説明

ゴム及びポリオレフィンの熱可塑性エラストマー混合物を調製するための共試薬

従来の硬化されている熱可塑性エラストマーと比較して増加したオイル抵抗及び減少した圧縮永久歪みを有する熱可塑性エラストマーが、遊離ラジカル開始剤、約50質量%よりも多い1,2-ビニル含有率を有するジエン含有ポリマーを含む第一共試薬、及び少なくとも2つのアクリレート基を含む多官能性アクリレート、少なくとも2つのイミド基を含む多官能性マレイミド、又はその両方の混合物を含む第二共試薬を含む硬化系による、プロピレン樹脂及びエチレン/アルファ-オレフィン/非共役ジエンエラストマーの動的加硫された混合物から、エラストマーゲル含有率が少なくとも97%であるようにして製造され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊離基開始剤及び少なくとも2つの共試薬を含む硬化系によって動的加硫されているプロピレン樹脂及びエチレン/アルファ-オレフィン/非共役ジエンエラストマーの混合物を含む熱可塑性エラストマー組成物に関する。反応混合物、それから製造される物品、及び動的加硫の方法も含まれる。
【背景技術】
【0002】
硬化されているゴム及びポリオレフィンの混合物から形成される熱可塑性エラストマーが、当技術分野で知られている。そのような材料の構造は、可塑性成分と、そこに埋め込まれている部分的又は全体的に硬化されているエラストマー成分の不連続領域とを含むマトリックスの形態である。そのような構造を有するオレフィンに基づく熱可塑性エラストマーは、ポリオレフィンの軟化点よりも高い温度で塑性流れを起こし、且つ軟化点よりも低い温度では依然として硬化されているエラストマーと同様に挙動することができるという利点を有する。従って、この材料は熱可塑性(すなわち、高温の加工条件下で流動する)を示し、ゴムと同様な弾性(すなわち、歪み力が取り除かれると、相当量の歪みが回復する)も示す。
動的加硫は、熱可塑性エラストマーのエラストマー部分を、硬化剤の存在下でその混合物を加熱しながら剪断しることによって硬化し、熱可塑性加硫物(TPV)を形成する方法である。動的加硫中にゴムを部分的又は全体的に硬化するのに用いられ得る他の硬化方法は、硫黄、ペルオキシド及びフェノールに基づく系を含む。
【0003】
エラストマー又はゴム相の硬化度(すなわち、部分的又は全体的)は、米国特許第4,130,535号明細書に記載のように、より低いオイル膨張及びより高い極限引っ張り強さが高硬化状態で観察されるように、最終合成物の極限特性における重要な要因である。言い換えれば、全体的に硬化されているエラストマー相を含む混合物は、未硬化又は部分的に硬化されている混合物と比較して、その物理的特性が改善される。そのような全体的に硬化されている加硫物は、ゴムの部分が通常の溶媒においてほとんど又は完全に不溶性である程架橋されているが、熱可塑性物質として加工することができる。全体的に硬化されている熱可塑性加硫物(TPV)の加工可能性は、200℃以上の使用温度で次元保全性を保持する熱硬化性組成物とは全く対照的である。
市販のTPV用途の多くは、例えば米国特許第4,311,628号明細書に開示されているフェノール樹脂硬化系を用いる。この加硫系で製造された熱可塑性エラストマーは、ペルオキシド又は硫黄に基づく加硫系で硬化された同等の組成物よりも、優れた(すなわち、より低い)圧縮永久歪み及びオイル抵抗を有することが示された。低い圧縮永久歪みは、いくつかの用途、例えばガスケット及びシールとして重要である。良好なオイル抵抗は、多くの自動車用途に重要である。
【0004】
しかし、フェノール樹脂で硬化された熱可塑性エラストマーの良好な圧縮永久歪み及びオイル抵抗は、この硬化系がホルムアルデヒド放出によって環境的に好ましくないという事実よりも重要である。さらに、そのような生成物は、架橋ネットワークにおけるフェノール基によって、暗色又は黄色を有し、且つ水分吸収に鋭敏である。
部分的にのみ硬化されているエラストマー相を有する熱可塑性エラストマーを調製するためのペルオキシドを用いる動的加硫が、技術開発の初期に行われた。米国特許第3,806,558号明細書は、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)が、ポリプロピレンの存在下における動的加硫によって部分的に硬化され、良好な物理的特性を有する再加工可能材料を提供できることを開示している。
ペルオキシド硬化系の使用は、フェノール硬化系よりも明色の生成物を製造する一方で、プロピレン樹脂の分解を引き起こし、熱可塑性エラストマーの物理的特性に不都合な影響を与え得る。いくつかの共試薬の使用がこの分解を減らし得ることは、化学文献において確立されている。例えば、ペルオキシドで硬化できるエラストマーにおける共試薬の使用に関するいくつかの基礎研究が、R. Drake and J. Labriola, ACS Rubber Division Meeting, Paper No. 5, Fall 1994に示されている。
【0005】
共試薬は、ペルオキシドの分解から形成されるラジカルと反応し、共試薬分子上に遊離ラジカルを形成することによって機能し、続いてこれらの遊離ラジカルが架橋性反応を媒介する。典型的に、これらの共試薬材料はジ-又はポリ-不飽和を含み、且つ不飽和結合のα位に容易に脱離可能な水素原子を有する。そのような材料の例は、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルトリメリテート(TATM)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、トリアリルイソシアネート(TAIC)及び通常はアタクチック低分子量液体として用いられる1,2-ポリブタジエン(PBD)を含む。
米国特許第4,108,947号明細書は、オレフィンゴム及びポリオレフィン樹脂を含み、且つ硬化系がペルオキシド及び共試薬であり、90%よりも少ない架橋度を有する部分的に硬化されている熱可塑性エラストマー組成物を開示している。その特許はさらに、ゴム相を全体的に架橋しないことにより、乏しい流動性を回避し得るのが重要であることを開示している。
共試薬のある組み合せを、ペルオキシドと共に用いることができることも知られている。例えば、米国特許第4,948,840号明細書は、プロピレン樹脂及び全体的に飽和しているエラストマーを含む部分的に硬化されている熱可塑性エラストマー、及び1,2-ポリブタジエン及び有機ペルオキシドを含む硬化系を開示している。その硬化系はさらに、ある追加の共試薬、例えばフェニレン-ビス-マレイミドを含んでいてもよい。
【0006】
