説明

ゴム補強用合成繊維

【課題】高温において優れたゴム・合成繊維間接着を実現することが可能なゴム補強用合成繊維を提供すること。
【解決手段】ポリエポキシド化合物及びゴムラテックスを含む前処理剤と、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス系の接着処理剤が付着しているゴム補強用合成繊維であって、ポリエポキシド化合物のエポキシ当量が200g/当量以下であり、100%濃度での粘度が400mPa・s以上であり、かつ水に対する溶解度が3重量%以上であることを特徴とする。また、エポキシ成分がソルビトール、グリセリン、エチレングリコールのいずれかのポリグリシジルエーテルであること、前処理剤のゴムラテックス含有量が10重量%以下であることや、接着処理剤がブロックポリイソシアネートを含むものであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム補強用合成繊維に関し、さらに詳しくは耐熱接着力に優れたゴム補強用合成繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート繊維に代表されるポリエステル繊維や、芳香族ポリアミド繊維等の合成繊維は、高強度、高ヤング率等の優れた物理的特性を有しており、これを活かしたタイヤ、ホース、ベルト等のゴム補強用繊維として広く使用されている。しかし、これら合成繊維はその表面が比較的不活性であるため、そのままではゴムや樹脂等のマトリックスとの接着性が不十分であり、繊維の有する物理的特性を十分に発揮するまでにいたっていない。
【0003】
このため、繊維の表面を種々の薬品で処理する化学処理法、例えば特許文献1には、一浴に、皮膜形成温度が200℃以下のビニルハライド基を含有する化合物、ポリエポキシド化合物、及びゴムラテックスを含む処理剤であって、該ビニルハライド基を含有する化合物の含有率が処理剤の固形分に対して3〜85重量%の範囲にある処理剤(1)により処理した後、さらに、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックスを含む処理剤(2)で処理することを特徴とするゴム補強用ポリエステル繊維の処理方法が開示されている。この方法では、接着剤付着量を劇的に減少させることが出来、経済的にも優れたものである。
【0004】
しかし、この処理方法では高温での剥離接着性が不十分であり、要求がシビアになる用途での使用が出来ないという問題があった。
【特許文献1】特開2000−234275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の事情を背景としてなされたものであり、高温において優れたゴム・合成繊維間接着を実現することが可能なゴム補強用合成繊維を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のゴム補強用合成繊維は、ポリエポキシド化合物及びゴムラテックスを含む前処理剤と、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス系の接着処理剤が付着しているゴム補強用合成繊維であって、ポリエポキシド化合物のエポキシ当量が200g/当量以下であり、100%濃度での粘度が400mPa・s以上であり、かつ水に対する溶解度が3重量%以上であることを特徴とする。
【0007】
また、エポキシ成分がソルビトール、グリセリン、エチレングリコールのいずれかのポリグリシジルエーテルであること、前処理剤のゴムラテックス含有量が10重量%以下であること、ゴムラテックスがビニルピリジン・スチレン・ブタジエン・ターポリマーラテックスであること、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン・ターポリマーラテックスのスチレン成分含有比が全体重量の20〜40重量%であることや、接着処理剤がブロックポリイソシアネートを含むものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高温において優れたゴム・合成繊維間接着を実現することが可能なゴム補強用合成繊維が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のゴム補強用合成繊維としては、ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維などを挙げることが出来る。より具体的には、例えばポリエステル繊維としては、テレフタル酸、又は、ナフタレンジカルボン酸を主たる酸成分とし、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール又は、テトラメチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルからなる繊維が好ましく用いられる。また、芳香族ポリアミド繊維の代表例としては、ポリパラアミノベンズアミド、ポリパラフェニレンテレフタラミド、ポリパラアミノベンズヒドラジドテレフタルアミド、ポリテレフタル酸ヒドラジド、ポリメタフェニレンイソフタラミド等、もしくはこれらの共重合体からなる繊維を挙げることができる。
