説明

サスペンションのアライメント測定・調整装置

【課題】アライメント調整に好適なサスペンションのアライメント測定・調整装置を提供する。
【解決手段】治具手段2により定位置に支持されたサスペンションのアクスルAに軸支されるハブボルトHBに取付けられ、アクスルセンタを中心として当該ハブボルトHBに装着される車輪の半径に相当する半径により部分球面に形成された下面30を備えるダミーリム4と、前記ダミーリム4の部分球面を上面に載置して水平方向に移動自在に形成されたスライドベース3と、を備え、シリンダ装置12により車重相当荷重を加えた状態において、アクスルハブAH若しくはハブボルトHBに一体に形成されたブレーキロータBRにおける複数の特定点の3次元座標を計測手段5により計測してダミーリム4のキャンバ角およびトー角を計測するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のリヤサスペンションに適用されるサスペンションのアライメント測定・調整装置に関し、特に、サスペンションのサブアセンブリ段階でのアライメント調整および測定に使用されるアライメント測定・調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からサスペンションのサブアセンブリ段階でのアライメント調整および測定に使用されるアライメント測定・調整装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
これは、鉄製の標準車輪を装着したサスペンションユニットを車両に代わって支持する架台を備え、さらに前記標準車輪を載置して架台に対して相対移動可能なターンテーブルを備える。ターンテーブルはウオームジャッキによって昇降され、さらに水平押圧機構によって水平荷重が加えられる構造になっている。これによって標準車輪にはターンテーブルから種々の走行状態に応じた力が付加される。また懸架装置の架台には標準車輪およびサスペンションユニットの特定点のX,Y,Z軸座標を計測するための計測器が設けられており、この特定点の座標を基にホイールアライメントを求めるようにしている。
【特許文献1】実開平5−11015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例では、標準車輪に対してターンテーブルから種々の走行状態に応じた上下(Z軸)方向および水平方向(前後(X軸)方向および左右(Y軸)方向)の力を付加して、標準車輪の特定点のX,Y,Z軸座標を計測することによりホイールアライメントを求めるものであるため、ターンテーブルと標準車輪とは機械的に連結された状態となっており、アライメント調整のためにアジャストボルト等によりサスペンションアームの取付位置を調整した場合に、ターンテーブルに連結されていることにより標準車輪は調整通りに姿勢変化しないという不具合があった。
【0005】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、アライメント調整に好適なサスペンションのアライメント測定・調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、サスペンションのアライメントをサスペンションのサブアセンブリ段階で測定する装置であって、前記サスペンションサブアセンブリのサスペンションメンバを定位置に支持する治具手段と、前記治具手段により定位置に支持されたサスペンションのアクスルに軸支されるホイール取付部材に取付けられ、アクスルセンタを中心として当該ホイール取付部材に装着される車輪の半径に相当する半径により部分球面に形成された下面を備える疑似車輪と、前記疑似車輪の部分球面を上面に載置して水平方向に移動自在に形成されたスライドベースと、前記治具手段により定位置に支持されたサスペンションサブアセンブリのサスペンションスプリングを車重相当荷重により加圧するアクチュエータと、前記アクチュエータの作動状態において、ホイール取付部材若しくはホイール取付部材に一体に形成された円盤状部材における複数の特定点の3次元座標を計測して疑似車輪のキャンバ角およびトー角を計測する計測手段と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
