説明

サドル付き分水栓

【課題】外部漏れに対するシール箇所を極力減少させてシール性の向上を図り、しかも、分水栓本体の高さを更に抑えて、耐震性を向上させたサドル付き分水栓を提供すること。
【解決手段】環状保持体40の上部の外周側に段部面41を形成し、分水栓本体28の連通口29の下部に形成した当接面42に突き当てる構造とし、この段部面41と当接面42とをメタルタッチで金属同士により面シールさせ、当該部位の密封性を図ることにより、外部漏れに対するシール箇所を減じるとともに、筒部30下部によりガスケット27のボリューム領域を圧縮させてシール性を向上させた。また、従来のように、Oリングや鍔部などを設けない環状保持体40は、それだけ高さを低減することが可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道管から給水管を分岐する際に用いるサドル付き分水栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、地中に埋設されている水道管から給水支管を分岐させる場合にはサドル付き分水栓が用いられる。そして、このサドル付き分水栓の固定用サドルと分水栓本体との取り付け構造には、ねじ式とフランジ式とがある。ねじ式とフランジ式とを比較した場合、ねじ式の方が水道本管から分岐口までの距離が大きくなり、地震などの外力が加わった場合、過大なトルクがかかり、ねじ首部が折れるなど不利であるため、現在ではサドル式が主流になりつつある。
【0003】
フランジ式サドル付き分水栓の具体例としては、特許文献1のサドル付き分水栓及び特許文献2のサドル付き分水栓がある。
【0004】
特許同文献1のサドル付き分水栓は、図4に示すように、環状保持体2にOリング溝3、及び当該Oリング溝を形成するために必要な鍔部4を形成し、前記Oリング溝3にOリング5を装着した後、分水栓本体1の内部に環状保持体2を螺着し、鍔部4と分水栓本体下面6とを当接させて分水栓本体1と環状保持体2との間をOリングで封止する構造であり、同図に示すように、分水栓の高さH’を有している。
【0005】
一方、特許文献2のサドル付き分水栓は、図5に示すように、環状保持体12にOリング溝13と当該Oリング溝を構成するために必要な鍔部14を形成し、前記Oリング溝13にOリング15を装着した後、分水栓本体11の内周面に環状保持体12の鍔部14が収まるようにして当接面を持たないようにした構造で、分水栓本体11と環状保持体12との間をOリングで封止する構造であり、同図に示すように、分水栓の高さH”を有している。
【0006】
特許文献1のサドル付き分水栓と特許文献2のサドル付き分水栓との間には、環状保持体を分水栓本体内部に螺着する際に、環状保持体2に設けた鍔部4を分水栓本体下面6に当接させる構造であるか、或いは、環状保持体12に設けた鍔部14を分水栓本体11の内部に収める構造なのかについての相違はあるが、両者とも、環状保持体にはOリングを取付けるために必要となるOリング溝と当該Oリング溝を構成するために必要な鍔部を設けていることは共通している。
【0007】
また、特許文献1のサドル付き分水栓及び特許文献2のサドル付き分水栓ともに、環状保持体下面と水道本管外面との間にガスケットを介在させて圧縮することにより、止水機構部と水道本管とをシールするサドル付き分水栓である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3768329号公報
【特許文献2】特許第3934304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1、2ともに環状保持体にOリングを装着する構造とすると、両者とも、Oリング溝の幅分及びOリング溝を構成するために必要な鍔の厚み分の高さを必ず環状保持体に確保する必要があり、耐震性への配慮から分水栓の高さを低く抑えることを要求されるサドル付き分水栓の設計上に課題を有している。
【0010】
本発明は、従来の課題に鑑みて開発に至ったものであり、その目的とするところは、外部漏れに対するシール箇所を極力減少させてシール性の向上を図り、しかも、分水栓本体の高さを更に抑えて、耐震性を向上させるサドル付き分水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、水道本管にバンドを介して包囲固定するサドルに形成した開口部の外周囲に支受面を形成し、一方、分水栓本体の下部に設けた連通口の周囲にフランジ部を設け、このフランジ部を前記支受面に裁置し、かつ、前記連通口に吊下形成した筒部を前記開口部に嵌合して前記分水栓本体と前記サドルとを固定し、前記連通口に螺着した環状保持体で分水栓本体の内部に一対のボールシートを介してボールを回転自在に収納保持させると共に、前記開口部に連設した装入口と水道本管との間に装入したガスケットを前記筒部の下端で押圧シールするようにしたことを特徴とするサドル付き分水栓である。
【0012】
請求項2に係る発明は、環状保持体の上部に設けた段部面と、分水栓本体の開口部に形成した当接面とを当接させて面シールさせたサドル付き分水栓である。
【0013】
請求項3に係る発明は、筒部の下端を環状保持体の下面より下方に突出させたサドル付き分水栓である。