米国特許第6,207,746号明細書は、ポリプロピレン、エチレン/オレフィンコポリマー及びプロセスオイルを含み、そのエチレン/オレフィンコポリマーがラジカル開始剤によって硬化されている、部分的に硬化されている熱可塑性エラストマーを開示している。その特許はさらに、共試薬又は共試薬の組み合せを用いてもよいことを開示しているが、好適であるとして記載されている多様な種類の間の相違点が指摘されていない。
一般に、ペルオキシドの硬化についての先行技術は、部分的に硬化されているTPV混合物だけが産業的に使用されるのは、全体的に硬化されている混合物で広範囲に架橋した組成物が、減少した流動性及び乏しいオイル分散を含む望ましくない加工特性を示すからであることを教えている。その結果、TPV産業は、フェノールで硬化されているTPVに匹敵する特性を有する全体的に硬化されている材料を商業的に製造するための、確固とした矛盾のないペルオキシド硬化系も有していない。
特にオイル抵抗及び圧縮永久歪みにおいてフェノールで硬化されたTPVと等しい又はそれよりも優れた性能を有するTPV生成物を調製するためのペルオキシド硬化系を提供することが望まれる。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、少なくとも1種のプロピレン樹脂及び少なくとも1種のエチレン/アルファ-オレフィン/非共役ジエンエラストマーを含む反応性改質(reactively modified)された熱可塑性エラストマー混合物であって、遊離ラジカル開始剤、約50質量%よりも多い1,2-ビニル含有率を有するジエン含有ポリマーを含む第一共試薬、及び少なくとも2つのアクリレート基を含む多官能性アクリレート、少なくとも2つのイミド基を含む多官能性マレイミド、又はそれらの混合物を含む第二共試薬を含む硬化系によって動的加硫されていて、前記遊離ラジカル開始剤及び前記共試薬は、少なくとも97%の当該エラストマーのゲル含有率を提供し、且つ少なくとも70のショア A デュロメーター硬度と約90質量%よりも少ないオイル膨張とを有する本発明の混合物、及び70以下のショア A デュロメーター硬度と約100質量%よりも少ないオイル膨張とを有する混合物を提供するのに十分な量で集合的に存在する混合物に関する。好ましい実施態様では、改質された混合物は、約10〜70質量%のプロピレン樹脂、及び約5〜60質量%のエチレン/アルファ-オレフィン/非共役ジエンエラストマーを含む。
【0008】
好ましくは、第一共試薬は、改質された混合物の約0.1〜10質量%の量で存在する。一つの実施態様では、第一共試薬は、シンジオタクチック1,2-ポリブタジエン、アタクチック1,2-ポリブタジエン、高ビニル溶液スチレン-ブタジエンエラストマー、又はそれらの混合物を含む。好ましい実施態様では、第一共試薬が、少なくとも約60℃の融点を有するシンジオタクチック1,2-ポリブタジエンを含む。
別の好ましい実施態様では、第二共試薬が、改質された混合物の約0.1〜10質量%の量で存在する。一つの好ましい実施態様では、第二共試薬が、トリメチロールプロパントリアクリレートを含む。別の好ましい実施態様では、第二共試薬が、N,N'-m-フェニレンジマレイミドを含む。
一つの好ましい実施態様では、遊離ラジカル開始剤が、改質された混合物の約0.001〜2%の量で存在する。好ましくは、遊離ラジカル開始剤は、少なくとも1種の有機ペルオキシドを含む。改質された混合物が、本質的に水分感受性をもたないことも好ましい。
【0009】
一つの実施態様では、エラストマー混合物はさらに、約5〜65質量%の少なくとも1種のエキステンダーオイルを含む。さらに別の実施態様では、エラストマー混合物がさらに、約0.001〜20質量%の量で存在する充填剤を含む。一つの実施態様では、エチレン/アルファ-オレフィン/非共役ジエンエラストマーが、エチレン/プロピレン/ジエンエラストマーを含む。別の実施態様では、オイルを含まないエチレン/アルファ-オレフィン/非共役ジエンエラストマーが、少なくとも約100のムーニー粘度[ML(1+4)@125℃]を有する。
一つの実施態様では、エラストマー混合物がさらに、1種以上の有機及び無機色素、熱安定剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、粘着防止剤、発泡剤、帯電防止剤又は抗菌剤、又はそれらの任意の組み合せを含む。
【0010】
本発明はさらに、ここに記載されている反応性改質された混合物を含む物品にも関する。好ましくは、その混合物は、フェノール樹脂硬化系で形成された同様の混合物と比較して、より明色、より弱い黄色、又はその両方であり、依然として匹敵するオイル膨張及び圧縮永久歪みを有する。別の実施態様では、本発明の混合物は、30よりも少ない黄色度指数を有する。
本発明はさらに、動的に加硫された熱可塑性エラストマー組成物を調製する方法であって、少なくとも1種のポリプロピレン樹脂及び少なくとも1種のエチレン/アルファ-オレフィン/非共役ジエンエラストマーの混合物を、当該少なくとも1種のポリプロピレン樹脂の融点よりも高い温度において混合し、遊離ラジカル開始剤、約50質量%よりも多い1,2-ビニル含有率を有するジエン含有ポリマーを含む少なくとも1種の共試薬、及び少なくとも2つのアクリレート基を含む多官能性アクリレート又は少なくとも2つのイミド基を含む多官能性マレイミドを含む少なくとも1種の共試薬を加え、及び続いてエラストマーが少なくとも97%のゲル含有率を有するような架橋形成が行われる温度においてその混合物を十分に混合及び剪断し、ここで、前記遊離ラジカル開始剤及び前記共試薬は、少なくとも70のショア A デュロメーター硬度と約90質量%よりも少ないオイル膨張とを有する本発明の混合物、及び70以下のショア A デュロメーター硬度と約100質量%よりも少ないオイル膨張とを有する混合物を提供するのに十分な量で集合的に存在する、方法に関する。一つの好ましい実施態様では、その混合装置が二軸のスクリューを有する押し出し成形機を含む。
【0011】
本発明はさらに、少なくとも1種の有機ペルオキシドを含む遊離ラジカル開始剤、約50質量%よりも多い1,2-ビニル含有率を有するジエン含有ポリマーを含む第一共試薬、及び少なくとも2つのアクリレート基を含む多官能性アクリレート、少なくとも2つのイミド基を含む多官能性マレイミド、又はそれらの混合物を含む第二共試薬を含む熱可塑性エラストマー硬化系であって、少なくとも1種のポリプロピレン樹脂及び少なくとも1種の追加のエチレン含有エラストマー材料と組み合わされるときは、十分な量の前記遊離ラジカル開始剤及び前記共試薬を含むことにより、少なくとも97%のエラストマーのゲル含有率を有する反応性改質された熱可塑性エラストマー混合物を形成し、且つ少なくとも70のショア A デュロメーター硬度と約90質量%よりも少ないオイル膨張とを有する本発明の混合物、及び70以下のショア A デュロメーター硬度と約100質量%よりも少ないオイル膨張とを有する混合物を提供する硬化系に関する。
