説明

サーモロール

荷重を支持するための円筒形の内部シャフト(2)と、内部シャフトを取り囲む金属製の外部層(4)と、内部シャフト及び外部層の界面との関係で配置される、伝熱剤のための流れ通路とを含む、繊維ウェブ機械の加熱及び/又は冷却ロール、即ち、サーモロール(1)。サーモロール(1)は、内部シャフトと外部層とを組み立てることによって製造される。サーモロールの流れ通路は、内部シャフトの外表面及び/又は外部層の内表面の上に内部シャフトと外部層との組立て前に形成される流れ溝から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブ状材料を処理する、例えば、加熱、カレンダリング、ウェットプレス、且つ/或いは、冷却するために、繊維ウェブ機械、好ましくは、抄紙機、厚紙抄紙機、及び、化学パルプマシンにおいて使用されるサーモロール(熱ロール)に関する。
【0002】
本発明は、加熱及び/又は冷却ロール、即ち、サーモロール(熱ロール)に関し、荷重を支えるための円筒形の内部シャフトと、内部シャフトを取り囲む金属製の外部シャフトと、内部シャフトと外部シャフトとの間の界面に関連して配置される伝熱剤のための流れ通路とを含む。
【背景技術】
【0003】
紙及び厚紙をカレンダリングするのに必要な熱出力は、加熱ロール、即ち、サーモロールによって現在生成されている。カレンダ運転速度は、過去数年に亘って有意に上昇した。所要のカレンダリング効果を達成するために、サーモロールの表面温度は、200℃〜250℃に、或いは、それよりも高い温度にさえ上昇されなければならない。高い運転速度は、サーモロールの高い表面温度と相俟って、サーモロールからの熱出力交換が極めて高くなければならないことを意味し、新しいプロセスでは、典型的には、200kW/mであり、或いは、それよりも高い。
【0004】
サーモロールの熱が伝熱剤として作用する流体又は気体をサーモロールの内側、具体的には、そのシェル内のボアに伝達することによって生成され、熱はボアからシェルに移転され、さらに、ロールの表面に伝達されることは既知である。
【0005】
特許明細書EP0710741B1は、高圧下で高温で紙をカレンダリングするための加熱ロールを開示している。このサーモロールでは、ロール本体は、鍛鋼、鋳鉄、鋳鋼、又は、延性鋳鋼のような、第一材料の壁から成る。この内層は第二材料の薄い周囲表面層を備え、第二材料は硬く耐摩耗性を有する。加えて、このサーモロールは、均一に位置付けられ且つ内部材料内に密閉される伝熱剤のための軸方向導管を有する。
【0006】
上述されたサーモロール内の伝熱剤のための流れ通路は、穿孔の製造技術によって制約されるので、より大きい直径のような、流れを減速する別個の形態、より小さい直径のような、流れを加速する別個の形態、又は、例えば、流れ通路内の流れリミッタを使用することが決定されない限り、実際には、丸く、それらの長さを通じて等しい直径を有する。よって、この種類の流れ通路内で流れを減速し或いは加速する別個の特性を形成することは困難である。加えて、製造技術によって制約されて、穿孔される流れ通路は、特定の最低直径以上でなければならない。一般的に述べ得るのは、流れ通路のサイズ及びシェルの表面層に近接する流れ通路の位置決めを上述されたようなサーモロール内で自由に選択し得ないことである。
【0007】
チルド鋳鉄ロールは、冷却金属型内で鋳造される鋳鉄ロールである。この方法は硬くて耐摩耗性を有するが脆弱な白鋳鉄の層を急速冷却表面層内で製造する。チルド鋳鉄及び鋼ロールの双方に伴う製造技術問題は、周辺穿孔が高価で困難であることである。多くのボアが必要であり、それらは温度分配が十分に均一であり且つボアの位置及び整列誤差が余り有意でないようにサーモロールの表面から比較的離れて位置付けられなければならない。鋳造によって生成されるチルド鋳鉄ロールの材料分配が表面に近い穿孔を妨げるので、ロールシェル内に長手孔を穿孔するのは極めて困難である。異なる方向から2つの対向する孔を穿孔することが通常必要である。均一な加熱を達成し且つ加熱段階及び冷却段階を加速するために、シェル内により多くの流れ通路を穿孔するのが好ましい。技術的要求の高さ及びこの選択肢の費用の故に、これは現在までのところ可能ではない。大きい鍛造片の入手可能性は不十分であり、そのような鍛造片は、特に周辺穿孔される場合には、高価であることも述べ得る。
【0008】
具体的には、サーモロールに要求される加熱効率は増大している。これは熱歪みの増大の故に古いチルド鋳鉄ロールを不十分にさせる。置換技術を代表する焼入鋼ロールは、鋼業界における現在の高い要求状況の間の価格及び供給期間に関して非実用的になっている。
【0009】
チルド鋳鉄ロールを用いるならば、ボアは、柔らかい内層、即ち、典型的には、「ねずみ鋳物」内に位置付けられる。ボアと表面との間の長い伝熱距離は、必然的に高いオイル温度をもたらす。何故ならば、材料の熱伝導性は、チルド鋳鉄ロール及び鋼ロールの双方で比較的不十分だからである。
【0010】
長手に穿孔される流れ通路の直径は、普通、それらの長さを通じて一定である。しかしながら、均一な伝熱の観点から、通路の場所、断面積、及び、周辺壁の長さは、例えば、特許明細書FI106054Bにおいて提案されているように、流れの動作の方向で加熱オイルの温度の変化に従って変化しなければならない。従来技術では、これは、通路とロールシェルの外表面との間の距離を変更することによって、断面積が減少し且つ流速が増大するよう、別個の流れ制限片で流れを制限することによって、或いは、粗面化、溝削り、又は、穿孔等によって壁の表面積を増大することによって達成される。軸方向における加熱の温度差を均一化するために他に頻繁に使用される手段は、流れが隣接する流れ通路内で異なる方向に進行するように構成することである。
