説明

コーティング剤組成物及びこれを用いた光情報媒体

【課題】 各種物体の表面に、帯電防止性に優れる保護コート層を形成するために有用なコーティング剤組成物を提供する。前記コーティング剤組成物を用いた光情報媒体を提供する。
【解決手段】 アルカリ金属塩(A)と、一般式:CH2 =C(R1 )CONR2 3
(式において、R1 は、水素原子又はメチル基を表し、
2 及びR3 は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、ただし、R2 及びR3 の両者が水素原子であることはない。)
で示されるアクリルアミド誘導体(B)と、分子内に2つ以上の活性エネルギー線重合性基を有する硬化性化合物(C)とを含むコーティング剤組成物。光情報媒体は、前記コーティング剤組成物の硬化物を含む保護コート層8を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種物体の表面に、帯電防止性に優れる保護コート層を形成するために有用なコーティング剤組成物に関する。
【0002】
また、本発明は、前記コーティング剤組成物を用いて形成された帯電防止性に優れる保護コート層を表面に有する物体に関する。表面に保護コート層の付与が必要とされる物体としては、光情報媒体、光学レンズ、光学フィルター、反射防止膜、及び液晶ディスプレー、CRTディスプレー、プラズマディスプレー、ELディスプレー等の各種表示素子等が含まれる。
【0003】
特に、本発明は、前記コーティング剤組成物を用いて形成された保護コート層を表面に有する、再生専用光ディスク、光記録ディスク、光磁気記録ディスク等の光情報媒体に関し、より特別には、記録及び/又は再生ビーム入射側表面の帯電防止性にも優れる光情報媒体に関する。
【背景技術】
【0004】
再生専用光ディスク、光記録ディスク、光磁気記録ディスク等の光情報媒体の表面には、塵埃や大気中のオイルミスト等の付着を防ぐために帯電防止性が要求される。
【0005】
また、光情報媒体以外について見れば、例えば、光学レンズ、光学フィルター、反射防止膜、及び液晶ディスプレー、CRTディスプレー、プラズマディスプレー、ELディスプレー等の各種表示素子等の表面にも、光ディスクの場合と同様に、塵埃や大気中のオイルミスト等の付着を防ぐために帯電防止性が要求される。
【0006】
光ディスクや上記各種物体の表面には、通常、紫外線硬化性材料の硬化物からなる保護コート層が設けられる。このような保護コート層は絶縁性であり、静電気による帯電現象が起こる。
【0007】
特開平3−153769号公報には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はこれらの誘導体をセグメントとして含有する(メタ)アクリレート化合物(A)と、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はプロトン酸の少なくとも1種(B)と、(A)以外のエチレン性不飽和基含有化合物(C)とを含む帯電防止性樹脂組成物ないしは光ディスク用材料が開示されている。(B)成分のうち、アルカリ金属塩としては、フッ化リチウム(LiF)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化リチウム(LiI)、過塩素酸リチウム(LiClO4 )、チオシアン酸ナトリウム(NaSCN)、チオシアン酸カリウム(KSCN)、チオシアン酸セシウム(CsSCN)、トリフッ化メタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、ホウフッ化リチウム(LiBF4 )、ヘキサフッ化リン酸リチウム(LiPF6 )が挙げられ、好ましいものとして過塩素酸リチウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウムが挙げられている。
【0008】
特開平6−329819号公報は帯電防止性保護膜のコーティング方法に関し、[0007]には、帯電防止剤が、分子内にアクリロイル基を少なくとも1個有するアミド化合物等であり、前記化合物は、紫外線照射で硬化し、紫外線硬化性樹脂の保護膜中に固定されることが開示されている。[0017]には、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドが挙げられている。
【0009】
特開2003−173575号公報には、記録/再生レーザー光が薄膜カバー層(X)を通して記録層に照射される光ディスクにおいて、光ディスク支持基体上に記録層が形成され、記録層上に50〜150μm厚の薄膜カバー層(X)が形成され、薄膜カバー層(X)上に0.05〜20μm厚のハードコート層(Y)が形成され、薄膜カバー層(X)は特定の活性エネルギー線硬化性組成物(P)の硬化物層であり、ハードコート層(Y)は修飾コロイド状シリカを含む特定の活性エネルギー線硬化性組成物(Q)の硬化物層である光ディスクが開示されている。[0027]には、組成物(P)には帯電防止剤が含まれてもよいこと、[0044]には、組成物(Q)には帯電防止剤が含まれてもよいことが開示され、[0031]には、帯電防止剤として、ノニオン系帯電防止剤、カチオン系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤が挙げられている。
【0010】
【特許文献1】特開平3−153769号公報
【特許文献2】特開平6−329819号公報