本発明はさらに、上記の熱可塑性エラストマー硬化系及び少なくとも1種のプロピレン樹脂及び少なくとも1種のエチレン/アルファ-オレフィン/非共役ジエンエラストマーを含む熱可塑性エラストマーに基づく反応混合物を含む。
【0012】
(好ましい実施態様の詳細な説明)
ここで、共試薬の適切な組み合せが、極度な架橋による加工可能性を妥協すること無く、所望の物理的特性の選択が可能であることが発見された。本発明を用いて製造された動的加硫生成物はさらに、美的にも優れ、先行技術のフェノール硬化生成物で典型的に経験される黄色又は他の変色を減少又は回避する。さらに、本発明の混合物は、水分感受性を本質的にもたない又は全くもたず、乾燥することなく加工されてもよい。
本発明によれば、ここで、1種以上のプロピレン樹脂及び1種以上のエチレン/アルファ-オレフィン/非共役ジエンエラストマーの反応性改質された混合物の熱可塑性エラストマー組成物が、遊離ラジカル開始剤、50質量%よりも多い1,2-ビニル含有率を有するジエン含有ポリマーの第一共試薬、及び少なくとも2つのアクリレート基を含む多官能性アクリレート、少なくとも2つのイミド基を含む多官能性マレイミド、又はその両方の混合物を含む第二共試薬を含む硬化系によって、最終混合物におけるエラストマーゲル含有率が少なくとも97%であるように動的加硫され得ることが見出された。
【0013】
“プロピレン樹脂”は、約10〜70質量%、好ましくは約11〜60質量%、さらに好ましくは約12〜55質量%の量で存在し、プロピレンのホモポリマー、少なくとも60モル%のプロピレン及び少なくとも1種の他のC2〜C20のアルファ-オレフィンのコポリマー、又はそれらの混合物の1種以上から選択される。そのようなコポリマーの好ましいアルファ-オレフィンは、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、メチル-1-ブテン、メチル-1-ペンテン、1-オクテン及び1-デセン又はそれらの組み合せを含む。
プロピレンのコポリマーは、ランダム又はブロックコポリマーを含むことができる。プロピレン及びアルファ-オレフィンのランダムコポリマーは、用いられるときは一般的に、モノマーが統計学的に分布している巨大分子鎖を含む。これらのランダムコポリマーのプロピレン含有率は、一般的に少なくとも約70モル%、好ましくは少なくとも約75モル%である。このブロックコポリマーは、変動可能な組成の別個のブロックを含むことができる;各ブロックは、プロピレンのホモポリマー及び少なくとも1種の他の上記アルファ-オレフィンを含む。任意の好適な共重合方法が本発明の範囲内に含まれるが、プロピレンブロックを有するヘテロ位相性コポリマーは、一般的に異なるブロックが連続的に調製されるいくつかの逐次段階における重合によって得られる。
【0014】
本発明で用いられるプロピレンポリマーの溶融流量(MFR)は、好ましくは0.01〜200g/10分の範囲である(負荷:ASTM D-1238-01によって230℃で2.16kg)。200g/10分よりも高いときは、熱可塑性エラストマー組成物の熱抵抗及び機械的強度が不十分となる傾向にあり、一方で、0.01g/10分よりも低いときに加工可能性がしばしば所望するよりも少なくなる。プロピレンホモポリマーのアイソタクチック度は、典型的に約80%よりも多く、好ましくは約90%よりも多い。
典型的なプロピレンホモポリマー又はコポリマーは、市場で入手可能であり、例えばデラウェア州ウィルミントンのBasell North America, IncのPROFAX、ADFLEX及びHIFAX、テキサス州ヒューストンのBritish Petroleum ChemicalsのFORTILENE、ACCTUFF又はACCPRO、及びテキサス州ヒューストンのExxonMobil Chemicals Company、デンマークにあるリドビー(Lydgby)のBorealis A/S、ペンシルバニア州ピッツバーグのSunoco Chemicals、及びミシガン州ミッドランドのDow Chemical Companyの種々のタイプのポリプロピレンホモポリマー及びコポリマーがある。
エチレンターポリマーエラストマー(エチレン/アルファ-オレフィン/非共役ジエン)は、約5〜60質量%、好ましくは約6〜55質量%、さらに好ましくは約7〜50質量%(オイルを除く)で存在し、約40〜75質量%のエチレン、約20〜60質量%のC3〜C20のアルファ-オレフィン成分、及び約1〜11質量%の非共役ジエンモノマーを含むターポリマーから選択される。アルファ-オレフィン成分は、1種以上のC3〜C20のアルファ-オレフィンを含み、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンが好ましく、エチレンエラストマーに使用するのにプロピレンが最も好ましい。
【0015】
好適な非共役ジエンモノマーの例は、6〜15個の炭素原子を有する直鎖炭化水素ジ-オレフィン又はシクロアルケニル-置換アルケン、又はそれらの組み合せを含む。具体的に好ましい例は、(a)直鎖非環式ジエン、例えば1,4-ヘキサジエン及び1,6-オクタジエン;(b)分枝鎖非環式ジエン、例えば5-メチル-1,4-ヘキサジエン、;3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン;3,7-ジメチル-1,7-オクタジエン;(c)単環脂環式ジエン、例えば1,4-シクロヘキサジエン;1,5-シクロオクタジエン及び1,5-シクロドデカジエン;(d)多環脂環式縮合及び橋かけ環ジエン、例えばテトラヒドロインデン;メチル-テトラヒドロインデン;ジシクロペンタジエン(DCPD);ビシクロ-(2.2.1)-ヘプタ-2,5-ジエン;アルケニル、アルキリデン、シクロアルケニル及びシクロアルキリデンノルボルネン、例えば5-メチレン-2-ノルボルネン(MNB)、5-プロペニル-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-(4-シクロペンテニル)-2-ノルボルネン、5-シクロヘキシリデン-2-ノルボルネン、及び5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB);(e)シクロアルケニル-置換アルケン、例えばアリルシクロヘキセン、ビニルシクロオクテン、アリルシクロデセン、ビニルシクロドデセンを含む1種以上の分類又は化学種を含む。典型的に用いられる非共役ジエンにおいて、好ましいジエンは、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、5-メチレン-2-ノルボルネン、及び5-エチリデン-2-ノルボルネン、又はそれらの組み合せを含む。