【0011】
サーモロールの外表面の近くに流れ通路を位置付けることは有利である。何故ならば、それによって、サーモロールの外表面までの熱移動距離が短くなるからである。しかしながら、既知の周辺穿孔ロールでは、「バーリング」(“barring”)、即ち、ロールの場合において、熱膨張の局所差によって引き起こされるサーモロールの丸さプロファイルにおける表面うねり及びサーモロールの外表面上の温度変化におけるバー状変化を最小限化するために、流れ通路を比較的高密度の間隔に位置付けることは経済的に可能でなくなっている。
【0012】
バーリングはロール振動を励起し且つ処理中の紙の特性に対して有害な効果を有することが既知であり、とりわけ、紙の光沢及び厚さの差においてそれを認識し得る。
【0013】
既知のサーモロールに伴う他の問題は、サーモロールの十分に高速な冷却の欠如である。例えば、ロールを交換するとき、不必要なプロセス遅延を回避するために、サーモロールは急速に冷却されなければならない。
【0014】
特許出願FI20031232は、繊維ウェブを処理するためのサーモロールを開示しており、そのシェルは、少なくとも2つの異なる材料層を含み、サーモロール又はそのシェルは、伝熱剤を用いてサーモロールのシェルを加熱及び/又は冷却するための伝熱手段を備える。伝熱剤のための流れ通路が、前記材料層の少なくとも1つの内側に或いは前記材料層の境界ゾーン内に密閉されて、前記サーモロールのシェル内に存在する。
【0015】
特許明細書FI106504Bは、サーモロールを開示し、そのシェルは、金属、セラミック、又は、複合材料で作成され、製造に直接的に関連してシェルの材料内に形成された、伝熱剤のための流れ通路を収容する。このサーモロールの1つの実施態様(図5)では、流れ通路は、粉末金属製のシェルの外部層と内部本体層との間の界面で粉末金属の層内に配置される。しかしながら、粉末冶金製造技術は高価であり、大型片の供給業者は少ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の一般的な目的は、上述された不利点及び弱点を解消し或いは少なくとも実質的に軽減することである。他の目的は、主として機械加工を通じて直ちに製造し得る流れ通路システムを備え、低い製造費用を有し、直ちに入手可能な材料で作成される、高い伝熱が可能なサーモロールを提供することである。さらなる目的は、サーモロールの表面に近い流れ通路の位置決め及び大きさをより自由に決定し得ることである。均一な伝熱を達成するために、目的は小さい断面を備える多くの流れ通路をサーモロールの表面の付近に配置することである。さらなる目的は、表面特性又は強度特性及びサーモロールの本体に要求される荷重支持特性のような、サーモロールのシェルに要求される特性を保証することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
これらの目的は本発明によって達成され、その特徴的な機能は付属の請求項において定められている。
【0018】
本発明に従ったサーモロールの主な特徴的な機能は、請求項1の特徴部分に開示されている。
【0019】
本発明に従ったサーモロールは、繊維ウェブ機械の以下の用途の1つ又はそれよりも多くにおける使用に適している。即ち、マルチロールカレンダのサーモロール、ソフトカレンダのサーモロール、ロングニップカレンダのサーモロール、シューカレンダのサーモロール、ベルトカレンダのサーモロール、金属ベルトカレンダのサーモロール、乾燥区画の乾燥シリンダ又は冷却シリンダ、繊維ウェブ機械のプレス装置のサーモロール、及び/又は、繊維ウェブ機械の塗工区画のサーモロール。
【0020】
荷重を支持し、容易に機械加工され、且つ、容易に入手可能な金属材料から、本発明に従ったサーモロールの本体を製造し得る。容易な入手可能性を備える容易に機械加工され且つ安価な金属材料から、サーモロールのシェル層も製造し得る。滑らかさ、良好な耐摩耗性、及び、硬度のような特性を含む、表面層に要求される特性に従ってシェル層を最適化し得る。サーモロールの内部シャフト及び外部層を製造するのに必要とされる機械加工作業は簡単である。本発明に従ったサーモロールの良好な全体的な熱伝導率の故に、サーモロールを使用して高い熱出力を達成することが可能である。本発明に従ったサーモロールのために必要とされる熱処理の数は少ない。何故ならば、内部シャフトの熱処理は必要ないからである。必要に応じて、所望の特性を達成するために、外部層を表面硬化及び/又は応力緩和焼鈍し及び/又は表面処理及び/又はコーティングのような熱処理に晒し得る。
【0021】
表面層を、好ましくは、十分な強度を有する圧延鋼板から製造し得るし、溶接し得るし、表面硬化し得る。曲げ及び溶接によって、板からシェル管を製造し得る。
【0022】
