説明

サーモスタット装置

【課題】組立性を向上させることができ、製造コストの低減を図ることができ、しかも温度感知可動部に対してより効率的な熱伝達を可能としたサーモスタット装置を提供する。
【解決手段】エンジンで加熱された高温冷却液をバイパスさせる高温冷却液流路を形成するとともに、温度感知可動部39の全部または一部を覆うまで連絡・延長されて、該高温冷却液流路に流れる前記高温冷却液を、温度感知可動部39の周囲(底面・側面)に接触させた後、吐出開口部46から流出させる筒形の高温冷却液整流部42と、高温冷却液整流部42の外周側に設けられた受け部62と、弁体と受け部62の間に嵌め込まれ、弁体を閉弁方向に押し付勢するとともに受け部62を弁体から離間する方向へ押し付勢するスプリング41と、ピストンシャフト34の上端から連続し、付勢された受け部62をその付勢力を受けつつ係止するフレーム59とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車のエンジンを冷却する冷却液温度の自動制御を行うサーモスタット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のサーモスタット装置400(特許文献1参照。)は、例えば図9(a)に示すように、ラジエタ152で冷却された低温冷却液Aと、エンジン151からバイパス153を介して供給される高温冷却液Bとが流入され、これらの混合比率を制御することで、エンジン151へ流入させる冷却液Cの温度を制御するいわゆる入口制御方式の範疇に入るものである。
【0003】
即ち、この制御系においては、エンジン151を通過した高温冷却液Bがバイパス153を介してそのまま送られてくるバイパスポート133と、エンジン151を通過した高温冷却液Bの一部がラジエタ152において冷却されて低温冷却液Aとされ、この低温冷却液Aがラジエタ152から供給されるラジエタ連結ポート131とを備え、ハウジング本体内部132において低温冷却液A及び高温冷却液Bは互いに混合されて冷却液Cが生成される。この生成された冷却液Cは、エンジン連結ポート130を介してエンジン151へと供給されることになる。
【0004】
サーモスタット装置400が特徴的なのは、殆ど高温冷却液の温度のみによって温度感知可動部の可動状態を制御できる状態を実現することができるので、エンジン151から流出される高温冷却液Bの水温を一定にするべく動作することである。
【0005】
なお、このバイパス153からラジエタ152に至る途中において車室ヒータ201が設けられている。
【0006】
この制御を実行する上で、サーモスタット装置400は、さらにハウジング本体148と、このハウジング本体148に対して取り付けられたハウジングカバー147によりその筐体を形成することになる。ハウジング本体148は、内部にバイパスポート133と、エンジン連結ポート130に対応した形状が成型されてなる。またハウジングカバー147は、ラジエタ連結ポート131に対応した形状が成型されてなる。なお、このハウジング本体148と、ハウジングカバー147はそれぞれアルミ(ダイカスト)やプラスチック等からなる。
【0007】
また、このサーモスタット装置400は、温度感知可動部139と、温度感知可動部139に一端を収納されたピストンシャフト134と、ラジエタ連結ポート131側に設けられ、ピストンシャフト134の他端を支持するピストンシャフト支持部135と、温度感知可動部139に対して一体的に取り付けられたメインバルブ136と、このメインバルブ136をラジエタ連結ポート131側に押し付勢するスプリング141と、バイパスポート133からハウジング本体内部132へ向けて突出されてなり、当該バイパスポート133からハウジング本体内部132へ向けて吐出開口部146を介して連結された高温冷却液整流部142と、を備えている。また、温度感知可動部139が高温冷却液整流部142内部の支持案内部162に挿入案内される構成とされている。
【0008】
支持案内部162は、鋼材を折曲げ加工、プレス加工等することにより構成されてなり、温度感知可動部139の側面を挿入可能に配置することにより、これを支持案内可能な構成としている。また、この支持案内部162には、図示しない孔が多数設けられている。高温冷却液Bは、この図示しない孔を通過していくことになる。
【0009】
なお、この高温冷却液整流部142の内径は、温度感知可動部139の外径よりも広めに設定されている。その結果、この高温冷却液整流部142を構成する管内に、温度感知可動部139の先端を挿入する際には、この高温冷却液整流部142の内壁と、温度感知可動部139の外壁とが互いに空間的に余裕を持った状態で挿入される、いわゆる遊挿可能な状態とされている。
【0010】
ちなみに、この高温冷却液整流部142の外周には、スプリング141が嵌合されることになる。この高温冷却液整流部142には、フレーム159が更に埋め込まれてなり、このフレーム159の一端は、ハウジングカバー147に固定されている。
【0011】
次に、上述の如き構成からなるサーモスタット装置400によれば、エンジン151により熱せられた高温の高温冷却液Bがバイパスポート133へと供給されてきた場合に、当該高温冷却液Bは高温冷却液整流部142へと送られる。この高温冷却液整流部142は、送られてきた高温冷却液Bを直接に温度感知可動部139の周囲に接触させることができる。この高温冷却液整流部142内には、温度感知可動部139が予め遊挿された状態で静止していて、この温度感知可動部139と、高温冷却液整流部142との間に所定の隙間が予め形成されている。高温冷却液Bは、この温度感知可動部139と高温冷却液整流部142との間に形成された隙間を通ってハウジング本体内部132へと流出していくことになる。これにより、高温冷却液Bを温度や流速を損なうことなく直接に温度感知可動部139の周囲(底面・側面)に接触させ伝熱させるようにすることが可能となる。また、これに伴って温度感知可動部139は、高温冷却液Bの温度を高効率に感知することができ、当該高温冷却液Bの液温に応じてこの温度感知可動部139を可動させることが可能となる。