したがって、本発明では、治具手段により定位置に支持されたサスペンションのアクスルに軸支されるホイール取付部材に取付けられ、アクスルセンタを中心として当該ホイール取付部材に装着される車輪の半径に相当する半径により部分球面に形成された下面を備える疑似車輪と、前記疑似車輪の部分球面を上面に載置して水平方向に移動自在に形成されたスライドベースと、を備え、アクチュエータにより車重相当荷重を加えた状態において、ホイール取付部材若しくはホイール取付部材に一体に形成された円盤状部材における複数の特定点の3次元座標を計測手段により計測して疑似車輪のキャンバ角およびトー角を計測するようにしたため、車輪を再現する疑似車輪が水平方向に移動自在に形成されたスライドベース上において各サスペンションリンクで設定した通りの姿勢変化が許容され、疑似車輪は各サスペンションリンクで設定したトー角(θt)およびキャンバ角(θc)を再現できる。したがって、サスペンションリンクのアライメント調整部材によるアライメント調整においても疑似車輪がアライメント調整に応じて正確に姿勢変化されて、トー角(θt)およびキャンバ角(θc)を再現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のサスペンションのアライメント測定・調整装置を一実施形態に基づいて説明する。図1〜図8は本発明を適用したサスペンションのアライメント測定・調整装置の第1実施形態を示し、図1はアライメント測定・調整装置の平面図、図2は同じく側面図、図3〜図4はアライメント測定・調整装置におけるダミーリム装置およびスライドベースの側面図および正面図、図5〜図6はスライドベースおよびスライドベースにダミーリム装置のベース部分を載置した状態の各平面図、図7はスライドベースとダミーリムとの接触状態を説明する断面図、図8〜図9は本実施形態のサスペンションのアライメント測定・調整装置によりアライメント調整および測定する自動車のリヤサスペンションの平面図および側面図である。本発明のサスペンションのアライメント測定・調整装置は、自動車のリヤサスペンション、例えば、マルチリンク式リヤサスペンションのアライメント調整および測定に適用される。
【0009】
前記マルチリンク式サスペンションは、サスペンションメンバに対してアクスルの下部を連結するロアアームとアクスルの上部を連結するアッパアームとを夫々複数のリンクで構成するサスペンションであり、図8〜図9に示すものでは、ロアアームを、アクスルAの下部前端に連結して斜め前方に延びるラジアスロッドRRと、同じくアクスルAの下部前方に連結して横方向に延びるフロントロアリンクFLLと、同じくアクスルAの下部後方に連結して横方向に延びるリヤロアリンクRLLとで構成し、アッパアームを、アクスルAの上部に連結して横方向に延びるA型リンクULで構成しており、これらの各リンクの他端をサスペンションメンバSMに連結してサスペンションサブアセンブリが組立られる。前記フロントおよびリヤのロアリンクFLL,RLLのサスペンションメンバSMに対する連結位置は、偏心カムからなるアライメント調整部材AJによって横方向に調節自在となっており、アライメント測定装置で測定されるトーおよびキャンバが予め設定した所定値となるようにフロントおよびリヤのロアリンクFLL,RLLの連結位置を調整可能としている。
【0010】
前記アクスルAには、アクスルベアリングABを介してアクスルハブAHが回転自在に支持され、アクスルハブAHに設けたハブボルトHBを貫通させてブレーキロータBRが固定されている。また、サスペンションメンバSMには、その左右の前後端に車体組付け用のマウントインシュレータMTGが配置され、車両組立工程において、マウントインシュレータMTGを介して車体に組付けられる。その車両組付けの際、リヤロアリンクRLLに下端が着座したサスペンションスプリングSPの上端に配置したスプリングシートSSと、フロントロアリンクFLLに下端が連結されたサスペンションダンパSDの上端とが車体へ連結される。また、その後の車両組立工程において、前記ハブボルトHBには、図示しないタイヤを装着したロードホイールが固定される。
【0011】
前記アライメント測定・調整装置は、図1および図2に示すように、ベッド1上にサスペンションサブアセンブリを定位置に支持するよう配置した治具手段2と、疑似路面を構成するよう夫々ベッド1上の水平面内で移動自在に支持される一対のスライドベース3と、スライドベース3に支持され、サスペンションサブアセンブリのアクスルハブAHに連結されて疑似車輪を構成する一対のダミーリム4と、各ダミーリム4の両側方に配置した一対の測定手段5とを備えている。
【0012】
