説明

サーマルプリンタ

【課題】1つのセンサを用いてサーマルヘッド、およびプラテンローラの何れか一方の装着状態、および記録紙の有無を高精度に検出しつつ、記録紙の走行キズを防止することができるサーマルプリンタを提供する。
【解決手段】サーマルヘッド3よりも記録紙の紙送り方向後方に配置され、サーマルヘッド3とプラテンローラ4との間に記録紙が介在しているか否かを検出するフォトインタラプタ30と、プラテンローラ4を装着した際、このプラテンローラ4に当接して変位するヘッド支持体17とを設け、ヘッド支持体17の変位に基づいて、フォトインタラプタ30による記録紙の検出が可能となるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、記録紙に発熱したサーマルヘッドを押し付けることで記録紙に印刷を行うサーマルプリンタ、およびサーマルプリンタの印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱を加えると変色する特殊な記録紙に、熱したサーマルヘッドを押し付けることで印刷を行うサーマルプリンタが知られている。サーマルプリンタは、多数の発熱素子を有するサーマルヘッドと、サーマルヘッドとの間に記録紙を挟むプラテンローラとを備えている。そして、プラテンローラを回転駆動させることにより、記録紙が送りだされるようになっている。
【0003】
ところで、サーマルヘッドとプラテンローラとの間に記録紙を容易に挟み込むため、プリンタ本体にサーマルヘッドを固定する一方、プラテンローラをプリンタ本体から着脱自在に設けたサーマルプリンタがある。このようなサーマルプリンタにあっては、プラテンローラが正常に装着されているか否か、また、サーマルヘッドとプラテンローラとの間に記録紙が挟まれているか否かを検出するセンサを取り付ける場合が多い。
【0004】
これは、サーマルプリンタでは、制御回路側から印刷情報がサーマルヘッドに送信され、この印刷情報に対応して発熱素子が加熱されるので、記録紙が無い場合、またはプラテンローラがサーマルヘッドに接触していない状態で印刷した場合、記録紙に正確な印刷を行うことが困難になる等、さまざまな不具合が生じるためである。
ここで、プラテンローラの装着状態、および記録紙の有無をそれぞれ別々のセンサで検出する場合と、1つのセンサで検出する場合とがある。
【0005】
1つのセンサで検出する場合、例えば、サーマルヘッドが固定されているプリンタ本体側であってプラテンローラの下方に記録紙の配索方向を規制する用紙ガイドを設け、この用紙ガイド上に荷重検知型センサを設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
このようなサーマルプリンタにあっては、プラテンローラを正常に装着し、かつ用紙ガイド上に記録紙が存在している状態のとき、記録紙の腰の強さによって荷重検知型センサの検出スイッチがオンされる。このため、1つのセンサでプラテンローラの装着状態と記録紙の有無とを検出することができ、それぞれを別のセンサで検出する場合と比較して部品点数を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−345264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、記録紙と荷重検知型センサとが接触するので、記録紙の荷重検知型センサへの接触圧が強くなると、紙送り時に記録紙が発色してしまう所謂走行キズ(搬送キズ)が生じる虞があるという課題がある。一方、記録紙の荷重検知型センサへの接触圧が弱くなると、記録紙が正常にセットされていることを検出できなくなる虞があり、検出精度が悪化するという課題がある。
【0008】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、1つのセンサを用いてサーマルヘッド、およびプラテンローラの何れか一方の装着状態、および記録紙の有無を高精度に検出しつつ、記録紙の走行キズを防止することができるサーマルプリンタを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係るサーマルプリンタは、記録紙に印刷を行うサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドとの間に前記記録紙を挟んだ状態で回転することで、前記記録紙を送り出すプラテンローラとを備え、前記サーマルヘッド、および前記プラテンローラの何れか一方を他方に対して着脱自在に設けたサーマルプリンタにおいて、前記サーマルヘッドよりも前記記録紙の紙送り方向後方に配置され、前記サーマルヘッドと前記プラテンローラとの間に前記記録紙が介在しているか否かを検出する光電センサと、前記サーマルヘッド、および前記プラテンローラの何れか一方を装着した際、この一方に当接して変位する変位部材とを設け、前記変位部材の変位に基づいて、前記光電センサによる前記記録紙の検出が可能となるように構成したことを特徴とする。