【0014】
請求項4に係る発明は、環状保持体の下面に、螺合締付用の工具掛り溝を設けたサドル付き分水栓である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によると、分水栓本体と一対のボールシートを介して回動自在に設けたボールを環状保持体で保持した止水機構と水道本管とのシール構造は、分水栓本体の筒部下部と水道本管表面との間に介在させたガスケットによって行うので、外部漏れに対するシール箇所が減り、分水栓としての使用価値の向上を図ることができる。
【0016】
請求項2に係る発明によると、分水栓本体内部に設けた当接面にメタルタッチで突き当てする構造であるから、環状保持体にOリング溝やそのOリング溝を形成するために必要な鍔部が不要になるため、さらに分水栓本体の高さを抑えることができ、耐震性が向上する。
【0017】
請求項3に係る発明によると、分水栓本体の筒部下端によってガスケットを圧縮させて水道本管をシールする構造であるから、環状情保持体の下面に締付けのために使用する凹溝があってもシール性に影響を与えることなく、ガスケットの外周面にてボリューム領域を圧縮させるため、当該部位のシール性が一層向上する。
【0018】
請求項4に係る発明によると、環状保持体の下面に設けた工具掛り溝を大きく確保することができるため、分水栓本体を含め軽量化とコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明におけるサドル付き分水栓の一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1の一部切欠き拡大断面図である。
【図3】(a)は環状保持体の装着部位の下面の一例を示す底面図、(b)は環状保持体の装着部位の下面の他例を示す底面図である
【図4】従来のサドル付き分水栓の一例を示す縦断面図である。
【図5】従来のサドル付き分水栓の他例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明におけるサドル付き分水栓の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図4は、本発明における実施形態の一例を示したものである。
【0021】
図1と図2において、水道本管21をサドル22とバンド23で包囲してボルト24で締付固定している。本例において、水道本管21の内面にモルタルライニング層を有する水道用の鋳鉄管の分岐位置にサドル22とバンド23で固着したもので、サドル22とバンド23は樹脂粉体の塗膜を施している。
【0022】
サドル22の略中央位置に円形状の開口部25を形成し、この開口部25の上面外周囲に平面から見て矩形状を呈する支受面26を形成している。また、この開口部25の内周面に連設して環状のガスケット27を装入する装入口25aを形成している。ゴム等で成形した環状のガスケット27は、外周側にボリュームを有し、内周上縁部にリング状の係止部27aを形成している。
【0023】
図1において、分水栓本体28の下部に水道水を連通させる連通口29を設け、この連通口29の周囲下方に短円筒状の筒部30を吊下形成している。この分水栓本体28は、この筒部30をサドル22の開口部25に嵌合すると共に、連通口29の周囲に設けたフランジ部31をサドルの支受面26に重ね合わせて4本のボルト(図示しない)を介してサドル22に載置固定している。また、筒部30の下端は、装入口25aに装入したガスケット27のボリューム領域を押圧シールしている。したがって、ガスケット27の外周側の圧縮率を上げることにより、ガスケット27が外周側に広がるのを抑制している。
【0024】
また、ステンレス等で成形した分水栓本体28と鋳鉄材料で成形したサドル22との異種金属同士は、電気的腐食防止のために塗膜又は樹脂を介して絶縁しているが、この支受面26とフランジ部31との間に樹脂板(図示しない)などの絶縁板を介在させるようにしても良い。これらの塗膜、樹脂又は樹脂板等は、電気的絶縁手段として同等の方式である。
【0025】
また、分水栓本体28は、穿孔具や挿入工具を取付ける取付口33と、継手部34を有する分岐口35を設け、更に、内部には、サドル22とは独立した構造を持ち、独立した機能を有する止水機構36を構成している。
【0026】
この止水機構36は、三方口37aを有するボール37をステム38を介して回転自在に設け、このボール37は、一方は分水栓本体28の内部に装着したボールシート39aで、他方は分水栓本体28の連通口29に螺着した環状保持体40の内周側段部40aに装着したボールシート39bで支持されている。
【0027】
また、環状保持体40の上部外周側に段部面41を形成し、分水栓本体28の連通口29の下部に形成した当接面42に突き当てる構造とし、この段部面41と当接面42とをメタルタッチで金属同士により面シールさせ、当該部位の密封性を図っていると共に、当接面42と段部面41との当接構造により、筒部30の下端が環状保持体40の下面より下方に確実に突出するように位置決め機能も発揮させている。
【0028】
