において提供されてもよい。
【0030】
図3には、本発明の実施形態による製法の図を示す。工程101では、ベースパイプがリールその他の機構に供給される。ベースパイプは、上述のベースパイプの種類のうちのいずれであってもよい(例えば、上述のPEXパイプのうちのいずれか)。他の実施形態では、上述の製法のうちのいずれかによってベースパイプが同ライン(in−line)で製造されてもよい。
【0031】
一部の実施形態では、ベースパイプは、ベースパイプの表面を酸化させるために、酸化剤処理(工程103)を受ける。この処理は、火炎処理(示すように)、コロナ処理、プラズマ処理、またはパイプの外面を酸化させる他の適切な処理のうちの1つ以上を含んで
よい。酸化処理は、一般に、処理されている表面の表面エネルギーを、例えば、0.5mN(50ダイン)を超えるまで、0.6mN(60ダイン)を超えるまで、0.7mN(70ダイン)を超えるまで、0.8mN(80ダイン)を超えるまで上昇させるか、または、0.2mN(20ダイン)以上、0.3mN(30ダイン)以上、0.4mN(40ダイン)以上、または0.5mN(50ダイン)以上、上昇させる。一実施形態では、酸化処理は、界面エネルギーを約0.3mN(約30ダイン)から、0.7mN(70ダイン)を超えるまで上昇させる。
【0032】
一部の実施形態では、さらに以下に記載するように、コーティング層の化学組成は、酸化されていない表面と形成される、より低いエネルギーの結合に比べ、酸化された外面と、より高いエネルギーを有する強力な結合を形成するものである。例えば、以下に記載のコーティング配合物中の酸性成分は、場合によっては、水素結合および/または共有結合を通じてパイプの外面と相互作用し得る。配管材料の屈曲によって生じる力を収容するために、一部の可撓性パイプ用途には比較的高いレベルの接着が有利である。ポリオレフィンに対する接着は、任意のコーティング系(特に、放射線硬化されたコーティング)を用いて達成することは極めて困難である。コーティングおよび本明細書に記載の製法は、ポリオレフィンに対する優れた接着性を生じる(ASTM D4541において用いられるポジテスト(PosiTest(登録商標))引き剥がし接着試験装置(Pull−Off Adhesion Tester)を用いた試験による、約2.07MPa(約300psi)より大きい、約2.41MPa(約350psi)より大きい、約2.76MPa(約400psi)より大きい、約3.10MPa(約450psi)より大きい、約3.48MPa(約500psi)より大きい、約4.14MPa(約600psi)より大きい引き剥がし接着強度)。
【0033】
次いで、パイプはコーティング処理を受け(工程105)、第1のコーティング層用のプレポリマー組成物がパイプの表面(例えば、外面)上に配置される。このコーティング処理では、パイプの表面上に正確かつ均等にプレポリマー組成物を展開するのに適切な機構が用いられる。例えば、コーティング処理には、スプレーコーティングシステム、カーテンコーティングシステム、フラッドコーティングシステム、ワイプコーティングシステム、もしくはバキュームコーティングシステム、またはパイプの表面上にプレポリマー組成物を配置する他のシステムが用いられてよい。パイプのコーティング処理は、ほぼ水平な経路で行われてもよく、ほぼ垂直な経路で行われてもよい。
【0034】
一部の実施形態では、コーティングシステムはバキュームコーティングシステムであり、パイプをプレポリマー組成物に通過させる。このパイプがポートを通じてコーティングシステムを出て、ポートを通じて真空とされることによって、パイプの表面に沿ってプレポリマー組成物が平滑化されるのが補助される。一部の実施例のコーティングシステムは、DVシステムズ社(DV Systems)製のバキュームコーティングシステムである。
【0035】
一部の代表的な製法では、ベースパイプは上述のコーティングシステムのうちのいずれかを通され、コーティングシステムはほぼ包囲され、真空下にある。そのため、ベースパイプが包囲されたコーティングシステムを出るとき、パイプの表面に沿って空気が引き戻される。これによって、過剰なプレポリマー溶液がコーティングシステムへと引き戻されるとともに、ベースパイプの周囲にプレポリマー溶液の均一なコーティングが提供されることになる。そのような動作によって、パイプの表面の有効なレベリングも提供され得る。
【0036】
次いで、パイプは硬化装置を通される(工程107)。一部の実施形態では、硬化装置はパイプが通され、パイプの表面上のプレポリマー組成物が放射線に曝露されるチャンバ
である。放射線は、紫外(UV)放射線および/または電子ビーム(EB)放射線である場合がある。硬化装置中のパイプの滞留時間は、プレポリマー溶液を部分的にまたは完全に硬化させてパイプの表面上にコーティング層を形成するのに十分なだけ長い。十分な硬化を行うために、複数の硬化ステージが連続して配置されてもよい。コーティング層上に放射線を与えるための様々な種々の構成が用いられてよい。例えば、コーティング層に対し十分な放射エネルギーを与えるために、複数のUVランプまたはEBエミッタが連続して用いられてもよい。システムのスピード、およびその結果として得られるシステムの硬化部分におけるコーティング層の滞留時間は、コーティング層配合物の所望の架橋レベルについて調節可能である。次いで、コーティングされたパイプがリール上に巻かれる(工程109)。
