説明

シアニン化合物、該化合物を用いた光学記録材料及び色補正材料

【課題】光学記録材料及び色補正材料として有用な新規なシアニン化合物の提供。
【解決手段】下記一般式(I)で表されるシアニン化合物並びに該化合物を用いた光学記録材料及び色補正材料。


(R1はC1〜20のアルキル基であり、R2はフタル酸イミドのN原子にメチレン基等で結合する置換基であり、Z1及びZ2はH或いはアルキル基等の置換基であり、Y1及びY2はアルキル基等の置換基である。a及びbは0〜4整数、Anq-1はq価の陰イオン、qは1又は2の整数、pは電荷を中性に保つ係数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なシアニン化合物、及び該シアニン化合物を含有してなる光学記録材料及び色補正材料に関する。該シアニン化合物は、光学要素等、特に、情報をレーザ等による情報パターンとして付与することにより記録する光学記録媒体、詳しくは、紫外及び可視領域の波長を有し且つ低エネルギーのレーザ等による高密度の光学記録及び再生が可能な光学記録媒体の光学記録層に使用される光学記録材料として有用である。また該シアニン化合物は、特に、画像表示装置用の光学フィルターに含有させる色補正材料(光吸収剤)としても有用である。
【背景技術】
【0002】
光学記録媒体は、一般に、記録容量が大きく、記録又は再生が非接触で行なわれること等の優れた特徴を有することから、広く普及している。WORM、CD−R、DVD±R等の追記型の光ディスクでは、記録層の微小面積にレーザを集光させ、光学記録層の性状を変えて記録し、記録部分と未記録部分との反射光量の違いによって再生を行なっている。
【0003】
現在、上記の光ディスクにおいては、記録及び再生に用いる半導体レーザの波長は、CD−Rは750〜830nmであり、DVD−Rは620nm〜690nmであるが、BD−Rでは380〜420nmの光が用いられている。
【0004】
短波長記録光用の光学記録媒体において、光学記録層の形成には、各種化合物が使用されている。例えば、下記特許文献1にはヘミシアニン染料が報告されており、下記特許文献2にはトリメチン系化合物が報告されており、下記特許文献3にはポルフィリン化合物が報告されており、下記特許文献4には特定の構造を有するモノメチンシアニン色素が報告されている。しかし、これらの化合物は、光学記録層の形成に用いられる光学記録材料としては、その吸収波長特性が必ずしも適合するものではなかったり、優れた記録特性を有するものでなかったりするという問題があった。また、下記特許文献5ではこれらの問題を改善したモノメチンシアニン色素が開示されているが、諸物性において必ずしも満足のできるものではなかった。
【0005】
一方、画像表示装置は、赤、青、緑の三原色の光の組合せでカラー画像を表示しているが、カラー画像を表示する光には、緑と赤の間の550〜620nm等の表示品質の低下をきたす光が含まれており、また、750〜1100nmの赤外リモコンの誤作動の原因となる光も含まれている。光学フィルターには、上記の不要な波長の光を選択的に吸収する機能が求められており、同時に、蛍光灯等の外光の反射や映り込みを防止するために480〜500nm及び540〜560nmの波長光を吸収すること、また、紫外線吸収剤として、300〜390nmの波長の光を吸収することも必要とされている。そこで、画像表示装置等には、これらの波長の光を選択的に吸収する色補正材料(光吸収剤)を含有する光学フィルターが使用されている。
【0006】
更に近年、表示素子の色純度や色分離を十分にし、画像品質を高いものにするために、特に波長450〜620nmの波長を選択的に吸収する光吸収剤が求められている。これらの光吸収剤には、光吸収が特別に急峻であること、即ちλmaxの半値幅が小さいこと、また光や熱等により機能が失われないことが求められる。
【0007】
光吸収剤を含有する光学フィルターとして、例えば、下記特許文献6には、570〜605nmに極大吸収波長を有するアザポルフィリン化合物を使用した光学フィルターが開示されており、下記特許文献7には、551〜600nmに極大吸収波長を有する縮合多環系顔料を使用した光学フィルターが開示されており、下記特許文献8には、440〜510nmに極大吸収波長を有するジピロメテン金属キレート化合物を使用した光学フィルターが開示されている。しかし、これらの光学フィルターに使用される化合物は、吸収波長特性、或いは溶媒やバインダー樹脂との親和性の点で満足のいく性能を有していない。
【0008】
また、下記特許文献9には、フッ素化アルキルスルホニル対イオンを有する有機可溶性カチオン染料が開示されているが、該カチオン染料を光学フィルターに用いることができる旨は記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−342365号公報
【特許文献2】特開2004−98542号公報
【特許文献3】特開2005−59601号公報
【特許文献4】国際公開WO01/044374号公報
【特許文献5】国際公開WO2007/114073号公報
【0010】
【特許文献6】特開2003−57437号公報
【特許文献7】特開2004−310072号公報
【特許文献8】特開2003−57436号公報
【特許文献9】特開平8−253705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、特に短波長記録光用の光学記録媒体の光学記録層の形成に適した光学特性を有する新規な化合物、並びに該化合物を用いた光学記録材料及び光学記録媒体を提供することにある。
【0012】
また、本発明の別の目的は、特に波長450〜620nmの波長領域において急峻な光吸収を有し、特に画像表示装置用の光学フィルターに用いられる色補正材料(光吸収剤)に適した新規な化合物、並びに該化合物を用いた色補正材料、フィルム形成用組成物及び光学フィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、検討を重ねた結果、特定の分子構造を有するシアニン化合物が、短波長記録光用の光学記録媒体の光学記録層の形成に適した吸収波長特性を持ち、また、特定の波長領域において急峻な光吸収を有し、従来の光吸収剤を用いた光学フィルターに比較して、画像表示装置の画像特性を著しく改善し得ること知見し、これを使用することにより、上記課題を解決し得ることを知見した。
【0014】
本発明は、上記知見に基づきなされたものであって、下記一般式(I)で表されるシアニン化合物を提供することで、上記目的を達成したものである。
【0015】
【化1】