【0010】
本発明の合成繊維は、ヤーン、コード、不織布、織編物等種々の繊維集合形態が含まれるが、特には撚糸を行ったコードであることが、その合成繊維の持つ強度をより有効に発揮するためには好ましい。合成繊維のデニール、フィラメント数、断面形状、繊維物性、微細構造や、ポリマー性状(末端カルボキシル基濃度、分子量等)、ポリマー中の添加剤の有無等には、特に限定は無く、さまざまな形状のものが含まれるが、強度を有効に活用するためには円形の断面形状を有することが好ましい。
【0011】
さて、本発明のゴム補強用合成繊維は、ブロックポリイソシアネート及びエポキシを含む前処理剤と、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス系のいわゆるRFL接着剤が付着しているゴム補強用繊維であるが、このとき前処理剤中のポリエポキシド化合物のエポキシ当量が200g/当量以下であり、100%濃度での粘度が400mPa・s以上であり、かつ水に対する溶解度が3重量%以上であることを必須とする。
【0012】
本発明の前処理剤は上記のようなエポキシを含むことを必須とするが、ここでいうエポキシとはポリエポキシド化合物(B)であり、特には、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を含有する化合物であることが好ましい。具体的なエポキシの例としては、エチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール類とエピクロルヒドリンの如きハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルメタン、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂等の多価フェノール類と前記ハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、過酢酸又は過酸化水素等で不飽和化合物を酸化して得られるポリエポキシド化合物、即ち3,4−エポキシシクロヘキセンエポキシド、3、4−エポキシシクロヘキシルメチル−3、4−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ビス(3、4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキシルメチル)アジベートなどを挙げることができる。これらのうち、特にエチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール類とエピクロルヒドリンとの反応生成物、即ち多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物が優れた性能を発現するので好ましい。
【0013】
ここで本発明においてはポリエポキシド化合物が、エポキシ当量が200g/当量以下であり、100%濃度での粘度が400mPa・s以上であり、かつ水に対する溶解度が4重量%以上であることが必要である。さらにはエポキシ当量としては140〜200g当量であることが好ましく、100%濃度での粘度は500〜10,000mPa・sであり、水に対する溶解度が3〜20重量%、さらには4重量%以上であることが好ましい。溶解度が3重量%未満になると水に分散させるための界面活性剤が必要となり接着阻害が発生する。また粘度が400mPa・s未満では、分子量も小さく架橋性が低下し、高温での接着性を確保することができない。分子量としては5000以上であることが好ましく、このような大きい分子量とエポキシ当量を満足させることにより、熱による悪影響を受けにくい高温接着を実現することができたのである。
【0014】
前処理剤にポリエポキシド化合物とともに用いられるブロックドポリイソシアネート化合物とは、ポリイソシアネート化合物とブロック化剤との付加反応生成物であり、加熱によりブロック成分が遊離して活性なポリイソシアネート化合物を生ぜしめるものである。ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のポリイソシアネート、あるいはこれらのポリイソシアネートと活性水素原子を1個以上有する化合物としては、例えばフェノール、チオフェノール、クレゾール、レゾルシノール等のフェノール類、ジフェニルアミン、キシリジン等の芳香族第2級アミン類、フタル酸イミド類、カプロラクタム、バレロラクタム等のラクタム類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類及び酸性亜硫酸ソーダ等が例示される。
【0015】
