説明

サーモクロミック微粒子、その分散液、その製造方法、ならびに調光性塗料、調光性フィルムおよび調光性インク

【課題】R相の二酸化バナジウム(VO)粒子を含み、良好な自動調光性を有するサーモクロミック微粒子を提供することを目的とする。
【解決手段】ルチル型(R相)の二酸化バナジウム(VO)の粒子と、ルチル型の二酸化チタン(TiO)の粒子とを含むサーモクロミック微粒子であって、少なくとも一つの前記二酸化バナジウム(VO)の粒子は、前記二酸化チタン(TiO)の粒子上に、該二酸化チタン(TiO)の粒子よりも大きく、ロッド状に成長していることを特徴とするサーモクロミック微粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子およびその分散液に関し、特に、ルチル型結晶相の二酸化バナジウム(VO)を含む微粒子およびその分散液に関する。また、本発明は、そのような微粒子を製造する方法、ならびにそのような微粒子を含む調光性塗料、調光性フィルムおよび調光性インクに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅やビル等の建物、および車両など移動体など、内部(室内、車両内)と外部環境との間で大きな熱交換が生じる箇所(例えば窓ガラス)において、省エネ性と快適性とを両立するため、自動調光材料の適用が期待されている(例えば特許文献1)。
【0003】
「自動調光材料」とは、例えば透明状態/反射状態等の光学的な性質を、温度により制御することが可能な材料である。例えば、建物の窓ガラスにそのような材料を適用した場合、夏には太陽光を反射させて熱を遮断し、冬には太陽光を透過させて熱を吸収させることが可能となる。
【0004】
現在最も着目されている自動調光材料の一つに、二酸化バナジウム(VO)を含む自動調光材料がある。この材料は、二酸化バナジウム(VO)の半導体相と金属相との間の相転移の際に生じる、サーモクロミック特性(温度により、光学特性が可逆的に変化する性質)を利用しており、これにより環境温度依存型の調光特性を得ることができる。
【0005】
自動調光材料を有するガラスは、例えばガラス基板への二酸化バナジウム(VO)のスパッタリング処理により得ることができる。あるいは、ある基板上に、二酸化バナジウム(VO)薄膜をスパッタリングした後、この薄膜をフィルム側に転写し、さらにフィルムに転写された薄膜を、最終ガラス基板側に転写させることにより、自動調光材料を有するガラスを得ることができる(例えば特許文献2、3)。
【0006】
しかしながら、このようなスパッタリング処理による自動調光材料の形成方法では、結晶性の良い二酸化バナジウム(VO)膜を得るには、成膜時に基板を例えば400℃程度まで加熱する必要があり、製造工程が複雑で、コストが高くなるという問題がある。また、既設の建物の窓ガラスに、スパッタリング処理を適用することは、難しいという問題がある。
【0007】
このため、別の方法として、二酸化バナジウム(VO)を含む微粒子またはその分散液を調製し、これを例えば接着材を介して、自動調光性を発現させたい部材に設置することにより、自動調光性を有する部材を製造することが検討されている(例えば特許文献4−6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2735147号明細書
【特許文献2】特許第3849008号明細書
【特許文献3】特開2007−326276号公報
【特許文献4】特表平10−508573号
【特許文献5】特開2004−346260号公報
【特許文献6】特開2004−346261号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Zhou Gui,et al:Chem.Mater.14(2002)5053
【非特許文献2】Jianqiu shi,et al:Solar Energy Materials and Solar Cells,91(2007)1856
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、二酸化バナジウム(VO)材料には、A相、B相およびルチル相など、いくつかの結晶相の多形が存在するが、前述のような自動調光性を示す結晶構造は、ルチル型結晶相(以下、「R相」という)に限られる。なお、R相は、転移温度以下では、単斜晶系(monoclinic)の構造を有するため、M相とも呼ばれている。また、二酸化バナジウム(VO)粒子において、実質的に有意な自動調光性を発現させるためには、R相の粒子サイズは、サブミクロン以下の寸法である必要がある。
【0011】
前述の特許文献4−6に記載の技術では、最初にバナジウムイオンを含む溶液から二酸化バナジウム(VO)の前駆体を合成し、この前駆体を、例えば350℃〜650℃程度の高温で還元焼成したり、熱分解したりすることにより、R相の二酸化バナジウム(VO)粒子を調製している。
【0012】
しかしながら、そのような高温の熱処理を実施すると、粒子同士が凝集してしまうため、この方法では、最終的に得られる二酸化バナジウム(VO)粒子の寸法は、ミクロンオーダー以上の寸法となってしまう場合が多い。そのため、この方法で得られた二酸化バナジウム(VO)粒子では、調光特性が得られなかったり、あるいは得られる調光特性が著しく劣るなどの問題がある。
【0013】
また最近、水熱反応等による二酸化バナジウム(VO)微粒子の製作方法について、幾つかの報告がされている(非特許文献1、2)。しかしながら、それらの文献に示す方法では、得られる二酸化バナジウム(VO)の微粒子前駆体は、自動調光性を示さないA相またはB相、またはアモルファス相であり、微粒子に良好な調光性を発現させるためには、得られた微粒子をR相に変換するため、さらに還元焼成などの追加のプロセスが必要となる。
【0014】
しかしながら、この還元焼成のため、微粒子を高温で熱処理すると、前述のように、粒子同士が凝集してしまうため、最終的にサブミクロンオーダーの微粒子を得ることは極めて難しい。従って前述のような方法で得られたVOを含む微粒子においても、調光性が劣るという問題が生じる。
【0015】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、本発明では、R相の二酸化バナジウム(VO)粒子を含み、良好な自動調光性を有する微粒子およびその分散液を提供することを目的とする。また、本発明では、そのような微粒子の製造方法、ならびにそのような微粒子を含む調光性塗料、調光性フィルムおよび調光性インクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では、ルチル型(R相)の二酸化バナジウム(VO)の粒子と、ルチル型の二酸化チタン(TiO)の粒子とを含むサーモクロミック微粒子であって、
少なくとも一つの前記二酸化バナジウム(VO)の粒子は、前記二酸化チタン(TiO)の粒子上に、該二酸化チタン(TiO)の粒子よりも大きく、ロッド状に成長していることを特徴とするサーモクロミック微粒子が提供される。
【0017】
ここで、本発明によるサーモクロミック微粒子は、さらに、アナターゼ型の二酸化チタン(TiO)の粒子を含んでいても良い。
【0018】
また、本発明によるサーモクロミック微粒子は、さらに、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、ゲルマニウム(Ge)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、フッ素(F)およびリン(P)からなる群から選定された、少なくとも一つの元素を含んでも良い。
