説明

サイトカイン結合ドメイン

本発明は、第1のFnIII様ドメインおよび第2のFnIII様ドメインからなるサイトカイン結合ドメインを含む修飾された結合部分の作製方法であって、サイトカイン結合ドメイン内の少なくとも1つのアミノ酸残基が、サイトカイン結合ドメインの結合特徴が変更される、かつ/または結合部分の溶解性および/もしくは安定性が改善されるように修飾される方法に関する。本発明はまた、結合部分、ならびに親和性試薬、診断試薬、治療剤およびタンパク質骨格としてのこのような結合部分の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイトカイン結合ドメイン(CBD)由来の結合部分、ならびに親和性試薬、診断試薬、治療剤およびタンパク質骨格としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体は特異的な高親和性の結合試薬のパラダイムであり、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)免疫グロブリンドメインの相互作用によって抗原結合部位を提供する。結合界面は相補性決定領域(CDR)と呼ばれる6つの表面ポリペプチドループによって形成され、各可変ドメイン3つずつからなり、これは可変性が高く、一緒になって抗原との相互作用に十分大きな表面積をもたらす。特異的結合試薬は、VHおよびVLドメインのみをFvモジュールへと会合させることによって形成することができる。細菌性発現は、V-ドメインをリンカーポリペプチドと共に単鎖scFv分子内に接合させることによって亢進される。
【0003】
国際公開公報WO00/34784号および国際公開公報WO01/64942号(Phylos Inc.)は、フィブロネクチン、または少なくとも1つのランダム化されたループを有するIII型フィブロネクチンドメインが存在するフィブロネクチン様タンパク質骨格を含む、抗体模倣体を開示している。国際公開公報WO02/32925号(Phylos Inc.)は、免疫グロブリン様の折畳みを有するドメインを含む非抗体誘導体タンパク質であって、突然変異していないタンパク質よりも高い親和性で化合物と結合するように突然変異したアミノ酸配列を有するタンパク質に関する。
【0004】
Koide他(国際公開公報WO98/56915号およびJ.Mol.Biol.、(1998)、284、1141-1151頁)は、III型フィブロネクチンドメインの骨格の設計および構築、ならびに2つのループに突然変異を有するファージディスプレイライブラリを生成して高親和性のリガンド結合についてスクリーニングするための骨格の使用を記載している。
【0005】
国際公開公報WO01/90192号(Imclone Systems Inc)は、二重特異性の二重鎖免疫グロブリン構築体、すなわち抗原に対するその結合力について最適化されているにもかかわらず天然の抗体としても作用する2つのドメインのタンパク質を記載している。
【0006】
国際公開公報WO02/48189号(Borean Pharma AS)は、新しいライブラリクラスを提供するために突然変異させることができるループ領域を有する炭水化物認識ドメインを有する、C型レクチン様ドメインのファミリーに基づく骨格を記載している。
【0007】
国際公開公報WO00/47620号(Medvet Science Pty Ltd他)は、サイトカイン受容体のβ鎖または類似した構造体からなるサイトカイン結合ドメインを開示している。
【0008】
国際公開公報WO02/44197号(Fish)は、サイトカイン受容体への結合に適した結合ドメインの立体配置を骨格が維持するようにサイトカイン受容体結合ドメインを骨格内に組み込んだ、サイトカイン受容体結合ペプチド構築体を記載している。
【特許文献1】国際公開公報WO00/34784号
【特許文献2】国際公開公報WO01/64942号
【特許文献3】国際公開公報WO02/32925号
【特許文献4】国際公開公報WO98/56915号
【非特許文献1】Koide他、J.Mol.Biol.、(1998)、284、1141-1151頁)
【特許文献5】国際公開公報WO01/90192号
【特許文献6】国際公開公報WO02/48189号
【特許文献7】国際公開公報WO00/47620号
【特許文献8】国際公開公報WO02/44197号
【非特許文献2】Leahy DJ他、1992、Science、258:987-991頁
【非特許文献3】Sambrook他、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版(2001)Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.
【非特許文献4】Ausubel他、Short Protocols in Molecular Biology(1999)第4版、John Wiley & Sons,Inc.
【非特許文献5】Ausubel他、Current Protocols in Molecurar Biology
【非特許文献6】Varghese JN他、2002、PNAS、99(25):15959-15964頁
【特許文献9】PCT/AU02/01255号
【非特許文献7】Aritorni M.他、Nature、1999、401(6754):713-7頁
【非特許文献8】Bravo J.他、EMBO J.、1998、17(6):1665-74頁
【非特許文献9】Elkins P.A.他、Cell、1999、97(2):271-81頁
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【非特許文献13】Muyldermans S他、2001、Trends Biochem Sci.、26(4):230-5頁
【非特許文献14】Nuttall SD他、2002、Curr Pharm Biotechnol.、1(3):253-63頁
【特許文献10】米国特許第4,179,337号
【非特許文献15】Power BE他、2003、Protein Science、12、734-747
【非特許文献16】Lee YSおよびMrksich,M、2002、Trends Biotechnol.、20(12 Suppl):S14-8頁
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【非特許文献23】Yelamos他、1995、Nature 376:225-9頁
【非特許文献24】Friedberg他、1995、DNA repair and mutagenesis、SM Press、Washington D.C.
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【非特許文献26】Leung他、1989、Technique、1:11-15頁
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【非特許文献27】Eckstein、Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach、IRL Press at Oxford University Press、1991
【非特許文献28】Schwieters(2001)、Journal of Magnetic Resonance、149:239-244
【非特許文献29】Brunger AT他、1998、Acta Crystallog、D54:905-921頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、図1Aに模式図を示した2つのFnIII様ドメインからなるCBD様の骨格構造を採る結合部分に関する。2つのFnIII様ドメイン上の溶媒に曝されたループは直鎖状に会合しており、両ドメインからのループとの会合によって標的分子に結合することができる結合領域を特徴づける。本発明はまた、サイトカイン結合ドメイン(CBD)の使用に基づいて新規骨格構造を生成する方法、およびそれによって生成した新規骨格構造にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、サイトカイン結合ドメインの少なくとも1つの特性が変更されるように第1のFnIII様ドメインおよび第2のFnIII様ドメインからなる細胞外サイトカイン結合ドメインを修飾して結合部分を生成することを含む、結合部分の生成方法を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、本発明の上記方法に従って生成した、修飾された結合部分を提供する。
【0012】
本発明はまた、サイトカイン結合ドメインの骨格構造に基づいた新規結合部分も提供する。
【0013】
したがって、本発明はまた、第1のFnIII様ドメインおよび第2のFnIII様ドメインからなる細胞外サイトカイン結合ドメインを含む結合部分であって、CBDがCBDの特性を変更する修飾を含む結合部分も提供する。
【0014】
CBDは、2つの連結されたIII型フィブロネクチン(FnIII)ドメイン(それぞれがIg様の折畳みである)からなる(Leahy DJ他、1992、Science、258:987-991頁)。これらのCBDは、主に2つのFnIII様ドメインの接合部(サイトカインヒンジ領域)でその標的分子と結合し、CBDの2つのドメインの外側L字部(elbow)上のループによってその標的分子とかみ合うすることが知られている。これらのループは抗体可変ドメインの抗原-結合表面上に見つかるCDR(相補性決定領域)ループに類似している。しかし、CBD中の2つのドメインのループ間の会合は、抗体とCDRループとの会合とは異なる重要な差異を示す。抗体可変ドメインでは、重鎖のループは軽鎖のループに平行に会合する。対照的に、サイトカイン結合領域のサイトカイン結合ループは直鎖状の会合を形成する(図1参照)。いくつかの知られている三次構造のCBDとの比較により、これらのドメインが新規結合部分の設計および作製に理想的なフレームワークを形成することを示す、共通の構造的特徴が明らかとなっている。このような結合部分は、診断剤および治療剤/試薬として、ならびに特定の分子標的、特に臨床的疾患に関連する標的に向けるためを含めた、様々な使用および用途を有するであろう。
【0015】
従来技術は、典型的には、単一結合ドメインに基づいた骨格構造について記載している。具体的には、FnIII様ドメインを利用した骨格についての以前の研究は単一FnIII様ドメインフレームワークの使用に焦点を合わせている。対照的に、本発明の骨格は2つのFnIII様ドメインを有するCBDの使用に基づいており、これは、両ドメインとの会合によって、より詳細にはCBDのサイトカイン結合領域を形成するループとの相互作用によって、標的分子と結合することができる。
【0016】
本発明の骨格は、従来技術の骨格を超える顕著な利点をもたらす。2つのドメインからなる結合部分を用いた結果、標的分子と結合するためのより大きな表面結合領域、すなわち「フットプリント」がもたらされる。これにより、より高い親和性で、かつ/またはより多様な標的の形状および大きさのものと結合する潜在性が生じる。具体的には、2つのドメインからなる、直鎖状に会合したフレームワークを用いることにより、これらの部分が従来の抗体に不応性である分子と結合する潜在性が生じる。
【0017】
本発明の結合部分は、例えば共有的または非共有的手段によって、他の分子と連結されていてもよい。したがって、本発明は、1つまたは複数の他の分子と連結されている、本発明に係る結合部分を提供する。
【0018】
さらに、本発明は、本発明に係る2つ以上の結合部分を含む多価試薬または多特異性試薬を提供する。
【0019】
本発明はまた、本発明に係る結合部分、多価試薬または多特異性試薬をコードしているポリヌクレオチドも提供する。
【0020】
本発明はまた、本発明に係るポリヌクレオチドを含むベクターも提供する。
【0021】
本発明はまた、本発明に係るベクターを含む宿主細胞も提供する。
【0022】
さらに、本発明は、本発明に係る結合部分、多価試薬または多特異性試薬ならびに製薬上許容される担体、希釈剤、アジュバントおよび/または免疫賦活剤を含む薬剤組成物を提供する。
【0023】
本発明はまた、対象に本発明に係る結合部分、多価試薬または多特異性試薬を投与することを含む、対象における病的状態を治療する方法も提供する。
【0024】
本発明はまた、
(i)CBDを含む結合部分をコードしている複数のポリヌクレオチドであって、CBD中の1つまたは複数の修飾を含むポリヌクレオチドを提供するステップと;
(ii)ポリヌクレオチドによってコードされている結合部分を発現させるステップと;
(iii)標的分子に対して親和性を有する1つまたは複数の結合部分を選択するステップと
を含む、標的分子に対して親和性を有する結合部分の選択方法も提供する。
【0025】
本発明はまた、サイトカイン結合ドメインを含む結合部分をコードしている複数のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドライブラリであって、ポリヌクレオチドがサイトカインを持つドメイン中の1つまたは複数の修飾を含む、ポリヌクレオチドライブラリも提供する。
【0026】
本発明はまた、本発明に係る結合部分の作製に有用な発現ベクターも提供する。したがって、本発明は、
a)CBDをコードしている第1の核酸配列と;
b)前記第1の核酸配列の末端間の領域の挿入部位であって、制限エンドヌクレアーゼによって切断されるヌクレオチド配列であって、かつ、アミノ酸配列をコードしている第2の核酸配列が前記第1の核酸内に挿入されることにより、修飾されたCBDをコードすることが可能となる前記発現ベクターに特有のヌクレオチド配列を含む挿入部位と;
c)第1の核酸配列の発現を指揮する、前記第1の核酸配列に作動可能に連結された調節性の制御配列と
を含む発現ベクターを提供する。
【0027】
好ましくは、この領域は溶媒に曝された領域、好ましくはループをコードする。
【0028】
本発明はまた、
a)第1の核酸配列の末端間の領域に欠失を含む、CBDをコードしている第1の核酸配列と;
b)前記欠失した配列の代わりの挿入部位であって、アミノ酸配列をコードしている第2の核酸配列が前記第1の核酸内に挿入されることにより、修飾されたサイトカイン結合ドメインをコードすることが可能となる挿入部位。
c)第1の核酸配列の発現を指揮する、前記第1の核酸配列に作動可能に連結された調節性の制御配列と
を含む発現ベクターも提供する。
【0029】
好ましくは、この領域は溶媒に曝された領域、好ましくはループをコードする。
【0030】
本発明はまた、
a)CBDをコードしている第1の核酸配列と;
b)前記第1の核酸配列の末端間の領域のいくつかの挿入部位であって、そのそれぞれの挿入部位が、制限エンドヌクレアーゼによって切断される前記発現ベクターに特有のヌクレオチド配列であって、かつ、アミノ酸配列をコードしている核酸配列が前記第1の核酸内に挿入されることにより、修飾されたCBDをコードすることが可能となるヌクレオチド配列を含む挿入部位と
を含む発現ベクターも提供する。
【0031】
好ましくは、1つまたは複数の領域、好ましくはそれぞれの領域が、溶媒に曝された領域、好ましくはループをコードする。
【0032】
本発明はまた、
a)CBDをコードしている第1の骨格配列と;
b)ペプチドをコードしており、サイトカイン結合ループをコードしている前記第1の骨格配列の領域中に位置する部位に挿入された第2の配列と
を含むペプチドディスプレイ骨格をコードしている核酸配列も提供する。
【0033】
本発明はまた、直前に記載した本発明に係る核酸配列、および複数の前記発現ベクターを含むCBDディスプレイライブラリを含む、発現ベクターも提供する。
【0034】
本発明はまた、上述の本発明に係る核酸配列によってコードされているポリペプチド、および前記ポリペプチドのうちの少なくとも2つを含むタンパク質多量体も提供する。
【0035】
本発明はまた、目的の標的分子に結合する修飾されたCBDの同定方法であって、
(i)本発明のCBDディスプレイライブラリを提供するステップと;
(ii)ポリヌクレオチドによってコードされているポリペプチドを発現させるステップと;
(iii)標的分子に結合する1つまたは複数のポリペプチドを選択するステップと
を含む方法も提供する。
【0036】
