説明

サイドシル構造

【課題】衝撃吸収部材25の変形を良好に分散することができ、さらに、コストを抑えるとともに製造工程の簡素化を図ることができるサイドシル構造を提供する。
【解決手段】サイドシル構造10は、衝撃吸収部材25が車体前後方向を向けて設けられている。この衝撃吸収部材は、車幅方向外側に向けて張り出された上板54と、上板の下方から車幅方向外側に向けて張り出された下板55と、上板の外端および下板の外端を連結する外側板56とを有する。上板は、車体前後方向に向けて上山部61および上谷部62が交互に設けられることで波形状に形成されている。下板は、車体前後方向に向けて下山部66と下谷部67とが交互に設けられることで波形状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナパネルおよびアウタパネル間に衝撃吸収部材が車体前後方向を向けて設けられ、衝撃吸収部材で車体側方からの荷重を吸収するサイドシル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のサイドシル構造のなかには、車室側にインナパネルが設けられ、車外側にアウタパネルが設けられ、インナパネルおよびアウタパネル間に衝撃吸収部材が車体前後方向を向けて設けられたものがある。
衝撃吸収部材は、許容荷重の異なる二つの部材を長手方向に交互に配列することで、低荷重領域および高荷重領域が交互に形成されている。
【0003】
この衝撃吸収部材に車体側方から荷重が作用した場合に、荷重が作用した部位の低荷重領域が変形して低荷重領域の両側の高荷重領域が当接する。
そして、両側の高荷重領域が当接した後、高荷重領域の外側の低荷重領域がそれぞれ変形して、変形した低荷重領域の外側の高荷重領域が内側の高荷重領域に当接する。
【0004】
すなわち、衝撃吸収部材に荷重が作用した場合に、荷重が作用した部位から離れる方向に衝撃吸収部材の変形を分散することができる。
このように、衝撃吸収部材の変形を衝撃吸収部材に沿って分散することで、衝撃吸収部材に作用した荷重を良好に吸収することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−200703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の衝撃吸収部材は、許容荷重の異なる二つの部材を長手方向に交互に配列することで、低荷重領域および高荷重領域を交互に形成している。
このように、衝撃吸収部材を許容荷重の異なる二つの部材で形成するために、構成が複雑になり、そのことがコストを抑える妨げや、製造工程を簡素化する妨げになっていた。
【0007】
本発明は、衝撃吸収部材の変形を良好に分散することができ、さらに、コストを抑えるとともに製造工程の簡素化を図ることができるサイドシル構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車室側にインナパネルが設けられ、車外側にアウタパネルが設けられ、前記インナパネルおよび前記アウタパネル間に衝撃吸収部材が車体前後方向を向けて設けられ、前記衝撃吸収部材で車体側方からの荷重を吸収するサイドシル構造において、前記衝撃吸収部材は、前記インナパネル側から車幅方向外側に向けて張り出された上板と、前記上板の下方から車幅方向外側に向けて張り出された下板と、前記上板の外端および前記下板の外端を連結する外側板と、を有し、前記上板、前記下板および前記外側板で車体外側に突出するように断面略コ字状に形成され、前記上板は、車体前後方向に向けて上下に屈曲を繰り返して山部と谷部とが交互に設けられることで側面視波形状に形成され、前記下板は、車体前後方向に向けて上下に屈曲を繰り返して山部と谷部とが交互に設けられることで側面視波形状に形成されたことを特徴とする。
【0009】
請求項2は、前記上板の前記山部および前記下板の前記山部が車体前後方向において同位置に設けられ、かつ、前記上板の前記谷部および前記下板の前記谷部が車体前後方向において同位置に設けられたことを特徴とする。
【0010】
