説明

ゴム−充填材複合体の製造方法

【課題】ゴム−充填材複合体において充填材を均一に微分散させることで、ゴム組成物の低発熱性、耐疲労性及び加工性を向上させる。
【解決手段】カーボンブラックやシリカなどの充填材を5〜20重量%含有する充填材スラリーを流速300〜700m/秒で分散処理チャンバー(1)に供給することで前記充填材を粉砕してスラリー中に微分散させ、該分散処理した充填材スラリーと濃縮天然ゴムラテックスの少なくとも一方を流速300〜700m/秒で混合処理チャンバー(10)に供給することで両者を混合して、ゴムポリマー中に充填材を微分散させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムと充填材の複合体であるゴム−充填材複合体の製造方法に関する。より詳細には、天然ゴムにカーボンブラックやシリカなどの充填材が分散されてなるマスターバッチとして用いられるゴム−充填材複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤなどに用いられるゴム組成物には、補強などの目的のため、カーボンブラックなどの充填材が配合されている。従来、かかる充填材とゴムとの混合は、ドライ混合と称される、ゴムに対して充填材を粉末のまま添加して混練するという手法が採られているが、この手法で充填材をゴムに対して均一に微分散させるのには限界がある。
【0003】
そこで、近年、カーボンブラックやシリカなどの充填材を水に予め分散させた充填材スラリーと、ゴムラテックスとを混合することにより、ウェットマスターバッチと称されるゴム−充填材複合体を作製して、これをゴム組成物に配合することで、低発熱性や悪路での耐摩耗性などを改良することが提案されている(下記特許文献1〜5参照)。
【0004】
しかしながら、従来のゴム−充填材複合体の製造方法では、凝集した充填材の粉砕が不十分であり、充填材の性能を最大限に引き出すことが難しい。
【0005】
例えば、下記特許文献1には、充填材スラリーとラテックスを混合する混合ゾーンに対して、前記充填材スラリーを高圧下でジェット流として供給してラテックス流体を巻き込むようにすることで、両者を混合することが提案されており、これにより、ドライ混合よりも低発熱性、悪路での耐摩耗性を改良することができる。しかしながら、この文献では、充填材スラリーの調製については、ホモジナイザーを用いて分散させるとの記載があるのみであり、高速のジェット流を用いて粉砕(微粉化)することは開示されていない。また、この文献では、充填材スラリーとラテックスを混合する際の上記充填材スラリーの流速としても、秒速100〜800フィート、即ち最大で244m/秒であり、速度が不十分であって、ゴム−充填材複合体としての最大限の性能を引き出すには不十分である。
【0006】
下記特許文献2には、カーボンブラックスラリーとゴムラテックスとを混合し凝固させて得られるマスターバッチを用い、イソプレンゴム及びトランスポリブタジエンからなるゴム成分に、ビスマレイミドを加えることで、耐亀裂性と低発熱性を改良することが開示されている。しかしながら、このような方策はコストアップにつながる。また、この文献では、充填材スラリーの調製に用いる装置としては、ローター・ステータータイプのハイシアーミキサーや高圧ホモジナイザーなどが開示されているのみであり(段落0040)、実施例の調製方法においても(段落0063)、ローター径から換算してローター周りの速度はせいぜい13m/秒である。そのため、ゴム−充填材複合体でのカーボンブラックの分散度は不十分である。
【0007】
下記特許文献3には、天然ゴムラテックス中のアミド結合を分解してから、該ゴムラテックスと充填材スラリーを混合してマスターバッチを製造する方法が開示されている。この場合も、充填材スラリーの調製方法としては、上記特許文献2と同等の記載があるのみであり、そのため、マスターバッチ中の充填材の分散度は十分とは言えない。
【0008】
下記特許文献4にも、ゴムラテックスと充填材スラリーとを混合してゴム−充填材複合体を製造する方法が開示されているが、両者を混合する際の撹拌機の周速としては最大でも12m/秒との記載があるのみであり、従って、速度が不十分であって、ゴム−充填材複合体の性能を最大限引き出すことは困難である。
【0009】
