説明

コーティング装置及びコーティング方法

【課題】コーティング品質及び製品収率の向上。
【解決手段】コーティング装置は、回転ドラム1の内部の錠剤層Aを撮影する高速度カメラ3と、高速度カメラ3の撮影データに基づいて錠剤層Aの錠剤の流動速度を算出するパーソナルコンピュータ4と、パーソナルコンピュータ4による錠剤の流動速度の算出値に基づいて、回転ドラム1の回転速度を制御する制御装置5とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、食品、農薬等の粉粒体のコーティング、混合、乾燥等を行うコーティング装置に関し、特に、軸線回りに回転駆動される回転ドラムを備えたコーティング装置、および該コーティング装置を用いたコーティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、食品、農薬等の錠剤、ソフトカプセル、ペレット、顆粒、その他これらに類するもの(以下、これらを総称して粉粒体という。)にフィルムコーティングや糖衣コーティング等を施すために、回転ドラムを備えたコーティング装置(「パンコーティング装置」とも呼ばれる。)が使用されている。
【0003】
この種のコーティング装置は、例えば下記の特許文献1、2に開示されている。
【0004】
特許文献1は、水平な軸線回りに回転駆動される通気式の回転ドラムを備えたコーティング装置を開示している。回転ドラムは、多角筒形の周壁部と、周壁部の一端から軸方向一方に向かって延びた多角錐形の一端部と、周壁部の他端から軸方向他方に向かって延びた多角錐形の他端部とで構成される。周壁部の各面にはそれぞれ多孔板が装着され、多孔板の多孔部によって周壁部に通気性が与えられている。そして、各多孔板の外周側にそれぞれジャケットが装着され、ジャケットと多孔板との間に通気チャンネルが形成される。
【0005】
また、回転ドラムの他端側、即ちモータ等を含む回転駆動機構が設置されている側には、回転ドラムに対する乾燥エア等の処理気体の通気を制御する通気機構が配備されている。この通気機構は、回転ドラムの回転に伴って所定位置に来た通気チャンネルをそれぞれ給気ダクトと排気ダクトに連通させる機能を有する。
【0006】
例えば、回転ドラムの回転に伴い、ある通気チャンネルが回転ドラムの上部に達すると、その通気チャンネルが給気ダクトと連通し、ある通気チャンネルが回転ドラムの下部に達すると、その通気チャンネルが排気ダクトと連通する。したがって、給気ダクトから回転ドラムの上部の通気チャンネルに導入された処理気体は、周壁部の上部の多孔板を通じて回転ドラムの内部に流入し、そして、粉粒体層(転動床)の内部を通過した後、周壁部の下部の多孔板を通じて通気チャンネルに流出し、さらに、通気チャンネルを通って排気ダクトに排出される。
【0007】
特許文献2は、処理すべき粉粒体が内部に収容され、その軸線回りに回転駆動される通気式の回転ドラムを備えたコーティング装置において、回転ドラムは、その軸線方向に沿って、一端部と、他端部と、一端部と他端部とを連続させる周壁部とを有し、他端部は回転ドラムを回転駆動する回転駆動機構の側に位置し、一端部及び他端部にはそれぞれ通気口が設けられ、一端部及び他端部のうち一方の通気口は、処理気体を外部から回転ドラムの内部に供給するための給気口となり、一端部及び他端部のうち他方の通気口は、処理気体を回転ドラムの内部から外部に排出するための排気口となり、給気口を介して回転ドラムの内部に供給された処理気体が、回転ドラムの内部の粉粒体層中を通過して排気口から排出される構成を開示している。
【0008】
回転ドラムは通気式のものであるが、通気口が一端部と他端部に設けられており、周壁部には給排気用の通気部(多孔部)は設けられていない。したがって、従来の通気式の回転ドラムのように、周壁部の通気部(多孔部)を外周側からジャケットで覆って通気チャンネルを形成するといった複雑な通気構造を設ける必要はない。すなわち、本発明のコーティング装置は、通気式の回転ドラムを備えているが、回転ドラムの周壁部には給排気用の通気部(多孔部)はなく、言い換えれば、回転ドラムの周壁部は気密な構造を有し、また、回転ドラムの周壁部の外周側にジャケットで覆われる通気チャンネルもない。そのため、従来装置に比べて、洗浄作業、洗浄後のバリデーション作業を容易かつ確実に行うことができる。