さらに本発明で用いられる前処理剤としては、ブロックドポリイソシアネート化合物(A)やポリエポキシド化合物(B)に加えて、さらにはゴムラテックス(L)や表面張力を下げる界面活性剤(S)を含むものであることが好ましい。
【0016】
本発明で前処理剤に加えられるゴムラテックス(L)としては、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーラテックス単独、もしくは、天然ゴムラテックス、スチレン・ブタジエン・コポリマーラテックス、ニトリルゴムラテックス、クロロブレンゴムラテックス、エチレン・プロピレン・ジエンモノマーラテックス等の併用であることが好ましい。また併用して用いる場合、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーラテックスの割合はラテックス成分のうちの30重量%以上であることが好ましい。またビニルピリジン・スチレン・ブタジエン・ターポリマーラテックスのスチレン成分含有比が全体重量の20〜40重量%である場合が好ましい。
【0017】
本発明で合成繊維の表面に付着した前処理剤は、一般には溶液として合成繊維に処理される。このとき前処理剤の溶液(1)が前記のように、ブロックドポリイソシアネート化合物(A)、ポリエポキシド化合物(B)、及びゴムラテックス(L)、である場合、各成分の配合重量比に関しては、(A)/(B)が5/5〜1/9、(L)/{(A)+(B)}が1/20〜1/1となるようにして使用されることが好ましい。特に、前記の(A)/(B)を5/5〜1/9の範囲とすることにより、高温での接着性がより改善される。
【0018】
また、前記の(L)/{(B)+(A)}を1/20以上とすることにより、処理した繊維を柔軟に保つことができ、コードが硬くなることによる耐疲労性の低下を防止すると共に、その後に付与する接着剤のラテックス及び被着体であるゴムとの共加硫を促進させることにより、接着性が向上する。一方この比率が高くなりすぎ、例えば(L)/{(B)+(A)}が1/1を超える場合には、ポリエステル繊維側への親和性が不十分となることから逆に接着性が低下する傾向となる。
【0019】
このような前処理剤の溶液(1)を合成繊維に付着せしめるには、ローラーとの接触、若しくは、ノズルからの噴霧による塗布、又は、溶液への浸漬などの手段が採用できる。また、該合成繊維に対する固形分付着量は、1〜30重量%の範囲が例示され、好ましくは、2〜15重量%の範囲にあるものがよい。合成繊維に対する固形分付着量を制御するためには、圧接ローラーによる絞り、スクレバー等によるかき落とし、空気吹きつけによる吹き飛ばし、吸引、ビーターの手段により行うことが出来、付着量を多くするためには複数回付着させてもよい。
【0020】
本発明のゴム補強用合成繊維は、上記のようなブロックポリイソシアネート及びエポキシを含む前処理剤に加えて、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス系の接着処理剤が付着しているものである。
【0021】
本発明の接着剤は溶液(2)として合成繊維に付与されることが好ましいが、そのとき使用されるレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)接着剤の溶液(2)としては、レゾルシンとホルムアルデヒドのモル比が、1:0.8〜1:5の範囲にあるものが好ましく、さらには1:1〜1:4の範囲であることがより好ましい。ホルムアルデヒドの添加量が少なすぎるとレゾルシン・ホルマリンの縮合物の架橋密度が低下すると共に分子量の低下を招くため、接着剤層凝集力が低下することにより接着性が低下するおそれがあり、また、該ホルムアルデヒドの添加量が多すぎると架橋密度上昇によりレゾルシン・ホルマリン縮合物が硬くなり、被着体ゴムとの共加硫時にRFLとゴムとの相溶化が阻害され、接着性が低下すると共に処理後の繊維が著しく硬くなり、強力及び疲労性が低下する問題が出てくる傾向にある。
【0022】
また、本発明で用いられる接着処理剤にはブロックドポリイソシアネート化合物を含むものであることが好ましい。接着処理剤に対するブロックドポリイソシアネート化合物の添加率は、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)全量に対して0.5〜30重量%であることが好ましく、さらには1.0〜20重量%の範囲であるものが好ましい。添加量が少なすぎると接着力向上効果が少なく、また添加量が多すぎる場合には接着剤の粘度が著しく上昇して繊維の処理作業が困難になると共に、処理後の繊維が著しく硬くなり、強力及び疲労性が低下する傾向にあり好ましくない。
【0023】
