説明

ゴム部材製造方法及び製造装置

【課題】未加硫ゴムの内部における金属ワイヤの食い込みや位置ずれ、或いは、接着性の低下を確実に防止するとともに、極めて短時間でゴム部材を製造することが可能なゴム部材製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】未加硫ゴムをブローポイント以上の加硫度に達するまで加硫する第一の工程と、第一の工程を経た未加硫ゴムを当該未加硫ゴムの加硫度よりも高い加硫度まで加硫する第二の工程とを含み、第二の工程は、第一の工程を通過した未加硫ゴムを電磁誘導により加熱する形態とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム部材製造方法及び製造装置に関し、特に複数の加硫工程を経ることにより、品質に優れたゴム部材を得ることが可能な方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、補強層としての金属を内部に有するゴムホースやゴムベルト等の長尺なゴム部材を製造する方法としては、押出機等の成型手段によって金属を内包した状態で連続して生成される未加硫ゴムを巻出しドラム及び巻取りドラムによって一方向に搬送するとともに、未加硫ゴムを搬送経路上に設置される加硫手段によって加硫することにより、製品としてのゴム部材を得る方法が知られている。
例えば、特許文献1に開示されるゴムホースの製造方法は、内部に金属ワイヤを有する未加硫のゴムホースをドラムによって一方向に搬送するとともに、搬送経路上の予備加熱手段としてのコイル、及び、加硫炉により加硫を行う方法であって、具体的には、加硫炉への搬送の前段階として、未加硫のゴムホースを通電状態のコイル内を通過させることによって生じる電磁誘導作用によりゴムホース内部の金属ワイヤを加熱し、後段に設置される加硫炉内の温度差を少なくすることにより工程全体の製造時間短縮、及び、加硫炉の小型化を図る方法が提案されている。
しかしながら、上記製造方法にあっては、コイル通過中に生じる電磁誘導作用により金属ワイヤ周辺の未加硫ゴムが軟化するため、コイル通過後から加硫炉まで至る搬送経路上に配置されたガイドローラ等の搬送機構を通過することによって生じる未加硫のゴムホース全体の形状変化によって、未加硫のゴムホース内部における金属ワイヤの食い込みや位置ずれが生じ易くなり、加硫完了後の製品としての品質が低下する虞がある。
また、上記ゴムホースを始めとする長尺部材を連続的に搬送し、搬送経路上において連続的に加硫する方法にあっては、一部のライン上で何らかのトラブルが生じた場合に全体の搬送速度を減速するか、搬送を停止した上でトラブルを解消し、トラブル解消後に再び所定の搬送速度まで加速させる必要がある。
そして、減速中,加速中にコイルを通過することによって与えられるエネルギー量が一定のままであると、減速中,加速中にコイル内に存在する長尺部材の単位長さ辺りに加えられるエネルギー量は、所定の搬送速度時に与えられるエネルギー量よりも大きくなる。その結果、内部に存在する金属の温度が過大なものとなり、金属表面と未加硫ゴム界面との接着性が低下し、加硫完了後の製品としての品質が低下する虞がある。さらに、このような理由によりゴム内部の温度をあまり上げることができないので、電磁誘導作用による予備加熱では、予備加熱が無い場合に比べて工程全体の製造時間をほとんど短縮することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−103340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、上記課題を解決するため、未加硫ゴムの内部における金属ワイヤの食い込みや位置ずれ、或いは、接着性の低下を確実に防止するとともに、極めて短時間でゴム部材を製造することが可能なゴム部材製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明の第一の形態として、内部に金属を有する未加硫ゴムを長手方向に搬送し、当該未加硫ゴムを搬送経路上において加硫するゴム部材製造方法であって、未加硫ゴムをブローポイント以上の加硫度に達するまで加硫する第一の工程と、第一の工程を経た未加硫ゴムを当該未加硫ゴムの加硫度よりも高い加硫度まで加硫する第二の工程とを含み、第二の工程は、第一の工程を通過した未加硫ゴムを電磁誘導により加熱する形態とした。