【特許文献3】特開2003−173575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記の従来技術では、十分な帯電防止性を有する保護コート層は得られなかった。特に、光ディスクや各種表示素子の使用環境下における長期の使用によっても十分な帯電防止性を維持しうる保護コート層は得られなかった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、各種物体の表面に、帯電防止性に優れる保護コート層を形成するために有用なコーティング剤組成物を提供することにある。
【0013】
また、本発明の目的は、前記コーティング剤組成物を用いて形成された帯電防止性に優れる保護コート層を表面に有する物体を提供することにある。
【0014】
特に、本発明の目的は、記録及び/又は再生ビーム入射側表面の帯電防止性に優れる光情報媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、鋭意検討した結果、アルカリ金属塩とアクリルアミド誘導体とを共に用いることによって、帯電防止性に非常に優れる保護コート層を形成することのできるコーティング剤組成物が得られることを見いだした。
【0016】
本発明には、以下の発明が含まれる。
(1) アルカリ金属塩(A)と、下記一般式(I):
CH2 =C(R1 )CONR2 3 (I)
(式(1)において、R1 は、水素原子又はメチル基を表し、
2 及びR3 は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、ただし、R2 及びR3 の両者が水素原子であることはない。)
で示されるアクリルアミド誘導体(B)と、分子内に2つ以上の活性エネルギー線重合性基を有する硬化性化合物(C)とを含むコーティング剤組成物。
【0017】
(2) アルカリ金属塩(A)は、イミド化合物のアルカリ金属塩である、(1) に記載のコーティング剤組成物。
【0018】
(3) 前記コーティング剤組成物は、組成物中の不揮発分100重量部に対して、アルカリ金属塩(A)0.4重量部以上5重量部以下、アクリルアミド誘導体(B)0.2重量部以上15重量部以下を含む、(1) 又は(2) に記載のコーティング剤組成物。不揮発分には、アルカリ金属塩(A)、アクリルアミド誘導体(B)及び硬化性化合物(C)の他、後述する無機微粒子、光重合開始剤、各種添加剤等の任意成分が含まれる。
【0019】
(4) アルカリ金属塩(A)は、スルホンイミド化合物のアルカリ金属塩である、(1) 〜(3) のうちのいずれかに記載のコーティング剤組成物。
【0020】
(5) アルカリ金属塩(A)は、フッ素化アルキルスルホンイミド化合物のリチウム塩である、(1) 〜(4) のうちのいずれかに記載のコーティング剤組成物。
【0021】
以上のコーティング剤組成物は、各種表示素子の保護コート層材料、特に光情報媒体用の保護コート層材料として有用である。
【0022】
(6) (1) 〜(5) のうちのいずれかに記載のコーティング剤組成物の硬化物を含む保護コート層が表面に付与された物体。
本発明において、表面にハードコート層の付与が必要とされる物体としては、例えば、光情報媒体、光学レンズ、光学フィルター、反射防止膜、及び液晶ディスプレー、CRTディスプレー、プラズマディスプレー、ELディスプレー等の各種表示素子等が含まれる。
【0023】
(7) 支持基体上に、少なくとも記録層又は反射層を含む、1層又は複数層から構成される膜体を有する光情報媒体であって、前記支持基体側表面及び前記膜体側表面のうちの少なくとも一方の表面が、(1) 〜(5) のうちのいずれかに記載のコーティング剤組成物の硬化物を含む保護コート層によって形成されている光情報媒体。
【0024】
(8) 支持基体上に情報記録層と、情報記録層上の光透過層とを有し、光透過層上に、(1) 〜(5) のうちのいずれかに記載のコーティング剤組成物の硬化物を含む保護コート層を有する光情報媒体。
【0025】
(9) 前記光透過層は、活性エネルギー線硬化性材料の硬化物から構成されている、(8) に記載の光情報媒体。
【0026】
本発明において、光情報媒体には、再生専用光ディスク、光記録ディスク、光磁気記録ディスク等の各種の媒体が含まれる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、各種物体の表面に、帯電防止性に優れる保護コート層を形成するために有用なコーティング剤組成物が提供される。
【0028】
また、本発明によれば、前記コーティング剤組成物を用いて形成された帯電防止性に優れる保護コート層を表面に有する物体が提供される。
【0029】
特に、本発明によれば、記録及び/又は再生ビーム入射側表面の帯電防止性に優れる光情報媒体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
まず、本発明のコーティング剤組成物について説明する。
【0031】
本発明のコーティング剤組成物は、アルカリ金属塩(A)と、前記一般式(I)で示されるアクリルアミド誘導体(B)と、分子内に2つ以上の活性エネルギー線重合性基を有する硬化性化合物(C)とを含む。
【0032】
硬化性化合物(C)は、アクリルアミド誘導体(B)以外のものであり、コーティング剤組成物における硬化性成分の主成分であり、硬化後に得られる保護コート層の主構成成分である。コーティング剤組成物は、硬化性化合物(C)として、硬化性化合物(C)を基準として、分子内に3つ以上の活性エネルギー線重合性基を有する硬化性化合物(Ct)65〜100重量%、及び分子内に2つの活性エネルギー線重合性基を有する硬化性化合物(Cd)0〜35重量%を含むことが好ましい。
【0033】
