説明

サーマルカラープリンタ

【課題】リボンの印刷開始位置のばらつきをなくして、インクを効率よく消費できるサーマルカラープリンタを提供する。
【解決手段】本発明のサーマルカラープリンタ1は、リボン2の各塗布領域2aの先頭エッジを検出する時の供給コア9に巻回されたリボン2の直径(D)、パルスエンコーダ16の1回転あたりのスリット量(N)に基づき搬送距離(X)に対応する供給コア9の送り出し量をパルスエンコーダ16の算出スリット量(Y)として算出し、その整数部(y1)分だけ供給コア9を回転させ、サーマルヘッド3を下降状態として前記小数部(y2)から算出される端数送り量(x)分パルスモータを駆動してロール紙6とともにリボン2を排紙方向と逆方向に送り出すように構成されている。この構成により、リボン2の各色の先頭エッジをサーマルヘッド3の直下に位置させて先頭エッジから印刷を開始でき、リボン2を効率よく消費できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーリボンによって所望のカラー印刷を行うサーマルカラープリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、サーマルカラープリンタでは、印刷物の印刷面に対応した塗布領域を持つインク、例えばイエロー、マゼンダ、シアンの3色のインクとラミネートとを1セットとして順次配列したリボンが用いられている。このリボン2は、図6に示すように供給コア9に巻回されており、用紙送り機構5を構成するフィードローラ14により送り出されるロール紙6とともにサーマルヘッド3の下方に位置するように構成されている。前記サーマルヘッド3は所定ドット数に対応した発熱体(図示せず)およびこの発熱体に電圧を加える電極(図示せず)を備えており、リボンをロール紙6に接触、離間できるように昇降可能に構成されている。また、前記リボン2はサーマルヘッド3と一体に昇降する第1ガイドローラ3aとサーマルヘッド3の下方に配置されたプラテンローラ8との間を通り巻取りコア10により巻取られるように構成されており、この巻き取りにともない供給コア9に巻回されたリボン2が送り出されるように構成されている。
【0003】
前記リボン2は、サーマルヘッド3の下降時にはロール紙とともに排紙方向とは逆の方向(以下、逆方向という)に送り出され、サーマルヘッド3の通電時にはインクが順次熱昇華してロール紙6に転写されるように構成されている。また、このリボン2には3色のインクが配列されている関係で各色の間にインクなし部2bが設けられており、隣接するインクの色の混濁がないように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−21437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このサーマルカラープリンタ1では、印刷開始時にリボン2の色の先頭エッジをサーマルヘッド3の下方に位置させるため、図8(a)に示すようにリボン2に配列された各色の先頭エッジが検出され、先頭エッジ検出時の供給コア9に巻回されたリボン2の直径(D)と前記先頭エッジ検出手段12からサーマルヘッド3までの搬送距離(X)とに基づき供給コア9の送り出し量が算出されている。また、前記リボン2の直径(D)とパルスエンコーダ16の1回転あたりのスリット量(N)とに基づき、単位スリットあたりの送り出し量が算出され、この単位スリットあたりの送り出し量と前記送り出し量とに基づき、前記搬送距離(X)に相当するスリット量(Y)が次数式(1)、
Y = X / ( π * D / N )
で、算出されている。
【0006】
この算出スリット量(Y)の算出の際には、整数部(y1)と小数点以下の小数部(y2)とが生じ、リボン直径に応じて小数部の値が0以上1未満の間でばらつくため、サーマルヘッド3が確実に所定色のインクの上方に位置できるように供給コア9の送り出し量をなす目標スリット量は前記整数部(y1)に+1加算した値としている。そのため、図8(b),(c),(d)および(e)に示すようにロール紙6を所定量送り出して、サーマルヘッド3の下降後に通電して印刷を行うと、リボン2の各インクは図7に示すように1スリット分すなわち最大で単位スリットあたりの送り出し量分が使用できないこととなり、リボン直径によりリボンに対する印刷開始位置がばらつき、リボン2が効率よく消費されないという欠点がある。