【0037】
なお、図3には単一のコーティングステージ/硬化ステージしか示していないが、複数のコーティングステージ/硬化ステージを連続して配置することによってパイプ上に複数の層が配置されてよい。一部の実施形態では、層間の接着を促進するために、第1のコーティング層が全く硬化されなくてもよい。次いで、パイプは続くステージ(例えば、図3に関連して先に述べたようなステージ)を通されてよく、このステージで別の層が施され、パイプ上で部分的にまたは完全に硬化される。この製法において、任意の数のコーティングステージが提供されてよい(例えば、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、1〜10の間、1〜5の間、または1〜3の間のコーティング層)。一部の実施形態では、パイプの異なる層は異なる特性を与える一方、他の実施形態では、2つ以上の層がパイプに同じまたは同様の特性を与えてよい。
【0038】
一部の実施形態では、層の各々は、完全にまたはほぼ完全に硬化されてよく、他の実施形態では、層間の接着を促進するために、中間の層のうちの全部または一部が部分的にしか硬化されなくてもよい。2つ以上の層が用いられ、中間層が完全には硬化されない一部の実施形態では、中間層については酸化工程103が省略されてよい。
【0039】
さらにまた、放射線硬化可能なコーティング配合物の架橋前に、選択された表面のレベリングを行うことは、放射線硬化されたコーティングのさらに別の潜在的な属性である。これは、硬化(架橋)前には放射線硬化可能なプレポリマー配合物は非常に低粘度の液体(ポリマーが含まれていない)であり、したがって、共押出製法とは対照的に、プレポリマー配合物は実際に表面を平らにするという事実によるものである。
【0040】
なお、本明細書に記載のプレポリマー組成物のうちの多くは、硬化装置における滞留時間を比較的短くして硬化させることが可能であり(そうした放射線硬化されるコーティング層は1秒以下で硬化する)、これによって、比較的簡潔な製法レイアウトおよび/または非常に急速な機械スピードが可能となる。例えば、本明細書に記載のプレポリマー組成物および製法構成のうちの一部では、約70〜100メートル/分以上の機械スピードが可能である。加えて、本発明の製法では、従来の共押出システムより少ない電力しか消費せず、従来の共押出製法におけるグレード切替と比較してプレポリマーシステム間を容易に切り替えられるため、製品等級間の切り替えに必要な時間は、通常、大幅に減少する。また、本発明の製法のうちの一部はパイプを実質的に加熱しないので、冷却装置(または水冷処理後に続く任意の乾燥処理)は不要であり、完成したパイプを即座にスプール上に巻くことができる。
【0041】
さらに、一部の実施形態では、本発明の製法は従来の押出法と比べ、より一定かつ再現可能な寸法をパイプに与えることができる。プレポリマー組成物が押出によって付与されないので、共同押出の層よりも材料の層を格段に薄くかつ一定にできる。本発明の一部の実施形態において可能な厚さの低減によって、材料消費が低減される。
【0042】
本発明の一部の実施形態では、放射線硬化可能なプレポリマー配合物は、1つ以上の重合な可能な成分と、パイプの目標の特性を向上させる様々な添加剤と、随意で、放射線に曝露されたときに架橋反応を開始させる光開始剤系とを含む。これらの配合物のうちの一部はUV放射線によって硬化させることができ、他の配合物は電子ビーム(EB)放射線など他の種類の放射線によって硬化するように適合されることができる。以下にさらに説明するように、プレポリマー系がEB硬化される一部の実施形態では、配合物は光開始剤系を含まなくてよい。また、ノバキュア(Novacure)放射線硬化可能組成物(アシュランドケミカル社(Ashland Chemical))など一定のベースオリゴマーが用いられる場合、光開始剤系はEB硬化またはUV硬化である必要はない。
【0043】
光開始剤系および適切なモノマー/オリゴマー配合物の組み合わせが、UV硬化されるプレポリマーシステムに含まれてもよい。一部の代表的なUV硬化可能ポリマーには、フリーラジカルと反応することの可能な炭素−炭素二重および/または三重結合(アクリラートおよびメタクリラート、アリル基、スチレン、チオール/チオレン、および/またはそれらの官能基の任意の組み合わせ、および/またはそれらの任意の誘導体など)が含まれる。プレポリマー系は光誘起カチオン重合系であってもよい。カチオン架橋形成可能な系の代表的な化学試薬には、脂環族エポキシおよび他の環状エーテル(オキセタンなど)、ビニルエーテル、およびスチレン誘導体が含まれる。加えて、マレイミド化学試薬に基づく光開始剤フリー系が用いられてもよい。これらのおよび他の適切な放射線硬化可能な化学試薬が所望の目標特性を得るために用いられてもよい。
【0044】