【0012】
また吐出開口部146からハウジング本体内部132へと流出した高温冷却液Bも、最初は温度感知可動部139の周囲を取り巻くようにして流れる。これにより温度感知可動部139が配置される領域を高温冷却液が支配する状態を形成することができる。
【0013】
メインバルブ136は、スプリング141によりラジエタ連結ポート131側に押し付勢されているため、温度感知可動部139が駆動しない場合には、ラジエタ連結ポート131とハウジング本体内部132とが互いに遮蔽された状態となっている。これに対して、所定温度以上の高温冷却液Bが高温冷却液整流部142内に供給された場合には、図9(b)に示すように、温度感知可動部139がバイパスポート133側へ駆動し、これに伴ってメインバルブ136は、スプリング141の荷重に逆らって開駆動され、ラジエタ連結ポート131からハウジング本体内部132への低温冷却液Aの流入量を増大させることが可能となる。その結果、このサーモスタット装置400においては、ラジエタ連結ポート131からハウジング本体内部132への低温冷却液Aの流入量を高温冷却液Bの温度に応じて制御することが可能となる。
【0014】
このようなサーモスタット装置400は、主に自動車のエンジン冷却系において、冷却液温を高精度に制御することが出来、従来よりも高温に保つことも可能とし、結果、エンジンの燃焼効率の向上及び、エンジンのフリクションロスの低減、熱的損失の低減に寄与し、エンジンの低燃費化に寄与することが出来るものである。
【0015】
また、サーモスタット装置400では、ハウジング本体148と、高温冷却液整流部142の連設部分170が密着しているように画かれているが、実際は、各パーツの縦方向の寸法バラツキの積み重ねを考慮してハウジング本体148と高温冷却液整流部142の連設部分170に僅かながらも隙間を持って構成されなければならない。
【0016】
そして、この連設部分170の僅かな隙間からハウジング本体内部132側へ漏れる高温冷却液Bが多くなってしまうと、上述した特許文献1に示される高温冷却液整流部142の機能が損なわれることになる。従って、連設部分170の隙間は極力無くした方が望ましい。
【0017】
このような連設部分170における隙間を無くすための処置としては、以下の2つの方法が考えられる。第1の解決方法としては、たとえば図9(a)に示すように、ハウジング本体148と高温冷却液整流部142の連設部分170にゴム等の弾性体171を介在させて寸法バラツキを吸収しつつシールすることが考えられる。また第2の解決方法として、図10(b)に示すように、高温冷却液整流部142の下部を筒状に延長した筒状部142aを新たに設け、縦方向の寸法バラツキを吸収しつつ高温冷却液整流部142の下部の筒状部142aの外周に設けられた溝142bとハウジング本体148の内壁との間にシール部材174を軸封的に介在させてシールする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】再表2007/108273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ところで、上述した図9に示す従来のサーモスタット装置400の組立工程を考えたとき、スプリング141を圧縮しながら温度感知可動部139を高温冷却液整流部142内の支持案内部162に挿入する工程が入る。
【0020】
この温度感知可動部139をこの支持案内部162の中に正しく挿入して嵌め込まないで工程を進めた場合、周囲の部品を破損させてしまう虞がある。このため、かかる工程では、比較的荷重の大きいスプリング141を圧縮しつつ、かつ支持案内部162に温度感知可動部139を精度良く挿入して嵌め込まなければならない。
【0021】
しかし、スプリング141の座巻きを構成する円周上各部には均一な押圧力が負荷しない場合が殆どであり、このスプリング141を圧縮した場合には、何れかに傾きやすい性質を持っている。このため、スプリング141における円周上各部の形状の精度の限界、並びにスプリング組付け周辺の各パーツの形状の精度の限界から、温度感知可動部139を支持案内部162に精度よく嵌め込む上でも限界がある。
【0022】
また、この温度感知可動部139が支持案内部162における正確な位置に挿入されているかは、外部から視覚的に把握することが困難である。特にこの温度感知可動部139が挿入された支持案内部162の構成を大量に生産しなければならない事情と、低コストでこれを製造しなければならないという事情の下で、かかる工程をより簡単にかつ確実に実現できるような設計とする必要があった。
【0023】
また従来のサーモスタット装置400の組立工程では、ハウジング本体148のバイパスポートに高温冷却液整流部142が連絡するように組立てる工程が入る。
【0024】
この工程については、特に、ハウジング本体148と高温冷却液整流部142との間の連設部分170の隙間からの高温冷却液Bの漏れを抑制することを考慮した場合、ハウジング本体148と高温冷却液整流部142の間に、上述した第1の解決方法のように、ゴム等の弾性体171を介在させて寸法バラツキを吸収しつつシールする構成とした場合、組立てに際して、弾性体171を、予めハウジング本体148側、又は高温冷却液整流部142側に、いかにして保持しておくかが懸案事項となっている。この組立時において弾性体171がハウジング本体148側、又は高温冷却液整流部142側から脱落し、或いは弾性体171自体の誤装着又は未装着といった問題点が発生してしまう虞がある。
【0025】