【0010】
このように構成することで、光電センサを1つ用いるだけでサーマルヘッド、およびプラテンローラの何れか一方の装着状態、および記録紙の有無を検出することができる。このため、センサと記録紙とが接触することがなく、記録紙の走行キズを防止することができる。
また、変位部材の変位に基づいて光電センサによる記録紙の検出が可能となるので、サーマルヘッド、およびプラテンローラの何れか一方が正常に装着されていない状態のとき、光電センサによって記録紙を検出する虞がない。このため、光電センサの誤検出を防止でき、サーマルヘッド、およびプラテンローラの何れか一方の装着状態、および記録紙の有無を高精度に検出することが可能になる。
【0011】
本発明に係るサーマルプリンタは、前記光電センサの発光路の途中に、この発光路の開放・遮断を行うシャッターを設け、前記変位部材の変位に基づいて、前記シャッターを開放移動させることを特徴とする。
このように構成することで、簡素な構造で記録紙の走行キズを防止することができると共に、サーマルヘッド、およびプラテンローラの何れか一方の装着状態、および記録紙の有無を高精度に検出することが可能になる。
【0012】
本発明に係るサーマルプリンタは、前記光電センサを、前記記録紙を検出可能な位置から検出不能な位置に至るまで移動可能に設け、前記変位部材と前記光電センサとをリンク部材により連結し、前記変位部材の変位を前記リンク部材を介して前記光電センサに伝達可能に構成し、前記変位部材の変位に基づいて、前記光電センサを検出可能な位置へ移動させることを特徴とする。
このように構成しても簡素な構造で記録紙の走行キズを防止することができると共に、サーマルヘッド、およびプラテンローラの何れか一方の装着状態、および記録紙の有無を高精度に検出することができる。このため、サーマルプリンタの仕様に応じて設計の自由度を高めることが可能になる。
【0013】
本発明に係るサーマルプリンタは、前記サーマルヘッドに対して前記プラテンローラを着脱自在に設け、前記変位部材は、前記サーマルヘッドを支持するヘッド支持体であり、このヘッド支持体は、前記サーマルヘッドを前記プラテンローラ側に向かって付勢可能に設けられていることを特徴とする。
このように構成することで、変位部材を別途設ける必要がなく、部品点数を減少させることができる。このため、サーマルプリンタの小型化、製造コストの低減化を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光電センサを1つ用いるだけでサーマルヘッド、およびプラテンローラの何れか一方の装着状態、および記録紙の有無を検出することができる。このため、センサと記録紙とが接触することがなく、記録紙の走行キズを防止することができる。
また、変位部材の変位に基づいて光電センサによる記録紙の検出が可能となるので、サーマルヘッド、およびプラテンローラの何れか一方が正常に装着されていない状態のとき、光電センサによって記録紙を検出する虞がない。このため、光電センサの誤検出を防止でき、サーマルヘッド、およびプラテンローラの何れか一方の装着状態、および記録紙の有無を高精度に検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態におけるサーマルプリンタの斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態におけるサーマルプリンタの概略縦断面図であって、プラテンローラを取り外した状態を示す。
【図3】本発明の第一実施形態におけるサーマルプリンタの概略縦断面図であって、プラテンローラを取り付けた状態を示す。
【図4】本発明の第二実施形態におけるサーマルプリンタの概略縦断面図であって、プラテンローラを取り外した状態を示す。
【図5】本発明の第二実施形態におけるサーマルプリンタの概略縦断面図であって、プラテンローラを取り付けた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第一実施形態)
(サーマルプリンタ)
次に、この発明の第一実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。
図1は、サーマルプリンタ1の斜視図、図2は、サーマルプリンタ1の概略縦断面図であって、プラテンローラ4を取り外した状態を示す。