前記治具手段2は、ベッド1上に搬入されるサスペンションサブアセンブリのサスペンションメンバSMの各マウントインシュレータMTGに夫々嵌合するピン(4ヶ所)を立設させた各ワーク受け部10と、各ワーク受け部10に対応して設けたクランプ11と、サスペンションサブアセンブリのサスペンションスプリングSPのスプリングシートSSを所定荷重で押圧してサスペンションサブアセンブリを車載状態と同様の状態(1G状態)にするシリンダ装置12と、を備える。前記シリンダ装置12は各ワーク受け部10の前後位置に立設した一対の支柱13の一方の先端に水平方向に回動自在に設けたアーム14の中途部に配置されている。
【0013】
サスペンションサブアセンブリの搬出時から搬入時の間において、前記アーム14は2点鎖線に示す待機位置に位置される。また、各クランプ11も同様にワーク受け部10を開放した待機位置に位置される。そして、サスペンションサブアセンブリが搬入されると、まず各マウントインシュレータMTGを各ワーク受け部10のピンに嵌合させ、次いで各クランプ11により各マウントインシュレータMTGを各ワーク受け部10に固定し、次いで、後述するダミーリム4がアクスルハブAHに連結され、その状態で、シリンダ装置12を保持するアーム14がサスペンションサブアセンブリ上に回動されてその先端が他方の支柱13の先端に連結された状態で、シリンダ装置12が作動されることにより、サスペンションスプリングSPを1G状態に圧縮して、アライメントの測定・調整が実行される。
【0014】
前記スライドベース3は、図3〜図5に示すように、ベッド1上において前後(X軸)方向に配置した2本のLMガイド20により前後方向に移動可能な前後ベース21と、前後ベース21上において左右(Y軸)方向に配置した2本のLMガイド22により左右方向に移動可能な左右ベース23と、左右ベース23上に固定してサスペンション装置の疑似車輪(ダミーリム4)に対して疑似の路面となるスライドベース3と、を備える。
【0015】
前記ダミーリム4は、部分球面に形成された下面30の一点が前記スライドベース3の上面に接触しスライドベース3上面に対して球面により転動可能な平板状の転動板31と、この転動板31から上方に隔たった部位に配置されてサスペンションサブアセンブリのアクスルに固定される結合部32とを備える。具体的には、前記転動板31に載置されて固定された基部プレート33と、基部プレート33に下端がボルト等により固定されて上方に延びる板状部材34とを備え、板状部材34の上端部に、サスペンションサブアセンブリのアクスルハブAHの各ハブボルトHBを貫通させるボルト穴35(長穴)を備えてアクスルハブAHに結合される結合部32を備える。結合部32の中心(アクスル中心に相当)から転動板31の球面30までの距離は、サスペンション装置に装着される車輪の有効半径に設定されている。
【0016】
前記転動板31のX軸方向の両側には、左右(Y軸)方向に間隔を持って、転動板31、即ち、ダミーリム4の所定以上の傾斜を抑制するためのストッパ36を配置している。各ストッパ36は、転動板31の前後の上縁に所定間隔を持って対峙する突起36Aを備え、転動板31、即ち、ダミーリム4の所定以上に傾斜しようとした場合には転動板31の上縁がストッパ36の突起36Aに係合してそれ以上のダミーリム4の傾斜を抑制する。また、ダミーリム4は重心位置が偏っていることにより傾斜しようとするが、転動板31の前後の上縁とストッパ36の突起36Aとの間の所定間隔の隙間に、弾性体、例えば、図7に示すように、板バネ37等を介挿させることにより、ダミーリム4を所期した角度位置に自立させることができ、また、所期した角度位置へ復帰させる付勢力を付与することができる。また、前記弾性体は、スライドベース3と転動板31との球面接触の接触状態を維持させ且つ安定化させる。
【0017】
また、前記転動板31に載置固定された基部プレート33と上方へ延びる板状部材34とは、ボルト等により固定されて接続位置を変更できる構造としており、タイヤオフセットが異なる車輪に対しては、前記接続位置を変更することで、対応可能としている。
【0018】
前記ダミーリム4は、サスペンションサブアセンブリの搬出時から搬入時までの間においては、スライドベース3の前後方向および左右方向のLMガイド20,22により、搬入され且つ搬出されるサスペンションサブアセンブリのブレーキロータBR等と干渉しない待機位置に位置され、サスペンションサブアセンブリが搬入され、治具手段2により定位置に支持された段階で、待機位置からスライドベース3の前後方向および左右方向のLMガイド20,22によりダミーリム4の結合部32がサスペンションサブアセンブリのアクスルハブAHと締結可能な作動位置に移動されて、ハブボルトHBをボルト穴35に貫通させて(ホイール)ナット38により締結されることで、ダミーリム4がサスペンションサブアセンブリに組付けられる。
【0019】