【0009】
一端部及び他端部のうち一方の通気口は給気専用、他方の通気口は排気専用となり、一端部又は他端部の給気口を介して回転ドラムの内部に供給された処理気体(熱風、冷風等)は、回転ドラムの内部の粉粒体層中を通過して他端部又は一端部の排気口から排出される。そのため、粉粒体層の内部まで通気が行き渡り、粉粒体層の乾燥等の処理が斑なく充分に行なわれる。
【0010】
回転ドラムは、その軸線が水平線に対して、0°≦θ≦90°の範囲内の所定角度θをなす状態で配設される。すなわち、回転ドラムは、その軸線が水平線と平行な状態(θ=0°)、その軸線が鉛直線と平行な状態(θ=90°)、その軸線が水平線に対して傾斜した状態(0°<θ<90°)のうち、いずれか一つの状態を選択して配設され、運転される。好ましくは、回転ドラムは、その軸線が水平線に対して所定角度θをもって傾斜した状態で配設される。この場合、軸線の傾斜角度θは20°≦θ≦70°より好ましくは30°≦θ≦45°、特にθ=30°又はθ=45°に設定される。
【0011】
回転ドラムの軸線が水平線に対して所定角度θで傾斜していることにより、回転ドラムの内部で処理し得る粉粒体の容積量が多くなるので、1回当りの処理量が増大して、生産効率が向上する。また、回転ドラムが傾斜した軸線の回りに回転することにより、回転ドラムの内部に収容された粉粒体は、回転ドラムの回転に伴い、回転方向への動きと軸線方向への動きとを伴った状態で流動するので、粉粒体層の攪拌混合効果が高く、例えば、回転ドラムの内部にいわゆるバッフル(攪拌羽根)を配設していない場合でも、充分な攪拌混合効果が得られる。もちろん、バッフルを併用すれば、より高い攪拌混合効果を得ることができる。回転ドラムの軸線を傾斜させる場合、通常、回転ドラムの後端部を傾斜下方側に位置させる。
【0012】
以上のコーティング装置において、回転ドラムの内部にはスプレー液を噴霧するスプレーノズルが配置されており、スプレーノズルから回転ドラム内の粉粒体層に向けてスプレー液が噴霧される。粉粒体層に噴霧されたスプレー液は、回転ドラムの回転に伴う粉粒体層の混合攪拌作用によって粒子表面に展延され、粉粒体層を通過する処理気体によって乾燥される。これにより、粉粒体層の粒子表面にコーティング被膜が形成される。
【0013】
また、特許文献3には、CCDカメラと高速ストロボ装置とを用いて、コーティング中の錠剤粒子を撮影し、その画像をもとに錠剤の膜厚、表面状態(平滑度等)、凝集の有無、色むら等の評価を行うと共に、スプレー液のコーティング液量、ドラムの回転数、空気量、熱風温度を制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2001−58125号公報
【特許文献2】特開2004−148292号公報
【特許文献3】特開平7−794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
この種のコーティング装置を用いた粉粒体製品(錠剤等)のコーティング処理において、良好なコーティング品質を確保するためには、粉粒体層に噴霧されたスプレー液を粒子表面に均一に展延させる処理操作が必要であり、そのためには、回転ドラム内における粉粒体層の流動状態に応じてドラム回転数等の操作条件を設定することが重要である。
【0016】
従来は、回転ドラム内における粉粒体層の流動状態を作業者が観察し、作業者の経験によって操作条件を決定していたが、粉粒体層の流動状態を目視によって正しく評価することは困難であり、このことがコーティング品質の低下や不良製品の発生につながることがあった。また、錠剤コーティング等では、コーティング処理の進行に伴い、処方によっては錠剤粒子に滑沢作用が付与されたり、摩擦抵抗が上がったりするため、錠剤層の流動状態が遂次変化するが、このようなコーティング処理の進行に伴う粉粒体層の動きの微妙な変化を作業者が観測することは不可能であり、製品外観の悪化や不良製品の発生が起こりやすい傾向があった。