下記特許文献5には、複数の充填材を含有するマスターバッチを調製する際に、カーボンブラックとシリカを、高せん断ミキサーを用いて水分散させて充填材スラリーを調製した後、該スラリーをラテックスと混合する方法が開示されている。しかしながら、この文献は、性質の異なる充填材を、界面活性剤を用いることなく混合分散させるために、高せん断ミキサーを用いるものであり、充填材スラリーの超高速流を生成して充填材を破砕することは開示されていない。そのため、この文献でも、ゴム−充填材複合体の性能を最大限引き出すことは困難である。
【特許文献1】特表2000−507892号公報
【特許文献2】特開2006−152117号公報
【特許文献3】特開2004−99625号公報
【特許文献4】特開2004−182994号公報
【特許文献5】特開2006−219593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、ゴム−充填材複合体において充填材を従来にも増して均一に微分散させることで、ゴム−充填材複合体の性能を最大限に引き出し、ゴム組成物に配合したときに低発熱性、耐疲労性及び加工性を向上させることができるゴム−充填材複合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るゴム−充填材複合体の製造方法は、充填材を含有する充填材スラリーを流速300m/秒以上の超高速流で分散処理チャンバーに供給することで前記充填材をスラリー中に微分散させる分散工程と、前記分散処理した充填材スラリーを濃縮天然ゴムラテックスと混合する混合工程と、を含むものである。
【0012】
上記本発明において、より好ましくは、前記混合工程にて、前記分散処理した充填材スラリーと前記濃縮天然ゴムラテックスの少なくとも一方を流速300m/秒以上の超高速流で混合処理チャンバーに供給することで両者を混合することである。
【0013】
上記構成においては、より具体的な態様としては、前記分散処理チャンバーが、筒状をなして、軸方向の一端面に前記充填材スラリーを供給する供給口が設けられるとともに、軸方向の他端部に分散処理された充填材スラリーの排出口が設けられて、前記充填材スラリーを前記供給口から流速300m/秒以上の超高速流で前記分散処理チャンバー内に噴射することが好ましい。
【0014】
また、前記混合処理チャンバーが、筒状をなして、軸方向の一端面に前記充填材スラリーと前記濃縮天然ゴムラテックスの一方の流体を供給する第1供給口が設けられ、軸方向の一端部における前記第1供給口の下流側に前記充填材スラリーと前記濃縮天然ゴムラテックスの他方の流体を供給する第2供給口が設けられ、更に軸方向の他端部に混合された流体を排出する排出口が設けられて、前記第1供給口から前記一方の流体を流速300m/秒以上の超高速流で前記混合処理チャンバー内に噴射することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ゴムラテックスとの混合に先立って、充填材スラリーを、流速300m/秒以上という音速と同等以上の超高速流で処理することにより、凝集した充填材を効果的に粉砕することができる。このようにして分散処理した充填材スラリーをゴムラテックスと混合することにより、充填材をゴム中に均一に微分散させることができる。そのため、得られたゴム−充填材複合体をゴム組成物に使用することで、ゴム−充填材複合体の性能を最大限に引き出し、ゴム組成物の低発熱性、耐疲労性、加工性を向上させることができる。また、ゴムラテックスとして、濃縮天然ゴムラテックスを用いたことにより、相乗効果で更に低発熱化を図ることができる。
【0016】
また、本発明において、上記分散処理した充填材スラリーと濃縮天然ゴムラテックスとを混合する際にも流速300m/秒以上という超高速流で混合した場合には、充填材をゴム中に更に均一に微分散させることができ、一層効果的にゴム−充填材複合体の性能を引き出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0018】
本発明において、上記充填材としては、カーボンブラックの他、シリカ、クレー、ゼオライトなどの各種無機充填材を用いることができ、これらはいずれか単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。好ましくは、カーボンブラック、シリカ、又は、カーボンブラックとシリカの併用である。なお、シリカとしては、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカなどが挙げられる。
