説明

サーモスタット装置

【課題】開弁初期段階における動作を安定させるとともに、冷却系回路内で循環される冷却液の温度を安定させることができるサーモスタット装置を提供すること。
【解決手段】主弁体21の筒状弁座11への進入部24外周には、閉弁時にその筒状弁座11の内周面に弾性的に圧接される環状シールリップ29が設けられている。この環状シールリップ29は、感温可動体31による主弁体21の駆動方向に湾曲した凹凸を有する波形をなして設けられている。これにより、閉弁時における筒状弁座の内周面に対する環状シールリップの接触位置を、環状シールリップの周方向の位置に応じて主弁体の駆動方向にずらすことができる。このため、開弁初期段階では少ない流量で冷却液を流入させ、主弁体が開弁方向に移動するにつれて冷却液の流量を徐々に増大させることができ、開弁初期段階での動作を安定させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、冷却系回路内で循環される冷却液の流量を制御するサーモスタット装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図13は、従来から提案されているサーモスタット装置101の代表的な一実施形態の構成を示す正面断面図であり、サーモスタット装置101の筒状弁座111に対して主弁体121が開弁された状態を示している。このサーモスタット装置101は、自動車用エンジンのラジエータ及びバイパス流路を介して冷却液を循環させる冷却系回路上に設置されるものとして説明する。
【0003】
サーモスタット装置101は、内部に各種ポート103a、103b、103cを介して冷却液が流出入する冷却液流路室103dが形成されたサーモスタットハウジング103内に固定されて用いられるものであり、筒状弁座111と、筒状弁座111の内側まで進入させられることでその筒状弁座111を閉弁する主弁体121と、冷却液の温度を感知して主弁体121を図13に示す上下方向に駆動させる感温可動体131とを備えている。
【0004】
また、サーモスタット装置101は、筒状弁座111の外側にフランジ状に設けられたフランジ部113に対してその両側が固定される支持枠133と、支持枠133の中央側においてその上端が支持されて、その下端側が感温可動体131内に収納されるピストンシャフト135とを更に備えている。また、サーモスタット装置101は、筒状弁座111のフランジ部113に対してその上部が固定されたフレーム137と、主弁体121とフレーム137の下部との間に設けられ、主弁体121を上側に押し付けるように付勢するメインスプリング139とを備えている。
【0005】
サーモスタット装置101の主弁体121は、図13に示すように、金属製の所定形状の弁体本体123における外周側端部123cよりも内周側に、外周側端部123c上面に対して上側に凸状をなすような凸状部123dが形成されている。この凸状部123dの外周面123eには、弾性を有する合成ゴム等からなる環状弾性体125が接着されており、この環状弾性体125と凸状部123dとによって、閉弁時に筒状弁座111の内側まで進入する進入部124が構成されている。この環状弾性体125の外周面である、進入部124の外周面には、主弁体121の閉弁時に、筒状弁座111の内周面111aに弾性的に圧接される環状シールリップ127が設けられている。
【0006】
このように構成されるサーモスタット装置101では、感温可動体131の周囲に流入する冷却液の温度が所定温度より低い場合に、感温可動体131の内部に密封された熱膨張体が熱収縮しており、メインスプリング139が主弁体121を閉弁方向に付勢する力によって、ピストンシャフト135が感温可動体131内に図示の状態から押し戻される。これによって、主弁体121及び感温可動体131が閉弁方向に移動した後、主弁体121の外周側端部123cの上面が筒状弁座111のフランジ部113の下面に対して当接されて静止した状態で、筒状弁座111に対して主弁体121が閉弁されることになる。この場合において、環状シールリップ127は、筒状弁座111の内周面111aに弾性的に圧接されており、これによって環状シールリップ127が圧接されている部位がシールされている。
【0007】
感温可動体131の周囲に流入する冷却液の温度が所定温度以上になると、感温可動体131内に密封された熱膨張体が熱膨張してピストンシャフト135を押し出し動作する。これにより、感温可動体131が主弁体121とともに図13における下方向に移動して、環状シールリップ127が筒状弁座111の内周面111aから離間した後、図13に示すように筒状弁座111に対して主弁体121が開弁されて、筒状弁座111と弁体本体123との間で冷却液の流通が始まることになる。
【0008】
この後は、冷却液の温度変化量に応じて、感温可動体131内の熱膨張体の熱膨張、熱収縮によりピストンシャフト135が伸縮動作し、これにより主弁体121及び感温可動体131が移動することになる。
【0009】