【0019】
ここで、前記少なくとも一つの元素の含有量は、当該サーモクロミック微粒子に含まれるバナジウムに対して、0.1〜5.0原子%の範囲であっても良い。
【0020】
また、本発明によるサーモクロミック微粒子において、前記二酸化バナジウム(VO)の粒子の量と、前記二酸化チタン(TiO)の粒子の量の重量比は、5:95〜95:5の範囲であっても良い。
【0021】
また、本発明によるサーモクロミック微粒子において、二酸化バナジウム(VO)の含有量は、当該サーモクロミック微粒子全体に対して、5〜95重量%の範囲であっても良い。
【0022】
また、本発明によるサーモクロミック微粒子は、前記ロッドの長手軸に対して垂直な方向の平均寸法が、サブミクロン以下であっても良い。
【0023】
また、本発明によるサーモクロミック微粒子は、前記ロッドの長手軸に対して垂直な方向の平均寸法が、200nm以下であっても良い。
【0024】
また、本発明によるサーモクロミック微粒子において、当該サーモクロミック微粒子の表面の少なくとも一部は、コーティング処理および/または表面改質処理されていても良い。
【0025】
また、本発明によるサーモクロミック微粒子は、調光特性と、光触媒特性とをともに有しても良い。
【0026】
また、本発明では、前述の特徴を有するサーモクロミック微粒子を含む分散液が提供される。
【0027】
また、本発明では、ルチル型(R相)の二酸化バナジウム(VO)粒子を含む微粒子の製造方法であって、
(1)バナジウムを含む化合物と、水とを含む溶液を調製するステップと、
(2)前記溶液に、少なくとも一部がルチル型結晶相からなる二酸化チタン(TiO)の粒子を添加して、懸濁液を調製するステップと、
(3)前記懸濁液を水熱反応させるステップであって、これによりR相の二酸化バナジウム(VO)の粒子を含む微粒子が得られるステップと、
を有することを特徴とする製造方法が提供される。
【0028】
本発明による製造方法において、前記バナジウムを含む化合物は、
五酸化二バナジウム(V)、バナジン酸アンモニウム(NHVO)、シュウ酸バナジル水和物(VOC・nHO)、酸化硫酸バナジウム(VOSO・nHO)、3塩化酸化バナジウム(VOCl)、およびメタバナジン酸ナトリウム(NaVO)からなる群から選定された、少なくとも一つの化合物であっても良い。
【0029】
また本発明による製造方法は、前記ステップ(1)または(2)において、さらに、還元剤および/もしくは酸化剤を加えるステップを有しても良い。
【0030】
ここで、前記還元剤および/または酸化剤は、
シュウ酸、酢酸、ギ酸、マロン酸、プロピオン酸、コハク酸、クエン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、酪酸、吉草酸、安息香酸、没食子酸、メリト酸、乳酸、リンゴ酸、マレイン酸、アコニット酸、グルタル酸、メタノール、フェノール、エチレングリコール、クレゾール、エタノール、ジメチルホルムアルデヒド、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、プロパノール、ブタノール、ヒドラジン、過酸化水素、過酢酸、クロラミン、ジメチルスルホキシド、メタクロロ過安息香酸、および硝酸からなる群から選定された、少なくとも一つの化合物であっても良い。
【0031】
また、本発明による製造方法は、前記ステップ(1)または(2)において、さらに、pH調整剤を加えるステップを有しても良い。
【0032】
この場合、前記pH調整剤は、
硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、フッ酸、水酸化アンモニウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、および水酸化カルシウムからなる群から選定された、少なくとも一つであっても良い。
【0033】
また、本発明による製造方法は、
前記ステップ(1)または(2)において、さらに、前記溶液に、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、ゲルマニウム(Ge)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、フッ素(F)およびリン(P)からなる群から選定された、少なくとも一つの元素またはその化合物を添加するステップを含んでも良い。
【0034】
また前記ステップ(3)は、280℃以下の温度で実施され、あるいは250℃以下の温度で実施されても良く、220℃以下の温度で実施されても良い。
【0035】
さらに、前記ステップ(3)は、1時間以上5日間以内の時間範囲で実施されても良い。
【0036】
また、本発明による製造方法は、さらに、
(4)ステップ(3)の後に、得られた前記微粒子を、表面処理または表面改質するステップを有しても良い。
【0037】
また、本発明による製造方法において、前記二酸化バナジウム(VO)粒子の量は、前記微粒子の全重量に対して、5〜95重量%の範囲であっても良い。
【0038】
さらに本発明では、前述の特徴を有するサーモクロミック微粒子を含む調光性塗料、調光性フィルム、および調光性インクが提供される。
【0039】
さらに、本発明では、ルチル型(R相)の二酸化バナジウム(VO)の粒子と、ルチル型の二酸化チタン(TiO)の粒子とを含むサーモクロミック微粒子の製造方法であって、
(1)バナジウムを含む化合物と、水とを含む溶液を調製するステップと、
(2)前記溶液に、少なくとも一部がルチル型結晶相からなる二酸化チタン(TiO)の粒子を添加して、懸濁液を調製するステップと、
(3)前記懸濁液を水熱反応させるステップと、
を有し、
これにより前記サーモクロミック微粒子が得られ、
該サーモクロミック微粒子において、
少なくとも一つの前記二酸化バナジウム(VO)の粒子は、前記二酸化チタン(TiO)の粒子上に、該二酸化チタン(TiO)の粒子よりも大きく成長しており、
前記少なくとも一つの前記二酸化バナジウム(VO)の粒子は、前記二酸化チタン(TiO)の粒子と結晶軸が揃っていることを特徴とする製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0040】
本発明では、R相の二酸化バナジウム(VO)粒子を含み、良好な自動調光性を有する微粒子およびその分散液が提供される。また、本発明では、そのような微粒子の製造方法、ならびにそのような微粒子を含む調光性塗料、調光性フィルムおよび調光性インクが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明による微粒子を製造するためのフローチャートである。
【図2】実施例1に係る微粒子のXRDパターンである。
【図3】実施例1に係る微粒子のSEM写真である。
【図4】実施例1に係る微粒子を設置したガラス基板サンプルの透過特性を示す図である。
【図5】実施例1に係る微粒子を設置したガラス基板サンプルの赤外透過率の温度依存性を示す図である。
【図6】実施例2に係る微粒子のXRDパターンである。
【図7】実施例2に係る微粒子のSEM写真である。
【図8】実施例3に係る微粒子を設置したガラス基板サンプルの透過特性を示す図である。
【図9】実施例3に係る微粒子を設置したガラス基板サンプルの赤外透過率の温度依存性を示す図である。
【図10】比較例1に係る粒子のXRDパターンである。
【図11】比較例1に係る粒子のSEM写真である。
【図12】実施例4に係る微粒子のXRD測定の結果である。