本発明に従ったサーモロールの伝熱剤のための流れ通路をサーモロールの表面に近接して位置付け得る。それによって、それらの間に留まる材料は、サーモロールの熱出力及び表面温度に対して僅かの断熱効果を有する。本発明に従ったサーモロールの構造は、例えば、サーモロールの長手方向において流れ通路を最適化するために、可変のサイズ又は形状の流れ断面を備える流れ通路を容易に提供することを可能にするし、流れ通路をサーモロールの表面より下に、例えば、互いに短い距離で容易に位置付け得る。よって、穿孔周辺孔の流れ断面よりもずっと小さい流れ断面を有する、多くの流れ通路をサーモロールの表面に近接して位置付け得る。流れ通路がサーモロールの軸と平行であることは必要ではない。むしろ、バーリングを有利に回避するために、それらを、例えば、斜めに、或いは、螺旋の形態にも配置し得る。
【0023】
有利に、熱歪みを支えるサーモロールの外部層、及び、機械的荷重を支える内部シャフトを、締まり接合を用いて一体に接合し得る。接合段階で外部層と内部シャフトとの間に、銀のような薄いはんだ材料を追加することによって、締まり接合の強度を有利に向上し得る。前記はんだ材料は、締まり接合を形成した後、構造の温度の増大を通じて、はんだ接合を有利に形成する。強化締まり接合及び摩擦接合は、装填によって引き起こされるマイクロスリップが解消されるという利点を有する。
【0024】
本発明に従ったサーモロールは、サーモロールとそれと接触する相手部材との間の接触部、即ち、ニップ内で繊維ウェブをプレスし且つ/或いはカレンダリングすること、或いは、サーモロールのシェル表面の上で繊維ウェブを乾燥又は冷却するが意図されている。
【0025】
サーモロールにおけるシャフト延長を簡単にすることも可能である。何故ならば、流れ分配通路システムをロールの内部シャフト内に配置し得るからである。外部シェルが据え付けられる前に径方向に穿孔することによって分配通路システムを製造し得る。
【0026】
本発明の様々な実施態様は、本発明の特徴の1つ又は一部と関連してのみ記載され或いは記載された。当業者は、本発明のある特徴のあらゆる実施態様を、同じ特徴及び他の特徴に、単独で或いは組み合わせで適用し得ることを理解するであろう。
【0027】
以下において、付属の概略図を参照して、本発明を記載する。しかしながら、本発明は図面中に示されるものに制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】サーモロールの軸の側から本発明の実施態様に従ったサーモロールを示す断面図である。
【図2】軸両端部を備えない図1に従ったサーモロールを示す斜視図である。
【図3】本発明の実施態様に従ったサーモロールを示す斜視図であり、外部層はネジ山を用いた形態拘束で内部シャフトの周りに締め付けられている。
【図4】図3の線A−Aに沿う断面図である。
【図5】本発明の他の実施態様に従ったサーモロールを示す斜視図であり、外部層はネジ山を用いた形態拘束で内部シャフトの周りに締め付けられている。
【図6】図5に示される詳細Bを示す部分断面図である。
【図7】本発明の実施態様に従ったサーモロールを示す斜視図であり、外部層は歯プロファイルを用いた形態拘束で内部シャフトの周りに締め付けられている。
【図8】計算的に形成されたサーモロールの撓みの実施例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の記載において、同等の参照符号は類似の部分に言及している。図面は全ての場合において原寸ではないこと並びにそれらは本発明の実施態様を例証する目的に主として役立つことが記されなければならない。
【0030】
図1及び図2は、本発明の実施態様に従った、加熱及び/又は冷却ロール、即ち、サーモロール(熱ロール)1を示しており、例えば、鋼の薄い外部層4と、外部層内の内部シャフト2とを備え、内部シャフトは、伝熱剤のための流れ通路5を形成するために、その表面の上に流れ溝を有する。
【0031】
サーモロール1は、内部シャフト2と、荷重を支えるために内部シャフト2の両端部に締結されるシャフト端部3とを含む。図1に示される実施例では、内部シャフト2に締結されるシャフト端部3の少なくとも1つは、伝熱剤を出し入れ伝達するための少なくとも1つの流れ通路を含む。サーモロール1は、好ましくは、伝熱剤から繊維ウェブへ/繊維ウェブから伝熱剤へ動作中に熱を移転するための内部シャフト2の周りの鋼製の外部層4を含む。伝熱剤は、好ましくは、高温における使用のためのオイルである。伝熱剤は水又は蒸気でもあってもよい。サーモロール1は、内部シャフト2と外部層3との界面と関連して配置される、伝熱剤のための流れ通路5を含む。
【0032】
伝熱剤のための流れ通路5を、内部シャフト2の外表面2aの上の流れ溝及び外部層4の内表面の上の対応する部分、又は、外部層の内表面の上の流れ溝及び内部シャフト2の外部層の上の対応する部分、又は、サーモロールの周辺方向に互いに対して相互に整列され或いは移動されるが、流れ通路を形成する、内部シャフト及び外部層の表面の上の流れ溝から構成し得る。図1では、流れ通路5が、サーモロール1の動作中に加熱及び/又は冷却されるべき繊維ウェブが位置するシェルの地域の上に、好ましくは、連続的な流れ通路システムを形成するよう、流れ通路5は、内部シャフト2の外表面2aの上に有利に配置されている。この流れ通路システムは、内部シャフト2の両端部の間を走る流れ通路から成り得る。流れ通路5がサーモロール1の軸と平行である必要はなく、むしろ、例えば、バーリングを有利に回避するために、それらを斜めに或いは螺旋の形態にも配置し得る。適切な乱流、即ち、伝熱剤のための流れ通路システム内の流れの増強をもたらすために、他の流れ通路と斜めに横方向に出会う或いは他の流れ通路と螺旋形態で出会うようにも流れ通路を配置し得る。
【0033】
