説明

サイクロン式オイルセパレータ

【課題】従来に比べてオイル分離性能を向上させることができるサイクロン式オイルセパレータの提供。
【解決手段】サイクロン部21が、第1のサイクロン流路21aと第2のサイクロン流路21bを備えており、第1、第2のサイクロン流路21a、21bの両方が渦巻き形状とされている。そのため、従来に比べて、サイクロン部21における流路断面積が小さくなる。そのため、従来に比べて、サイクロン部21でのブローバイガスの流速を高めることができ、サイクロン部21でオイルにかかる遠心力を大きくすることができる。そのため、従来に比べて、オイルセパレータ10のオイル分離性能を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイクロン式(遠心分離式)のオイルセパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関、例えば自動車のエンジン等においては、その稼動時において、ピストンリングとシリンダ壁との隙間から漏出するブローバイガスを大気中に排出することは大気汚染の原因になるとして、いわゆるPCV(ポジティブクランクケースベンチレーション)システムにより吸気系に戻し再燃焼させることが行なわれている。
ところで、ブローバイガス中にはエンジンオイル等の潤滑油が微粒化されたオイルミストが含まれている。そのため、ブローバイガス中のオイルミストを分離回収する手段として、シリンダヘッドカバーの内側やクランクケースと吸気管路とを連結する連結流路の途中等にオイルミスト捕集装置(オイルセパレータ)が設けられている。そのようなオイルセパレータとしては、いわゆるサイクロン式と呼ばれる方式の装置が普及している。
【0003】
従来のサイクロン式のオイルセパレータは、たとえば、特許文献1に開示されている。
特許文献1開示のオイルセパレータでは、ブローバイガスからオイルを分離するサイクロン部の流路形状が、円柱状部分と該円柱状部分の下側の円錐台状部分とで構成されており、渦巻き形状となっていない。
【0004】
しかし、従来のサイクロン式オイルセパレータには、つぎの問題点がある。
サイクロン部の流路形状が渦巻き形状となっていないため、流路断面積が比較的大きい。そのため、サイクロン部を流れるブローバイガスの流速を高めてオイルセパレータのオイル分離性能を向上させることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0288560号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来に比べてオイル分離性能を向上させることができるサイクロン式オイルセパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) ブローバイガスからオイルを分離するサイクロン部を備えるセパレータ本体と、
ガス導入口を備え前記セパレータ本体にブローバイガスを導入するガス導入管と、
ドレイン孔を備え前記セパレータ本体のサイクロン部によって分離されたオイルを前記セパレータ本体から排出するドレインと、
ガス排出口を備え前記セパレータ本体のサイクロン部によってオイルが分離されたブローバイガスを前記セパレータ本体から排出するガス排出管と、
を有するサイクロン式オイルセパレータであって、
前記セパレータ本体のサイクロン部は、前記ガス導入管の内部流路に一端部で連なる第1のサイクロン流路と、一端部で前記第1のサイクロン流路の他端部に連なり他端部で前記ガス排出管の内部流路に連なる第2のサイクロン流路と、を備えており、前記第1、第2のサイクロン流路の両方が渦巻き形状とされている、サイクロン式オイルセパレータ。
(2) 前記セパレータ本体は、互いに離間して配置される第1、第2の板状部と、該第1、第2の板状部の間に設けられる渦巻き状の流路形成壁と、を備えており、該第1、第2の板状部および流路形成壁で囲まれる空間が前記第1、第2のサイクロン流路とされており、
前記第1、第2のサイクロン流路は、前記流路形成壁を介して隣り合っている、(1)記載のサイクロン式オイルセパレータ。
(3) 渦巻き形状の前記第1、第2のサイクロン流路の軸芯は、上下方向に延びている、(2)記載のサイクロン式オイルセパレータ。
(4) 前記ドレインは、前記セパレータ本体から下方に延びて設けられており、
前記第1、第2のサイクロン流路の底面は、前記ドレイン側かつ下方に傾斜する傾斜面となっている、(3)記載のサイクロン式オイルセパレータ。