かかる接着処理剤の溶液(2)におけるレゾルシン・ホルマリンとゴムラテックスとの最適な配合比率は、前記のブロックドポリイソシアネート化合物の添加割合によっても変化するが、固形分量比で、レゾルシン・ホルマリン:ゴムラテックス(RFL)が1:3〜1:12の範囲にあるものが好ましく、特には1:3〜1:6の範囲にあるものが好ましい。ゴムラテックスの比率が少なすぎると処理されたポリエステル繊維が硬くなって耐疲労性が低下する傾向に有り、また、前処理剤の溶液(1)中のラテックス及び被着体であるゴムとの共加硫が不十分となり、接着性が低くなるおそれがある。逆に、接着剤中のゴムラテックスの比率が多すぎると接着剤皮膜として強度が低下し、接着力やゴム付着率が低下する傾向にある。
【0024】
本発明の接着処理剤として処理される溶液(2)は、総固形分濃度としては、1〜30重量%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは、2〜25重量%、さらに好ましくは5〜20重量%となるようにして使用することが出来る。接着処理剤の溶液(2)の総固形分濃度が、前記の範囲よりも低い場合には、接着剤溶液の表面張力が増加し、ポリエステル繊維表面に対する均一付着性が低下すると共に、固形分付着量が低下することにより接着性が低下し、逆に、該総固形分濃度が前記の範囲よりも高い場合には、固形分付着量が多くなりすぎるために硬くなり、耐疲労性が低下しやすい。
【0025】
また、かかる接着処理剤の溶液(2)を合成繊維に付着せしめるには、ローラーとの接触、若しくは、ノズルからの噴霧による塗布、又は、溶液への浸漬などの手段が採用できる。また、該合成繊維に対する固形分付着量は、0.1〜10重量%の範囲が例示され、好ましくは、0.2〜7重量%の範囲が、さらに好ましくは、0.5〜6重量%の範囲にあるものがよい。合成繊維に対する固形分付着量を制御するためには、前記と同様に、圧接ローラーによる絞り、スクレバー等によるかき落とし、空気吹きつけによる吹き飛ばし、吸引、ビーターの手段により行うことが出来、付着量を多くするためには複数回付着させてもよい。
【0026】
本発明のゴム補強用合成繊維を得るためには、上記のような溶液(1)および溶液(2)を使用して合成繊維を処理した後、50℃以上で、合成繊維の融点より10℃以上低い温度の範囲で乾燥・熱処理する。より好ましくは例えば繊維がポリエステル繊維の場合には、220〜250℃の温度範囲で、0.5〜5分間、好ましくは、1〜3分間乾燥・熱処理する。この乾燥・熱処理温度が、低すぎるとゴム類との接着が不十分となりやすく、また、該乾燥・熱処理温度が高すぎると合成繊維が溶融、融着するなどにより、繊維の強度低下を起こす場合が有る。
【0027】
このようにして得られた本発明のゴム補強用合成繊維は、耐熱性に優れるためタイヤ、ホース、ベルト等のゴム補強用合成繊維として、特に熱的にシビアな状態でも高い性能を維持するので、好ましく用いられる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例における特性は下記の測定法によりおこなった。
【0029】
(1)水に対する溶解度
エポキシ化合物の水に対する溶解度の測定法としては、まず20℃のイオン交換水にエポキシ化合物を所定量添加し、5分間攪拌を行った後に、5分間放置した。このときエポキシ化合物が相分離せず、無色透明になっている場合に溶解したとみなし、上限の濃度を溶解度とした。
溶解度=(上限濃度でのエポキシ添加重量)/(上限濃度でのエポキシ添加重量+水の重量)
【0030】
(2)初期剥離接着力、耐熱剥離接着力
処理コードとゴムとの接着力を示すものである。コードを30本/2.54cm(インチ)で引きそろえ、0.5mm厚の天然ゴムを主成分とするカーカス配合の未加硫ゴムシートで挟みつける。これらのシートを直行するように重ね合わせ、150℃の温度で、30分間、50kg/cmのプレス圧力(初期剥離接着力)、又は、180℃の温度で40分間、50kg/cmのプレス圧力(耐熱剥離接着力)で加硫し、次いで室温にてコード方向に沿って短冊状に切り出す。短冊に沿った方のシートをゴムシート面に対し90度の方向へ200mm/分の速度で剥離するのに要した力をN/2.54cm(インチ)で示し、初期剥離接着力および耐熱剥離接着力としたものである。
【0031】
(3)高温剥離接着力
上記、初期接着力測定用に作成したサンプルを、上記と同様の測定条件にて、但し測定雰囲気温度のみを150℃に変更して測定を行い、高温剥離接着力とした。
【0032】
[実施例1]
前処理剤の溶液(処理剤(1))として、ソルビトール系ポリエポキシド化合物(エポキシ当量170g/当量、100%粘度4600mPa・s、水に対する溶解度4重量%、坂本薬品工業社製SR−SEP)、εカプロラクタムブロックドMDI(明成化学工業社製S3)、及びビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーゴムラテックス(日本エーアンドエル社製、Pyratex)をそれぞれ固形分で80重量%、10重量%、10重量%の割合で混合した、総固形分量:10重量%の配合液を得た(処理剤(1))。
【0033】