延性鋳鉄、好ましくは、GRP500のような、荷重を支え、直ちに機械加工され、且つ、安価な鋳鉄から、本発明に従ったサーモロールの内部シャフト2を製造し得る。延性鋳鉄の材料構造は、サーモロールに有害な熱によって引き起こされる変形が予期されないよう、均質な特性を有する。
【0034】
高い熱伝導性を有する構造用鋼のような、直ちに機械加工され且つ安価な鋼からも、サーモロールの外部層4を製造し得る。好ましくは、外部層4の材料は、硬化低合金鋼である。外部層4に耐摩耗性及び硬さに関する所望の特性をもたらすために、外部層4は、好ましくは、硬化コーティングのための十分な基本硬度及び安定性を達成するために硬化される。構造用鋼で得られる硬さは、約350〜400HVであり、硬化材料の層厚は薄い。例えば、フレーム、レーザ、又は、誘導焼入れ法を使用して、外部層4を硬化し得る。焼入れは硬化コーティングのための十分に硬いベースを外部層に提供する。構造用鋼の硬化外部層は、好ましくは、金属硬化コーティング又はカーバイド若しくはセラミックコーティングで塗装され、その場合には、外部層の表面硬度は、500HVよりも大きい。例えば、吹付け塗装法又はレーザ塗装法を使用して、コーティングを提供し得る。コーティングの厚み及びコーティング層の均一性に依存して、サーモロールが全体的に組み立てられるときに、或いは、外部層が内部シャフトの周りに組み立てられるときに、或いは、組立て前に、好ましくは、コーティングを機械加工し得る。
【0035】
もしより厚い硬化層が外部層4に要求されるならば、マルテンサイト系、好ましくは、ステンレス系の鋼から、外部層4を代替的に製造することができ、それは相当な表面硬度を達成することを可能にし、外部層の表面硬度が550HVよりも大きいように別個のコーティング層を必要としない。
【0036】
サーモロールの内部シャフト2及び外部層4の材料は容易に入手可能であり、それらの製造のために必要とされる機械加工作業は単純である。本発明に従ったサーモロールの良好な全体的な熱伝導性の故に、サーモロールを使用して高い熱出力を達成することが可能である。本発明に従ったサーモロールのために必要とされる熱処理の数も少ない。内部シャフト2の熱処理は不要である。
【0037】
本発明に従ったサーモロールの伝熱剤のための流れ通路5をサーモロール1の表面に近接して位置付けることができ、それによって、それらの間に残る外部層4の材料は熱出力及びサーモロール1の表面温度に対して僅かな影響を有する。本発明に従ったサーモロール1の構造は、流れ通路5に、例えば、所望の、並びに、必要に応じて、異なるサイズ、場所、及び、形状を有する流れ断面を容易に提供することを可能にする。例えば、機械加工工具のための適切な形状を選択することによって、流れ通路の形状を製造し得る。可変の深さを有するよう流れ溝を機械加工することによって、流れ通路のための可変の流れ断面を容易に提供することができ、それによって、流速を変更するために移動片は必要とされない。上述された流れ通路をサーモロールの長手方向において最適化し得る。流れ通路5をサーモロールの表面より下に、例えば、互いに短い距離に容易に位置付け得る。穿孔の製造技術を使用して経済的に可能なものよりも有利に小さい流れ断面を有する、多くの流れ通路5をサーモロールの表面に近接して配置し得る。例えば、平削り(milling)によって、或いは、例えば、螺旋状の流れ通路の場合には、丸削り(turning)によっても、流れ通路5を内部シャフト2の表面の上に形成し得る。外部層の内表面の上に配置されるのが好ましい流れ通路を、例えば、平削りによって、相応して機械加工し得る。流れ溝5の断面プロファイルは、好ましくは、鋭利な内角及び極めて小さい半径のような、材料を破壊させ、裂けさせ、或いは、ひび割れさせ得る形状を避ける。
【0038】
本発明に関連するサーモロール1は、ロールの本体を形成する内部シャフト2内の伝熱剤のための別個の「周辺ボア」を必要とせず、或いは、伝熱剤を輸送するためにサーモロールのシェルの端から端に概ね延び且つ材料層内に密閉されるそのような軸方向流れ通路を使用することは少なくとも不要である。サーモロール1は、主として、シェルを構成する地域内の2つの部分、即ち、管状であるか或いは主として中実であり得る内部シャフト2と、内部シャフト2を取り囲む比較的薄壁の外部層4とから成る。内部シャフトの潜在的な内表面は、破線6で図面中に表示されている。
【0039】
調整されるべきサーモロールの好ましくは円筒形及び/又は管状の本体、及び/又は、周辺ボアを備えるサーモロールを、本発明に従ったサーモロールの内部シャフト2のための基礎として使用することができ、それによって、この本体の上に形成される外表面2aの上に伝熱剤用の流れ通路5の断面プロファイルの流れ溝構成部分を本発明に従って準備し得る。
【0040】
形態拘束(form
closure)又はクリンプ加工を用いて、即ち、熱収縮方法を使用して、サーモロール1の外部層4をサーモロール1の内部シャフト2の周りに締め付けることができ、それによって、接合部が外部層4と内部シャフト2との間の締まり嵌め(shrink
fit)を用いて形成される。
【0041】