請求項3は、前記上板の前記山部および前記下板の前記谷部が車体前後方向において同位置に設けられ、前記外側板のうち、前記上板の前記山部および前記下板の前記谷部間の部位に開口部が設けられ、前記開口部の周縁に、車幅方向に張り出すようにフランジが設けられたことを特徴とする。
【0011】
請求項4は、前記インナパネルは、前記車室側に膨出するインナ膨出部が設けられ、前記インナ膨出部の下部が前記下板に対して略同等高さに設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、衝撃吸収部材の上板および下板を側面視で波形状に形成することで山部と谷部とを交互に設けるようにした。
山部および谷部は、車体前後方向に折り曲げて形成された弱部位である。
車体側方から衝撃吸収部材に作用する荷重は、車幅方向の分力と、衝撃吸収部材を長手方向に圧縮させる車体前後方向の分力に分散される。
よって、車体前後方向の分力が作用した場合に、山部および谷部(弱部位)を車体前後方向に比較的容易に変形させることができる。
【0013】
一方、山部および谷部間には直線部が設けられている。直線部は、車体前後方向に折り曲げられていない直線状の強部位である。
よって、車体前後方向の分力が作用した場合に、直線部(強部位)を車体前後方向に変形させないように保つことができる。
【0014】
ここで、上板および下板は、弱部位(山部や谷部)と強部位(直線部)とが交互に設けられている。
よって、衝撃吸収部材に車体側方から荷重が作用した場合に、荷重が作用した部位(または、荷重が作用した部位近傍)の弱部位(山部や谷部)を変形させて(折り曲げて)、変形した弱部位の両側の強部位(直線部)を互いに近づける。
そして、両側の強部位(直線部)を互いに近づけた後、強部位(直線部)外側の弱部位(山部や谷部)をそれぞれ変形させる。
【0015】
これにより、衝撃吸収部材に車体側方から荷重が作用した場合に、衝撃吸収部材が局部的に変形することを防いで、衝撃吸収部材の変形を良好に分散することができる。
このように、衝撃吸収部材の変形を良好に分散することで、衝撃吸収部材に作用した荷重を良好に吸収して衝撃吸収効果を高めることができる。
【0016】
さらに、衝撃吸収部材を上板、下板および外側板で断面略コ字状に形成した。
よって、衝撃吸収部材に荷重が作用した場合に、外側板で荷重を受けることができる。
これにより、外側板に作用した荷重を外側板に分布荷重として伝えることができるので、衝撃吸収部材の変形を衝撃吸収部材に沿って一層良好に分散することができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、上板の山部および下板の山部を同位置に設け、上板の谷部および下板の谷部を同位置に設けた。
よって、上板および下板を連結する外側板の幅寸法を均一に保つことができ、衝撃吸収部材の全域において断面積を均一にすることができる。
【0018】
これにより、衝撃吸収部材をしぼり加工で成形する際に、加工品(衝撃吸収部材)に割れや、しわが発生することを抑えて加工(成形)の容易化を図ることができる。
このように、衝撃吸収部材を一枚の加工素材からしぼり加工で成形することができるので、衝撃吸収部材のコストを抑えるとともに製造工程の簡素化を図ることができる。
【0019】
請求項3に係る発明では、外側板のうち、上板の山部および下板の谷部間の部位に開口部を設けることで、衝撃吸収部材の軽量化を図ることができる。
さらに、開口部の周縁にフランジを設けることで、フランジで外側板を補強することができる。
【0020】
フランジで外側板を補強することで、外側板に作用した荷重を分布荷重として良好に伝えることができる。
よって、衝撃吸収部材が局部的に変形することを防いで、衝撃吸収部材の変形を良好に分散することができる。
これにより、衝撃吸収部材に作用した荷重を良好に吸収して衝撃吸収効果を高めることができる。
【0021】
請求項4に係る発明では、インナ膨出部の下部を下板に対して略同等高さに設けた。よって、衝撃吸収部材に車体側方から荷重が作用した場合に、下板を経てインナ膨出部の下部に伝わった荷重をインナ膨出部の下部で受ける(支える)ことができる。
これにより、衝撃吸収部材が空走して車幅方向内側へ移動することを規制し、衝撃吸収部材を確実に変形させ、衝撃吸収効果をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るサイドシル構造(実施例1)を示す斜視図である。