【0017】
本発明の課題は、回転ドラム内における粉粒体層の流動状態を正確に検知し、その結果に応じて操作条件を制御することにより、粉粒体製品のコーティング品質及び収率の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願発明者は、この種のコーティング装置を用いた粉粒体製品のコーティング処理に関する研究を行う中で、回転ドラム内における粉粒体層の表層部の粒子の流動速度を検知することにより、粉粒体層の流動状態を正確に把握することができること、そして、上記粒子の流動速度を指標値として操作条件を制御することにより、コーティング品質と製品収率を高めることができるとの知見を得て本発明を提案するものである。すなわち、本発明は、処理すべき粉粒体が内部に収容され、軸線回りに回転駆動される回転ドラムを備え、回転ドラムの内部の粉粒体層に対して処理気体の通気と膜剤液の噴霧を行って、粉粒体粒子の表面に被膜を形成するコーティング装置において、回転ドラムの内部の粉粒体層を撮影する高速度カメラと、高速度カメラの撮影データに基づいて粉粒体層の粒子の流動速度を算出する演算処理装置と、演算処理装置の算出値に基づいて、膜剤液の噴霧条件、処理気体の通気条件及び回転ドラムの回転速度のうち少なくとも一つの操作条件を制御する制御装置とを備えた構成を提供する。ここで、高速度カメラは、ハイスピードカメラ、高速カメラ、スーパーモーションカメラとも呼ばれ、一般には1秒間に30フレーム(コマ)以上撮影できるものが該当するが、500コマ/秒〜10000コマ/秒程度のものが市場では主流である。100000コマ秒以上のものは超高速度カメラと呼ばれることもある。本発明で用いる高速度カメラは、コマ数/秒に特に制限はなく、コーティング装置の構成、操作条件、カメラ価格等を勘案して、適宜選択すれば良い。
【0019】
上記構成において、演算処理装置は、高速度カメラから取得した複数の撮影データ(コマ)から粉粒体表層部の特定の粒子の移動距離(位置変位量)と流動速度を求め、該流動速度を制御装置に出力する。移動距離とその流動速度を求める特定の粒子は、一つであっても複数であっても良い。複数の粒子について流動速度を求める場合は、求めた流動速度の最大値、最小値又は平均値を制御装置に出力するようにしても良い。
【0020】
回転ドラムが多角形状である場合や回転ドラムの内部にバッフルを設ける場合等では、回転ドラムの回転方向の位置によって粉粒体層に対する混合攪拌作用が異なり、回転ドラムの回転方向の位置によって粉粒体層の流動状態が異なることがある。このような場合、回転ドラムの回転に伴い、回転ドラムの規準位置が回転方向の所定位置に来たときに、演算処理装置から上記流動速度の算出値を制御装置に出力する構成とし、該流動速度の算出値に基づいて操作条件を制御するようにしても良い。これにより、粒子の流動速度の測定バラツキを抑制して、より正確な制御を行うことができる。
【0021】
粉粒体層の粒子の流動速度は、回転ドラムの回転速度に多く依存するので、制御の対象とする操作条件は、回転ドラムの回転速度であることが好ましい。
【0022】
また、本発明は、上記課題を解決するため、軸線回りに回転駆動される回転ドラムの内部に処理すべき粉粒体を収容し、回転ドラムの内部の粉粒体層に対して処理気体の通気と膜剤液の噴霧を行って、粉粒体粒子の表面に被膜を形成するコーティング方法において、回転ドラムの内部の粉粒体層を高速度カメラで撮影し、高速度カメラの撮影データに基づいて粉粒体層の粒子の流動速度を算出し、該流動速度の算出値に基づいて、回転ドラムの回転速度を制御する構成を提供する。この発明においても、回転ドラムの回転に伴い、回転ドラムの規準位置が回転方向の所定位置に来たときの上記流動速度の算出値に基づいて、回転ドラムの回転速度を制御するようにしても良い。