【図13】実施例4に係る微粒子のSEM写真を、種結晶として使用した二酸化チタン(TiO)の粒子の写真とともに示した図である。
【図14】実施例4に係る微粒子の中から選定した一つの結晶について、元素分析を行った結果である。
【図15】実施例4に係る微粒子の中から選定した一つの結晶についての、TEM写真および電子線回折パターンを示した図である。
【図16】実施例5に係る微粒子を含む調光ガラス基板サンプルの20℃および80℃における、光学透過特性の測定結果である。
【図17】実施例5に係る微粒子を含む調光ガラス基板サンプルの赤外透過率の温度依存性を示したグラフである。
【図18】実施例6に係る微粒子を含む調光ガラス基板サンプルの20℃および80℃における、光学透過特性の測定結果を示したグラフである。
【図19】比較例2に係る微粒子のXRDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
前述のように、従来、ルチル型結晶相(R相)の二酸化バナジウム(VO)粒子を得るには、バナジウムイオンを含む溶液から、二酸化バナジウム(VO)の前駆体を合成し、この前駆体を高温(350℃〜650℃)で熱処理する工程が必要であった。あるいは、水熱反応を利用して、A相またはB相の二酸化バナジウム(VO)粒子を調製し、これを高温熱処理(350℃〜650℃)することにより、R相の二酸化バナジウム(VO)粒子を得ていた。ここで、「水熱反応」とは、温度と圧力が、水の臨界点(375℃、22MPa)よりも低い熱水(亜臨界水)中において生じる化学反応を意味する。
【0043】
しかしながら、これらの方法では、いずれも高温での熱処理が必要であり、この熱処理中に粒子同士が凝集してしまうため、最終的に得られるR相の二酸化バナジウム(VO)粒子をサブミクロンオーダーまで微細化することは極めて難しいという問題があった。
【0044】
このような背景の下、本願発明者は、バナジウム化合物と、ルチル型結晶相の二酸化チタン(TiO)粒子とを水溶液中に混在させた状態で、水熱反応を生じさせると、極めて微細な(例えば、サブミクロンオーダーの)R相からなる二酸化バナジウム(VO)の粒子が直接形成されることを見出し、本願発明に至ったものである。
【0045】
すなわち、本発明では、従来のような後熱処理を実施しなくても、ルチル型結晶相を含む二酸化チタン(TiO)の粒子と混在した状態で、R相を含む二酸化バナジウム(VO)の微粒子を得ることができる。また得られる微粒子は、サブミクロン以下の極めて微細なものであるため、特に追加の工程を加えることなく、良好な調光性を発現させることができる。
【0046】
今のところ、このような、バナジウム化合物と、ルチル型結晶相の二酸化チタン(TiO)粒子とを含む溶液の水熱反応によって、サブミクロン以下のR相二酸化バナジウム(VO)を含む微粒子が直接得られる理由は、十分には把握されていない。しかしながら、二酸化バナジウム(VO)のR相と二酸化チタン(TiO)のルチル型結晶相において、両者の格子定数が非常に接近していることが、その理由の一つとして考えられる。すなわち、溶液中に存在するルチル型結晶相の二酸化チタン(TiO)が、格子定数の接近した二酸化バナジウム(VO)のR相を優先的に成長させる種結晶として機能し、最終的にR相の二酸化バナジウム(VO)を多く含む微粒子が得られるものと考えられる。
【0047】
本発明による微粒子において、その一つ一つを走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)などで観察すると、R相の二酸化バナジウム(VO)粒子は、そのほとんどが、ルチル型結晶相の二酸化チタン(TiO)粒子と同じ結晶方位に沿って、ロッド状に成長していることがわかる。これは、R相の二酸化バナジウム(VO)粒子がルチル型結晶相の二酸化チタン(TiO)粒子に対してエピタキシャル成長していることを示唆するものであり、このことからも、ルチル型結晶相の二酸化チタン(TiO)は、R相の二酸化バナジウム(VO)の成長のための種結晶として機能しているものと推察される。なお、ロッド状の二酸化バナジウム(VO)粒子の成長軸(長手軸)方向の長さは、ルチル型結晶相の二酸化チタン(TiO)粒子に比べて、例えば1.5〜5倍程度大きくなっている。
【0048】
なお、電子顕微鏡レベルでの観察の結果、R相の二酸化バナジウム(VO)結晶の成長形態には、今のところ、以下の2種類のものが存在する:一つは、二酸化チタン(TiO)の種結晶に対して、R相の二酸化バナジウム(VO)結晶が一つの方向に沿って成長する形態である。他方は、二酸化チタン(TiO)粒子の種結晶に対して、R相の二酸化バナジウム(VO)粒子が相互に反対の方向に成長する形態であり、この場合、R相の二酸化バナジウム(VO)結晶は、種結晶の両側に、単一の成長軸に沿って成長する。ただし、いずれの形態の場合も、R相の二酸化バナジウム(VO)結晶は、種結晶と結晶軸が揃った状態で成長する。
【0049】
本発明における微粒子は、サブミクロン以下のオーダーであり、例えば50nm〜250nmの範囲の平均粒径を有する。平均粒径が、例えば200nm以下、特に100nm以下の場合、極めて良好な調光性が得られる。
【0050】
なお、本発明による微粒子の「平均粒径」は、以下のようにして算出した。
(i)大部分の粒子がロッド状の形態の場合
まず10000〜20000倍程度の倍率で、微粒子の電子顕微鏡(SEM)写真を撮影する。各ロッド状粒子の長手軸に対して垂直な方向の寸法を測定する(最大10個)。得られた値を平均して、「平均粒径」とする。
(ii)大部分の粒子が非ロッド状の形態の場合
まず10000〜20000倍程度の倍率で、微粒子の電子顕微鏡(SEM)写真を撮影する。写真中において、寸法および形状が最も普遍的な粒子10個を選定し、その「最大長さ」を測定する(最大20個)。ここで「最大長さ」とは、選定された微粒子が略球状、略楕円状、略立方体状等、いわゆる等方性の粒子またはそれに近い形態の場合、そのような微粒子の直径部分の最大長さを意味する。得られた10点の「最大長さ」を平均化して、これをその微粒子の「平均粒径」とした。
【0051】
ここで、本発明において、ロッド状粒子の平均粒径は、最初に原料として添加されるルチル型結晶相の二酸化チタン(TiO)粒子(以下、「種結晶」と称する)の平均粒径に依存することに留意する必要がある。すなわち、大きな平均粒径の二酸化チタン(TiO)粒子を種結晶として使用した場合、ロッド状粒子の長手軸に対して垂直な方向の寸法は、大きくなり、小さな平均粒径の二酸化チタン(TiO)粒子を種結晶として使用した場合、ロッド状粒子の長手軸に対して垂直な方向の寸法は、小さくなる。従って、本発明では、種結晶の平均粒径を変化させることにより、得られるロッド状粒子の寸法を簡単に制御することができる。
【0052】
なお、本発明による微粒子において、二酸化バナジウム(VO)の粒子の量と二酸化チタン(TiO)の粒子の量の比(重量比、VO:TiO)は、5:95〜95:5の範囲であることが好ましく、10:90〜90:10の範囲であることがより好ましい。この量比(重量比、VO:TiO)は、例えば、2:1である。
【0053】
また、本発明による微粒子中の二酸化バナジウム(VO)の含有量は、5〜95重量%の範囲であることが好ましく、10〜95重量%の範囲であることがより好ましい。本発明による微粒子中の二酸化バナジウム(VO)の含有量は、50重量%〜95重量%の範囲であることがさらに好ましい。
微粒子中の二酸化バナジウム(VO)の含有量は、例えば67重量%である。
【0054】