【図2】実施例1のサイドシル構造を示す分解斜視図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】図3の衝撃吸収部材を示す斜視図である。
【図5】図4の5矢視図である。
【図6】図4の6矢視図である。
【図7】実施例1の衝撃吸収部材のしぼり加工工程を説明する図である。
【図8】実施例1の衝撃吸収部材に荷重が作用する例を説明する図である。
【図9】実施例1の衝撃吸収部材が荷重で変形する例を説明する図である。
【図10】実施例1の衝撃吸収部材の変形を分散させる例を説明する図である。
【図11】本発明に係る衝撃吸収部材(実施例2)を示す断面図である。
【図12】本発明に係る衝撃吸収部材(実施例3)を示す斜視図である。
【図13】(a)は図12の13a−13a線断面図、(b)は図12の13b−13b線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【実施例1】
【0024】
実施例1に係るサイドシル構造10について説明する。
図1〜図3に示すように、サイドシル構造10は、フロントピラー11の下部11a、センタピラー12の下部12aおよびリヤピラー13の下部13aに設けられるとともに、車体前後方向に向いて延出された部材である。
【0025】
このサイドシル構造10は、車室15側に設けられたインナパネル21と、車外16側に設けられたアウタパネル23と、インナパネル21およびアウタパネル23間に車体前後方向を向いて設けられた衝撃吸収部材25とを備えている。
【0026】
インナパネル21は、略鉛直に設けられた上フランジ31と、略鉛直に設けられた下フランジ32と、上フランジ31および下フランジ32から車室15側に膨出されたインナ膨出部33とを有する。
【0027】
インナ膨出部33は、上フランジ31の下端から車幅方向内側(車室15側)に向けて下り勾配に折り曲げられた上折曲部34と、上折曲部34から下方に向けて折り曲げられた内側折曲部35と、内側折曲部35から車幅方向外側(車外16側)に向けて折り曲げられた下折曲部(下部)36とを有する。
【0028】
アウタパネル23は、略鉛直に設けられた上フランジ41と、略鉛直に設けられた下フランジ42と、上フランジ41および下フランジ42から車外16側に膨出されたアウタ膨出部43とを有する。
【0029】
アウタ膨出部43は、上フランジ41の下端から車幅方向外側に向けて下り勾配に折り曲げられた上折曲部44と、上折曲部44から下方に向けて折り曲げられた外側折曲部45と、外側折曲部45から車幅方向内側に向けて折り曲げられた下折曲部46とを有する。
【0030】
衝撃吸収部材25は、略鉛直に設けられた上フランジ51と、略鉛直に設けられた下フランジ52と、上フランジ51および下フランジ52から車外16側に膨出された衝撃吸収膨出部53とを有する。
【0031】
衝撃吸収部材25は、インナパネル21の上フランジ31とアウタパネル23の上フランジ41との間に上フランジ51が挟まれた状態で接合され、インナパネル21の下フランジ32とアウタパネル23の下フランジ42との間に下フランジ52が挟まれた状態で接合されている。
これにより、衝撃吸収部材25は、インナパネル21およびアウタパネル23間に車体前後方向を向いて設けられている。
【0032】
図3〜図6に示すように、衝撃吸収膨出部53は、上フランジ51の下端から車幅方向外側に向けて下り勾配に張り出された上板54と、下フランジ52の下端から車幅方向外側に向けて上り勾配に張り出された下板55と、上板54の外端54aおよび下板55の外端55aを連結する外側板56とを有する。
【0033】
この衝撃吸収膨出部53は、上板54、下板55および外側板56で車体外側に突出するように断面略コ字状に形成されている。
よって、衝撃吸収部材25に車体側方から荷重が作用した場合に、車体側方の荷重を外側板56で受けることができる。
【0034】
上板54は、車体前後方向に向けて上下に屈曲を繰り返して上山部(山部)61と上谷部(谷部)62とが交互に設けられることで側面視波形状に形成されている。
【0035】