【0016】
油展しないエラストマーは、ASTM D-1646-00で測定すると、典型的に少なくとも約100のムーニー粘度(ML 1+4、125℃)を有する。エチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)のエラストマーターポリマーが好ましい。典型的なエラストマーは、市場で入手可能であり、例えばデラウェア州ウィルミントンのDuPont Dow Erastomers LLCのNORDEL、テキサス州ヒューストンのExxonMobil ChemicalsのVISTALON、テキサス州ヒューストンのPolimeri Europa AmericasのDUTRAL、ペンシルバニア州ピッツバーグのBayer CorporationのBUNA EP、ルイジアナ州バトンルージュのDSM Elastomers AmericaのKELTAN、又はコネティカット州ミドルベリのCrompton/Uniroyal ChemicalsのROYALENEなどである。
エラストマー硬化系は、遊離ラジカル開始剤を少なくとも2つの共試薬と組み合せて含む。遊離ラジカル開始剤は、十分量のラジカルが生成され、混合工程中にエラストマーの完全な硬化を引き起こすように選択されるべきである。その遊離ラジカル開始剤は、約0.001〜2質量%、好ましくは約0.01〜1質量%、最も好ましくは約0.03〜0.3質量%の量で存在する。0.001質量%よりも低いときは、エラストマーの架橋は典型的に不十分であり、2質量%よりも高いときは、通常は物理的特性において全く改善が見られないか、見られてもほんのわずかである。典型的には、遊離ラジカル開始剤は、有機ペルオキシド又は有機アゾ化合物又はそれらの任意の混合物でもよい。
【0017】
本発明に有用な遊離ラジカル開始剤、好ましくは1種以上の有機ペルオキシドは、120℃において約1時間よりも長い分解半減期を有するべきである。有用である代表的なペルオキシドは、ペルオキシケタール、例えば1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロドデカン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)オクタン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、吉草酸n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)など;ジアルキルペルオキシド、例えばジ-t-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、アルファ,アルファ'-ビス(t-ブチルペルオキシm-イソプロピル)ベンゼン、アルファ,アルファ'-ビス(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-ヘキシン-3など;ジアシルペルオキシド、例えばアセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、m-トリオイルペルオキシドなど;ペルオキシエステル、例えばt-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシソブチレート、t-ブチルペルオキシ2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシラウリレート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルペルオキシソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルペルオキシマレエート、t-ブチルペルオキシソプロピルカルボネート、クミルペルオキシオクテートなど;ヒドロペルオキシド例えばt-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロペルオキシド、1,1,3,3-テトラ-メチルブチルペルオキシドなど;又はそれらの任意の組み合せである。これらの化合物の中で、120℃において1時間よりも長い半減期を有するジアルキルペルオキシドが好ましい。半減期は、最初のペルオキシド濃度が半分に減少するのに必要な時間として定義する。
【0018】
エラストマー硬化系における第一共試薬は、約0.1〜10質量%、好ましくは約1〜6質量%、最も好ましくは約2〜5質量%の量で存在し、アタクチック1,2-ポリブタジエン、シンジオタクチック1,2-ポリブタジエン、高ビニル溶液スチレン-ブタジエンエラストマー、又はそれらの混合物を含む50%よりも多い1,2-ビニル含有率のジエン含有ポリマーを含む。
アタクチック1,2-ポリブタジエン、又はアタクチック高ビニルポリブタジエンは、典型的に側鎖ビニル基が無作為に配置されている構造を有する粘性液である。アタクチック形態の調製は一般的に、極性改質剤、例えばキレート性ジアミン、酸化エーテル化合物、アセタール、及びケタールを用いるリチウム触媒重合を伴い、例えば米国特許第4,696,986号明細書に記載されており、これをその参考としてここに組み込む。アタクチックポリブタジエンは、典型的に約1,300〜130,000の範囲の数平均分子量(Mn)を有し、液体及び固体両方の支持形態で市販されている。
シンジオタクチック1,2-ポリブタジエン(“PBD”)は、側鎖ビニル基が重合体主鎖に関する対辺において交互に配置されている立体規則性構造を有する半結晶性の熱可塑性樹脂である。ブタジエンの1,2-重合は頭尾様式で起こり、新しいキラル中心を生成する。シンジオタクチックポリマーにおいて、代わりのキラル中心は同様の立体配置を有する。“半結晶性”は、ここでは約90%よりも少ない結晶度として定義する。
シンジオタクチックPBDポリマーは、チーグラー触媒を用いる溶液、乳濁液、又は懸濁液重合を含む任意の好適な方法で調製されてもよい。種々の錯体触媒系、例えばコバルトに基づく触媒系、鉄に基づく触媒系、モリブデンに基づく触媒系、及びクロムに基づく触媒系が、米国特許第6,201,080号明細書に記載されているように用いることができ、これをその参考としてここに組み込む。
【0019】