【0007】
本発明の目的は上記欠点の除去にあり、リボンのインクを効率よく消費できるサーマルカラープリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、複数色のインクが配列されたリボンの送り出し量を供給コアの送り出し量として検出するパルスエンコーダと、リボンに配列された各色の先頭を検出する先頭エッジ検出手段と、パルスモータの回転によりロール紙をサーマルヘッドの下方に送る用紙送り機構とを設け、さらに前記先頭エッジを検出する時のリボンの直径とパルスエンコーダの1回転あたりのスリット量に基づいて前記先頭エッジ検出手段からサーマルヘッドまでの搬送距離に対応するリボンの送り出し量をパルスエンコーダのスリット量として算出する演算部およびフィードローラを駆動するフィードローラ駆動部にロール紙の送り出し量と駆動指令信号とを送るとともに巻取りコアに回転を与える巻取りコア駆動部に駆動指令信号を送る指令部からなる制御部を備えたサーマルカラープリンタであって、前記演算部は算出スリット量から整数部と小数部とを算出するとともに、小数部から端数送り量を逆算してパルスモータの1回転あたりの送り出し量に基づいて前記端数送り量に対するパルスモータの端数指令パルス数を算出する構成をなし、前記指令部は算出スリット量の整数部分供給コアがリボンを送り出すように駆動指令信号を巻取りコア駆動部に送り、前記端数指令パルス数分非通電のサーマルヘッドを下降させた状態でフィードローラを駆動するように駆動指令信号をフィードローラ駆動部に送る構成をなすことを特徴としている。
【0009】
このように構成したことにより、リボンに配列された各色のインクの先頭エッジが検出されると、先頭エッジ検出時のリボンの直径とパルスエンコーダの1回転あたりのスリット量に基づき、リボンの搬送距離に対応する供給コアの送り出し量が算出スリット量として算出される。また、この算出スリット量から整数部と小数部とが算出され、さらに小数部から端数送り量が逆算される。さらに、この整数部は整数部送り量となって、その整数部送り量だけ供給コアの送り出し量が得られるように巻取りコアが回転し、リボンがサーマルヘッドの下方近くまで移動する。その後、非通電のサーマルヘッドが下降した状態で、前記端数送り量に対応する端数指令パルス数分だけフィードローラが回転し、リボンがロール紙とともに逆方向に送り出されながら巻取りコアに巻取られる。そのため、リボンの先頭エッジは算出スリット量の小数部に対応した端数送り量分補正されることとなり、リボン直径によらずインクリボンに対する印刷開始位置精度を向上させ、常に先頭エッジを印刷開始位置とすることができるので、効率よくリボンを消費することができる。
【0010】
また、前記パルスモータの1回転あたりのパルス数がパルスエンコーダの1回転あたりのスリット量よりも多く、パルスモータの分解能がパルスエンコーダの分解能よりも高いものであればよく、分解能の差が大きいほど各色の先頭エッジをより正確に印刷開始位置にすることができる。
【0011】
さらに、前記リボンの直径をリボンセット時のリボン長さと1回印刷分に対するパルスエンコーダのスリット量により算出するように構成してもよく、この場合リボンの伸びまたはしわ等の影響を受けずに、リボン直径を算出でき、各色の先頭エッジをより正確に印刷開始位置にすることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明した本発明によれば、リボンの各色の先頭エッジを検出する時のリボンの直径から搬送距離に対応する供給コアの送り出し量をパルスエンコーダのスリット量として算出し、その整数部分だけ供給コアを回転させ、小数部から端数送り量を逆算してこの端数送り量分フィードローラを回転させてリボンをロール紙とともに逆方向に送り出すことができるので、リボンの各色の先頭エッジから印刷を開始でき、リボンを効率よく消費できるサーマルカラープリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るサーマルプリンタの制御部を示すブロック図