(5) 渦巻き形状の前記第1、第2のサイクロン流路の軸芯は、水平方向に延びている、(2)記載のサイクロン式オイルセパレータ。
(6) 前記ドレインは、前記セパレータ本体から下方に延びて設けられており、
前記セパレータ本体に、渦巻き形状の前記第1、第2のサイクロン流路の各周の下端部と前記ドレインの内部流路とを連通させる連通部が形成されている、(5)記載のサイクロン式オイルセパレータ。
【発明の効果】
【0008】
上記(1)のサイクロン式オイルセパレータによれば、サイクロン部が、第1のサイクロン流路と第2のサイクロン流路を備えており、第1、第2のサイクロン流路の両方が渦巻き形状とされているため、従来に比べて、サイクロン部における流路断面積が小さい。そのため、従来に比べて、サイクロン部でのブローバイガスの流速を高めることができ、サイクロン部でオイルにかかる遠心力を大きくすることができる。そのため、従来に比べて、オイルセパレータのオイル分離性能を向上させることができる。
【0009】
上記(2)のサイクロン式オイルセパレータによれば、第1、第2のサイクロン流路が流路形成壁を介して隣り合っているため、第1、第2のサイクロン通路が流路形成壁を介して隣り合っていない場合に比べて、サイクロン部を小型化でき、オイルセパレータの小型化を図ることができる。
【0010】
上記(3)のサイクロン式オイルセパレータによれば、渦巻き形状の第1、第2のサイクロン流路の軸芯が、上下方向に延びているため、オイルセパレータの上下方向の小型化を容易に図ることができる。
【0011】
上記(4)のサイクロン式オイルセパレータによれば、第1、第2のサイクロン流路の底面が、ドレイン側かつ下方に傾斜する傾斜面となっているため、サイクロン部で分離されたオイルがドレインに向って流れやすくなり、セパレータ本体からドレインへのオイル排出性能を向上させることができる。
【0012】
上記(5)のサイクロン式オイルセパレータによれば、渦巻き形状の第1、第2のサイクロン流路の軸芯が、水平方向に延びているため、オイルセパレータの水平方向の小型化を容易に図ることができる。
【0013】
上記(6)のサイクロン式オイルセパレータによれば、セパレータ本体に、渦巻き形状の第1、第2のサイクロン流路の各周の下端部とドレインの内部流路とを連通させる連通部が形成されているため、渦巻き形状の第1、第2のサイクロン流路の各周の下端部のオイルを連通部を通してドレインに流すことができる。そのため、渦巻き形状の第1、第2のサイクロン流路の各周の下端部にオイルが溜まり続けることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明実施例1のサイクロン式オイルセパレータの、斜視図である。
【図2】本発明実施例1のサイクロン式オイルセパレータの、分解斜視図である。
【図3】本発明実施例1のサイクロン式オイルセパレータの、第1のセパレータ要素の平面図である。
【図4】本発明実施例1のサイクロン式オイルセパレータの、断面図である。
【図5】本発明実施例2のサイクロン式オイルセパレータの、分解斜視図である。
【図6】本発明実施例2のサイクロン式オイルセパレータの、透視正面図である。
【図7】図6のA−A線部位における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜図4は、本発明実施例1のサイクロン式オイルセパレータを示しており、図5〜図7は、本発明実施例2のサイクロン式オイルセパレータを示している。
本発明実施例1と実施例2にわたって共通する部分には、本発明実施例1と実施例2にわたって同じ符号を付してある。
まず、本発明実施例1と実施例2にわたって共通する部分を説明する。
本発明実施例のサイクロン式オイルセパレータ(以下、単にオイルセパレータともいう)10は、自動車の内燃機関に設けられていてもよく、自動車以外の内燃機関に設けられていてもよい。
【0016】
オイルセパレータ10は、図示略のシリンダヘッドカバーの内側、シリンダヘッドカバーの上側、クランクケースと吸気管路とを連結する連結流路の途中、等に設けられる。オイルセパレータ10は、例えば樹脂製である。
【0017】
オイルセパレータ10は、図4に示すように、ブローバイガス(オイル混合ガス)からオイルを分離するサイクロン部21を備えるセパレータ本体20と、ガス導入口31を備えセパレータ本体20にブローバイガスを導入するガス導入管30と、ドレイン孔41を備えセパレータ本体20のサイクロン部21によって分離されたオイルをセパレータ本体20から排出するドレイン40と、ガス排出口51を備えセパレータ本体20のサイクロン部21によってオイルが分離されたブローバイガスをセパレータ本体20から排出するガス排出管50と、を有する。