図1、図2に示すように、サーマルプリンタ1は、例えば、携帯型の情報端末機器に組み込まれるものであって、記録紙Pの幅方向に長い略直方体状に形成されたフレーム2と、フレーム2に設けられたサーマルヘッド3と、記録紙Pを間に挟んだ状態でサーマルヘッド3と対向配置され、フレーム2に着脱自在、つまり、サーマルヘッド3に対して着脱自在に設けられたプラテンローラ4とを備えている。
【0017】
(フレーム)
フレーム2は、ポリカーボネート等のプラスチックの射出成型品であって、上面側(図1における上側)と、前端側(図1における紙面手前側)とがそれぞれ開口された収納部5を有している。収納部5は、プラテンローラ4を収納し、かつ記録紙Pを受け入れるためのものである。すなわち、収納部5の上部開口部18aは、プラテンローラ4を収納する役割を有している。
【0018】
一方、前端開口部18bは、記録紙Pを受け入れる役割を有しており、収納部5の底壁5aの長さL1は、記録紙Pの幅に対応する長さに設定されている。また、収納部5の底壁5aには、長手方向略中央に厚さ方向に沿って貫通する貫通孔6が形成されている。貫通孔6の上部周縁には、丸面取り部6aが形成されており、底壁5a上を通る記録紙Pの損傷を防止できるようになっている。
【0019】
底壁5aの下面側、つまり、プラテンローラ4とは反対側には、反射型の光電センサであるフォトインタラプタ30が配置されている。フォトインタラプタ30は、底壁5aに沿って案内された記録紙Pの有無を検出するためのものであって、受/発光部30aを貫通孔6側に向けた状態で配置されている。
【0020】
すなわち、貫通孔6は、フォトインタラプタ30の発光路として機能する。そして、フォトインタラプタ30は、底壁5aの貫通孔6を介して記録紙Pを検出するようになっている。貫通孔6は、底壁5aの長手方向略中央に配置されているので、フォトインタラプタ30により記録紙Pを確実に検出できる。ここで、フォトインタラプタ30は、フレーム2に接続されているフレキシブル基板19に電気的に接続されており、フレキシブル基板19を介して電力が供給されるようになっている。
【0021】
底壁5aの長手方向両端には、上方に向かって立ち上がり形成された1対の側壁5b,5bが設けられている。これら側壁5b,5bには、それぞれ上部周縁から高さ方向に切り込まれた凹部7が形成されている。これら凹部7,7には、プラテンローラ4の軸方向両端部が収容される。
【0022】
図2に示すように、側壁5b,5bの内面側には、プラテンローラ4の軸方向両端部が係合される1対のロックアーム9,9が設けられている。ロックアーム9は、側面視略C字状に形成されたものである。ロックアーム9は、プラテンローラ4の軸方向両端部に係合し、プラテンローラ4をサーマルヘッド3に向かって引き寄せるフック部10を備えている。
フック部10には、プラテンローラ4の軸方向両端部の外周面を支持する凹状の支持部11が形成されている。これら支持部11と側壁5bの凹部7との間に、プラテンローラ4の軸方向両端部が挟み込まれるようになっている。
【0023】
各フック部10のサーマルヘッド3側の後方(図2における左側)には、フック部10から後方に向かって延出するアーム部12が形成されている。各アーム部12の後端側は、収納部5の側壁5b近傍に設けられた支持シャフト41に回転自在に軸支されている。
また、各アーム部12の後端側には、これらアーム部12,12間に跨るように形成された弾性部材支持部13が設けられている。この弾性部材支持部13によって、フック部10が起き上がる方向に付勢されている。
【0024】
すなわち、プラテンローラ4をフレーム2に取り付ける前の状態にあっては、ロックアーム9がやや上向き、つまり、底壁5aとは反対側に向かって傾いている(図2参照)。
そして、プラテンローラ4を取り付けると、このプラテンローラ4の軸方向両端部にロックアーム9の支持部11が押圧され、ロックアーム9が底壁5a側に向かって傾動する(図3参照)。これにより、ロックアーム9のフック部10が、凹部7の周縁との間にプラテンローラ4の軸方向両端部をロックできる。
【0025】
また、1対のロックアーム9のうち一方のロックアーム9には、フック部10の前端側に、ロックアーム9を操作するレバー部14が一体成形されている。このレバー部14は、フック部10の前端上部から下方に向かって(図2における右端上部から下方に向かって)垂れ下がるように延出形成されている。
レバー部14の先端には、レバー部14から外側に向かって曲折形成された操作片15が設けられている。この操作片15を下方に向けて押下することにより、ロックアーム9がプラテンローラ4のロックを解除する方向に向かって回動する。