当該形態により、第一の工程において内部に金属を有する未加硫ゴムが、ブローポイント以上の加硫度に達するまで加硫されることから、未加硫ゴムの形状が略固まり、搬送機構を通過することにより生じる未加硫ゴムの形状変化によって、内部の金属ワイヤの食い込みや位置ずれが生じることがない。
また、第二の工程において、電磁誘導により加熱される未加硫ゴムは、ブローポイント以上の加硫度まで達しているため、電磁誘導によって内部に与える熱量を大きくすることができ、工程全体の加硫時間を短縮することができる。
また、本発明の第二の形態として、未加硫ゴムの搬送速度を検出し、当該搬送速度に基づいて電磁誘導によって未加硫ゴムに与えられるエネルギー量を制御する形態とした。
本形態によれば、検出した搬送速度に基づいて電磁誘導によって与えられるエネルギー量を制御するため、搬送速度に関わらず未加硫ゴムに対して与えるエネルギー量を一定にすることができる。従って、未加硫ゴムが、加硫不足のゴム部材、或いは、過加硫のゴム部材となることがなく、ゴム部材の品質を常に一定に保つことができる。
また、上記第一の形態と対応する第一の構成として、内部に金属を有し、長手方向に搬送される未加硫ゴムを搬送経路上において加硫するゴム部材製造装置であって、未加硫ゴムをブローポイント以上の加硫度に達するまで加硫する第一の加硫手段と、第一の加硫手段よりも搬送方向下流側に位置し、第一の加硫手段を通過した未加硫ゴムを当該未加硫ゴムの加硫度よりも高い加硫度まで加硫する第二の加硫手段とを有し、第二の加硫手段がコイルを有し当該コイルを通過する未加硫ゴムを電磁誘導により加熱する構成とした。
本構成によれば、前記第一の形態における発明から生じる効果と同様の効果を得ることができる。
また、上記第二の形態と対応する第二の構成として、未加硫ゴムの搬送速度を検出する搬送速度検出手段を有し、当該搬送速度に基づいてコイルによって未加硫ゴムに与えられるエネルギー量を制御する構成とした。
本構成によれば、前記第二の形態における発明から生じる効果と同様の効果を得ることができる。
なお、本明細書において未加硫ゴムとは、最終製品として要求されるゴムの加硫度に達する前のゴムの状態をいうものとする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】ゴム部材の加硫工程を示す概略図である。
【図2】ゴムホース及びゴムベルトの断面を示す斜視図である。
【図3】加硫度と泡の大きさとの関係を示すグラフである。
【図4】第二の加硫装置の概略斜視図である(実施形態1)。
【図5】第一の加硫装置の斜視図である(実施形態2)。
【図6】第二の加硫装置の概略斜視図である(実施形態2)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、ゴム部材の加硫工程を示す概略図である。
同図において、ゴム部材の一例としてのゴムホース1は、その長手方向に沿って巻出しドラム3及び巻取りドラム4に掛け渡された状態で一方向に搬送される。
ゴムホース1は、ガイドローラ5にガイドされつつ搬送経路上に配置される第一の加硫装置7へと搬送され、所定の加硫度まで加硫された後、搬送経路上に設置されるガイドローラ9にガイドされ、後段の第二の加硫装置10へと搬送される。そして、当該第一の加硫装置7(第一の加硫手段)及び第二の加硫装置10(第二の加硫手段)を経たゴムホース1が最終的な製品として製造される。
なお、巻出しドラム3に巻き取られるゴムホース1は、図外の押出機等の成型手段によってコード体17を内包した状態で連続して生成される。
以下、ゴムホース1及び各工程の詳細について説明する。
【0008】
図2(a)は、搬送中のゴムホース1を切断した状態で示す斜視図である。
同図においてゴムホース1は、芯材であるマンドレル15の外周面を覆う内管ゴム16と、内管ゴム16の外周面を被覆する補強層として例えば鉄等の磁性金属体から成るコード体17と、当該コード体17の外周面を被覆する外管ゴム18とから構成される。さらに、外管ゴム18の外周面には、最外層としての樹脂層19が被覆される。
マンドレル15及び樹脂層19は、製造過程においてゴムホース1の形状を保持するためのものであり、第二の加硫装置10を通過後に図外の除去装置等によって除去される。つまり、本例におけるゴムホース1は、内管ゴム16、コード体17及び外管ゴム18によって形成される積層構造である。