【0018】
サイクロン部21は、セパレータ本体20に少なくとも1個設けられる。サイクロン部21は、ガス導入管30から導入されたブローバイガスを旋回運動させ、該旋回運動による遠心力によりブローバイガスからオイルを分離させる。
【0019】
サイクロン部21は、ガス導入管30の内部流路30aに一端部で連なる第1のサイクロン流路21aと、一端部で第1のサイクロン流路21aの他端部に連なり他端部でガス排出管50の内部流路50aに連なる第2のサイクロン流路21bと、を備えている。
第1、第2のサイクロン流路21a、21bは、同一面内に配置されている。第1、第2のサイクロン流路21a、21bの両方は、図3に示すように、渦巻き形状とされている。渦巻き形状の第1、第2のサイクロン流路21a、21bの軸芯P(中心)は、一致している。第1のサイクロン流路21aは、ガス流れ方向上流側から下流側にいくにつれて流路半径が小さくなっており、第2のサイクロン流路21bは、ガス流れ方向上流側から下流側にいくにつれて流路半径が大きくなっている。第1、第2のサイクロン流路21a、21bの軸芯Pは、図4に示すように、上下方向(鉛直方向だけでなく、ほぼ鉛直方向(鉛直方向から45度未満の方向)を含む)に延びていてもよく、図6に示すように、水平方向(水平方向だけでなく、ほぼ水平方向(水平方向から45度未満の方向)を含む)に延びていてもよい。
【0020】
セパレータ本体20は、図4に示すように、互いに離間して配置される第1、第2の板状部22,23と、第1、第1の板状部22,23の間に設けられる渦巻状の流路形成壁24と、を備える。
第1、第2の板状部22,23は、互いに平行またはほぼ平行に配置されている。流路形成壁24は、第1、第2の板状部22,23の少なくともいずれか一方に一体に形成されている。流路形成壁24は、第1、第2の板状部22,23の一方から他方に向って延びている。第1、第2の板状部22,23および流路形成壁24で囲まれる空間が、サイクロン部21(第1、第2のサイクロン流路21a、21b)とされている。第1、第2のサイクロン流路21a、21bは、流路形成壁24を介して互いに隣り合っている。
【0021】
ガス導入管30は、セパレータ本体20の下壁から下方に延びて設けられる単一の管である。ガス導入管30の軸芯は、直線状に上下方向に延びていてもよく、少なくとも一箇所に湾曲または屈曲する図示略の曲がり部を備えて上下方向に延びていてもよい。ガス導入管30は、セパレータ本体20に一体に形成されていてもよく、セパレータ本体20と別体に形成されてセパレータ本体20に固定されていてもよい。ガス導入口31は、ガス導入管30の下端部またはその近傍に設けられている。ガス導入管30の内部流路30aは、第1のサイクロン流路21aに連通している。ガス導入管30の内部流路30aは、オイルセパレータ10内を流れるガス流れ方向で、サイクロン部21よりも上流側に設けられている。ガス導入管30の管軸方向長さは、図4に示すように、管周方向で異なっていてもよく、図6に示すように、管周方向で一定であってもよい。
【0022】
ドレイン40は、図4に示すように、セパレータ本体20の下壁から下方に延びて設けられる単一の管である。ドレイン40の軸芯は、直線状に上下方向に延びていてもよく、少なくとも一箇所に湾曲または屈曲する図示略の曲がり部を備えて上下方向に延びていてもよい。ドレイン40は、セパレータ本体20に一体に形成されていてもよく、セパレータ本体20と別体に形成されてセパレータ本体20に固定されていてもよい。ドレイン孔41は、ドレイン40の下端部またはその近傍に設けられている。ドレイン40の内部流路40aは、オイルセパレータ10内を流れるガス流れ方向で、ガス導入管30の内部流路30aよりも下流側で、ガス排出管50の内部流路50aよりも上流側に設けられている。
【0023】
ドレイン40の下端から上端までの高さ(上下方向高さ)は、オイルセパレータ10内、外の圧力差とオイルの自重とにより定まる油面高さ以上とされており、ドレイン40に溜まるオイルがオイルセパレータ10内、外の圧力差とオイルの自重とにより定まる油面高さになるまでオイルをドレイン40内に保持し、油面高さ以上のオイルがドレイン40内に入ったときにその分だけのオイルがドレイン孔41からオイルセパレータ10の外に排出(滴下)されるようになっている。