【0026】
さらに、各アーム部12の後端側に設けられている弾性部材支持部13には、導電性の2つのコイルバネ16,16を介して導電性のヘッド支持体17が設けられている。ヘッド支持体17は、この一面がフレーム2の幅方向、かつ上下方向に沿って延在する平板状に形成されたものである。ヘッド支持体17の幅方向の長さは1対のロックアーム9,9間の寸法よりもやや短くなる程度に設定されている。一方、上下方向の長さは、フレーム2の上部開口部18a近傍から底壁5aを貫き、底壁5aの下側に突出する程度に設定されている。
【0027】
底壁5aには、ヘッド支持体17に対応する位置に底壁5aの厚さ方向に貫通する開口窓43が形成されている。ヘッド支持体17の下端は、底壁5aの開口窓43を介して下方(図2における下方)に向かって突出している。
また、ヘッド支持体17には、幅方向両側から後方に向かって延出するブラケット44,44が設けられている。ブラケット44,44の先端部は、ロックアーム9を回転自在に支持する支持シャフト41に回転自在に支持されている。このため、ヘッド支持体17は、ロックアーム9と同様に支持シャフト41を中心にして傾動する。
【0028】
さらに、ヘッド支持体17は、コイルバネ16によって、ロックアーム9のレバー部14側、つまり、プラテンローラ4側に付勢された状態になっている。これにより、プラテンローラ4をフレーム2に取り付ける前の状態にあっては、ヘッド支持体17がやや前のめりに傾いた状態になっている(図2参照)。
そして、プラテンローラ4を取り付けると、このプラテンローラ4がサーマルヘッド3を介してヘッド支持体17の上部を後方に向かって押圧する。このため、ヘッド支持体17の上部が後方に向かうように、支持シャフト41を中心にして傾動する(図3参照)。
【0029】
ここで、フレーム2にプラテンローラ4を取り付ける前の状態から取り付けた後の状態に至る間に、ヘッド支持体17の上部が前のめり状態から後方へ向かって傾動するので、ヘッド支持体17の下部は、後方から前方に向かって変位することになる。このため、フレーム2の底壁5aに形成されている開口窓43の大きさは、ヘッド支持体17の下部の変位を許容可能に設定されている。
【0030】
(サーマルヘッド)
サーマルヘッド3は記録紙Pに対して印刷を行うものであって、ヘッド支持体17の上部に固定されている。サーマルヘッド3は、フレーム2の長手方向、つまり、記録紙Pの幅方向に沿って長く形成されており、多数の発熱素子(不図示)を有している。
これら発熱素子は、フレーム2に接続されているフレキシブル基板19を介して不図示の制御部に電気的に接続されている。この制御部からの信号に基づいて、各発熱素子が発熱するように制御されている。そして、発熱素子の発熱を制御することにより、各種の文字や図形等を記録紙Pの印刷面に印刷することが可能となっている。
【0031】
すなわち、記録紙Pは、収納部5の底壁5aに沿って引き込まれた後、サーマルヘッド3の一面に沿うように、底壁5aとは反対側の上方に向かって引き出される(図1参照)。
また、サーマルヘッド3はヘッド支持体17に固定されているので、2つのコイルバネ16によって、プラテンローラ4側に付勢された状態となっている。
【0032】
(プラテンローラ)
プラテンローラ4は、不図示のローラシャフト21aにゴム等からなるローラ本体21bが外装されたものである。フレーム2にプラテンローラ4を取り付けたとき、ローラシャフト21aの軸方向両端部が1対の側壁5b,5bの凹部7内に嵌る。そして、凹部7内にローラシャフト21aが嵌ることにより、プラテンローラ21がフレームに対して回転可能に支持される。
【0033】
フレーム2にプラテンローラ4を取り付けると、プラテンローラ21の外周面は、記録紙Pを間に挟んでサーマルヘッド3に接触した状態になる。また、ローラシャフト21aの一端側には、従動ギヤ22が固定されている。この従動ギヤ22は、プラテンローラ4をセットした際、フレーム2側に取り付けられた不図示の歯車伝達機構に噛合するようになっている。歯車伝達機構は、フレーム2の弾性部材支持部13よりも後方(図1における紙面奥側)に設けられている電動モータ23に連係されている。
【0034】
電動モータ23は、プラテンローラ21を回転駆動させるためのものである。すなわち、電動モータ23を駆動させると、この駆動力が不図示の歯車伝達機構を介して従動ギヤ22に伝達される。そして、従動ギヤ22と共に、プラテンローラ21が回転し、記録紙Pをフレーム2における収納部5の底壁5aから上方に向かって送り出す。