【0009】
図1に示すように、第一の加硫装置7は、例えば搬送中のゴムホース1を熱風により加熱しながら加硫を行う熱風炉30である。
熱風炉30は、図外のブロアー機構及びヒーター機構によって、実質的に密閉状態の炉内の空気を循環させることによりゴムホース1を加熱する装置であって、搬送方向の上流側及び下流側にそれぞれ開設される導入口32及び導出口33と、導入口32から導出口33に向かって一方向に搬送されるゴムホース1をガイドする複数のガイドドラム6とを備える。
ガイドドラム6は、熱風炉30内において搬送方向及び上下方向に互いに離間して設けられる回転体であって、搬送中のゴムホース1は、各ガイドドラム6に掛け渡された状態で下流側へ移動し、導出口33に向かうに従って徐々に加硫度が上昇し、ブローポイントに達する加硫度まで上昇した後に、導出口33から導出され、下流側に設けられた第二の加硫装置10に搬送される。
【0010】
以下、熱風炉30におけるゴムホース1の加硫の仕組みについて概説する。
搬送中のゴムホース1が、熱風炉30によって加熱されると、ゴムホース1を構成する内管ゴム16及び外管ゴム18が熱膨張により半径方向に膨張しようとする。その一方で、内管ゴム16及び外管ゴム18の半径方向には、熱膨張を起しにくいマンドレル15及び樹脂層19が存在するため、半径方向に膨張しようとする内管ゴム16及び外管ゴム18の膨張はマンドレル15及び樹脂層19によって抑制される。
よって、内管ゴム16及び外管ゴム18は、熱風炉30内において常に内圧が印加された状態で加熱されることとなり、熱風炉30に導入された時点では未加硫であったゴムホース1は徐々に加硫され、やがて熱風炉30内においてブローポイントに達する加硫度まで加硫される。
【0011】
ここで、ブローポイントとは、一般にゴムホース1等をはじめとするゴム部材の内部に、加硫不足によって生じる泡が存在しない状態となるのに必要な加硫度であり、ブローポイント以上の加硫度に達したゴム部材は、外観形状がほぼ固まり、塑性変形を起さない状態となる。
また、加硫度とは、化学反応速度の温度依存性を予測するアレニウスの式によって定義される。
【数1】

A:ゴム固有の反応係数
E:活性化エネルギー
R:気体定数
T:加硫温度(絶対温度)
T0:基準温度(絶対温度)
t:加硫時間
つまり、加硫度は、ゴムホース1の加硫反応の進行状態を示す尺度として用いられ、加硫温度と加硫時間との関数で示すことができる。
【0012】
図3は、ゴムホース1の加硫度と泡の大きさの関係を示すグラフである。
同図において、横軸は加硫時間を、縦軸は加硫度をそれぞれ示す。図中の○印は、各加硫時間t1乃至t4におけるゴムホース1の加硫度と当該ゴムホース1内部の泡の大きさを示す。加硫時間が短い加硫時間t1においては、ゴムホース1内部の泡が大きく、加硫度も低いことが分かる。図中の○印から、加硫時間が経つにつれ加硫反応が進行し、泡が段階的に小さくなっていることが分かる。加硫時間t4に達したゴムホース1は内部に泡が存在しない状態となる。
つまり、同図に示すようにゴムホース1のブローポイントは、加硫時間t4時点の加硫度である。なお、ブローポイントは、ゴムの種類、ゴム配合物の組成、練り方式及び条件等によって異なる値を示すが、例えば本例においては、最終製品としてのゴムホース1に要求される加硫度を1以上として設定し、ブローポイントに達する加硫度を0.5以上として設定している。
【0013】
図4は、第二の加硫装置10の具体的構成を示す斜視図である。
第二の加硫装置10は、第一の加硫装置7よりも搬送方向下流側の搬送経路上に配置され、ゴムホース1が通過可能な電磁誘導コイル35と、ゴムホース1の搬送速度を検出する搬送速度検出手段としてのロータリーエンコーダ36と、ロータリーエンコーダ36からの信号を出力制御手段38に出力する検出値処理手段37と、検出値処理手段37からの出力に基づいて電磁誘導コイル35への出力電流を制御する出力制御手段38とから構成される。
電磁誘導コイル35は、出力制御手段38からの出力電流によって内部を通過するゴムホース1を電磁誘導作用により加熱するコイルであって、保温ボックス39内に収容される。
保温ボックス39は、電磁誘導コイル35の延長方向に渡って延長する箱体であって、電磁誘導コイル35を囲繞することによって、加熱されたゴムホース1の温度低下を防止する。