ところで、上述のサーモスタット装置101は、主弁体121の環状シールリップ127が図中上下方向での位置を変化させずに周方向に沿って設けられており、開弁時に周方向の全周に亘って環状シールリップ127が筒状弁座111の内周面111aから一斉に離間しがちである。このため、例えば、エンジン内を通って循環される冷却液の温度上昇が早く、ウォーターポンプによる主弁体121の上下両側の差圧が大きい場合、ラジエータ内で低温化された冷却液が開弁直後に主弁体121の図中下側から上側に向けて急激に流入され、エンジン冷却回路内に低温化された冷却液が一気に流入されることになる。
【0010】
これにより、冷却回路内での冷却液の温度はアンダーシュートを起こしてしまううえ、その反作用として主弁体121が閉弁されてしまうと、こんどは冷却液の温度がオーバーシュートを起こしてしまい、これら現象が繰り返されることでハンチングが発生してしまう場合がある。このハンチングは、特に、冬季等の外気温が低い場合に、温度幅が大きくなって生じるケースがあり、この結果、熱変化による熱ストレスのためエンジンに多大な悪影響を及ぼしてしまう。
【0011】
そこで、従来より、上記のようなハンチングについての問題を解決するため、筒状弁座111や主弁体121の構造について改良した様々な技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0012】
特許文献1に開示のサーモスタット装置においては、主弁体に設けられる環状弾性体の数箇所に、主弁体の上側から下側に向かって徐々に冷却液通路が狭くなるようなV字状の開口溝としての切欠が形成されている。また、この特許文献1に開示のサーモスタット装置は、環状弾性体が主弁体の外周側端部まで接着されており、筒状弁座のフランジ部の下面にこの環状弾性体が接離可能となるように環状突出部が設けられている。
【0013】
このように構成されるサーモスタット装置は、閉弁状態から主弁体が少し移動した後の開弁初期段階ではこの切欠を通して小量の冷却液を流通させ、この状態から主弁体の開弁方向への移動量が増えるにつれて、冷却液の流量が徐々に増大するように動作することになる。
【0014】
特許文献2に開示のサーモスタット装置においては、主弁体の外周側端部が筒状弁座のフランジ部側に向けて曲げ形成されており、環状弾性体が主弁体の外周側端部の内周側まで接着されている。このサーモスタット装置においては、筒状弁座のフランジ部の下面にこの環状弾性体が接離可能となるような環状突出部が設けられており、更に、筒状弁座のフランジ部に通水孔が形成されている。
【0015】
このように構成されるサーモスタット装置は、閉弁時に環状弾性体の環状シールリップを筒状弁座の内周面に接触させるとともに、環状弾性体の環状突出部を筒状弁座のフランジ部に接触させている。開弁初期には、環状弾性体の環状突出部のみが筒状弁座のフランジ部から離間し、そのフランジ部の通水孔を介して小量の冷却液が通り、主弁体及び筒状弁座の前後での流量が小流量に制御される。この状態から主弁体が更に開弁方向に移動して、環状弾性体の環状シールリップが筒状弁座の内周面から離間すると、その環状シールリップと筒状弁座との間で冷却液の流通が始まることになり、冷却液の流量が本格的に増大することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平7−305787号公報
【特許文献2】特開平11−351441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、上述した開示技術は、以下に説明するような問題点があった。
【0018】
特許文献1の開示技術は、合成ゴム等からなる環状シールリップを含む環状弾性体の一部に切欠が形成された構成とされているため、筒状弁座及び主弁体の開閉動作を繰り返す際の環状弾性体に対する圧縮、摺りや、冷却液による膨潤が原因となって、この切欠いた部位の形状が変形してしまい、予め設定した弁開閉時の流量特性に変化が生じる恐れがある。
【0019】
また、特許文献2の開示技術は、開弁初期流量を小量とするために通水孔を用いる構成としているが、このような通水孔は異物の詰まりや堆積により通推孔としての機能を喪失する恐れがあった。また、閉弁時に通水孔を閉じることができるようにするため、主弁体の外周側の寸法が外側に大きくなるように設定する必要があるうえ、通水孔の詰まり等の回避のために通水孔を大きくする場合には、尚更主弁体の外周側の寸法を大きく設定する必要があり、その結果、主弁体やサーモスタット装置全体の寸法を大きく設定する必要が生じる。これは、開弁時における冷却液の流通の抵抗増大を招く上、サーモスタット装置の小型化、軽量化並びにコストダウンを図る上で好ましいものとはいえなかった。
【0020】
また、特許文献1及び特許文献2の開示技術の何れもが、閉弁時に切欠や通水孔を介して冷却液が流れるのを防ぐため、筒状弁座のフランジ部の下面に対して主弁体の外周側端部の上面を当接させる際に、主弁体の外周側端部の上面に接着された環状弾性体の環状突出部を弾性的に圧接させて、この環状突出部によってこれが圧接されている部位をシールする構成としている。
【0021】
このような構成とした場合、筒状弁座の内周面で環状シールリップを介してシールする場合と比較して、主弁体の前後差圧の受圧有効面積を大きくすることになる。このため、差圧によって主弁体に対して作用する力が増大するため、この力に抗して主弁体を駆動させる感温可動体が受けるストレスも増大することになり、感温可動体の耐久性の低下を招く恐れがある。
