説明

コーヒー豆または/およびコーヒー抽出残渣より多糖類を製造する方法

【課題】 従来その分解が困難といわれ着目されてこなかったコーヒー豆または/およびコーヒー抽出残渣から、効率的に多糖類を製造する方法提供することを目的とする。
【解決手段】 (a)コーヒー豆または/およびコーヒー抽出残渣を10.0μm〜5.0mmの粒子径に粉砕する工程、(b1)前記(a)記載の工程の後、希アルカリ存在下、50〜100℃での加熱処理を行う工程、(c1)前記(b1)記載の工程終了後、セルラーゼを作用させる工程、(b2)前記(c1)記載の工程を経た後、希アルカリ存在下、120℃以上の加熱処理を行う工程、(c2)前記(b2)記載の工程を経た後、セルラーゼを作用させる工程、を含む、コーヒー豆または/およびコーヒー抽出残渣より多糖類を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー豆または/およびコーヒー抽出残渣より多糖類を製造する方法に関し、特に、コーヒー豆または/およびコーヒー抽出残渣からアラビノガラクタン(ガラクタン)やガラクトマンナンからなる多糖類を効率的に抽出・生産する方法に関するものである。なお、本発明でいう「コーヒー豆」とは、焙煎する前の生豆、あるいは高温で焙煎処理しメイラード反応を進行させたコーヒー焙煎豆のことをいい、「コーヒー抽出残渣」とはコーヒー焙煎豆から水、湯、水蒸気等によって可溶性固形分を抽出した後の残渣のことをいう。
【背景技術】
【0002】
現在コーヒーは、コーヒーノキから果実を収穫し、その胚乳部分を精製し、焙煎、粉砕、抽出して飲用されている嗜好品であるが、その胚乳部分の約48%は多糖類であり、ガラクトマンナン、アラビノガラクタン、セルロースから構成されているとされている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
ガラクトマンナンは、ガラクトースとマンノースから構成される多糖類であるが、一般的に市場で流通しているガラクトマンナンとしては、フェヌグリークの種子から得られるフェヌグリークガム、グァーの種子から得られるグァーガム、イナゴマメの種子から得られるローカストビーンガム、タラの種子から得られるタラガム、カシアの種子から得られるカシアガムなどが挙げられる。ガラクトマンナンの製造方法としては、上記植物体に水、熱水、アルカリ、酸等で抽出することによって得ることができる。
【0004】
ガラクトマンナンはヒトが消化できない多糖類なので、一般的に食物繊維と言われている。ガラクトマンナンは、水に溶かすと水分を吸収しゲル化する性質があり、天然増粘剤として広く食品、化粧品、医薬品等の工業用原料として利用されている。
【0005】
これらガラクトマンナンは、ガラクトース:マンノースの比率が原料由来の植物によって異なっていることが特徴である。例えばガラクトースとマンノースの割合として、フェヌグリークガムは、1:1、グァーガムが1:2、ローカストビーンガムは、1:4である。ガラクトマンナンにおいては、マンノースに対するガラクトースの割合が高くなるに従い水溶性、乳化性、安定性が向上する性質を持っている。それは、ガラクトースの無い100%マンナンは水には不溶であり、側鎖のガラクトースが、マンナンの高分子を長く伸ばし、水に不溶の結合物になるのを防いでいるためである。
【0006】
そのため、ガラクトマンナンにおいては、ガラクトースを多く含有しているほうが食品、化粧品、医薬品工業において有用であるといわれており、ガラクトマンナンで最もガラクトース含有量の多いフェヌグリークガムについての精製方法が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0007】
また近年になり、食品、化粧品、医薬品工業における増粘剤、安定剤としての役割以外で、ガラクトマンナンの機能性に関する研究が盛んになり、様々な効能があることが明らかになってきた。例えば血液中のコレステロールを低下させる作用、肝機能障害改善及び予防、プリン体の吸収抑制、肥満防止、アレルギー体質の改善などの効果が挙げられ、今後注目の機能性食品素材である。
【0008】
ガラクトマンナンはコーヒー豆にも含まれている。コーヒー豆のような、世界中で大量に流通・消費されている植物素材中にもし品質のよいガラクトマンナンが含まれていれば、ガラクトマンナンの資源として非常に有用であると考えられるが、一般的にコーヒー豆に含まれるガラクトマンナンは、マンノースに対してガラクトースの比率が非常に少ないと言われており、その比率は生豆のもので1:16〜1:18である(例えば非特許文献2参照)。このようなマンノースの多い多糖類は難水溶性であり、食品工業等では使用し難く、そのためコーヒー豆由来のガラクトマンナンは工業的に利用されることはなかった。
【0009】