形態拘束を用いて並びにクリンプ加工によってサーモロール1の内部シャフト2と外部層4とを接合することに関して、内部シャフト2及び外部層4の中心性が良好であり、中心性が約50マイクロメートル、好ましくは、10マイクロメートルのオーダであることが有利である。この場合には、内部シャフト2及び外部層4は、単独でも、組立て後のサーモロール1としても、熱の故に撓まない。中心性の意味することは、内部シャフト及び外部層の両方の材料が熱膨張の観点で均一に分配され、それによって、いずれの片の上の特定の部分又は地域が不均一に熱膨張しないことであり、不均一な熱膨張は、サーモロールを異なる動作温度において異なる方法で捩らせ得る。好ましくは、動作温度まで或いは少なくとも動作温度付近まで加熱される間に、サーモロールを均衡し且つ機械加工することも好ましい。両方の片は接合前に機械加工されなければならない。図3と関連して記載されたようなネジ山を使用して組み立てられるべきロールの場合には、組立体のために十分な隙間が提供されなければならない。
【0042】
図8及び後続の記載は、サーモロールのシェルの長さが10メートルであり、サーモロールの温度が200℃だけ変更されるときに、計算的に形成されたサーモロールの撓みの実施例を表している。図8に示される表の水平軸は、ロールの直径を表し、垂直軸は、ロールの撓みを表している。この実施例において、サーモロールのシェルは、180mmの壁厚を備え且つ内部孔を有する管で構成される。シェルの外部層は、35の厚さを有する鋼材料層で構成される。シェルの外部層の内側の材料層は、延性鋳鉄GRPで作成される。外部及び内部の材料層の偏心は、例えば、10mmであるように選択される。
【0043】
撓みは、偏心の関数として線形に変化し(それによって、偏心は10mmから1mmに減少するが、撓みは元々の値の10分の1に減少する)、同様に、撓みは、シェルの外部層の厚さの関数として線形に変化し(それによって、シェルの外部層の厚さは35mmから17.5mmに減少するが、撓みは、元々の値の2分の1に減少する)。
【0044】
図8に点線で示される全ての粒子直径を備えて、サーモロールの撓みが50マイクロメートル未満であることが望ましいならば、接合表面は、例えば、+/−0.25mmの機械加工による製造精度で、ロールシェルの外部層及び内部層に対して同軸でなければならない。チルド鋳鉄では、これに近接する値ですら達成することは可能でない。
【0045】
同様に、接合表面は、均一な接合を形成するために、好ましくは、約+/−0.01mmの良好な円筒度を有さなければならない。接合表面が丸削りによって製造されるときには、上記に言及された円筒度は問題ではない。
【0046】
図3は、本発明に従ったサーモロール1の斜視図を示しており、外部層4は、ネジ山7を用いて形態拘束で内部シャフト2に締め付けられている。サーモロール1は、ネジ山7を用いて内部シャフト2の周りに外部層4を回転することによって簡単に組み立てられる。次に、以下に記載する方法で、ネジ山7を係止し得る。図4は、図3中に示される線A−Aに沿う部分断面を示している。流れ溝5に加えて、外部ネジ山7aが内部シャフト2の外部層2aの上に準備され、外部ネジ山7aと協働する内部ネジ山7bが、外部層4の内表面の上に形成されている。ここで使用されるとき、「外部ネジ山」は、物体の外表面の上に形成されるネジ山に言及しており、同様に、「内部ネジ山」は、物体の内表面の上に形成されるネジ山に言及している。サーモロール1の動作中、伝熱剤として使用されるオイルは、内部シャフト2の表面の上に流れ、それによって、内部シャフトからの出力交換は起こらず、内部シャフトは、伝熱剤によって決定される一定温度に留まる。熱交換は外部層4を通じて起こり、それによって、外部層の平均温度は、例えば、内部シャフト2の平均温度よりも約30℃〜40℃低い。上述された温度差の故に、内部シャフトは外部層よりも温度的に膨張するので、外部層4はサーモロール1の動作状況において所定位置に「係止」されるようになる。
【0047】
例えば、平削り又は丸削りによって、外部ネジ山7aを形成し得るし、平削り、丸削り、又は、穿孔によって、内部ネジ山7bを形成し得る。ネジ山7a,bの形状又はプロファイルを如何様にも制限する意図はないが、製造、機械加工、及び、組立ての要求を満足するようにネジ山を準備するのが有利である。多数の平行なネジ山7があり得る。しかしながら、例えば、ネジ山プロファイルの基部7cでの鋭い内角又は極めて小さい半径のような、材料を破壊させ、裂けさせ、割れさせ得る形状を回避することが好ましいことを考慮すると、ネジ山のプロファイルは、好ましくは、台形又は円錐形である。外部ネジ山7a及び内部ネジ山7bのプロファイルの高さHは、好ましくは、1mm〜5mmの範囲内、より好ましくは、2mm〜4mmの範囲内にある。外部ネジ山7a及び内部ネジ山7bのプロファイルの幅Wは、好ましくは、約10mmのオーダである。外部ネジ山7a及び内部ネジ山7bのピッチPは、好ましくは、約100mmのオーダである。
【0048】
ネジ山7,7a,7bは、好ましくは、保持力があり、それによって、外部ネジ山7a及び/又は内部ネジ山7bのピッチ9及び/又はプロファイルを適切に選択することによって、ネジ山7を係止し得る。例えば、ネジ山の十分に小さいピッチPは、サーモロール1の動作中に外部層に加えられる軸方向における力が外部層4を内部シャフト2に対して回転し得ないような保持力を得ることを可能にする。例えば、ネジ山の十分に大きいピッチPは、サーモロール1の動作中に外部層に加えられる周辺方向における力が外部層4を内部シャフト2に対して回転し得ないような保持力を得ることを可能にする。例えば、サーモロール1の加速段階又は減速段階の間に外部層4を内部シャフト2の周りで所定位置に維持するために、ネジ山7の保持力を利用し得る。好ましくは、可変ピッチ及び/又は可変ネジ山プロファイルを用いて、保持力を有するようネジ山7を作成し得る。