【0024】
ガス排出管50は、セパレータ本体20の上壁または側壁の上部(側壁の上下方向中央部より上側にある部分)から上方に延びて1個設けられる。ガス排出管50の軸芯は、直線状に上下方向に延びていてもよく、少なくとも一箇所に湾曲または屈曲する図示略の曲がり部を備えて上下方向に延びていてもよい。ガス排出管50は、セパレータ本体20に一体に形成されていてもよく、セパレータ本体20と別体に形成されてセパレータ本体20に固定されていてもよい。ガス排出口51は、ガス排出管50の上端部またはその近傍に設けられている。ガス排出管50は、オイルセパレータ10内を流れるガス流れ方向で、サイクロン部21よりも下流側に設けられている。
【0025】
つぎに、本発明実施例1と実施例2にわたって共通する部分の作用を説明する。
クランクケース内に漏出したブローバイガスは、図示略の所定の通管を通り、ガス導入口31からガス導入管30内に流入し、ガス導入管30の内部流路30aを通ってセパレータ本体20内に流入する。セパレータ本体20内に流入したブローバイガスは、サイクロン部21を第1、第2のサイクロン流路21a、21bの順に流れ、ガス中からオイルミストが分離されて、液状のオイルが生成される。その液状のオイルは、オイルの自重により、セパレータ本体20内を流れ、ドレイン40内に流入し、ドレイン40の内部流路40aを通ってドレイン孔41からセパレータ10の外に排出される。また、サイクロン部21によってオイルミストが分離されたブローバイガスは、ガス排出管50内に流入し、ガス排出管50の内部流路50aを通ってガス排出口51からセパレータ10の外に排出される。
【0026】
本発明実施例では、サイクロン部21が、第1、第2のサイクロン流路21a、21bを備えており、第1、第2のサイクロン流路21a、21bの両方が渦巻き形状とされているため、従来に比べて、サイクロン部21における流路断面積が小さい。そのため、従来に比べて、サイクロン部21でのブローバイガスの流速を高めることができ、サイクロン部21でオイルにかかる遠心力を大きくすることができる。そのため、従来に比べて、オイルセパレータ10のオイル分離性能を向上させることができる。
【0027】
サイクロン部21における流路断面積が従来に比べて小さいため、サイクロン部21を流れるブローバイガスと流路壁面との接触面積が従来に比べて増加する。そのため、従来に比べて、オイルセパレータ10のオイル分離性能を向上させることができる。
【0028】
第1のサイクロン流路21aを流れた後、第2のサイクロン流路21bを流れるため、第1、第2のサイクロン流路21a、21bのいずれか一方のみでサイクロン部21が構成される場合に比べて、サイクロン部21の流路長を長くでき、サイクロン部21でのオイル分離性能を向上させることができる。
【0029】
第1、第2のサイクロン流路21a、21bが流路形成壁24を介して隣り合っているため、第1、第2のサイクロン通路21a、21bが流路形成壁24を介して隣り合っていない場合に比べて、サイクロン部21を小型化でき、オイルセパレータ10の小型化を図ることができる。
【0030】
つぎに、本発明各実施例に特有な部分を説明する。
〔実施例1〕(図1〜図4)
本発明実施例1では、第1、第2のサイクロン流路21a、21bの軸芯Pが、図4に示すように、上下方向(鉛直方向だけでなく、ほぼ鉛直方向(鉛直方向から45度未満の方向)を含む)に延びている場合を示している。
第1、第2のサイクロン流路21a、21bの底面21c(サイクロン部21の底面、セパレータ本体20の底面)は、ドレイン40側かつ下方に傾斜する傾斜面となっている。
ドレイン40の内部流路40aは、第1のサイクロン流路21aの下流側端部に連なっている。
ガス導入管30、ドレイン40およびガス排出管50の軸芯は、直線状に上下方向に延びており、軸芯Pと平行である。
【0031】
セパレータ本体20の第1、第2の板状部22,23の一方および流路形成壁24と、ガス導入管30と、ドレイン40とは、一部品構成となっており、第1のセパレータ要素10aを構成している。また、セパレータ本体20の第1、第2の板状部22,23の他方とガス排出管50とは、一部品構成となっており、第2のセパレータ要素10bを構成している。オイルセパレータ10は、第1、第2のセパレータ要素10a、10bの2部品構成となっている。
【0032】