具体的には、上板54は、上板54の最上部位に設けられた複数の上山部61と、上板54の最下部位に設けられた複数の上谷部62と、上山部61および上谷部62を連結する複数の上傾斜部(直線部)63とを有する。
上山部61および上谷部62は、所定ピッチP1の間隔で設けられている。
【0036】
上板54を側面視で波形状に形成することで、上山部61と上谷部62とを交互に設けるようにした。
上山部61および上谷部62は、車体前後方向に折り曲げられることで、車幅方向に延びる稜線状に形成されている。
よって、車体側方から荷重F1(図3参照)が作用した場合に、上山部61および上谷部62で上板54が車幅方向に潰れることを防ぐことができる。
【0037】
また、上山部61および上谷部62は、車体前後方向に折り曲げられることで、車体前後方向に対して変形しやすい弱部位である。
よって、車体側方から荷重F1(図3参照)が作用した場合に、車体前後方向の分力で、上山部61および上谷部62(すなわち、弱部位)を比較的容易に車体前後方向に変形させることが可能である。
【0038】
一方、上山部61および上谷部62間の上傾斜部63は、折り曲げられていない直線状の部位である。
よって、上傾斜部63は、車体側方から荷重F1(図3参照)が作用した場合に、車体前後方向の分力で、車体前後方向に変形させないように保つことが可能な強部位である。
このように、上板54は、弱部位(上山部61や上谷部62)と強部位(上傾斜部63)とが交互に設けられている。
【0039】
下板55は、上板54の下方に所定間隔をおいて設けられ、車体前後方向に向けて上下に屈曲を繰り返して下山部(山部)66と下谷部(谷部)67とが交互に設けられることで側面視波形状に形成されている。
【0040】
具体的には、下板55は、下板55の最下部位に設けられた複数の下山部66と、下板55の最上部位に設けられた複数の下谷部67と、下山部66および下谷部67を連結する複数の下傾斜部(直線部)68とを有する。
下山部66および下谷部67は、所定ピッチP1の間隔で設けられている。
【0041】
下板55を側面視で波形状に形成することで、下山部66と下谷部67とを交互に設けるようにした。
下山部66および下谷部67は、上山部61および上谷部62と同様に、車体前後方向に折り曲げられることで、車幅方向に延びる稜線状に形成されている。
よって、車体側方から荷重F1(図3参照)が作用した場合に、下山部66および下谷部67で下板55が車幅方向に潰れることを防ぐことができる。
【0042】
また、下山部66および下谷部67は、車体前後方向に折り曲げられることで、車体前後方向に対して変形しやすい弱部位である。
よって、車体側方から荷重F1(図3参照)が作用した場合に、車体前後方向の分力で、下山部66および下谷部67(すなわち、弱部位)を比較的容易に車体前後方向に変形させることが可能である。
【0043】
一方、下山部66および下谷部67間の下傾斜部68は、折り曲げられていない直線状の部位である。
よって、下傾斜部68は、車体側方から荷重F1(図3参照)が作用した場合に、車体前後方向の分力で、車体前後方向に変形させないように保つことが可能な強部位である。
このように、下板55は、弱部位(下山部66や下谷部67)と強部位(下傾斜部68)とが交互に設けられている。
【0044】
衝撃吸収部材25(衝撃吸収膨出部53)は、上山部61および下山部66が車体前後方向において同位置に設けられ、かつ、上谷部62および下谷部67が車体前後方向において同位置に設けられている。
よって、上板54および下板55を連結する外側板56の幅寸法W1を均一に保つことができ、衝撃吸収部材25の全域において断面積S1(図3参照)を均一にすることができる。
衝撃吸収部材25の全域において断面積S1を均一にする理由を図7に基づいて説明する。
【0045】
図7(a)に示すように、加工素材(以下、「ブランク」という)71の上フランジ51および下フランジ52をダイ72とブランクホルダー73とで挟持する。この状態で、ポンチ74を矢印Aの如く移動する。
【0046】
図7(b)に示すように、ポンチ74をダイ72の凹部72aに差し込むことで、ダイ72の凹部72aおよびポンチ74でブランク71を衝撃吸収部材25(衝撃吸収膨出部53)にしぼり加工する。