上記の個々のセクションで言及した本発明の様々な特徴および実施形態は、必要に応じて、必要な変更を加えて他のセクションにも適用される。したがって、1つのセクションで明記した特徴は、必要に応じて他のセクションで明記した特徴と組み合わせてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
別段に定義しない限りは、本明細書中で用いるすべての専門用語および科学用語は、当業者(例えば分子生物学および生化学の技術者)に共通に理解されるものと同じ意味を有する。標準の技術は分子学的方法および生化学的方法(一般に、本明細書中に参考として組み込まれているSambrook他、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版(2001)Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.ならびにAusubel他、Short Protocols in Molecular Biology(1999)第4版、John Wiley & Sons,Inc.およびCurrent Protocols in Molecurar Biologyと題されるその完全版を参照)ならびに科学的方法で用いられる。
【0038】
明細書全体を通して、単語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含んでいる (comprising)」などの変形は、記述した要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群の包含を暗示するが、任意の他の要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群の排除を暗示しないことを理解されよう。
【0039】
本明細書中で使用する「疎水性残基」または「無極性残基」とは、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンを意味する。
【0040】
本明細書中で「極性残基」とは、セリン、スレオニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、およびリシンを意味する。
【0041】
本明細書中で使用する「細胞外ドメイン」とは、大部分が細胞外に存在するタンパク質のセグメントを意味する。膜貫通タンパク質では、このセグメントは、膜貫通ドメインを介して細胞につながれているか、タンパク質分解性の消化によって細胞から放出されることができる。あるいは、細胞外ドメインは、細胞から分泌された際に完全なタンパク質またはそのアミノ酸セグメントを含むことができる。
【0042】
サイトカイン結合ドメイン(CBD)
サイトカイン結合ドメインは、本明細書中では第1および第2のFnIII様ドメインからなるポリペプチドとして定義される。FnIII様ドメインは、βシートのFnIII様に会合した免疫グロブリンの折畳みを有するそれぞれ独立したドメインである。2つのドメインは類似した平面上に位置し、典型的には互いに約90°で結合している。好ましくは、少なくとも1つのドメインがトリプトファン-アルギニンのラダー領域を含み、これは好ましくは、左巻きの310ヘリックスを形成するTrp-Ser-X-Trp-Ser(「WSXWS」)モチーフまたはその変異体を含む。
【0043】
それぞれのFnIII様ドメインはいくつかのループ、典型的には表面および溶媒に曝されたループを含む。CBDを構成する2つのドメイン内のループは実質的に直鎖状の様式で2つのドメインにわたって配置されて、結合領域を形成し、かつそれを実質的に定義する。
【0044】
上記に示したCBDの構造的定義は、図1〜6を参照することによってさらに例示かつ支持される。具体的には、これは図1〜6に示し、その内容が全体で本明細書中に参考として組み込まれているVarghese JN他、2002、PNAS、99(25):15959-15964頁およびPCT/AU02/01255号に詳述される、IL-6Rの三次元構造を含めた一次、二次および三次構造を参照することによってさらに例示かつ支持される。これらの参考文献は、IL-6Rの細胞外ドメインの原子座標も提供する。図1〜6および前述の参考文献は、βシートの配置、2つのドメインの互いに対するそれぞれの配向、およびCBD中に通常存在する溶媒に曝されたループの位置を含めた構造的特徴の詳細を様々に提供する。
【0045】
IL-6Rのアミノ酸配列を図3に示し、これは一次配列中の様々な二次構造の位置も強調している。IL-6RのCBDはD2およびD3ドメイン(アミノ酸92〜297)によって特徴づけられている。2つのドメインは類似した表面上に位置して長い平らな構造を形成し、D2およびD3ドメインは互いに約90°で結合している。D2ドメインは4つの溶媒に曝されたループを含み(L1:Lys105からAsn110;L2:Lys133からGlu140;L3:Ala160からPhe168;およびL4:Gln190からGly193)、D3ドメインは3つの溶媒に曝されたループを含み(L5:Asn226からArg233;L6:Met250からHis256;およびL7:Gln276からGln281)、これらは一緒になって、CBDの強固なD2およびD3フレームワークによって適所に維持される長細い結合領域を形成する。折り畳まれたIL-6Rの三次元構造中におけるこれらのループの位置を図4に示す。
【0046】
Arg239、Phe246、Arg237、Trp287、Arg274、Trp284およびGln276は、一緒になって、WSXWSモチーフを含むトリプトファン-アルギニンのラダー領域を形成する。
【0047】
70個を超える遺伝子産物中に存在するCBDのアラインメントを図5に示す。図5Aは、図5で番号づけしたように位置R1から約R180にわたって定義される、第1のFnIII様ドメインの配列アラインメントを示す(IL-6R CBDのD2に対応)。図5Bは、図5で番号づけしたように位置約R185〜R299にわたって定義される、第2のFnIII様ドメインの配列アラインメントを示す(IL-6R CBDのD3に対応)。第1および第2のFnIII様ドメインを結合しているヒンジは、図5で番号づけしたように約R180〜R185の位置、例えばR181〜R184にわたって定義される。ヒンジ領域は、典型的にはループL4の横に隣接する残基を含む。
【0048】
図5Aおよび5B中のアラインメントは、明らかに高度の保存を実証している。例えば、システイン残基、疎水性アミノ酸残基、ヒドロキシル化されたアミノ酸残基、プロリン/グリシン残基、酸性アミノ酸残基および塩基性アミノ酸残基はすべて様々に保存されている。図5のアラインメント中に見つかる保存アミノ酸残基の例を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1は、図5に示したCBD配列にわたる保存の度合いの包括的な分析であることを意図しない。これは単に保存が起こっている位置の一部を示し、保存の程度を実証する役割を果たしているに過ぎない。当業者は、図5中のアラインメントを行った配列中には他の位置および保存の複雑さが存在することを理解し、また、日常的に利用可能な知識および分析を用いてそれを解明することができるであろう。
【0051】
図5はまた、WSXWSモチーフなどの特定のモチーフが圧倒的大多数のCBD中に存在することも実証している(例えば位置R321〜R325を参照)。特に顕著なことに、すべての配列が、上記IL-6Rに関して同定および上述したループL1からL7に対応する7つのループを有する。表2は、図5中に見つかるこれらのループのおおよその位置を詳述している。ループはまた、表2中に定義するように、図5中の位置に隣接する1つまたは複数のアミノ酸も含み得ることを理解されよう。適切には、ループは10個まで、好ましくは5個まで、より好ましくは4個までの隣接するアミノ酸を含み得る。
【0052】
【表2】

【0053】
FnIII様ドメインは、本明細書中に明確に開示していないタンパク質由来であり得ることを理解されよう。さらに、当業者は、他のタンパク質のCBD内でこのような他の適切なFnIII様ドメインを容易に同定できるであろう。適切な構造および機能のタンパク質配列の同定についていくつかの方法が記載されている。このような方法には、それだけには限定されないが、配列アラインメント方法、構造アラインメント方法、配列プロファイリング方法およびエネルギー計算方法が含まれる。図5に提示したアラインメントならびに構造的情報および公開された結晶学的データ(例えばAritorni M.他、Nature、1999、401(6754):713-7頁;Bravo J.他、EMBO J.、1998、17(6):1665-74頁;Elkins P.A.他、Cell、1999、97(2):271-81頁;Josephson K.他、Immunity、2001、15(1):35-46頁;Man D.他、J.Biol.Chem.、2003、278(26):23285-94頁;Schreuder H.他、Nature、1997、386(6621):194-200)から、IL-6Rによって例証されるCBD構造が他のCBD中で保存されていることは明らかである。したがって、CBDは、IL-6RのドメインD2およびD3三次元構造を参照して、具体的にはVarghese JN他、2002、PNAS、99(25):15959-15964頁およびPCT/AU02/01255号から提供されるIL-6Rの主鎖炭素原子の構造的座標を参照して定義することができる。したがって、新しい結晶構造が解かれるにつれて、あるタンパク質がFnIII様ドメインを含むCBDを含むかどうかは、配列ならびに構造的(二次および三次)データを、例えばIL-6Rおよび図5に挙げる他のタンパク質のそれと比較することによって、即時に明らかとなる。しかし、他のCBDの三次元構造はIL-6Rの三次元構造とは正確に対応しないことを理解されたい。図6は、IL-6Rに関して、既知の天然に存在するCBD中で最も高度に保存されているCBD構造の領域を例示している。
【0054】
あるいはかつ/またはそれに加えて、図5中の配列との配列アラインメント解析によって適切なCBDを同定し得る。適切なアラインメント解析を実施する際、当業者には、タンパク質が2つのFnIII様ドメインを有するCBDを含むかどうかは容易に明らかであろう。潜在的なCBDのアミノ酸配列は図5中の配列と、具体的には上述のように既知のCBDにおいて高度に保存されていることが知られている残基と直接比較することができる。保存残基のアラインメントを行い、アラインメントを維持するために必要な挿入および欠失を行わせた後(すなわち勝手な欠失および挿入による保存残基の排除を回避すること)、図5の配列中の特定の保存アミノ酸に相当するすべての残基が定義されるはずである。さらに、すべての配列モチーフも同定されるはずであり、同様にループ構造が起こる可能性が高い領域も同定されるはずである(すなわち、予測された二次構造がわずかしか存在しないまたは存在せず、比較的極性の性質である領域)。
【0055】
所望の構造的および機能的特性を有するタンパク質配列を同定するためにこのような解析を実施する適切な計算方法は当分野で周知であり、例えばModellerが含まれる。
【0056】
好ましくは、アミノ酸配列の図5中の配列とのアラインメントを行った場合に、CBDの第1のFnIII様ドメインは図5Aに示す位置L1からL4に位置する4つのループを含む。
【0057】
好ましくは、アミノ酸配列の図5中の配列とのアラインメントを行った場合に、本発明のCBDの第2のFnIII様ドメインは図5Bに示す位置L5からL7に位置する3つのループを含む。
【0058】
好ましくは、第2のFnIII様ドメインはトリプトファン-アルギニンのラダー領域、これは好ましくはWSXWSモチーフまたはその変異体を含む。
【0059】
好ましくは、アミノ酸配列の図5中の配列とのアラインメントを行った場合に、第1のFnIII様ドメインは図5Aに示す位置L1からL4に位置する4つのループを含み、第2のFnIII様ドメインは図5Bに示す位置L5からL7に位置する3つのループを含む。
【0060】
ループL1からL4およびL5からL7の存在、ならびに存在する場合はトリプトファン-アルギニンのラダーの存在は、適切に行った配列アラインメントおよび解析により明らかとなる。
【0061】
図5の代わりとして、図5に関して上述した方法と同じ方法で、図3との一次配列の相同性によって適切なCBDを同定することも可能である。
【0062】
結晶構造データが利用可能でない場合、潜在的に有用なCBD候補のモデリングを可能にし、その予測された構造を例えばIL-6RのCBDと直接比較することを可能にするコンピュータモデリングツールが現在日常的に利用可能である。したがって、あるタンパク質が図5で同定したループを一次配列に沿った類似した位置で提示する2つのFnIII様ドメインを含み、好ましくは、好ましくはWSXWSモチーフまたはその変異体を含むトリプトファン-アルギニンのラダー領域などの他のモチーフを有するかどうかを同定することが可能であることに加えて、タンパク質の三次構造、または少なくともタンパク質の関連するドメインのコンピュータモデリングを行い、その3-DモデルをIL-6R CBDなどのCBDの既知の結晶構造と比較することも可能である。このようにして、目的タンパク質中のループの空間的な相関関係を既知のCBDのそれと比較することができる。
【0063】
図1、2、3、5および6では7つのループに言及しているが、L4として示したループ(IL-6RのA190からG193に対応し、図5中のR154〜R160に位置する)は小さく、一部の文献では必ずしもそれ自体でループとして呼ばない場合があることを理解されよう。本明細書中には完全性のために含めた。しかしこれは、本発明が6つのループを含むとして文献中に記載されているCBDを排除することを意味しない。その反対で、このようなCBDは明らかに本発明の範囲内にあり得る。
【0064】
結合部分のCBDのFnIII様ドメインは、任意の適切な天然に存在するCBD由来であり得る。適切な天然に存在するCBDの例は図5に挙げられている。好ましくは、CBDは成長因子およびサイトカイン受容体ファミリーメンバーの細胞外ドメイン由来、具体的にはサイトカイン受容体ファミリーメンバーおよび例えばgp130などの関連タンパク質由来である。好ましいサイトカイン受容体ファミリーメンバーはクラスI(ヘマトポイエチン受容体)またはクラスIIのもの、好ましくはクラスIのものである。CBDが由来し得る適切なタンパク質の例には、IL-R(インターロイキン受容体)、G-CSFR(顆粒球コロニー刺激因子受容体)、GM-CSFR(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子受容体)、PRLR(プロラクチン受容体)、LIFR(白血病阻害因子受容体)、OSMR(オンコスタチンM受容体)、カルジオトロフィンCT-1受容体、CNTFR(毛様体神経栄養因子受容体)、レプチン受容体、EPOR(エリスロポエチン受容体)、gp130、GHR(成長ホルモン受容体)および間質リンパ球増殖タンパク質受容体が含まれる。これらのタンパク質の多くにおいてCBDを構成するアミノ酸残基の番号づけを、図5に提供する。
【0065】
適切なIL(インターロイキン)受容体の例には、IL-2R、IL-3R、IL-4R、IL-5R、IL-6R、IL-7R、IL-9R、IL-11R、IL-12R、IL-13R、IL-15RおよびIL-21Rが含まれる。
【0066】
疑念を避けるために、αおよびβサブユニットを有するサイトカイン受容体に関して、適切なCBDが由来し得る本明細書中で言及する任意の細胞外ドメインはαサブユニット細胞外ドメインであり、βサブユニットドメインではない。
【0067】
本発明のCBDのFnIII様ドメインは同一源または異なる源に由来することができる。例えば、第1のFnIII様ドメインが1つのタンパク質由来であり、第2のFnIII様ドメインが異なるタンパク質由来であり得る。例えば、IL-11Rの第1のドメインをIL-12Rの第2のドメインと組み合わせることができる。IL-5RおよびIL-4RならびにプロラクチンおよびGMCSFRでも同様の組合せを行うことができる。2つのFnIII様ドメインが異なるタンパク質に由来する場合、当業者は、それらがそのそれぞれに関して適切な配向でなければならないことを理解されよう。第1のFnIII様ドメインと第2のFnIII様ドメインとは、ドメインが類似した表面中に位置し、ドメインは、それが由来するそのそれぞれのネイティブタンパク質中の他のFnIII様ドメイン内である配向と同様に互いに対して配向されているように、適切にヒンジ結合されているべきである。