【図2】本発明の実施形態に係るリボンの印刷開始位置の説明図
【図3】本発明の実施形態に係るサーマルカラープリンタの制御部を説明するフローチャート
【図4】本発明の実施形態に係るサーマルカラープリンタの動作の前半部(a),(b),(c)を模式的に説明する動作説明図
【図5】本発明の実施形態に係るサーマルカラープリンタの動作の後半部(d),(e),(f)を模式的に説明する動作説明図
【図6】従来のサーマルプリンタを模式的に示す構成図
【図7】従来のリボンの印刷開始位置の説明図
【図8】従来のサーマルプリンタの動作を模式的に説明する動作説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。この実施形態のサーマルカラープリンタの全体構成は従来例と同一で、すでに説明済みであるが、符号を同一にして説明する。図1および図4において、サーマルカラープリンタ1は印刷物の印刷面に対応した塗布領域2aを持つインク、例えばイエロー、マゼンダ、シアンの3色のインクとラミネートとが1セットとして順次配列されたリボン2と、このリボン2に当接してインクを熱昇華させるサーマルヘッド3と、前記リボン2をサーマルヘッド3の下方に送るリボン送り機構4と、パルスモータの回転によりロール紙6をサーマルヘッド3の下方に位置するように送り出す用紙送り機構5とを有している。
【0015】
前記リボン2は、図2に示すように各色の塗布領域2a間にインクなし部2bが設けられており、隣接する色が混濁しないように構成されている。また、このインクの塗布領域2aは所望印刷物の印刷面2cに対応した面積よりもわずかに大きな面積を有し、ロール紙6の位置ずれ等による印刷の不具合を防止するように構成されている。
【0016】
前記サーマルヘッド3は、ロール紙6の印刷幅にわたって所定のドット数に対応した発熱体(図示せず)と電極(図示せず)とを備えており、通電時に得られる熱量に応じてリボン2に塗布されたインクを熱昇華させるように構成されている。また、このサーマルヘッド3はサーマルヘッド昇降手段7により昇降自在に構成されており、その下降時にサーマルヘッド3に付設された第1ガイドローラ3aと後記プラテンローラ8とがロール紙6とリボン2とを挟持するように構成されている。
【0017】
前記リボン送り機構4は、リボン2が巻回された供給コア9とこのリボン2を巻取る巻取りコア10と供給コア9側に配置された第2ガイドローラ11とを備え、リボン2がサーマルヘッド3の下方位置を通過して巻取りコア10により巻取られるように構成されている。また、前記リボン送り機構4は、前記サーマルヘッド3の下降時にロール紙とともにリボン2を逆方向に送り出すように構成されている。さらに、前記リボン送り機構4は巻取りコア10を回転させるモータの一例であるDCモータ(図示せず)を有し、その回転は供給コア9の送り出し量を検出するパルスエンコーダ16のスリット量により制御されるように構成されている。
【0018】
前記リボン送り機構4はリボン2に配列された各色の先頭エッジを検出する先頭エッジ検出手段12を有し、この先頭エッジ検出手段12は各塗布領域2aの間に設けられたインクなし部2bに続いて現れる各塗布領域2aの先頭エッジを検出する時、先頭エッジ検出信号を後記制御部13に出力するように構成されている。
【0019】
前記用紙送り機構5は、ロール紙6を挟持するフィードローラ14とピンチローラ15とを有し、これらに挟持されたロール紙6が第1ガイドローラ3aとサーマルヘッド3の下方に配置されたプラテンローラ8との間を通過して排紙方向に送り出されるように構成されている。また、前記ロール紙6は用紙コア17に巻回されて保持されており、ロール紙6が送り出される時、用紙コア17はその送り出し量以上に回転しないように構成されている。
【0020】