また、本発明による微粒子は、ルチル型結晶相の二酸化チタン(TiO)およびR相の二酸化バナジウム(VO)の他、アナターゼ型結晶相の二酸化チタン(TiO)を含んでも良い。これにより、微粒子に、調光性の他、光触媒特性を付与することが可能になる。
【0055】
この場合、二酸化チタン(TiO)粒子に含まれるルチル型結晶相とアナターゼ型結晶相の割合は、特に限られないが、例えば、5:95〜95:5の範囲であっても良い。特に、本発明による微粒子に、好適な光触媒特性を発現させる場合は、ルチル型結晶相とアナターゼ型結晶相の重量割合は、70:30〜20:80の範囲、例えば50:50であることが好ましい。前記比が70:30よりも少ないと、微粒子に十分な光触媒特性が得られず、逆に前記比が20:80よりも多くなると、十分な量のR相の二酸化バナジウム(VO)粒子が得られなくなる可能性があるからである。
【0056】
さらに、本発明による微粒子は、以下の物質群Aから選定された少なくとも一つの元素(化合物を含む)を含んでも良い。
物質群A:タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、ゲルマニウム(Ge)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、フッ素(F)およびリン(P)。
【0057】
これにより、微粒子の相転移特性(特に、調光温度)を制御することができる。例えば、純粋なR相の二酸化バナジウム(VO)結晶の転移温度(調光温度)は、約68℃であるが、前述の物質群Aから選定された物質を添加した場合、最終的に得られる微粒子の転移温度(調光温度)を、所定の温度まで低下させることができる。なお、最終的に得られる微粒子に対する、物質群Aから選定された物質の総量は、当該微粒子に含まれるバナジウム原子に対して0.1〜5.0原子%程度で十分であり、例えば、1.0原子%である。5.0原子%以上の量を添加すると、微粒子の調光性能(調光の幅)を著しく劣化させてしまう可能性があるからである。
【0058】
また、本発明による微粒子の表面の少なくとも一部は、コーティング処理および/または表面改質処理されていても良い。これにより、微粒子の表面を保護したり、表面性状を改質したり、光学的特性を制御したりすることが可能となる。
【0059】
さらに、本発明による微粒子をアルコールのような有機溶媒、あるいは水のような無機性の溶媒中に分散させた場合、調光性微粒子を含む分散液を提供することができる。
【0060】
(本発明による微粒子の製造方法)
次に、図1を参照して、前述のような特徴を有する本発明による微粒子の製造方法の一例について説明する。なお、以下に示す製造方法は、一例であって、本発明による微粒子は、その他の方法で製造することも可能である。
【0061】
図1は、本発明による微粒子を製造するためのフローチャートを示したものである。
【0062】
(1)まず、バナジウム(V)源の材料として、以下の物質群Bに含まれるいずれかの物質を準備する(図1のステップS110)。
物質群B:五酸化二バナジウム(V)、バナジン酸アンモニウム(NHVO)、シュウ酸バナジル水和物(VOC・nHO)、酸化硫酸バナジウム(VOSO・nHO)、3塩化酸化バナジウム(VOCl)、およびメタバナジン酸ナトリウム(NaVO)。
【0063】
(2)次に、(1)で準備した物質と水とを混合し、溶液を調製する(図1のステップS120)。なお、この「溶液」は、バナジウム源がイオン状態で溶解した溶液であっても、バナジウム源が溶解せず、懸濁した状態の懸濁溶液であっても良い。
【0064】
この他、この溶液には、任意で、酸化剤および/または還元剤を添加しても良い。あるいは、この溶液には、任意で、pH調整剤を添加しても良い。
【0065】
酸化剤および/または還元剤としては、例えば、シュウ酸、酢酸、ギ酸、マロン酸、プロピオン酸、コハク酸、クエン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、酪酸、吉草酸、安息香酸、没食子酸、メリト酸、乳酸、リンゴ酸、マレイン酸、アコニット酸、グルタル酸、メタノール、フェノール、エチレングリコール、クレゾール、エタノール、ジメチルホルムアルデヒド、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、プロパノール、ブタノール、ヒドラジン、過酸化水素、過酢酸、クロラミン、ジメチルスルホキシド、メタクロロ過安息香酸、および硝酸からなる群から選定された、少なくとも一つの物質が使用されても良い。なお、当然のことながら、これらの物質は、水和物であっても良い(以下のpH調整剤も同様である)。
【0066】
pH調整剤としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、フッ酸、水酸化アンモニウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、および水酸化カルシウム等がある。これらの化合物から、一つまたは複数の化合物が選定されても良い。
【0067】
なお、前記酸化剤、還元剤、pH調整剤の記載は、一例に過ぎず、これら以外の物質を選定しても良い。
【0068】
(3)次に、ルチル型結晶相を含む二酸化チタン(TiO)の粒子を準備する。二酸化チタン(TiO)粒子は、市販のものを使用しても良く、あるいは二酸化チタン(TiO)以外のチタン(Ti)を含む原料から調製したものを使用しても良い。
【0069】
ここで、二酸化チタン(TiO)粒子の平均粒径は、10nm〜500nm程度であることが好ましく、50nm〜100nm程度であることがより好ましい。二酸化チタン(TiO)粒子の平均粒径を、50nm〜100nm程度にすることにより、最終的に得られる微粒子の平均粒径を有意に微細化することができる(例えば、100nm〜200nm以下)。
【0070】
また、最終的に得られる微粒子に光触媒特性を付与する場合、ルチル型結晶相の他、アナターゼ型結晶相を含む二酸化チタン(TiO)粒子が使用される。
【0071】
(4)次に、前述の溶液中に(3)で準備した二酸化チタン(TiO)の粒子を添加し、懸濁液を調製する(図1のステップS130)。ここで、添加する二酸化チタン(TiO)粒子の量は、特に限られない。例えば、バナジウム源の重量から換算した二酸化バナジウム(VO)の量と添加する二酸化チタン(TiO)粒子の量比(VO:TiO)は、5:95〜95:5の範囲であっても良い。これにより、最終的に得られる微粒子中に含まれる二酸化チタン(TiO)の重量(全微粒子に対する重量)を、5重量%〜95重量%程度とすることができる。特に、バナジウム源の重量から換算した二酸化バナジウム(VO)の量と添加する二酸化チタン(TiO)粒子の量比(VO:TiO)は、10:90〜90:10の範囲であることが好ましく、この場合、最終的に得られる微粒子中に含まれる二酸化チタン(TiO)の重量(全微粒子に対する重量)は、10重量%〜90重量%程度となる。バナジウム源の重量から換算した二酸化バナジウム(VO)の量と添加する二酸化チタン(TiO)粒子の量比(VO:TiO)は、例えば、2:1である。
【0072】
(5)ここで、必要な場合、この懸濁液に、さらに、以下の物質群Cから選定された、少なくとも一つの元素またはその化合物を添加しても良い:
物質群C;タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、ゲルマニウム(Ge)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、フッ素(F)およびリン(P)。