【0068】
タンパク質ドメインの連結に用いられるリンカーは、特に免疫グロブリンスーパーファミリー中のタンパク質に関して当分野でよく知られているかつよく理解されている。したがって、当業者は、任意の適切なヒンジを用いて2つのFnIII様ドメインを結合し得ることを理解されよう。2つのFnIII様ドメインは遺伝子的または化学的手段によって連結させることができる。適切な化学結合の例には、ジマレイミドなどの適切な架橋結合剤を用いて2つのドメインを連結させることが含まれる。あるいは、それぞれのC末端およびN末端にシステイン残基を提供してジスルフィド結合を形成させることによって2つのドメインを連結させ得る。さらに、GlyGlyGlyGlySerなどの単鎖GlySerリンカーを用いてこれらを連結させることができる。
【0069】
また、ドメインを遺伝子的に連結させ得る。例えば、制限酵素(RE)部位が野生型CBD中のループ4と5との間に自然に起こっている場合は、この部位を用いて2つのドメインを連結させることができる。あるいは、適切なRE部位をループ4と5との間に挿入し得る。好ましくは、すべてのRE部位が、ループ4の直後のβシートの終わりとループ5の直前の任意のβシートの始まりとの間にあるFnIII様ドメインの領域をコードしている配列部分の間に位置する。
【0070】
図5は、CBD中の天然に存在するヒンジの多数の例を提示している。好ましくは、ヒンジは、約3〜15個のアミノ酸、好ましくは約4〜10個のアミノ酸の、2つのFnIII様ドメイン間に位置するストレッチである。ヒンジは、2つのドメインのそれぞれN末端およびC末端を介してループ4をループ5に結合させる。好ましくは、ヒンジは、FnIII様ドメインのうちの1つが由来する源のうちの1つに由来する。
【0071】
ここおよび上記で説明したCBDの構造的束縛に基づいて本発明の結合部分を新規に作製することができることは、明らかであろう。
【0072】
好ましい実施形態では、CBDの2つのFnIII様ドメインは同源のタンパク質に由来する。
【0073】
結合部分
本発明の結合部分は、CBDの少なくとも1つの特性を変更する修飾を含む、第1のFnIII様ドメインおよび第2のFnIII様ドメインからなる細胞外CBDを含む。本発明の結合部分は、適切なFnIII様ドメインが由来し得る完全長の野生型タンパク質を包含せず、それに関連しないことを理解されたい。むしろ、これらは、その天然の環境から取り出されたまたは単離されたCBDを含有する受容体の部分、好ましくは細胞外部分を包含し、それに関連する。結合部分がCBDを含有する受容体の細胞外部分に由来する場合は、結合部分はアミノ酸残基数および/または分子量に関して、FnIII様ドメイン(もしくは複数のFnIII様ドメイン)が由来するネイティブ細胞外ドメインを超えないことが好ましい。
【0074】
好ましい実施形態では、結合部分のCBDは、結合部分中の全分子量および/またはアミノ酸残基数の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%を占める。特に好ましい実施形態では、結合部分は本質的にCBDからなる。
【0075】
好ましくは、本発明の結合部分中に存在する結合ドメインは2つFnIII様ドメインのみである。2つのFnIII様結合ドメインは単一の結合領域を形成する。したがって、本発明の結合部分は単量体ポリペプチドまたはタンパク質体である。
【0076】
変更された特性
CBDは、CBDの特性が変更されるように修飾される。
【0077】
サイトカイン結合ドメインの特性は、サイトカイン結合ドメインの任意の特徴または属性が、修飾されていないサイトカイン結合ドメインの対応する特性と異なる場合には、変更されている。このような特性には、それだけには限定されないが、基質特異性、基質親和性、結合親和性、結合選択性、触媒活性、熱安定性、アルカリ安定性、pH活性プロフィール、タンパク質分解に対する耐性、動的会合、動的解離、免疫原性、分泌される能力、受容体活性化能力、疾患治療能力、溶解性、細胞毒性活性および酸化安定性が含まれる。
【0078】
別段に指定しない限りは、サイトカイン結合ドメインの特性は、修飾されていないサイトカイン結合ドメイン対応する特性に対して、特性の少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも2倍の増加または減少が示された場合に変更されたとみなされる。
【0079】
好ましい実施形態では、修飾されたCBD、およびそれに付随して結合部分の溶解性が、対応する修飾されていないCBD(すなわち修飾されていない結合部分)に対して変更される、好ましくは改善される。
【0080】
別の好ましい実施形態では、CBDの安定性が、対応する修飾されていないCBDに対して変更される、好ましくは改善される。安定性の変更の例には、以下の特性、すなわち熱安定性、アルカリ安定性、pH活性プロフィールおよびタンパク質分解に対する耐性のうちの1つの変更が含まれる。
【0081】
特に好ましい実施形態では、CBDの結合特徴が変更される。結合特徴の変更の例には、以下の特性、すなわち基質特異性、基質親和性、触媒活性、動的会合、動的解離、結合親和性および結合選択性のうちの1つの変更が含まれる。
【0082】
修飾
サイトカイン結合ドメインを修飾するとは、野生型サイトカイン結合ドメイン配列由来の野生型FnIIIドメインに少なくとも1つの修飾を導入することを意味する。
【0083】
「野生型サイトカイン結合ドメイン」とは、自然に見つかるサイトカイン結合ドメインを意味し、対立遺伝子多型、すなわち意図的には修飾されていないアミノ酸配列が含まれる。野生型サイトカイン結合ドメイン配列は任意の種、好ましくは哺乳動物種由来であり得る。好ましい実施形態では、野生型サイトカイン結合ドメインは図5に示す配列を有する。
【0084】
適切な修飾には、少なくとも1つの明記した領域内の置換、挿入および欠失が含まれる。
【0085】
好ましくは、CBDの大きさおよび/または面積は、修飾されていないCBDと比較して変更されている。好ましくは、CBDの少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは少なくとも3、4または5個、さらにより好ましくは少なくとも10個のアミノ酸が改変されている。修飾はいくつかの領域に行うことができる。
【0086】
好ましい実施形態では、溶媒に曝された領域が修飾され、好ましくは、いくつかのこのような領域が修飾される。好ましい溶媒に曝された領域は、CBDのループである。適切には、ループの大きさおよび/または面積を変更するため、好ましくはループの大きさおよび/または面積を増加するために修飾を行う。大きさは、少なくとも1、2、3、4または5個のアミノ酸、好ましくは少なくとも10もしくは20個のアミノ酸によって適切に増加し得る。ループの大きさは、40個まで、またはさらには50個までものアミノ酸残基によって増加し得る。修飾は、IL-6Rおよび/または図5によって定義されたL1、L2、L3、L4、L5、L6およびL7ループのうちの任意のものに行うことができる。適切には、修飾は、少なくとも2つまたは3つの異なる溶媒に曝された領域、例えばL1、L2、L3、L4、L5、L6およびL7ループのうちの任意の少なくとも2つまたは3つに行う。溶媒に曝された領域は、挿入、置換または本明細書中に記載の他の適切な修飾によって修飾することができる。
【0087】
例えば、IL-6R中のループL1はCBDの中心に位置する(図1、2、4および6)。IL-6RのCBDのループL1は天然のジスルフィド結合を含むので、これにより可動性が束縛され、したがってL1ループ内に追加のアミノ酸を挿入することによって、より大きな突出した「フィンガー様」ループを表示するために理想的な部分的に強固な骨格が形成される可能性がある。これらの突出した「フィンガー様」ループは、CBDが結合することができる標的抗原(タンパク質)内の空洞に対する相補的結合表面を提供する可能性が高く、これは天然のラクダ科VhHおよびサメNARドメインで観察される突出したループに類似している(Muyldermans S他、2001、Trends Biochem Sci.、26(4):230-5頁)および(Nuttall SD他、2002、Curr Pharm Biotechnol.、1(3):253-63頁)。
【0088】
また、配列にわたる保存的置換と本質的に等しいがCBDの特性を変更する修飾も包含される。このような保存的置換を表3に示す。
【0089】
【表3】

【0090】
さらに、所望する場合は、天然に存在しないアミノ酸または化学的アミノ酸類似体を、置換体または付加体として本発明のポリペプチド内に導入することができる。このようなアミノ酸には、それだけには限定されないが、一般のアミノ酸のD-異性体、2,4-ジアミノ酪酸、α-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、2-アミノ酪酸、6-アミノヘキサン酸、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β-アラニン、フルオロ-アミノ酸、β-メチルアミノ酸、Cα-メチルアミノ酸、Nα-メチルアミノ酸などの設計アミノ酸(designer amino acid)、および一般にアミノ酸類似体が含まれる。
【0091】
本発明はまた、ポリペプチドの安定性および循環時間を増加させること、または免疫原性を低下させることなどの利点をもたらし得る、CBDの化学修飾した誘導体も提供する(米国特許第4,179,337号参照)。誘導体化用の化学部分は、ポリエチレングリコール、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーから選択し得る。
【0092】
また、例えば、ビオチン化、ベンジル化、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護基/遮断基による誘導体化、タンパク質分解的切断などによって、合成中またはそのあとに示差的に修飾される結合部分も含まれる。CBDは分子内の無作為な位置で、または分子内の所定の位置で修飾され得、1つ、2つ、3つまたはそれ以上の付着した化学部分を含み得る。このような修飾は、例えば、本発明の結合部分の安定性および/または生物活性を増加させるために役立ち得る。
【0093】
また、CBDは、カルボキシ末端の切断を有することによって修飾され得る。しかし、このような修飾の範囲は限定されており、FnIII様ドメイン中の最後のβ鎖の8個を超えない残基、より好ましくは6個を超えない残基だけが取り除かれることが好ましい。好ましくは、第1のFnIII様ドメインは切断されない。
【0094】
結合特徴の変更
好ましい実施形態では、修飾によってCBDの結合特徴が変更される。通常はCBDのために天然リガンドと接触するサイトカイン結合領域は、典型的にはCBDの溶媒に曝された領域であり、一般に表面が曝されたループからなる。例えば、上述のように、IL-6RのドメインD2およびD3は一緒になって7つのサイトカイン結合ループ(L1からL7)を含む。他のCBD中でのこれらのループの位置を図5に示す。したがって、結合特徴を変更するために、これらのループ領域のうちの1つもしくは複数、または他のCBD中の相当する領域に修飾を行うことが好ましい。
【0095】
例えば、その天然リガンドのうちの少なくとも1つに対するCBDの結合親和性を、低減または消滅させることができる。好ましくは少なくとも1つの天然リガンドに対する結合親和性が少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも5倍または10倍低減する。
【0096】
一実施形態では、修飾されたCBDの結合特異性は修飾されていないCBDのそれとは異なる。好ましくは、修飾されていないCBDが第1のリガンドに対する特異性を有する第1の受容体の細胞外ドメインに由来し、修飾されていないCBDのループのうちの1つまたは複数が第2のリガンドに対する特異性を有する第2の受容体からの対応する1つまたは複数のループで置き換えられ、その結果、修飾されたCBDが第2のリガンドに対する特異性を有する。例えば、CBDの結合特異性を異なるサイトカインへと変更することができる。具体的には、第1のサイトカインに対する特異性を有するCBDのサイトカイン結合領域中のループを、第2のサイトカインに対する特異性を有する第2のCBDのサイトカイン結合領域からのループで置き換えることによって成すことができる。例えば、IL-6RのCBDのループL1からL7を、IL-11RのCBDのループL1からL7によって置き換えて、IL-6の代わりにIL-11に対する特異性を有する修飾された結合部分をもたらすことができる。同様に、IL-6RのCBDのループL1からL7をプロラクチン受容体、LIF受容体またはオンコスタチンM受容体のCBDのループL1からL7によって置き換えて、IL-6の代わりにそれぞれプロラクチンおよび/もしくは成長ホルモン、LIFまたはオンコスタチンMに対する特異性を有する修飾された結合部分をもたらすことができる。
【0097】
好ましい実施形態では、第1の受容体はIL-6Rであり、第2の受容体はプロラクチン受容体、LIF受容体またはオンコスタチンM受容体のいずれかであり、したがって、CBDのリガンド特異性がIL-6からそれぞれプロラクチンおよび/もしくは成長ホルモンまたはLIFまたはオンコスタチンMのいずれかに変更される。
【0098】
好ましい代替実施形態では、第1のCBDは、サイトカイン結合領域のループが、第1のCBDの特異性を変更する第2のサイトカイン受容体領域のループで置き換えられているように修飾された、プロラクチン受容体、またはIL-11R、またはCNTF受容体である。
【0099】
修飾は、溶媒に曝されていないかつ/またはサイトカイン結合ループ(すなわちL1からL7)の一部を形成しないCBDの領域に行うこともできる。例えば、結合部分はCBDのヒンジ領域および/またはCBDのFnIII様ドメインの結合界面に対する1つもしくは複数の修飾を含み得る。2つのFnIII様ドメイン間の結合界面に対する修飾は、2つのドメイン間の空間関係の幾何学に変更をもたらし得る。これは立ち代って、結合表面全体の特徴/トポロジーを改変する、溶媒に曝された結合領域、例えばループの配向および/または会合の変更に使用することができる。
【0100】
2つのFnIII様ドメイン間の結合界面に対する修飾は、例えば、埋まっており、2つのドメイン間の会合を安定化するように作用する一般に高度に保存されている疎水性残基を、直接または間接的に(例えば立体的に)修飾することを含む。例えば、1つもしくは複数の残基、すなわちIL-6RのD2のPro107、Leu195およびPro197ならびにIL-6RのD3のTrp225、Leu232、Ala275、Pro200およびPro222、または他のCBD中の対応する残基の修飾を含み得る。
【0101】
物理化学的特性の変更
好ましい実施形態では、修飾により、結合部分の生物物理学的および/または物理化学的特性が変更される、好ましくは改善される。好ましくは、修飾により、結合部分の安定性および/または溶解性の特性が変更される、好ましくは改善される。
【0102】
例えば、表面相補性を改善するために界面突然変異を含めたドメイン界面での修飾を行うことができる。例えば、ジスルフィドの安定化をもたらすためにシステイン残基の挿入を行い得る。
【0103】
修飾はまた、骨格構造の安定性を変更する、好ましくは改善するためにも行い得る。例えば、球状構造内部の穴を埋めるために、アミノ酸をより大きな側鎖を有する他のアミノ酸で置換し得る。このような置換には、例えば、グリシンからアラニン、アスパラギンからグルタミン、アスパラギン酸からグルタミン酸、フェニルアラニンからチロシンまたはトリプトファン、チロシンからトリプトファン、アスパラギンまたはアスパラギン酸からヒスチジン、ヒスチジンからチロシン、およびリシンからアルギニンへの置換が含まれ得る。タンパク質主鎖の可動性を低下させるためにグリシン残基も置換し得る。対照的に、例えばタンパク質主鎖の二面角および二次構造において制限が存在する場合、骨格の可動性を改善するためにプロリン残基を挿入または置換し得る。安定性を変更する、具体的には改善するための他の適切な修飾は、当業者には明らかであろう。
【0104】