前記フィードローラ14はパルスモータ(図示せず)により駆動されるように構成されており、パルスモータの正、逆回転にともなってロール紙6をスリップなく排紙方向にも逆方向にも送り出せるように構成されている。また、前記パルスモータは指令パルス数に応じてフィードローラ14を正確に回転させるように構成されており、このパルスモータの1回転あたりのパルス数は前記パルスエンコーダ16の1回転あたりのスリット量(N)よりも十分に多く、パルスモータの分解能はパルスエンコーダ16の分解能よりも十分に高くなっている。さらに、このパルスモータはサーマルヘッド3の下降時には、サーマルヘッド3のドットに対応した微小単位ごとにロール紙6とリボン2とを送ることができるように構成されている。
【0021】
前記サーマルカラープリンタ1の制御装置18は、サーマルヘッド3を駆動するサーマルヘッド通電制御部19、サーマルヘッド昇降手段7を駆動する昇降手段駆動部20、リボン送り機構4のDCモータを駆動する巻取りコア駆動部21および用紙送り機構5のパルスモータを駆動するフィードローラ駆動部22、各種情報を記憶する記憶部23並びに制御部13を有している。また、前記制御部13には前記先頭エッジ検出手段12が接続されており、その検出信号が制御部13に送られるように構成されている。
【0022】
前記サーマルヘッド通電制御部19は、制御部13から送られる印刷情報を受け、この印刷情報に応じてサーマルヘッド3を駆動するように構成されている。前記昇降手段駆動部20は制御部13から昇降指令信号を受けると、サーマルヘッド昇降手段7を駆動して、サーマルヘッド3を昇降させるように構成されている。前記巻取りコア駆動部21は制御部13からパルスエンコーダ16の目標スリット量と駆動指令信号とを受けてその目標スリット量分供給コア9がリボン2を送り出すまで巻き取りコア10を回転させるようにDCモータを駆動する構成となっている。
【0023】
前記フィードローラ駆動部22は制御部13から指令パルス数と駆動指令信号を受けると、指令パルス数分パルスモータを駆動してフィードローラ14を回転させるように構成されている。
【0024】
前記記憶部23は、パルスエンコーダ16の1回転あたりのスリット量(N)、パルスモータの1回転あたりのパルス数、先頭エッジ検出手段12の先頭検出位置からサーマルヘッドまでのリボン2の搬送距離(X)、リボンセット時にインクとインクとの間に設けられたバーコードから読み込まれたリボン2の持つ長さに関する情報、リボンセット時のリボンの直径(D0)、1回印刷分に対するパルスエンコーダのスリット量等必要な情報を記憶するように構成されている。また、この記憶部23は所望印刷物の印刷面に対応した印刷情報をサーマルヘッド3のドット数に対応してリボン2に塗布された色毎にかつインクの塗布領域2aの全面に対応して記憶するように構成されている。
【0025】
前記制御部13は、各種演算を行う演算部13aと各種駆動指令信号を送る指令部13bとを備えている。前記演算部13aは、リボンセット時のリボン2の長さと1回印刷分に対するパルスエンコーダ16のスリット量とに基づき、各塗布領域2aの先頭エッジを検出する都度リボン2の直径(D)とリボン2の残量とを算出するように構成されている。また、この演算部13aは用紙コア17の送り出し量をパルスモータの1パルスあたりの送り出し量から算出するように構成されている。さらに、前記演算部13aはリボン2の各塗布領域の先頭エッジを検出する時のリボン2の直径(D)と前記先頭エッジ検出手段12からサーマルヘッド3までの搬送距離(X)とに基づき供給コア9の送り出し量を算出するとともに、この送り出し量とパルスエンコーダ16の1回転あたりのスリット量(N)とから前記搬送距離(X)に対応するパルスエンコーダ16のスリット量(以下、算出スリット量という)(Y)を算出するように、すなわち前述の数式(1)で算出するように構成されている。また、前記演算部13aは算出スリット量(Y)から整数部(y1)と小数部(y2)とを算出するとともに、小数部(y2)から次数式(2)、
【0026】
x = y2 * ( π * D / N )
で、端数送り量(x)を逆算する一方、この端数送り量(x)とパルスモータの1回転あたりのパルス数とから端数送り量(x)に対応する端数指令パルス数を算出するように構成されている。
【0027】