(式中、R1は下記一般式(II)で表される基を表し、R2は炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、下記一般式(II)で表される基又は下記一般式(III)で表される基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CR34又はNR5を表し、R3、R4、R5、Y1及びY2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、下記一般式(II)で表される基又は下記一般式(III)で表される基を表し、該置換基の水素原子はハロゲン原子で置換されてもよく、該置換基のメチレン基は−O−、−CO−、−OCO−又は−COO−で中断されてもよく、R3とR4は、それぞれ連結して3〜6員環の脂環基を形成してもよい。
1及びZ2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、ニトロ基、シアノ基、水酸基又はハロゲン原子、炭素原子数1〜8の炭化水素基を有するスルホニル基、炭素原子数1〜8の炭化水素基を有するスルフィニル基、炭素原子数1〜8のアルキル基を有するアルキルアミノ基、炭素原子数1〜8のアルキル基を有するジアルキルアミノ基を表し、該置換基の水素原子はハロゲン原子で置換されてもよく、該置換基のメチレン基は−O−、−CO−、−OCO−又は−COO−で中断されてもよく、複数のZ1同士、Z2同士は結合して環構造を形成していてもよく、Eは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜20のアリール基を表し、a及びbは、それぞれ独立に、0〜4の整数を表し、Anq-はq価の陰イオンを表し、qは1又は2を表し、pは電荷を中性に保つ係数を表す。)
【0016】
【化2】

(式中、Z3は炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、ニトロ基、シアノ基、水酸基、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8の炭化水素基を有するスルホニル基、炭素原子数1〜8の炭化水素基を有するスルフィニル基、炭素原子数1〜8のアルキル基を有するアルキルアミノ基、炭素原子数1〜8のアルキル基を有するジアルキルアミノ基又は下記一般式(III)で表される基を表し、該置換基の水素原子はハロゲン原子で置換されてもよく、該置換基のメチレン基は−O−、−CO−、−OCO−又は−COO−で中断されてもよく、複数のZ3同士は結合して環構造を形成していてもよく、Q1は直接結合又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、該アルキレン基中のメチレン基は−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で置換されていてもよい。)
【0017】
【化3】