【0019】
充填材スラリーは、上記充填材が水などの水系溶媒に分散してなるものである。かかる充填材スラリーは、例えば、充填材に水を加え撹拌機で撹拌することにより得ることができる。該充填材スラリー中における充填材の含有率は5〜20重量%であることが、上記分散工程における粉砕効果、更には上記混合工程におけるゴムラテックスとの混合効果の点から好ましい。
【0020】
本発明では、ゴムラテックスとして、濃縮天然ゴムラテックスを用いる。濃縮天然ゴムラテックスとは、天然ゴム木からのタッピングにより収集された天然ゴムのフィールドラテックス(通常、ゴム濃度(DRC:Dry Rubber Content)が20〜35重量%)を、遠心分離などの公知の濃縮法により濃縮して、ゴム濃度を高くしたものである。本発明で用いる濃縮天然ゴムラテックスのゴム濃度(DRC)は、50重量%以上であることが好ましく、より好ましくは50〜70重量%である。
【0021】
本発明におけるゴム−充填材複合体の製造方法では、上記分散工程において、充填材スラリーを微分散化処理する。微分散化処理は、流速300m/秒以上の充填材スラリーの超高速流を生成して、これを分散処理チャンバーに供給することにより充填材を粉砕してスラリー中に微分散させるものである。従来、特にタイヤ用途のゴム−充填材複合体のためにこのような高速での微分散化処理は全くなされておらず、このような高速での微分散化処理がタイヤ性能に実際上有利な効果を与えるとは考えられていなかった。すなわち、充填材をゴムに均一に分散させることは従来から求められていたものの、これほどまでに高度な微分散までは要求されていなかった。本発明は、従来のレベルを大幅に超える超高速で処理することにより、タイヤなどに用いられるゴム−充填材複合体として実際上有利な効果を与えることを初めて見い出したものである。
【0022】
上記充填材スラリーの流速は、300〜700m/秒であることが好ましく、より好ましくは450〜700m/秒である。下限の300m/秒について、これ未満では、微分散化効果に劣り、ゴム組成物としての低発熱性、高耐疲労性、加工性などの改良効果が不十分である。一方、微分散化効果としては流速が高いほど好ましいが、700m/秒を超えるような流速は現状の機械では制御困難であるため、上限は700m/秒以下であることが好ましい。
【0023】
分散工程では、充填材スラリーに、アニオン、カチオン、ノニオン、両性タイプなどの各種分散剤を予め添加することができる。具体的には、分散剤としては、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ラウリルベタインなどが挙げられ、これらはいずれか単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0024】
分散工程では、より詳細には、高圧発生器などを用いて、充填材スラリーに超高圧の圧力エネルギーを与えて、流速300m/秒以上の超高速流を生成する。例えば、45MPa〜245MPaという超高圧の圧力エネルギーを与えて、300〜700m/秒に加速する。
【0025】
そして、この超高速流を分散処理チャンバーに供給し、チャンバー内での衝突、キャビテーション、乱流などの作用で充填材の粉砕、分散などを行うことで充填材スラリーを微分散化させる。より詳細には、(A)流体が充填されたチャンバー内に上記超高速流を噴射した際のキャビテーションや乱流によって微分散化する方法、(B)上記超高速流を2つに分岐させて両者をチャンバー内で対向衝突させて粉砕させる方法、(C)上記超高速流を球体などの剛体に対して噴射して衝突により粉砕させる方法、(D)複数のノズルで充填材スラリーを加速して超高速流を生成しこれらの超高速流をチャンバー内に噴射して衝突混合させて粉砕させる方法、などが挙げられる。
【0026】
図1は、分散工程の好適な1態様例を示したものであり、分散処理チャンバー(1)は筒状をなしている。分散処理チャンバー(1)の軸方向の一端面(1a)には、充填材スラリーを供給する供給口(2)が設けられ、該供給口(2)には充填材スラリーを上記高速流の状態にて供給する高圧発生器(3)が接続されている。分散処理チャンバー(1)の軸方向の他端部(1b)には、分散処理された充填材スラリーの排出口(4)が設けられている。