【0073】
これにより、最終的に得られる微粒子の相転移特性(特に、調光温度)を制御することができる。
【0074】
(6)次に、前述の方法で調製した懸濁液を用いて、水熱反応処理を行う(図1のステップS140)。水熱反応処理には、通常の場合、オートクレーブのような水熱反応容器が使用される。処理温度は、例えば、200℃〜300℃の範囲であるが、本発明の方法では、前述のような効果、すなわち、ルチル型結晶相を含む二酸化チタン(TiO)粒子が、R相の二酸化バナジウム(VO)の種結晶として機能するため、280℃または250℃以下あるいは220℃以下の温度でも、良好な調光性を有する微粒子を再現性良く形成することができる。処理時間は、懸濁液の量、処理温度、処理圧力、および懸濁液中のバナジウム化合物と二酸化チタン(TiO)の量比等によっても変化するが、おおよそ1時間〜7日の範囲であり、例えば、24時間程度である。
【0075】
(7)なお必要に応じて、得られた微粒子の表面に、コーティング処理または表面改質処理を行っても良い。これにより、微粒子の表面が保護され、および/または表面改質された微粒子を得ることができる。また、微粒子の光学特性(調光特性)を制御することができる。コーティング処理または表面改質処理は、例えば、シランカップリング剤により実施されても良い。
【0076】
(8)以上の工程により、R相の二酸化バナジウム(VO)を含む微粒子が沈殿した溶液が得られる。その後、溶液から沈殿をろ過回収して、これを洗浄、乾燥処理することにより、本発明による微粒子が得られる。あるいは、所定の溶媒中にそのような微粒子が分散された分散液を提供する場合は、溶液中の溶媒を、所定の溶媒に置換しても良い。
【0077】
なお、得られる微粒子の平均粒径は、50nm〜250nmの範囲であり、例えば、100nm程度である。
【0078】
なお、前述の製造方法の例では、(1)バナジウムを含む化合物と、水とを含む溶液を調製し、(2)この溶液に、後から、少なくとも一部がルチル型結晶相からなる二酸化チタン(TiO)の粒子を添加して、懸濁液を調製し、(3)この懸濁液を水熱反応させることより、R相の二酸化バナジウム(VO)を含む微粒子を得る方法について説明した。しかしながら、係る記載は、単なる一例であって、(3)の水熱反応処理(図1のステップS140)までのステップは、いかなる手順で実施されても良いことは、明らかである。例えば、バナジウム(V)を含む化合物と、少なくとも一部がルチル型結晶相からなる二酸化チタン(TiO)の粒子と、水とを直接混合し、この混合液を用いて水熱反応を実施することにより、本発明による微粒子を得ても良い。
【0079】
(本発明による微粒子の適用例)
本発明による微粒子およびその分散液は、例えば、調光性塗料、調光性フィルムならびに調光性インクに適用することができる。例えば、調光性塗料および調光性インクは、一般的な(例えば市販の)塗料に、本発明による微粒子または分散液を添加することにより、簡単に調製することができる。調光性フィルムは、一般的な(例えば市販の)樹脂フィルム等の透明フィルムに、本発明による微粒子または分散液を付着させることにより、簡単に調製することができる。
【実施例】
【0080】
次に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0081】
(1)実施例1
まず、五酸化バナジウム(V、和光特級)、シュウ酸二水和物((COOH)・2HO、和光試薬特級)および純水200mlを、室温にて1:2:300のモル比で混合、攪拌して水溶液を調製した。さらに、pH調整のため、この水溶液に、1.5mlの硫酸を添加した。
【0082】
次に、この溶液10mlに、種結晶として、市販の二酸化チタン(TiO)粉末(純度99%以上、平均粒径100nm以下、ルチル相率40%以上)を、Vに対して重量比50%の量で添加し、懸濁液を得た。
【0083】
次に、この懸濁液を市販の水熱反応用オートクレーブ(三愛科学社製HU−25型)(SUS製本体に25ml容積のテフロン(登録商標)製内筒を備える)内に密閉し、220℃で、24時間保持し、水熱反応させた。
【0084】
得られた沈殿生成物を濾過し、水やエタノールで洗浄した後、これを60℃の定温乾燥機で10時間乾燥して、微粒子を得た。また、水熱反応後の溶液において、溶媒をエタノールで置換することにより、微粒子(以降の分析でR相の二酸化バナジウム(VO)微粒子を含むことが判明)を含む分散液が得られた。
【0085】
次に、シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製KBM−603)の5%水溶液を作製し、前述の工程で得られた微粒子をこの水溶液中に入れ、微粒子の表面をシランカップリング処理した。その後、微粒子を回収し、110℃で1時間、乾燥処理を行った。
【0086】
このようにして得られた微粒子の結晶性を、XRD装置(PHILIPS社製X’Pert−MPD型)により評価した。また、得られた微粒子の微細構造を、FE−SEM装置(日立製Hitachi S−4300型)により評価した。
【0087】
また、得られた微粒子を、市販の高透明接着転写テープに均一に塗布し、このテープを、透明樹脂フィルムに貼り付けた。これにより、VO微粒子を有する調光フィルムサンプルを得た。同様の方法により、得られた微粒子をガラス基板に貼り付け、VO微粒子の設置された調光ガラス基板サンプル(寸法:縦25mm×横25mm×厚さ1mm)を得た。
【0088】
加熱アタッチメント付き分光光度計(日本分光製V−570型、190−2500nm)を用いて、調光ガラス基板サンプルの光学透過特性を測定した。測定温度は、20℃および80℃とした。また、調光ガラス基板サンプルの赤外透過率の温度依存性を測定した。測定は、2000nmの波長で行った。
【0089】
XRD測定の結果を、図2に示す。図2に示すように、得られた微粒子は、ルチル型二酸化チタン(TiO)結晶相とルチル型二酸化バナジウム(VO)結晶相を含むことが確認された(図2において、「R」と表記)。また、得られた結果には、種結晶中に存在していたと思われるアナターゼ型二酸化チタン(TiO)のピークも認められた(「A」と表記)。なお、この微粒子中には、R相以外の二酸化バナジウム(VO)の結晶相、すなわちA相またはB相は、ほとんど認められなかった。このことから、得られた微粒子は、極めて良好な自動調光特性を有することが期待される。さらに、この微粒子中には、アナターゼ型の二酸化チタン(TiO)が含まれることから、光触媒特性が得られることも期待される。
【0090】
図3には、微粒子のSEM写真を示す。ルチル型の二酸化チタン(TiO)のナノ粒子と、該二酸化チタン(TiO)粒子を種結晶として成長した、該二酸化チタン(TiO)粒子よりも大きなR相二酸化バナジウム(VO)のナノロッドが確認された。二酸化バナジウム(VO)は、ルチル型の二酸化チタン(TiO)と結晶軸が揃った状態で、結合されている。ナノロッドの結晶軸(成長軸)に垂直な方向の寸法は、ナノオーダーとなっている。また、このロッド状粒子の周囲には、R相二酸化バナジウム(VO)の成長反応に寄与しなかったアナターゼ型の二酸化チタン(TiO)粒子が、ほぼ球状状態のまま分散されている。
【0091】
図4には、20℃および80℃における、調光ガラス基板サンプルの光学透過特性を示す。温度の上昇とともに、透過率が大きく変化しており、良好な自動調光性が発現していることがわかる。図5には、2000nmでの赤外透過率の温度依存性を示す。この結果から、サンプルの赤外透過率は、温度変化に対して、急激に変化することが確認された。なおサンプルの転移温度は、約64℃であった。