シンジオタクチックPBD形態の物理的、機械的、及び流体力学的特性は、その融点、ビニル含有率、及び結晶度によって大きく影響される。206℃程度に高い融点が可能であり、用いられる合成方法に依存する。本発明における効果を最大にするために、PBDポリマーのシンジオタクチック含有率は、少なくとも約60℃、好ましくは約70℃よりも高く約205℃よりも低い融点を有する結晶を提供するのに十分に高くすべきである。1,2-ビニル含有率は、50%よりも高く、好ましくは75%よりも高い。シンジオタクチックポリブタジエンの結晶度は、約50%よりも少なく、さらに好ましくは約10〜45%である。好ましいシンジオタクチックポリブタジエンの重量平均分子量は、典型的に約100,000よりも多い。本発明では、シンジオタクチックポリブタジエンが、アタクチック高ビニルポリブタジエンよりも扱いやすく、費用が低いという利点を有する。
【0020】
“高ビニル溶液スチレン-ブタジエン”エラストマーは、共役ジオレフィンモノマー、例えば1,3-ブタジエンと、ビニル芳香族モノマー、例えばスチレンとの共重合によって形成される。高ビニル溶液スチレン-ブタジエンエラストマーの好ましいビニル含有率は、好ましくは約60%よりも多く、さらに好ましくは約70%よりも多い。高ビニルスチレン-ブタジエンを製造するための溶液重合方法が、米国特許第6,140,434号明細書に記載されており、これを参考としてここに組み込む。
【0021】
第二の共試薬は、少なくとも2つのアクリレート基を含む1種以上の多官能性アクリレート、少なくとも2つのイミド基を含む多官能性マレイミド、又はそれらの混合物を含み、約0.1〜10%、好ましくは約0.5〜7%、最も好ましくは0.7〜4%の量で存在する。本発明に有用な多官能性アクリレートの例は、トリメチロールプロパン トリアクリレート(TMPTA)、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及びジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレートである。本発明に用いることのできる多官能性イミドの例は、フェニレン-ビス-マレイミド、例えばN,N'-m-フェニレンジマレイミド、並びに4,4'-ビスマレイミド-ジフェニルメタン及び3,3'-ビスマレイミド-ジフェニルメタンである。
【0022】
思いがけなく、メタクリレート、例えばトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)が、ポリプロピレンの存在下でのEPDMの動的加硫において共試薬としての1,2-ポリブタジエンと組み合せて用いられるときに、圧縮永久歪み及びオイル膨張を有効に改善しないことが見出された。この結果は、EPDMのTMPTMA/1,2-ポリブタジエン及びペルオキシドによる加硫が圧縮永久歪み及びオイル膨張を減らすことがよく知られている標準熱硬化性EPDMとは全く対照的である。そのような変則は、熱硬化性ゴムにおける共試薬の使用に関する文献が動的加硫系の指針として用いられ得るが、大きな違い及び予測できないことが起こり得ることを示している。従って、一つの実施態様では、共試薬が少なくとも実質的にTMPTMA又は全てのメタクリレートを含まず、好ましくはTMPTMA、又は全てのメタクリレートを完全に含まない。
熱可塑性加硫物における硬化の度合又は程度は、加工時間、エラストマー硬化の量、及び硬化のタイプを含む種々の要因に依存する。本発明の完全に硬化されているエラストマー成分は、TPV混合物が、ゴムが不完全又は部分的に硬化されている混合物と比較して、より少ないオイル膨張、より低い圧縮永久歪み、及びより高い引っ張り強さ特性と共に改善された物理的特性を有することを可能にする。
【0023】
エラストマー成分の硬化度の一つの測定値(すなわち、架橋の測定値)は、エラストマー相におけるゲル含有率である。エラストマー相が部分的に硬化されている場合は、そのゴムの一部のみがキシレン又はシクロヘキサンなどの溶媒に不溶性である。エラストマー相が完全に硬化されている場合は、少なくとも97%のエラストマーが不溶性である。本発明の改善された熱可塑性加硫物は、含まれているEPDMゴムの少なくとも97%がゲル化される程度に当該混合物を加硫することによって製造される。このゲル含有率は、組成物のエラストマー相が、23℃のシクロヘキサンにおいて抽出できる3質量%以下のゴムを含むことを意味し、好ましくは、組成物のエラストマー相が、23℃のシクロヘキサンにおいて抽出できる1質量%よりも少ないゴムを含むことを意味する。一般に、抽出物が少ないほど、その特性が優れ、及びさらに好ましいのは、23℃のシクロヘキサンにおいて本質的に抽出可能ゴムを全く含まない硬化エラストマー(例えば、0.5質量%よりも少ない)である。ここで言う完全に硬化されているとは、ゲル含有率に関して、23℃のシクロヘキサンにおける硬化度が、少なくとも97%、好ましくは少なくとも99%であることを意味する。
パーセントゲルとして報告されるゲル含有率は、米国特許第3,203,937及び4,948,840号明細書の手順によって決定され、これらの手順は、組成物の供試体を23℃のシクロヘキサンに48時間浸し、その乾燥した残渣を秤量することによって不溶性ポリマーの量を決定し、続いて組成物の知識に基づいた好適な補正をすることを含む。従って、補正された最初及び最後の質量は、最初の質量から、ゴム以外のシクロヘキサンにおける可溶性成分の質量、例えばエキステンダーオイル及びシクロヘキサンにおける他の可溶性成分の質量を引くことによって用いられる。任意の不溶性色素、充填剤などが、最初及び最後の質量の両方から引かれる。
【0024】
さらに、オイル膨張の質量%は、同様のエキステンダーオイル及びポリプロピレン含有率を有する熱可塑性加硫(TPV)生成物のための、エラストマー相の硬化又は架橋度の暗黙的な測定値である。エラストマーの低い又は部分的な架橋は、より高いオイル膨張値をもたらすが、高度に架橋され分散されたエラストマーを有する熱可塑性エラストマーは、より低い(すなわち、より好ましい)オイル膨張を有する。オイル膨張は、試験オイルIRM903を用いる試験方法ISO 1817(1999年)によって測定される。材料組成物のサンプルをオイルに浸し、125℃で70時間等温で保持する。新鮮なIRM903オイルが、各試験に用いられる。この温度及び時間基準は自動車産業に特に用いられて、TPV材料を設計温度が約100℃である用途に用いることができることを保証する。架橋されていない、又は部分的にのみ架橋されているポリオレフィンエラストマーを有するポリオレフィンに基づく熱可塑性エラストマーは、ここに記載の試験条件を用いて、150%〜1,000%以上の望ましくないより高いオイル膨張値を示す。ポリオレフィンエラストマー相が、約97%以上のゲル含有率を有してほぼ完全に架橋しているときのみが、そのオイル膨張値は典型的に約100質量%よりも少ない。本発明は、ここに記載されている条件下で、比較的堅いTPV(少なくとも70 ショア A デュロメーター以上)としては90質量%よりも少なく、及び比較的軟らかいTPV(70 ショア A デュロメーター以下)としては100質量%よりも少ないオイル膨張を有する非フェノール樹脂硬化TPVを製造することができる。