ここで、前述したように、衝撃吸収部材25は全域において断面積S1が均一に形成されている。
【0047】
よって、衝撃吸収部材25をしぼり加工で成形する際に、加工品(すなわち、衝撃吸収部材25)に割れや、しわが発生することを抑えて加工(成形)の容易化を図ることができる。
このように、衝撃吸収部材25を一枚のブランク71からしぼり加工で成形することができるので、衝撃吸収部材25のコストを抑えるとともに製造工程の簡素化を図ることができる。
【0048】
図4に示すように、衝撃吸収部材25(衝撃吸収膨出部53)の車体側方から荷重F1が作用した場合に、荷重F1は衝撃吸収膨出部53の外側板56に作用する。
ここで、上板54は、複数の上山部61と、複数の上谷部62と、複数の上傾斜部(直線部)63とを有する。
また、下板55は、複数の下山部66と、複数の下谷部67と、複数の下傾斜部(直線部)68とを有する。
【0049】
よって、上山部61および上谷部62を車体前後方向に変形させる(折り曲げる)とともに、下山部66および下谷部67を車体前後方向に変形させる(折り曲げる)ことで、衝撃吸収膨出部53の変形を衝撃吸収膨出部53に沿って車体前後方向に分散させることができる。
【0050】
さらに、車体側方から作用した荷重F1を外側板56で受けることで、外側板56に作用した荷重F1を外側板56に分布荷重として伝えることができる。
これにより、衝撃吸収部材25(衝撃吸収膨出部53)が局部的に変形することを防いで、衝撃吸収膨出部53の変形を車体前後方向に沿って一層良好に分散させることができる。
【0051】
図3に示すように、インナ膨出部33の下折曲部36が下板55に対して略同等高さに設けられている。
よって、衝撃吸収部材25に車体側方から荷重F1が作用した場合に、下板55を経てインナ膨出部33の下折曲部に伝わった荷重F1をインナ膨出部33の下折曲部36で受ける(支える)ことができる。
【0052】
荷重F1をインナ膨出部33の下折曲部36で支えることで、衝撃吸収部材25が車幅方向内側へ移動(空走)することを規制することができる。
これにより、衝撃吸収部材25を確実に変形させて、衝撃吸収効果をさらに高めることができる。
【0053】
つぎに、サイドシル構造10の衝撃吸収部材25に車体側方から荷重F1が作用する例を図8〜図10に基づいて説明する。
図8(a),(b)に示すように、衝撃吸収部材25(衝撃吸収膨出部53)の外側板56のうち、弱部位(上山部61および下山部66)に相当する部位56aに車体側方から荷重F1が作用する。
よって、荷重F1が弱部位(上山部61および下谷部67)に作用する。
【0054】
ここで、上山部61および下谷部67は、車幅方向(荷重F1の作用方向)に延びる稜線状に形成されている(図4、図5参照)。
よって、上山部61および下谷部67で衝撃吸収膨出部53が車幅方向に潰れることを防いで、衝撃吸収膨出部53を、図3に示すように略断面コ字状を保つことができる。
【0055】
図9(a),(b)に示すように、衝撃吸収膨出部53が車幅方向に潰れることを防ぐことで、弱部位(上山部61および下谷部67)の車体外側部位が、車体前後方向に変形して(折り曲げられて)荷重F1の一部を吸収する。
【0056】
残りの荷重F2が部位56aに継続して作用することで、変形した弱部位(上山部61)の両側の強部位(上傾斜部63および上傾斜部63)の車体外側部位が矢印Bの如く互いに近づく。
同時に、変形した弱部位(下谷部67)の両側の強部位(下傾斜部68および下傾斜部68)の車体外側部位が矢印Bの如く近づく。
【0057】
図10(a),(b)に示すように、互いに近づいた両側の強部位(上傾斜部63および上傾斜部63)や、互いに近づいた両側の強部位(下傾斜部68および下傾斜部68)は強部位なので変形しない。
【0058】
よって、互いに近づいた強部位(上傾斜部63および上傾斜部63)の両側の弱部位(上谷部62および上谷部62)の車体外側部位が変形する(折り曲がる)。
同様に、互いに近づいた強部位(下傾斜部68および下傾斜部68)の両側の弱部位(下山部66および下山部66)の車体外側部位が変形する(折り曲がる)。
【0059】