アラビノガラクタンは水溶性ヘミセルロースの一種で、全ての植物に共通する細胞壁構成成分であり、ガラクトースからなる主鎖にアラビノースもしくはガラクトースからなる側鎖が結合した多糖類の総称である。アラビノガラクタンは構造の違いからType−IとIIに大別されている。Type−Iアラビノガラクタンはβ−(1→4)−ガラクトピラノシド結合をもつ主鎖とα−L−アラビノース残基を有する側鎖が結合している。Type−IIアラビノガラクタンは、β−(1→3)−ガラクトピラノシド結合からなる主鎖とα−L−アラビノースで修飾されたβ−(1→6)−ガラクトシド結合からなる側鎖で構成され、ごく微量のキシロース、ラムロース、フコース、グルクロン酸などを含んでいるのが特徴である。
【0010】
Type−IIアラビノガラクタンはコーヒー豆胚乳部に多く含まれている。非特許文献1によると、たとえばロブスタ種(Coffea canephora var. robusta)のType−IIアラビノガラクタン含量はコーヒー豆に17%(乾燥重量あたり)含まれ、アラビカ種(Coffea arabica)より3%ほど多い。
【0011】
またコーヒー豆を焙煎した場合、焙煎の熱によってアラビノガラクタンは分解を受け、側鎖のアラビノースが切断され香気成分、色素成分に変化する。従って焙煎されたコーヒー豆にはアラビノース含有量の少ないアラビノガラクタンが含まれている(例えば非特許文献3参照)。
【0012】
アラビノガラクタンは水溶性多糖類のなかでは粘度が低いので、粘度を上げずに固形分濃度を上げることができ、インクにおいては色の転写性改善、安定性向上などの目的で使用されるほか、近年ではプレバイオティクス効果等、機能性食品素材として有望視されている(例えば非特許文献4参照)。
【0013】
このようにコーヒー豆には、アラビノガラクタンも含まれており、食品、化粧品、医薬品工業において有用であると思われるが、取り出すのは非常に困難である。コーヒー豆からアラビノガラクタンを抽出しようとすると、非常に濃いアルカリで長時間抽出しなければならない。例えば非特許文献5によると、20%NaOHで100℃、一昼夜抽出しても全体の半分しか抽出されないと記載されている。このようにコーヒー豆にはアラビノガラクタンが多く含まれているが、商業的に製造するには実際的ではなかった。
【0014】
【特許文献1】特許公開2005−341801号公報
【非特許文献1】Bradbury, A G W.; Halliday, D J. Chemical structures of coffee bean polysaccharide. J Agric Food Chem. 38,389-392(1990)
【非特許文献2】R.J.Clarke, O.G.Vitzhum, COFFEE Recent Developments, Blackwell Science, p5(2001)
【非特許文献3】Redgwell R J., Fischer M., Curti D., Sutherland P., Hallett I., Macrae E., Arabinogalactan-proteins in Coffee Bean Cell Walls, FFIジャーナル、211、38-47(2006)
【非特許文献4】今村理佐、村井健二、趙春菊、竹部幸子、小橋恭一、アラビノガラクタンのラットおよびヒト腸内細菌による代謝、ビフィズス、6、19−29(1992)
【非特許文献5】R.J.Clarke, O.G.Vitzhum, COFFEE Recent Developments, Blackwell Science, p4(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、従来その分解が困難といわれ着目されてこなかったコーヒー豆または/およびコーヒー抽出残渣から、効率的に多糖類を製造する方法提供することを目的とするものである。特に、アラビノガラクタンもしくはガラクタン、およびガラクトマンナンを効率的に遊離させる方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような課題を解決するために鋭意検討の結果、下記のコーヒー豆または/およびコーヒー抽出残渣より多糖類を製造する方法によって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、コーヒー豆または/およびコーヒー抽出残渣より多糖類を製造する方法であって、
(a)コーヒー豆または/およびコーヒー抽出残渣を10.0μm〜5.0mmの粒子径に粉砕する工程;
(b1)前記(a)記載の工程の後、希アルカリ存在下、50〜100℃での加熱処理を行う工程;
(c1)前記(b1)記載の工程終了後、セルラーゼを作用させる工程;
(b2)前記(c1)記載の工程を経た後、希アルカリ存在下、120℃以上の加熱処理を行う工程;
(c2)前記(b2)記載の工程を経た後、セルラーゼを作用させる工程
を含むことを特徴とする。
【0018】
つまり、本発明は、コーヒー豆やコーヒー抽出残渣にアルカリ処理、次に微生物由来の酵素、特にセルラーゼを施す方法を繰り返すことで、直接コーヒー豆の細胞壁構成成分に作用して、セルロース由来の単糖類、オリゴ糖類を遊離させ、効果的にアラビノガラクタンおよびガラクトース含量の多いガラクトマンナンを取り出すことができることを見出したもので、従来その分解が困難であったコーヒー豆やコーヒー抽出残渣から、効率的に多糖類を製造する方法を提供することが可能となった。