ロータリーエンコーダ36は、搬送されるゴムホース1の最外層である樹脂層19と当接することにより回転し、ゴムホース1の搬送速度を検出する。
検出値処理手段37は、ロータリーエンコーダ36から入力された検出信号に基づいて処理信号に変換し、出力制御手段38へと出力する。出力制御手段38は、検出値処理手段37から入力された処理信号に基づいて電磁誘導コイル35へ電流を出力する。
【0014】
電磁誘導コイル35によるゴムホース1の加硫方法を説明する。
熱風炉30から搬送されるブローポイント以上の加硫度に達したゴムホース1は、搬送経路上のガイドローラ9を経由し、連続的に電磁誘導コイル35へと導入される。電磁誘導コイル35内を通過するゴムホース1は、電磁誘導作用により生じる誘導電流によりゴムホース1の内部から加熱される。
具体的には、熱風炉30における加硫と同様に、電磁誘導コイル35によって加硫されるゴムホース1は、マンドレル15及び樹脂層19の存在により内圧が印加された状態で加熱され、電磁誘導コイル35に導入された時点ではブローポイント以上の加硫度、かつ、最終製品として要求される加硫度以下の加硫度であったゴムホース1は徐々に加硫され、やがて電磁誘導コイル35内、又は、保温ボックス39内において最終製品として要求される加硫度以上の加硫度に達するまで加硫される。
【0015】
連続的に搬送されるゴムホース1の搬送速度は、ゴムホース1に当接するロータリーエンコーダ36及び検出信号を処理する検出値処理手段37によって算出され、出力制御手段38は、電磁誘導コイル35を搬送速度に対応するように動作させる。
具体的には、電磁誘導コイル35によってゴムホース1の単位長さ当りに与えられるエネルギー量が常に一定となるように電磁誘導コイル35への出力電流を制御する。
つまり、連続的に搬送されるゴムホース1の搬送速度が何らかの事情により基準速度よりも徐々に遅くなるような場合には、電磁誘導コイル35への出力を徐々に低くし、ゴムホース1に与えられるエネルギー量を一定にする。
一方で、ゴムホース1の搬送速度が基準速度よりも遅くなった状態から徐々に加速し基準速度に復帰するような場合には、電磁誘導コイル35の出力を徐々に高くし、ゴムホース1に与えられるエネルギー量を一定にする。なお、具体的な出力電流の制御としては、電磁誘導コイル35へ印加する電圧値、電流値、或いは周波数等を変更することにより行われる。
【0016】
以上説明したとおり、本実施形態によれば、ゴムホース1を熱風炉30によってブローポイント以上の加硫度に達するまで加硫することにより、ゴムホース1が塑性変形を起さなくなるので、搬送経路上の搬送機構を通過することによって、ゴムホース1内部における金属ワイヤの食い込みや位置ずれが生じなくなる。
また、出力制御手段38は、ロータリーエンコーダ36によって検出したゴムホース1の搬送速度に応じて電磁誘導コイル35がゴムホース1に与えるエネルギー量を一定となるように電磁誘導コイル35への出力を制御するので、ゴムホース1の搬送速度が基準速度よりも遅い速度となっても、金属が過加熱状態となることを防止でき、金属表面と未加硫ゴム界面との接着性を確保できる。
さらに、電磁誘導コイル35により加熱されるゴムホース1は、当該ゴムホース1がブローポイント以上の加硫度まで達しているため、電磁誘導コイル35の出力を大きくすることが可能となり、加硫時間を短縮することが可能となる。
即ち、電磁誘導コイル35により加熱されるゴムホース1は、前段階において既にブローポイント以上の加硫度に達するまで加硫されているため、電磁誘導コイル35によって急速な温度上昇が生じたとしてもコード体17の周囲の内管ゴム16や外管ゴム18の物性が変化することがなく、電磁誘導コイル35を通過するゴムホース1の加硫度を急速に進行させることが可能である。
つまり、本発明によれば、本来的に長時間の加硫が必要な熱風炉30において必要最低限の加硫度を確保し、急速な温度上昇によって短時間の加硫が可能な電磁誘導コイル35において最終製品として要求される加硫度を確保することにより、ゴムホース1の品質を確実に確保しつつ、工程全体の加硫時間を著しく短縮することが可能となり、生産性の向上を図ることができる。
【0017】
以下、本発明に係る他の実施形態(実施形態2)について説明する。本実施形態においては、加硫の対象がゴムベルト1Aである点で上記実施形態と異なる。図2(b)は、実施形態2におけるゴムベルト1Aを切断した状態で示す斜視図である。