光子が通常では色素光開始剤に吸収されるUV硬化とは対照的に、本発明の電子ビーム(EB)硬化では、高速な電子がそのエネルギーをバルク材料自体とのクーロン相互作用によって失うという事実を利用する。簡単に述べると、これは、反応性のコーティング配合物が電子ビーム源に照射されるとき、バルク材料中にフリーラジカルが生成して重合が開始することを意味する。本明細書に記載の配合物のうちのいずれがEB硬化製法において利用されてもよい。上述のように、EB硬化において光開始剤が配合物に含まれなくてもよい。
【0045】
プレポリマー配合物の重合可能な成分には、モノマー(すなわち、低粘度の反応性希釈剤)、オリゴマー、またはプレポリマー系が含まれてもよく、それらの組み合わせが含まれてもよい。選択される重合機構にかかわらず、配合物に用いられるオリゴマーまたはプレポリマーは、1〜250,1〜200,1〜100,1〜75,1〜60,1〜50,1〜25,または1〜10個のモノマー単位を含んでよい。オリゴマーまたはプレポリマーの分子量は500〜10000,500〜7500,500〜5000,500〜3000,1000〜10000,1000〜7500,1000〜5000,または1000〜3000であってよい。プレポリマー配合物の重合可能成分のうちの1つ以上は、硬化したコーティング層のガラス転移温度を変更するために添加されてよい。一部の実施形態では、硬化されたコーティング層のガラス転移温度がパイプの最低使用温度またはその付近であることが望ましい。そのため、目標ガラス転移温度は、約−5℃、約−5℃以上、約−10℃以上、約−10℃〜約0℃、または約−10℃〜約10℃であってよい。
【0046】
一部の実施形態では、配合物中に存在するモノマーおよびオリゴマー/プレポリマーはすべて、分子当たり1つ以上の重合可能部位を有し、一部の場合には、存在する成分(例えば、オリゴマー/プレポリマー)のうちの1つ以上は、架橋を容易にするために多官能性である。これらの多官能成分はフリーラジカル重合に適合されていてもよく、主な重合可能単位としてアクリラートおよび/またはメタクリラート官能基を含んでもよい。カチオン性の化学試薬が利用される場合、主成分として環状エーテル(脂環族のエポキシなど)を用いてカチオン誘導架橋が行われてもよい。本技術分野において知られているように、分子当たり1単位の不飽和および/または環状のエーテルは単官能、分子当たりの2単
位の不飽和および/または環状のエーテルは二官能、などのように呼ばれる。本発明の一部の実施形態では、配合物の成分のうちの1つ以上は、分子当たりの2つ以上のエチレン性不飽和基および/または環状エーテルを含む。
【0047】
硬化可能な組成物は、100%以下の1つ以上のオリゴマーおよび/またはモノマーを含むことが可能である。例えば、組成物は、約10%〜100%、約10%〜約99%、約50%〜100%、約50%〜約99%、約70%〜100%、約70%〜約99%、約80%〜100%、または約80%〜約99%の1つ以上のオリゴマーおよび/またはモノマーを含んでよい。一部の実施形態では、プレポリマー配合物は、約10%か〜約80%、約20%〜約60%、約25%〜約50%、または約25%〜約40%のオリゴマーまたはプレポリマーを含んでよい。加えて、一部の実施形態では、プレポリマー配合物は、約10%〜約80%、約20%〜約60%、約25%〜約50%、または約25%〜約40%のモノマーまたは反応性希釈剤を含んでよい。
【0048】
特に適切なモノマーおよび反応性希釈剤には、アクリラート系の化合物またはメタクリラート系の化合物が含まれる。例として、1,6−ヘキサンジオールジアクリラート、1,3−ブチレングリコールジアクリラート、ジエチレングリコールジアクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、ネオペンチルグリコールジアクリラート、ポリエチレングリコール200ジアクリラート、テトラエチレングリコールジアクリラート、トリエチレンジアクリラート、ペンタエリトリトールテトラアクリラート、トリプロピレングリコールジアクリラート、エトキシル化ビスフェノール−Aジアクリラート、プロピレングリコール(モノ)ジメタクリラート、トリメチロールプロパンジアクリラート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリラート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌラートのトリアクリラート、ジペンタエリトリトールヒドロキシペンタアクリラート、ペンタエリトリトールトリアクリラート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリラート、トリエチレングリコールジメタクリラート、エチレングリコールジメタクリラート、テトラエチレングリコールジメタクリラート、ポリエチレングリコール−200ジメタクリラート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリラート、ネオペンチルグリコールジメタクリラート、ポリエチレングリコール−600ジメタクリラート、1,3−ブチレングリコールジメタクリラート、エトキシル化ビスフェノール−Aジメタクリラート、トリメチロールプロパントリメタクリラート、1,4−ブタンジオールジアクリラート、ジエチレングリコールジメタクリラート、ペンタエリトリトールテトラメタクリラート、グリセリンジメタクリラート、トリメチロールプロパンジメタクリラート、ペンタエリトリトールトリメタクリラート、ペンタエリトリトールジメタクリラート、ペンタエリトリトールジアクリラート、アミノプラスト(メタ)アクリラート、アクリル化油(アマニ油、大豆油、ヒマシ油など)などが挙げられる。