【0019】
ここで、本発明においては、コーヒー豆または/およびコーヒー抽出残渣の細胞壁成分を85%以上可溶化させることを特徴とする。
【0020】
上記のように、アラビノガラクタンは細胞壁構成成分であり、従前の方法によっては、コーヒー豆やコーヒー抽出残渣から取り出すのは非常に困難であった。本発明は、所定の温度条件下において、2段階のアルカリ処理と酵素処理を最適に組み合わせることによって、これらの細胞壁成分を85%以上可溶化させることができることを見出したものである。これによって、アラビノガラクタンやガラクトマンナンなどの多糖類を効率的に抽出することが可能となった。
【0021】
また、本発明において、前記細胞壁成分が、アラビノガラクタンもしくはガラクタン、およびガラクトマンナンから構成され、細胞壁組織を形成することを特徴とする。
【0022】
上記の検証の結果、コーヒー豆細胞壁には、アラビノガラクタンもしくはガラクタンだけでなく、商業的にも価値の高いガラクトース含量の多いガラクトマンナン部分が存在していることを見出した。本発明は、さらに、コーヒー豆やコーヒー抽出残渣に対して所定の処理を行うことによって、かかる細胞壁成分からアラビノガラクタンとともに、ガラクトマンナンを温和に簡便に取り出すことが可能となった。
【0023】
ここで、本発明において、前記多糖類が、アラビノガラクタンもしくはガラクタンであることを特徴とする。
【0024】
上記のように、コーヒー豆には、アラビノガラクタンも含まれているが、取り出すのは非常に困難で、従前の方法によって抽出しようとすると、非常に濃いアルカリで長時間抽出しなければならない。本発明は、コーヒー豆やコーヒー抽出残渣に対して所定の処理を行うことによって、かかる細胞壁成分からアラビノガラクタンもしくはガラクタンを簡便にかつ効率的に取り出すことが可能となった。
【0025】
また、本発明において、前記多糖類が、ガラクトースを30%以上含有するガラクトマンナンであることを特徴とする。
【0026】
上記の検証の結果、コーヒー豆細胞壁には、従来のマンノースに対するガラクトース比率が非常に少ないガラクトマンナンだけが分布しているわけではなく、マンノースに対するガラクトースの比率が高く(30%以上)、商業的にも価値の高いガラクトマンナン部分が存在していることを見出した。本発明においては、こうした製造方法によって、アラビノガラクタンとともにこのガラクトマンナンを、効率的にかつ温和に簡便に取り出すことが可能となった。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、コーヒー豆、コーヒー抽出残渣を原料として効率的にアラビノース:ガラクトースの比が1:2.4〜1:4のアラビノガラクタン、ガラクトースからなるガラクタン、ガラクトース:マンノースの比が1:1〜1:3のガラクトマンナンを得ることができる。このようなガラクトース含有量の多いガラクトマンナンやアラビノガラクタンは食品工業、化粧品、医薬品工業で増粘多糖類として使用することができ、原料としてコーヒー豆、あるいはコーヒー抽出残渣を用いて効率的な製造が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の詳細を、コーヒー豆やコーヒー抽出残渣由来のアラビノガラクタンおよびガラクトマンナンの製造方法について、図1のフローチャートを基に説明する。なお、アルカリ処理、酵素処理はこれに限定されることなく、適宜繰り返しても良好な結果が得られるが、アルカリ処理と酵素処理を交互に繰り返し行った方がガラクトマンナンの収率は高まる。
【0029】
本発明に用いられるコーヒー豆としては、アカネ科植物に属するcoffea属の栽培種、アラビカ種、カネフォラ種、リベリカ種の三原種とそれをもとにした数十品種のコーヒー由来であることを指す。アラビカ種は、世界のコーヒー生産量の約三分の二を占め、高品質で豊かな香味が特徴である。カネフォラ種は苦味が強いうえに酸味がなく、香りもよいとはいえず、ブレンドに適している。リベリカ種は、品質も生産量も低く、日本には輸入されていない。
【0030】
本発明は、コーヒー豆やコーヒー抽出残渣より多糖類を製造する方法であって、(a)コーヒー豆やコーヒー抽出残渣を粉砕する工程、(b1)希アルカリ存在下での加熱処理を行う工程(第1回目のアルカリ処理工程を「b1」とする)、(c1)酵素セルラーゼを作用させる工程(第1回目の酵素処理工程を「c1」とする)、(b2)再度、希アルカリ存在下での加熱処理を行う工程(第2回目のアルカリ処理工程を「b2」とする)、(c2)再度セルラーゼを作用させる工程(第2回目の酵素処理工程を「c2」とする)、を含むことを特徴とする。つまり、直接コーヒー豆の細胞壁構成成分に作用して、セルロース由来の単糖類、オリゴ糖類を遊離させ、効果的にアラビノガラクタンおよびガラクトース含量の多いガラクトマンナンを取り出すことができるものである。以下、各工程に沿って説明する。
【0031】
(a)コーヒー豆やコーヒー抽出残渣を粉砕する工程