好ましい実施形態では、結合部分は、修飾されていない結合部分と比較してその溶解性が変更される、好ましくは改善されるように修飾されている。溶解性を改善する、具体的には細胞性宿主中で可溶性に発現可能な(すなわち非凝集性である)結合部分を設計するために様々な戦略を用い得る。例えば、(i)溶媒に曝された疎水性残基を適切な極性残基で置き換えることによって疎水性を低下させる修飾;(ii)中性の極性残基を帯電した極性残基で置き換えることによって極性の特徴を高める修飾;(iii)ジスルフィド結合していないシステイン残基(非対合システイン)を適切な非システイン残基で置き換える修飾、および(4)その素性が別の種由来の対応するCBDとは異なる残基を置き換える(例えばネズミIL-6R残基をヒトIL-6R内へと置換する)修飾を行うことができる。他の代替戦略も当業者には明らかであろう。例えば、タンパク質の安定性を高める修飾は、部分的に折り畳まれた状態または折畳みが誤った状態の集団を減少させることによって溶解性を改善する場合がある。別の例として、タンパク質の溶解性は、典型的には、タンパク質の等電点が周辺溶液のpHに等しい場合に最小となる。したがって、タンパク質等電点を血清などの関連する環境のpHから遠ざかるように乱す修飾は、溶解性を改善するために役割を果たすことができる。
【0105】
好ましい実施形態では、溶媒に曝された領域、好ましくはループ中の、1つまたは複数の、好ましくは疎水性の残基を、構造的および機能的に適合性のある極性残基で置き換える。アラニンおよびグリシンも適切な置換体として役割を果たし得、疎水性の低下をもたらす。
【0106】
代替実施形態では、好ましい極性残基には、他のCBD中において相同する位置で見られるものが含まれる。
【0107】
別の好ましい実施形態では、遊離システイン残基(すなわちジスルフィド結合に参加していないシステイン残基)を、構造的および機能的に適合性のある非システイン残基へと突然変異させる。非対合のシステインは、構造の視覚解析によって、または関連タンパク質のジスルフィド結合パターンの解析によって同定することができる。
【0108】
好ましい実施形態では、ジスルフィドを形成しないシステインの位置がCBDフレームワーク内に実質的に埋もれている場合、システインを取り除くか、または、例えばアラニンもしくはセリンなどの適切な非システイン残基で置き換え得る。システインの位置が溶媒に実質的に曝されている場合は、適切な非システイン残基にはアラニンおよび極性残基が含まれる。さらに、溶解性を改善するために、CBDフレームワーク内でジスルフィド結合の形成に関与していないシステイン残基も、取り除くか、または、例えばアラニンもしくはセリンで置き換えることができる。例えば、IL-6RのCBDのD2およびD3に関して、溶解性を改善するために、Cys174、Cys192およびCys258のうちの任意の1つまたは複数を取り除く、好ましくはセリンで置き換えることができる。
【0109】
好ましい実施形態では、溶解性を改善するために1つまたは複数の溶媒に曝されたループを修飾する。溶解性は、例えば、ジスルフィド結合を形成するシステインを取り除くこと、かつ/または溶媒に曝されたループ内からのジスルフィド結合を形成するシステインをアラニンもしくはセリンなどのアミノ酸で置き換えることによって改善し得る。
【0110】
溶解性を改善するための修飾は、細胞内の状況で機能するように結合部分を設計する場合、および/またはその生成方法が可溶性の形態での発現を好む場合に望ましい可能性がある。また、当業者には、結合特徴の変更などの他の修飾と同時に、またはそれを行う前でさえも、結合部分の溶解性特徴を改変することが必要であり得ることが明らかであろう。
【0111】
安定性および溶解性などの結合部分の物理化学的特性は、当分野で知られている広範な方法を用いて定性的にかつ/または定量的に決定し得る。結合部分の生物物理学的/物理化学的特性を特徴づけるために本発明において使用し得る方法には、ゲル電気泳動、サイズ排除クロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー、質量分析、紫外線吸収分光分析、蛍光分光分析、円二色性分光分析、等温滴定熱量測定、示差走査熱量、分析用超遠心分離、動的光散乱法、タンパク質分解、架橋結合、濁度測定、フィルター遅延アッセイ、免疫学的アッセイ、蛍光色素結合アッセイ、タンパク質染色アッセイ、顕微鏡観察、およびELISAまたは他の結合アッセイによる凝集体の検出が含まれる。X線結晶学的技法およびNMR分光分析を用いた構造解析も用い得る。
【0112】
例えば、タンパク質の安定性(例えば構造的完全性)は、折り畳まれた状態と折り畳まれていない状態との間の熱力学的平衡を測定することによって決定し得る。
【0113】
一実施形態では、安定性および/または溶解性は、ある定義された一定期間後のした可溶性タンパク質の量を決定することによって測定し得る。このようなアッセイでは、タンパク質を何らかの極限条件、例えば高温、低pH、または変性剤の存在に曝してもよく、曝さなくてもよい。折り畳まれていないタンパク質および凝集したタンパク質はその機能、例えば事前に決定された標的分子に結合する能力を保持しないことが予測されるので、残った活性の量が結合部分の安定性および溶解性の測度を提供する。したがって、溶解性および/または安定性を評価する一方法は、結合部分を含む溶液が標的分子に結合する能力についてアッセイを行い、その後、溶液を高温に1つまたは複数の定義された期間の間曝し、次いで、抗原結合について再度アッセイを行うことである。
【0114】
あるいは、修飾された結合部分は、原核発現系中で発現させ、分画遠心分離、ポリヒスチジンなどの付着したタグを用いた親和性単離クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーおよびゲル濾過クロマトグラフィーを含めた一連の生化学的精製ステップによって細胞溶解液からタンパク質を単離することができる。修飾されたポリペプチドの溶解性の改善の測度は、同様の量の発現された未分画の生成物から開始した場合に、精製手順の終わりに得られた可溶性タンパク質の量を、修飾されていないポリペプチドで得られる量と比較することによって得ることができる。培養物中の生成物の発現レベルは、SDS洗剤で可溶化した等アリコートの細胞溶解液をポリアクリルアミドゲル電気泳動したあとの生成物のバンド密度を比較することによって正規化することができる。
【0115】
あるいは、結合部分は、化学的変性剤、熱、またはpHを用いて折畳みを解くことができ、この遷移は、それだけには限定されないが、円二色性分光分析、蛍光分光分析、吸光分光分析、NMR分光分析、熱量測定、およびタンパク質分解を含めた方法を用いて監視することができる。当業者は、これらおよび他の技術を用いて折畳みと折畳みを解く遷移との動的パラメータも監視し得ることを理解されよう。
【0116】
本発明の結合部分の溶解性は、好ましくは正しく折り畳まれた単量体ポリペプチドの生成と相関する。したがって、修飾された結合部分の溶解性は、HPLCまたはFPLCによって、可溶性(凝集していない)断片は単一のピークを生じるが、凝集した断片は複数のピークを生じることを用いても評価し得る。溶解性の好ましい測定方法では、Power BE他、2003、Protein Science、12、734-747に記載のように、凝集レベルおよび高分子量の種の存在を評価する従来のFPLCまたはHPLC技術を用いる。
【0117】
加速安定性試験の一例として、結合部分のアリコートを-20℃、4℃、20℃および37℃などの様々な温度で保存し、結合部分の活性のアッセイを様々な時間間隔で行うことができる。例えば、37℃で12週間保存する間に活性がうまく保持されることは、大雑把に12カ月4℃での保存安定性に等しい。この試験は、保存用緩衝液中の様々な保護添加剤のタンパク質の安定性に対する効果を比較するためにも行うことができる。このような添加剤には、グリセロール、ソルビトールなどの化合物、ウシ血清アルブミンなどの非特異的タンパク質、またはタンパク質の貯蔵寿命を増加させるために用い得る他の保護剤が含まれることができる。
【0118】
好ましい実施形態では、システイン残基は、CBD内、好ましくはループのうちの1つもしくは複数内から取り除かれているか、または置き換えられている。さらに好ましい実施形態では、システイン残基は、一方のFnIII様ドメインの1つもしくは複数のループから取り除かれているまたは置き換えられているが、他方のFnIII様ドメイン内では変更されていないままである。
【0119】
結合部分の特定の特性を変更することに関して上述した修飾の種類のうちの任意の1つもしくは複数は、上記の修飾に関して明確に記載したものに加えて、またはその代わりに、他の特性の変更に用い得ることを理解されよう。
【0120】
本発明の結合部分は、実質的に単離した形態であり得る。タンパク質を、タンパク質の意図される目的を妨げない担体または希釈剤と混合しても、実質的に単離されているとみなされることを理解されたい。本発明の結合部分はまた、実質的に精製した形態であり得、この場合、一般に調製物中のタンパク質の90%超、例えば95%、98%または99%が本発明の結合部分であるように、調製物中にタンパク質を含む。
【0121】
本発明の結合部分は、例えば共有的または非共有的手段によって、他の分子と連結されていてもよい。好ましい実施形態では、本発明の結合部分(CBD)は、(限定されずに)酵素、薬物、脂質、糖、核酸およびウイルスなどの分子と連結されていてもよい。
【0122】
一実施形態では、結合部分は、他の部分の部位特異的な付着のための、溶媒に曝されたシステイン残基を含んでいてもよい。
【0123】
本発明の結合部分は、典型的には共有的または非共有的手段によって、他の分子と連結されていることができる。例えば、結合部分を、他のポリペプチド配列と連結されている融合タンパク質として生成し得る。融合パートナーには、酵素、検出可能な標識および/または数々の診断的用途もしくは精製を補助するための親和性タグが含まれることができる。融合パートナーは、限定されずに、GFP(緑色蛍光タンパク質)、GST(グルタチオンS-トランスフェラーゼ)、チオレドキシンまたはヘキサヒスチジンであり得る。他の融合パートナーには、結合部分を特定の細胞下の位置に向ける、または結合部分を細胞外の位置に向ける標的化配列、例えば分泌シグナルが含まれる。好ましい実施形態では、本発明の結合部分はそれが由来する受容体/タンパク質の他の領域を含まない、すなわち、いかなる融合パートナーもCBDと非相同的である。異種配列は、生じる融合タンパク質が修飾されたCBDの活性を保持することを可能にする任意の配列であり得る。異種配列には、例えば、Fc融合などの免疫グロブリン融合、または安定性を高め得るもしくはタンパク質の精製を補助し得る他の細胞性リガンドとの融合が含まれる。
【0124】
本発明の結合部分に連結することができる診断剤または治療剤には、毒素もしくはプロドラッグなどの薬理活性を有する物質、免疫調節剤、阻害性の核酸もしくはポリペプチドをコードしている核酸などの核酸、PEGなどの結合部分のin vivoでの安定性もしくは親油性の挙動を亢進させる分子、および放射性化合物、色素、発色団、フルオロフォアもしくは他のイメージング試薬などの検出可能な標識が含まれる。
【0125】
結合部分は、実質的に平らな表面(例えばチップもしくはマイクロタイタープレート)またはビーズなどの固相に固定してもよい。ポリペプチドを固相に固定する技術は当分野で知られている。さらに、結合部分のライブラリを用いる場合は(例えばスクリーニング方法において)、固相に固定した結合部分のアレイを生成することができる(Lee YSおよびMrksich,M、2002、Trends Biotechnol.、20(12 Suppl):S14-8頁ならびにそれに含まれる参考文献)。
【0126】
本発明の別の実施形態では、本発明の結合部分はタンパク質骨格として機能し、他のポリペプチド配列が、骨格の表面上に表示されるために結合部分の溶媒に曝された領域内に挿入される。このような骨格は、例えば、コンホメーションが束縛された様式でペプチドを提示する便利な手段として役立ち得る。骨格は、変更された結合特異性を有するCBDを生成し、また、任意の目的の標的分子に対して特異性を有する結合部分を生成するかつ/またはそれについてスクリーニングするために用い得る。
【0127】
例えばCBDの1つまたは複数のループなどの、1つまたは複数の溶媒に曝された領域内に異種ポリペプチド配列を挿入し得る。結合部分のCBDは挿入された異種配列のタンパク質骨格として機能し、結合部分の表面上に異種配列を表示する。
【0128】
異種配列は、それを内部に挿入するCBDのループのすべてもしくは一部を置き換えてもよく、または単純に付加配列を形成してもよい。好ましくは、複数の異種配列を複数のループ内に挿入する。
【0129】
異種配列は、例えば別のCBDのループなどの、溶媒に曝された領域に由来してもよい。これらはまた、他の非CBD分子に由来するか、または完全なランダム化の部分的であってもよい。
【0130】
他の修飾も、CBDに関する以前のセクションで記載したように本発明の骨格タンパク質に行うことができ、また、他の分子に連結されているか、かつ/または下に記載するように多量体として生成し得る。
【0131】
2つ以上のCBDは、共有結合もしくは非共有結合のどちらかによって、または化学的リンカーもしくは遺伝子にコードされたリンカーの使用を含めた結合の組合せによって、一緒に結合されて多量体を形成し得る。CBDの多量体は、好都合の薬物動態学および体内分布の特性をもたらし得るより高い結合力およびより遅延された血液クリアランス速度をもたらす潜在性を有するので、治療的試薬の1つの好ましい設計案である。用いる結合は、例えば化学物質によって結合された抗体および抗体断片に関して当業者に周知であり(Casey JL他、2002、Br J Cancer.、86(9):1401-10頁)、結合は、遺伝子にコードされたリンカーポリペプチド(BITEのscFv-scFv)、または接着性融合ドメイン(Pluckthun,A.、およびPack,P、1997、Immunotechnology、3、83-105頁)によるものである。実際、リンカーポリペプチドを用いて異なるCBDからの2つのFnIII様ドメインを交差対合させて、二重特異性抗体(抗体Fv二量体)または三重特異性抗体(抗体Fv三量体)または四重特異性抗体(抗体Fv四量体)の様式で密に会合したCBD多量体を形成し得る(Power BE他、2001、Cancer Immunol Immunother.、50(5):241-50頁)。上述したこれらのリンカー戦略のうち任意のものから生じたCBD多量体は同じまたは異なる標的特異性を有し得、したがって多価試薬または多特異性試薬が提供される。好ましい実施形態では、共有結合もしくは非共有結合のどちらか、または結合の組合せによって2つのCBDを結合させて二量体を形成させ得、これにより2つの標的結合親和性が提供される。多量体中の2つ以上のCBDが同じ標的特異性を有する場合は、CBD多量体は多価となり、2つ以上の標的分子に結合することに関してより高い結合力(機能的親和性)を有することとなる。
【0132】
CBD多量体は、化学的または遺伝子的な変更のどちらかにより、界面接触領域に対する修飾によってより高い安定性を有するように設計し得る。例えば、多量体界面でのCBDフレームワーク領域の詳細な検査は、界面を安定化させ、したがってCBD多量体の優先的な形成を指揮する残基の突然変異または化学修飾の導入を指揮し得る。一実施形態では、F134(D2)、F168(D2)およびH261(D3)以外の界面残基に突然変異を導入する。別の実施形態では、C174(D2)、C192(D2)またはC258(D3)の残基に突然変異を導入する。
【0133】
結合部分の生成
本発明の結合部分は化学的手段または組換え手段によって作製し得る。ペプチドを化学合成する技術はBorgiaおよびFields、2000、TibTech、18:243-251に総説されており、それに含まれる参考文献中に詳述されている。典型的には、本発明の結合部分は組換え手段によって作製する。したがって、本発明は、本発明の結合部分をコードしているポリヌクレオチドを提供する。
【0134】