また、この弾性体171が所定位置に正しく装着されたか否かは外部から視覚的な把握が困難という事情もあり、更にはこの弾性体171が装着された構成を大量に生産しなければならない事情と、低コストでこれを製造しなければならないという事情の下で、かかる工程をより簡単にかつ確実に実現できるような設計とする必要があった。
【0026】
また第2の解決方法を採用した場合、予めシール部材174を溝142bに介装しておく等することによって、組立てに際して、シール部材174の脱落を防止することは可能となる。しかし、この組立時において高温冷却液整流部142の筒状部142aがバイパスポート133に上手く挿入されるように位置を探索しながら組み立てる必要がある。また、高温冷却液整流部142がハウジング本体148に対して正確に装着されたか否かは、外部から視覚的に把握が困難となり、またかかる構成を大量に生産しなければならない事情と、低コストでこれを製造しなければならないという事情の下で、かかる工程をより簡単にかつ確実に実現できるような設計とする必要があった。
【0027】
特にこの軸封的設計の場合、バイパスポート133への高温冷却液整流部142の筒状部142aの挿入に際し、溝142に遊嵌されたシール部材174がハウジング本体148に対してうまく滑って挿入され得るか否かという課題もある。シール部材174にグリス等の潤滑材を塗布するような工程を追加するのは、非常に煩雑であって製造コストを上昇させる。また、ハウジング本体148に対する高温冷却液整流部142の挿入性は、各部品の寸法や表面状態の仕上がりの僅かな変動によって悪化してしまう虞もある。
【0028】
更に、この軸封的設計の場合、バイパスポート133を構成する穴と、筒状部142aとのクリアランスをあまり大きくとることができないため、バイパスポート133側の中心軸と、高温冷却液整流部142側の中心軸の同軸度に対する要求が厳しくなる。その結果、この同軸度を詳細に規定することになる各部品について、高い寸法精度が要求されることとなり、製造コストの低減を図ることができないという問題点があった。
【0029】
従って、上述した第1の解決方法や第2の解決方法では、依然として組立性の低下、製造コストの上昇といった問題点が残っていた。
【0030】
また、上述した問題点に加えて、図9に示される従来のサーモスタット装置400は、温度感知可動部139が高温冷却液整流部142内部の支持案内部162に挿入案内される構成となっており、かかる支持案内部162には、図示しない孔が多数設けられている。高温冷却液Bは、この支持案内部162の図示しない孔を通過していくことになるが、この通過の過程において図示しない孔により流れが乱されることになる。すなわち、高温冷却液Bは、図示しない孔を通過していくことになり、温度感知可動部139の感温部位の表面をなめらかに通過することができない。また温度感知可動部139の周囲を周状に取り囲む形態の支持案内部162の形状が、高温冷却液Bと温度感知可動部139との間の効率的な熱伝達ができる接触面積を損なわせており、高温冷却液Bから温度感知可動部139への伝熱応答性が低下してしまう原因にもなっていた。このため、温度感知可動部139により高温冷却液Bをなめらかに通過させ、効率的な熱伝達を行わせることにより、温度感知可動部139の可動精度を向上させる必要もあった。
【0031】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、組立性を向上させることができ、製造コストの低減を図ることができ、しかも温度感知可動部に対してより効率的な熱伝達を可能とし、冷却液温を高応答かつ高精度に感知し、制御することが可能なサーモスタット装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明に係るサーモスタット装置は、エンジンなどの冷却液回路に設けられ、冷却液の温度変化により熱膨張または収縮する熱膨張体を内蔵する温度感知可動部と、この温度感知可動部に一端を収納され前記熱膨張体の熱膨張、収縮により摺動駆動するピストンシャフトを有し、該ピストンシャフトの駆動により弁体の開閉を行うサーモスタット装置において、エンジンで加熱された高温冷却液を当該サーモスタット装置にバイパスさせる高温冷却液流路を、前記高温冷却液が前記温度感知可動部の全部または一部を覆うまで連絡・延長することができ、前記高温冷却液流路に流れる前記高温冷却液を、前記温度感知可動部の周囲(底面・側面)に接触させた後、吐出開口部から流出させる高温冷却液整流部と、前記高温冷却液整流部の外周側に設けられた受け部と、前記弁体と前記受け部の間に嵌め込まれ、前記弁体を閉弁方向に押し付勢するとともに前記受け部を前記弁体から離間する方向へ押し付勢する付勢部材と、前記閉弁方向に押し付勢された弁体が押圧されて閉弁する弁座部材に連続し、前記付勢された受け部をその付勢力を受けつつ係止可能な係止部材とを備えることを特徴とする。
【0033】
このとき、前記高温冷却液整流部を前記高温冷却液流路に連絡するように設けた場合には、前記高温冷却液整流部を前記高温冷却液流路側に押圧させることにより、前記付勢部材を収縮させて前記受け部と前記係止部材とを互いに離間可能とされているようにしてもよい。
【0034】
また、前記高温冷却液整流部内に前記温度感知可動部が挿入案内される支持案内部を備え、前記支持案内部は、前記高温冷却液整流部の内壁から凸設されてなる複数本のリブ形状とされていてもよい。
【0035】
また、本発明に係るサーモスタット装置は、エンジンなどの冷却液回路に設けられ、冷却液の温度変化により熱膨張または収縮する熱膨張体を内蔵する温度感知可動部と、この温度感知可動部に一端を収納され前記熱膨張体の熱膨張、収縮により摺動駆動するピストンシャフトを有し、該ピストンシャフトの駆動により弁体の開閉を行うサーモスタット装置において、エンジンで加熱された高温冷却液を当該サーモスタット装置にバイパスさせる高温冷却液流路を、前記温度感知可動部の全部または一部を覆うまで連絡・延長し、前記高温冷却液流路に流れる前記高温冷却液を、前記温度感知可動部の周囲(底面・側面)に接触させた後、吐出開口部から流出させる高温冷却液整流部を備え、前記高温冷却液整流部の内壁の面の一部が、前記温度感知可動部を嵌挿させるための支持案内部とされていることを特徴とする。