活性エネルギー線硬化性化合物(Ct)は、分子内に3つ以上の活性エネルギー線重合性基を有するので、硬化後に、それ自体で保護コート層として十分な硬度が得られる。一方、活性エネルギー線硬化性化合物(Cd)は、活性エネルギー線重合性基を分子内に2つのみしか有していないため、硬化後に、それ自体では保護コート層として十分な硬度は得られにくい。そのため、硬化性化合物(Ct)を硬化性化合物(C)の主成分として用いて、硬化性化合物(Cd)を用いる場合には、上記重量範囲内で用いることが好ましい。
【0034】
硬化性化合物(C)は、分子内に2つ以上、好ましくは2つ以上の活性エネルギー線重合性基を有する化合物であれば、多官能モノマーもしくはオリゴマーであってもよく、特にその構造は限定されない。硬化性化合物(C)が有する活性エネルギー線重合性基は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基及びメルカプト基の中から選択される。
【0035】
このような活性エネルギー線硬化性化合物(C)のうち、(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、エステルアクリレート等が挙げられ、具体的には、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、3-(メタ)アクリロイルオキシグリセリンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0036】
本発明のコーティング剤組成物において、活性エネルギー線硬化性化合物(Ct)として1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、活性エネルギー線硬化性化合物(Cd)を併用する場合には、硬化性化合物(Cd)として1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
また、コーティング剤組成物において、硬化性成分として、硬化性化合物(C)以外に、保護コート層としての十分な硬度を維持できる範囲内で単官能モノマーが用いられてもよい。
【0038】
アルカリ金属塩(A)は、帯電防止機能のために用いられる。アルカリ金属塩(A)としては、限定されないが、例えば、アルカリ金属の過塩素酸塩、テトラフルオロ硼酸塩、ヘキサフルオロ燐酸塩、スルホン酸塩、イミド塩等が挙げられる。これらの中でも、特にイミド化合物のアルカリ金属塩が好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等が挙げられる。
【0039】
アルカリ金属塩(A)としては、スルホンイミド化合物のアルカリ金属塩が好ましく、フッ素化アルキルスルホンイミド化合物のリチウム塩がより好ましい。より具体的には、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミドLiN(CF3 SO2 2 、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホン)イミドLiN(C2 5 SO2 2 等が挙げられる。これらのスルホンイミド化合物は、リチウムイオン伝導性、耐熱性、耐水性に優れ、また、コーティング剤組成物の希釈溶剤として用いられる非水溶媒に対する溶解性や、硬化性化合物(C)との相溶性にも優れている。
【0040】
アルカリ金属塩(A)としては、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
アクリルアミド誘導体(B)は、帯電防止機能を有するが、ハードコート層のように架橋密度の高い層に添加した場合には、それ自身のみでは帯電防止機能をほとんど示さない。本発明において、アクリルアミド誘導体(B)は、ハードコート層の表面近傍に存在するアルカリ金属塩(A)のLi+ が、ハードコート層の深部に拡散することを防ぐ効果(トラップ効果)を有するために用いられる。
【0042】
アクリルアミド誘導体(B)は、下記一般式(I):
CH2 =C(R1 )CONR2 3 (I)
で示される。式(1)において、R1 は、水素原子又はメチル基を表し、R2 及びR3 は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、ただし、R2 及びR3 の両者が水素原子であることはない。
【0043】
2 及びR3 が表すアルキル基には、炭素数1〜6の直鎖状又は分枝状アルキル基が含まれ、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル基等が例示される。
【0044】
2 及びR3 が表すアルキル基は適宜、置換基を有していてもよい。例えば、1,1−ジメチル−4−オン−ブチル基(-C(CH3)2-CH2COCH3 )、トリス(ヒドロキシメチル)メチル基(-C(CH2OH)3)、メトキシメチル基、エトキシメチル基、n−ブトキシメチル基、イソブトキシメチル基等が例示される。
【0045】
また、R2 及びR3 が表すアルキル基は、置換基として、−NR4 5 基(R4 及びR5 は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜6の直鎖状又は分枝状アルキル基を表す。)を有しているものも好ましい。例えば、3−(ジメチルアミノ)プロピル基等が例示される。
【0046】
アクリルアミド誘導体(B)の具体例としては、N−tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル](メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド等が例示される。また、2官能性のN,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドを用いることもできる。
【0047】