本発明の結合部分に対する修飾は、部位特異的突然変異誘発などの当業者に知られている標準のクローニング技術を用いて行うことができる。天然の修飾されていないループもしくは複数のループのアミノ酸配列中の変異は、特異的な点突然変異を生じさせるためにコード遺伝子を設計することによって、またはライブラリのレパートリーを構築する間にループ配列(もしくは複数のループ配列)の全体をランダム化するためのランダム「ウィンドウ」突然変異誘発によって成すことができる。ループ長の変異は、CBDループ中のアミノ酸の一部を取り除くことによってより短いループを作製するか、または逆にアミノ酸の数を増やすことによってループを伸長するようにコード遺伝子を設計することによって成し得る。このような設計はL1、L2、L3、L4、L5、L6およびL7ループから選択される2つ以上のループに適用することができる。あるいは、合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いてCBDフレームワークおよびランダム化されたループを含む遺伝子のレパートリー全体を構築することができる。
【0135】
目的の標的分子に対して結合親和性を有する結合部分を得る一手法は、CBD中、好ましくは1つまたは複数のループ中に修飾を含む本発明の様々な結合部分をコードしているポリヌクレオチドライブラリを生成し、ファージディスプレイまたはリボソームディスプレイなどの標準の技術を用いて、標的分子への結合についてライブラリをスクリーニングすることである。このスクリーニング手法は以下により詳細に記述する。
【0136】
ポリヌクレオチド、ベクターおよび宿主
本発明のポリヌクレオチドはDNAまたはRNAを含み得る。これらは一本鎖または二本鎖であってよい。これらはまた、それ内に合成ヌクレオチドまたは修飾されたヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであってもよい。オリゴヌクレオチドに対するいくつかの異なる種類の修飾が当分野で知られている。それらには、メチルホスホネートおよびホスホロチオエートの主鎖、分子の3'および/もしくは5'末端へのアクリジンまたはポリリシン鎖の付加が含まれる。本発明の目的のためには、本明細書中に記載のポリヌクレオチドを当分野で利用可能な任意の方法で修飾し得ることを理解されたい。そのような修飾は、本発明のポリヌクレオチドのin vivo活性または寿命を亢進するために実施し得る。
【0137】
本発明のポリヌクレオチドは、組換えの複製可能なベクター内に組み込むことができる。ベクターを用いて、核酸を適合性のある宿主細胞内で複製し得る。適切な宿主細胞には、大腸菌などの細菌、酵母、哺乳動物細胞系および他の真核細胞系、例えば昆虫Sf9細胞が含まれる。
【0138】
好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、宿主細胞によって、またはin vitro転写/翻訳系を用いてコード配列の発現をもたらすことができる制御配列に作動可能に連結されたベクターである、すなわち、ベクターは発現ベクターである。用語「作動可能に連結された」とは、記載した構成要素が、それらが意図された様式で機能することを可能にする関係にあることを意味する。コード配列に「作動可能に連結された」制御配列は、その制御配列に適合性のある条件下でコード配列の発現が成されるようにライゲーションされている。
【0139】
制御配列は、制御配列によって指揮される転写レベルを、転写性のモジュレーターにより応答性があるようにするために、例えばさらなる転写性の制御要素の付加によって修飾されていてもよい。
【0140】
本発明の結合部分の発現をもたらすために、本発明のベクターを適切な宿主細胞内に形質転換または形質移入し得る。このプロセスは、発現ベクターで形質転換させた宿主細胞を、結合部分をコードしているコード配列のベクターによる発現がもたらされる条件下で培養すること、および任意選択で発現された結合部分を回収することを含み得る。
【0141】
ベクターは、複製起点、任意選択で前記ポリヌクレオチドの発現用のプロモーターおよび任意選択でプロモーターのレギュレーターを備えた、例えばプラスミド、ファージミドまたはウイルスベクターであり得る。ベクターは1つもしくは複数の選択マーカー遺伝子、例えば細菌プラスミドの場合はアンピシリン耐性遺伝子、または哺乳動物ベクターの場合はネオマイシン耐性遺伝子を含み得る。ベクターは、例えば宿主細胞に形質移入または形質転換させるために使用し得る。
【0142】
本発明のタンパク質をコードしている配列に作動可能に連結された制御配列には、プロモーター/エンハンサーおよび他の発現制御シグナルが含まれる。これらの制御配列は、発現ベクターを用いることが設計されている宿主細胞に適合性があるように選択し得る。用語「プロモーター」とは当分野で周知であり、最小プロモーターから上流要素およびエンハンサーを含めたプロモーターまでの大きさならびに複雑さにわたる核酸領域が包含される。
【0143】
プロモーターは、典型的には原核細胞または真核細胞において機能的であるプロモーターから選択される。真核プロモーターに関しては、これらは遍在的に機能する、あるいは組織特異的に機能するプロモーターであり得る。また、これらは特定の刺激に応答するプロモーターであってもよい。また、ウイルスプロモーター、例えばモロニーネズミ白血病ウイルス末端反復配列(MMLV LTR)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーターまたはヒトサイトメガロウイルス(CMV)IEプロモーターを用いてもよい。
【0144】
また、細胞の寿命の間結合部分の発現レベルを制御することができるように、プロモーターが誘導可能であることが有利であり得る。誘導可能とは、プロモーターを用いて得られる発現レベルを制御することができることを意味する。
【0145】
本発明のいくつかの実施形態では、例えば結合部分を骨格配列として用いる場合に、異種配列を本発明の結合部分内に挿入する。このような修飾は、一般に、本発明の結合部分コードしている本発明のポリヌクレオチドを操作することによって行う。これは、CBDをコードしている配列を含むクローニングベクターであって、異種配列をコードしているヌクレオチド配列がCBDの適切な領域内に容易に挿入されることを可能にするために、配列が前記サイトカインドメインの溶媒に曝された領域をコードしている1つまたは複数の領域中に1つまたは複数の固有の挿入部位を含むベクターを提供することによって便利に達成し得る。
【0146】
それぞれの「固有の」挿入部位は、典型的にはII型制限エンドヌクレアーゼによって認識および切断されるヌクレオチド配列を含み、そのヌクレオチド配列は、クローニングベクターが「固有の」挿入部位でのみ制限エンドヌクレアーゼによって切断されるように、クローニングベクター内の他の箇所に存在しない。これにより、当業者に周知の標準の技術を用いて、切断したベクターを用いたライゲーションによる、適切な末端を有するヌクレオチド配列の容易な挿入が可能となる。好ましくは、挿入部位は遺伝子操作されている、すなわち、CBDが天然に存在する配列に由来する場合は、挿入部位は天然の配列中に自然に存在しない。
【0147】
本発明のベクターおよびポリヌクレオチドは、ベクター/ポリヌクレオチドを複製する目的、および/または本発明のポリヌクレオチドによってコードされている本発明の結合部分タンパク質を発現させる目的のために宿主細胞内に導入し得る。宿主細胞には、細菌細胞などの原核細胞および酵母、真菌、昆虫細胞および哺乳動物細胞を含めた真核細胞が含まれる。
【0148】
本発明のベクター/ポリヌクレオチドは、形質移入、形質転換および電気穿孔などの当分野で知られている様々な技術を用いて適切な宿主細胞内に導入し得る。本発明のベクター/ポリヌクレオチドを動物に投与する場合は、いくつかの技術、例えばレトロウイルス、単純ヘルペスウイルスおよびアデノウイルスなどの組換えウイルスベクターを用いた感染、核酸の直接注射ならびに微粒子銃による形質転換が当分野で知られている。
【0149】
本発明のポリヌクレオチドを含む宿主細胞を用いて本発明のタンパク質を発現させ得る。本発明の結合部分の発現を可能にする適切な条件下で、宿主細胞を培養する。結合部分の発現は、連続的に産生されるか、または誘導可能で発現を開始させるために刺激を要するように構成されていてよい。誘導可能発現な発現の場合、タンパク質の産生は、例えばデキサメタゾンまたはIPTGなどの誘発物質を培地に添加することによって必要となった際に開始されることができ、または、熱誘導によってリプレッサーを変性させてタンパク質合成を開始させることによって誘導可能な発現を成し得る。
【0150】
本発明の結合部分は、酵素的、化学的および/または浸透圧溶解ならびに物理的破壊を含めた当分野で知られている様々な技法によって宿主細胞から抽出することができる。
【0151】
結合部分のライブラリ
本発明の結合部分は、CBD中に異なる配列を有する複数の結合部分を含むライブラリとして提供し得る。好ましくは、変異は1つまたは複数のループ中に存在する。これらのライブラリは、典型的には、特定の目的標的分子に対する親和性などの、目的の活性を有する結合試薬を同定するためのスクリーニング方法で用いることができる。
【0152】
結合部分のライブラリは、結合部分をコードしているポリヌクレオチドのライブラリとして都合よく提供されている。ポリヌクレオチドは一般に、少なくとも1つのループ内の1つもしくは複数の位置で異なる多数の様々な配列を生じさせるために、突然変異誘発またはランダム化されている。
【0153】
突然変異は、部位特異的突然変異誘発などの当分野で知られている様々な技術を用いて導入することができる。M13などの一本鎖ファージを用いる方法からPCRに基づいた技術まで、部位特異的突然変異誘発のためのいくつかの方法が当分野で知られている(「PCR Protocols:A guide to methods and applications」、M.A.Innis、D.H.Gelfand、J.J.Sninsky、T.J.White(編)、Academic Press、New York、1990参照)。別の技法は、市販されている「Altered Sites II in vitro Mutagenesis System」(Promega、米国特許第5,955,363号)を用いることである。部位特異的突然変異誘発の技法は上述した。大腸菌mutD5などの細菌の「突然変異誘発株」を用いること(Low他、1996、J Mol Biol、60:9-68頁);およびBリンパ球の抗体過剰突然変異系を用いること(Yelamos他、1995、Nature 376:225-9頁)を含めた様々なin vivo技術によって突然変異をヌクレオチド配列またはヌクレオチド配列プール内に「ランダムに」導入することによって、複数のランダムに突然変異した配列を作製することができる。また、ランダムな突然変異は、化学的突然変異原、およびイオン化もしくはUV照射によって(Friedberg他、1995、DNA repair and mutagenesis、SM Press、Washington D.C.)、または突然変異原性の塩基類似体を取り込むことによって(Zaccolo他、1996、J Mol Biol、255:589-603頁)、in vivoならびにin vitroのどちらでも導入することができる。「ランダム」な突然変異はまた、重合中に、例えば誤りがちなポリメラーゼを用いることによって(Leung他、1989、Technique、1:11-15頁)、in vitroで遺伝子に導入することができる。
【0154】
CBDのサイトカイン結合領域(例えばループ配列)中に存在する配列を変更する突然変異誘発技術を用いることが一般に好ましいが、望ましいまたは望ましくない可能性があるフレームワークの変化も起こってもよい。サイトカイン結合領域を標的とする一方法は、部分的にまたは完全に突然変異誘発/ランダム化された複数の比較的短いヌクレオチド配列を提供し、骨格配列に関して上述したようにこれらの配列を結合部分中の特異的な挿入部位内にクローニングすることである。
【0155】
別の手法は、複数のランダム合成オリゴヌクレオチドを合成し、その後、結合部分をコードしている配列内にオリゴヌクレオチドを挿入するかつ/または結合部分をコードしている配列をランダム合成オリゴヌクレオチドで置き換えることである。適切な方法は国際公開公報WO97/27213号に記載されており、各ステップにおいて複数のヌクレオチド前駆体を反応に加えることによって縮重オリゴヌクレオチドが生成される。この方法の利点は、それぞれのヌクレオチドの位置が一定に保たれたままか、ランダム化されるかの程度を完全に制御できることである。さらに、3つのストップコドンのうちの2つがこの位置でAを有するので(TAAおよびTGA)、C、GまたはTのみを各コドンの第3塩基として許容すれば、中途でのストップコドンが生じる可能性が顕著に低減する。
【0156】
別の手法は、当業者に知られている方法であるSOE-PCR(スプライシング重複伸張ポリメラーゼ連鎖反応)を用いて遺伝子のレパートリーを作製することである。利用可能な完全長の遺伝子鋳型が存在せず、合成によって遺伝子のレパートリーを組み立てる場合に、この方法を用いる。
【0157】
オリゴヌクレオチド合成は、当分野で周知の技術を用いて行う(Eckstein、Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach、IRL Press at Oxford University Press、1991参照)。また、ライブラリを特定し、購入することもできる。合成プロセスは、核酸の長さにわたって可能な組合せのすべてまたはほとんどの作成を可能にし、したがってランダム化された核酸ライブラリの作製を可能にするために行うことができる。これらのランダム化された配列は、任意の融合パートナーを有するランダム化されたペプチドのインフレーム発現が可能となるように合成する。
【0158】
一実施形態では、ライブラリは完全にランダム化されており、どの位置でも配列優先性または一定性が存在しない。別の実施形態では、ライブラリは偏っている、すなわち、部分的にランダム化されており、配列内の一部の位置が一定に保たれているか、または限定数の可能な変異から選択される。したがって一部の核酸またはアミノ酸の位置は、特定の構造的または化学的特徴を維持することを視野に入れて一定に保たれる。
【0159】
その後、ランダム化されたオリゴヌクレオチドを適切な部位内に挿入するかつ/または結合部分をコードしている適切な配列をそれで置き換えることができる。
【0160】
一般に、配列のライブラリは、ランダム配列の構造的に多様な集団が提示されるほどに十分大きい。これにより、3次元の形状および構造の大きなサブセット表れることが保証され、機能的相互作用の確率が最大となる。
【0161】
ライブラリが少なくとも1000種の異なるヌクレオチド配列、より好ましくは少なくとも104、105または106種の異なる配列を含むことが好ましい。好ましくは、ライブラリは104〜1010種の異なる配列を含む。好ましくは、ヌクレオチド配列によってコードされているペプチドの少なくとも5、10、15または20個のアミノ酸残基がランダム化されている。
【0162】
典型的には、ランダム化されたヌクレオチド配列によってコードされている挿入されたペプチドは、少なくとも5、8、10または20個のアミノ酸を含む。好ましくは、これらはさらに、50、30または25個よりも少ないアミノ酸しか含まない。
【0163】
結合部分をコードしているポリヌクレオチドのライブラリは、目的の活性を有する結合部分を同定するための任意の適切な技術を用いてスクリーニングすることができる。例えば、目的の標的分子に結合する結合部分を同定するために、ポリヌクレオチドのライブラリを、ポリヌクレオチドによってコードされている結合部分ポリペプチドの発現を可能にする条件下でインキュベーションし、標的分子に対するポリペプチドの結合を評価する。典型的には、結合はin vitroで、または全細胞アッセイを用いて評価する。
【0164】
目的の活性を有する結合部分についてライブラリをスクリーニングするための適切な技術には、ファージディスプレイおよびリボソームディスプレイならびにレトロウイルスベクターなどのウイルスベクターの使用が含まれる。
【0165】
スクリーニングで同定された結合部分の配列は、標準のDNA配列決定技術を用いて便利に決定することができる。
【0166】
結合部分の診断的/治療的使用
本発明のスクリーニング方法で同定されたものを含めた本発明の結合部分は、目的の標的分子に対するその特異的結合に基づいて、診断/治療方法において用い得る。このような使用は、抗体およびその断片に関して既に知られている大量の診断的/治療的用途に類似する。例えば、本発明の結合部分を用いて生体試料中に目的の分子が存在するか存在しないかを検出し得る。
【0167】
診断目的のためには、結合試薬をディップスティック、マイクロタイタープレートまたはチップなどの固相に固定することが好都合であり得る。