【0049】
他の適用可能な重合可能化合物には、(メタ)アクリルアミド、マレイミド、酢酸ビニル、ビニルカプロラクタム、チオール、およびポリチオールが含まれる。スチレン誘導体も本発明の機構に容易に適用することが可能である。これらのモノマーおよび反応性希釈剤のうちのいずれかの組み合わせが用いられてもよい。
【0050】
有用なオリゴマーおよびプレポリマーには、アクリラート官能基を有する樹脂が含まれる。そのような反応性化合物は、ポリウレタンアクリラート、エポキシアクリラート、シリコーンアクリラート、およびポリエステルアクリラートと同様の構造を有してもよく、それらから誘導されてもよい。他の代表的な化合物は、(メタ)アクリル化エポキシ、(メタ)アクリル化ポリエステル、(メタ)アクリル化シリコーン、(メタ)アクリル化ウレタン/ポリウレタン、(メタ)アクリル化ポリブタジエン、(メタ)アクリル化アクリルオリゴマーおよびポリマーなどである。加えて、これらのオリゴマーまたはプレポリマーの任意の組み合わせも用いられてよい。
【0051】
アクリラート化学試薬に基づくフリーラジカル化学試薬については、重合可能成分の具体例には、二官能性ウレタンアクリラートオリゴマー(サイテック社(Cytec)から入手可能なエベクリル(Ebecryl)4833など)、単官能性アクリラートモノマー(CD420,SR285,CD9055など。いずれもサートマー社(Sartomer)から入手可能)、単官能性ウレタンアクリラートモノマー(Cytecから入手可能なEbecryl1039など)が含まれる。
【0052】
一部の実施形態では、配合物には、カチオン重合による架橋形成のための反応中間体が含まれる。本発明の代表的なカチオン系は、環状エーテル、脂環族エポキシ、オキセタン、ポリオール、およびビニルエーテルに基づく。本発明におけるベース材料として有用な脂環族エポキシドの例は、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシラート(UVR6110、ユニオンカーバイド社(Union Carbide))、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジパート(UVR6128、ユニオンカーバイド社)、メチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシラート、エチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシラート、プロピル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシラート、イソプロピル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシラート、n−ブチル、s−ブチル、およびt−ブチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシラート、様々なアミルおよびヘキシル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシラート、メチル3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシラート、エチル3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシラート、メチル3,4−エポキシ−4−メチルシクロヘキサンカルボキシラート、エチル3,4−エポキシ−4−メチルシクロヘキサンカルボキシラート、ブチル3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシラート、ブチル3,4−エポキシ−4−メチルシクロヘキサンカルボキシラート、メチル3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシラート、エチル3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシラート、ブチル3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシラート、ジアルキル4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボキシラートや、混合ジアルキル4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボキシラートなどである。上述の化合物の任意の組み合わせの混合物(上述の脂環族エポキシドのうちのいずれかの混合物も含め)も用いられてよい。