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、回転ドラム内における粉粒体層の流動状態を正確に検知することができ、その検知結果に基づいて操作条件を制御するので、粉粒体製品のコーティング品質及び収率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係るコーティング装置を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るコーティング装置を示す概略断面図である。
【図3】回転ドラムの回転と同期して、流動速度の算出値を制御装置に出力する構成とした実施形態を示す線図である。
【図4】高速度カメラの撮影データ(解析動画像)、移動距離及び流動速度の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係るコーティング装置を概念的に示している。このコーティング装置は、特開2004−148292号公報(特許文献2)に記載されたコーティング装置と同様の基本構成を有し、水平線に対して傾斜した軸線回りに回転駆動される通気式の回転ドラム1を備えている。
【0027】
回転ドラム1は、その軸線方向に沿って、一端部1aと、他端部1bと、一端部1aと他端部1bとを連続させる多角形断面の周壁部1cとを有し、他端部1bは回転ドラム1を回転駆動する回転駆動機構1dの側に位置する。一端部1a及び他端部1bにはそれぞれ通気口が設けられ、一端部1aの通気口は処理気体を外部から回転ドラム1の内部に供給するための給気口となり、他端部1bの通気口は処理気体を回転ドラム1の内部から外部に排出するための排気口となる。一端部1aの給気口を介して回転ドラム1の内部に供給された処理気体(熱風等)は、回転ドラム1の内部の粉粒体層中Aを通過して他端部1bの排気口から排出される。また、回転ドラム1の内部にはスプレー液(膜剤液)を噴霧するスプレーノズル2が配置されており、スプレーノズル2から回転ドラム1内の粉粒体層Aに向けてスプレー液が噴霧される。粉粒体層Aに噴霧されたスプレー液は、回転ドラム1の回転に伴う混合攪拌作用によって各粒子の表面に展延され、粉粒体層Aを通過する処理気体によって乾燥される。この実施形態において、コーティング処理の対象となる粉粒体粒子は医薬品等の錠剤粒子であり、以下、粉粒体層Aを「錠剤層A」という。
【0028】
この実施形態では、回転ドラム1の内部に高速度カメラ3が配置されている。高速度カメラ3は、回転ドラム1の回転に伴う攪拌混合作用を受けて流動する錠剤層Aの表層部を撮影可能な位置に配置されており、スプレーノズル2から噴霧されるスプレー液の噴霧ゾーンを転動しながら通過する錠剤層A表層部の錠剤粒子が高速度カメラ3によって所定の時間間隔で連続的に撮影される。
【0029】
傾斜状の回転ドラム1の内部に収容された錠剤粒子は、回転ドラム1の回転に伴い回転方向への動きと軸線方向への動きとを伴った状態で流動するが、回転方向への流動が主流である。すなわち、図2に模式的に示すように(回転ドラム1の周壁部1cは実際には多角形状であるが、同図には円形状で示している。)、回転ドラム1の回転に伴って回転方向前方に持ち上げられた錠剤粒子の多くは、自重により錠剤層A表層部を転動しながら回転方向前方に戻るように流動する。このような錠剤層A表層部の錠剤粒子の流動状態(転動)が高速度カメラ3によって撮影される。そして、高速度カメラ3で撮影された錠剤層Aの撮影データは、演算処理装置、例えばパーソナルコンピュータ4に逐次出力され、パーソナルコンピュータ4にて撮影データから錠剤層Aの錠剤粒子の移動距離(位置変位量)と流動速度が逐次算出される。パーソナルコンピュータ4で算出された錠剤粒子の流動速度の算出値は制御装置5の処理判定部5aに逐次入力される。処理判定部5aには、処理すべき錠剤粒子の種類(錠剤形状等)、仕込み量、被膜条件(膜剤液の種類、被膜厚さ等)、操作条件(回転ドラムの回転速度、膜剤液の噴霧速度、通気条件等)等に関する情報が予め登録されており、処理判定部5aは、パーソナルコンピュータ4から逐次入力される錠剤粒子の流動速度の算出値と、予め登録されている上記の各種情報に基づいて、錠剤粒子の流動速度が最適な速度になるように、駆動制御部5bに指令信号を出力する。そして、駆動制御部5bは、処理判定部5aから逐次入力される指令信号に基づいて、回転ドラム1の回転駆動装置6に制御信号を逐次出力し、回転ドラム1の回転速度を最適な速度に調整する。