本発明においては、いかなる起源、製法のコーヒー豆であっても使用することができるが、アラビノガラクタンおよびガラクトマンナンを効率的に製造するため、コーヒー豆を各種粉砕機により粉末にして表面積を上げることが望ましい。つまり、コーヒー飲料工場から排出されるコーヒー抽出残渣の場合はそのまま用いた場合、目的物を得ることはできるが収率が低く、粉砕することによってコーヒー豆の分解率が2〜3倍に向上し、アラビノガラクタンおよびガラクトマンナンの収率が向上する。具体的には、ジェット式やトルネード式及びボール式及びカッター式のミル等の乾式破砕機を使用して粉砕することができる。微細に粉砕すれば、より酵素反応が進行しやすくなる。
【0032】
粒度については、粒径(メジアン値)が10.0μm〜5.0mmが好ましく、さらに粒径が10.0μm〜0.6mmがより好ましい。粒径が10.0μmを下回ると、微粉体となり搬送や取り扱いが困難になる。また、5.0mm以上となると、処理機能が十分に働かず抽出効率が悪くなる。
【0033】
また、コーヒー豆やコーヒー抽出残渣に脂質が多く含まれる場合には、熱水、水蒸気、有機溶媒などによって適宜脱脂してもよい。また有機溶媒または有機溶媒と水との混合溶媒を使用することができる。具体的に使用する有機溶媒としては、エタノール、メタノール、プロパノール、エチルエーテル、ヘキサン、クロロホルム等を挙げることができる。
【0034】
(b1)希アルカリ存在下での加熱処理を行う工程(第1回目)
本発明では前処理方法として、アルカリによる前処理を行うことを特徴とする。前処理方法としてアルカリ処理を行うことで、コーヒー豆の組織内部に存在するボディ構造体、ショ糖、ポリフェノール、水溶性多糖類など、コーヒー抽出残渣では主に褐色色素や水溶性多糖類が抽出除去され、その後の酵素反応が進みやすくなることを見出すに至った。
【0035】
ボディ構造体とは、植物の胚乳部の細胞に含まれ、一次細胞壁の内部の脂質、タンパク質などがペクチン等の皮膜で覆われ塊となっている部分のことを指し、大豆などでは典型的なボディ構造体を見ることができる(Kasai N et al.,Isolation and Enzymatic Digestion of Body Complex of Soybeen Seed, J. Agric Food Chem,53,10026-10033(2005))。
【0036】
上記アルカリ水溶液としては、例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化バリウム等の水溶液から適宜選択して用いられる。上記アルカリ水溶液の使用量は、好ましくは乾燥コーヒー生豆、およびコーヒー焙煎豆、およびコーヒー抽出残渣の5〜30倍重量である。
【0037】
コーヒー生豆、コーヒー焙煎豆を使用する場合も同様の前処理が必要であるが、特にコーヒー焙煎豆、およびコーヒー抽出残渣においては、ショ糖、タンパク質、ポリフェノールなどの熱反応物であるコーヒー褐色色素が細胞壁成分に付着しているので、このアルカリ処理を2回以上繰り返してもよい。
【0038】
(b1−1)アルカリ処理濃度と処理時間の検討
アルカリ処理濃度と時間はできるだけ穏やかな条件が好ましいため、そのアルカリ濃度ならびに時間を検討した。
(1)検証には、具体的には0.1gのコーヒー抽出残渣を用い、これに50倍量の上記NaOH溶液を作用させたのち溶出された褐色物質を376nmの吸光度で測定した。アルカリ濃度に関しては1M(Mol%)、0.1M、および0.01MのNaOH溶液を用い、処理時間に関しては1時間、2時間、および4時間とし、処理温度については120℃の温度で検討した。
(2)すべての実験は4回行い、その平均値とSD(標準偏差)でグラフに示した。その結果、図2に示すように、アルカリ前処理において、アルカリ濃度が濃く、処理時間が長いほど溶出してくる褐色物質の量は多かったが、1Mと0.1MのNaOHでは溶出してくる褐色色素量に大きな差はみられなかった。
【0039】
(b1−2)アルカリ処理濃度と処理温度の検討
次に、アルカリ処理濃度と処理温度の関連について検討した。
(1)検証には、アルカリ前処理において、アルカリ濃度として1Mと0.1MのNaOH溶液を用い、処理温度を20℃、50℃、100℃および120℃とし、処理時間を1時間とする条件で検討した。また、その条件で前処理した後、微生物由来の酵素としてセルラーゼを用い酵素処理を行い、コーヒー抽出残渣の存在の有無を検討した。
(2)前処理を行った結果は、図3に示すように、処理濃度については、1Mと0.1MのNaOHでは溶出してくる褐色色素量に大きな差はみられなかった。処理温度については、100℃以下と120℃以上において大きな差がみられ、120℃以上において溶出してくる褐色色素量が大きくなった。
また、酵素処理を行った結果を、図4のように写真で示す。0.1MのNaOHを用いて100℃以下にて1時間前処理した場合、あるいは1MのNaOHを用いて50℃以下にて1時間前処理した場合において、コーヒー抽出残渣の存在が確認されたが、その後の酵素処理において、0.1MのNaOHを用い、50℃にて1時間前処理した試験区ではコーヒー抽出残渣の崩壊が見られ、0.1MのNaOHを用い、100℃にて1時間前処理した試験区ではコーヒー抽出残渣は崩壊していた。