一方接着処理剤の溶液(処理剤(2))として、レゾルシン/ホルマリン(R/F)のモル比が1/0.6、固形分濃度が65重量%である初期縮合物をアルカリ条件下にて溶解し9重量%水溶液とする。これを、41%ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターボリマーラテックス(日本エイアンドエル社製、Pyratex)と水を上記9%レゾルシン・ホルマリン水溶液57重量部に対し、それぞれ99重量部、104重量部添加する。この液にホルマリン3重量部、33重量%アセトキシムブロックドジフエニルメタンジイソシアネート分散体(明成化学工業社製、DM6011)を30重量部添加し、48時間熟成した固形分濃度20重量%の溶液を得た(処理剤(2))。
【0034】
固有粘度が0.95のポリエチレンテレフタレートからなる1670dtex/384フィラメントのマルチフィラメント糸を使用し、該マルチフィラメント糸に40T/10cmで下撚りを施し、これを2本合わせて40T/cmで上撚りを施して3340dtex/768フィラメントのコードを得た。
【0035】
該コードをコンビュートリーター処理機(CAリッツラー株式会社製、タイヤコード処理機)を用いて、前記の処理剤(1)に浸漬した後、130℃の温度で2分間乾燥し、引き続き、240℃の温度で1分間の熱処理を行い、続いて、処理剤(2)に浸漬した後に、170℃の温度で2分間乾燥し、引続いて、240℃の温度で1分間の熱処理を行った。得られたタイヤコードには、処理剤の固形分として、処理剤(1)が2.1重量%、処理剤(2)が2.2重量%付着していた。得られた処理コードを、天然ゴムを主成分とするカーカス配合の未加硫ゴム中に埋め込み、加硫後に前記の方法により評価した。その結果を表1に示す。
【0036】
[実施例2]
ソルビトール系ポリエポキシド化合物の代わりに、エポキシ当量183g/当量、100%粘度4400mPa・s、水に対する溶解度12重量%のポリグリセロール系ポリエポキシド化合物(ナガセケムテックス、EX521)を用いた以外は、実施例1と同様に処理を行った。評価結果を表1に併せて示す。
【0037】
[比較例1]
ソルビトール系ポリエポキシド化合物として、エポキシ当量167g/当量、100%粘度11800mPa・s、水に対する溶解度2重量%のソルビトール系ポリエポキシド化合物(ナガセケムテックス、EX611)を用いた以外は、実施例1と同様に処理を行った。評価結果を表1に併せて示す。
【0038】
[比較例2]
ソルビトール系ポリエポキシド化合物の代わりに、エポキシ当量159g/当量、100%粘度650mPa・s、水に対する溶解度35重量%のジグリセロール系ポリエポキシド化合物(ナガセケムテックス、EX421)を用いた以外は、実施例1と同様に処理を行った。評価結果を表1に併せて示す。
【0039】
[比較例3]
ソルビトール系ポリエポキシド化合物の代わりに、エポキシ当量141g/当量、100%粘度150mPa・s、水に対する溶解度60重量%のグリセロール系ポリエポキシド化合物(ナガセケムテックス、EX313)を用いた以外は、実施例1と同様に処理を行った。評価結果を表1に併せて示す。
【0040】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエポキシド化合物及びゴムラテックスを含む前処理剤と、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス系の接着処理剤が付着しているゴム補強用合成繊維であって、ポリエポキシド化合物のエポキシ当量が200g/当量以下であり、100%濃度での粘度が400mPa・s以上であり、かつ水に対する溶解度が3重量%以上であることを特徴とするゴム補強用合成繊維。
【請求項2】
エポキシ成分がソルビトール、グリセリン、エチレングリコールのいずれかのポリグリシジルエーテルである請求項1記載のゴム補強用合成繊維。
【請求項3】
前処理剤のゴムラテックス含有量が10重量%以下である請求項1または2記載のゴム補強用合成繊維。
【請求項4】
ゴムラテックスがビニルピリジン・スチレン・ブタジエン・ターポリマーラテックスである請求項1〜3のいずれか1項記載のゴム補強用合成繊維。
【請求項5】
ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン・ターポリマーラテックスのスチレン成分含有比が全体重量の20〜40重量%である請求項4項記載のゴム補強用合成繊維。
【請求項6】
接着処理剤がブロックポリイソシアネートを含むものである請求項1〜5のいずれか1項記載のゴム補強用合成繊維。

【公開番号】特開2009−299221(P2009−299221A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155161(P2008−155161)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】