なお、電動モータ23は、フレキシブル基板19に電気的に接続されており、このフレキシブル基板19を介して不図示の外部電源から電力が供給されるようになっている。
【0035】
ここで、フレーム2の底壁2aとフォトインタラプタ30との間には、シャッター42が設けられている。このシャッター42は、フォトインタラプタ30の受/発光部30aから照射される光レーザ(不図示)の発光路を開放・遮断するためのものであって、略平板状に形成されている。シャッター42は、フレーム2の前後方向に沿ってスライド自在に設けられている。
【0036】
また、シャッター42の後端(図2における左側端)は、ヘッド支持体17の下端に回動可能に係合されている。すなわち、シャッター42は、ヘッド支持体17の変位に連動してスライド移動するようになっている。
さらに、シャッター42の一部には、底壁5aの貫通孔6に対応する大きさの開口窓43が形成されている。この開口窓43は、フレーム2にプラテンローラ4を取り付けた状態のとき、貫通孔6、およびフォトインタラプタ30の受/発光部30aと同一直線状に位置するように形成されている。
【0037】
すなわち、フレーム2にプラテンローラ4が取り付けられていない状態にあっては、底壁5aに形成されている貫通孔6の下端がシャッター42によって閉塞された状態になる。
また、フレーム2にプラテンローラ4が正確に取り付けられていない状態にあっては、底壁5aの貫通孔6の中心とシャッター42の開口窓43の中心とがずれ、フォトインタラプタ30の発光路がシャッター42によって遮断された状態になる。
【0038】
ここで、フォトインタラプタ30の感度調整は、貫通孔6の上端近傍を検出できるように行われる。このため、貫通孔6の下端がシャッター42によって閉塞された状態では、フォトインタラプタ30によって何ら検出されない。
なお、例えば、設計の都合上、プラテンローラ4の位置が貫通孔6の上端近傍に位置するようなレイアウトとなる場合であっても、プラテンローラ4の表面を黒色等、光レーザの反射率が低い色に設定することにより、貫通孔6の上部の記録紙Pの有無を検出可能な感度調整を行うことも可能である。
【0039】
(作用)
次に、図2、図3に基づいて、サーマルプリンタ1の動作について説明する。
図2に示すように、フレーム2からプラテンローラ4が離脱している状態にあっては、ヘッド支持体17がやや前のめりに傾いた状態になっている。このため、シャッター42が後方に向かってスライド移動し、貫通孔6を閉塞している。すると、フォトインタラプタ30の発光路が遮断され、フォトインタラプタ30によって何ら検出することができない。ここで、フォトインタラプタ30の駆動開始タイミングは、サーマルプリンタ1の電源オンと同時に開始されるように設定されている。
【0040】
図3は、サーマルプリンタ1の概略縦断面図であって、プラテンローラ4を取り付けた状態を示す。
図3に示すように、フレーム2にプラテンローラ4を取り付けると、このプラテンローラ4のローラシャフト21aがロックアーム9の支持部11を押圧し、支持シャフト41を中心にしてロックアーム9を底壁5a側に向かって傾動させる。また、プラテンローラ4がサーマルヘッド3を介してヘッド支持体17の上部を後方に向かって押圧し、支持シャフト41を中心にしてヘッド支持体17を後方に向かって傾動させる。
【0041】
このため、ヘッド支持体17の下端に係合されているシャッター42がヘッド支持体17と連動し、前方に向かってスライド移動する。そして、シャッター42の開口窓43が貫通孔6、およびフォトインタラプタ30の受/発光部30aと同一直線状に位置する。
この状態のとき、サーマルヘッド3とプラテンローラ4との間に記録紙Pが挟まれ、底壁5aに形成されている貫通孔6状に記録紙Pが存在していると、フォトインタラプタ30により記録紙Pが検出される。
【0042】
フォトインタラプタ30による検出信号は、不図示の制御部に出力される。制御部はサーマルヘッド3や電動モータ23などに動作指令信号を出力する。これにより、サーマルヘッド3によって記録紙Pに印刷が施される。また、電動モータ23の駆動に基づいて、プラテンローラ4が記録紙Pを上方に向かって送り出すように回転する。
【0043】
ここで、記録紙Pの送り方向に対し、サーマルヘッド3の後方で記録紙Pの有無を検出しているので、フォトインタラプタ30によって記録紙Pが検出された際、サーマルヘッド3上には、確実に記録紙Pが存在していることになる。
また、底壁5aに形成されている貫通孔6の上部周縁には、丸面取り部6aが形成されている。このため、プラテンローラ21により送り出される記録紙Pが貫通孔6上をスムーズに移動するので、貫通孔6のエッジによって記録紙Pが損傷することがない。