【0053】
カチオン系が用いられる架橋形成処理を促進するために、上述のカチオン性エポキシ架橋形成化合物のうちのいずれかと共にポリオールが用いられてもよい。例えば、TONE(ダウケミカル社(Dow Chemical))ポリオール、デンドリマー型ポリエステルポリオール(例えば、パーストープ社(Perstorp)によってBOLTORNの名称で販売されているもの)、または他の適切なポリオールである。
【0054】
光開始剤の用いられる一部の実施形態では、光開始剤は変色を引き起こさず、揮発性が低く、硬化処理において望ましくない副反応を導かない。本発明において用いられる適切な光開始剤の例には、ベンゾフェノン誘導体を含む光開始剤(エサキュア(Esacure)(登録商標)ONE(ランベルティ(Lamberti)社)(二官能性−α−ヒドロキシケトン)、Esacure(登録商標)TPO(Lamberti)(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド)、Esacure(登録商標)KIP100F(Lamberti)(オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1,4−(1−メチルビニル)プロパノンおよび2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(モノマー))、Esacure(登録商標)KTO46(Lamberti)(トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、α−ヒドロキシケトンおよびベンゾフェノン誘導体の混合物)、イルガキュア(Irgacure(登録商標))2959(チバ社(Ciba))(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)、および、Irgacure
(登録商標)819(Ciba)(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド)、Esacure(登録商標)KIP150(Lamberti)(オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン])など)が含まれる。加えて、相乗剤および/または共開始剤が、処理および硬化条件を改良するために、また随意では本発明の目的のために用いられてもよい。具体例には、アクリル化アミン相乗剤(Ebecryl(登録商標)P104、Ebecryl(登録商標)P115、Ebecryl(登録商標)7100(いずれもCytecIndustriesより提供)など)が含まれる。
【0055】
本発明に適切な追加の光開始剤には、ベンゾフェノン誘導体、すなわち、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、およびベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類が含まれる。他の有用な光開始剤は、例えば、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(Irgacure(登録商標)651、Ciba)および2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセト−フェノンなど、ジアルコキシアセトフェノン類による。光開始剤のさらに別のグループには、カルボキシル基に直接結合した1つ以上の芳香族の原子を有するアルデヒドおよびケトンのカルボニル化合物が含まれる。これらの特定の開始剤には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、o−メトキシベンゾフェノン、チオキサントン、イソプロピルチオキサントンアセトナフタレンキノン、メチルエチルケトン、バレロフェノン、α−フェニル−ブチロフェノン、p−モルフォリノプロピオフェノン、ヘキサノフェノン、ジベンゾスベロン、4−モルフォリノベンゾフェノン、4’−モルフォリノデオキシベンゾイン、p−ジアセチルベンゼン、4−アミノベンゾフェノン、4’−メトキシアセトフェノン、α−テトラロン、9−アセチルフェナントレン、2−アセチルフェナントレン、10−チオキサンテノン、ベンズアルデヒド、3−アセチルフェナントレン、3−アセチルインドン、9−フルオレノン、1−インダノン、1,3,5−トリアセチルベンゼン、チオキサンテン−9−オン、キサンテン−9−オン、7−H−ベンザ[de]−アントラセン−7−オン、フルオリン−9−オン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−ベンゾフェノン、1−ナフトアルデヒド、1’−アセトナフトン、2’−アセトナフトン、2,3−ブテジオン、アセトナフテン、および、ベンザ[a]アントラセン−7,12−ジエンが含まれる。ホスフィン(トリフェニルホスフィン、トリ−o−トルイルホスフィン、およびビスアシルホスフィンオキシドの誘導体など)も、有用な光開始剤である。加えて、上述の光開始剤の任意の組み合わせも用いられてよい。