【0025】
エキステンダーオイル、又はプロセスオイルは、しばしばエラストマー組成物の粘度、高度、モデュラス、及び費用のいずれか1種以上を減らすのに用いられる。多くのエチレン/アルファ-オレフィン/非共役ジエンエラストマーを伸長するために、高度に飽和しているオイルが典型的に用いられる。約40%よりも多いパラフィン含有率を有する飽和したエキステンダーオイルが、ASTM D-2140-97方法で測定する場合に好ましい。約50%よりも多いパラフィン含有率が、さらに好ましい。エキステンダーオイルの粘度はさらに、混合工程中の低い揮発度を保証するのにも重要である。本発明の熱可塑性加硫組成物に有用なプロセスオイルは、試験方法ASTM D-445-01を用い、40℃において典型的に約20センチ-ストークスよりも多い動粘度を有する。さらに好ましくは、40℃における動粘度は、約40センチ-ストークスよりも多い。エラストマー加工の分野における当業者は、任意に与えられた用途に最も有益なオイルの種類及び量を容易に認識できる。エキステンダーオイルは、用いられるときは、望ましくは約4〜65質量%、好ましくは5〜60質量%、最も好ましくは約10〜55質量%の量で存在する。
【0026】
本組成物はさらに、典型的に1種以上の無機充填剤を含む充填剤を含んでいてもよい。本発明に用いられる代表的な無機充填剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、カーボンブラック、ガラス繊維、酸化チタン、クレイ、マイカ、タルク、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウム、又はそれらの任意の組み合せを含む。典型的に、本発明の熱可塑性エラストマーは、約0〜20質量%の充填剤を含み、それらが存在しているときは、通常約0.001〜20%の量である。本発明に用いられる他の添加剤は、例えば、有機及び無機色素、熱安定剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、粘着防止剤、発泡剤、帯電防止剤又は抗菌剤を含み、それぞれはその所望の効果を提供するのに十分な量(例えば、熱安定剤では熱に対してエラストマーを安定させるのに十分な量)で加えられる。
【0027】
任意の好適な方法を、本発明の混合物を調製するのに用いることができる。融解混合が、本発明を調製するための一つの方法である。ポリマーと全ての種類の添加剤との融解混合のための技術は、当業者にとって既知であり、本発明に典型的に用いることができる。典型的に、本発明に有用な融解混合操作において、混合物の個々の成分は、機械的押し出し成形機又は混合機において混合され、続いてポリマー融解物を形成し且つ反応性改質を行うのに十分な温度まで加熱する。機械的混合機は、連続的又はバッチ混合機でもよい。好適な連続的混合機の例は、一軸のスクリューを有する押し出し成形機、Coperion Werner & Pfleiderer ZSK押し出し成形機などの互いにかみあった(intermeshing)共に回転する二軸のスクリューを有する押し出し成形機を、LEISTRITZで製造されているものなどの逆回転する二軸のスクリューを有する押し出し成形機、及びBUSS共混錬機などの往復運動する一軸のスクリューを有する押し出し成形機を含む。バッチ混合機の例は、側面2-回転子混合機、例えばBANBURY又はBOLING混合機である。
【0028】
好ましい実施態様では、反応性改質混合物は、例えば商品名ZSKでCoperion Werner & Pfleidererによって製造されている規格の(modular)互いにかみあった共回転二軸スクリュー押し出し成形機、ものにおいて、成分を混合することによって調製される。この種の設備の他の製造機は、Berstorff、Leistritz、Japanese Steel Worksなどの共回転二軸スクリュー押し出し成形機を含む。この種の混合機のスクリューの直径は、約25〜300mmで変えてもよい。熱可塑性エラストマー組成物の商業的に実現可能な生産率は、少なくとも70mmのスクリュー直径で典型的に達成される。
混合押し出し成形機は、組成物に対していくつかの混合作用を行う一連の区分、又はモデュールを含む。ポリマー成分は、典型的に主要供給ホッパーにおける固体顆粒として、押し出し成形機の初期の供給区分に供給される。共試薬を主要供給ホッパーに供給するか、又は押し出し成形機胴体の主要供給ホッパーの下流でスクリュー直径の約1〜5倍の間隔の側面に液体として注入してもよい。遊離ラジカル開始剤も、乾燥固形物、例えば液体ペルオキシドを吸収させた炭酸カルシウム粒子として供給するか、又は純粋な液体、又は鉱油との混合物として、主要供給ホッパーの下流又は第二混合区分より前の第一混合区分の下流で、スクリュー直径の約1〜5倍の間隔のところに注入してもよい。
【0029】
他の成分、例えば上記の充填剤、熱安定剤などは、乾燥粉末又は液体として、混合押し出し成形機の主要供給ホッパーに供給してもよい。大部分の熱安定剤及びUV安定剤を、混合機の下流区分に加えることが好ましく、これは米国特許第5,650,468号明細書に記載されており、その参考としてここに組み込む。
それらの成分は、好ましくは押し出し成形機の最初の融解及び混合区分で均一にされる。ポリマー融解温度は、連続する混錬ブロックによって、ポリマー混合物の最も高い軟化点よりも高い温度まで上げられる。押し出し成形機のこの第一混合区分内において、ポリマー温度を、プロピレン樹脂の融解点よりも高いが、第一又は第二共試薬の自動重合温度又は遊離ラジカル開始剤の分解温度よりも低い温度に、約5〜20秒の融解工程タイムフレーム内で保持することが望ましい。約160〜180℃の融解温度が、第一混合区分に好ましい。
【0030】
エキステンダーオイルは、第一混合区分の後、及び最初の反応区分の前に注入されてもよい。この時点におけるオイルの添加は、融解温度を冷却し、且つ反応の自動促進を防ぐのに役立つ。混合物の融解温度は、エキステンダーオイルの導入中に、ポリマー成分の凝固を阻害又は防ぐのに十分高い温度に保持しなければならない。