【0044】
さらに、フレーム2にプラテンローラ4を取り付けた時点で、フォトインタラプタ30の発光路がシャッター42により遮断されないので、フォトインタラプタ30による検出が可能な状態になっている。しかしながら、フォトインタラプタ30の感度調整が貫通孔6の上端近傍を検出できるように行われている。このため、記録紙Pが底壁5aの貫通孔6上に存在していない場合、フォトインタラプタ30により何ら検出されない。このような場合、フォトインタラプタ30から不図示の制御部に信号が出力されず、サーマルプリンタ1は動作不能のままになる。
【0045】
一方、フレーム2にプラテンローラ4が正確に取り付けられていない状態の場合、ヘッド支持体17が僅かに変位し、これに伴ってシャッター42も僅かにスライド移動する。しかしながら、シャッター42に形成された開口窓43の大きさは、底壁5aの貫通孔6に対応する大きさに設定されているので、開口窓43の中心と貫通孔6の中心とがずれた状態ではフォトインタラプタ30の発光路が遮断されたままになる。この場合もフォトインタラプタ30から不図示の制御部に信号が出力されず、サーマルプリンタ1は動作不能となる。
【0046】
(効果)
したがって、上述の第一実施形態によれば、フレーム2にプラテンローラ4を確実に取り付け、かつ記録紙Pがセットされていないと、この記録紙Pをフォトインタラプタ30により検出することができない。このため、1つのフォトインタラプタ30だけでプラテンローラ4の装着状態、および記録紙Pの有無を高精度に検出することができる。また、フォトインタラプタ30を使用して記録紙Pの有無を検出するので、フォトインタラプタ30と記録紙Pとが接触することがなく、記録紙Pの走行キズを防止することができる。
【0047】
さらに、フォトインタラプタ30の発光路の途中、つまり、フレーム2の底壁5aとフォトインタラプタ30との間に、発光路の開放・遮断を行うシャッター42をスライド移動可能に設け、このシャッター42をヘッド支持体17に連結している。このため、ヘッド支持体17の変位に基づいて、フォトインタラプタ30による検出の可否を決定することができる。
この結果、フォトインタラプタ30を常時オンにしておくことができ、複雑な制御回路を設ける必要がない。さらに、ヘッド支持体17を利用してシャッター42をスライド移動させるので、サーマルプリンタ1全体の構造を簡素化できる。よって、サーマルプリンタ1の小型化、製造コストの低減化を図ることが可能になる。
【0048】
(第二実施形態)
次に、この発明の第二実施形態を図1を援用し、図4、図5に基づいて説明する。なお、第一実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明する。
この第二実施形態において、サーマルプリンタ201は、例えば、携帯型の情報端末機器に組み込まれるものであって、記録紙Pの幅方向に長い略直方体状に形成されたフレーム2と、フレーム2に設けられたサーマルヘッド3と、記録紙Pを間に挟んだ状態でサーマルヘッド3と対向配置され、サーマルヘッド3に対して着脱自在に設けられたプラテンローラ4とを備えている点、フレーム2に、プラテンローラ4がロックアーム9を介してロックされた状態で取り付けられる点、プラテンローラ4を取り付けると、このプラテンローラ4がサーマルヘッド3を介してヘッド支持体17の上部を後方に向かって押圧し、ヘッド支持体17の上部が後方に向かうように、支持シャフト41を中心にして傾動する点、ヘッド支持体17の下端は、底壁5aの開口窓43を介して下方に向かって突出し、前後方向に沿って変位する点、底壁5aには、長手方向略中央に貫通孔6が形成され、この貫通孔6の下端近傍にフォトインタラプタ30が配置されている点、フォトインタラプタ30は、サーマルプリンタ1の電源オンと同時に、駆動開始している等の基本的構成は上述の第一実施形態と同様である。
【0049】
図4は、サーマルプリンタ201の概略縦断面図であって、プラテンローラ4を取り外した状態を示す。図5は、サーマルプリンタ201の概略縦断面図であって、プラテンローラ4を取り付けた状態を示す。
ここで、図4に示すように、第二実施形態のフォトインタラプタ30は、フレーム2に対して回動自在に設けられている。また、フォトインタラプタ30は、リンクアーム51を介してヘッド支持体17の下端に連結されている。
【0050】
このような構成のもと、フレーム2にプラテンローラ4が取り付けられていない状態にあっては、フォトインタラプタ30が底壁5aの貫通孔6に対して傾いた状態なる。