【0036】
このとき、前記支持案内部は、前記高温冷却液整流部の内壁から凸設されてなる複数本のリブ形状とされているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0037】
上述した構成からなる本発明によれば、組立性を向上させることができ、製造コストの低減を図ることができ、しかも温度感知可動部に対してより効率的な熱伝達を可能とし、しかも冷却液温を高応答かつ高精度に感知し、制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明を適用したサーモスタット装置の構成図である。
【図2】(a)は、高温冷却液整流部の斜視図であり、(b)はその平面図である。
【図3】本発明を適用したサーモスタット装置における温度感知可動部が可動した状態を示す図である。
【図4】本発明を適用したサーモスタット装置の組立方法について説明するための図である。
【図5】高温冷却液整流部における複数本のリブを螺旋形状に構成した例を示す図である。
【図6】本発明を適用したサーモスタット装置の他の構成について示す図である。
【図7】本発明を適用したサーモスタット装置の組立方法について説明するための他の図である。
【図8】温度感知可動部から下方に延長されている延長軸と、これを支持案内する支持案内部を設けた例を示す図である。
【図9】従来のサーモスタット装置について説明するための図である。
【図10】連設部分における隙間を無くすための従来の処置方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態として、自動車のエンジンの冷却温度を制御する際に適用可能なサーモスタット装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0040】
図1は、本発明を適用したサーモスタット装置300の構成例を示している。サーモスタット装置300は、例えば図示しない冷却部により冷却された低温冷却液Aと、エンジンから供給される高温冷却液Bとが流入され、これらの混合比率を制御することで、エンジンへ流入させる冷却液Cの温度を制御するものである。
【0041】
即ち、この制御系においては、高温冷却液Bが送られてくるバイパスポート33と、低温冷却液Aが供給されるラジエタ連結ポート31とを備え、ハウジング本体内部32において低温冷却液A及び高温冷却液Bは互いに混合されて冷却液Cが生成される。この生成された冷却液Cは、エンジン連結ポート30を介して例えば図示しないエンジンへと供給されることになる。
【0042】
サーモスタット装置300が特徴的なのは、殆ど高温冷却液Bの温度のみによって温度感知可動部39の可動状態を制御できる状態を実現することができるので、高温冷却液Bの水温を一定にするべく動作することである。
【0043】
この制御を実行する上で、サーモスタット装置300は、さらにハウジング本体48と、このハウジング本体48に対して取り付けられたハウジングカバー47によりその筐体を形成することになる。ハウジング本体48は、内部にバイパスポート33と、エンジン連結ポート30に対応した形状が成型されてなる。またハウジングカバー47は、ラジエタ連結ポート31に対応した形状が成型されてなる。なお、このハウジング本体48と、ハウジングカバー47はそれぞれアルミ(ダイカスト)やプラスチック等からなる。
【0044】
また、このサーモスタット装置300は、温度感知可動部39と、温度感知可動部39に一端を収納されたピストンシャフト34と、ラジエタ連結ポート31側に設けられ、ピストンシャフト34の他端を支持するピストンシャフト支持部35と、温度感知可動部39に対して一体的に取り付けられたメインバルブ36と、このメインバルブ36をラジエタ連結ポート31側に押し付勢するスプリング41と、バイパスポート33からハウジング本体内部32へ向けて突出されてなり、当該バイパスポート33からハウジング本体内部32へ向けて吐出開口部46を介して連結された高温冷却液整流部42とを備えている。なお、メインバルブ36は、低温冷却液Aをエンジン連結ポート30側へ流出させる上での弁体としての役割を担うものであり、一体的に取り付けられた温度感知可動部39とともに駆動することにより、弁体を開閉させることが可能となる。
【0045】
高温冷却液整流部42の材質は、例えば樹脂製であるが、これに限定されるものではない。高温冷却液整流部42の上端は、図1に示すように、温度感知可動部39の下端よりも上方に位置する。その結果、温度感知可動部39の下端は、高温冷却液整流部42内に入り込む形となる。なお、ここでいう上下における上方とは、ラジエタポート31側に相当し、下方とは、バイパスポート33側に相当する。以下の説明においても同様とする。なお、この高温冷却液整流部42の内径は、温度感知可動部39の外径よりも広めに設定されている。ちなみに、高温冷却液整流部42の上端は、温度感知可動部39の下端よりも常に上方に位置する場合に限定されるものではなく、この温度感知可動部39が上下運動する過程において、温度感知可動部39の下端が高温冷却液整流部42の上端よりも上方に位置するものであってもよい。
【0046】
なお、この図1に示されるサーモスタット装置300は、温度感知可動部39の全部または一部を覆うまで連絡・延長した高温冷却液整流部42を形成し、該高温冷却液整流部42と温度感知可動部39との隙間部分が高温冷却液Bの循環通路を形成して、高温冷却液整流部42に流れる高温冷却液Bを、温度感知可動部39の周囲(底面・側面)に接触させた後、吐出開口部46から流出させる高温冷却液整流部構造を有している。
【0047】