【0056】
一部の実施形態では、配合物には、トリアリールスルホン酸塩および/またはジアリールヨードニウム塩由来のものを含むカチオン重合用の光開始剤が含まれる。基本的な光化学反応機構には幾つかの電子移動工程が含まれるが、実際の結果としては、強いプロトン酸(超酸)が生成される。この酸が活性部位であり、続いてカチオン重合を開始させる。そのような光開始剤の2つの例は、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモナート(ArSbF)およびトリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスファート(ArPF)である。これらの光開始剤は、通常、プロピレンカーボナートの50%溶液として市販されている。与えられた2つの例の間の主な差は、その重合速度に対する影響である。より大きな寸法のアンチモナートアニオンはホスファート対イオンより相当に大きな重合速度を与える。
【0057】
対応するジアリールヨードニウム塩は同様の光分解機構を有し、やはり超酸を発生させる。加えて、ヨードニウム塩は、スルホニウム塩の場合と異なり、光化学経路に代えて、触媒的な熱活性化過程によって超酸を与えることができる。
【0058】
硬化可能な組成物は、10%以下の1つ以上の光開始剤を含むことが可能である。例えば、組成物は、約7.5%、約0.25%〜約4%、約2%〜約10%、約4%〜約9%
、または約6%〜約9%の1つ以上の光開始剤を含むことが可能である。他の実施形態では、硬化可能な組成物は光開始剤をほぼ含まない。
【0059】
プレポリマー配合物における添加剤(ナノサイズ材料または他の酸素バリア添加剤、UV放射線吸収剤、安定化剤、着色料、難燃剤、静電気低減剤、および/または摩擦低減剤)は、組成物の強度、色調、UV抵抗性、安定性、および他の特性に影響を与えることができる。加えて、一定の添加剤または添加剤の組み合わせは、それらの特性の任意の組み合わせを有する層を生じ得る。例えば、一部の色素は何らかの酸素バリア性を提供してよく、また色素は、組み合わせまたは特性を提供するために酸素バリア添加剤および/またはUV保護添加剤に加えて配合物に添加されてもよい。
【0060】
一部の実施形態では、硬化可能な組成物は例えば、硬化した組成物を酸化および劣化から保護するために、1つ以上のヒンダードアミン光安定剤(HALS)を含む。ヒンダードアミン光学安定剤の例には、Tinuvin123(Ciba)、Tinuvin622(Ciba)、Tinuvin770(Ciba)、Cyasorb3853(Cytec)、Cyasorb3529(Cytec)、およびHostavinPR−31(Clariant)が含まれる。硬化可能な組成物は、約15%以下の1つ以上のヒンダードアミン光安定剤を含むことが可能である。例えば、組成物は、約0.1%〜約5%または約0.1%〜約3%の1つ以上のヒンダードアミン光安定剤を含むことが可能である他の実施形態では、硬化可能な組成物は、ほぼ光安定剤を含まない。
【0061】
一部の実施形態では、硬化可能な組成物は、例えば、UV放射線によって引き起こされる損傷からプラスチック管22を保護するために、UV放射線を吸収可能な1つ以上の物質(「UV吸収剤」)を含む。UV吸収剤の実施例には、ベンゾトリアゾール誘導体、二酸化チタン、酸化亜鉛、および酸化セリウムが含まれる。硬化可能な組成物は、約15%以下の1つ以上のUV吸収剤を含むことが可能である。例えば、組成物は、約0.1%〜約5%または約0.1%〜約3%の1つ以上のUV吸収剤を含むことが可能である他の実施形態では、硬化可能な組成物は、ほぼUV吸収剤を含まない。
【0062】
一部の実施形態では、硬化可能な組成物は、色素、顔料分散剤、染料、または他の着色料など、1つ以上の加色材料を含む。これらの加色材料の例には、クロマキュア(Chromacure)TPGDAブルー(Blue)HS(プラスチカラーズ(Plasticolors)社)、TPGDAレッド(Red)170(Plasticolors)、およびTPGDAパープル(Purple)(Plasticolors)が含まれる。硬化可能な組成物は、約15%以下の1つ以上の加色材料を含むことが可能である。例えば、組成物は、約5%以下、約0.5%〜約5%、約4%〜約10%、または約6%〜約8%の1つ以上の加色材料を含むことが可能である。他の実施形態では、硬化可能な組成物は、ほぼ加色材料を含まない。
【0063】