また、フレーム2にプラテンローラ4が正確に取り付けられていない状態の場合、ヘッド支持体17が僅かに変位し、ヘッド支持体17にリンクアーム51を介して連結しているフォトインタラプタ30が僅かに回動する。しかしながら、フォトインタラプタ30が僅かに回動し、フォトインタラプタ30の貫通孔6に対する傾き角度が小さくなるものの、フォトインタラプタ30の受/発光部30aと貫通孔6との位置はずれたままの状態になる。
【0051】
一方、図5に示すように、フレーム2にプラテンローラ4が正確に取り付けられている状態にあっては、ヘッド支持体17の変位に基づいて、フォトインタラプタ30が受/発光部30aと貫通孔6との位置が一致するように回動する。これにより、貫通孔6がフォトインタラプタ30の発光路として機能し、フォトインタラプタ30による記録紙Pの検出が可能になる。
すなわち、第二実施形態のフォトインタラプタ30は、記録紙Pを検出可能な位置から検出不能な位置に至るまで移動可能に設けられており、ヘッド支持体17の変位に基づいて、記録紙Pの検出が可能な姿勢に移動するように構成されている。
【0052】
したがって、上述の第二実施形態によれば、前述した第一実施形態と同様の効果を奏することができる。また、前述した第一実施形態のシャッター42に代わってリンクアーム51を用い、プラテンローラ4の装着状態、および記録紙Pの有無を検出することから、サーマルプリンタ201の仕様や設置スペースに応じ、シャッター42やリンクアーム51を使い分けることができる。このため、サーマルプリンタ201の設計の自由度を高めることが可能になる。
【0053】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、サーマルプリンタ1,201は、携帯型の情報端末機器に組み込まれるものである場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、サーマルプリンタ1,201は、レジスターやPOS(Point Of Sales)端末、ATM装置等、さまざまな用途に用いることができる。
【0054】
また、上述の実施形態では、フォトインタラプタ30の駆動開始タイミングは、サーマルプリンタ1の電源オンと同時に設定されている。そして、第一実施形態では、ヘッド支持体17の変位に基づいてシャッター42をスライド移動し、フォトインタラプタ30の発光路を開放・遮断して検出の可否を制御する場合について説明した。さらに、第二実施形態ではヘッド支持体17の変位に基づいてリンクアーム51を介してフォトインタラプタ30を回動させ、フォトインタラプタ30の検出の可否を制御する場合について説明した。
しかしながら、これに限られるものではなく、ヘッド支持体17の変位に基づいてフォトインタラプタ30の駆動開始タイミングを制御するように構成してもよい。すなわち、例えば、ヘッド支持体17の変位を不図示の制御部が検出できるように構成し、制御部による検出結果に基づいてフォトインタラプタ30の電源をオン・オフ制御する。このように構成することで、シャッター42やリンクアーム51を削除することができ、部品点数を減少できる。
【0055】
また、上述の第一実施形態では、サーマルヘッド3を支持するヘッド支持体17の傾動を利用してシャッター42をスライド移動させる場合について説明した。さらに、上述の第二実施形態では、ヘッド支持体17の傾動を利用してフォトインタラプタ30を回動させる場合について説明した。
しかしながら、これに限られるものではなく、フレーム2にプラテンローラ4を取り付けた際、このプラテンローラ4に当接して変位する変位部材を別途設けてもよい。この場合、変位部材の変位に基づいてシャッター42をスライド移動させたり、フォトインタラプタ30を回動させたりするように構成する。
【0056】
そして、上述の実施形態では、フレーム2にサーマルヘッド3を固定する一方、プラテンローラ4をフレーム2(サーマルヘッド3)に対して着脱自在に設けた場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、フレーム2にプラテンローラ4を固定する一方、サーマルヘッド3をフレーム2(プラテンローラ4)に対して着脱自在に設けてもよい。
この場合であってもヘッド支持体17の変位に基づいてシャッター42をスライド移動させたり、フォトインタラプタ30を回動させたりするように構成すればよい。また、サーマルヘッド3やヘッド支持体17に当接して変位する変位部材を別途設け、この変位部材の変位に基づいてシャッター42をスライド移動させたり、フォトインタラプタ30を回動させたりするように構成してもよい。
【0057】