外部ネジ山7a及び内部ネジ山7bの両方が可変ピッチ及び/又は可変プロファイルを有し得るし、或いは、外部層の内表面の上の内部ネジ山7aのみが可変ピッチ及び/又は可変プロファイルを有し得るし、或いは、好ましくは、内部シャフト2の外表面の上の外部ネジ山7aのみが可変ピッチ及び/又は可変プロファイルを有し得る。内部ネジ山7bを可能な限り均一に、例えば、一定のピッチ及び一定のプロファイルを有するように作成するのが好ましい。何故ならば、内部ネジ山を準備することは、外部ネジ山を準備するよりも困難だからである。外部ネジ山及び内部ネジ山の第一の保持力を有する組み合わせは、以下の通りである。即ち、内部ネジ山7bは均一であり、一定のピッチ及び一定のプロファイルを有し、外部ネジ山7aは均一であり、内部ネジ山と同じ一定のピッチ及び一定のプロファイルを備える。外部ネジ山及び内部ネジ山の第二の保持力を有する組み合わせは、以下の通りである。即ち、内部ネジ山7bは均一であり、一定のピッチ及び一定のプロファイルを備え、外部ネジ山7aは均一であり、一定のプロファイルを有するが、外部ネジ山のピッチは、外部ネジ山7aの一端で内部ネジ山のピッチ値よりも小さいか或いは大きく、ネジ山の残部に亘って同じ一定のピッチを備える。外部ネジ山及び内部ネジ山の第三の保持力を有する組み合わせは、以下の通りである。即ち、内部ネジ山7bは均一であり、一定のピッチ及び一定のプロファイルを備え、外部ネジ山7aは均一であり、一定のピッチを有するが、外部ネジ山7aのプロファイルは、外部ネジ山7aの一端で内部ネジ山の一定のプロファイルと比較すると異なる寸法を有し、ネジ山の残部に亘って同じ一定のプロファイルを備える。
【0049】
図5及び6は、本発明の実施態様に従って、サーモロール1の外部層4が、外部層4の上に形成される内部ネジ山7bで構成され且つ内部シャフト2の上に設けられる流れ通路5の上に形成される外部ネジ山7aと協働するネジ山7を用いて、形態拘束によって、内部シャフト2にどのように締め付けられるかを示している。ネジ山7,7a,7bは、ネジ山が少なくとも1つの流れ通路5と協働するように流れ通路5と組み合わされる。換言すれば、少なくとも1つの流れ通路5は、ネジ山7,7a,7bの一部として機能するよう構成される。本来的に、ネジ山7は、内部シャフト2の上に設けられる外部ネジ山7bからも構成され、外部層4の上に設けられる流れ通路5の上に形成される内部ネジ山7bと協働する。図6は、図5中に示される詳細Bの部分断面図である。この場合には、外部層の上の内部ネジ山7bは、必ずしもあらゆる流れ通路5の上に配置される必要はない。むしろ、流れ通路5は多数の平行なネジ山の形態で構成されるが、内部ネジ山7bは、少なくとも1つの流れ通路5の上に配置される外部ネジ山7aの上に構成される。
【0050】
図7は、本発明に従って、サーモロール1の外部層が、内部シャフト2の上の外部歯(outer toothing)8aと外部層4の上の内部歯(inner toothing)8bとを含む歯(tooth)プロファイル8を用いて、形態拘束によって、内部シャフト2にどのように締め付けられるかを示している。歯プロファイル8は、外部層4を所定位置に維持し、例えば、サーモロール1の加速段階及び減速段階での内部シャフト2の周りの回転を防止する。図5及び6と関連して記載されるように、歯プロファイル8,8a,8bを少なくとも1つの流れ通路5と組み合わせ得る。よって、歯プロファイル8,8a,8bの一部として機能するよう、少なくとも1つの流れ通路5が配置される。
【0051】
本発明の実施態様によれば、サーモロール1の外部層4は、楔係止(図示せず)を用いて内部シャフト2の周りでの回転を防止するような方法で、締め付けられ且つ係止される。この場合には、少なくとも1つの楔を対向する楔溝の上に係止可能な方法で配置するために、少なくとも1つの楔溝が、内部シャフト2の表面2aの上に配置され、相応して、楔溝が外部層の内表面の上に配置される。好ましくは、楔溝は、円周方向に均等に離間され且つ均一に分配され、楔は、組み立てられるときに、サーモロール1が均衡し或いは動作のためにサーモロール1を容易に均衡し得るように配置される。楔は所定位置に締め付けられ或いは係止されるべき膨張部分を含み得るし、或いは、所定位置に係止されるべき本体方向から2つの傾斜楔を締め付け得る。
【0052】
本発明の実施態様によれば、サーモロール1の外部層4は、ネジ継手(図示せず)を用いて内部シャフト2に対して回転を阻止する方法で係止される、即ち、締め付けられる。ネジ継手を外部層4と内部シャフト2との間に設け得るし、或いは、ネジ継手を外部層4とシャフト端部3のフランジ部分3bに設け得る。内部シャフト2はその両端部でフランジ部分に締め付けられる。好ましくは、ネジ継手は上述された締結方法に加えて設けられる。
【0053】
本発明の実施態様によれば、サーモロール1の外部層4は、その少なくとも1つの端部での回転を阻止する方法で、サーモロール1のシャフト端部3のフランジ部分3bに締め付けられ、内部シャフト2は、その両端部でフランジ部分に締め付けられる。例えば、楔係止又はネジ継手を使用して、外部層をフランジ部分3bに締め付け得る。
【0054】