ちなみに、この高温冷却液整流部42の外周上方には、上記したスプリング41が嵌合されることになる。この高温冷却液整流部42には、フレーム59が当接している。このフレーム59の一端は、シート55に固定されている。このシート55と、ピストンシャフト支持部35と、フレーム59とは互いに一体的となるように連結固定されている、いわゆる弁座部材である。またシート55の端部は、シール部材56を介してハウジングカバー47と、ハウジング本体48との間に挟まれて固定されている。フレーム59の下部には係止部59aが設けられている。なお、このフレーム59は狭小の帯状の金属板で構成されているが如何なる形状で構成されていてもよい。そして、このピストンシャフト支持部35は、ピストンシャフト34の上端に連続していることから、このフレーム59は、シート55を介してピストンシャフト34の上端から連続しているということも可能となる。また、このフレーム59の下部の係止部59aは、シート55に対して連続していることとなる。
【0048】
図2(a)は、高温冷却液整流部42の斜視図を示しており、図2(b)はその平面図を示している。この高温冷却液整流部42の外周側には受け部62が設けられている。この受け部62は、外周面から外側に突出されている構成とされており、外側に拡径化された形状とされている。ちなみに受け部62は、スプリング41を嵌め込む際においてこれに係止されるべく配設されたものである。即ち、このスプリング41は、図1に示すようにメインバルブ36と受け部62との間に挟みこむようにして嵌め込まれる。その結果、このスプリング41は、メインバルブ36を閉弁方向Eに押し付勢する。またこのスプリング41は、受け部62をメインバルブ36から離間する方向Fへ押し付勢する。
【0049】
この高温冷却液整流部42は、内壁から凸設されてなるとともに、温度感知可動部39の嵌挿方向Dに沿った複数本のリブ63を有する。このリブ63は、ほぼ嵌挿方向Dに向けて直線状とされている。このリブ63における頂面63aは、温度感知可動部39の形状に沿った曲面で構成されている。このリブ63により囲まれた領域に温度感知可動部39を挿入することにより、この温度感知可動部39をリブ63により案内されて嵌め込まれた形で安定させることが可能となる。またリブ63の間には溝部64が形成されてなり、この溝部64を通じて高温冷却液Bの流路が形成されることになる。なお、このリブ63を含めた高温冷却液整流部42は、樹脂成形であってもよいし、金属プレス成形等で形成されたものであってもよい。また、この高温冷却液整流部42は、その嵌挿方向Dへ向けた中間において内側へ向けて縮径された縮径部91が設けられていてもよい。この縮径部91が設けられていることにより、温度感知可動部39の駆動に応じて温度感知可動部39と高温冷却液整流部42との間隙を絞り自在に構成することが可能となる。その結果、高温冷却液Bの液温が高い場合により多くの高温冷却液Bをラジエタへまわし冷却能力を最大に引き出すことが可能となる。
【0050】
次に、上述の如き構成からなるサーモスタット装置300の動作について説明をする。高温の高温冷却液Bがバイパスポート33へと供給されてきた場合に、当該高温冷却液Bは高温冷却液整流部42へと送られる。この高温冷却液整流部42は、送られてきた高温冷却液Bを直接に温度感知可動部39の周囲に接触させることができる。
【0051】
この高温冷却液整流部42内には、温度感知可動部39が予め嵌挿された状態で静止している。高温冷却液Bは、この温度感知可動部39と高温冷却液整流部42との間を通ってハウジング本体内部32へと流出していくことになる。これにより、高温冷却液Bを温度や流速を損なうことなく直接に温度感知可動部39の周囲(底面・側面)に接触させ伝熱させるようにすることが可能となる。また、これに伴って温度感知可動部39は、高温冷却液Bの温度を高効率に感知することができ、当該高温冷却液Bの液温に応じてこの温度感知可動部39を可動させることが可能となる。図3は、その温度感知可動部39が可動した状態を示している。
【0052】
また吐出開口部46からハウジング本体内部32へと流出した高温冷却液Bも、最初は温度感知可動部39の周囲を取り巻くようにして流れる。これにより温度感知可動部39が配置される領域を高温冷却液が支配する状態を形成することができる。
【0053】
メインバルブ36は、スプリング41により押し付勢されているため、温度感知可動部39が駆動しない場合には、ラジエタ連結ポート31とハウジング本体内部32とが互いに遮蔽された状態となっている。これに対して、所定温度以上の高温冷却液Bが高温冷却液整流部42内に供給された場合には、温度感知可動部39がバイパスポート33側へ駆動し、これに伴ってメインバルブ36は、スプリング41の荷重に逆らって開駆動され、ラジエタ連結ポート31からハウジング本体内部32への低温冷却液Aの流入量を増大させることが可能となる。その結果、このサーモスタット装置300においては、ラジエタ連結ポート31からハウジング本体内部32への低温冷却液Aの流入量を高温冷却液Bの温度に応じて制御することが可能となる。
【0054】
次に、上述した構成からなるサーモスタット装置300の組立方法について説明をする。先ず図4(a)に示すように、ピストンシャフト34の上端が接続されたピストンシャフト支持部35、メインバルブ36、シート55、温度感知可動部39等を、上部ユニット66とする。また、フレーム59の下部の係止部59aに高温冷却液整流部42の受け部62の下端を係止させる。更に、この高温冷却液整流部42の受け部62の上端とメインバルブ36との間にスプリング41を嵌め込む。ちなみに、この図4(a)の段階においては、スプリング41は殆ど収縮されていない状態となっている。このとき、図4(a)に示すように、上部ユニット66における温度感知可動部39の中心軸と、高温冷却液整流部42の中心軸とが互いに一致していない状態となっているのが殆どである。
【0055】