本発明実施例1では、本発明実施例1と実施例2にわたって共通する部分の作用に加えて、さらに、つぎの作用を得ることができる。
【0033】
渦巻き形状の第1、第2のサイクロン流路21a、21bの軸芯Pが、上下方向に延びているため、オイルセパレータ10の上下方向の小型化を容易に図ることができる。
【0034】
第1、第2のサイクロン流路21a、21bの底面21cが、ドレイン40側かつ下方に傾斜する傾斜面となっているため、渦巻き形状の第1、第2のサイクロン流路21a、21bの軸芯Pが上下方向に延びていても、サイクロン部21で分離されたオイルがドレイン40に向って流れやすくなり、セパレータ本体20からドレイン40へのオイル排出性能を向上させることができる。
【0035】
第1のサイクロン流路21aの流路半径が上流から下流にいくにつれて小さくなっており、ドレイン40の内部流路40aが第1のサイクロン流路21aの下流側端部に連なっているため、第1のサイクロン流路21aを流れてきたガス流れにより、ドレイン40の上端部(その近傍を含む)に渦を発生させることができる。そのため、ドレイン40の上下方向長さを長くしなくても渦部分で圧力差を得ることができ、渦が発生しない場合に比べて、ドレイン40自体の上下方向長さを短くできる。よって、オイルセパレータ10のコンパクト化を図ることができる。
【0036】
ガス導入管30、ドレイン40およびガス排出管50の軸芯が軸芯Pと平行であるため、オイルセパレータ10を成形する際に、スライド型を用いることなく上下型のみで、流路形成壁24、ガス導入管30、ドレイン40、ガス排出管50の全部または少なくともいずれか2つを成形することができる。そのため、スライド型を用いて成形する場合に比べて、また、流路形成壁24、ガス導入管30、ドレイン40、ガス排出管50のそれぞれを別々に型成形する場合に比べて、安価で部品点数の少ないオイルセパレータ10を製造することができる。
【0037】
本発明実施例1では、セパレータ本体20の流路形成壁24の全てが第1のセパレータ要素10aに設けられているが、流路形成壁24の一部を第1のセパレータ要素10aに設け、流路形成壁24の残りを第2のセパレータ要素10bに設けることで、第1のセパレータ要素10aの成形型に薄板形状部分が形成されることを抑制でき、オイルセパレータ10の成形性を高めることができる。
【0038】
〔実施例2〕(図5〜図7)
本発明実施例2では、第1、第2のサイクロン流路21a、21bの軸芯Pが、図7に示すように、水平方向(水平方向だけでなく、ほぼ水平方向(水平方向から45度未満の方向)を含む)に延びている場合を示している。
ガス導入管30とドレイン40とガス排出管50とが、同一面上または略同一面上に配置されている。
セパレータ本体20に、渦巻き形状の第1、第2のサイクロン流路21a、21bの各周の下端部とドレイン40の内部流路40aとを連通させる連通部25が設けられている。連通部25は、図5に示すように、第1、第2の板状部22,23のいずれか一方を部分的に凹ますことで設けられており、上下方向に延びて設けられている。
渦巻き状の流路形成壁24の各周の下端部(その近傍を含む)は、下方に向かって張出する張出し部24aとなっている。
【0039】
セパレータ本体20の第1、第2の板状部22,23の一方および流路形成壁24と、ガス導入管30の横断面視における一部と、ドレイン40の横断面視における一部と、ガス排出管50とは、一部品構成となっており、第1のセパレータ要素10cを構成している。また、セパレータ本体20の第1、第2の板状部22,23の他方と、ガス導入管30の横断面視における残り部分と、ドレイン40の横断面視における残り部分とは、一部品構成となっており、第2のセパレータ要素10dを構成している。オイルセパレータ10は、第1、第2のセパレータ要素10c、10dの2部品構成となっている。
【0040】
本発明実施例2では、本発明実施例1と実施例2にわたって共通する部分の作用に加えて、さらに、つぎの作用を得ることができる。
【0041】
渦巻き形状の第1、第2のサイクロン流路21a、21bの軸芯Pが、水平方向に延びているため、オイルセパレータ10の水平方向(軸芯Pの延び方向)の小型化を容易に図ることができる。
【0042】
ガス導入管30とドレイン40とガス排出管50とが、同一面上または略同一面上に配置されているため、オイルセパレータ10の小型化を図る上で有利である。
【0043】