一部の実施形態では、硬化可能な組成物は1つ以上のナノサイズ材料を含む(例えば、硬化された組成物の強度を向上させるように、UV損傷に対する抵抗を加えるように、静電気の蓄積を減少させるように、ひっかきおよび摩滅損傷に対する抵抗を向上させるように、抗微生物特性を提供するように、または気体浸透性を減少させるように分散される)。本明細書において用いられる「ナノサイズ」は、約100nm未満の1つ以上の寸法を意味する。ナノサイズ材料の例には、クレイ、金属酸化物、カーボンナノチューブ、および有機粒子が含まれる。ナノサイズ材料の形態は、例えば、粒子、繊維、および/またはチューブである。硬化可能な組成物は、約15%以下の1つ以上のナノサイズ材料を含むことが可能である。例えば、組成物は、約10%以下、約0.1%〜約5%、または約0.5%〜約3%の1つ以上のナノサイズ材料を含むことが可能である。他の実施形態では、硬化可能な組成物は、ほぼナノサイズ材料を含まない。
【0064】
一部の実施形態では、硬化可能な組成物は、約10〜60%の二官能性のウレタンアクリラートオリゴマーEbecryl4833(Cytec)、約20〜70%の単官能性アクリラートモノマーCD420(Sartomer)、約0.1〜8%の光開始剤の混合物(ベンゾフェノン誘導体、α−ヒドロキシケトン誘導体、および/またはビスアシルホスフィンオキシド誘導体を含む)、約0.1〜5%のベンゾトリアゾールUV吸収剤、約0.1〜5%のヒンダードアミン光安定剤Cyasorb3853(Cytec)、単官能性または二官能性のアクリラートモノマーに分散させた約0.1〜15%の有機顔料、約0〜40%の顔料系(顔料、顔料分散剤/安定剤、界面活性剤、溶媒、もしくは反応性希釈剤/モノマー、または染料を含む(例えば、のみを含む))、および硬化された組成物の摩擦係数を減少させるための約0〜10%の表面スリップ剤を含有する。
【0065】
以下は、本発明の実施形態についての代表的な範囲の一覧である:
【0066】
【表1】

[実施例]
以下に開示する代表的な硬化可能な組成物は、組成物の特定の成分を組み合わせることによって、例えば、高剪断分散機または低速液体混合機を用いて、均一な組成物が生成するまでバッチで混合することによって、調製した。PEX−aパイプは、パイプの表面を
酸化させるために火炎処理ステージを通過させてから、パイプの表面上へコーティング組成物の層を供給するコーティングシステムを通した。コーティングは、確実にパイプの表面上に配合物が均一に供給されるように供給した。
【0067】
次いで、コーティングしたパイプを、パイプのコーティング組成物を硬化させるのに十分な期間にわたって、市販のUVランプシステムによってUV放射線に暴露した。次いで、パイプをスプール上に巻いた。
【0068】
以下に記載する2層の系では、第1の層を完全には硬化させず、続けて第2のコーティングシステム(第1のコーティングシステムと同様)を通した。第2の外側のコーティング配合物を第1の部分的に硬化した層の上に配置し、UVランプで硬化させた。次いで、パイプをスプール上に巻いた。
【0069】
次いで、完成したパイプの試料に対し様々な試験を行った。パイプに対するコーティングの接着を試験するために、ASTM D4541にしたがって、PosiTest引き剥がし接着試験装置を用いた。以下に示す実施例のすべてにおいて、想定用途に適切な接着を示す約2.07MPa(300psi)以上の接着レベルが得られた。
【0070】
リール上に巻いたとき、実施例1〜8では一部に剥離が生じた。加えて、実施例1/8のうちのいくつかは、拡張試験(ExpansionTest)(パイプを約−6.7℃(20°F)まで冷却し、拡張部材をパイプ中に配置して、元の直径の約2倍までパイプを膨張させる)にかけた。実施例1〜8については、試料をスプール上に巻いたときだけでなく、拡張試験においても剥離が生じた。実施例9〜11については、拡張試験およびスプール上のいずれにおいても剥離は観察されなかった。
【0071】

【表2】




放射線硬化されたコーティングは、典型的には非常に硬質で保護に優れることが知られており、通常、可撓性は良好な特性のうちの1つではない。低い可撓性は、特にプラスチック(例えば、ポリオレフィンなど)に対する接着に対し悪い影響を与えることが、よく知られている。しかしながら、本明細書に記載のコーティングのうちの一部では、製造されるコーティングは優れた機械的な性能を備え非常に頑丈かつ保護に優れるのと同時に、実に柔軟であり、PEX管などのポリオレフィンに対し優れた接着性を示す。さらに、このコーティングは摩滅抵抗も維持しつつ、非常に良好な低温可撓性および伸長性を示す。
【0072】
本発明の範囲から逸脱することなく、記載の例示的な実施形態に対し、様々な変更およ
び追加を行うことが可能である。例えば、上述の実施形態では特定の特徴を参照しているが、本発明の範囲には、異なる特徴の組み合わせを有する実施形態や、上述の特徴の必ずしもすべてを含まない実施形態が含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の管状部材において、
可撓性の管状ポリマー基材であって、0.79センチメートル(5/16)インチ以上の外径と、23℃にて3.275MPa(475psi)以上の破裂強度とを有する基材と、
前記管状基材の外面上に配置されたコーティングであって、放射線硬化によって架橋された100マイクロメートル未満の厚さを有する1つ以上のポリマー層を含むコーティングと、を備える可撓性の管状部材。
【請求項2】