第一混合区分、及び任意の油展区分に続き、ポリマー混合物中に共試薬の均一な分布を保証する混錬及び分配混合を行う押し出し成形機の任意的な第二混合区分を行う。この第二混合区分中、エチレン/アルファ-オレフィン/非共役ジエンの架橋は、遊離ラジカル方法によって起こる。この区分における融解温度は、約160〜250℃、好ましくは約170〜220℃にすべきである。第二混合区分内の滞留時間は、過剰な熱分解を阻害又は防ぐために、少なくとも約10秒であるが、好ましくは約100秒以下にすべきである。第二混合区分における好ましい滞留時間は、約10〜30秒である。
脱気区分、又は揮発成分除去領域は、架橋反応の全てのガス状副生成物を除去するのに用いられる。組成物から典型的に除去する必要のある低分子量副生成物もある。メルトシール(melt seal)は、第二混合区分の終わりにこの目的のために用いることができ、逆送り要素(feed element)、又は逆混錬要素(kneading element)の使用によって達成される。メルトシールの下流には、標準送り要素があり、典型的に揮発成分を除去するのに用いられる吸引口を通して材料を運ぶ。
【0031】
第二固形物添加点は、押し出し混合機の排気区分の上流又は下流のいずれかに組み込まれてもよい。この第二固形物添加点は、安定化添加剤、着色料、充填剤などを組み込むのに用いてもよい。
混合押し出し成形機の最終区分は、ダイプレートに押し出すよりも前に、融解圧縮を含む。融解圧縮は、共回転二軸スクリュー押し出し成形機によって達成することができ、又は融解圧縮は、デカップリング(de-coupled)方法、例えば一軸スクリューを有する押し出し成形機又は融解ギアポンプによって行うことができる。圧縮区分の終わりに、その組成物をダイプレートに流し込む。続いて、その生成物を水浴で冷却し、任意であるが好ましくはペレットにする。
【0032】
本発明の熱可塑性エラストマーは、自動車及び他の物品、例えば、ガスケット、ウェザーシール(weatherseal)、カップホルダー、及びエアーバッグカバーに有用である。それらは、機械部品、電気部品、ケーブル、ホース、ベルト及び玩具に用いることもできる。
ここで用いられる“黄色度指数”の用語は、ASTM E 313-00を参照し、間接的に測定された色座標から黄色及び白色度指数を計算するための標準的技法を記載している。例えば、本発明は、驚くべきことに、典型的に30よりも多い黄色度指数を有する従来のフェノール樹脂硬化TPV材料と比較して、減少した黄色を有する熱可塑性エラストマー混合物を達成することができる。
ここで用いられる“実質的に含まない”の用語は、約5質量%よりも少ないこと、好ましくは約1質量%よりも少ないこと、さらに好ましくは約0.5質量%よりも少ないことを意味する。好ましい実施態様では、約0.1質量%よりも少ないことを意味する。材料の“完全に含まない”又は“含まない”は、微量の不純物として存在する相当量を除いて完全に存在しないことを指す。
反対を示さない限り、全ての質量%は、全組成の質量に対するものである。
ここで用いられる“約”の用語は、数値範囲の両方の値を指すものと一般的に理解すべきである。さらに、ここにおける全ての数値範囲は、整数の各小数点第一以内の範囲を含むものと理解すべきである。
【0033】

本発明は、単に説明の目的のためであり、本発明の範囲又はそれを実施することのできる手法を限定するものと考えない以下の例によって説明される。
例に用いられる材料:

【0034】
以下の方法を、混合物の特性を決定するのに用いた。

【0035】
以下に示される例を、52の長さ対直径比(L/D)を有するLeistritz 27 mmの共回転二軸スクリュー実験押し出し成形機モデルTSE-27で調製した。固形材料及び任意の液体共試薬を、第一供給口に加え、エキステンダーオイルを用いるときは硬化反応中に下流から加えた。押し出し温度は205℃であり、押し出し速度は400〜450rpmとした。全ての例を、適切な方法の100当たり約0.2部(pph)及び熱安定剤によって調製した。続いて、二軸のスクリュー押し出し機からのサンプルを、約2.0mmの厚みのプラークに注入鋳造し、ISO 37 (1994) タイプ 1のダンベル供試体及びISO 34-1 (1994)の90°の刻み目のある供試体をダイカットし、続いて標点距離25mmで試験速度500mm/分において機械的特性を測定した。









【0036】
表I

【0037】
表Iにおいて、例1及び2は、共試薬としてTMPTA及び1,2-ポリブタジエンを用いる。これらは、硬化系に1種の共試薬のみを用いる比較例1〜3とは対照的である。例1及び2に示されたオイル膨張値は、驚くべき且つ予想外に比較例よりも優れており、本発明の利点を示している。圧縮永久歪みの値もさらに低く、種々の他の特性は、優れてはいないが比較例に匹敵する。その効果は、化合物の硬度を増加させるか、又は粘度に悪影響を及ぼすことなく達成される。

















【0038】
表II

表IIは、異なる濃度のENBターモノマーを含むEPDMが、本発明においてうまく用いることができることを説明している。
【0039】
表III

この表における例は、49.2質量%のエラストマー-2、20.8質量%のPP、12.5質量%のエキステンダーオイル、2.0質量%のTMPTA、10.3質量%のCaCO3、0.2質量%のペルオキシド及び5.0質量%の前述のゴム共硬化試薬を用いる。
【0040】
表IIIは、TMPTA共試薬と組み合せて用いられる高ビニルポリブタジエン及び低ビニルポリブタジエン共試薬の間の差異を説明している。例5及び比較例4におけるデータは、高ビニル含有率を有するシンジオタクチックポリブタジエンが、驚くべき且つ予想外に、低ビニル含有率を有するポリブタジエンよりも、改善されたオイル膨張、圧縮永久歪み及び引っ張り特性において優れていることを示している。従って、ブタジエンに基づく共試薬は、本発明において有効となるために、少なくとも50%の1,2-ビニル含有率を含んでいるべきである。
【0041】
表IV

この表における例は、48.8質量%のエラストマー-1、20.5質量%のPP、12.0質量%のエキステンダーオイル、5.0質量%のSPBD、10.5質量%のCaCO3、0.2質量%のペルオキシド及び3.0質量%の前述の共試薬を用いる。
【0042】
表IVは、1,2-ポリブタジエンと組み合せて用いられる種々の共試薬の間の有意な差異を説明している。例6及び比較例5におけるデータは、アクリレート基を含む共試薬が、驚くべきことにメタクリレート基を含むものよりも、オイル膨張及び圧縮永久歪みを減少させることにおいてかなり優れていることを示している。比較例5は、部分的に硬化されているエラストマーの物理的特性が、例6における完全に硬化されているエラストマーよりも劣っていることを説明している(例えば、比較例5のより低い引っ張り強さを参照)。剪断粘度データは、本混合物におけるペルオキシド硬化によって完全に硬化されているエラストマーが、部分的に硬化されているエラストマーと比較して、良好な流動性を有するという驚くべき及び予想外の結果を示している。例7は、少なくとも2つのイミド基を含む多官能性マレイミドも有効であることを示している。