前記指令部13bは、供給コア9の送り出し量となる目標スリット量を駆動指令信号とともに巻取りコア駆動部21に送ってDCモータを駆動するように構成されている。また、この指令部13bは端数送り量(x)に応じた端数指令パルス数を駆動指令信号とともに前記フィードローラ駆動部22に送り、パルスモータを駆動するように構成されている。さらに、この指令部13bは昇降手段駆動部20に昇降指令信号を送り、サーマルヘッド昇降手段7を駆動してサーマルヘッド3を昇降させるように構成されている。
【0028】
また、前記制御部13は先頭エッジ検出手段12から先頭検出信号を受けると、前記算出スリット量(Y)の整数部(y1)を整数部送り量(y1)とし、この整数部送り量(y1)と、小数点以下の小数部(y2)から算出される端数送り量(x)とを先頭エッジ検出手段12により検出された塗布領域毎にリボン情報として、印刷済のリボン情報を順次削除しながら一時記憶部(図示せず)に記憶するように構成されている。さらに、前記制御部13は端数送り量(x)に対応するパルスモータの端数指令パルス数を前記塗布領域2aに対応して一時記憶部に記憶するように構成されている。
【0029】
前記制御部13は、図3に示すように、
1)初期セット(最初の一塗布領域分巻取り巻き戻し、リボン直径(D0)算出、リボンの塗布領域の先頭エッジをサーマルヘッドのほぼ下の位置で停止)。
2)操作部(図示せず)から送られる印刷開始指令信号を待つ。
3)Y=X / ( π * D / N ) −y0
=整数部y1+小数部y2
(小数部y2から端数送り量(x)を算出。
y0:先頭エッジ検出後に送り出したリボンの送り出し量)
4)整数部y1のみ供給コアに巻回されたリボンを送り出すように巻取りコア駆動部にリボン巻取り指令。
5)ロール紙を所定量送り出すようにフィードローラ駆動部に送り出し指令(ロール紙が排紙方向に送り出される。所定量送り出し:2枚目以降は、1枚目の印刷完了時点ですでにロール紙がある程度の量送り出されているため、単に送り出すだけでなく所定の位置へロール紙端を移動させる動作となる)。
6)サーマルヘッド昇降手段に下降指令。
7)サーマルヘッド非通電のままロール紙をリボンごと前記端数送り量(x)だけ逆方向に送り出すようにフィードローラ駆動部に巻き戻し指令(ロール紙が逆方向に送り出される)。
8)サーマルヘッド通電指令(印刷情報の印刷)、ロール紙とリボンの巻取り指令(ロール紙が印刷されながら、リボンとともに逆方向に送り出される)。
9)次のリボンのエッジを検出してから印刷中の塗布領域が印刷終了までのリボンの送り出し量y0を検出、記憶する。
10)印刷終了、サーマルヘッド上昇指令。
11)1セット(3色+ラミネート)の印刷完了か否かを判断し、印刷完了でない時、3)に戻る。
12)印刷時完了、ロール紙を排紙方向に排紙(次回分ロール紙送り出し)するようにフィードローラ駆動部に排紙指令を出力して、2)に戻る。
ように構成されている。なお、ステップ4とステップ5とが逆になってもよい。
【0030】
上記サーマルカラープリンタでは、図4(a)に示すようにリボン2が供給コア9にセットされると、初期セット時の作業としてリボン2の持つ長さに関する情報と一つの塗布領域2a分の送り出しに必要するパルスエンコーダ16のスリット量とに基づきリボン2の直径(D0)とリボン2の残量とが算出され、これらが一時記憶される。同時に、リボン2の印刷予定色に対応する塗布領域2aの先頭エッジを先頭エッジ位置検出手段12の下方に位置させる。
この状態で、印刷開始指令信号を受けると、先頭エッジ位置検出手段12からリボン2の塗布領域2aの先頭エッジ検出信号が出力されるのを待って、供給コア9に巻回されたリボン2の直径(D)とロール紙6の直径とが算出される。前記リボン2の直径(D)とパルスエンコーダ16の1回転あたりのスリット量(N)とに基づき、前記搬送距離(X)に対応するパルスエンコーダ16の算出スリット量(Y)が前述の数式(1)で算出される。この時、前記算出スリット量(Y)の整数部(y1)は整数部送り量(y1)として一時記憶部に記憶される。また、前記算出スリット量(Y)の小数点以下の小数部(y2)から端数送り量(x)が前述の数式(2)で逆算され、パルスモータの単位パルスあたりの送り出し量に基づき前記端数送り量(x)に対応する端数指令パルス数が算出され、これが一時記億部で記憶され、次の塗布領域の印刷に備える。
【0031】