このように、弱部位(上谷部62および上谷部62)が変形する(折り曲がる)とともに、弱部位(下山部66および下山部66)が変形する(折り曲がる)ことで、残りの荷重F2の一部を吸収する。
【0060】
残りの荷重F3が部位56aに継続して作用することで、変形した弱部位(上谷部62および上谷部62)の両側の強部位(上傾斜部63および上傾斜部63)の車体外側部位が矢印Cの如く互いに近づく。
同時に、変形した弱部位(下山部66および下山部66)の両側の強部位(下傾斜部68および下傾斜部68)の車体外側部位が矢印Cの如く近づく。
【0061】
図8〜図10で説明したように、衝撃吸収部材25の変形(歪み)を部位56aの両側に衝撃吸収部材25に沿って分散することができる。
衝撃吸収部材25の変形(歪み)を分散することで、衝撃吸収部材25が局部的に変形することを防いで、衝撃吸収部材25を広範囲で変形させることができる。
これにより、衝撃吸収部材25に車体側方から作用した荷重F1を衝撃吸収膨出部53で良好に吸収でき、衝撃吸収部材25による荷重F1の吸収効率を増加させることができる。
【実施例2】
【0062】
実施例2に係る衝撃吸収部材80について説明する。
図11に示すように、衝撃吸収部材80は、衝撃吸収部材25の外側板56の略中央で上衝撃吸収部材81および下衝撃吸収部材82の2部材に分割したもので、その他の構成は衝撃吸収部材25と同様である。
【0063】
この衝撃吸収部材80は、上衝撃吸収部材81の上外側板83および下衝撃吸収部材82の下外側板84を接合することで一体に形成されている。
さらに、上外側板83および下外側板84を接合することで、実施例1の外側板56と略同様の形状を得ることができる。
【0064】
以上説明したように、衝撃吸収部材80を上衝撃吸収部材81および下衝撃吸収部材82の2部材で構成することで、衝撃吸収部材80の形状を決める際に設計の自由度を一層高めることができる。
加えて、衝撃吸収部材80によれば、実施例1の衝撃吸収部材25と同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0065】
実施例3に係る衝撃吸収部材90について説明する。
図12〜図13に示すように、衝撃吸収部材90は、実施例1の衝撃吸収膨出部53を衝撃吸収膨出部91に代えたもので、その他の構成は衝撃吸収部材25と同様である。
【0066】
この衝撃吸収膨出部91は、上フランジ51の下端から車幅方向外側に向けて下り勾配に張り出された上板92と、下フランジ52の下端から車幅方向外側に向けて上り勾配に張り出された下板93と、上板92の外端92aおよび下板93の外端93aを連結する外側板94とを有する。
【0067】
上板92は、車体前後方向に向けて上下に屈曲を繰り返して上山部(山部)95と上谷部(谷部)96とが交互に設けられるとともに、上山部95および上谷部96が上傾斜部(直線部)97で連結されることで側面視波形状に形成されている。
【0068】
下板93は、上板92の下方に所定間隔をおいて設けられ、車体前後方向に向けて上下に屈曲を繰り返して下山部(山部)98と下谷部(谷部)99とが交互に設けられるとともに、下山部98および下谷部99が下傾斜部(直線部)101で連結されることで側面視波形状に形成されている。
【0069】
衝撃吸収膨出部91は、上山部95および下山部98が車体前後方向において同位置に設けられ、かつ、上谷部96および下谷部99が車体前後方向において同位置に設けられている。
さらに、衝撃吸収膨出部91は、外側板94のうち、上山部95および下山部98間の部位94aに開口部103が設けられ、開口部103の周縁103aに車幅方向に張り出すように環状のフランジ105が設けられている。
【0070】
外側板94の複数の部位94aに開口部103をそれぞれ設けることで、衝撃吸収部材90の軽量化を図ることができる。
さらに、開口部103の周縁103aにフランジ105を設けることで、フランジ105で外側板94を補強することができる。
【0071】
フランジ105で外側板94を補強することで、車体側方から外側板94に荷重F1が作用した場合に、荷重F1を外側板94に分布荷重として伝えることができる。