図2に示すように、筒部30の下端を環状保持体40の下面より下方に突出させて同図において隙間tを有している。従来のように、Oリングや鍔部などを設けない環状保持体40は、それだけ高さを低減することが可能となり、筒部30の下端を環状保持体40の下面より下方に突出させることが可能となる。この環状保持体40は、筒部30の雌螺子30aに環状保持体40の雄螺子40bを螺合して分水栓本体28の連通口29に螺着し、環状保持体40の下端内周には、ガスケット27の係止部27aに係合する係合部40cを形成している。
【0029】
また、環状保持体40の下面には、図3(a)、(b)に示すように、螺合締付用の工具掛り溝43、44を設けている。図3(a)に示す工具掛り溝43は、環状保持体40の下面の凹溝を大きく確保することで、分水栓本体28を含めて軽量化とコストダウンを図っている。
【0030】
なお、図中、32は通水口、45はキャップ、46は絶縁筒であり、また筒部30の雌螺子30aと環状保持体40の雄螺子40bとに螺子接着剤を塗布することにより環状保持体40と分水栓本体28とのシール性を確保することもできる。
【0031】
次に、上記実施形態の作用を説明する。サドル22と止水機構36とは独立した構造で、かつ、独立した機能を有するように設けているので、サドル22は接水することなく、流体による塗膜の損傷がない。一方、止水機構36も、サドル22とは別の環状保持体40にボールシート39a、39bを装着し、環状保持体40を分水栓本体28に螺合しながら調整できるので、ボールバルブとして独立した構造と機能を有しており、塗膜の影響を受けないばかりか、作動トルクや止水性能も安定する。
【0032】
サドル22の開口部25に連接した装入口25aと水道本管21との間に装入したガスケット27を筒部30の下端で押圧シールするようにしたから、ガスケット27の外側の圧縮率を上げることにより、ガスケット27が外周側に広がるのを抑制し、筒部30と水道本管21の外周との間におけるシール性を確保することができる。この場合、環状保持体40の下面に工具掛り溝43があってもシール性に影響を与えることなく、ガスケット27の外周面にてガスケット27のボリューム領域を圧縮させてシール性を向上させることができる。
【0033】
また、環状保持体40にOリング溝やそのOリング溝を形成するために必要な鍔部が不要になるので、図において、本例における分水栓本体28の高さHは、従来の分水栓本体1の高さH’(図4参照)や同様に従来の分水栓本体11の高さH”(図5参照)と比較して低くすることができるため、分水栓本体28の高さを抑えることができ、もって、耐震性に寄与することが可能となる。
【0034】
更に、分水栓本体28は、フランジ部31を有しているので、サドル22に設けた支受面26と分水栓本体28との金属同士の接触を塗膜や樹脂板を介在させて容易に絶縁することができるので、異種金属による電気的腐食が生じない。また、従来のねじ式分水栓の場合にように、ねじ接合部分がなく、しかも分岐口35までの高さLが小さいうえに、くびれ部分がないので、回転トルクや軸方向のズレが加わってもずれるおそれがなく、耐衝撃力も有している。
【符号の説明】
【0035】
21 水道本管
22 サドル
25 開口部
25a 装入口
26 支受面
27 ガスケット
28 分水栓本体
29 連通口
30 筒部
31 フランジ部
36 止水機構
37 ボール
39b 環状保持体側のボールシート
40 環状保持体
41 段部面
42 当接面
43 工具掛り溝
44 工具掛り溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道本管にバンドを介して包囲固定するサドルに形成した開口部の外周囲に支受面を形成し、一方、分水栓本体の下部に設けた連通口の周囲にフランジ部を設け、このフランジ部を前記支受面に裁置し、かつ、前記連通口に吊下形成した筒部を前記開口部に嵌合して前記分水栓本体と前記サドルとを固定し、前記連通口に螺着した環状保持体で分水栓本体の内部に一対のボールシートを介してボールを回転自在に収納保持させると共に、前記開口部に連設した装入口と水道本管との間に装入したガスケットを前記筒部の下端で押圧シールするようにしたことを特徴とするサドル付き分水栓。
【請求項2】
前記環状保持体の上部に設けた段部面と、分水栓本体の開口部に形成した当接面とを当接させて面シールさせた請求項1に記載のサドル付き分水栓。
【請求項3】
前記筒部の下端を環状保持体の下面より下方に突出させた請求項1又は請求項2に記載のサドル付き分水栓。
【請求項4】
前記環状保持体の下面に、螺合締付用の工具掛り溝を設けた請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載したサドル付き分水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−137501(P2011−137501A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297238(P2009−297238)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(390002381)株式会社キッツ (223)
【Fターム(参考)】