次に図4(b)に示すように、ピストンシャフト支持部35を含めた上部ユニット66を押し下げ、フレーム59の上端をシート55に取り付ける。この押し下げ工程においては、温度感知可動部39を高温冷却液整流部42内に嵌挿させていくが、このとき、高温冷却液整流部42の上端に設けられたテーパー63bや、上述したリブ63により案内されることから、このリブ63の頂面63aに沿ってほぼ真っ直ぐに温度感知可動部39を挿入することが可能となり、ひいては温度感知可動部39の中心軸と、高温冷却液整流部42の中心軸とが互いに一致させることが可能となる。その結果、スプリング41を徐々に圧縮させて弾性変形させながら上部ユニット66が押し込む際において、何れかに傾いてしまうのを防止でき、安定して精度よく嵌め込むことが可能となる。また、フレーム59の上端をシート55に取り付けた段階において、スプリング41は弾性収縮されていることから、メインバルブ36は、スプリング41によって閉弁方向Eに押し付勢されるとともに、受け部62をメインバルブ36から離間する方向Fへ押し付勢された状態となっている。また受け部62が方向Fへ押し付勢されている高温冷却液整流部42は、その受け部62の下端にフレーム59の下部の係止部59aを係止させている。換言すれば、フレーム59は、その係止部59aに高温冷却液整流部42における受け部62を係止させている。即ち、この係止部59aを含むフレーム59は、ピストンシャフト34の上端から連続し、付勢された受け部62をその付勢力fを受けつつ係止する。
【0056】
本発明を適用したサーモスタット装置300aは、この図4(b)の組み立てが終了した段階で実施するようにしてもよいし、図1に示すようにハウジング本体48並びにハウジングカバー47に取り付けるようにしてもよい。実際にこのハウジング本体48並びにハウジングカバー47に取り付けられる際には、シート55を介してハウジングカバー47に取り付けを行うとともに、高温冷却液整流部42をバイパスポート33側(冷却液回路側)に押圧させる。その結果、スプリング41は、僅かに弾性収縮するとともに、受け部62とフレーム59における係止部59aは互いに離間することになる。
【0057】
即ち、ハウジング本体48のバイパスポート33に高温冷却液整流部42を連絡させるように組み立てた時には、高温冷却液整流部42における受け部62が、フレーム59の係止部59aから浮き上がるようになっていて、高温冷却液整流部42の底面が、スプリング41の付勢力によりハウジング本体48のバイパスポート33側の面に密着押圧されるようになっている。これにより、ハウジング本体48(バイパスポート33)と高温冷却液整流部42との間の隙間からの高温冷却液Bの漏れを抑制することが可能となる。従って高温冷却液整流部42として上述したような機能を効果的に引き出すことができる。
【0058】
また、高温冷却液整流部42の受け部62が、フレーム59の係止部59aから浮き上がることが可能な構成となっているため、各パーツのE方向、F方向の寸法バラツキは、スプリング41が吸収することができる。
【0059】
また背景技術のように、ゴム等のシール部材を使用することなく実現することができる。このため、シール部材の装着工程が不要で、当然に挿入等のための潤滑材の塗布工程も不要となり、シール部材の作業中の脱落、未装着などの問題を未然に解消することができ、工程を簡単化、確実化することが可能となる。
【0060】
またハウジング本体48のバイパスポート33に高温冷却液整流部42を連絡させる工程が、高温冷却液整流部42の底面を単純にハウジング本体48のバイパスポート33の出口の周囲の面に押し付けるという工程となるため、従来のように視覚的に視認できない部位で装着位置を探すような動作が不要となり、工程を簡単化し組立性を向上させることができ、確実な組立を低コストで実現することが可能となる。
【0061】
更に、バイパスポート33側の中心軸と高温冷却液整流部42側の中心軸の同軸度出しに特段の注意を必要とせず、この同軸度を規定することになる各部品について、特段に高い寸法精度を必要とすることもないので、コスト低減を実現できる。
【0062】
当該組立工程前に、スプリング41の付勢力を受け止めて、高温冷却液整流部42を支持しようとするフレーム59の係止部59aは、組立てを終了させて図1に示すような状態となったときに、スプリング41の付勢力を受ける役割を終える。このため、フレーム59は、この組立工程までそのスプリング41の付勢力を受ける役割を全うできればよいため、その強度面等での考慮は比較的簡易なものでよい。したがって、フレーム59は、細くすることもでき、材質選定の幅を広げることもでき、結果として、軽量化や低コスト化を図ることも可能となる。また各冷却液の流通の邪魔に成りがちなフレーム59を細くすることができれば、冷却液の流通時の圧力損失低減にも寄与することとなる。
【0063】
また本発明によれば、高温冷却液整流部42内にリブ63を凸設させている。このため、組み立て性を向上でき、簡単で確実な組立を低コストで実現することができる。即ち、スプリング41を圧縮しながら温度感知可動部39を高温冷却液整流部42内に挿入していくに際して、高温冷却液整流部42の吐出開口部46付近のリブ63の形状によって、温度感知可動部39の挿入案内、位置決めを簡単に行うことが可能となる。しかも、高温冷却液整流部42の吐出開口部46付近には、上方へ向けて拡径するテーパー63bが設けられていることから、仮に温度感知可動部39の中心軸が、高温冷却液整流部42の中心軸とずれている場合においても、押し込み時に温度感知可動部39をテーパー63bにより案内させることができる。その結果、温度感知可動部39の中心軸と、高温冷却液整流部42の中心軸とが互いに一致させることが可能となる。
【0064】