【0168】
上述のように、本発明の結合部分を診断的に用いる場合、これは典型的には、in vitroまたはin vivoにおける結合事象の容易な検出を可能にする検出可能な標識などの診断試薬に連結されている。適切な標識には、放射性同位体、色素マーカーまたは標的分子のin vivo検出および/もしくは位置決定のための他のイメージング試薬が含まれる。
【0169】
結合部分を治療的にも用い得る。例えば、サイトカイン受容体などの細胞外受容体に結合するリガンドを標的とし、その結果このようなリガンドの効果を拮抗するために結合部分を用いてもよい。サイトカインおよびその受容体は広範な疾患プロセスに関与しており、その結果、CBDに基づいて特異的に設計した結合部分を用いてその活性を変調することには明らかな臨床的な意味がある。
【0170】
さらに、本発明の結合部分は、抗体と同様の様式で、結合部分が特異的に結合する腫瘍細胞上に特異的に存在する細胞表面分子に結合することに基づいて、腫瘍細胞などの目的細胞を薬理活性を有する物質の標的とするために用い得る。
【0171】
投与
本発明のスクリーニング方法によって同定された結合部分を含めた本発明の結合部分は、様々な構成要素と組み合わせて本発明の組成物を生成することが好ましい場合がある。好ましくは、組成物を製薬上許容される担体、アジュバントまたは希釈剤と組み合わせて薬剤組成物(ヒトまたは動物で使用し得る)を生成する。適切な担体および希釈剤には、等張生理食塩水、例えばリン酸緩衝生理食塩水が含まれる。本発明の組成物は直接注射によって投与し得る。組成物は、非経口投与、筋肉内投与、静脈内投与、皮下投与、眼内投与、経口投与または経皮投与用に配合し得る。典型的には、各タンパク質を体重1kgあたり0.01〜30mg、好ましくは体重1kgあたり0.1〜10mg、より好ましくは体重1kgあたり0.1〜1mgの用量で投与し得る。
【0172】
結合部分をコードしているポリヌクレオチド/ベクターは、裸の核酸構築体として直接投与し得る。ポリヌクレオチド/ベクターを裸の核酸として投与する場合は、投与する核酸の量は、典型的には1μg〜10mg、好ましくは100μg〜1mgの範囲であり得る。
【0173】
哺乳動物細胞による裸の核酸構築体の取り込みは、いくつかの知られている形質移入技術、例えば形質移入剤の使用を含めたものによって亢進される。このような薬剤の例には、カチオン剤(例えばリン酸カルシウムおよびDEAE-デキストラン)ならびにリポフェクション剤(例えばlipofectam(商標)およびtransfectam(商標))が含まれる。典型的には、核酸構築体を形質移入剤と混合して組成物を生成する。
【0174】
好ましくは、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを製薬上許容される担体または希釈剤と合わせて薬剤組成物を生成する。適切な担体および希釈剤には、等張生理食塩水、例えばリン酸緩衝生理食塩水が含まれる。組成物は、非経口投与、筋肉内投与、静脈内投与、皮下投与、経口投与、眼内投与または経皮投与用に配合し得る。
【0175】
当業者は特定の患者および条件における最適な投与経路および用量を容易に決定できるので、記載した投与経路および用量は手引としてのみ意図する。
【0176】
上記の個々のセクションで言及した本発明の様々な特徴および実施形態は、必要に応じて、必要な変更を加えて他のセクションにも適用される。したがって、1つのセクションで明記した特徴は、必要に応じて他のセクションで明記した特徴と組み合わせてもよい。
【0177】
(実施例)
(実施例1)
変更された結合特異性を有する修飾されたIL-6RのCBDの設計
ブルックヘブン(Brookhaven)タンパク質データバンクのPSI_BLAST検索により、ヒトIL-6受容体のサイトカイン結合モジュールに密に関連しているいくつかの構造が明らかとなった。これらのうち、ヒト成長ホルモンに結合しているヒトプロラクチン受容体(PRLR)が、インターロイキン-6に対して重複する特異性を有さない最も密に関連した構造であった。プロラクチン受容体によるヒト成長ホルモンの結合は、IL-6の結合に用いられるIL-6Rのサイトカイン結合モジュールと同じループフレームワークによって媒介される。
【0178】
配列アラインメント
IL-6RおよびPRLRの配列は、MODELLER6v2のMALIGN3D機能を用いて、その三次元構造に従ってアラインメントを行った。
【0179】
ループの定義
VMDを用いてヒト成長ホルモンと接触しているプロラクチン受容体の残基を選択した。VMDとは、大分子を見ることおよび操作することを可能にする、イリノイ大学で開発された可視化パッケージである(Schwieters(2001)、Journal of Magnetic Resonance、149:239-244)。これらの残基および接触残基の正しい側鎖配向を支持する残基を含むようにループ領域を選択した。
【0180】
相同性モデリング
IL-6Rのフレームワーク残基およびプロラクチン受容体からのループ残基を含む、CBD結合部分タンパク質の配列を作製した。MODELLER6v2を使用し、IL-6Rフレームワーク残基およびプロラクチン受容体ループ残基を鋳型として用いて、最初の一連のCBD結合部分相同性モデルを作製した(図7参照)。モデルの品質はPROCHECKを用いて評価した。その後、MODELLER6v2を用いてループ領域を最初から洗練した。その後、最終モデルのエネルギーを最小化し、CNSを用いて安定性について評価した(Brunger AT他、1998、Acta Crystallog、D54:905-921頁)。
【0181】
(実施例2)
IL-6RのCBD(結合部分)の生成
PCRによってヒトIL-6RのCBDドメイン(D2およびD3ドメイン)が増幅されるようにオリゴヌクレオチドプライマーを設計し、この反応の鋳型としてIL-6RのDNAを用いた。正しい大きさのこれらのPCR断片およびDNA配列をpPOW5細菌発現ベクター内にクローニングした。8種の異なる細菌細胞株を用いてタンパク質の発現を行った。1つの特定の株を選択し、さらに安定性および特徴づけの研究を行った。
【0182】
(実施例3)
プロラクチン結合特異性を導入するためのIL-6RのCBDの修飾
別の遺伝子構築体では、プロラクチン結合特異性を有する試薬を生成するために、プロラクチン受容体の表面ループをIL-6Rフレームワーク上に移植した。移植プロセスは、IL-6Rの7つの溶媒に曝された表面ループL1からL7をプロラクチン受容体からの相当するループ残基で置き換えることで、修飾されたCBDの結合特異性をIL-6からプロラクチンへと有効に変更することを含んでいた。ループの移植をもたらすことができる方法はいくつか存在し本実施例では、移植プロセスは、コードされた表面ループL1からL7がプロラクチン受容体のものであるように、修飾されたIL-6RのCBDをコードしている遺伝子を再設計することを含んでいた。その後、修飾されたCBDの遺伝子全体をコードしている二本鎖DNAのセクション内に、重複する「レンガ積み」様式でハイブリダイゼーションおよびライゲーションによって組み立てた典型的に80塩基の長さの合成オリゴヌクレオチドを用いて、遺伝子組立てプロセスを使用して、修飾されたCBDの遺伝子を構築した。完全に組み立てられた遺伝子を増幅するための最終ステップとしてPCRおよびオリゴヌクレオチドプライマーを用いた。PCR産物のDNA配列を確認し、その後、修飾されたCBDの遺伝子をサブクローニングして細菌中で発現させた。
【0183】
(実施例4)
修飾されたドメイン内ジスルフィド結合を有する新規結合部分の生成
本発明者らは、修飾されたドメイン内ジスルフィド結合を有する結合部分を生成した。本発明者らは、CBDフレームワーク上にCys174からSerへの突然変異を導入するためにPCRを用いた。D2中のこのCys174は通常、IL-6Rの第1のドメイン(一般にIL-6RのD1ドメインと呼ばれる非FnIIIドメイン)中の別のシステインとジスルフィド結合を形成し、D2およびD3のCBDの会合に関与しない。次いで、Cys174→Serの突然変異体を細菌中で発現させた。
【0184】
(実施例5)
D3ドメイン中にシステイン残基を有さない新規結合部分の生成。
本発明者らは、別のCBDフレームワークの突然変異、Cys258からセリンをドメインD3に導入した。これは埋もれたシステイン残基であり、CBDフレームワークの発現および安定性を高める試みとして、ならびにD3ドメインがこのシステイン残基を必要とせずに折り畳まれることができるかどうかを確認するために、突然変異させた。本発明者らは、このD3突然変異を含むCBDを細菌中で発現させた。
【0185】
D3ライブラリから単離したクローンもこのCys258→Serのフレームワーク突然変異を含んでいた(実施例7および8参照)。
【0186】
(実施例6)
溶媒に曝された領域中のシステイン残基が除去された(置き換えられた)新規結合部分の生成。
本発明者らは、IL-6Rフレームワーク上へのPRLRループ移植片を細菌中で発現させた場合、タンパク質の凝集がより少なかったことに注目した。IL-6Rフレームワーク/ループの接合部中には、ジスルフィド結合の形成に関与していない溶媒に曝されたCys192が存在し、これはPRLRループ中の相当する位置ではシステイン残基ではない。このフレームワーク/ループ接合部に位置する別の突然変異、Cys192→SerをIL-6RのD2ドメイン内に設計した。これはIL-6Rフレームワーク中の溶媒に曝されたシステインであり、この突然変異によりIL-6RフレームワークCBDの溶解性が改善された。
【0187】
(実施例7)
CBD骨格に基づいた新規結合部分のライブラリのレパートリーの生成
溶媒に曝された表面ループ中に突然変異を有するように、IL-6RのCBDを含む遺伝子ライブラリを構築した。実施例3に記載の重複合成オリゴヌクレオチドおよび遺伝子組立て技術を用いて遺伝子のレパートリーを構築することによって、CBDのD3ドメイン中でループL5、L6およびL7を突然変異させた。重複オリゴヌクレオチドは、IL-6Rの隣接するフレームワーク残基、次いでループ残基中の遺伝的多様性、次いでさらなるフレームワーク残基を含んでいた。ループ中のアミノ酸残基をコードしている遺伝的多様性は、ストップコドンの可能性を低減するため、および各ループのそれぞれの位置において20種のアミノ酸すべてをコードしているように偏らせた。この多様性は縮重オリゴヌクレオチドの合成中に、一度に1つの位置に1つのヌクレオチドを付加させる代わりに、4つのヌクレオチド(G、A、TおよびC)すべてを1つの位置に付加させることによって達成した。ストップコドンのトリプレットは、通常Aで終わり、例はTAAである。トリプレットの3つめの位置にG、TおよびCのみを許容することによって、これが縮重オリゴヌクレオチド中で起こる可能性が低減した。
【0188】
遺伝子的に多様なライブラリを作製するために、2つの異なる長さのオリゴヌクレオチドを用いた。ループ領域にわたるオリゴヌクレオチドの長さは約80塩基であった(上の鎖)。「レンガを固める」逆オリゴヌクレオチドは短く、フレームワーク残基のみにわたり、長さが約55塩基であった。下の鎖上のギャップを埋めるためにPCRを用いた。ファージミドベクター中のクローニングした遺伝子のレパートリーを細菌コンピテント細胞中に形質転換させた。間隔が十分に空けられた単離されたコロニーをいくつか拾い、液体培地中で増殖させ、これからDNAを抽出して配列決定を行った。これらの単離したクローンのうちの1つのDNA配列が、ループ領域およびCBDフレームワーク中のどちらにおいても突然変異を示した。
【0189】
IL-6RのCBDのライブラリフレームワークは、システイン残基(Cys174、Cysr192およびCys258)がセリン残基で置き換えられた3つの突然変異を含んでいた。所望のフレームワーク変化に加えて、DNA配列ではループ6中に変化が示され、そのループ中の残基が他の残基で置き換えられていた。次いでこのクローンを細菌中で発現させた。
【0190】
IL-6RのD3の部分DNA配列を以下に配列(a)として示す(ループ6および7を太字かつ四角で囲み、Cys258を太字で示した)。ループ6の変更およびCys258での変更(Serに突然変異)を示すD3ライブラリクローンの対応する部分DNA配列を配列(b)として示す。
【0191】
【数1】

【0192】
(実施例8)
複数ループの突然変異を有する新規結合部分の生成
実施例7に記載したD3ライブラリから単離した別のクローンは、D3ドメインのループ6およびループ7のどちらの残基においても変更を示した。やはりCys258でSerへのCBDフレームワーク突然変異を含むこのクローンも、細菌中で発現させた。
【0193】
IL-6RのD3の部分DNA配列を以下に配列(c)として示す(ループ6および7を太字かつ四角で囲み、Cys258を太字で示した)。ループ6および7の変更ならびにCys258での変更(Serに突然変異)を示すD3ライブラリクローンの対応する部分DNA配列を配列(d)として示す。
【0194】
【数2】

【0195】
実施例1から8は、発現および折畳みを改善するために特異的な点修飾を行うことによって、IL-6Rから機能的CBDの骨格を作製することができることを実証している。これは、第2のドメイン中のCys258の突然変異を伴ってまたは伴わない、第1のドメイン中のCys174→SerおよびCys192→Serの突然変異によって成された。
【0196】
IL-6Rのループを含む生成された第1の骨格では、発現された骨格はクエン酸緩衝液を用いた低pH抽出によって単離した。上清をHPLCによって精製し、単量体および二量体のピークを個別に採取した。単量体および二量体の保持時間は、これら分子の大きさから予測された保持時間と矛盾がなかった。それぞれのピークを精製すると、リガンドを用いてELISAアッセイおよびBIAcoreマイクロアレイを使用して測定された機能的活性を有していることが判明した。それぞれバイオチップのマイクロタイタープレートにIL-6が結合していた。会合定数および解離定数の結果は、受容体およびそのリガンドの公開された速度を示していた。さらに、タンパク質のピークはプロラクチンのリガンドと結合せず、受容体の骨格がそのリガンドに対する特異性と保持したことを実証している。
【0197】
また、実施例1から7は、IL-6Rに基づいて骨格ライブラリを生成する方法も実証している。これは、PCRおよび縮重コドンの使用によって、ループ領域中にランダムアミノ酸を導入することによって達成した。レパートリーは、pHFAsacIIベクターを用いたファージディスプレイライブラリの構築によってディスプレイを行った。個々のランダムクローンを単離した。標準のアミンカップリング化学を用いてヒト標的抗原を磁気ビーズの表面上に固定した。3回のファージパンニング(panning)を行い、各回からの結合剤を単離したのち、ELISAおよびBIAcore技術を用いてファージのプールを機能的活性についてアッセイを行った。また、DNA配列を決定するために各単離体の配列決定も行った。
【0198】
単純な骨格を生成したので、ループの移植を行い、IL-6Rのループをプロラクチン受容体のループで置き換えた。ループの移植が成功したかどうかはHPLCによって確認し、ここでは単量体および二量体のタンパク質ピークも示され、これらを精製すると、機能的活性を含むことが見出された。活性はELISAアッセイおよびBIAcoreマイクロアレイを用いて測定し、IL-6のリガンドがバイオチップのマイクロタイタープレートに結合していた。タンパク質ピークは、予測のとおりプロラクチンおよびラクトゲンに結合することが見出された。さらに、これらはIL-6とも結合した。しかし、修飾されたタンパク質はヒト成長ホルモンには結合しなかった。この結果は、ループの移植によって結合プロフィールの変更を成すことができることを実証している。
【0199】
(実施例9)
プロラクチンフレームワークの設計
ヒトプロラクチン受容体のCBDは以下のアミノ酸配列を有する:
【0200】
【数3】

【0201】
第1のFnIII様ドメインはアミノ酸Glu24からVal125によって定義されており、第2のFnIII様ドメインはGln126からAsp229によって定義されている。ループL1からL7は、上記配列上の四角で囲んだ残基として示す。
【0202】
修飾