【0040】
(b1−3)上記検討結果のまとめ
上記の検討結果から、アルカリ処理は、アルカリ水溶液濃度として0.1M以上が好ましく、0.1〜1Mがより好ましい。アルカリ処理時間は、約1時間以上が好ましく、2時間以上の加熱条件で前処理を行うことがより好ましい。
アルカリ処理温度は、溶出する褐色物質を多くするためには、120℃以上の加熱温度条件とすることが好ましい。また、後工程における酵素処理においてコーヒー抽出残渣の崩壊が生じるためには、50℃以上の加熱温度条件とすることが好ましく、さらに外観上コーヒー抽出残渣のない状態を作製するためには120℃以上の温度の加熱条件で前処理を行うことが好ましい。ただし、100℃以下の加熱条件においても、アルカリ水溶液濃度を調整することによってコーヒー抽出残渣を殆んどない状態にすることができる。酵素処理に用いる酵素が失活しない条件(例えば60℃以下)を早期に実現するためには、前処理温度は低温が好ましく、後述する2段階の加熱処理(b2)および酵素処理(c2)を行う場合には、最初のアルカリ処理は褐色色素やボディ構造体を除去するのが目的であり、早期の段階での加熱処理としては50〜100℃が好ましい。
また、アルカリ量を増やし、処理温度を高めればアルカリ処理の回数を減らすこともできる。この場合アルカリ量は5〜30倍量、特に10倍量以上が好ましく、アルカリ濃度は0.1M以上、処理温度は100℃以上、処理時間は20分以上の条件が望ましい。
【0041】
(c1)酵素セルラーゼを作用させる工程(第1回目)
次に、アルカリ処理したコーヒー豆、およびコーヒー抽出残渣の酵素反応条件について記述する。本発明に用いられる酵素としては、微生物由来であり、コーヒー豆、およびコーヒー抽出残渣作用してその細胞壁成分を崩壊させる活性のあるものであれば、特に限定されるものではない。微生物は、果汁清澄用に使用されるペクチナーゼ、コーヒーの抽出率向上のために使用されるヘミセルラーゼ等の酵素の生産菌として古くから使用されており、安全性が確立された菌である。
【0042】
このような酵素は、微生物を培養することにより得ることができる。培養の方法としては、多糖類分解酵素が産生される方法であれば特に限定されるものではなく、固体培養、液体培養等の通常の培養方法を用いればよい。また、培養条件としても、通常の条件で培養を行えばよい。本発明においては、コーヒー豆、およびコーヒー抽出残渣分解活性を含有するいかなる画分を使用してもよく、必要に応じてコーヒー豆、およびコーヒー抽出残渣分解活性を含有する画分を常法により精製あるいは部分精製したものを使用することもできる。また、市販の酵素剤を使用してもよく、そのような酵素剤としては、セルラーゼダイワ(大和化成株式会社)等が挙げられる。これらの酵素剤は、食品用酵素剤として市販されているものであり、食品用途としての使用実績があり、安全性が確立されている。セルラーゼダイワはトリコデルマ属が産生するセルラーゼの1種である。
【0043】
コーヒー豆、およびコーヒー抽出残渣に上記の酵素を作用させる条件としては、通常の酵素反応に用いられる条件であれば特に問題はないが、使用する酵素の最適作用条件で反応することが望ましい。反応の温度としては、酵素が失活しない条件下で反応を行うことが望ましく、25〜65℃、好ましくは50〜60℃がよい。また、反応のpHとしては、酵素の至適作用条件下で反応を行うのが望ましいことはいうまでもなく、pH2〜9、好ましくはpH4.0〜6.0がよい。
【0044】
(c1−1)酵素反応の検討
コーヒー抽出残渣を使用して微生物由来の酵素を使って分解し、生成した糖の分析を行い、何が生成されているかを検討した。
(1)アルカリ処理したコーヒー抽出残渣(コーヒー抽出残渣に対して50倍量の0.1MのNaOHを加え、120℃、1時間オートクレーブした後、ろ過、乾燥して得られたもの)2.0gに、0.1M酢酸緩衝液(pH5.0)15mL、0.1M酢酸緩衝液(pH5.0)1mLにセルラーゼダイワ(大和化成株式会社)80mgを溶かした酵素溶液1mLを加えて40℃で酵素分解反応を行った。反応開始1、2、4、8および24時間後に採取し、遠心した後、酵素の失活温度(70℃)まで加熱し酵素反応を止めた。その後、それぞれのサンプルについてアルジトール・アセテート法により中性糖の分析を行った。
(2)図5に示すように、酵素反応が進み全糖量が増加してくるに伴い、同様に還元糖、ウロン酸も生成してくることが分かった。グラフの結果より、生成してくる糖類は酵素反応後24時間でほぼ頭打ちとなっているので、酵素処理時間は24時間程度が適していると考えられる。酵素反応24時間後の全糖量(48.05mg/mL)と還元糖量(21.77mg/mL)より、
48.05/21.77≒2.21
よって、酵素反応で生成してくる糖の平均糖鎖数は約2.21だと考えられた。
また上記結果より、酵素反応時間は使用する酵素の量に依存するが、通常8時間から24時間の間に設定するのが作業上好ましい。