【0022】
また、このような構成とした場合、弁の開閉動作を繰り返す際に、環状突出部がゴム製の突起形状を成しており圧縮、摺り等によって変形してしまうと、閉弁時の主弁体の最終閉弁ポジション(感温可動体内に収納されたピストンシャフトの閉弁時のリフトポジション)が変化してしまい、冷却液の温度を制御する際の精度を損なう恐れがある。
【0023】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、開弁初期段階における動作を安定させるとともに、冷却系回路内で循環される冷却液の温度を安定させることができ、上述した問題点を有利に解決できるサーモスタット装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
請求項1に係る発明は、筒状弁座と、前記筒状弁座の内側まで進入させられることで当該筒状弁座を閉弁する主弁体と、冷却液の温度を感知して前記主弁体を駆動させる感温可動体とを備え、エンジン冷却回路内で冷却液の流量を制御するサーモスタット装置において、前記主弁体の前記筒状弁座への進入部外周には、閉弁時に当該筒状弁座の内周面に弾性的に圧接される環状シールリップが設けられ、前記環状シールリップは、前記感温可動体による前記主弁体の駆動方向に湾曲した凹凸を有する波形をなして設けられていることを特徴とする。
【0025】
請求項2に係る発明は、筒状弁座と、前記筒状弁座の内側まで進入させられることで当該筒状弁座を閉弁する主弁体と、冷却液の温度を感知して前記主弁体を前後に駆動させる感温可動体とを備え、エンジン冷却回路内で冷却液の流量を制御するサーモスタット装置において、前記主弁体の前記筒状弁座への進入部外周には、環状シールリップが設けられ、前記筒状弁座は、小径部と当該小径部に対して前記主弁体の進入口側に設けられる大径部とを有し、前記小径部と前記大径部とのうち小径部のみが前記環状シールリップに対して弾性的に圧接可能な内径とされ、前記小径部と前記大径部とは、その境界面が、前記感温可動体による前記主弁体の駆動方向に湾曲した凹凸を有する波形をなして設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
請求項1に係る発明によれば、環状シールリップが感温可動体による主弁体の駆動方向に湾曲した凹凸を有する波形をなして設けられていることから、閉弁時における筒状弁座の内周面に対する環状シールリップの接触位置を、環状シールリップの周方向の位置に応じて主弁体の駆動方向にずらすことができる。これにより、開弁初期段階での冷却液の流量増減速度を適度に緩慢なものとすることが可能となり、開弁初期段階での動作を安定させるとともに、冷却回路内で循環される冷却液の温度を安定させることが可能となっている。
【0027】
請求項2に係る発明によれば、筒状弁座の段差部が感温可動体による主弁体の駆動方向に湾曲した凹凸を有する波形をなして設けられていることから、開弁初期段階において、周方向に沿って設けられた環状シールリップの周方向の一部に亘る範囲のみを筒状弁座の内周面から離間させることができる。これにより、開弁初期段階での冷却液の流量増減速度を適度に緩慢なものとすることが可能となり、開弁初期段階での動作を安定させるとともに、冷却回路内で循環される冷却液の温度を安定させることが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】サーモスタット装置が用いられる冷却系回路の構成を示すブロック図である。
【図2】筒状弁座に対して主弁体が閉弁された状態を示す第1実施形態のサーモスタット装置の部分断面正面図である。
【図3】筒状弁座に対して主弁体が開弁された状態を示す第1実施形態のサーモスタット装置の部分断面正面図である。
【図4】主弁体の環状シールリップの形状について説明するための図である。
【図5】サーモスタット装置の動作について説明するための図である。
【図6】第2実施形態のサーモスタット装置の部分断面正面図である。
【図7】筒状弁座の段差部の形状について説明するための図である。
【図8】第2実施形態のサーモスタット装置の動作について説明するための図である。
【図9】実施例1においてのリフト量に対する流量の関係を示すグラフである。
【図10】図9において一点鎖線で示す範囲S8を拡大したグラフである。
【図11】実施例2においてのリフト量に対する流量の関係を示すグラフである。
【図12】実施例3においての時間に対する冷却液温度の関係を示すグラフである。
【図13】従来技術について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態として、自動車用エンジンの冷却液をラジエータ及びバイパス流路を介して循環させる冷却系回路上に設置されるサーモスタット装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
まず、本発明に係るサーモスタット装置が用いられる冷却系回路の一例について説明する。図1は、その冷却系回路6の一例を示すブロック図である。
【0031】