また、上述の実施形態では、記録紙Pを検出するセンサとして反射型の光電センサであるフォトインタラプタ30を用いた場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、フォトインタラプタ30に代わって、さまざまな光電センサを用いることが可能である。
例えば、透過型の光電センサを用いる場合、発光部、および受光部の何れか一方をフレーム2側に取り付け、他方をプラテンローラ4側に取り付ける。この場合であっても、第一実施形態のシャッター42により発光路を開放・遮断するように構成すればよい。また、第二実施形態のリンクアーム51を用いて発光部、および受光部の何れか一方を回動可能に構成すればよい。
【0058】
さらに、上述の第二実施形態では、ヘッド支持体17とフォトインタラプタ30とをリンクアーム51を介して連結した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ヘッド支持体17とフォトインタラプタ30との間に複数のリンクアームで構成されるリンク機構を設け、このリンク機構を介してヘッド支持体17とフォトインタラプタ30とを連結してもよい。
【0059】
そして、上述の第二実施形態では、フォトインタラプタ30を回動自在に設け、ヘッド支持体17の変位に基づいて回動するように構成し、検出可否状態を切換える場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、フォトインタラプタ30を記録紙Pの検出が可能な位置から検出が不能な位置に至るまで移動可能に設ければよい。
例えば、フォトインタラプタ30をスライド移動可能に設け、ヘッド支持体17の変位に基づいて底壁5aの貫通孔6の真下に移動するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1,201 サーマルプリンタ
2 フレーム
3 サーマルヘッド
4 プラテンローラ
17 ヘッド支持体
30 フォトインタラプタ(光電センサ)
42 シャッター
43 開口窓
51 リンクアーム(リンク部材)
P 記録紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙に印刷を行うサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドとの間に前記記録紙を挟んだ状態で回転することで、前記記録紙を送り出すプラテンローラとを備え、
前記サーマルヘッド、および前記プラテンローラの何れか一方を他方に対して着脱自在に設けたサーマルプリンタにおいて、
前記サーマルヘッドよりも前記記録紙の紙送り方向後方に配置され、前記サーマルヘッドと前記プラテンローラとの間に前記記録紙が介在しているか否かを検出する光電センサと、
前記サーマルヘッド、および前記プラテンローラの何れか一方を装着した際、この一方に当接して変位する変位部材とを設け、
前記変位部材の変位に基づいて、前記光電センサによる前記記録紙の検出が可能となるように構成したことを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記光電センサの発光路の途中に、この発光路の開放・遮断を行うシャッターを設け、
前記変位部材の変位に基づいて、前記シャッターを開放移動させることを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記光電センサを、前記記録紙を検出可能な位置から検出不能な位置に至るまで移動可能に設け、
前記変位部材と前記光電センサとをリンク部材により連結し、前記変位部材の変位を前記リンク部材を介して前記光電センサに伝達可能に構成し、
前記変位部材の変位に基づいて、前記光電センサを検出可能な位置へ移動させることを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
前記サーマルヘッドに対して前記プラテンローラを着脱自在に設け、
前記変位部材は、前記サーマルヘッドを支持するヘッド支持体であり、
このヘッド支持体は、前記サーマルヘッドを前記プラテンローラ側に向かって付勢可能に設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載のサーマルプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−56773(P2011−56773A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208611(P2009−208611)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】