【0030】
例えば、処理すべき錠剤粒子の錠剤形状及び仕込み量と、最適なコーティング品質が得られる錠剤粒子の流動速度との関係を予め実験的に求めて制御装置5の処理判定部5aに登録しておき(膜剤液の種類、噴霧速度、通気条件等は同じ条件)、高速度カメラ3で撮影された錠剤層Aの撮影データに基づいて、錠剤粒子の流動速度が所定の値になるように回転ドラム1の回転速度を逐次制御することにより、錠剤粒子の錠剤形状及び仕込み量に関わらず、錠剤層Aの流動状態を最適な状態に維持して、良好なコーティング品質の錠剤製品を製造することができる。
【0031】
また、膜剤液の噴霧速度と、膜剤液が噴霧された錠剤粒子の濡れ量(錠剤層の単位面積当りに噴霧される膜剤液の噴霧液適量)が一定になるような錠剤粒子の流動速度との関係を予め実験的に求めて制御装置5の処理判定部5aに登録しておき、高速度カメラ3で撮影された錠剤層Aの撮影データに基づいて、錠剤粒子の流動速度が所定の値になるように回転ドラム1の回転速度を逐次制御することにより、膜剤液の噴霧速度を変更した場合でも、錠剤層Aの流動状態を最適な状態に維持し、錠剤粒子の過剰な濡れを防止して、良好なコーティング品質の錠剤製品を製造することができる。
【0032】
さらに、コーティング装置のスケールを変更した場合でも、錠剤層Aの錠剤粒子の流動速度が同じ値になるように回転ドラム1の回転速度を逐次制御することにより、スケール変更前と同様のコーティング操作を再現することができ、スケール間でのコーティング品質のバラツキを低減することができる。すなわち、錠剤層Aの錠剤粒子の流動速度は、スケール変更時の操作条件を設定する際の定量的な指標値となる。
【0033】
回転ドラム1は多角形状であり、また、回転ドラム1の内部の所定位置にバッフルを設ける場合もあるので、回転ドラム1の回転方向の位置によって錠剤層Aに対する混合攪拌作用が異なり、回転ドラム1の回転方向の位置によって錠剤層Aの流動状態が異なることがある。そこで、図3に示すように、回転ドラム1の回転に伴い、回転ドラム1の規準位置が回転方向の所定位置に来たときに、パーソナルコンピュータ4から制御装置5に流動速度の算出値を出力する構成とし、該流動速度の算出値に基づいて回転ドラム1の回転速度を制御するようにしても良い。これにより、錠剤粒子の流動速度の測定バラツキを抑制して、より正確な制御を行うことができる。同図に示す例では、回転ドラム1の回転駆動機構1dの回転をロータリーエンコーダ等の回転検出手段で検出し、基準時間における回転ドラム1の位置を0°位置として、回転ドラム1が0°位置に対して回転方向に45°(π/2)回転した位置(基準位置)で、パーソナルコンピュータ4から制御装置5に流動速度の算出値を出力する構成にしている。
【0034】
また、上述したような錠剤粒子の流動速度の逐次算出による制御と、回転ドラム1の回転と同期させた錠剤粒子の流動速度の所定タイミング毎の算出による制御とを、流動速度の算出値のバラツキに応じて切り換えるようにしても良い。すなわち、流動速度の算出値のバラツキが少なく、錠剤層Aの流動状態が安定しているときは、上記の逐次算出による制御を実行し、流動速度の算出値のバラツキが多いときは、上記の所定タイミング毎の算出による制御を実行するようにしても良い。
【0035】
尚、本発明は、上記構成のコーティング装置の他、特開2001−58125号公報(特許文献1)に記載されているコーティング装置、その他の構成のコーティング装置にも同様に適用することができる。
【実施例1】