冷却系回路6は、内燃機関としてのエンジン2と、冷却液の冷却を行なうラジエータ4と、本発明に係るサーモスタット装置1が内部に配置されるサーモスタットハウジング3とが、各流路7a、7b、7c及びバイパス流路7dにより接続されたエンジン冷却系回路として構成されている。この冷却系回路6内では、図示しないポンプ等の駆動を通じて冷却液が循環される。
【0032】
図2、図3は、本発明に係る第1実施形態のサーモスタット装置1がサーモスタットハウジング3内に固定された状態を示す正面断面図であり、図2は、サーモスタット装置1の筒状弁座11に対して主弁体21が閉弁された状態を示しており、図3は、筒状弁座11に対して主弁体21が開弁された状態を示している。サーモスタットハウジング3は、図1〜図3に示すように、ラジエータ4に接続される流路7b、エンジン2に接続される流路7c及びラジエータ4を迂回する流路としてのバイパス流路7dに対して、それぞれラジエータ連結ポート3a、エンジン連結ポート3b及びバイパス連結ポート3cを介して連結されている。サーモスタットハウジング3は、内部にエンジン側冷却液流路室としての感温室55aが設けられたハウジング本体51に、内部にラジエータ側冷却液流路室55bが設けられたハウジングカバー53を取り付けて構成されている。サーモスタットハウジング3の感温室55a及びラジエータ側冷却液流路室55bからなる冷却液流路室55には、各種ポート3a、3b、3cを介して冷却液が流出入する。
【0033】
次に、本発明に係るサーモスタット装置の第1実施形態について詳細に説明する。
【0034】
サーモスタット装置1は、筒状弁座11と、筒状弁座11の内側まで進入させられることでその筒状弁座11を閉弁する主弁体21と、冷却液の温度を感知して主弁体21を駆動させる感温可動体31とを備えている。
【0035】
また、サーモスタット装置1は、筒状弁座11の外側にフランジ状に設けられたフランジ部13に対してその両側が固定される支持枠33と、支持枠33の中央側においてその上端が支持されて、その下端側が感温可動体31に対して摺動可能に収納されるピストンシャフト35とを更に備えている。また、サーモスタット装置1は、筒状弁座11のフランジ部13に対してその上部が固定されたフレーム37と、主弁体21とフレーム37の下部との間に設けられ、主弁体21を上側に押し付けるように付勢する付勢手段としてのメインスプリング39とを備えている。
【0036】
なお、ここでいう感温可動体31による主弁体21の駆動方向は、図2、図3に示す上下方向のことを意味しており、筒状弁座11の軸方向に対応している。
【0037】
筒状弁座11の外側にフランジ状に設けられたフランジ部13の外周側端部にはパッキン41が取り付けられている。筒状弁座11は、サーモスタットハウジング3の内周壁に形成された凹溝内にパッキン41を介して嵌合されることによって、フランジ部13の外周側端部とサーモスタットハウジング3との間をシールした状態でサーモスタットハウジング3内に固定されている。
【0038】
主弁体21は、金属製の所定形状の弁体本体23に対して、弾性を有する合成ゴム等からなる環状弾性体25を接着することによって構成されている。
【0039】
弁体本体23は、その中央側に設けられた筒状部23aと、筒状部23aの外側にフランジ状に設けられるフランジ部23bとを備えている。弁体本体23のフランジ部23bは、閉弁時に筒状弁座11のフランジ部13の下面に対して上面が当接される外周側端部23cを有している。弁体本体23のフランジ部23bは、その外周側端部23cよりも内周側に、外周側端部23c上面に対して上側に凸状をなすような凸状部23dが形成されている。この凸状部23dの外周面23eには、筒状弁座11の内周面11aとの間に介在されるように環状弾性体25が接着されており、この弁体本体23の凸状部23dと環状弾性体25とによって、閉弁時に筒状弁座11の内側まで進入する進入部24が構成されている。なお、弁体本体23のフランジ部23bの外周側端部23cは、この進入部24よりも外周側に設けられていることになる。
【0040】
環状弾性体25は、図3に示すように、環状弾性体25の外周面に対して、換言すると、主弁体21の進入部24の外周面に対して環状シールリップ27が設けられている。この環状シールリップ27は、その断面形状が環状弾性体25の外周面に対して径方向外側に凸状となるように形成されている。この環状シールリップ27は、図2に示すように、主弁体21の閉弁時に、筒状弁座11の内周面11aに弾性的に圧接されるものであり、これによって環状シールリップ27が圧接されている部位がシールされている。
【0041】
図4は、主弁体21の環状シールリップ27の形状について説明するための図であり、図4(a)は、主弁体21の外観を示す正面図であり、図4(b)は、主弁体21の外観を示す背面図である。また、図4(c)は、環状弾性体25の外周面上での環状シールリップ27の先端の軌跡を示す環状弾性体25の展開図である。なお、図4(c)におけるP1〜P3で示される一点鎖線は、図4(a)、図4(b)におけるP1〜P3が示す高さと同一の高さについて示すものである。
【0042】