ハブボルトHBによりダミーリム4の結合部32がアクスルハブAHに締結され、シリンダ装置12が作動されることにより、サスペンションスプリングSPを1G状態に圧縮した状態では、ダミーリム4は各サスペンションリンクで設定したX・Y・Z軸周りの姿勢に調整される。この姿勢の調整時に生ずるダミーリム4のX軸周りの回転およびY軸周りの回転とX軸方向およびY軸方向の変位とは、スライドベース3と転動板31の球面突起との間で転がり接触(転動)によりスライドベース3をX軸方向およびY軸方向のLMガイド20,22により水平方向に移動させることで吸収される。また、ダミーリム4のZ軸周りの回転は転動板31と各ストッパ36との隙間の変化により吸収される。
【0020】
前記測定手段5は、ベッド1上の各ダミーリム4のX軸方向の側方(サスペンションサブアセンブリに対してダミーリム4を挟んで後方)に配置された支柱40の上方に、側方をカバー41により保護されて配置された測定ヘッド42を備え、当該測定ヘッド42には、ダミーリム4の結合部32に締結されたサスペンションサブアセンブリのブレーキロータBRのハット面(ディスク面)の3ヶ所の位置を精密に測定する複数のレーザ変位計が配置されている。レーザ変位計により測定されたブレーキロータBRのハット面の面位相は、図示しないコントローラに出力され、車輪のトー角(θt)、キャンバ(θc)が演算される。この測定手段5は、サスペンションサブアセンブリの搬出時から搬入時までの間においては、搬入され且つ搬出されるサスペンションサブアセンブリのアクスルハブAHとダミーリム4との締結作業および締結解除作業の作業スペースを確保するために、図1に示すように、支柱40をY軸方向に倒して待機位置に位置させることができる。
【0021】
以上の構成の自動車サスペンションのアライメント測定・調整装置の動作について以下に説明する。
【0022】
サスペンションサブアセンブリが搬入されていない状態では、治具手段2の各クランプ11はワーク受け部10を開放した待機位置に位置され、シリンダ装置12を保持するアーム14は2点鎖線に示す待機位置に位置されている。また、前記ダミーリム4は、サスペンションサブアセンブリの搬出時から搬入時までの間においては、スライドベース3の前後方向および左右方向のLMガイド20,22により、搬入され且つ搬出されるサスペンションサブアセンブリのブレーキロータBR等と干渉しない待機位置に位置されている。さらに、測定手段5は、図に示すように、支柱40をY軸方向に倒して待機位置に位置させるようにしてもよい。
【0023】
そして、サスペンションサブアセンブリが搬入されると、まず各マウントインシュレータMTGを各ワーク受け部10のピンに嵌合させ、次いで各クランプ11により各マウントインシュレータMTGを各ワーク受け部10に固定し、次いで、ダミーリム4を待機位置からスライドベース3の前後方向および左右方向のLMガイド20,22によりダミーリム4の結合部32がサスペンションサブアセンブリのアクスルハブAHと締結可能な作動位置に移動させて、ハブボルトHBをボルト穴35に貫通させて(ホイール)ナット38により締結されてダミーリム4がサスペンションサブアセンブリに組付けられることで、ダミーリム4が車輪と同じ状態でアクスルAに固定される。
【0024】
次いで、シリンダ装置12を保持するアーム14がサスペンションサブアセンブリ上に回動されてその先端が他方の支柱13の先端に連結され、シリンダ装置12が作動されることにより、サスペンションスプリングSPを1G状態(車重相当荷重)に圧縮して、車両状態を再現する。ダミーリム4は各サスペンションリンクで設定したX・Y・Z軸周りの姿勢に調整される。この姿勢の調整時に生ずるダミーリム4のX軸周りの回転およびY軸周りの回転とX軸方向およびY軸方向の変位とは、スライドベース3と転動板31の接触球面との間で転がり接触(転動)によりスライドベース3をX軸方向およびY軸方向のLMガイド20,22により水平方向に移動させることで吸収される。また、ダミーリム4のZ軸周りの回転は転動板31と各ストッパ36との隙間の変化により吸収される。また、ダミーリム4が転動板31の球面30でスライドベース3に接地している構造のため、高さ(Z軸)方向については、アクスルAの位置・角度がどのように変化しようとも変化することがなく、常に要求される車両ジオメトリー(車両高さ)を再現することができる。
【0025】
次いで、待機位置にある測定手段5を起立させて作動位置に固定して、アライメントの測定・調整が開始される。まず、測定手段5の測定ヘッド42に配置されている複数のレーザ変位計によりダミーリム4の結合部32に締結されたサスペンションサブアセンブリのブレーキロータBRのハット面(ディスク面)の3ヶ所の位置を精密に測定する。測定値は図示しないコントローラに出力され、サスペンションサブアセンブリとして組立られた状態におけるアライメントである車輪のトー角(θt)、キャンバ(θc)が演算され、図示しない表示手段に表示する。