(式中、Ra〜Riは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基中のメチレン基は−O−又は−CO−で置換されてもよく、Q2は直接結合又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、該アルキレン基中のメチレン基は−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で置換されてもよく、M1はFe、Co、Ni、Ti、Cu、Zn、Zr、Cr、Mo、Os、Mn、Ru、Sn、Pd、Rh、Pt又はIrを表す。)
【0018】
また、本発明は上記シアニン化合物を製造するための有用な中間体である下記一般式(IV)で表されるインドレニウム化合物を提供するものである。
【0019】
【化4】

(式中、R1、R2、E、Y1、Z1、a、p及びAnq-は、上記一般式(I)と同じである。)
【0020】
また、本発明は、基体上に光学記録層が形成された光学記録媒体の該光学記録層の形成に用いられる、上記シアニン化合物を少なくとも一種含有してなる光学記録材料を提供するものである。
【0021】
また、本発明は、基体上に、上記光学記録材料から形成された光学記録層を有する光学記録媒体を提供するものである。
【0022】
また、本発明は、上記シアニン化合物を少なくとも一種含有してなる色補正材料を提供するものである。
【0023】
また、本発明は、上記色補正材料を含有してなるフィルム形成用組成物を提供するものである。
【0024】
また、本発明は、上記フィルム形成用組成物を用いた光学フィルターを提供するものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、光学記録媒体の光学記録層の形成に適したシアニン化合物及び該シアニン化合物を含有してなる光学記録材料を提供することができる。本発明のシアニン化合物は、分解点が低いため蓄熱性が低く熱干渉が抑えられ、また耐光性が高く、光学記録媒体の光学記録層の形成に好適である。
【0026】
また、本発明によれば、特に画像表示装置用の光学フィルターに用いられる色補正材料(光吸収剤)に適したシアニン化合物、並びに該化合物を用いた色補正材料、フィルム形成用組成物及び光学フィルターを提供することができる。本発明のシアニン化合物は、特に波長450〜620nmの波長領域において急峻な光吸収を有することから、該化合物を、画像表示装置用の光学フィルターに用いることで、画像表示装置の画像特性を著しく向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明について、好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
先ず、上記一般式(I)で表される本発明のシアニン化合物について説明する。
【0028】
上記一般式(I)中、R2、R3、R4、R5、Y1及びY2で表される炭素原子数1〜20のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、ヘプチル、イソヘプチル、t−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、t−オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ペプタデシル、オクタデシル、2−メトキシエチル、3−メトキシプロピル、4−メトキシブチル、2−ブトキシエチル、メトキシエトキシエチル、メトキシエトキシエトキシエチル、3−メトキシブチル、2−メチルチオエチル等が挙げられ、炭素原子数6〜30のアリール基としては、フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−t−ブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、4−オクチルフェニル、4−(2−エチルヘキシル)フェニル、4−ステアリルフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4−ジ−t−ブチルフェニル、シクロヘキシルフェニル、2−フェノキシエチル、2−フェニルチオエチル等が挙げられ、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基としては、ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン−2−イル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等が挙げられる。また、R3とR4が連結して形成してもよい3〜6員環の脂環基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0029】
上記一般式(I)中、Z1及びZ2で表される炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基としては、上記炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基及び炭素原子数7〜30のアリールアルキル基の説明で例示した基のうち、所定の炭素原子数を満たすものが挙げられる。
【0030】