環状シールリップ27は、図4に示すように、上下方向に湾曲した凹凸を有する波形をなして、環状弾性体25の外周面の周方向に沿って設けられている。本実施形態においてこの環状シールリップ27がなす波形は、図4(c)に示すように、環状弾性体25の周方向の全周に亘る範囲のうち、0度〜120度の範囲で形成される波形を一単位として、その波形が三回分周期的に繰り返されるように形成されている。
【0043】
図4(c)におけるP4で示される一点鎖線は、この環状シールリップ27がなす波形の振幅中心を示している。本実施形態において形成される波形は、波形の振幅中心となる位置よりも下側に設けられる下側凸部28aと、その振幅中心となる位置よりも上側に設けられる上側凸部28bとが交互に形成されてなるものであるが、下側凸部28aの波長のほうが上側凸部28bの波長よりも短く形成されている。
【0044】
環状シールリップ27がこのように波形をなして設けられることによって、閉弁時における筒状弁座11の内周面11aに対する環状シールリップ27の接触位置が、環状シールリップ27の周方向の位置に応じて図2、図3における上下方向にずれることになる。このことを図2に基づき説明すると、図2におけるA部における環状シールリップ27の筒状弁座11の内周面11aに対する接触位置は、A部に対して周方向に180度回転させた位置にある図2におけるB部での接触位置よりも、図中上側にあることになる。
【0045】
感温可動体31は、その外周側に流入する冷却液の温度変化に応じて熱膨張、熱収縮するワックス等からなる熱膨張体がその内部に密封されている。
【0046】
主弁体21及び感温可動体31は、感温可動体31内の熱膨張体の熱膨張、収縮により、一体的に移動して、筒状弁座11と主弁体21との間での冷却液の流量を制御することになる。
【0047】
次に、第1実施形態に係るサーモスタット装置1の動作について説明する。
【0048】
本発明に係るサーモスタット装置1は、感温可動体31の周囲に流入する冷却液の温度が感温可動体31及び主弁体21が上下方向に動作し始める所定温度より低い場合、図2に示すように、筒状弁座11に対して主弁体21が閉弁状態となる。この場合、図1に示す例で説明すると、冷却液がラジエータ4内を介さず、バイパス流路7d及びエンジン2を介して循環されることになる。
【0049】
感温可動体31の周囲に流入する冷却液の温度がその所定温度まで上昇した場合、感温可動体31内の熱膨張体が熱膨張して、主弁体21及び感温可動体31が下方向に移動し始める。その後は、冷却液の温度上昇量に応じた量だけ主弁体21及び感温可動体31が移動して、図3に示すような状態に移行することになる。この場合、図1に示す例で説明すると、ラジエータ4からの低温冷却液の流出量が増大し、一点鎖線で示す範囲S7の部位でバイパス流路7dからの冷却液と混合された冷却液がエンジン2に流入することになる。
【0050】
図5は、第1実施形態に係るサーモスタット装置1の作動時における図2のA部とB部との動作状態を示す部分拡大図である。
【0051】
筒状弁座11に対して主弁体21が閉弁状態とされている場合、図5(a)、図5(b)に示すように、図2のA部とB部との何れにおいても、筒状弁座11の内周面11aに対して環状シールリップ27が弾性的に圧接されることになる。なお、図2のA部、B部においては、図5(a)のS1で示した部位、図5(b)のS2で示した部位でそれぞれ環状シールリップ27が弾性的に圧接されている。
【0052】
図5(c)、図5(d)は、図5(a)、図5(b)に示す状態から、主弁体21が所定量移動した後の開弁初期段階の状態を示している。図2のA部においては、図5(c)に示すように、開弁初期段階においても、筒状弁座11の内周面11aに対して環状シールリップ27が弾性的に圧接された状態のままとなる。なお、図5(c)のS3で示した部位で環状シールリップ27は弾性的に圧接されている。
【0053】
これに対して、図2のB部においては、図5(d)に示すように、開弁初期段階において、筒状弁座11の内周面11aから環状シールリップ27が離間して、B部において冷却液流路29が形成され、この冷却液流路29を通って図中の矢印に示す方向に冷却液が少ない流量で流出されることになる。
【0054】
ここで、B部において形成される冷却液流路29は、環状シールリップが上下方向に湾曲した凹凸を有する波形とされていることから、図5(c)に示す状態から、主弁体21が開弁方向である図中の下方向に移動するにつれて、徐々に周方向に広がるように大きくなることになり、冷却液流路29を通る冷却液の流量が徐々に増大することになる。
【0055】
図5(e)、図5(f)は、図5(c)、図5(d)に示す状態から、主弁体21が更に所定量移動した後の本格開弁段階の状態を示している。この段階においては、図2のA部とB部との何れにおいても、筒状弁座11の内周面11aから環状シールリップ27が離間することになり、A部とB部との何れにも冷却液流路29が形成され、図中の矢印に示す方向に冷却液が流入されることになる。
【0056】