前記ポリマー基材はポリオレフィンを含む、請求項1に記載の可撓性の管状部材。
【請求項3】
ポリオレフィンはポリエチレンである、請求項2に記載の可撓性の管状部材。
【請求項4】
ポリオレフィンは架橋されたポリエチレンである、請求項2に記載の可撓性の管状部材。
【請求項5】
前記層の厚さは60マイクロメートル未満である、請求項1に記載の可撓性の管状部材。
【請求項6】
前記コーティングは2つ以上の層を含み、各層の厚さは60マイクロメートル未満である、請求項1に記載の可撓性の管状部材。
【請求項7】
コーティングは、酸素バリア、着色料、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の可撓性の管状部材。
【請求項8】
前記コーティングは光開始剤を含む、請求項1に記載の可撓性の管状部材。
【請求項9】
前記架橋された1つ以上の層はアクリラートを含む、請求項1に記載の可撓性の管状部材。
【請求項10】
前記架橋された1つ以上の層はカルボキシエチルアクリラートを含む、請求項1に記載の可撓性の管状部材。
【請求項11】
前記管状基材と前記架橋されたポリマー層との間の剥離強度は2.07MPa(300psi)以上である、請求項1に記載の可撓性の管状部材。
【請求項12】
可撓性の管状部材において、
架橋されたポリエチレンを含む可撓性の管状基材と、
前記管状基材の外面上に配置されたコーティングであって、前記管状基材の外面上に配置された放射線硬化によって架橋されたアクリラートベースポリマー層と、前記ベース層の上方に配置された放射線硬化によって架橋されたポリマートップコート層とを含むコーティングと、を備え、前記ベース層および前記トップコート層の厚さは各々60マイクロメートル未満であり、かつ、全厚さは100マイクロメートル未満であり、前記管状基材と前記架橋されたポリマー層との間の剥離強度は2.07MPa(300psi)以上である、可撓性の管状部材。
【請求項13】
前記コーティングの層は、酸素バリア材料、着色料、またはそれらの組み合わせを含む、請求項12に記載の可撓性の管状部材。
【請求項14】
前記コーティングの層は光開始剤を含む、請求項12に記載の可撓性の管状部材。
【請求項15】
前記ベース層およびトップコート層のうちの1つ以上は架橋されたカルボキシエチルアクリラートを含む、請求項12に記載の可撓性の管状部材。
【請求項16】
可撓性の管状部材において、
ポリマーを含む可撓性の管状基材と、
前記可撓性の管状基材の外面の上方に配置された金属層と、
前記金属層の外面上に配置されたコーティングであって、放射線硬化によって架橋された100マイクロメートル未満の厚さを有する1つ以上のポリマー層を含むコーティングと、を備える可撓性の管状部材。
【請求項17】
金属層はアルミニウムを含む、請求項16に記載の可撓性の管状部材。
【請求項18】
架橋されたコーティングを有する可撓性の管状部材を製造するための方法において、
可撓性の管状基材の外面を酸化させる工程であって、前記基材は架橋されたポリエチレンを含む、酸化工程と、
酸化した前記外面上に放射線によって硬化可能なプレポリマー配合物の第1の層を配置する配置工程と、
第1の層を放射線に曝露し、60マイクロメートル未満の厚さを有する架橋された第1のコーティング層を生成する曝露工程と、を備える方法。
【請求項19】
酸化工程は熱による酸化を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第1のコーティング層上に第2の硬化可能なプレポリマー配合物を配置する工程と、放射線のエネルギーによって第2の配合物を硬化させ、第2のコーティング層を形成する工程と、をさらに備える請求項18に記載の方法。
【請求項21】
第1のコーティング層上に第2の配合物を配置する前に、第1の配合物を部分的に硬化させる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
曝露工程はUV放射線に曝露する工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
酸化工程の前に、前記可撓性の管状基材を第1のローラから供給する工程と、
硬化工程の後に、前記可撓性の管状部材を第2のロール上に受け取る工程と、をさらに備え、製造が連続的に行われる請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−504513(P2012−504513A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530275(P2011−530275)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/059417
【国際公開番号】WO2010/040079
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(508236125)ウポノール・イノベーション・エービー (4)
【氏名又は名称原語表記】Uponor Innovation Ab
【Fターム(参考)】