【0092】
(2)実施例2
実施例2では、種結晶として、実験室で調製したルチル型二酸化チタンを使用した。
【0093】
まず、室温で、四塩化チタン(TiCl)水溶液(Ti濃度16.5重量%)10mlを、撹拌しながら、純水30ml中にゆっくり滴下し、塩化チタンの希釈溶液を作製した。この希釈溶液をガラスビーカーに入れ、蓋をして、定温乾燥機内に入れ、55℃で6時間保持した。保持後に得られた沈殿物を濾過し、純水による繰り返し洗浄を行った後、乾燥処理を行った。この工程により、白い酸化チタンの粉末を得た。XRD測定の結果、得られた粉末は、ルチル型二酸化チタン(TiO)であることが確認された。
【0094】
次に、このルチル型二酸化チタン(TiO)粉末を種結晶としたこと以外は、実施例1と同じ工程により、実施例2に係る微粒子を得た。
【0095】
図6には、得られた実施例2に係る微粒子のXRD測定結果を示す。この図から、微粒子の大部分は、ルチル型結晶相の二酸化チタン(TiO)および二酸化バナジウム(VO)のR相で構成されることがわかった。図7には、微粒子のSEM写真を示す。大きさが約30〜50nmの等方性の二酸化チタン(TiO)の粒子上に、長さ100〜200nm程度のロッド状の二酸化バナジウム(VO)結晶が成長していることが観察された。
【0096】
(3)実施例3
前述の実施例1と同様の手順で、実施例3に係る微粒子を調製した。ただし、この実施例では、五酸化バナジウム、シュウ酸二水和物、および純水(および少量の硫酸)を添加した溶液中に、さらにタングステン酸アンモニウムパラ五水和物(和光純薬、組成約(NH)10W1241・5HO)をW:V原子比が1.0%となるように溶解させた。
【0097】
図8には、調光ガラス基板サンプルの10℃および80℃における、光学透過特性の測定結果を示す。このサンプルにおいても、温度変化により、透過率が変化することが確認された。図9には、このサンプルを用いて、波長2000nmの赤外透過率の温度依存性を測定した結果を示す。図から明らかなように、温度上昇により、透過率が急激に変化することがわかる。なお、この例では、転移温度は約41℃であり、タングステンの添加により、転移温度が低下することが確認された。
【0098】
(4)比較例1
種結晶(TiO)を添加しないことを除き、実施例1と同様の手順で、比較例1に係る粒子を調製した。
【0099】
図10には、得られた粒子のXRD測定結果を示す。また、図11には、得られた粒子のSEM写真を示す。
【0100】
図10に示すように、この場合、二酸化バナジウム(VO)のB相(JCPDS81−2393)と一致したXRDパターンが確認され、二酸化バナジウム(VO)のR相のパターンは、認められなかった。
【0101】
また図11に示すように、この粒子中には、B相と見られる二酸化バナジウム(VO)のロッド状(または板状)粒子が観察された。しかしながら、比較例1の粒子では、温度による調光特性の変化は、全く認められなかった。この結果から、ルチル型結晶相の二酸化チタン(TiO)を混在させない場合、R相の二酸化バナジウム(VO)微粒子は、ほとんど形成されないことがわかった。
【0102】
(5)実施例4
まず、しゅう酸バナジルn水和物(和光純薬製VOC・nHO)0.81グラム、過酸化水素(和光純薬試薬特級)0.36グラム、市販の高純度酸化チタン(TiO)微粒子(純度99.9%以上、ルチル相含有量99%、平均粒径約200nm)0.07グラム、および純水10mlをよく混合し、懸濁液を得た。
【0103】
この懸濁液を、市販の水熱反応用オートクレーブ(三愛科学社製HU−25型)(SUS製本体に25ml容積のテフロン(登録商標)製内筒を備える)内に密閉し、270℃で16時間保持し、水熱反応させた。
【0104】
得られた沈殿生成物を濾過し、純水およびエタノールで洗浄した後、これを60℃の定温乾燥機で10時間乾燥して、二酸化バナジウム(VO)と二酸化チタン(TiO)の重量比が約8:2の微粒子を得た。
【0105】
得られた微粒子の結晶性をXRD装置(PHILIPS社製X’Pert−MPD型)により評価した。また、微粒子の微細構造を、走査型電子顕微鏡(日立製FE−SEM装置、Hitachi S−4300型)、および透過型電子顕微鏡(JEOL JEM2010型:日本電子製高分解能透過電子顕微鏡)により評価した。
【0106】
さらに、走査型電子顕微鏡に付属したEDX(エネルギー分散型X線)微小領域組成分析装置を用いて、ロッド状微粒子の分析を行った。
【0107】
図12には、微粒子のXRD測定の結果を示す。図に示すように、得られた回折ピークは、R相の二酸化バナジウム(VO)結晶のものと良い一致を示した。また、ルチル型の二酸化チタン(TiO)の比較的低い回折ピークが観測された。なお、アナターゼ型の二酸化チタン(TiO)の回折ピークは、観測されなかった。回折ピークの強度および小さな半値幅により、形成したR相二酸化バナジウムの結晶性は、極めて良好であることが推察される。
【0108】
図13には、得られた微粒子のSEM写真を示す。図において、(a)の写真は、種結晶として使用したルチル型の二酸化チタン(TiO)粒子の形態を示しており、(b)の写真は、最終的に得られた微粒子の形態を示している。
【0109】
両写真の比較から、二酸化チタン(TiO)の寸法および形状は、ほとんど変化していないことがわかる。一方、二酸化バナジウム(VO)結晶は、二酸化チタン(TiO)の粒子を核として、これに結合された状態で、ロッド状に大きく成長していることがわかる。成長軸(ロッドの長手軸)方向において、二酸化バナジウム(VO)結晶の寸法は、二酸化チタン(TiO)の寸法に比べて、数倍以上大きくなっている。
【0110】
図14には、得られた微粒子の中から選定した一つの結晶について、元素分析を行った結果を示す。図において、左側の写真は、分析に使用したロッド状結晶の拡大SEM写真を示しており、右側の図は、ロッド状結晶の長手軸(図の矢印)に沿ったチタンとバナジウムの濃度分布を示している。
【0111】
この分析結果から、ロッド状結晶の中央部には、二酸化チタン(TiO)が存在し、この両側に、二酸化バナジウム(VO)結晶が成長していることがわかる。また、ロッド状結晶において、二酸化バナジウム(VO)と二酸化チタン(TiO)は、結晶軸が揃っており、二酸化バナジウム(VO)は、二酸化チタン(TiO)を種結晶として、エピタキシャル成長していると言える。
【0112】
図15には、得られた微粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示す。この画像および微小区域のEDX分析結果から、やや大きく成長した二酸化バナジウム(VO)粒子の内部に、結晶粒の揃った二酸化チタン(TiO)種結晶が存在することがわかる。なお、電子線回折パターンより、この微粒子は、単結晶であることが確認された。
【0113】
なお、図3と図13の比較から明らかなように、本実施例で得られた微粒子の寸法は、前述の実施例1と比べて、有意に大きい(両図は、ほぼ同等の倍率である)。これは、両実施例において使用したルチル型二酸化チタン(TiO)の平均粒径の違いによるものであると考えられる。すなわち、実施例1では、平均粒径が100nmの二酸化チタン(TiO)を使用したのに対して、実施例4では、種結晶として、平均粒径が200nmのルチル型二酸化チタン(TiO)を使用しており、この差異が、最終的に得られる微粒子の寸法に影響を及ぼしたものと考えられる。このことは、種結晶となるルチル型の二酸化チタン(TiO)の平均粒径を変化させることにより、最終的に得られるサーモクロミック微粒子の寸法を調整することができることを示すものである。すなわち、本発明では、サーモクロミック微粒子の寸法を容易に制御することができるという利点を有する。