【0045】
(c1−2)生成した糖の構成の分析
(1)溶解液に含まれる還元糖の種類を分析したところ、図6に示すように、単糖類としてはアラビノース(Ara)、ガラクトース(Gal)、マンノース(Man)、グルコース(Glc)、ラムノース(Rha)が検出された。これはもともとコーヒー抽出残渣には含まれていない糖であり、コーヒー抽出残渣を構成している多糖類、すなわちアラビノガラクタン、マンノース含量の多いガラクトマンナン、セルロースの構成成分由来であると考えられる。このことから、これらの単糖類は微生物が生産する酵素によって、コーヒー豆、およびコーヒー抽出残渣の細胞壁成分が酵素分解して生成したものと考えられた。
(2)上記酵素処理によって分解しなかった部分について糖分析を行ったところ、ガラクトース:マンノースが1:1〜2:3の割合で含まれる多糖類から構成される細胞壁成分であることを発見した。
(3)このような、ガラクトース:マンノースが1:1〜2:3の割合で含まれる多糖類成分は、コーヒー豆細胞壁に一部含まれるほか、細胞内部に網の目状に張り巡らされている構造体の主要構成成分であることがわかった(図7)。この多糖類成分は、3000rpm、5分の遠心分離処理によって容易に回収することができた。
【0046】
(b2)希アルカリ存在下での加熱処理を行う工程(第2回目)
上記方法により得られた細胞壁由来多糖類成分について、更に0.1MのNaOHで120℃、10分処理することにより、アラビノース:ガラクトース比が1:4〜1:2.4のアラビノガラクタンとガラクトース:マンノース比が1:1〜1:3のガラクトマンナン構成部分を別々に単離することができる。
【0047】
このとき、アルカリ処理を行う条件は、上記(b1−3)に述べたように、アルカリ水溶液濃度として0.1M以上が好ましく、0.1〜1Mがより好ましい。アルカリ処理時間は、約1時間以上が好ましく、2時間以上の加熱条件で前処理を行うことがより好ましい。また、溶出する褐色物質を多くし、後工程における酵素処理においてコーヒー抽出残渣のない状態を作製するためには120℃以上の温度の加熱条件で前処理を行うことが好ましい。
【0048】
つまり、最初のアルカリ処理は褐色色素やボディ構造体を除去するのが目的であり、50〜100℃でよいが、二度目のアルカリ処理は120℃以上でなければならない。この温度で細胞壁に強固に結合しているアラビノガラクタンが溶出され、基質部分がきちんと露出することでその後の酵素反応をスムーズに進ませることができる。
【0049】
(c2)酵素セルラーゼを作用させる工程(第2回目)
上記方法で得られたガラクトース:マンノース比が1:1〜1:3のガラクトマンナン構成部分に対し、再びセルラーゼ処理することで、さらに純度の高まったガラクトマンナンを得ることができる。
【0050】
以上のように、本発明においては、2段階のアルカリ処理と酵素処理を最適に組み合わせた製造方法によって、コーヒー豆およびコーヒー抽出残渣の細胞壁成分は少なくとも85%以上可溶化される。酵素処理液中には単糖、オリゴ糖、アラビノガラクタン、ガラクトース含有量が30%以上含まれるガラクトマンナンなどが含まれるが、セルロースは含まれない。アラビノガラクタン、またガラクトマンナンのみを単離する場合は、エタノールを添加し沈殿を遠心分離などの処理で回収する方法や、ゲル濾過などのクロマトグラフィーで精製できるほか、可溶化液を混合物という形で適宜濃縮、乾燥処理を行ってもよい。
【実施例】
【0051】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0052】
<実施例1> コーヒー抽出残渣からのアラビノガラクタン(ガラクタン)およびガラクトマンナンの製造
一連の処理工程と抽出液、固体の残渣部分の糖組成を図8に示した。
【0053】
(1)希アルカリ処理(1回目)
脱脂処理したコーヒー抽出残渣2gに対し、10倍量の0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH10.0)を加え100℃、20分加熱した。加熱処理後、遠心分離(3000rpm、5min)によって固液分離しアルカリ処理コーヒー抽出残渣を得た。この処理で得たアルカリ処理コーヒー抽出残渣2gに対し、10倍量の0.1M水酸化ナトリウムを加え100℃、20分加熱した。加熱処理後、遠心分離(3000rpm、5min)によって固液分離した。上清の糖含有量は425.3mgであった。沈殿した残渣側を回収した。
【0054】
(2)酵素処理(1回目)
(1)の処理で得たアルカリ処理済コーヒー抽出残渣0.91gに10倍量の0.1M酢酸緩衝液(pH5.0)を加え、セルラーゼダイワ(大和化成)を1%になるように添加し、40℃、24時間反応させた。反応後、遠心分離(3000rpm、5min)によって固液分離した。上清側の糖含有量は955.0±111mgであった。沈殿した残渣側はガラクトマンナンを主成分とする細胞壁成分であり、この細胞壁成分量はイニシャルの未処理コーヒー抽出残渣の20.5重量%であった。またガラクトース:マンノース比率は1:3であった。