上記一般式(I)中、Z1及びZ2で表されるスルホニル基又はスルフィニル基が有する炭素原子数1〜8の炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、ヘプチル、イソヘプチル、t−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、t−オクチル、2−エチルヘキシル等のアルキル基;ビニル、1−メチルエテン−1−イル、プロペン−1−イル、プロペン−2−イル、プロペン−3−イル、ブテン−1−イル、ブテン−2−イル、2−メチルプロペン−3−イル、1,1−ジメチルエテン−2−イル、1,1−ジメチルプロペン−3−イル等のアルケニル基;フェニル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−t−ブチルフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル等のアリール基;ベンジル、2−メチルベンジル、3−メチルベンジル、4−メチルベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン−2−イル、スチリル等のアラルキル基が挙げられ、Z1及びZ2で表されるアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基が有する炭素原子数1〜8のアルキル基としては、上記例示のアルキル基が挙げられる。
【0031】
上記一般式(I)中、E、Z1及びZ2で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0032】
上記一般式(I)中、Z1及びZ2で表される基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されてもよく、Z1及びZ2で表される基のメチレン基は、−O−、−CO−、−OCO−若しくは−COO−で中断されてもよく、ハロゲン原子の置換位置、及び−O−、−CO−、−OCO−又は−COO−の中断位置は任意であり、−O−、−CO−、−OCO−又は−COO−が環と直接結合するものも含む。上記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0033】
上記一般式(I)において、Z1及びZ2の置換基同士が結合して形成する環構造の例としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、ピペリジン環、モルホリン環、ラクトン環、ラクタム環等の5〜7員環及びナフタレン環、アントラセン環等の縮合環が挙げられる。
【0034】
上記一般式(I)において、Anq-で表される陰イオンとしては、例えば、一価のものとして、塩素陰イオン、臭素陰イオン、ヨウ素陰イオン、フッ素陰イオン等のハロゲン陰イオン;過塩素酸陰イオン、塩素酸陰イオン、チオシアン酸陰イオン、六フッ化リン酸陰イオン、六フッ化アンチモン陰イオン、四フッ化ホウ素陰イオン等の無機系陰イオン;ベンゼンスルホン酸陰イオン、トルエンスルホン酸陰イオン、トリフルオロメタンスルホン酸陰イオン、ジフェニルアミン−4−スルホン酸陰イオン、2−アミノ−4−メチル−5−クロロベンゼンスルホン酸陰イオン、2−アミノ−5−ニトロベンゼンスルホン酸陰イオン、特開2004−53799号公報に記載されたスルホン酸陰イオン等の有機スルホン酸陰イオン;オクチルリン酸陰イオン、ドデシルリン酸陰イオン、オクタデシルリン酸陰イオン、フェニルリン酸陰イオン、ノニルフェニルリン酸陰イオン、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスホン酸陰イオン等の有機リン酸系陰イオン、ビストリフルオロメチルスルホニルイミド陰イオン、ビスパーフルオロブタンスルホニルイミド陰イオン、パーフルオロ−4−エチルシクロヘキサンスルホネート陰イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸陰イオン等が挙げられ、二価のものとしては、例えば、ベンゼンジスルホン酸陰イオン、ナフタレンジスルホン酸陰イオン等が挙げられる。また、励起状態にある活性分子を脱励起させる(クエンチングさせる)機能を有するクエンチャー陰イオンやシクロペンタジエニル環にカルボキシル基やホスホン酸基、スルホン酸基等の陰イオン性基を有するフェロセン、ルテオセン等のメタロセン化合物陰イオン等も、必要に応じて用いることができる。
【0035】
上記のクエンチャー陰イオンとしては、例えば、下記一般式(1)若しくは(2)、又は下記化学式(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)若しくは(12)で表されるクエンチャー陰イオン(以下、クエンチャー陰イオン(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)又は(12)ともいう)、特開昭60−234892号公報、特開平5−43814号公報、特開平5−305770号公報、特開平6−239028号公報、特開平9−309886号公報、特開平9−323478号公報、特開平10−45767号公報、特開平11−208118号公報、特開2000−168237号公報、特開2002−201373号公報、特開2002−206061号公報、特開2005−297407号公報、特公平7−96334号公報、国際公開98/29257号公報等に記載されたようなクエンチャー陰イオンが挙げられる。
【0036】
【化5】