本発明の実施態様によれば、サーモロール1の外部層4は、クリンプ加工によって内部シャフト2の周りでの回転を阻止する方法で締め付けられる。クリンプ加工されるべきサーモロール1を図1及び2並びにそれぞれの記載によって例証し得る。この場合には、成功裏の外部層4の据付けのために、十分な据付遊びが内部シャフト2の周りに提供されなければならない。内部シャフトの温度が製造ほぼ施設の温度であるとき、外部層を約500℃に加熱することによって十分な遊びを提供し得るが、外部層4の内径は約900mmである。上述された温度の上昇は、熱膨張の故に約2.2mmの径方向遊び(間隙)をもたらし、それは十分と考えられ得る。外部層が冷却されると、外部層は収縮し、クリンプ加工による、即ち、締まり接合(shrink joint)/締まり嵌め(shrink fit)を用いて、接合を形成する。内部シャフト2に対する回転を阻止する方法で外部層4を締め付け且つ係止するための専用の締結方法としてクリンプ加工接合を使用し得るし、クリンプ加工接合に加えて上述された締結方法を使用し得る。もしクリンプ加工接合が専用の締結方法として使用されるならば、外部層4に対する機械加工作業は有利に最小に制限される。何故ならば、外部層の内表面を均一な円筒形表面として形成し得るからである。
【0055】
本発明の実施態様によれば、サーモロール1の外部層4の壁厚は、約5〜60mm、好ましくは、15〜30mmである。
【0056】
サーモロール1の外部層4の壁厚が約20mmであるとき、特定のプロセスにおいて伝熱剤として水を有利に使用することが可能であり、それは節約をもたらす。
【0057】
本発明に従ったサーモロールは、好ましくは、以下の少なくとも1つである。即ち、マルチロールカレンダのサーモロール、ソフトカレンダのサーモロール、ロングニップカレンダのサーモロール、シューカレンダのサーモロール、ベルトカレンダのサーモロール、金属ベルトカレンダのサーモロール、乾燥区画の乾燥シリンダ又は冷却シリンダ、繊維ウェブ機械のプレス装置のサーモロール、及び/又は、繊維ウェブ機械の塗工区画のサーモロール。
【0058】
サーモロール1は、約300度の表面温度を達成することを可能にする。本発明に従って、古いサーモロール、特に、それらの本体を現代化することによってサーモロールを実施し得る。使い古しの外部層を新しい外部層4と交換することによってロール保守を遂行することも可能である。それによって、サーモロール1の内部シャフト2をそのようなものとして再使用し得るか、或いは、伝熱剤のために内部シャフト2の表面2aの上に異なるプロファイルを備える流れ通路5を形成し得る。
【0059】
締まり接合に加えてはんだ付けによる内部シャフト2への外部層4の締付けを含む以下に議論されるサーモロール1の用途を、上記に提示されたサーモロールの実施態様の一部との組み合わせで実施し得るし、以下に提示されるサーモロールの用途を、例えば、内部シャフト2及び外部層4の界面に形成される流れ通路なしでも実施し得る。よって、そのようなサーモロールの流れ通路は、例えば、内部シャフトの材料内の周辺ボア、又は、内部シャフトの材料内に密閉される流れ通路でもあり得る。
【0060】
好適実施態様によれば、好ましくは延性鋳鉄から成る内部シャフト2が、サーモロール1に対して加えられる機械的荷重を支えるのに対し、いかなる有意な熱歪みにも晒されない。対照的に、外部層4として働く鋼シェルは、熱歪みのより大きな部分を支え、滑らかで耐摩耗性の表面を備え得る。サーモロール1の外部層4を形成する鋼シェルは、内部シャフト2の周りに締まり接合で組み立てられることが意図されている。
【0061】
外部層4と内部シャフト2との間の締まり接合の強さは、好ましくは、動作中に、サーモロールの温度よりも高い温度で溶解する薄いはんだ付け材料、例えば、ワイヤ又は膜、好ましくは、銀ワイヤを、好ましくは、組立て段階で、即ち、接合段階で、内部シャフト2の接合表面の上(或いは、外部層4の接合表面の上、或いは、両方の表面の上)に配置することによって改良される。締まり接合が完了した後、はんだ付け材料を溶解するために、サーモロールの温度は上げられ、それによって、はんだ接合が、接合地域内の接合表面と関連して、はんだ付け材料から形成される。はんだ接合の大きい表面積の故に、接合のための強度要件が低いので、はんだ接合の強さは十分である。はんだ接合を簡単且つ迅速に達成し得る。
【0062】
外部層のための摩擦接合のみを備えるサーモロールと比べ、外部層4の締まり接合がはんだ接合によって強化される上述されたサーモロールの利点は、装填によってよって引き起こされるマイクロスリップが解消されることである。マイクロスリップは、表面の摩耗及びより高い水準の有害なフレッチング疲労を引き起こし得る。フレッチング疲労又は摩擦疲労は、破砕が共に押圧される2つの片の接触表面の上で核形成される現象である。破砕の核形成のために、低い振幅での摺動滑りが表面の間に起こることが普通要求される。内部シャフトとシェル層との間のはんだ付けによって強化される締まり接合の場合には、層の間の摺動滑りは解消される。
【0063】
本発明は付属の図面の図を参照して一例として上記に記載された。しかしながら、本発明は図中に示されているものに制限されない。むしろ、本発明の様々な実施態様は、付属の請求項中に定められる発明的な着想の範囲内で異なり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重を支持するための円筒形の内部シャフトと、該内部シャフトを取り囲む金属製の外部層と、前記内部シャフト及び前記外部層の界面との関係で配置される、伝熱剤のための流れ通路とを含む、繊維ウェブ機械の加熱及び/又は冷却ロール、即ち、サーモロールであり、