このように、本発明に係るサーモスタット装置1によれば、環状シールリップ27が上下方向に湾曲した凹凸を有する波形をなして設けられていることから、閉弁時における筒状弁座11の内周面11aに対する環状シールリップ27の接触位置を、環状シールリップ27の周方向の位置に応じて上下方向にずらすことができる。これにより、開弁初期段階では少ない流量で冷却液を流出させ、主弁体21が開弁方向に移動するにつれて冷却液の流量を徐々に増大させることができるうえ、冷却液の流量増減速度を適度に緩慢なものとすることが可能となっている。このため、開弁初期段階でのハンチングを抑制して開弁動作を安定させるとともに、冷却回路内で循環される冷却液の温度を安定させることが可能となっている。また、第1実施形態に係るサーモスタット装置1は、このような開弁動作を安定させるという効果を、環状シールリップの形状を変えるのみという簡単で安価な構成で得ることが可能となっている。
【0057】
次に、本発明に係るサーモスタット装置1の第2実施形態について説明する。なお、上述した構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
【0058】
図6は、第2実施形態のサーモスタット装置1についての使用状態の一例を示す部分断面正面図であり、筒状弁座11に対して主弁体21が開弁された状態を示している。
【0059】
第2実施形態のサーモスタット装置1は、第1実施形態のサーモスタット装置1と比較して、環状シールリップ27、筒状弁座11の構成のみが相違している。
【0060】
第2実施形態のサーモスタット装置1の環状シールリップ27は、上下方向に湾曲した凹凸を有する波形をなして設けられておらず、図中上下方向についての位置を一定としたまま、環状弾性体25の外周面に対して、換言すると、主弁体21の進入部24の外周面に対して、その周方向に沿って設けられている。
【0061】
図7は、第2実施形態のサーモスタット装置1の筒状弁座11の構成について説明するための図であり、図7(a)は、筒状弁座11の正面断面図であり、図7(b)は、筒状弁座11の背面断面図である。
【0062】
筒状弁座11は、小径部15と、小径部15に対して主弁体21の進入口側である、図中下側に設けられる大径部17と、小径部15と大径部17との間に形成される段差部19とを更に有している。大径部17は、小径部15よりもその内形が大径となるように形成されている。筒状弁座11は、この小径部15と大径部17とのうち小径部15のみが環状シールリップ27に対して弾性的に圧接可能な内径とされている。
【0063】
筒状弁座11の段差部19は、本実施形態において、その内周面が湾曲した形状とされているが、小径部15の内周面と大径部17の内周面との間で段差が形成されていれば、平面状に形成されていてもよい。
【0064】
図7(c)は、筒状弁座11の内周面での段差部19の軌跡を示す筒状弁座11の展開図である。なお、図7(c)におけるP5〜P7で示される一点鎖線は、図7(a)、図7(b)におけるP5〜P7が示す高さと同一の高さについて示すものである。
【0065】
筒状弁座11の段差部19は、図7に示すように、上下方向に湾曲した凹凸を有する波形をなして、筒状弁座11の周方向に沿って設けられている。本実施形態においてこの段差部19がなす波形は、図7(c)に示すように、筒状弁座11の周方向の全周に亘る範囲のうち、0度〜120度の範囲で形成される波形を一単位として、その波形が三回分周期的に繰り返されるように形成されている。
【0066】
図7(c)におけるP8で示される一点鎖線は、この段差部19がなす波形の振幅中心を示している。本実施形態において形成される波形は、波形の振幅中心となる位置よりも下側に設けられる下側凸部56aと、その振幅中心となる位置よりも上側に設けられる上側凸部56bとが交互に形成されてなるものであるが、上側凸部56bの波長のほうが下側凸部56aの波長よりも短く形成されている。
【0067】
なお、主弁体21は、筒状弁座11の小径部15の内周面に対して、閉弁時にその環状シールリップ27が全周に亘る範囲で弾性的に圧接されるように、その上下方向についての設けられる位置が調整されている。
【0068】
次に、第2実施形態に係るサーモスタット装置1の動作について説明する。
【0069】
図8は、第2実施形態に係るサーモスタット装置1の作動時における図6のC部とD部との動作状態を示す部分拡大図である。
【0070】
筒状弁座11に対して主弁体21が閉弁状態とされている場合、図8(a)、図8(b)に示すように、図6のC部とD部との何れにおいても、筒状弁座11の内周面11aに対して環状シールリップ27が弾性的に圧接されることになる。なお、図6のC部、D部においては、図8(a)のS4で示した部位、図8(b)のS5で示した部位でそれぞれ環状シールリップ27が弾性的に圧接されている。
【0071】
図8(c)、図8(d)は、図8(a)、図8(b)に示す状態から、主弁体21が所定量移動した後の開弁初期段階の状態を示している。開弁初期段階においては、図8(d)に示すように、環状シールリップ27の一部が、筒状弁座11の小径部15の内周面から離間して、大径部17の内周面に対して径方向内側に位置するようになるまで、主弁体21が図中下方向に移動させられることになる。これにより、D部において冷却液流路29が形成され、この冷却液流路29を通って図中の矢印に示す方向に冷却液が少ない流量で流出されることになる。これに対して、図6のC部においては、図8(c)に示すように、開弁初期段階においても、筒状弁座11の小径部15の内周面に対して環状シールリップ27が弾性的に圧接された状態のままとなる。なお、図8(c)のS6で示した部位で環状シールリップ27が弾性的に圧接されている。