【0026】
次に、サスペンションのフロントおよびリヤのロアリンクFLL,RLLのサスペンションメンバSMに対する連結位置を調整するアライメント調整部材AJにより、検出トー角(θt)と検出キャンバ角(θc)とが夫々所定の目標値になるようにアライメントを調整する。アライメント調整に応じてアクスルAおよびアクスルAに連結したダミーリム4の姿勢が変化するが、本装置においては、前後(X)方向及び左右(Y)方向変化を、LMガイド20,22に搭載されたスライドベース3が、X−Y各軸方向に自由にスライドすることにより車両状態を再現し、ダミーリム4が球面で接地しており、そのままトー角(θt)、キャンバ角(θc)の変化を再現する。検出トー角(θt)と検出キャンバ角(θc)とが夫々所定の目標値の許容範囲内に収ったら、アライメント調整部材AJを締付けてアライメント調整が完了する。
【0027】
アライメント測定・調整が完了すると、測定手段5を待機位置に移動させ、治具手段2のシリンダ装置12の作動を解除してサスペンションスプリングSPの圧縮を解除してアーム14を待機位置に移動させ、次いで、ダミーリム4をアクスルAから外して待機位置に移動させ、治具手段2のクランプ11を解除してサスペンションサブアセンブリを搬出可能な状態とする。図示しない搬出手段により、サスペンションサブアセンブリは搬出され、次工程に搬送される。
【0028】
以上の作動が順次繰り返されることにより、組立られたサスペンションサブアセンブリに対して順次アライメント測定・調整が実行される。
【0029】
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
【0030】
(ア)サスペンションのアライメントをサスペンションのサブアセンブリ段階で測定する装置であって、前記サスペンションサブアセンブリのサスペンションメンバSMを定位置に支持する治具手段2と、前記治具手段2により定位置に支持されたサスペンションのアクスルAに軸支されるホイール取付部材としてのハブボルトHBに取付けられ、アクスルセンタを中心として当該ホイール取付部材に装着される車輪の半径に相当する半径により部分球面に形成された下面30を備える疑似車輪としてのダミーリム4と、前記疑似車輪の部分球面を上面に載置して水平方向に移動自在に形成されたスライドベース3と、前記治具手段2により定位置に支持されたサスペンションサブアセンブリのサスペンションスプリングSPを車重相当荷重により加圧するアクチュエータとしてのシリンダ装置12と、前記アクチュエータの作動状態において、ホイール取付部材若しくはホイール取付部材に一体に形成された円盤状部材としてのブレーキロータBRにおける複数の特定点の3次元座標を計測して疑似車輪のキャンバ角およびトー角を計測する計測手段5と、を備える。
【0031】
即ち、治具手段2により定位置に支持されたサスペンションのアクスルAに軸支されるハブボルトHBに取付けられ、アクスルセンタを中心として当該ハブボルトHBに装着される車輪の半径に相当する半径により部分球面に形成された下面30を備えるダミーリム4と、前記ダミーリム4の部分球面を上面に載置して水平方向に移動自在に形成されたスライドベース3と、を備え、シリンダ装置12により車重相当荷重を加えた状態において、アクスルハブAH若しくはハブボルトHBに一体に形成されたブレーキロータBRにおける複数の特定点の3次元座標を計測手段5により計測してダミーリム4のキャンバ角およびトー角を計測するようにしたため、車輪を再現する疑似車輪(ダミーリム4)が水平方向に移動自在に形成されたスライドベース3上において各サスペンションリンクで設定した通りの姿勢変化が許容され、疑似車輪は各サスペンションリンクで設定したトー角(θt)およびキャンバ角(θc)を再現できる。したがって、サスペンションリンクのアライメント調整部材AJによるアライメント調整においても疑似車輪がアライメント調整に応じて正確に姿勢変化されて、トー角(θt)およびキャンバ角(θc)を再現できる。
【0032】
(イ)疑似車輪の部分球面に形成された下面30を備える部材(転動版31)は、その周囲のスライドベース3に配置されたストッパ36に周縁の縁が係合して、スライドベース3に対して所定以上の転動による傾きが制限されることにより、疑似車輪(ダミーリム4)は重心位置が偏っていることにより傾斜しようとするが、ダミーリム4のスライドベース3に対して転倒することやその位置ズレを抑制することができる。