続いて、図4(b)に示すようにサーマルヘッド3の下方に位置するリボン2の塗布領域2aに対して算出された整数部送り量(y1)が供給コア9の送り出し量となる目標スリット量となって、この目標スリット量だけ供給コア9が回転するまでDCモータが駆動され、塗布領域2aの先頭エッジがサーマルヘッド3の略直下まで移動する。その後、図4(c)に示すように前記リボン2の塗布領域2aに対して小数部(y2)から算出された端数送り量(x)を含めた所定量だけパルスモータが駆動され、ロール紙6が排紙方向に送り出される。
【0032】
この状態で、図5(d)および図5(e)に示すようにサーマルヘッド3が下降し、ロール紙6との間でリボン2を挟持すると、サーマルヘッド3が非通電に保たれた状態で、ロール紙6は前記小数部(y2)から算出された端数送り量(x)だけ、リボン2とともに逆方向に送り出される。そのため、リボン2の印刷予定色の先頭エッジとロール紙6がサーマルヘッド3の直下に位置できる。しかも、前記整数部送り量(y1)および端数送り量(x)は供給コア9に巻回されたリボン2の直径に基づいて算出されるため、リボン2の送り出しによりリボン2の直径が漸減しても、常に印刷位置を一定にできる。
【0033】
その後、サーマルヘッド3が通電され、図5(f)に示すように印刷されたリボン2を巻き取りコア10で、また印刷されたロール紙6を用紙コア17で巻き取りながら所定の印刷情報の印刷が行われるので、リボン2の塗布領域2aを余すところなく使用することができる。この間、次の塗布領域2aの先頭エッジを検出してから塗布領域2aの全域の印刷を終えるまでのリボン送り出し量y0が検出され、これが一時記憶され、次の塗布領域2aの印刷に備える。
【0034】
前記塗布領域2aの全域の印刷が終了すると、サーマルヘッド3が上昇し、ロール紙6が所定量送り出された後、前述の印刷を繰り返して3色のインクとラミネートを1セットとする印刷が行われる。この1セットの印刷が完了すると、印刷されたロール紙6は次の印刷面が所定の位置に達するまで排紙方向に排出され、次回の印刷に備えることができる。
【0035】
以上説明したように、本発明の実施形態は複数色のインクが配列されたリボン2の送り出し量を供給コア9の送り出し量として検出するパルスエンコーダ16と、リボン2に配列された各色の先頭を検出する先頭エッジ検出手段12と、パルスモータの回転によりロール紙6をサーマルヘッド3の下方に送る用紙送り機構5とを設け、さらに前記先頭エッジを検出する時のリボン2の直径とパルスエンコーダ16の1回転あたりのスリット量に基づいて前記先頭エッジ検出手段12からサーマルヘッド3までの搬送距離に対応するリボン2の送り出し量をパルスエンコーダ16のスリット量として算出する演算部13aおよびフィードローラ14を駆動するフィードローラ駆動部22にロール紙6の送り出し量と駆動指令信号とを送るとともに巻取りコア10に回転を与える巻取りコア駆動部21に駆動指令信号を送る指令部13bからなる制御部13を備えたサーマルカラープリンタであって、前記演算部13aは算出スリット量から整数部と小数部とを算出するとともに、小数部から端数送り量を逆算してパルスモータの1回転あたりの送り出し量に基づいて前記端数送り量に対するパルスモータの端数指令パルス数を算出する構成をなし、前記指令部13bは算出スリット量の整数部分供給コア9がリボン2を送り出すように駆動指令信号を巻取りコア駆動部21に送り、前記端数指令パルス数分非通電のサーマルヘッド3を下降させた状態でフィードローラ14を駆動するように駆動指令信号をフィードローラ駆動部22に送る構成をなすことを特徴としている。
【0036】
このように構成したことにより、リボン2に配列された各色の塗布領域2aの先頭エッジが検出されると、先頭エッジ検出時のリボン2の直径と(D)パルスエンコーダ16の1回転あたりのスリット量(N)に基づき、リボン2の搬送距離(X)に対応する供給コア9の送り出し量が算出スリット量(Y)として算出される。また、この算出スリット量(Y)から整数部(y1)と小数部(y2)とが算出され、さらに小数部(y2)から端数送り量(x)が逆算される。さらに、この整数部(y1)は整数部送り量(y1)となって、その整数部送り量(y1)だけ供給コア9の送り出し量が得られるように巻取りコア10が回転し、リボン2がサーマルヘッド3の下方近くまで移動する。その後、非通電のサーマルヘッド3が下降した状態で、前記端数送り量(x)に対応する端数指令パルス数分だけフィードローラ14が回転し、リボン2がロール紙6とともに逆方向に送り出されながら巻取りコア10に巻取られる。そのため、リボン2の先頭エッジは算出スリット量(Y)の小数部(y2)に対応した端数送り量(x)分補正されることとなり、リボン2の直径によらずリボン2に対する印刷開始位置精度を向上させ、常に先頭エッジを印刷開始位置とすることができるので、効率よくリボン2を消費することができる。