アクリルアミド誘導体(B)としては、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
このようなアクリルアミド誘導体(B)は、コーティング剤組成物の活性エネルギー線重合の際に、重合反応して保護コート層中に固定される。そして、アクリルアミド基由来のアミド基の存在によって、アルカリ金属塩(A)の拡散を抑制しつつアルカリ金属イオンの伝導性を円滑に行わせると考えられる。従って、本発明において、コーティング剤組成物中にアルカリ金属塩(A)とアクリルアミド誘導体(B)の両者を含ませることによって、非常に良好な帯電防止性を有した保護コート層が得られる。アルカリ金属塩(A)のみでは、それ自身が拡散しやすく、長期の使用によって帯電防止性は低下する。
【0049】
本発明において、前記コーティング剤組成物は、組成物中の不揮発分100重量部に対して、アルカリ金属塩(A)0.4重量部以上5重量部以下、アクリルアミド誘導体(B)0.2重量部以上15重量部以下を含むことが好ましい。ここで、不揮発分は、硬化後の保護コート層中に残存する成分であり、アルカリ金属塩(A)、アクリルアミド誘導体(B)及び硬化性化合物(C)の他、単官能モノマー、後述する無機微粒子(D)、光重合開始剤、各種添加剤等の任意成分が含まれる。
【0050】
アルカリ金属塩(A)の添加量が、好ましくは0.4重量部以上、より好ましくは0.9重量部以上であると、高い帯電防止効果が得られる。一方、アルカリ金属塩(A)の添加量に上限は特にないが、帯電防止効果に優れ且つ溶解性の高いリチウム塩は高価であることを考慮すると、好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下とするとよい。また、リチウム塩を過剰に添加すると、硬化して得られた保護コート層の強度や光学特性の低下を招く場合もあるため、必要量を超えて添加することは好ましくない。
【0051】
アクリルアミド誘導体(B)の添加量が0.2重量部以上であると、アルカリ金属塩(A)の拡散抑制効果がほぼ十分となり、高い帯電防止効果が持続される。また、アクリルアミド誘導体(B)自身の帯電防止効果も期待される。しかしながら、アクリルアミド誘導体(B)の添加量が過剰となると、アルカリ金属塩の移動が過度に抑制され、その結果、アルカリ金属塩本来の帯電防止効果が十分に発現されにくくなる。この観点から、アクリルアミド誘導体(B)の添加量は15重量部以下とするとよい。
【0052】
本発明のコーティング剤組成物は、平均粒子径100nm以下の無機微粒子(D)を含むことが好ましい。無機微粒子(D)の平均粒子径は、保護コート層の透明性を確保するために平均粒子径100nm以下、好ましくは20nm以下であり、コロイド溶液製造上の制約から、好ましくは5nm以上である。
【0053】
無機微粒子(D)は、例えば、金属(又は半金属)酸化物の微粒子、又は金属(又は半金属)硫化物の微粒子である。無機微粒子の金属又は半金属としては、例えば、Si、Ti、Al、Zn、Zr、In、Sn、Sb等が挙げられる。また、酸化物、硫化物の他に、Se化物、Te化物、窒化物、炭化物を用いることもできる。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の微粒子が挙げられ、シリカ微粒子が好ましい。このような無機微粒子をコーティング剤組成物に添加しておくことにより、保護コート層の耐摩耗性をより高めることができる。
【0054】
前記シリカ微粒子の中でも、活性エネルギー線反応性基を有する加水分解性シラン化合物によって表面修飾されたものが好ましく用いられる。このような反応性シリカ微粒子は、コーティング剤層を硬化させる際の活性エネルギー線照射によって、架橋反応を起こし、ポリマーマトリックス中に固定される。このような反応性シリカ微粒子として、例えば特開平9−100111号公報に記載された反応性シリカ粒子があり、本発明において好ましく用いることができる。
【0055】
本発明のコーティング剤組成物において、無機微粒子(D)が用いる場合には、硬化性化合物(C)100重量部に対して、無機微粒子(D)5重量部以上500重量部以下を含むことが好ましく、無機微粒子(D)20重量部以上200重量部以下を含むことがより好ましい。無機微粒子(D)を500重量部よりも多く含有させると、保護コート層の膜強度が弱くなりやすく、一方、5重量部未満では、無機微粒子(D)添加による保護コート層の耐摩耗性向上効果が弱い。
【0056】
本発明のコーティング剤組成物は、公知の光重合開始剤を含んでもよい。光重合開始剤は、活性エネルギー線として電子線を用いる場合には特に必要はないが、紫外線を用いる場合には必要となる。光重合開始剤は、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系等の通常のものから適宜選択すればよい。光重合開始剤のうち、光ラジカル開始剤としては、例えば、ダロキュア1173、イルガキュア651 、イルガキュア184 、イルガキュア907 (いずれもチバスペシャルティケミカルズ社製)が挙げられる。光重合開始剤の含有量は、例えば、コーティング剤組成物中において、前記(A)、(B)、(C)及び(D)の総和に対して、0.5〜5重量%程度である。
【0057】
また、本発明のコーティング剤組成物はさらに、必要に応じて、非重合性の希釈溶剤、有機フィラー、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、レベリング剤などを含んでいても差し支えない。
【0058】
コーティング剤組成物は、上記の各成分を常法により混合して製造することができる。コーティング剤組成物は塗布に適した粘度に調整するとよい。以上のようにして、本発明のコーティング剤組成物が構成される。