【0027】
分散工程においては、予め分散処理チャンバー(1)内に水などの液体を充填しておき、供給口(2)から充填材スラリーを流速300m/秒以上の超高速流で分散処理チャンバー(1)内に噴射する。噴射された充填材スラリーは、分散処理チャンバー(1)内においてキャビテーションや乱流によって充填材が粉砕されて微分散化させる。なお、分散処理チャンバー(1)内に当初充填されていた液体は充填材スラリーを噴射することで、当該充填材スラリーに置換され、定常時には分散処理チャンバー(1)内は充填材スラリーが満たされた状態となっている。このようにして微分散化された充填材スラリーは排出口(4)から排出されて、次の混合工程に送られる。
【0028】
次いで、混合工程では、上記で分散処理した充填材スラリーと濃縮天然ゴムラテックスの少なくとも一方を流速300m/秒以上で混合処理チャンバーに供給することで両者を混合することが好ましい。充填材スラリーと濃縮天然ゴムラテックスとの混合についても、従来、このような音速と同等以上の高速での処理は全くなされておらず、本発明により初めて、タイヤなどに用いられるゴム−充填材複合体として実際上有利な効果が見い出されたものである。
【0029】
混合工程において、上記充填材スラリーと濃縮天然ゴムラテックスの少なくとも一方の流速は、300〜700m/秒であることが好ましく、より好ましくは450〜700m/秒である。
【0030】
なお、充填材スラリーと濃縮天然ゴムラテックスのうち、いずれか一方のみを超高速流としてもよいが、より好ましくは両方を超高速流として混合することである。また、混合工程でも、上記分散工程と同様の分散剤を混合前に添加することができ、その場合、充填材スラリーと濃縮天然ゴムラテックスのいずれに添加してもよい。
【0031】
混合工程において、より詳細には、高圧発生器などを用いて、充填材スラリーや濃縮天然ゴムラテックスに超高圧の圧力エネルギーを与えて、流速300m/秒以上の超高速流を生成する。例えば、45MPa〜245MPaという超高圧の圧力エネルギーを与えて、300〜700m/秒に加速する。
【0032】
そして、この超高速流を混合処理チャンバーに供給し、チャンバー内での衝突、キャビテーション、乱流などの作用で充填材を濃縮天然ゴムラテックスのゴムポリマー中に微分散させる。より詳細には、(E)流体が充填されたチャンバー内に充填材スラリーと濃縮天然ゴムラテックスのいずれか一方の超高速流を噴射しつつ、他方をその下流側から供給し、上記超高速流によるキャビテーションや乱流によって両者を混合し充填材を微分散化する方法、(F)充填材スラリーと濃縮天然ゴムラテックスをそれぞれ超高速流としてチャンバー内に噴射して衝突させて混合させる方法、などが挙げられる。
【0033】
図2は、混合工程の好適な1態様例を示したものであり、混合処理チャンバー(10)は筒状をなしている。混合処理チャンバー(10)の軸方向の一端面(10a)には、充填材スラリーを供給する第1供給口(12)が設けられ、該第1供給口(12)には充填材スラリーを上記超高速流の状態にて供給する高圧発生器(13)が接続されている。混合処理チャンバー(10)の軸方向の一端部(10b)における上記第1供給口(12)の下流側には、濃縮天然ゴムラテックスの供給する第2供給口(14)が設けられ、該第2供給口(14)には濃縮天然ゴムラテックスを供給するゴムラテックス供給槽(15)が接続されている。混合処理チャンバー(10)の軸方向の他端部(10c)には、混合された流体を排出する排出口(16)が設けられている。
【0034】
混合工程においては、上記分散工程で処理された充填材スラリーを、第1供給口(12)から流速300m/秒以上の超高速流で混合処理チャンバー(10)内に噴射する。噴射された充填材スラリーの混合処理チャンバー(10)内における流れにより、濃縮天然ゴムラテックスがゴムラテックス供給槽(15)から第2供給口(14)を通って混合処理チャンバー(10)内に吸い込まれる。そして、超高速流の充填材スラリーによる混合処理チャンバー(10)内でのキャビテーションや乱流によって、充填材スラリーと濃縮天然ゴムラテックスが混合され、充填材が濃縮天然ゴムラテックスのゴムポリマー中に微分散される。