一部の修飾を除いて、上記アミノ酸の記載に基づいて合成遺伝子を設計した。分泌を改善するために、遺伝子構築体にいくつかの変更を行った。Lys30をGluに変更した。N末端の最初の10個のアミノ酸内のリシンまたはアルギニンの帯電残基は、選ばれた発現系においてpelB分泌シグナルが作動することを妨げる。タンパク質分解的切断部位がもたらされる可能性を取り除き、制限酵素部位および柔軟な置換をもたらすために、Arg143Lys144をGlySerに変更した。
【0203】
突然変異誘発用に好都合な制限部位および高レベルの発現用の細菌に好ましいコドン使用を含むように遺伝子を操作した。具体的には、ロイシンおよびプロリン残基を変更した。
【0204】
骨格ライブラリを提供するために、任意のループ内の任意のアミノ酸を、実施例7に記載のように縮重オリゴヌクレオチドを用いて多様な組の新規結合部分を作製することによって修飾し得る。この場合、ライブラリは、広範な様々のアミノ酸ループの組成を有するプロラクチン骨格からなる。
【0205】
このライブラリからクローン1つずつ単離し、そのDNAの配列決定を行って、ライブラリの多様性を確認し得る。
【0206】
(実施例10)
IL-11R骨格の設計。
IL-11RのCBDは以下のアミノ酸配列を有する:
【0207】
【数4】

【0208】
第1のFnIII様ドメインはアミノ酸112〜214によって定義されており、第2のFnIII様ドメインはアミノ酸218〜318によって定義されている。ループL1からL7は、上記配列上の四角で囲んだ残基として示す。
【0209】
修飾。
IL-11Rのフレームワークでは、分泌シグナル、例えばPelBを用いた細菌発現系中での発現を改善するために、帯電したArg115をGluで置き換えてもよい。
【0210】
(実施例11)
複数ドメイン骨格。
プロラクチンに由来する第1のFnIII様ドメインおよびヒト顆粒球コロニー刺激因子受容体(G-CSFR)に由来する第2のFnIII様ドメインからなる骨格を構築し得る。
【0211】
プロラクチン受容体のCBDに由来する第1のFnIII様ドメインは、実施例9に記載のように残基24〜125[これは正しいのか-実施例9の質問を参照]によって定義される。
【0212】
GSCFRのCBDは以下のアミノ酸配列を有する:
【0213】
【数5】

【0214】
GCSFRのCBDのループL1からL7は、上記配列上の四角で囲んだ残基として示す。GCSFRのCBDの第2の領域は,残基237〜330によって定義される。
【0215】
修飾。
G-CSFRのフレームワークには、2つのジスルフィド結合を形成する4つの保存残基に加えて、いくつかのさらなるシステイン残基が存在する。したがって、可溶性タンパク質の発現をもたらすためにCys186、Cys218、Cys248、Cys252およびCys295のうちの1つまたは複数を置き換えることが必要な可能性がある。プロラクチン受容体の第1のドメインでは、上記実施例9中で記載したようにLys30をGluに変更することができる。
【0216】
プロラクチン受容体の第1のドメインおよびGCSFRの第2のドメインの合成遺伝子は、以前の実施例と同様に、好都合な制限部位および好ましいコドンを用いて設計することができる。その後、遺伝子をpHFAsacIIファージミドベクターまたはリボソームディスプレイベクターへと組み立てることができる。ヘルパーファージを用いてファージミドで形質転換させた細菌細胞ファージを生成して精製することができる。骨格のディスプレイが成功したかどうかは、特異的な標的を用いたELISAによって確認することができる。
【0217】
当業者には明らかなように、本明細書中に記載の骨格構造に他の修飾も行うことができる。例えば、余分なアミノ酸を挿入することによってGCSFRのループL3を伸長させて(すなわち長くして)、「突出したフィンガーループ」を形成することができる。例えば、事前に決定された配列として(例えばAYPPY)、または15量体のポリヌクレオチドのランダム混合物によってコードされているランダムな複数の配列のどちらかとして、5個の追加の残基を挿入することができる。また、潜在的に小さいヒンジ面積をもたらすためにループ3を短くするか、それ自体を欠失させることができ、これにより、より拘束された、表面が曝された骨格がもたらされる。同様に、上述のループ4に類似した設計を用いて、CBD骨格中の任意の他のループを個別または集団的に修飾することができる。
【0218】
他の潜在的な修飾には、ヒンジ領域またはドメイン界面などの、ループ領域に特に関連しない領域にアミノ酸を挿入することが含まれる。
【0219】
(実施例12)
多価骨格および多特異性骨格。
本発明の2つ修飾されたサイトカイン結合ドメインの遺伝子結合または化学結合のどちらかによって、多価骨格および多特異性骨格を形成することが可能である。どちらの結合様式も、共有結合もしくは非共有結合のどちらかまたは共有結合および非共有結合の組合せをもたらし、2つ以上のサイトカイン結合ドメインの会合を生じることができる。当業者には、単一のサイトカイン結合ドメイン、または多価もしくは多特異性の様式が、遺伝子的あるいは化学的に、複数の分子または様々な表面に連結されていることができることが明らかであろう。
【0220】
上述の明細書中で言及したすべての出版物は、本明細書中に参考として組み込まれている。本発明の記載した方法および系の様々な改変ならびに変形が、本発明の範囲から逸脱せずに当業者に明らかであろう。本発明を具体的な好ましい実施形態と関連させて記載したが、特許請求の範囲に記載した本発明は、このような具体的な実施形態に過度に限定されないことを理解されたい。実際、分子生物学または関連分野の技術者に容易に明らかな、本発明を実施する形態の様々な改変が、本発明の範囲内にあることを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0221】
【図1】(a)CBDの主鎖のコイルを示す図であり、IL-6受容体(IL-6R)のCBDによって例示した(D2はN末端ドメインを表し、D3はC末端ドメインを表す)。L1からL4およびL5からL7と印したループは、標的巨大分子に結合することができるCBDのそれぞれN末端およびC末端ドメインのループを表す:(b)分子を90°回転して7つのループを上向きにした図である:(c)免疫グロブリンのFvドメインの重鎖および軽鎖の可変ドメインの主鎖のコイルを示す図であり、Fvドメインのそれぞれの抗原結合CDRをループL1、L2、L3、H1、H2として示したNC10抗ノイラミニダーゼのFvドメインによって例示した:(d)分子を90°回転してループを上向きにした図である。 どちらの分子も正しい縮尺で描かれており、Fvの抗原結合部位の分布はほぼ等方性であるが、CBDのループは長細く、抗体分子の潜在的な結合部位と比較した場合に異なる種類の表面トポロジーをもたらすことが見られる。
【図1A】本発明に係る結合部分を示す模式図である。CBD様の骨格構造は第1および第2のFnIII様ドメインからなる(FnIII1およびFnIII2と示した)。それぞれのFnIII様ドメイン上に存在する溶媒に曝されたループは、標的分子と会合することができる結合領域を特徴づける。結合領域は、両ドメインによって提供される溶媒に曝されたループによって本質的に特徴づけられる。
【図2】(a)IL-6RのCBDのリボンを示す図であり、2つのFnIIIドメインのβシート配置、およびサイトカイン結合ループL1からL7を示す。(b)(a)と同じであるが、90°回転してループを上向きにした図である。
【図3】(a)IL-6R細胞外ドメインのアミノ酸配列を示す図であり、ドメインD2(残基92〜195)およびドメインD3(残基196〜297)を含むCBDを示す。βシート構造の位置は#で示した。サイトカイン結合領域中のループの位置は*で示し、L1からL7と印した。Pro94、Pro95、Cys102、Cys103、Trp115、Cys146、Cys157、Pro199、Pro200、Trp219、Arg274、Trp284、Ser285、Trp287および Ser288残基はすべて、既知のCBD中で保存されている。Leu100、Leu108、Val111、Ala127、Leu129、Val131、Leu159、Tyr169、Val171、Met173、Val175、Phe189、Gly191、Ile194、Leu195、Pro197、Ile203、Val205、Leu215、Val217、Leu232、Phe234、Leu236、Tyr238、Phe246、Trp249、Ile260、Ala263、Val271、Leu273、およびGlu286残基は、既知のCBD中で主に保存されている疎水性残基である。Pro98、Pro117、Trp225、Cys258、His269、Ala291およびGly293は、大多数の場合、すべての既知のCBD中で保存されている残基である。
【図3A】図3(b)は、IL-6R、IL-11R、PRLRおよびGCSR由来のCBDの配列アラインメントを示す。ループL1からL7をボックスで囲んだ。
【図4】ドメインD3(下の部分-シェード1)およびドメインD2(上の部分-シェード2)を有するIL-6RのCBDを示す図であり、D3(シェード3)およびD2(シェード4)のループ残基を示す。シェード1〜4は濃さが増していく。(a)および(c)はサイトカイン結合領域のループL1からL7のCPKおよびループを示す。(b)および(d)は(a)および(c)と同じであるが、90°回転してループを上向きにした図である。
【図5】77個の既知の遺伝子のCBDの配列を比較した図である。図5Aではループ1〜4を含む「第1の」FnIIIドメイン中の配列を比較し、図5Bではループ5〜7を含む「第2の」FnIIIドメイン中の配列を比較する。IL-6受容体について実施例3中に記載した保存残基は、その配列相同性に応じてアラインメントを行った。例えば、疎水性残基、システイン残基(C)、および場合によっては隣り合った2つのプロリン(PP)のアラインメントを行う。7つの結合ループの位置は双方向矢印によって示した。
【図6】IL-6RのCBDの主鎖を示す図であり、サイトカイン結合ループL1からL7の色を濃くした。(a)および(b)は、知られているすべてのCBDで保存されている残基のCPKを示す。(c)および(d)は、ほぼ確実に保存されており、主に疎水性であるすべての残基のCPKを含む。
【図7】骨格の画像を示す図であり、第1にIL-6R、プロラクチン受容体および新規骨格の構造的類似性を実証しており、第2に中央の画像に示すようにそれら3つすべての密接な構造アラインメントを表している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイトカイン結合ドメインの少なくとも1つの特性が変更されるように第1のFnIII様ドメインおよび第2のFnIII様ドメインからなる細胞外サイトカイン結合ドメインを修飾して結合部分を生成することを含む、結合部分の生成方法。
【請求項2】
前記第1および第2のFnIII様ドメインが単一の源からの前記細胞外サイトカイン結合ドメインに由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1および第2のFnIII様ドメインが個別の源からの前記細胞外サイトカイン結合ドメインに由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1および/または第2のFnIII様ドメインがIL-2受容体、IL-3受容体、IL-4受容体、IL-5受容体、IL-6受容体、IL-7受容体、IL-9受容体、IL-11受容体、IL-12受容体、IL-13受容体、IL-15受容体およびIL-21受容体、G-CSF受容体、GM-CSF受容体、LIF受容体、オンコスタチンM受容体、カルジオトロフィンCT-1受容体、毛様体神経栄養因子(CNTF)受容体、プロラクチン受容体、レプチン受容体、エリスロポエチン受容体、成長ホルモン受容体、サイトカイン受容体様因子1、クラス1サイトカイン受容体、胸腺間質リンパ球増殖タンパク質受容体またはgp130から選択される受容体の細胞外ドメインに由来する、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記サイトカイン結合ドメインの少なくとも1つのループが修飾されている、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ループが図5に示すループL1からL7によって定義される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ループの大きさおよび/または面積が、修飾されていないサイトカイン結合ドメイン中の対応するループと比較して改変されている、請求項5または請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ループの大きさを少なくとも2個のアミノ酸残基によって増加または減少させる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ループの大きさを少なくとも10個のアミノ酸残基によって増加させる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ループの大きさを20個までのアミノ酸残基によって増加させる、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記2つのFnIII様ドメイン間のヒンジ領域が修飾されている、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記サイトカイン結合ドメインのFnIII様ドメイン結合界面が修飾されている、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記サイトカイン結合ドメイン中の1つまたは複数のドメイン内ジスルフィド結合を形成するシステイン残基が修飾されている、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記結合部分の溶解性が改善されている、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記サイトカイン結合ドメイン内ジスルフィド結合を形成するシステイン残基を取り除くかつ/または置き換えることによって前記結合部分の溶解性を改善する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ジスルフィド結合を形成するシステイン残基を異なる残基によって置き換える、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ジスルフィド結合を形成するシステイン残基をアラニンまたはセリンによって置き換える、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記サイトカイン結合ドメインの安定性が改善されている、請求項1から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記修飾されていないサイトカイン結合ドメインの少なくとも1つの天然リガンドに対する、前記修飾されたサイトカイン結合ドメインの親和性が、低減または消滅している、請求項1から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記修飾されたサイトカイン結合ドメインの結合特異性が前記修飾されていないサイトカイン結合ドメインの結合特異性とは異なる、請求項1から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記修飾されていないサイトカイン結合ドメインが第1のリガンドに対する特異性を有する第1の受容体の細胞外ドメインに由来し、前記修飾が、前記修飾されていないサイトカイン結合ドメインの1つまたは複数のループを第2のリガンドに対する特異性を有する第2の受容体の対応するループで置き換えて、前記修飾されたサイトカイン結合ドメインが前記第2のリガンドに対して特異性を有するようにすることを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の受容体がIL6受容体であり、前記第2の受容体がプロラクチン受容体またはLIF受容体である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の受容体がIL6受容体であり、前記第2の受容体がオンコスタチンM受容体である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記修飾された結合部分を1つまたは複数の分子に連結させることをさらに含む、請求項1から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記修飾された結合部分が遺伝子リンカーまたは化学的リンカーを介して1つまたは複数の分子に連結されている、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記修飾された結合部分が共有結合または非共有結合によって1つまたは複数の分子に連結されている、請求項24または請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記修飾された結合部分が診断試薬または治療剤に連結されている請求項24から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記診断試薬が検出可能な標識である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記治療剤が細胞毒性を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記治療剤が免疫調節性である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