【0059】
次に、図面を参照して、前記コーティング剤組成物を用いた本発明の光情報媒体(以下、光ディスクと略記することがある)及びその製造方法について説明する。
【0060】
本発明の光情報媒体は、支持基体上に、少なくとも記録層又は反射層を含む、1層又は複数層から構成される膜体を有し、前記支持基体側表面及び前記膜体側表面のうちの少なくとも一方の表面が、前記コーティング剤組成物の硬化物を含む保護コート層によって形成されている。本発明の光情報媒体において、前記支持基体側表面及び前記膜体側表面のうちの少なくとも一方の表面、好ましくは記録/再生ビーム入射側とされる表面が、前記コーティング剤組成物の硬化物からなる保護コート層によって形成されていることが好ましい。
【0061】
光情報媒体の例として、膜体側表面が記録/再生ビーム入射側表面とされる光情報媒体について、図1及び2を参照して説明する。
【0062】
図1は、本発明の光ディスクの層構成の一例を示す概略断面図である。この光ディスクは記録媒体であり、比較的剛性の高い支持基体(20)上に情報記録層としての記録層(4) を有し、記録層(4) 上に光透過層(7) を有し、光透過層(7) 上に光透過性保護コート層(8) を有する。保護コート層(8) が記録/再生ビーム入射側とされ、記録又は再生のためのレーザービームは保護コート層(8) 及び光透過層(7) を通して記録層(4) に入射する。光透過層(7) の厚さは、保護コート層(8) を含めて、好ましくは30〜150μm、より好ましくは70〜150μmである。このような光ディスクは、例えば Blu-ray Disc である。保護コート層(8) 側の鉛筆硬度試験でB以上の硬さを有する。
【0063】
なお、図示されていないが、記録層(4) の上にスペーサー層を介して更に記録層が設けられ、2層以上の記録層を有する光ディスクも、本発明に含まれる。この場合には、光ディスクは、支持基体(20)から最も遠い記録層の上に、光透過層(7) 及び保護コート層(8) を有する。
【0064】
本発明は、記録層の種類によらず適用できる。すなわち、例えば、相変化型記録媒体であっても、ピット形成タイプの記録媒体であっても、光磁気記録媒体であっても適用できる。なお、通常は、記録層の少なくとも一方の側に、記録層の保護や光学的効果を目的として誘電体層や反射層が設けられるが、図1では図示が省略されている。また、本発明は、図示するような記録可能タイプに限らず、再生専用タイプにも適用可能である。その場合、支持基体(20)と一体的にピット列が形成され、そのピット列を被覆する反射層(金属層又は誘電体多層膜)が、情報記録層を構成する。
【0065】
本発明の相変化型記録媒体の場合の光情報媒体について説明する。
図2は、本発明の光ディスクの層構成の一例を示す概略断面図である。図2において、光ディスクは、支持基体(20)の情報ピットやプリグルーブ等の微細凹凸が形成されている側の面上に、反射層(3) 、第2誘電体層(52)、相変化記録材料層(4) 及び第1誘電体層(51)をこの順で有し、第1誘電体層(51)上に光透過層(7) を有し、光透過層(7) 上に保護コート層(8) を有する。この例では、反射層(3) 、第2誘電体層(52)、相変化記録材料層(4) 及び第1誘電体層(51)が情報記録層を構成する。また、前記情報記録層及び光透過層(7) が、記録又は再生のために必要な膜体を構成する。この光ディスクは、保護コート層(8) 及び光透過層(7) を通して、すなわち膜体側から、記録又は再生のためのレーザー光が入射するように使用される。
【0066】
支持基体(20)は、厚さ0.3〜1.6mm、好ましくは厚さ0.4〜1.3mmであり、記録層(4) が形成される側の面に、情報ピットやプリグルーブ等の微細な凹凸が形成されている。
【0067】
支持基体(20)としては、上記のように膜体側からレーザー光が入射するように使用されるので光学的に透明である必要はないが、透明な材料としては、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリオレフィン樹脂等の各種プラスチック材料等が使用できる。あるいは、ガラス、セラミックス、金属等を用いても良い。凹凸パターンは、プラスチック材料を用いる場合には、射出成形することにより作成されることが多く、プラスチック材料以外の場合には、フォトポリマー法(2P法)によって成形される。
【0068】
支持基体(20)上には、通常、反射層(3) がスパッタリング法により形成される。反射層の材料としては、金属元素、半金属元素、半導体元素又はそれらの化合物を単独あるいは複合させて用いる。具体的には、例えばAu、Ag、Cu、Al、Pd等の周知の反射層材料から選択すればよい。反射層は、厚さ20〜200nmの薄膜として形成することが好ましい。
【0069】
反射層(3) 上に、あるいは反射層のない場合には支持基体(20)上に直接、第2誘電体層(52)、相変化記録材料層(4) 、第1誘電体層(51)がこの順でスパッタリング法により形成される。
【0070】
相変化記録材料層(4) は、レーザー光照射によって結晶状態とアモルファス状態とに可逆的に変化し、両状態の間で光学特性が異なる材料により形成される。例えば、Ge−Sb−Te、In−Sb−Te、Sn−Se−Te、Ge−Te−Sn、In−Se−Tl、In−Sb−Te等が挙げられる。さらに、これらの材料に、Co、Pt、Pd、Au、Ag、Ir、Nb、Ta、V、W、Ti、Cr、Zr、Bi、In等から選ばれる金属のうちの少なくとも1種を微量に添加してもよく、窒素等の還元性ガスを微量に添加してもよい。記録材料層(4) の厚さは、特に限定されることなく、例えば、3〜50nm程度である。
【0071】