【0035】
なお、充填材スラリーと濃縮天然ゴムラテックスとの混合比率は、ゴムポリマー100重量部に対して充填材が20〜80重量部となるような範囲内で行うことが好適である。
【0036】
このようにして微分散化された充填材スラリーと濃縮天然ゴムラテックスの混合液は排出口(16)から排出された後、常法に従い、即ち不図示の凝固、乾燥工程を経て、固形状のゴム−充填材複合体が得られる。
【0037】
得られたゴム−充填材複合体は、加硫用ゴム組成物を作製する際のマスターバッチとして用いることができる。かかるゴム組成物において、ゴム成分は、ゴム−充填材複合体として添加されるもののみでもよいが、該ゴム−充填材複合体とともに他のゴムを配合してもよい。その他の配合剤としては、オイル、老化防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、軟化剤、加硫剤、加硫促進剤などが挙げられ、特に限定されない。
【0038】
上記他のゴムとしては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴム、及びこれらの誘導体などの各種ゴムポリマーが挙げられる。
【0039】
上記ゴム−充填材複合体を配合したゴム組成物であると、充填材の性能を最大限に引き出すことができ、低発熱性、高耐疲労性、加工性を向上することができるので、タイヤのトレッドゴム、サイドウォールゴムなどのタイヤ用ゴム組成物を始めとして、各種ゴム組成物に好適に用いることができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
[実施例1〜6]
(マスターバッチの作製)
下記表1に示す配合及び混合方法にて比較例1〜5及び実施例1〜6のマスターバッチを作製した。比較例1は天然ゴムとカーボンブラックをドライ混合したもの、比較例2は天然ゴムラテックスにカーボンブラックを粉体のまま混合したもの、比較例3〜5及び実施例1〜6は天然ゴムラテックスとカーボンブラックスラリーを混合したものである。表中の各成分は以下の通りである。
【0042】
・天然ゴム:RSS#3、
・天然ゴムフィールドラテックス:Golden Hope社製「NRラテックス」(ゴム濃度DRC=30重量%)、
・濃縮天然ゴムラテックス:レヂテックス株式会社製「NRラテックス」(ゴム濃度DRC=60重量%)、
・カーボンブラック:三菱化学株式会社製の小粒径カーボン「♯2300」。
【0043】
・カーボンブラックスラリーA:10重量%となるようにカーボンブラック(三菱化学株式会社製「♯2300」)に水を加え、撹拌機で撹拌したもの(撹拌速度:50m/秒)。
【0044】
・カーボンブラックスラリーB:10重量%となるようにカーボンブラック(三菱化学株式会社製「♯2300」)に水を加え、撹拌機で撹拌した後(撹拌速度:50m/秒)、上記図1に示す分散処理チャンバー(内径=約20mm、長さ=約25cm、供給口(2)のノズル径=0.15mm)で分散処理したもの。分散処理は、上記撹拌後のスラリーを流速244m/秒(高圧発生器の圧力=30MPa)で分散処理チャンバー内に噴射して行い、この分散処理を5回通過させた。
【0045】
・カーボンブラックスラリーC:カーボンブラックスラリーBにおいて、スラリーの流速を300m/秒(高圧発生器の圧力=45MPa)とし、その他は同様にして作製した。
【0046】
・カーボンブラックスラリーD:カーボンブラックスラリーBにおいて、スラリーの流速を450m/秒(高圧発生器の圧力=101MPa)とし、その他は同様にして作製した。
【0047】
・カーボンブラックスラリーE:カーボンブラックスラリーBにおいて、スラリーの流速を600m/秒(高圧発生器の圧力=180MPa)とし、その他は同様にして作製した。
【0048】
・カーボンブラックスラリーF:カーボンブラックスラリーBにおいて、スラリーの流速を700m/秒(高圧発生器の圧力=245MPa)とし、その他は同様にして作製した。
【0049】