【0114】
(6)実施例5
しゅう酸バナジルn水和物(和光純薬製VOC・nHO)0.81グラム、過酸化水素(和光純薬試薬特級)0.36グラム、市販の二酸化チタン(TiO)粉末(純度99%以上、平均粒径100nm以下、ルチル相の重量比は、40%以上で、アナターゼ相も含む)0.15グラム、およびタングステン酸アンモニウムパラ五水和物(和光純薬、組成約(NH)10W1241・5HO)0.00957グラムを、純水10mlに溶解させ、懸濁液を得た。
【0115】
次に、この懸濁液を市販の水熱反応用オートクレーブ(三愛科学社製HU−25型)(SUS製本体に25ml容積のテフロン(登録商標)製内筒を備える)内に密閉し、270℃で16時間保持し、水熱反応させた。
【0116】
得られた沈殿生成物を濾過し、純水およびエタノールで洗浄した後、これを60℃の定温乾燥機で10時間乾燥して、微粒子を得た。また、得られた微粒子を、市販の高透明接着転写テープに均一に塗布し、このテープを、透明樹脂フィルムに貼り付けた。これにより、調光フィルムサンプルを得た。同様の方法により、得られた微粒子をガラス基板に貼り付け、微粒子が設置された調光ガラス基板サンプル(寸法:縦25mm×横25mm×厚さ1mm)を得た。
【0117】
前述の実施例1と同様の方法により、調光ガラス基板サンプルの光学透過特性を測定した。また、調光ガラス基板サンプルの赤外透過率の温度依存性を測定した。測定は、2000nmの波長で行った。
【0118】
図16には、調光ガラス基板サンプルの20℃および80℃における、光学透過特性の測定結果を示す。相転移による明確な光学透過率の変化が観察された。
【0119】
図17には、波長2000nmにおける調光ガラス基板サンプルの赤外透過率の温度依存性を示す。この結果から明らかなように、温度上昇により、透過率は、急激に変化した。なお、この実施例では、転移温度は、約50℃であった。
【0120】
(7)実施例6
バナジン酸アンモニウム(NHVO)0.43グラム、しゅう酸二水和物0.35グラム、二酸化チタン(TiO)(ルチル相40%以上)0.15グラム、および純水10mlを、オートクレーブに入れ、270℃で16時間、水熱反応を行った。その他の手順は、実施例5とほぼ同様である。
【0121】
図18には、本実施例で得られた調光ガラス基板サンプルの20℃および80℃における、光学透過特性の測定結果を示す。図に示すように、20℃と80℃において、相転移による明確な光学透過率の変化が観察された。
【0122】
(8)実施例7
本実施例では、サーモクロミック微粒子を含む水性インクを試作した。
【0123】
まず、前述の実施例6で得られた水熱反応後の溶液を少量採取した。この溶液を用いて、常温で約20分間、超音波分散を行った。その後、溶液中に純水を少しずつ添加し、目視で溶液の色を確認しながら、濃度の調節を行うことにより、最終的に黄金の透過色を有する水性インクを得た。
【0124】
次に、この水性インクのサーモクロミック特性を評価した。
【0125】
まず、2つの石英セルを準備し、この一方に、水性インクを入れ、他方に対照液として、純水を入れた。この2つの石英セルを用いて、加熱装置付きの分光光度計(日本分光製V570型、190nm−2500nm)により、20℃および80℃における水性インクの光学透過特性を測定した。その結果、20℃と80℃では、波長2000nmにおける赤外透過率に、30%以上の差異が認められた。
【0126】
なお、インク中の分散粒子は、十分に小さく、長時間放置後も、沈降していなかった。
【0127】
このサーモクロミック特性を有する水性インクは、塗布や印刷などにより、紙などの媒体に適用することができる。
【0128】
(9)比較例2
比較例1と同じ手順により、比較例2に係る粒子を調製した。ただし、比較例2では、種結晶として、ルチル型の二酸化チタン(TiO)の代わりに、アナターゼ型の二酸化チタン粒子(純度99.7%以上、アナターゼ相ほぼ100%、平均粒径約100nm)を使用した。アナターゼ型の二酸化チタン粒子は、Vに対して重量比50%の量で添加した。なお、得られた微粒子に対しては、シランカープリング剤による表面被覆処理を行わなかった。
【0129】
図19には、得られた微粒子のXRDパターンを示す。得られたピークは、アナターゼ型の二酸化チタン(TiO)、およびB相の二酸化バナジウム(VO)に相当し、R相の二酸化バナジウム(VO)のピークは、認められなかった。このことから、種結晶がルチル型の二酸化チタン(TiO)を含まない場合、サーモクロミック特性を示すR相の二酸化バナジウム(VO)は、形成されないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明は、自動調光型多機能塗料およびそれを適用した被覆物、樹脂フィルム、ならびにインクおよびその印刷物等に適用することができる。また、本発明を、車両または建築物の窓、テント材、農業用温室フィルムに適用した場合、赤外線入射量の制御、過熱防止等の効果を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルチル型(R相)の二酸化バナジウム(VO)の粒子と、ルチル型の二酸化チタン(TiO)の粒子とを含むサーモクロミック微粒子であって、
少なくとも一つの前記二酸化バナジウム(VO)の粒子は、前記二酸化チタン(TiO)の粒子上に、該二酸化チタン(TiO)の粒子よりも大きく、ロッド状に成長していることを特徴とするサーモクロミック微粒子。
【請求項2】
さらに、アナターゼ型の二酸化チタン(TiO)の粒子を含むことを特徴とする請求項1に記載のサーモクロミック微粒子。
【請求項3】
さらに、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、ゲルマニウム(Ge)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、フッ素(F)およびリン(P)からなる群から選定された、少なくとも一つの元素を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のサーモクロミック微粒子。
【請求項4】
前記少なくとも一つの元素の含有量は、当該サーモクロミック微粒子に含まれるバナジウムに対して、0.1〜5.0原子%の範囲であることを特徴とする請求項3に記載のサーモクロミック微粒子。
【請求項5】
前記二酸化バナジウム(VO)の粒子の量と、前記二酸化チタン(TiO)の粒子の量の重量比は、5:95〜95:5の範囲であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載のサーモクロミック微粒子。
【請求項6】
二酸化バナジウム(VO)の含有量は、当該サーモクロミック微粒子全体に対して、5〜95重量%の範囲であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載のサーモクロミック微粒子。
【請求項7】
当該サーモクロミック微粒子は、前記ロッドの長手軸に対して垂直な方向の平均寸法が、サブミクロン以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載のサーモクロミック微粒子。
【請求項8】
当該サーモクロミック微粒子は、前記ロッドの長手軸に対して垂直な方向の平均寸法が、200nm以下であることを特徴とする請求項7に記載のサーモクロミック微粒子。