【0037】
また、本発明の実施形態のパルスモータは、1回転あたりのパルス数がパルスエンコーダ16の1回転あたりのスリット量よりも多く、パルスモータの分解能がパルスエンコーダ16の分解能よりも高いものであればよく、分解能の差が大きいほど各色の先頭エッジをより正確に印刷開始位置にすることができる。
【0038】
さらに、前記リボン2の直径をリボンセット時のリボン長さと1回印刷分に対するパルスエンコーダ16のスリット量により算出するように構成してもよく、この場合リボン2の伸びまたはしわ等の影響を受けずに、リボン直径を算出でき、各色の先頭エッジをより正確に印刷開始位置にすることができる。
【0039】
なお、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…サーマルカラープリンタ
2…リボン
3…サーマルヘッド
4…リボン送り機構
5…用紙送り機構
6…ロール紙
8…プラテンローラ
10…巻取りコア
12…先頭エッジ検出手段
13…制御部
13a…演算部
13b…指令部
14…フィードローラ
15…ピンチローラ
16…パルスエンコーダ
21…巻取りコア駆動部
22…フィードローラ駆動部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数色のインクが配列されたリボンの送り出し量を供給コアの送り出し量として検出するパルスエンコーダと、リボンに配列された各色の先頭を検出する先頭エッジ検出手段と、パルスモータの回転によりロール紙をサーマルヘッドの下方に送る用紙送り機構とを設け、さらに前記先頭エッジを検出する時のリボンの直径とパルスエンコーダの1回転あたりのスリット量に基づいて前記先頭エッジ検出手段からサーマルヘッドまでの搬送距離に対応するリボンの送り出し量をパルスエンコーダのスリット量として算出する演算部およびフィードローラを駆動するフィードローラ駆動部にロール紙の送り出し量と駆動指令信号とを送るとともに巻取りコアに回転を与える巻取りコア駆動部に駆動指令信号を送る指令部からなる制御部を備えたサーマルカラープリンタであって、前記演算部は算出スリット量から整数部と小数部とを算出するとともに、小数部から端数送り量を逆算してパルスモータの1回転あたりの送り出し量に基づいて前記端数送り量に対するパルスモータの端数指令パルス数を算出する構成をなし、前記指令部は算出スリット量の整数部分供給コアがリボンを送り出すように駆動指令信号を巻取りコア駆動部に送り、前記端数指令パルス数分非通電のサーマルヘッドを下降させた状態でフィードローラを駆動するように駆動指令信号をフィードローラ駆動部に送る構成をなすことを特徴とするサーマルカラープリンタ。
【請求項2】
パルスモータの1回転あたりのパルス数がパルスエンコーダの1回転あたりのスリット量よりも多く、パルスモータの分解能がパルスエンコーダの分解能よりも高いことを特徴とする請求項1に記載のサーマルカラープリンタ。
【請求項3】
リボン直径をリボンセット時のリボン長さと1回印刷分に対するパルスエンコーダのスリット量により算出することを特徴とする請求項1または2に記載のサーマルカラープリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−107326(P2013−107326A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255016(P2011−255016)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】