同図においてゴムベルト1Aは、内部に磁性金属ワイヤから形成される芯体41を含む平板状の部材であって、図外の成型機によって連続成型される。
ゴムベルト1Aは、長尺方向に沿って搬送される過程において後述の第一の加硫装置7及び第二の加硫装置10によって加硫される。
【0018】
図5は、本実施形態における加硫装置7の斜視図であり、同図を用いて第一の加硫装置7の構造及び加硫方法について説明する。
本例における第一の加硫装置7は、未加硫状態のゴムベルト1Aを加圧しながら加熱を行う加硫プレス機46である。
加硫プレス機46は、ゴムベルト1Aの搬送方向に沿って長尺なベース47と、当該ベース47上に立設される門型の支柱48と、当該支柱48の梁部に固定される上熱板49と、上下動可能となるように下熱板駆動機構51によって支持される下熱板50とから構成される。
支柱48は、ゴムベルト1Aの搬送方向に沿って複数立設され、搬送方向と直交する方向に水平に延在する梁部の下面に図外の固定手段を介して上熱板49が水平に固定される。
上熱板49は、下面或いは下面近傍の内部に図外の発熱体を備える矩形状の板であって、下方に位置するゴムベルト1Aが下熱板駆動機構51の動作によって上昇することに伴って、ゴムベルト1Aの表面を押圧する加圧加熱面となる。
下熱板50は、上方に位置する上熱板49と平行となるように下熱板駆動機構51によって支持される矩形状の板であって、下熱板駆動機構51の駆動によって上熱板49と近接又は離間し、近接時において上熱板49との間にゴムベルト1Aに圧力を印加した状態で挟み込む。
下熱板駆動機構51は、ピストンによって構成され、図外のピストンロッドの伸縮により下熱板50を上下動作させる。
【0019】
上記構成からなる加硫プレス機46には、上流側からゴムベルト1Aが断続的に搬送され、加硫が実行される。
具体的には、下熱板50を降下させた状態で、ゴムベルト1Aを加硫プレス機46内に導入した後、下熱板50を上昇させることにより下熱板50及び上熱板49との間にゴムベルト1Aを所定時間挟み込むことにより、ゴムベルト1Aを加圧,加熱状態として所定の加硫度に達するまで加硫を進行させる。そして、所定時間経過後、下熱板50を降下させることにより圧力から開放するとともに、ゴムベルト1Aを上熱板49及び下熱板50の長さに相当する距離、或いは、上熱板49及び下熱板50の長さよりも短い距離だけ下流側に搬送し、後続に続くゴムベルト1Aを加硫プレス機46内に導入する。つまり、ゴムベルト1Aは、プレス動作と搬送動作とが交互に行われることにより断続的に加硫される。
本実施形態においても、前記実施形態と同様に、加硫プレス機46内に導入されるゴムベルト1Aは、ブローポイント以上の加硫度に達するまで加硫され、加硫プレス機46を通過したゴムベルト1Aは、ブローポイント以上の加硫度に達した状態で下流側の第二の加硫装置10に搬送される。
【0020】
次に図6を用いて、第二の加硫装置10の構造及び加硫方法について説明する。なお、前述の実施形態と同様の構成については同一符号を用い、その説明を省略する。
本形態における第二の加硫装置10は、第一の加硫装置7よりも搬送方向下流側の搬送経路上に配置され、ゴムベルト1Aが通過可能な形状に形成された電磁誘導コイル35を有する。
加硫プレス機46側から搬送されるブローポイント以上の加硫度に達したゴムベルト1Aは、電磁誘導コイル35を通過中に電磁誘導作用により加熱される。
本実施形態においても出力制御手段38は、電磁誘導コイル35によってゴムベルト1Aの単位長さ当りに与えられるエネルギー量が常に一定となるように電磁誘導コイル35への出力電流を制御する。
【0021】
具体的には、まず上流側の加硫プレス機46が加硫動作を実行中の場合には、搬送速度が0となるため、電磁誘導コイル35への出力が停止状態(OFF)となる。
そして、加硫プレス機46の加硫動作が完了し、搬送速度が0の状態から基準搬送速度に達するまでの加速領域においては、漸次上昇する搬送速度に対応するように電磁誘導コイル35への出力を徐々に増大し、加速領域、基準搬送領域を経た後に再び搬送速度が0の状態へと移行する減速領域においては、漸次降下する搬送速度に対応するように電磁誘導コイル35への出力を徐々に低減し、ゴムベルト1Aに与えられるエネルギー量を一定とし、搬送速度が0となった時点で電磁誘導コイル35への出力を再び停止状態(OFF)とする。