【請求項9】
当該サーモクロミック微粒子の表面の少なくとも一部は、コーティング処理および/または表面改質処理されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一つに記載のサーモクロミック微粒子。
【請求項10】
調光特性と、光触媒特性とをともに有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一つに記載のサーモクロミック微粒子。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一つに記載のサーモクロミック微粒子を含む分散液。
【請求項12】
ルチル型(R相)の二酸化バナジウム(VO)粒子を含む微粒子の製造方法であって、
(1)バナジウムを含む化合物と、水とを含む溶液を調製するステップと、
(2)前記溶液に、少なくとも一部がルチル型結晶相からなる二酸化チタン(TiO)の粒子を添加して、懸濁液を調製するステップと、
(3)前記懸濁液を水熱反応させるステップであって、これによりR相の二酸化バナジウム(VO)の粒子を含む微粒子が得られるステップと、
を有することを特徴とする製造方法。
【請求項13】
前記バナジウムを含む化合物は、
五酸化二バナジウム(V)、バナジン酸アンモニウム(NHVO)、シュウ酸バナジル水和物(VOC・nHO)、酸化硫酸バナジウム(VOSO・nHO)、3塩化酸化バナジウム(VOCl)、およびメタバナジン酸ナトリウム(NaVO)からなる群から選定された、少なくとも一つの化合物であることを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記ステップ(1)または(2)において、さらに、還元剤および/もしくは酸化剤を加えるステップを有することを特徴とする請求項12または13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記還元剤および/または酸化剤は、
シュウ酸、酢酸、ギ酸、マロン酸、プロピオン酸、コハク酸、クエン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、酪酸、吉草酸、安息香酸、没食子酸、メリト酸、乳酸、リンゴ酸、マレイン酸、アコニット酸、グルタル酸、メタノール、フェノール、エチレングリコール、クレゾール、エタノール、ジメチルホルムアルデヒド、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、プロパノール、ブタノール、ヒドラジン、過酸化水素、過酢酸、クロラミン、ジメチルスルホキシド、メタクロロ過安息香酸、および硝酸からなる群から選定された、少なくとも一つの化合物であることを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記ステップ(1)または(2)において、さらに、pH調整剤を加えるステップを有することを特徴とする請求項12乃至15のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項17】
前記pH調整剤は、
硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、フッ酸、水酸化アンモニウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、および水酸化カルシウムからなる群から選定された、少なくとも一つであることを特徴とする請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記ステップ(1)または(2)において、さらに、前記溶液に、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、ゲルマニウム(Ge)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、フッ素(F)およびリン(P)からなる群から選定された、少なくとも一つの元素またはその化合物を添加するステップを含むことを特徴とする請求項12乃至17のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項19】
前記ステップ(3)は、280℃以下の温度で実施されることを特徴とする請求項12乃至18のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項20】
前記ステップ(3)は、250℃以下の温度で実施されることを特徴とする請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
前記ステップ(3)は、220℃以下の温度で実施されることを特徴とする請求項19に記載の製造方法。
【請求項22】
前記ステップ(3)は、1時間以上5日間以内の時間範囲で実施されることを特徴とする請求項12乃至21のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項23】
さらに、
(4)ステップ(3)の後に、得られた前記微粒子を、表面処理または表面改質するステップを有することを特徴とする請求項12乃至22のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項24】
前記二酸化バナジウム(VO)粒子の量は、前記微粒子の全重量に対して、5〜95重量%の範囲であることを特徴とする請求項12乃至23のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項25】
請求項1乃至10のいずれか一つに記載のサーモクロミック微粒子を含む調光性塗料。
【請求項26】
請求項1乃至10のいずれか一つに記載のサーモクロミック微粒子を含む調光性フィルム。
【請求項27】
請求項1乃至10のいずれか一つに記載のサーモクロミック微粒子を含む調光性インク。
【請求項28】
ルチル型(R相)の二酸化バナジウム(VO)の粒子と、ルチル型の二酸化チタン(TiO)の粒子とを含むサーモクロミック微粒子の製造方法であって、
(1)バナジウムを含む化合物と、水とを含む溶液を調製するステップと、
(2)前記溶液に、少なくとも一部がルチル型結晶相からなる二酸化チタン(TiO)の粒子を添加して、懸濁液を調製するステップと、
(3)前記懸濁液を水熱反応させるステップと、
を有し、
これにより前記サーモクロミック微粒子が得られ、
該サーモクロミック微粒子において、
少なくとも一つの前記二酸化バナジウム(VO)の粒子は、前記二酸化チタン(TiO)の粒子上に、該二酸化チタン(TiO)の粒子よりも大きく成長しており、
前記少なくとも一つの前記二酸化バナジウム(VO)の粒子は、前記二酸化チタン(TiO)の粒子と結晶軸が揃っていることを特徴とする製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図3】
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【図7】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−31235(P2010−31235A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102373(P2009−102373)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】