請求項1から30のいずれか一項に記載の方法によって生成した、修飾された結合部分。
【請求項32】
第1のFnIII様ドメインおよび第2のFnIII様ドメインからなる細胞外サイトカイン結合ドメインを含む結合部分であって、前記サイトカイン結合ドメインが前記サイトカイン結合ドメインの少なくとも1つの特性を変更する修飾を有する結合部分。
【請求項33】
前記第1および第2のFnIII様ドメインが単一の源からの前記細胞外サイトカイン結合ドメインに由来する、請求項32に記載の結合部分。
【請求項34】
前記第1および第2のFnIII様ドメインが個別の源からの前記細胞外サイトカイン結合ドメインに由来する、請求項33に記載の結合部分。
【請求項35】
前記第1および/または第2のFnIII様ドメインがIL-2受容体、IL-3受容体、IL-4受容体、IL-5受容体、IL-6受容体、IL-7受容体、IL-9受容体、IL-11受容体、IL-12受容体、IL-13受容体、IL-15受容体およびIL-21受容体、G-CSF受容体、GM-CSF受容体、LIF受容体、オンコスタチンM受容体、カルジオトロフィンCT-1受容体、毛様体神経栄養因子(CNTF)受容体、プロラクチン受容体、レプチン受容体、エリスロポエチン受容体、成長ホルモン受容体、サイトカイン受容体様因子1、クラス1サイトカイン受容体、胸腺間質リンパ球増殖タンパク質受容体またはgp130から選択される受容体の細胞外ドメインに由来する、請求項32から34のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項36】
前記サイトカイン結合ドメインのループが修飾されている、請求項32から35のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項37】
前記ループが図5に示すループL1からL7によって定義される、請求項36に記載の結合部分。
【請求項38】
前記ループ大きさおよび/または面積が、前記修飾されていないサイトカイン結合ドメイン中の対応するループと比較して改変されている、請求項36または請求項37に記載の結合部分。
【請求項39】
前記ループの大きさを少なくとも2個のアミノ酸残基によって増加または減少させる、請求項38に記載の結合部分。
【請求項40】
前記ループの大きさを少なくとも10個のアミノ酸残基によって増加させる、請求項39に記載の結合部分。
【請求項41】
前記ループの大きさを20個までのアミノ酸残基によって増加させる、請求項39または請求項40に記載の結合部分。
【請求項42】
前記FnIII様ドメイン間のヒンジ領域が修飾されている、請求項32から41のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項43】
前記FnIII様ドメインの結合界面が修飾されている、請求項32から42のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項44】
前記サイトカイン結合ドメイン中の1つまたは複数のドメイン内ジスルフィド結合を形成するシステイン残基が修飾されている、請求項32から43のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項45】
修飾された結合部分の溶解性が改善されている、請求項32から44のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項46】
前記サイトカイン結合ドメイン内ジスルフィド結合を形成するシステイン残基を取り除くかつ/または置き換えることによって前記結合部分の溶解性を改善する、請求項45に記載の結合部分。
【請求項47】
ジスルフィド結合を形成するシステイン残基を異なる残基によって置き換える、請求項44から46のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項48】
ジスルフィド結合を形成するシステイン残基をアラニンまたはセリンによって置き換える、請求項47に記載の結合部分。
【請求項49】
前記サイトカイン結合ドメインの安定性が改善されている、請求項32から48のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項50】
前記修飾されていないサイトカイン結合ドメインの少なくとも1つの天然リガンドに対する、前記修飾されたサイトカイン結合ドメインの親和性が、低減または消滅している、請求項32から47のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項51】
前記修飾されたサイトカイン結合ドメインの結合特異性が前記修飾されていないサイトカイン結合ドメインの結合特異性とは異なる、請求項32から50のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項52】
前記修飾されていないサイトカイン結合ドメインが第1のリガンドに対する特異性を有する第1の受容体の細胞外ドメインに由来し、前記修飾されていないサイトカイン結合ドメインの1つまたは複数のループを第2のリガンドに対する特異性を有する第2の受容体の対応するループで置き換えて、前記修飾されたサイトカイン結合ドメインが前記第2のリガンドに対して特異性を有するようにする、請求項51に記載の結合部分。
【請求項53】
前記第1の受容体がIL-6受容体であり、前記第2の受容体がプロラクチン受容体またはLIF受容体である、請求項52に記載の結合部分。
【請求項54】
前記第1の受容体がIL-6受容体であり、前記第2の受容体がオンコスタチンM受容体である、請求項52に記載の結合部分。
【請求項55】
1つまたは複数の分子に連結された、請求項31から54のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項56】
遺伝子リンカーまたは化学的リンカーを介して1つまたは複数の分子に連結されている、請求項55に記載の結合部分。
【請求項57】
共有結合または非共有結合によって1つまたは複数の分子に連結されている、請求項55または請求項56に記載の結合部分。
【請求項58】
診断試薬または治療剤に連結されている、請求項55から57のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項59】
前記診断試薬が検出可能な標識である、請求項58に記載の結合部分。
【請求項60】
前記治療剤が細胞毒性を有する、請求項58に記載の結合部分。
【請求項61】
前記治療剤が免疫調節性である、請求項58に記載の結合部分。
【請求項62】
請求項31から61のいずれか一項に記載の2つ以上の結合部分を含む多価試薬または多特異性試薬。
【請求項63】
固体担体上に固定した、もしくはバイオセンサー表面上にカップリングした、請求項31から61のいずれか一項に記載の結合部分、多価試薬または多特異性試薬。
【請求項64】
請求項31から62の一項に記載の結合部分、多価試薬または多特異性試薬をコードしているポリヌクレオチド。
【請求項65】
請求項64に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項66】
請求項65に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項67】
請求項31から62のいずれか一項に記載の結合部分、多価試薬または多特異性試薬および製薬上許容される担体または希釈剤を含む薬剤組成物。
【請求項68】
対象に請求項31から62のいずれか一項に記載の結合部分、多価試薬または多特異性試薬を投与することを含む、対象における病的状態を治療する方法。
【請求項69】
(i)サイトカイン結合ドメインを含む結合部分をコードしている複数のポリヌクレオチドであって、ポリヌクレオチドが前記サイトカイン結合ドメイン中の1つまたは複数の修飾を含むポリヌクレオチドを提供するステップと;
(ii)前記ポリヌクレオチドによってコードされている前記結合部分を発現させるステップと;
(iii)前記標的分子に対して親和性を有する1つまたは複数の結合部分を選択するステップと
を含む、標的分子に対して親和性を有する結合部分の選択方法。
【請求項70】
前記修飾が前記サイトカイン結合ドメインのループ内にある、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記複数のヌクレオチドを突然変異誘発に供する、請求項69または請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記突然変異誘発が部位特異的突然変異誘発である、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記突然変異誘発がランダム突然変異誘発である、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記標的分子がサイトカイン受容体リガンドである、請求項69から72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
サイトカイン結合ドメインを含む結合部分をコードしている複数のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドライブラリであって、ポリヌクレオチドが前記サイトカインを持つドメイン中の1つまたは複数の修飾を含む、ポリヌクレオチドライブラリ。
【請求項76】
a)サイトカイン結合ドメインをコードしている第1の骨格配列と;
b)ペプチドをコードしており、前記第1の骨格配列の領域中に位置する部位に挿入された第2の配列であって、前記ペプチドはループとして表示される第2の配列と
をコードしている核酸配列。
【請求項77】
前記第2の配列が前記ループをコードしている前記第1の骨格配列の領域を実質的に置き換える、請求項76に記載の核酸配列。
【請求項78】
前記サイトカイン結合ドメインがIL-2受容体、IL-3受容体、IL-4受容体、IL-5受容体、IL-6受容体、IL-7受容体、IL-9受容体、IL-11受容体、IL-12受容体、IL-13受容体、1L-15受容体およびIL-21受容体、G-CSF受容体、GM-CSF受容体、LIF受容体、オンコスタチンM受容体、カルジオトロフィンCT-1受容体、毛様体神経栄養因子(CNTF)受容体、プロラクチン受容体、レプチン受容体、エリスロポエチン受容体、成長ホルモン受容体、サイトカイン受容体様因子1、クラス1サイトカイン受容体、胸腺間質リンパ球増殖タンパク質受容体またはgp130から選択される受容体の細胞外ドメインに由来する、請求項76または請求項77に記載の核酸配列。
【請求項79】
複数の部位に挿入された複数の第2の配列を含む、請求項76から78のいずれか一項に記載の核酸配列。
【請求項80】
前記ペプチドのうちの1つまたは複数が前記骨格配列のものとは異なるサイトカイン結合領域に由来する、請求項76から79のいずれか一項に記載の核酸配列。
【請求項81】
請求項76から80のいずれか一項に記載の核酸配列を含む発現ベクター。
【請求項82】
請求項81に記載の複数の発現ベクターを含むサイトカイン結合ドメインディスプレイライブラリ。
【請求項83】
a)サイトカイン結合ドメインをコードしている第1の核酸配列;
b)前記第1の核酸配列の末端間の領域の挿入部位であって、制限エンドヌクレアーゼによって切断されるヌクレオチド配列であって、かつ、アミノ酸配列をコードしている第2の核酸配列が前記第1の核酸内に挿入されることにより、修飾されたサイトカイン結合ドメインをコードすることが可能となるヌクレオチド配列を含む挿入部位と;
c)前記第1の核酸配列の発現を指揮する、前記第1の核酸配列に作動可能に連結された調節性の制御配列と
を含む発現ベクター。
【請求項84】
a)前記第1の核酸配列の末端間の領域に欠失を含む、サイトカイン結合ドメインをコードしている第1の核酸配列と;
b) 前記欠失した配列の代わりの挿入部位であって、アミノ酸配列をコードしている第2の核酸配列が前記第1の核酸内に挿入されることにより、修飾されたサイトカイン結合ドメインをコードすることが可能となる挿入部位と、
c)前記第1の核酸配列の発現を指揮する、前記第1の核酸配列に作動可能に連結された調節性の制御配列と
を含む発現ベクター。
【請求項85】
前記挿入部位または欠失が存在する領域がループをコードしている、請求項83または請求項84に記載の発現ベクター。
【請求項86】
請求項76から80のいずれか一項に記載の核酸配列によってコードされているポリペプチド。
【請求項87】
請求項86に記載のポリペプチドを少なくとも2つ含むタンパク質多量体。
【請求項88】
(i)請求項82に記載のサイトカイン結合ドメインディスプレイライブラリを提供するステップと;
(ii)前記ポリヌクレオチドによってコードされているポリペプチドを発現させるステップと;
(iii)前記標的分子に結合する1つまたは複数のポリペプチドを選択するステップと
を含む、目的の標的分子に結合する修飾されたサイトカイン結合ドメインの同定方法。

【図1A】
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【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図1(c)】
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【図1(d)】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図5A】
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【図5A】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5B】
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【図5B】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図6(c)】
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【図6(d)】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−537716(P2007−537716A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544170(P2006−544170)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【国際出願番号】PCT/AU2004/001762
【国際公開番号】WO2005/058956
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(598152079)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガナイゼイション (16)
【Fターム(参考)】