第2誘電体層(52)及び第1誘電体層(51)は、記録材料層(4) の上下両面側にこれを挟んで形成される。第2誘電体層(52)及び第1誘電体層(51)は、記録材料層(4) の機械的、化学的保護の機能と共に、光学特性を調整する干渉層としての機能を有する。第2誘電体層(52)及び第1誘電体層(51)はそれぞれ、単層からなっていてもよく、複数層からなっていてもよい。
【0072】
第2誘電体層(52)及び第1誘電体層(51)はそれぞれ、Si、Zn、Al、Ta、Ti、Co、Zr、Pb、Ag、Zn、Sn、Ca、Ce、V、Cu、Fe、Mgから選ばれる金属のうちの少なくとも1種を含む酸化物、窒化物、硫化物、フッ化物、あるいはこれらの複合物から形成されることが好ましい。また、第2誘電体層(52)及び第1誘電体層(51)のそれぞれの消衰係数kは、0.1以下であることが好ましい。
【0073】
第2誘電体層(52)の厚さは、特に限定されることなく、例えば、20〜150nm程度が好ましい。第1誘電体層(51)の厚さは、特に限定されることなく、例えば、20〜200nm程度が好ましい。両誘電体層(52)(51)の厚さをこのような範囲で選択することにより、反射の調整ができる。
【0074】
第1誘電体層(51)上に、光透過層(7) を活性エネルギー線硬化性材料を用いて、あるいはポリカーボネートシート等の光透過性シートを用いて形成する。
【0075】
光透過層(7) に用いる活性エネルギー線硬化性材料としては、光学的に透明で、使用されるレーザー波長領域での光学吸収や反射が少なく、複屈折が小さいことを条件として、紫外線硬化性材料及び電子線硬化性材料から選択する。
【0076】
具体的には、活性エネルギー線硬化性材料は、紫外線(電子線)硬化性化合物やその重合用組成物から構成されることが好ましい。このようなものとしては、アクリル酸やメタクリル酸のエステル化合物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートのようなアクリル系二重結合、ジアリルフタレートのようなアリル系二重結合、マレイン酸誘導体等の不飽和二重結合等の紫外線照射によって架橋あるいは重合する基を分子中に含有又は導入したモノマー、オリゴマー及びポリマー等を挙げることができる。これらは多官能、特に3官能以上であることが好ましく、1種のみ用いても2種以上併用してもよい。また、単官能のものを必要に応じて用いてもよい。
【0077】
紫外線硬化性モノマーとしては、分子量2000未満の化合物が、オリゴマーとしては分子量2000〜10000のものが好適である。これらはスチレン、エチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート等も挙げられるが、特に好ましいものとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ) アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ) アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ) アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ) アクリレート、フェノールエチレンオキシド付加物の(メタ) アクリレート等が挙げられる。この他、紫外線硬化性オリゴマーとしては、オリゴエステルアクリレートやウレタンエラストマーのアクリル変性体等が挙げられる。
【0078】
紫外線(電子線)硬化性材料は、公知の光重合開始剤を含んでもよい。光重合開始剤は、活性エネルギー線として電子線を用いる場合には特に必要はないが、紫外線を用いる場合には必要となる。光重合開始剤は、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系等の通常のものから適宜選択すればよい。光重合開始剤のうち、光ラジカル開始剤としては、例えば、ダロキュア1173、イルガキュア651 、イルガキュア184 、イルガキュア907 (いずれもチバスペシャルティケミカルズ社製)が挙げられる。光重合開始剤の含有量は、例えば、前記紫外線(電子線)硬化性成分に対して、0.5〜5重量%程度である。
【0079】
また、紫外線硬化性材料としては、脂環式エポキシ化合物等のエポキシ化合物、及び光カチオン重合触媒を含有する組成物も好適に使用される。光カチオン重合触媒は、公知のいずれのものを用いてもよく、特に制限はない。
【0080】
光透過層(7) の形成において、第1誘電体層(51)上への活性エネルギー線硬化性材料の塗布はスピンコーティング法により行うとよい。
【0081】
あるいは、本発明において、ポリカーボネートシート等の光透過性樹脂シートを用いて光透過層を形成することもできる。この場合には、第1誘電体層(51)上に、光透過層用と同様の活性エネルギー線硬化性材料を塗布し、未硬化の樹脂材料層を形成する。未硬化の樹脂材料層上に、光透過層(7) としての光透過性シートを載置し、その後、紫外線等の活性エネルギー線を照射して樹脂材料層を硬化することにより、光透過性シートを接着し光透過層(7) とする。
【0082】
光透過層(7) 上に前記コーティング剤組成物を用いて保護コート層(8) を形成する。すなわち、光透過層(7) 上に前記コーティング剤組成物を塗布し、未硬化の保護コート層を形成し、その後、紫外線、電子線、可視光等の活性エネルギー線を照射して未硬化層を硬化して、保護コート層(8) とする。
【0083】
塗布方法は、限定されることなく、スピンコート法、ディップコート法、グラビアコート法等の各種塗布方法を用いるとよい。あるいは、光透過層(7) として光透過性シートを使用する場合、長尺状の光透過性シート原反に予め上記と同様の方法で保護コート層(8) を形成しておき、この原反をディスク形状に打ち抜いた後、前記のように未硬化の樹脂材料層上に載置し樹脂材料層を硬化させてもよい。