【0043】
本発明は、ここに説明及び記載されている正確な構成に限定しないものと理解する。従って、ここに開示されているものから当業者によって、又はそれからの慣例的な実験によって容易に達成される全ての都合のよい改良が、請求の範囲によって定義される本発明の意図及び範囲内であると考える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のプロピレン樹脂及び少なくとも1種のエチレン/アルファ-オレフィン/非共役ジエンエラストマーを含む反応性改質された熱可塑性エラストマー混合物であって、当該混合物が、
遊離ラジカル開始剤;
約50質量%よりも多い1,2-ビニル含有率を有するジエン含有ポリマーを含む第一共試薬;及び
少なくとも2つのアクリレート基を含む多官能性アクリレート、少なくとも2つのイミド基を含む多官能性マレイミド、又はそれらの混合物を含む第二共試薬;
を含む硬化系によって動的加硫されていて、
前記遊離ラジカル開始剤及び前記共試薬が、少なくとも97%のエラストマーのゲル含有率を提供し、且つ少なくとも70のショア A デュロメーター硬度と約90質量%よりも少ないオイル膨張とを有する本発明の混合物、及び70以下のショア A デュロメーター硬度と約100質量%よりも少ないオイル膨張とを有する混合物を提供するのに十分な量で集合的に存在する、混合物。
【請求項2】
約10〜70質量%のプロピレン樹脂及び約5〜60質量%のエチレン/アルファ-オレフィン/非共役ジエンエラストマーを含む、請求項1記載の改質された混合物。
【請求項3】
第一共試薬が、改質された混合物の約0.1〜10質量%の量で存在し、且つ少なくとも約60℃の融点を有するシンジオタクチック1,2-ポリブタジエン、アタクチック1,2-ポリブタジエン、高ビニル溶液スチレン-ブタジエンエラストマー、又はそれらの混合物を含む、請求項1記載の改質された混合物。
【請求項4】
第二共試薬が、改質された混合物の約0.1〜10質量%の量で存在し、且つトリメチロールプロパントリアクリレート、N,N'-m-フェニレンジマレイミド、又はそれらの組み合せを含む、請求項1記載の改質された混合物。
【請求項5】
遊離ラジカル開始剤が、改質された混合物の約0.001〜2%の量で存在し、且つ少なくとも1種の有機ペルオキシドを含み、前記混合物が本質的に水分感受性をもたない、請求項1記載の改質された混合物。
【請求項6】
約5〜65質量%の少なくとも1種のエキステンダーオイル、約0.001〜20質量%の量で存在する充填剤、又はその両方をさらに含む、請求項1記載の改質された混合物。
【請求項7】
エチレン/アルファ-オレフィン/非共役ジエンエラストマーが、エチレン/プロピレン/ジエンエラストマーを含み、オイルを含まない前記エチレン/アルファ-オレフィン/非共役ジエンエラストマーが、少なくとも約100のムーニー粘度[ML(1+4)@125℃]を有する、請求項1記載の改質された混合物。
【請求項8】
1種以上の有機及び無機色素、熱安定剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、粘着防止剤、発泡剤、帯電防止剤又は抗菌剤、又はそれらの任意の組み合せをさらに含む、請求項1記載の改質された混合物。
【請求項9】
請求項1記載の反応性改質された混合物を含む、物品。
【請求項10】
混合物が30よりも少ない黄色度指数を有する、請求項1記載の改質された混合物。
【請求項11】
請求項1記載の動的加硫された熱可塑性エラストマー混合組成物の調製方法であって、 少なくとも1種のポリプロピレン樹脂及び少なくとも1種のエチレン/アルファ-オレフィン/非共役ジエンエラストマーの混合物を、当該少なくとも1種のポリプロピレン樹脂の融点よりも高い温度において混合し;
遊離ラジカル開始剤、約50質量%よりも多い1,2-ビニル含有率を有するジエン含有ポリマーを含む少なくとも1種の共試薬、及び少なくとも2つのアクリレート基を含む多官能性アクリレート又は少なくとも2つのイミド基を含む多官能性マレイミドを含む少なくとも1種の共試薬を加え;及び
続いてエラストマーが少なくとも97%のゲル含有率を有するような架橋形成が行われる温度においてその混合物を十分に混合及び剪断すること;
を含み、
前記遊離ラジカル開始剤及び前記共試薬は、少なくとも70のショア A デュロメーター硬度と約90質量%よりも少ないオイル膨張とを有する本発明の混合物、及び70以下のショア A デュロメーター硬度と約100質量%よりも少ないオイル膨張とを有する混合物を提供するのに十分な量で集合的に存在する、方法。
【請求項12】
少なくとも1種の有機ペルオキシドを含む遊離ラジカル開始剤;
約50質量%よりも多い1,2-ビニル含有率を有するジエン含有ポリマーを含む第一共試薬;及び
少なくとも2つのアクリレート基を含む多官能性アクリレート、少なくとも2つのイミド基を含む多官能性マレイミド、又はそれらの混合物を含む第二共試薬;
を含む熱可塑性エラストマー硬化系であって、
少なくとも1種のポリプロピレン樹脂及び少なくとも1種の追加のエチレン含有エラストマー材料と組み合わされるときは、十分な量の前記遊離ラジカル開始剤及び前記共試薬を含むことにより、少なくとも97%のエラストマーのゲル含有率を有する反応性改質された熱可塑性エラストマー混合物を形成し、且つ少なくとも70のショア A デュロメーター硬度と約90質量%よりも少ないオイル膨張とを有する本発明の混合物、及び70以下のショア A デュロメーター硬度と約100質量%よりも少ないオイル膨張とを有する混合物を提供する、硬化系。

【公表番号】特表2006−526694(P2006−526694A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515005(P2006−515005)
【出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/016877
【国際公開番号】WO2004/108773
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(505458658)ソルヴェイ エンジニアード ポリマーズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】