この組立に際して、図4(a)に示すように、温度感知可動部39の外径に比べて十分な大きさを持つ吐出開口部46へ温度感知可動部39を運んで挿入していくことは、少々この温度感知可動部39が傾いていても容易に実現することができる。リブ63は、吐出開口部46まで案内された温度感知可動部39が、更に高温冷却液整流部42の奥方向に押されれば、スムーズに高温冷却液整流部42内のリブ63により形成される支持案内部に挿入されて、支持案内されるように形成される。
【0065】
これにより、本発明を適用したサーモスタット装置300は、組立性が向上し、簡単で確実な組立を低コストで実現することができる。
【0066】
更に高温冷却液整流部42内にリブ63を凸設させた本発明では、以下に示すような付随的効果を奏する。
【0067】
温度感知可動部39への熱伝達を効率良く早く行うためには、熱媒体としての高温冷却液Bが温度感知可動部39の表面のなるべく広い面積に接触する必要があるとともに、その温度感知可動部39への接触表面の流速も速くする必要がある。上述の従来技術のサーモスタット装置400の支持案内部の構造では、主たる高温冷却液Bの流れは支持案内部に設けられた図示しない孔を通過していくことになり、温度感知可動部の感温部位の表面をなめらかに通過することができず、支持案内部が温度感知可動部39との間の効率的な熱伝達を阻害していた。
【0068】
これに対して本発明によれば、高温冷却液整流部42に流入した高温冷却液Bは、溝64に沿って流れることから、温度感知可動部39の表面に広く接触しながらスムーズに通過することが可能となる。
【0069】
また、上述の従来技術では、高温冷却液Bの流速が最も速くなるのは、支持案内部に設けられた孔を通過する時となるが、これでは、高温冷却液Bが孔を通過する前後において流速の低下した状態で温度感知可動部39の表面に接触することとなる。
【0070】
これに対して、本発明によれば、リブ63の谷間を構成する溝64が主たる高温冷却液の流路となるが、その部分における高温冷却液Bの通過断面積を調整することができ、適度に速い流速をもった高温冷却液Bを温度感知可動部39の表面広くに直接に、接触、作用させることができる。
【0071】
以上の構成により、本発明によれば、温度感知可動部39の感温性を向上させることができ、冷却液温を高応答、高精度に感知して制御することが可能となる。また、高温冷却液整流部42内部の高温冷却液Bの通水抵抗を低減することもでき、サーモスタット装置300や、エンジン冷却系のバイパス流路(高温冷却液流路)のコンパクト化など、延いてはそれによる軽量化・低燃費化に寄与することができる。
【0072】
また、上述した従来技術では、支持案内部が、鋼材を折曲げ加工、プレス加工等した部品で構成され、また、これが樹脂のインサート成形工程を経て高温冷却液整流部と一体化されているので、製作工程が複雑でコスト的に負担が大きい。
【0073】
これに対して、本発明によれば、高温冷却液整流部42と支持案内部としてのリブ63とが一体化された一部品により実現でき、またそれは樹脂成形や金属プレス成型などにより提供されるので、上述した様々な効果を簡単で安価に実現することが可能となる。
【0074】
なお、本発明では、上述した高温冷却液整流部42における複数本のリブ63を螺旋形状に構成するようにしてもよい。図5(a)は、このリブ63を螺旋形状とした場合における高温冷却液整流部42の斜視図を、また図5(b)はその平面図を示している。また更に図5(c)は、図5(b)のA−A´断面図を示している。リブ63は、挿通方向Dに進むにつれて徐々に捻られるような形状とされている。
【0075】
温度感知可動部39は、リブ63により囲まれた領域に嵌挿されることとなる。そして、この温度感知可動部39の可動により、リブ63と当該温度感知可動部39との間には摩擦が生じる。この摩擦摺動をする箇所は、温度感知可動部39が、リブ63により当接されて支持されるのは、当該リブ63周上の部分的な箇所となっている。これは、温度感知可動部39と一体化されたメインバルブ36へ、スプリング41が閉弁方向Eへ付勢させるとともに、スプリング41を構成する巻きばねの終端位置等の影響で、メインバルブ36を通じて温度感知可動部39に、ある一定の方向に横荷重が作用するためである。
【0076】
しかも本発明では、温度感知可動部39を支持案内するものがリブ63の形状とされているため、温度感知可動部39が摩擦摺動をする箇所はなおさら局所的な箇所となり、摩擦摺動箇所を大きく磨耗させてしまう可能性もある。
【0077】
特に、リブ63を樹脂成形により構成する場合、その強度の確保と使用環境下における形状保持などの目的のために、適量のガラス繊維を含有した樹脂を採用する場合もある。しかし、かかるガラス繊維を混合した樹脂でリブ63を構成する場合、銅合金により生成された温度感知可動部39が、リブ63との摩擦摺動により磨耗が促進されるという結果となる。この磨耗が更に進展してしまうと、温度感知可動部39そのものの機能劣化、喪失につながる可能性がある。
【0078】
このため、上述したようにリブ63を設けることにより、温度感知可動部39の駆動に伴い、温度感知可動部39がリブ63に接触、摺動する位置や範囲が、挿通方向Dに進むにつれて変化する。このため、温度感知可動部39とリブ63との間で摺動、磨耗箇所が分散されることになり、磨耗の進行が抑制され耐久性が増すことになる。
【0079】
なお、本発明を適用したサーモスタット装置300は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば図6に示すように、ピストンシャフト支持部35をハウジングカバー47に設けるようにしてもよい。また、この図6の形態では、フレーム59もこのハウジングカバー47に一体化させて構成している。
【0080】
このため、この図6の形態においても、フレーム59、シート55、ピストンシャフト支持部35は、互いに連続している。そして、このピストンシャフト支持部35は、ピストンシャフト34の上端に連続していることから、このフレーム59は、ピストンシャフト34の上端から連続しているといえる。また、このフレーム59の下端は内側へ向けて突出されて係止部59aが形成されている。