【0036】
回転ドラム1内に所定量の錠剤粒子を仕込み、回転ドラム1を所定速度で回転させながら、錠剤層Aを高速度カメラ3で撮影し、パーソナルコンピュータ4にて高速度カメラ3の撮影データ(動画像)から錠剤層Aの錠剤粒子の移動距離と流動速度を算出した。高速度カメラ3は、キーエンス社製「VW6000」を用いて90fpsで錠剤層Aを撮影し、その撮影データをパーソナルコンピュータ4に取り込んで演算処理した。パーソナルコンピュータ4では、図4に示すように、錠剤層A表層部の撮影データから特定の一の錠剤粒子(ターゲット錠剤:ターゲット粒子)の移動距離(mm)を求め、単位時間当たりの移動距離からターゲット錠剤の流動速度(mm/s)を算出した。ターゲット錠剤の移動距離は、例えば、撮影データの処理画像に映るターゲット錠剤のピクセル数とターゲット錠剤の大きさの実測値からパーソナルコンピュータ4で演算して求めることができる。また、ターゲット錠剤は、錠剤とその空隙とのコントラストによって自動認識すすることができる。高速度カメラ3の撮影データ(解析動画像)、移動距離及び流動速度は、パーソナルコンピュータ4のディスプレイ、さらには制御装置5のモニター画面に、図4に示すような態様で表示させることができる。尚、ターゲット錠剤の流動速度(mm/s)に加え、加速度(mm/S2)を算出して表示するようにしても良い。
【符号の説明】
【0037】
1 回転ドラム
2 スプレーノズル
3 高速度カメラ
4 パーソナルコンピュータ
5 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理すべき粉粒体が内部に収容され、軸線回りに回転駆動される回転ドラムを備え、前記回転ドラムの内部の粉粒体層に対して処理気体の通気と膜剤液の噴霧を行って、粉粒体粒子の表面に被膜を形成するコーティング装置において、
前記回転ドラムの内部の粉粒体層を撮影する高速度カメラと、該高速度カメラの撮影データに基づいて前記粉粒体層の粒子の流動速度を算出する演算処理装置と、該演算処理装置の算出値に基づいて、前記膜剤液の噴霧条件、前記処理気体の通気条件及び前記回転ドラムの回転速度のうち少なくとも一つの操作条件を制御する制御装置とを備えていることを特徴とするコーティング装置。
【請求項2】
前記演算処理装置は、前記回転ドラムの回転に伴い、前記回転ドラムの規準位置が回転方向の所定位置に来たときに、前記流動速度の算出値を前記制御装置に出力することを特徴とする請求項1又は2に記載のコーティング装置。
【請求項3】
前記少なくとも一つの操作条件が、前記回転ドラムの回転速度であることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のコーティング装置。
【請求項4】
軸線回りに回転駆動される回転ドラムの内部に処理すべき粉粒体を収容し、前記回転ドラムの内部の粉粒体層に対して処理気体の通気と膜剤液の噴霧を行って、粉粒体粒子の表面に被膜を形成するコーティング方法において、
前記回転ドラムの内部の粉粒体層を高速度カメラで撮影し、該高速度カメラの撮影データに基づいて前記粉粒体層の粒子の流動速度を算出し、該流動速度の算出値に基づいて、前記回転ドラムの回転速度を制御することを特徴とするコーティング方法。
【請求項5】
前記回転ドラムの回転に伴い、前記回転ドラムの規準位置が回転方向の所定位置に来たときの前記流動速度の算出値に基づいて、前記回転ドラムの回転速度を制御することを特徴とする請求項4に記載のコーティング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−194333(P2011−194333A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64697(P2010−64697)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(591011384)株式会社パウレック (44)
【Fターム(参考)】