・カーボンブラックスラリーG:カーボンブラックスラリーBにおいて、カーボンブラックに水とともに分散剤(花王株式会社製「デモールNL(β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナリトウム塩:アニオン性)」)を0.3重量%となるように添加し、かつ、スラリーの流速を700m/秒(高圧発生器の圧力=245MPa)とし、その他は同様にして作製した。
【0050】
・超高速流による混合工程:上記図2に示す混合処理チャンバー(内径=約5mm、長さ=約60cm、第1供給口(12)のノズル径=0.15mm)を用いて、上記カーボンブラックスラリーA〜Gを、第1供給口(12)から、表1に記載した流速700m/秒(高圧発生器の圧力=245MPa)又は流速450m/秒(高圧発生器の圧力=101MPa)で噴射すると共に、ゴムラテックスを第2供給口(14)から供給した。
【0051】
(マスターバッチの評価)
上記各マスターバッチを用いて、ゴム組成物を調製した。ゴム組成物の配合は、上記マスターバッチ150重量部(ゴム成分100重量部)に対し、ステアリン酸(日本油脂製)1重量部、老化防止剤(モンサント製「6PPD」)1重量部、亜鉛華(三井金属製「亜鉛華1号」)3重量部、ワックス(日本精鑞製「OZOACE0355」)1重量部、硫黄(鶴見化学工業製「5%油入微粉末硫黄」)2重量部、加硫促進剤(三新化学製「CBS」)1重量部を配合した。
【0052】
得られた各ゴム組成物について、分散性、疲労性、発熱性、加工性を評価し、表1に結果を示した。各評価方法は以下の通りである。
【0053】
・分散性:ASTM D2663のB法に準拠して測定、
・疲労性:JIS K6270に準拠して測定し、比較例1を100とした指数で表示。指数が大きいほど耐疲労性(耐亀裂性)が良好、
・発熱性:JIS K6265に準拠して発熱温度を測定し、比較例1を100とした指数で表示。指数が小さいほど発熱温度が低く、低発熱性が良好、
・加工性:JIS K6300−1に準拠してムーニー粘度を測定し、比較例1を100とした指数で表示。指数が小さいほどムーニー粘度が低く加工性が良好。
【表1】

【0054】
表1に示すように、本発明に係る実施例のカーボンブラック/天然ゴム複合体を使用したゴム組成物では、カーボンブラックの分散性が比較例のものに比べて明らかに改善されており、耐疲労性、低発熱性、加工性が大幅に向上していた。
【0055】
[実施例7〜10]
(マスターバッチの作製)
下記表2に示す配合及び混合方法にて比較例6〜8及び実施例7〜10のマスターバッチを作製した。比較例6は天然ゴムとカーボンブラックをドライ混合したもの、比較例7,8及び実施例7〜10は天然ゴムラテックスとカーボンブラックスラリーを混合したものである。表中の各成分は以下の通りである。
【0056】
・天然ゴム:RSS#3、
・天然ゴムフィールドラテックス:Golden Hope社製「NRラテックス」(ゴム濃度DRC=30重量%)、
・濃縮天然ゴムラテックス:レヂテックス株式会社製「NRラテックス」(ゴム濃度DRC=60重量%)、
・カーボンブラック:三菱化学株式会社製の大粒径カーボン「♯40」。
【0057】
・カーボンブラックスラリーH:15重量%となるようにカーボンブラック(三菱化学株式会社製「♯40」)に水を加え、撹拌機で撹拌したもの(撹拌速度:50m/秒)。
【0058】
・カーボンブラックスラリーI:15重量%となるようにカーボンブラック(三菱化学株式会社製「♯40」)に水を加え、撹拌機で撹拌した後(撹拌速度:50m/秒)、上記図1に示す分散処理チャンバー(内径=約20mm、長さ=約25cm、供給口(2)のノズル径=0.15mm)で分散処理したもの。分散処理は、上記撹拌後のスラリーを流速450m/秒(高圧発生器の圧力=101MPa)で分散処理チャンバー内に噴射して行い、この分散処理を5回通過させた。
【0059】
・カーボンブラックスラリーJ:カーボンブラックスラリーIにおいて、スラリーの流速を600m/秒(高圧発生器の圧力=180MPa)とし、その他は同様にして作製した。
【0060】
・カーボンブラックスラリーK:カーボンブラックスラリーIにおいて、スラリーの流速を700m/秒(高圧発生器の圧力=245MPa)とし、その他は同様にして作製した。
【0061】