当該サーモロールは、前記内部シャフトと前記外部層とを組み立てることによって製造され、当該サーモロールの前記流れ通路は、前記内部シャフトと前記外部層との組立て前に前記内部シャフトの外表面及び/又は前記外部層の内表面の上に形成される流れ溝から成るサーモロールであって、
前記外部層は、形態拘束で前記内部シャフトに締め付けられることを特徴とする、
サーモロール。
【請求項2】
前記外部層は、ネジ山を用いて前記内部シャフトに締め付けられ、前記ネジ山は、前記内部シャフトの前記外表面の上の外部ネジ山と、前記外部層の前記内表面の上の内部ネジ山とを含むことを特徴とする、請求項1に記載のサーモロール。
【請求項3】
前記ネジ山の一部として機能するよう、少なくとも1つの流れ通路が配置されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のサーモロール。
【請求項4】
前記外部層は、歯プロファイルを用いて前記内部シャフトに締め付けられ、前記歯プロファイルは、前記内部シャフトの上の外部歯と前記外部層の上の内部歯とを含むことを特徴とする、請求項1に記載のサーモロール。
【請求項5】
前記歯プロファイルの一部として機能するよう、少なくとも1つの流れ通路が配置されることを特徴とする、請求項4に記載のサーモロール。
【請求項6】
当該サーモロールは、シャフト両端部を含み、前記内部シャフトは、その両端で、前記シャフト両端部に締結され、前記シャフト両端部は、フランジ部分を含み、前記外部層は、回転を阻止する方法で前記フランジ部分に締結されることを特徴とする、請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載のサーモロール。
【請求項7】
前記外部層は、前記内部シャフトに対する回転を阻止する方法でネジ接合で締め付けられることを特徴とする、請求項1乃至6のうちのいずれか1項に記載のサーモロール。
【請求項8】
前記外部層は、締まり嵌め/締まり接合を用いて前記内部シャフトの周りに締め付けられることを特徴とする、請求項1乃至7のうちのいずれか1項に記載のサーモロール。
【請求項9】
前記内部シャフトは、鋳鉄から成ることを特徴とする、請求項1乃至8のうちのいずれか1項に記載のサーモロール。
【請求項10】
前記外部層は、鋼から成り、選択的に、その周りにコーティングを含むことを特徴とする、請求項1乃至9のうちのいずれか1項に記載のサーモロール。
【請求項11】
当該サーモロールは、少なくとも500HVの表面硬度を有するよう構成されることを特徴とする、請求項1乃至10のうちのいずれか1項に記載のサーモロール。
【請求項12】
前記外部層の材料は、構造用鋼であることを特徴とする、請求項1乃至11のうちのいずれか1項に記載のサーモロール。
【請求項13】
前記外部層の材料は、高い熱伝導率を備える低合金鋼であることを特徴とする、請求項1乃至12のうちのいずれか1項に記載のサーモロール。
【請求項14】
前記外部層は、フレーム、レーザ、又は、誘導焼入れ方法を使用して硬化されることを特徴とする、請求項12又は13に記載のサーモロール。
【請求項15】
前記外部層は、硬化され、例えば、吹付け塗装法又はレーザ塗装法を使用して500HVよりも高い硬度に硬化塗装されることを特徴とする、請求項14に記載のサーモロール。
【請求項16】
前記外部層の材料は、マルテンサイト系ステンレス鋼であり、それによって、前記外層の前記表面硬度は、550HVよりも大きいことを特徴とする、請求項1乃至8のうちのいずれか1項に記載のサーモロール。
【請求項17】
前記内部シャフトの材料は、延性鋳鉄、好ましくは、延性鋳鉄GRP500であることを特徴とする、請求項1乃至16のうちのいずれか1項に記載のサーモロール。
【請求項18】
前記外部層の壁厚は、約5mm〜60mm、好ましくは、15mm〜30mmであることを特徴とする、請求項1乃至17のうちのいずれか1項に記載のサーモロール。
【請求項19】
前記内部シャフトは、管状であることを特徴とする、請求項1乃至18のうちのいずれか1項に記載のサーモロール。
【請求項20】
前記外部層は、はんだ材料が前記外部層と前記内部シャフトとの間に配置されるよう、締まり接合及びはんだ接合を用いて前記内部シャフトの周りに締め付けられることを特徴とする、請求項1乃至19のうちのいずれか1項に記載のサーモロール。
【請求項21】
前記はんだ材料は、動作中に当該サーモロールの温度よりも高い温度で溶解する金属材料を含み、前記はんだ材料は、はんだ付け前に、薄いワイヤ又は膜の形態であることを特徴とする、請求項20に記載のサーモロール。
【請求項22】
前記はんだ材料は、銀又は銀合金を含むことを特徴とする、請求項20又は21に記載のサーモロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−540795(P2010−540795A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528439(P2010−528439)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【国際出願番号】PCT/FI2008/050723
【国際公開番号】WO2009/077647
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(507009216)メッツォ ペーパー インコーポレイテッド (76)
【Fターム(参考)】