【0072】
図8(e)、図8(f)は、図8(c)、図8(d)に示す状態から、主弁体21が更に所定量移動した後の本格開弁段階の状態を示している。この段階においては、図6のC部とD部との何れにおいても、筒状弁座11の小径部15の内周面から環状シールリップ27が離間することになり、C部とD部との何れにおいても冷却液流路29が形成され、図中の矢印に示す方向に冷却液が流出されることになる。
【0073】
このように、第2実施形態に係るサーモスタット装置1においては、筒状弁座11の段差部19が上下方向に湾曲した凹凸を有する波形をなして設けられていることから、開弁初期段階において、周方向に沿って設けられた環状シールリップ27の周方向の一部に亘る範囲のみを筒状弁座11の内周面から離間させることができる。これにより、開弁初期段階では少ない流量で冷却液を流出させることができ、主弁体21が開弁方向に移動するにつれて冷却液の流量を徐々に増大させることができるうえ、冷却液の流量増減速度を適度に緩慢なものとすることが可能となっている。このため、開弁初期段階でのハンチングを抑制して開弁動作を安定させるとともに、冷却回路内で循環される冷却液の温度を安定させることが可能となっている。
【0074】
なお、本発明の第1実施形態、第2実施形態に係るサーモスタット装置1は、下記のような構成、効果を更に有するものである。
【0075】
本発明に係るサーモスタット装置1によれば、開弁初期流量を少量とするためにフランジ部13に通水孔を設ける必要がなくなるため、通水孔の異物の詰まり等による機能の喪失の恐れがなくなることは勿論のこと、主弁体21全体の寸法を大きくする必要がなくなるため、サーモスタット装置1の小型化、軽量化並びにコストダウンを図るうえで優れたサーモスタット装置1を提供可能となる。
【0076】
また、本発明における環状シールリップ27は、その一部に切欠を形成させず、進入部24の外周の全周に亘って連続して設けられていることが好ましい。これにより、筒状弁座11に対して主弁体21が開閉動作を繰り返す際の圧縮、摺りや、冷却液による膨潤が原因の環状シールリップ27の形状変化が生じにくくなり、予め設定した弁開閉時の流量特性に変化が生じる恐れを大幅に低減可能となる。
【0077】
また、本発明においては、上述したように、主弁体21が、金属製の弁体本体23における外周側端部23cの上面を、筒状弁座11のフランジ部13の下面に対して直接当接された状態、即ち、特許文献1や特許文献2に開示のようなゴム製の環状突出部を介さずに閉弁されるようにすることが好ましい。これにより、従来に生じていた受圧有効面積が大きくなる恐れや、閉弁時の主弁体21の最終閉弁ボジションの変化の恐れがなくなり、感温可動体31の耐久性の低下や冷却液の温度制御の精度を損なうことなく、上述のような開弁初期段階での動作を安定させるという効果を発揮することが可能となる。
【0078】
また、本発明において、第1実施形態の主弁体21の環状シールリップ27や、第2実施形態の筒状弁座11の段差部19がなす波形の形状は、周期的であってもよいし非周期的であってもよい。また、この波形は、第1実施形態においては下側凸部28aと上側凸部28bとを一単位とした波形、第2実施形態においては下側凸部56aと上側凸部56bとを一単位とした波形が一回のみ形成されるようにされていても、複数回形成されるようにされていてもよい。この一単位の波形が複数回形成されるようにした場合、各波形の形状、波長、振幅は、異なっていてもよい。また、この一単位の波形が複数回形成されるようにした場合、開弁初期段階に筒状弁座11と主弁体21との間に形成される冷却液流路29について、周方向の偏りが無くなるように波形を調整することによって、サーモスタット装置1についての組み立て作業時に、方向特性の影響を考慮することなく組み立てることが可能となり、作業性が向上する。
【0079】
また、第1実施形態の環状シールリップ27がなす波形は、上述したように、下側凸部28aの波長の方が上側凸部28bの波長よりも短く形成されるようにされていれば、これらの波長が同一とされて正弦波状の波形に形成された場合と比較して、開弁初期段階の冷却液流量を小さくすることが可能となる。これは、第2実施形態の段差部19がなす波形を、上述したように、上側凸部56bの波長の方が下側凸部56aの波長よりも短く形成されている場合にも同一のことがいえる。このように、本発明においては、環状シールリップ27や段差部19がなす波形の形状を調整することによって、開弁初期段階での所望の流量特性を容易に得ることが可能となっている。
【0080】
なお、上述した各実施形態は、何れも本発明を実施するにあたってこれを具体化する際の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならない。このため、例えば、本発明におけるサーモスタット装置1は、上述したように、出口制御式のサーモスタット装置として用いられていてもよいし、図1の範囲S7に示すような部位に設置される入口制御式のサーモスタット装置として用いられていてもよい。また、本発明のサーモスタット装置1は、例えば、オイルクーラーがその回路中に設置され、冷却液としてのエンジンオイルが循環される冷却系回路に適用されていてもよい。