・カーボンブラックスラリーL:カーボンブラックスラリーIにおいて、カーボンブラックに水とともに分散剤(花王株式会社製「デモールNL(β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナリトウム塩:アニオン性)」)を0.3重量%となるように添加し、かつ、スラリーの流速を700m/秒(高圧発生器の圧力=245MPa)とし、その他は同様にして作製した。
【0062】
・超高速流による混合工程:上記図2に示す混合処理チャンバー(内径=約5mm、長さ=約60cm、第1供給口(12)のノズル径=0.15mm)を用いて、上記カーボンブラックスラリーH〜Lを、第1供給口(12)から流速700m/秒(高圧発生器の圧力=245MPa)で噴射すると共に、ゴムラテックスを第2供給口(14)から供給した。
【0063】
(マスターバッチの評価)
上記各マスターバッチを用いて、ゴム組成物を調製した。ゴム組成物の配合は、上記マスターバッチ150重量部(ゴム成分100重量部)に対し、ステアリン酸(日本油脂製)1重量部、老化防止剤(モンサント製「6PPD」)1重量部、亜鉛華(三井金属製「亜鉛華1号」)3重量部、ワックス(日本精鑞製「OZOACE0355」)1重量部、硫黄(鶴見化学工業製「5%油入微粉末硫黄」)2重量部、加硫促進剤(三新化学製「CBS」)1重量部を配合した。
【0064】
得られた各ゴム組成物について、分散性、疲労性、発熱性、加工性を評価し、表2に結果を示した。各評価方法は、上記表1の場合と同じである。但し、疲労性、発熱性および加工性の指数は、比較例6を100として表示した。
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】分散処理チャンバーの一例を示す断面図
【図2】混合処理チャンバーの一例を示す断面図
【符号の説明】
【0066】
1…分散処理チャンバー、1a…一端面、1b…他端部、2…供給口、3…高圧発生器、4…排出口、10…混合処理チャンバー、10a…一端面、10b…一端部、10c…他端部、12…第1供給口、13…高圧発生器、14…第2供給口、15…ゴムラテックス供給槽、16…排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填材を含有する充填材スラリーを流速300m/秒以上で分散処理チャンバーに供給することで前記充填材をスラリー中に微分散させる分散工程と、
前記分散処理した充填材スラリーを濃縮天然ゴムラテックスと混合する混合工程と、を含むゴム−充填材複合体の製造方法。
【請求項2】
前記分散処理チャンバーが、筒状をなして、軸方向の一端面に前記充填材スラリーを供給する供給口が設けられるとともに、軸方向の他端部に分散処理された充填材スラリーの排出口が設けられたものであり、前記充填材スラリーを前記供給口から流速300m/秒以上で前記分散処理チャンバー内に噴射することを特徴とする請求項1記載のゴム−充填材複合体の製造方法。
【請求項3】
前記混合工程において、前記分散処理した充填材スラリーと前記濃縮天然ゴムラテックスの少なくとも一方を流速300m/秒以上で混合処理チャンバーに供給することで両者を混合する請求項1記載のゴム−充填材複合体の製造方法。
【請求項4】
前記混合処理チャンバーが、筒状をなして、軸方向の一端面に前記充填材スラリーと前記濃縮天然ゴムラテックスの一方の流体を供給する第1供給口が設けられ、軸方向の一端部における前記第1供給口の下流側に前記充填材スラリーと前記濃縮天然ゴムラテックスの他方の流体を供給する第2供給口が設けられ、更に軸方向の他端部に混合された流体を排出する排出口が設けられたものであり、前記第1供給口から前記一方の流体を流速300m/秒以上で前記混合処理チャンバー内に噴射することを特徴とする請求項3記載のゴム−充填材複合体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法により製造されたゴム−充填材複合体。
【請求項6】
請求項5記載のゴム−充填材複合体を用いたゴム組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−230074(P2008−230074A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73694(P2007−73694)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】