【0084】
以上のように、膜体側表面が記録/再生ビーム入射側表面とされる光情報媒体として、図2に例示する相変化型光記録ディスクが得られる。
【0085】
光透過層(7) が活性エネルギー線硬化性材料の硬化物から構成されている場合には、ポリカーボネートシート等の光透過性シートから構成されている場合に比べると、光透過層(7) 上に形成された保護コート層(8) 中に含まれるアルカリ金属塩(A)の光透過層(7) への拡散が起こりやすい。しかしながら、本発明においては、コーティング剤組成物中にアルカリ金属塩(A)の他にアクリルアミド誘導体(B)が含まれているので、アルカリ金属塩(A)の拡散が抑制される。そのため、保護コート層(8) は長期使用にわたって十分な帯電防止性を維持しうる。このように、本発明は、光透過層(7) が活性エネルギー線硬化性材料の硬化物から構成されている場合に用いる利点が大きい。
【0086】
また、本発明の前記コーティング剤組成物は、支持基体側表面が記録/再生ビーム入射側表面とされる光情報媒体にももちろん適用することができる。このような光情報媒体としては、従来から、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RAM、DVD−RW等の種々のものが商品化されている。さらに、本発明の前記コーティング剤組成物は、記録/再生ビームとして青色レーザービームが用いられる次世代HD−DVDにも好適に適用することができる。これら光情報媒体では、支持基体の一方の面上に情報記録層が形成され、支持基体の他方の面上に、本発明の前記コーティング剤組成物を用いて光透過性保護コート層が形成される。
【実施例】
【0087】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0088】
[ディスクサンプルNo.1の作製]
図2に示す層構成の光記録ディスクサンプルNo.1を次のように作製した。
情報記録のためにグルーブが形成されたディスク状支持基体(20)(ポリカーボネート製、直径120mm、厚さ1.1mm)のグルーブが形成された面上に、Al98Pd1 Cu1 (原子比)からなる厚さ100nmの反射層(3) をスパッタリング法により形成した。前記グルーブの深さは、波長λ=405nmにおける光路長で表してλ/6とした。グルーブ記録方式における記録トラックピッチは、0.32μmとした。
【0089】
次いで、反射層(3) 表面に、Al2 3 ターゲットを用いてスパッタリング法により、厚さ20nmの第2誘電体層(52)を形成した。第2誘電体層(52)表面に、相変化材料からなる合金ターゲットを用いてスパッタリング法により、厚さ12nmの記録層(4) を形成した。記録層(4) の組成(原子比)は、Sb74Te18(Ge7 In1 )とした。記録層(4) 表面に、ZnS(80モル%)−SiO2 (20モル%)ターゲットを用いてスパッタリング法により、厚さ130nmの第1誘電体層(51)を形成した。
【0090】
次いで、第1誘電体層(51)表面に、下記組成のラジカル重合性の紫外線硬化性材料をスピンコート法により塗布して、照射強度160W/cm、ランプとの距離11cm、積算光量3J/cm2 にて紫外線を照射して、硬化後の厚さ98μmとなるように光透過層(7) を形成した。
【0091】
(光透過層:紫外線硬化性材料の組成)
ウレタンアクリレートオリゴマー 50重量部
(三菱レイヨン(株)製、ダイヤビームUK6035)
イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート 10重量部
(東亜合成(株)製、アロニックスM315)
イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート 5重量部
(東亜合成(株)製、アロニックスM215)
テトラヒドロフルフリルアクリレート 25重量部
光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン) 3重量部
【0092】
次いで、光透過層(7) 上に、下記組成の紫外線硬化性コーティング剤をスピンコート法により塗布して被膜とし、大気中で60℃で3分間加熱することにより被膜内部の希釈溶剤を除去し、その後、照射強度160W/cm、ランプとの距離11cm、積算光量3J/cm2 にて紫外線を照射して、硬化後の厚さ2.4μmの保護コート層(8) を形成した。
【0093】
(コーティング剤の組成)
反応性基修飾コロイダルシリカ(分散媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、不揮発分:50重量%) 60重量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 65重量部
N,N−ジメチルアクリルアミド 5重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 70重量部
(非反応性希釈溶剤)
リチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド 1重量部
光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン) 2.8重量部
エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド変性シリコーン
(信越化学工業(株)製、KF−6012) 0.5重量部
【0094】