【0033】
(ウ)ストッパ36と前記疑似車輪(ダミーリム4)の部分球面に形成された下面30を備える転動板31との隙間には、部分球面に形成された下面30を備える転動板31をスライドベース3側に付勢する弾性体(37)が介在されていることにより、ダミーリム4を所期した角度位置に自立させることができ、また、所期した角度位置へ復帰させる付勢力を付与することができる。また、前記弾性体(37)は、スライドベース3と部分球面との球面接触の接触状態を維持させ且つ安定化させることができる。
【0034】
(エ)測定手段5は、ホイール取付部材としてのアクスルハブAHに一体に形成された円盤状部材であるブレーキロータBRの面位相を測定する測定器を備えていることにより、通常アクスルハブAHに高精度に装着されているブレーキロータBRの面位相を測定するため、高精度にアライメントを測定・調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態を示すホイールアライメント測定・調整装置の平面図。
【図2】同じくホイールアライメント測定・調整装置のX軸方向からの側面図。
【図3】アライメント測定・調整装置におけるダミーリム装置およびスライドベースのX軸方向からの側面図。
【図4】アライメント測定・調整装置におけるダミーリム装置およびスライドベースのY軸方向からの正面図。
【図5】スライドベースの平面図。
【図6】スライドベースにダミーリム装置のベース部分を載置した状態の平面図。
【図7】スライドベースとダミーリムとの接触状態を説明する断面図。
【図8】サスペンションのアライメント測定・調整装置によりアライメント調整および測定する自動車のリヤサスペンションの平面図。
【図9】サスペンションのアライメント測定・調整装置によりアライメント調整および測定する自動車のリヤサスペンションのX軸方向からの側面図。
【符号の説明】
【0036】
1 ベッド
2 治具手段
3 スライドベース
4 ダミーリム(擬似車輪)
5 測定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サスペンションのアライメントをサスペンションのサブアセンブリ段階で測定する装置であって、
前記サスペンションサブアセンブリのサスペンションメンバを定位置に支持する治具手段と、
前記治具手段により定位置に支持されたサスペンションのアクスルに軸支されるホイール取付部材に取付けられ、アクスルセンタを中心として当該ホイール取付部材に装着される車輪の半径に相当する半径により部分球面に形成された下面を備える疑似車輪と、
前記疑似車輪の部分球面を上面に載置して水平方向に移動自在に形成されたスライドベースと、
前記治具手段により定位置に支持されたサスペンションサブアセンブリのサスペンションスプリングを車重相当荷重により加圧するアクチュエータと、
前記アクチュエータの作動状態において、ホイール取付部材若しくはホイール取付部材に一体に形成された円盤状部材における複数の特定点の3次元座標を計測して疑似車輪のキャンバ角およびトー角を計測する計測手段と、を備えることを特徴とするサスペンションのアライメント測定・調整装置。
【請求項2】
前記疑似車輪の部分球面に形成された下面を備える部材は、その周囲のスライドベースに配置されたストッパに周縁の縁が係合することより、スライドベースに対して所定以上の転動による傾きが制限されることを特徴とする請求項1に記載のサスペンションのアライメント測定・調整装置。
【請求項3】
前記ストッパと前記疑似車輪の部分球面に形成された下面を備える部材との隙間には、部分球面に形成された下面を備える部材をスライドベース側に付勢する弾性体が介在されていることを特徴とする請求項2に記載のサスペンションのアライメント測定・調整装置。
【請求項4】
前記測定手段は、ホイール取付部材に一体に形成された円盤状部材であるブレーキロータの面位相を測定する測定器を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載のサスペンションのアライメント測定・調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−85810(P2009−85810A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257208(P2007−257208)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】