【0022】
上記電磁誘導コイル35内を通過するゴムベルト1Aは、前述のゴムホース1と同様に電磁誘導作用によって生じる誘導電流により内部の金属補強層である芯体41が先に加熱され、当該芯体41の周囲に存在するゴムが内側から外側へと加熱される。
そして、電磁誘導コイル35に導入された時点ではブローポイント以上の加硫度、かつ、最終製品として要求される加硫度以下の加硫度であったゴムベルト1Aは徐々に加硫され、やがて電磁誘導コイル35内、又は、保温ボックス39内において最終製品として要求される加硫度以上の加硫度に達するまで加硫される。
【0023】
以上説明したとおり、本実施形態においても、ゴムベルト1Aを加硫プレス機46によってブローポイント以上の加硫度に達するまで加硫することにより、ゴムベルト1Aが塑性変形を起さなくなるので、内部に存在する金属ワイヤの食い込みや位置ずれが生じることがない。
また、出力制御手段38が、ゴムベルト1Aの搬送速度に応じて電磁誘導コイル35からゴムベルト1Aに与えるエネルギー量が一定となるように電磁誘導コイル35の出力を制御するので、プレス動作及び搬送動作に伴ってゴムベルト1Aの搬送速度が変動する場合であっても金属が過加熱状態となることを防止でき、金属表面と未加硫ゴム界面との接着性を確保できる。
さらに、前述の実施形態と同様に電磁誘導コイル35により加熱されるゴムベルト1Aは、ブローポイント以上の加硫度まで達しているため、電磁誘導コイル35の出力を大きくすることが可能となり、加硫時間を著しく短縮することが可能となる。
【0024】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態に多様な変更、改良を加え得ることは当業者にとって明らかであり、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0025】
1 ゴムホース、1A ゴムベルト、7 第一の加硫装置、10 第二の加硫装置、
15 マンドレル、16 内管ゴム、17 コード体、18 外管ゴム、
19 樹脂層、30 熱風炉、35 電磁誘導コイル、36 ロータリーエンコーダ、
37 検出値処理手段、38 出力制御手段、41 芯体、46 加硫プレス機、
49 上熱板、50 下熱板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に金属を有する未加硫ゴムを長手方向に搬送し、当該未加硫ゴムの搬送経路上において加硫するゴム部材製造方法であって、
前記未加硫ゴムをブローポイント以上の加硫度に達するまで加硫する第一の工程と、
前記第一の工程を経た未加硫ゴムを当該未加硫ゴムの加硫度よりも高い加硫度まで加硫する第二の工程とを含み
前記第二の工程は、前記未加硫ゴムを電磁誘導により加熱することを特徴とするゴム部材製造方法。
【請求項2】
前記未加硫ゴムの搬送速度を検出し、当該搬送速度に基づいて前記電磁誘導によって前記未加硫ゴムに与えられるエネルギー量を制御することを特徴とする請求項1記載のゴム部材製造方法。
【請求項3】
内部に金属を有し、長手方向に搬送される未加硫ゴムを搬送経路上において加硫するゴム部材製造装置であって、
前記未加硫ゴムをブローポイント以上の加硫度に達するまで加硫する第一の加硫手段と、
前記第一の加硫手段よりも搬送方向下流側に位置し、前記第一の加硫手段を通過した未加硫ゴムを当該未加硫ゴムの加硫度よりも高い加硫度まで加硫する第二の加硫手段とを有し、
前記第二の加硫手段は、コイルを有し当該コイルを通過する前記未加硫ゴムを電磁誘導により加熱することを特徴とするゴム部材製造装置。
【請求項4】
前記未加硫ゴムの搬送速度を検出する搬送速度検出手段を有し、
当該搬送速度に基づいて前記コイルによって前記未加硫ゴムに与えられるエネルギー量を制御することを特徴とする請求項3記載のゴム部材製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−245736(P2011−245736A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120855(P2010−120855)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】