【0081】
また、上述の筒状弁座11や主弁体21は、金属製の板材をプレス加工等して所定形状に成形され、上述の環状シールリップ27が設けられた環状弾性体25は、加硫接着等によって成形されつつ主弁体21に接着される。
【実施例1】
【0082】
以下、本発明の効果を実施例により更に説明する。本実施例1においては、図2、図3に示すような第1実施形態のサーモスタット装置を本発明例とし、図13に示すような従来のサーモスタット装置を比較例として、これらの流量特性を比較検討することとした。具体的には、主弁体及び筒状弁座の前後に、エンジン冷却系回路で通常発生するレベルの一定の差圧を与え、主弁体の閉弁状態からのリフト量(開弁量)と、筒状弁座を通過してラジエータ連結ポート側に流出する冷却液の流量とを、本発明例と比較例とで比較検討することとした。
【0083】
図9は、実施例1においてのリフト量に対する流量の関係を示すグラフであり、図10は、図9において一点鎖線で示す範囲S8を拡大したグラフである。図9、図10に示すように、リフト量の小さい開弁初期段階では、比較例よりも本発明例の方が、リフト量の増加に伴う冷却液の流量の増加が少なく、冷却液の流量を徐々に増大させることができ、冷却液の流量増減速度を適度に緩慢なものとすることが可能となっている点が確認できる。また、リフト量が大きい本格開弁段階では、本発明例の冷却液の流量が比較例の冷却液の流量と同程度のものとなっている点が確認できる。
【実施例2】
【0084】
本実施例2においては、本実施例1と同様の本発明例及び比較例としてのサーモスタット装置を用いて、主弁体及び筒状弁座の前後に実施例1の条件よりも高差圧を与えて、リフト量と冷却液の流量とを、本発明例と比較例とで比較検討することとした。
【0085】
図11は、実施例2においての開弁初期段階でのリフト量に対する流量の関係を示すグラフである。図11に示すように、比較例では開弁後すぐに急激な流量増加を起こすのに対して、本発明例では流量が緩やかに増大していることが確認できる。
【実施例3】
【0086】
本実施例3においては、本実施例1と同様の本発明例及び比較例としてのサーモスタット装置を自動車のエンジン冷却系回路上に設置してエンジンの暖気運転をし、その際のエンジン出口側での冷却液の液温推移を、本発明例と比較例とで比較検討することとした。
【0087】
図12は、実施例3においての時間経過に対する冷却液温度の関係を示すグラフである。図12に示すように、比較例ではハンチングが発生しているのに対して、本発明例ではハンチングを抑制できていることが確認できる。
【符号の説明】
【0088】
1 サーモスタット装置
3 サーモスタットハウジング
5 冷却液流路
11 筒状弁座
13 フランジ部
15 小径部
17 大径部
19 段差部
21 主弁体
23 弁体本体
23a 筒状部
23b フランジ部
23c 外周側端部
23d 凸状部
24 進入部
25 環状弾性体
27 環状シールリップ
29 冷却液流路
31 感温可動体
33 支持枠
35 ピストンシャフト
37 フレーム
39 メインスプリング
41 パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状弁座と、前記筒状弁座の内側まで進入させられることで当該筒状弁座を閉弁する主弁体と、冷却液の温度を感知して前記主弁体を駆動させる感温可動体とを備え、冷却系回路内で冷却液の流量を制御するサーモスタット装置において、
前記主弁体の前記筒状弁座への進入部外周には、閉弁時に当該筒状弁座の内周面に弾性的に圧接される環状シールリップが設けられ、
前記環状シールリップは、前記感温可動体による前記主弁体の駆動方向に湾曲した凹凸を有する波形をなして設けられていること
を特徴とするサーモスタット装置。
【請求項2】
筒状弁座と、前記筒状弁座の内側まで進入させられることで当該筒状弁座を閉弁する主弁体と、冷却液の温度を感知して前記主弁体を前後に駆動させる感温可動体とを備え、エンジン冷却回路内で冷却液の流量を制御するサーモスタット装置において、
前記主弁体の前記筒状弁座への進入部外周には、環状シールリップが設けられ、
前記筒状弁座は、小径部と当該小径部に対して前記主弁体の進入口側に設けられる大径部とを有し、前記小径部と前記大径部とのうち小径部のみが前記環状シールリップに対して弾性的に圧接可能な内径とされるとともに、前記小径部と前記大径部との間に形成される段差部が前記感温可動体による前記主弁体の駆動方向に湾曲した凹凸を有する波形をなして設けられていること
を特徴とするサーモスタット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−249143(P2010−249143A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23749(P2009−23749)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(391026287)富士精工株式会社 (25)
【出願人】(505388632)高麗電子株式会社 (6)
【Fターム(参考)】