よって、衝撃吸収部材90(衝撃吸収膨出部91)が局部的に変形することを防いで、衝撃吸収膨出部91の変形を衝撃吸収膨出部91に沿って車体前後方向に一層良好に分散させることができる。
これにより、衝撃吸収膨出部91に作用した荷重を良好に吸収して衝撃吸収効果を高めることができる。
【0072】
加えて、衝撃吸収部材90によれば、実施例1の衝撃吸収部材25と同様の効果を得ることができる。
【0073】
なお、本発明に係るサイドシル構造10は、前述した実施例1〜3に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例1〜3で示したインナパネル21、アウタパネル23、衝撃吸収部材25,80,90、インナ膨出部33、下折曲部36、上板54,92、下板55,93、外側板56,94、上山部61,95、上谷部62,96、下山部66,98、下谷部67,99、上外側板83、下外側板84、開口部103およびフランジ105などの形状は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、インナパネルおよびアウタパネル間に衝撃吸収部材が設けられ、衝撃吸収部材で車体側方からの荷重を吸収するサイドシル構造を備えた車両への適用に好適である。
【符号の説明】
【0075】
10…サイドシル構造、15…車室、16…車外、21…インナパネル、23…アウタパネル、25,80,90…衝撃吸収部材、33…インナ膨出部、36…下折曲部(下部)、54,92…上板、54a,92a…上板の外端、55,93…下板、55a,93a…下板の外端、56,94…外側板、61,95…上山部(山部)、62,96…上谷部(谷部)、66,98…下山部(山部)、67,99…下谷部(谷部)、83…上外側板、84…下外側板、94a…上山部および下山部間の部位、103…開口部、103a…開口部の周縁、105…フランジ、F1…車体側方からの荷重。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室側にインナパネルが設けられ、車外側にアウタパネルが設けられ、前記インナパネルおよび前記アウタパネル間に衝撃吸収部材が車体前後方向を向けて設けられ、前記衝撃吸収部材で車体側方からの荷重を吸収するサイドシル構造において、
前記衝撃吸収部材は、
前記インナパネル側から車幅方向外側に向けて張り出された上板と、
前記上板の下方から車幅方向外側に向けて張り出された下板と、
前記上板の外端および前記下板の外端を連結する外側板と、を有し、
前記上板、前記下板および前記外側板で車体外側に突出するように断面略コ字状に形成され、
前記上板は、車体前後方向に向けて上下に屈曲を繰り返して山部と谷部とが交互に設けられることで側面視波形状に形成され、
前記下板は、車体前後方向に向けて上下に屈曲を繰り返して山部と谷部とが交互に設けられることで側面視波形状に形成されたことを特徴とするサイドシル構造。
【請求項2】
前記上板の前記山部および前記下板の前記山部が車体前後方向において同位置に設けられ、かつ、前記上板の前記谷部および前記下板の前記谷部が車体前後方向において同位置に設けられたことを特徴とする請求項1記載のサイドシル構造。
【請求項3】
前記上板の前記山部および前記下板の前記谷部が車体前後方向において同位置に設けられ、
前記外側板のうち、前記上板の前記山部および前記下板の前記谷部間の部位に開口部が設けられ、
前記開口部の周縁に、車幅方向に張り出すようにフランジが設けられたことを特徴とする請求項1記載のサイドシル構造。
【請求項4】
前記インナパネルは、前記車室側に膨出するインナ膨出部が設けられ、
前記インナ膨出部の下部が前記下板に対して略同等高さに設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のサイドシル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−274848(P2010−274848A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131079(P2009−131079)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】