【0055】
(3)希アルカリ処理(2回目)
(2)の処理で得た細胞壁成分0.44gに対し、10倍量の0.1M水酸化ナトリウムを加え120℃、20分加熱した。加熱処理後、ガラクトース:マンノース=1:2.6の抽出液が得られた。この抽出液中のガラクトースは重合物として含まれており、アラビノガラクタン由来であると思われた。この処理液を遠心分離(3000rpm、5min)によって固液分離した。上清の糖含有量は59.5±3.7mgであった。沈殿した残渣側はガラクトマンナン含有量が更に高まった細胞壁成分であり、この成分量はイニシャルの未処理コーヒー抽出残渣の13.5重量%であった。
【0056】
(4)酵素処理(2回目)
(3)の処理で得た細胞壁成分0.21gを10倍量の0.1M酢酸緩衝液(pH5.0)に溶解し、セルラーゼダイワ(大和化成株式会社)を1%になるように添加し、40℃、24時間反応させた。反応後、遠心分離(3000rpm、5min)によって固液分離し、ガラクトマンナンが含まれる可溶化液を得た。上清の糖含有量は177.9±24mgであり、ガラクトース:マンノース比率は1:3であった。
【0057】
(5)結果
表1に示すように、一連の処理により最終的に脱脂コーヒー抽出残渣の不溶成分は3.85%であった。最終残渣成分は主にマンノースを含んでいたが、不溶成分中の糖含有量は非常に少なく、ガラス板などで押さえ、指で圧力をかけると容易に崩壊した。
【0058】
【表1】

【0059】
<実施例2> コーヒー生豆からのアラビノガラクタンおよびガラクトマンナンの製造
一連の処理工程と抽出液、固体の残渣部分の糖組成を図9に示した。
【0060】
(1)希アルカリ処理(1回目)
コーヒー生豆(Brazil Santos No.2)を粉砕(平均粒子径78.7μm、メジアン径45.4μm)し、脱脂処理したもの2gに対し、10倍量の0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH10.0)を加え100℃、20分加熱した。加熱処理後、遠心分離(3000rpm、5min)によって固液分離しアルカリ処理コーヒー生豆を得た。またこの処理で得たアルカリ処理コーヒー生豆2gに対し、10倍量の0.1M水酸化ナトリウムを加え100℃、20分加熱した。加熱処理後、遠心分離(3000rpm、5min)によって沈殿した残渣側を回収した。上清の糖含有量は421.0mgであった。沈殿した残渣側を回収した。
【0061】
(2)酵素処理(1回目)
(1)の処理で得たアルカリ処理済コーヒー生豆0.93gに10倍量の0.1M酢酸緩衝液(pH5.0)を加え、セルラーゼダイワ(大和化成)を1%になるように添加し、40℃、24時間反応させた。反応後、遠心分離(3000rpm、5min)によって固液分離した。上清側の糖含有量は940.9±77mgであった。沈殿した残渣側はアラビノガラクタン、ガラクトマンナンを主成分とする細胞壁成分であり、この細胞壁成分のガラクトース:マンノース比は1:3であった。この細胞壁成分量はイニシャルの未処理コーヒー生豆の22.2重量%であった。
【0062】
(3)希アルカリ処理(2回目)
(2)の処理で得た細胞壁成分0.41gに対し、10倍量の0.1M水酸化ナトリウムを加え120℃、20分加熱した。加熱処理後、強固に細胞壁成分に結合していたアラビノガラクタンを含む水溶性画分が溶出し、この画分のアラビノース:ガラクトース比率は1:4であった。この処理液を遠心分離(3000rpm、5min)によって固液分離した。上清の糖含有量は31.7±7.9mgであった。沈殿した残渣側はガラクトマンナン含有量が更に高まった細胞壁成分であり、この成分量はイニシャルの未処理コーヒー抽出残渣の13.5重量%であった。
【0063】
(4)酵素処理(2回目)
(3)の処理で得た細胞壁成分0.27gを10倍量の0.1M酢酸緩衝液(pH5.0)に溶解し、セルラーゼダイワ(大和化成)を1%になるように添加し、40℃、24時間反応させた。反応後、遠心分離(3000rpm、5min)によって固液分離し、ガラクトマンナンが含まれる可溶化液を得た。上清の糖含有量は394.2±28.3mgであり、ガラクトース:マンノース比は1:3であった。
【0064】
(5)結果
表2に示すように、一連の処理により最終的に脱脂コーヒー生豆の不溶成分は4.95%であった。最終残渣成分は主にマンノースを含んでいたが、不溶成分中の糖含有量は非常に少なく、ガラス板などで押さえ、指で圧力をかけると容易に崩壊した。
【0065】
【表2】

【0066】
<実施例3> コーヒー生豆からのアラビノガラクタンおよびガラクトマンナンの製造
一連の処理工程と抽出液、固体の残渣部分の糖組成を図10に示した。
【0067】
(1)希アルカリ処理(1回目)