【0081】
またこの例では、この高温冷却液整流部42の外周には、同様に受け部62が設けられている。この受け部62は、斜め上方に向けて延長されているとともにその先端が上記係止部59aに係止可能なように、その係止部59aの上面と略平行方向に折り曲げられている。
【0082】
なお、この図6に示すサーモスタット装置300において、上述した図1と同一の構成要素、部材に関しては同一の符号を付すことにより以下での説明は省略する。
【0083】
実際にこのような構成からなるサーモスタット装置300を組み立てる際には、例えば図7に示すようにハウジングカバー47にピストンシャフト支持部35を装着し、スプリング41をメインバルブ36と受け部62との間に嵌め込む。そして、この受け部62とフレーム59とを互いに係止させる。この状態を上部ユニット67とした。次に、この上部ユニット67を押し下げ、ハウジング本体48の上面に高温冷却液整流部42を押圧させる。その結果、図6に示すように、スプリング41は、更に弾性収縮するとともに、受け部62とフレーム59の係止部59aは互いに離間することになる。
【0084】
この形態においても上述と同様の効果を奏することは勿論である。
【0085】
また本発明では、図8に示すように、温度感知可動部39から下方に延長されている延長軸92と、これを支持案内するために、高温冷却液整流部42の内壁に形成された支持案内部93と備えるようにしてもよい。支持案内部93は孔94が上下面にかけて貫通されており、上述した延長軸92が挿入可能とされている。このような構成とすることにより、温度感知可動部39の中心軸と、高温冷却液整流部42の中心軸とが互いに一致させることが可能となる。
【符号の説明】
【0086】
30 エンジン連結ポート
31 ラジエタ連結ポート
32 ハウジング本体
33 バイパスポート
34 ピストンシャフト
35 ピストンシャフト支持部
36 メインバルブ
39 温度感知可動部
41 スプリング
42 高温冷却液整流部
46 吐出開口部
47 ハウジングカバー
48 ハウジング本体
55 シート
56 シール部材
59 フレーム
62 受け部
63 リブ
64 溝部
66 上部ユニット
300 サーモスタット装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンなどの冷却液回路に設けられ、冷却液の温度変化により熱膨張または収縮する熱膨張体を内蔵する温度感知可動部と、この温度感知可動部に一端を収納され前記熱膨張体の熱膨張、収縮により摺動駆動するピストンシャフトを有し、該ピストンシャフトの駆動により弁体の開閉を行うサーモスタット装置において、
エンジンで加熱された高温冷却液を当該サーモスタット装置にバイパスさせる高温冷却液流路を、前記高温冷却液が前記温度感知可動部の全部または一部を覆うまで連絡・延長することができ、前記高温冷却液流路に流れる前記高温冷却液を、前記温度感知可動部の周囲(底面・側面)に接触させた後、吐出開口部から流出させる高温冷却液整流部と、
前記高温冷却液整流部の外周側に設けられた受け部と、
前記弁体と前記受け部の間に嵌め込まれ、前記弁体を閉弁方向に押し付勢するとともに前記受け部を前記弁体から離間する方向へ押し付勢する付勢部材と、
前記閉弁方向に押し付勢された弁体が押圧されて閉弁する弁座部材に連続し、前記付勢された受け部をその付勢力を受けつつ係止可能な係止部材とを備えること
を特徴とするサーモスタット装置。
【請求項2】
前記高温冷却液整流部を前記高温冷却液流路に連絡するように設けた場合には、前記高温冷却液整流部を前記高温冷却液流路側に押圧させることにより、前記付勢部材を収縮させて前記受け部と前記係止部材とを互いに離間可能とされていること
を特徴とする請求項1記載のサーモスタット装置。
【請求項3】
前記高温冷却液整流部内に前記温度感知可動部が挿入案内される支持案内部を備え、前記支持案内部は、前記高温冷却液整流部の内壁から凸設されてなる複数本のリブ形状とされていること
を特徴とする請求項1又は2記載のサーモスタット装置。
【請求項4】
エンジンなどの冷却液回路に設けられ、冷却液の温度変化により熱膨張または収縮する熱膨張体を内蔵する温度感知可動部と、この温度感知可動部に一端を収納され前記熱膨張体の熱膨張、収縮により摺動駆動するピストンシャフトを有し、該ピストンシャフトの駆動により弁体の開閉を行うサーモスタット装置において、
エンジンで加熱された高温冷却液を当該サーモスタット装置にバイパスさせる高温冷却液流路を、前記温度感知可動部の全部または一部を覆うまで連絡・延長し、前記高温冷却液流路に流れる前記高温冷却液を、前記温度感知可動部の周囲(底面・側面)に接触させた後、吐出開口部から流出させる高温冷却液整流部を備え、
前記高温冷却液整流部の内壁の面の一部が、前記温度感知可動部を嵌挿させるための支持案内部とされていること
を特徴とするサーモスタット装置。
【請求項5】
前記支持案内部は、前記高温冷却液整流部の内壁から凸設されてなる複数本のリブ形状とされていること
を特徴とする請求項4記載のサーモスタット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−208532(P2011−208532A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75600(P2010−75600)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【特許番号】特許第4649535号(P4649535)
【特許公報発行日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(391026287)富士精工株式会社 (25)
【出願人】(505388632)高麗電子株式会社 (6)
【Fターム(参考)】