以上のようにしてディスクサンプルNo.1を作製した。
【0095】
[ディスクサンプルNo.2〜13の作製]
表1に示す組成のコーティング剤を用いた以外は、ディスクサンプルNo.1におけるのと全く同様にしてディスクサンプルNo.2〜13をそれぞれ作製した。反応性基修飾コロイダルシリカ、光重合開始剤については、ディスクサンプルNo.1と同じものを用いた。なお、表1において、便宜のために、ディスクサンプルNo.8は2回記載されている。
【0096】
[ディスクサンプルの評価]
作製した各ディスクサンプルについて、以下に示す性能試験を行った。
【0097】
(帯電半減期の測定)
JIS L1094に準拠して、各ディスクサンプルの保護コート表面における半減期の測定を行った。具体的には、各ディスクサンプルから35mm×35mmの大きさの試験片を切り出し、温度25℃、相対湿度10%に設定された試験室において、得られた試験片を測定器にセットし、120分の測定時間まで測定を行った以外は上記測定方法に従った。この半減期測定を、初期と、温度80℃、相対湿度85%の環境下での50時間保存後、及び同環境下での100時間保存後についてそれぞれ行った。測定結果は、試験片の帯電圧が1/2に減衰するまでの時間、すなわち半減期(分)として得られ、この時間が短いほど、帯電防止性能に優れている。結果を表1に示す。
【0098】
(硬度の評価)
各ディスクサンプルの保護コート表面の鉛筆硬度を、JIS K5400に準じて測定した。いずれのディスクサンプルについても、鉛筆硬度HBであった。
【0099】
【表1】

【0100】
表1から、本発明に合致する各ディスクサンプルNo.1、2、5〜10、12、13はいずれも、保護コート表面の硬度を維持しつつ、帯電防止性能に優れていた。特に、高温高湿環境下での長時間保存後にも優れた帯電防止性を維持していた。
【0101】
これに対して、比較の各ディスクサンプルNo.3、4では、リチウム塩は用いられたが、アクリルアミド誘導体は用いられなかったために、初期の帯電防止性能は良いが高温高湿環境下での長時間保存後の帯電防止性に非常に劣っていた。比較のディスクサンプルNo.11では、リチウム塩が用いられなかったために、初期の帯電防止性能に劣っていた。
【0102】
上記実施例では、相変化型光ディスクへの保護コート層の付与を示した。しかしながら、本発明は、記録層が相変化型の光ディスクのみならず、再生専用型光ディスクや、追記型光ディスクにも適用される。さらに、本発明は、光ディスクのみならず、その他の種々の物体表面への保護コート層の付与にも適用される。そのため、前述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の光ディスクの層構成の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の光ディスクの層構成の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0104】
(20):支持基体
(3) :反射層
(52):第2誘電体層
(4) :記録層
(51):第1誘電体層
(7) :光透過層
(8) :保護コート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属塩(A)と、下記一般式(I):
CH2 =C(R1 )CONR2 3 (I)
(式(1)において、R1 は、水素原子又はメチル基を表し、
2 及びR3 は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、ただし、R2 及びR3 の両者が水素原子であることはない。)
で示されるアクリルアミド誘導体(B)と、分子内に2つ以上の活性エネルギー線重合性基を有する硬化性化合物(C)とを含むコーティング剤組成物。
【請求項2】
アルカリ金属塩(A)は、イミド化合物のアルカリ金属塩である、請求項1に記載のコーティング剤組成物。
【請求項3】
前記コーティング剤組成物は、組成物中の不揮発分100重量部に対して、アルカリ金属塩(A)0.4重量部以上5重量部以下、アクリルアミド誘導体(B)0.2重量部以上15重量部以下を含む、請求項1又は2に記載のコーティング剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載のコーティング剤組成物の硬化物を含む保護コート層が表面に付与された物体。
【請求項5】
支持基体上に、少なくとも記録層又は反射層を含む、1層又は複数層から構成される膜体を有する光情報媒体であって、前記支持基体側表面及び前記膜体側表面のうちの少なくとも一方の表面が、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載のコーティング剤組成物の硬化物を含む保護コート層によって形成されている光情報媒体。
【請求項6】
支持基体上に情報記録層と、情報記録層上の光透過層とを有し、光透過層上に、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載のコーティング剤組成物の硬化物を含む保護コート層を有する光情報媒体。
【請求項7】
前記光透過層は、活性エネルギー線硬化性材料の硬化物から構成されている、請求項6に記載の光情報媒体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−152130(P2006−152130A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−345402(P2004−345402)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】