セパレータ本体20に、渦巻き形状の第1、第2のサイクロン流路21a、21bの各周の下端部とドレイン40の内部流路40aとを連通させる連通部25が設けられているため、渦巻き形状の第1、第2のサイクロン流路21a、21bの各周の下端部のオイルを連通部25を通してドレイン40に流すことができる。そのため、渦巻き形状の第1、第2のサイクロン流路21a、21bの各周の下端部にオイルが溜まり続けることを抑制することができる。
【0044】
張出し部24aが設けられているため、張出部24aをオイルの連通部25への注ぎ口として働かせることができる。そのため、張出し部24aが設けられていない場合に比べて、渦巻き形状の第1、第2のサイクロン流路21a、21bの各周の下端部のオイルを容易に連通部25に流入させることができる。その結果、オイルがドレイン40内に流入し易くなり、オイルがガス排出管50に持ち去られてしまうことを抑制できる。
【0045】
本発明実施例2では、セパレータ本体20の流路形成壁24の全てが第1のセパレータ要素10cに設けられているが、流路形成壁24の一部を第1のセパレータ要素10cに設け、流路形成壁24の残りを第2のセパレータ要素10dに設けることで、第1のセパレータ要素10cの成形型に薄板形状部分が形成されることを抑制でき、オイルセパレータ10の成形性を高めることができる。
【符号の説明】
【0046】
10 オイルセパレータ
20 セパレータ本体
21 サイクロン部
21a 第1のサイクロン流路
21b 第2のサイクロン流路
21c 第1、第2のサイクロン流路の底面
22 第1の板状部
23 第2の板状部
24 流路形成壁
24a 張出部
25 連通部
30 ガス導入管
30a ガス導入管の内部流路
31 ガス導入口
40 ドレイン
40a ドレインの内部流路
41 ドレイン孔
50 ガス排出管
51 ガス排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブローバイガスからオイルを分離するサイクロン部を備えるセパレータ本体と、
ガス導入口を備え前記セパレータ本体にブローバイガスを導入するガス導入管と、
ドレイン孔を備え前記セパレータ本体のサイクロン部によって分離されたオイルを前記セパレータ本体から排出するドレインと、
ガス排出口を備え前記セパレータ本体のサイクロン部によってオイルが分離されたブローバイガスを前記セパレータ本体から排出するガス排出管と、
を有するサイクロン式オイルセパレータであって、
前記セパレータ本体のサイクロン部は、前記ガス導入管の内部流路に一端部で連なる第1のサイクロン流路と、一端部で前記第1のサイクロン流路の他端部に連なり他端部で前記ガス排出管の内部流路に連なる第2のサイクロン流路と、を備えており、前記第1、第2のサイクロン流路の両方が渦巻き形状とされている、サイクロン式オイルセパレータ。
【請求項2】
前記セパレータ本体は、互いに離間して配置される第1、第2の板状部と、該第1、第2の板状部の間に設けられる渦巻き状の流路形成壁と、を備えており、該第1、第2の板状部および流路形成壁で囲まれる空間が前記第1、第2のサイクロン流路とされており、
前記第1、第2のサイクロン流路は、前記流路形成壁を介して隣り合っている、請求項1記載のサイクロン式オイルセパレータ。
【請求項3】
渦巻き形状の前記第1、第2のサイクロン流路の軸芯は、上下方向に延びている、請求項2記載のサイクロン式オイルセパレータ。
【請求項4】
前記ドレインは、前記セパレータ本体から下方に延びて設けられており、
前記第1、第2のサイクロン流路の底面は、前記ドレイン側かつ下方に傾斜する傾斜面となっている、請求項3記載のサイクロン式オイルセパレータ。
【請求項5】
渦巻き形状の前記第1、第2のサイクロン流路の軸芯は、水平方向に延びている、請求項2記載のサイクロン式オイルセパレータ。
【請求項6】
前記ドレインは、前記セパレータ本体から下方に延びて設けられており、
前記セパレータ本体に、渦巻き形状の前記第1、第2のサイクロン流路の各周の下端部と前記ドレインの内部流路とを連通させる連通部が形成されている、請求項5記載のサイクロン式オイルセパレータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−233407(P2012−233407A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100365(P2011−100365)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】