コーヒー生豆(Brazil Santos No.2)を粉砕(平均粒子径78.7μm、メジアン径45.4μm)し、脱脂処理したもの2gに対し、10倍量の0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH10.0)を加え100℃、20分加熱した。加熱処理後、遠心分離(3000rpm、5min)によって固液分離しアルカリ処理コーヒー生豆を得た。この処理で得たアルカリ処理コーヒー生豆2gに対し、10倍量の0.1M水酸化ナトリウムを加え100℃、20分加熱した。加熱処理後、遠心分離(3000rpm、5min)によって固液分離した。上清の糖含有量は421.0±50.2mgであった。沈殿した残渣側を回収した。
【0068】
(2)希アルカリ処理(2回目)
(1)の処理で得たアルカリ処理コーヒー生豆0.93gに対し、10倍量の0.1M水酸化ナトリウムを加え120℃、20分加熱した。加熱処理後、この処理液を遠心分離(3000rpm、5min)によって固液分離し、アラビノガラクタンを含む水溶性画分とガラクトマンナンを含有する細胞壁成分を得た。アラビノガラクタンを含む水溶性画分のアラビノース:ガラクトース比は1:2.4であり、水溶性画分の糖含有量は94.9±10.3mgであった。ガラクトマンナンを含む細胞壁成分量はイニシャルの未処理コーヒー生豆の40.5重量%であった。
【0069】
(3)酵素処理(1回目)
(2)の処理で得たガラクトマンナンを含有する細胞壁成分0.8gを10倍量の0.1M酢酸緩衝液(pH5.0)に溶解し、セルラーゼダイワ(大和化成)を1%になるように添加し、40℃、24時間反応させた。反応後、遠心分離(3000rpm、5min)によって固液分離し、単糖、オリゴ糖、ガラクトマンナンを903±27.2mg含む可溶化液を得た。ガラクトマンナンのガラクトース:マンノース比は1:2.4であった。
【0070】
(4)結果
表3に示すように、一連の処理により最終的に脱脂コーヒー生豆の不溶成分は13.7%であった。最終残渣成分は主にマンノースを含んでいたが、不溶成分中の糖含有量は非常に少なく、ガラス板などで押さえ、指で圧力をかけると容易に崩壊した。
【0071】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】コーヒー豆やコーヒー抽出残渣よりの多糖類製造方法についてのフロー図
【図2】アルカリ処理を行った結果と処理時間との相関を示す説明図
【図3】アルカリ処理を行った結果と処理温度との相関を示す説明図
【図4】アルカリ処理後に酵素処理を行った結果を示す説明図
【図5】酵素処理を行った結果と処理時間との相関を示す説明図
【図6】酵素処理に生成した糖の構成を示す説明図
【図7】酵素処理後の細胞壁の構造体を示す説明図
【図8】実施例1に係る処理工程と抽出液、固体の残渣部分の糖組成を示す説明図
【図9】実施例2に係る処理工程と抽出液、固体の残渣部分の糖組成を示す説明図
【図10】実施例3に係る処理工程と抽出液、固体の残渣部分の糖組成を示す説明図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)コーヒー豆または/およびコーヒー抽出残渣を10.0μm〜5.0mmの粒子径に粉砕する工程;
(b1)前記(a)記載の工程の後、希アルカリ存在下、50〜100℃での加熱処理を行う工程;
(c1)前記(b1)記載の工程終了後、セルラーゼを作用させる工程;
(b2)前記(c1)記載の工程を経た後、希アルカリ存在下、120℃以上の加熱処理を行う工程;
(c2)前記(b2)記載の工程を経た後、セルラーゼを作用させる工程
を含む、コーヒー豆または/およびコーヒー抽出残渣より多糖類を製造する方法。
【請求項2】
コーヒー豆または/およびコーヒー抽出残渣の細胞壁成分を85%以上可溶化させることを特徴とする請求項1記載のコーヒー豆または/およびコーヒー抽出残渣より多糖類を製造する方法。
【請求項3】
前記細胞壁成分が、アラビノガラクタンもしくはガラクタン、およびガラクトマンナンから構成され、細胞壁組織を形成することを特徴とする請求項1または2に記載のコーヒー豆または/およびコーヒー抽出残渣より多糖類を製造する方法。
【請求項4】
前記多糖類が、アラビノガラクタンもしくはガラクタンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコーヒー豆または/およびコーヒー抽出残渣より多糖類を製造する方法。
【請求項5】
前記多糖類が、ガラクトースを30%以上含有するガラクトマンナンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のコーヒー豆または/およびコーヒー抽出残渣より多糖類を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−217466(P2007−217466A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36887(P2006−36887)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(390006600)ユーシーシー上島珈琲株式会社 (28)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】