(式中、M2及びM3は、上記一般式(III)におけるM1と同じであり、R11及びR12は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は−SO2−G基を表し、Gは、アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、ピペリジノ基又はモルホリノ基を表し、s及びtは、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。また、R13、R14、R15及びR16は、それぞれ独立に、アルキル基、アルキルフェニル基、アルコキシフェニル基又はハロゲン化フェニル基を表す。)
【0037】
【化6】

【0038】
【化7】

【0039】
上記一般式(II)中、Z3で表される炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、ハロゲン原子、スルホニル基、スルフィニル基、アルキルアミノ基及びジアルキルアミノ基が有する炭素原子数1〜8のアルキル基としては、上記一般式(I)の説明で例示した基が挙げられる。
【0040】
上記一般式(II)中、Z3で表される基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されてもよく、Z3で表される基のメチレン基は、−O−、−CO−、−OCO−若しくは−COO−で中断されてもよく、ハロゲン原子の置換位置、及び−O−、−CO−、−OCO−又は−COO−の中断位置は任意であり、−O−、−CO−、−OCO−又は−COO−が環と直接結合するものも含む。上記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0041】
上記一般式(III)において、Ra〜Riで表される炭素原子数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル等が挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が−O−で置換された基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、メトキシメチル、エトキシメチル、2−メトキシエチル等が挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が−CO−で中断された基としては、アセチル、1−カルボニルエチル、アセチルメチル、1−カルボニルプロピル、2−オキソブチル、2−アセチルエチル、1−カルボニルイソプロピル等が挙げられる。
【0042】
上記一般式(III)において、Q2で表される置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、メチルエチレン、ブチレン、1−メチルプロピレン、2−メチルプロピレン、1,2−ジメチルプロピレン、1,3−ジメチルプロピレン、1−メチルブチレン、2−メチルブチレン、3−メチルブチレン、4−メチルブチレン、2,4−ジメチルブチレン、1,3−ジメチルブチレン、ペンチレン、へキシレン、ヘプチレン、オクチレン、エタン−1,1−ジイル、プロパン−2,2−ジイル等が挙げられ、該アルキレン基中のメチレン基が−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で置換された基としては、例えば、メチレンオキシ、エチレンオキシ、オキシメチレン、チオメチレン、カルボニルメチレン、カルボニルオキシメチレン、メチレンカルボニルオキシ、スルホニルメチレン、アミノメチレン、アセチルアミノ、エチレンカルボキシアミド、エタンイミドイル、エテニレン、プロペニレン等が挙げられる。またM1で表される金属原子は、Fe、Co、Ni、Ti、Cu、Zn、Zr、Cr、Mo、Os、Mn、Ru、Sn、Pd、Rh、Pt又はIrである。
【0043】
本発明のシアニン化合物の中でも、上記一般式(I)において、R2が炭素原子数1〜10のアルキル基である化合物;Xが酸素原子又は硫黄原子である化合物;Y2が炭素原子数1〜10のアルキル基である化合物;Eが水素原子である化合物;Q1が直接結合又は炭素原子数1〜8のアルキレン基である化合物は、製造コストが低く、モル吸光係数が大きいので好ましく、また、上記一般式(I)において、aが0である化合物;Z1同士が形成する環がベンゼン環である化合物は、簡便に製造でき、光学記録材料として適正な光吸収特性を有するのでより好ましい。
【0044】
本発明のシアニン化合物の好ましい具体例としては、以下の化合物I−1〜化合物I−42が挙げられる。尚、以下の例示では、陰イオンを省いたシアニン陽イオンで示している。本発明のシアニン化合物において、メチン鎖は共鳴構造をとっていてもよい。
【0045】
【化8】

【0046】
【化9】

【0047】
【化10】

【0048】
上記一般式(I)で表される本発明のシアニン化合物及び後述する上記一般式(IV)で表される本発明のインドレニウム化合物には、R1及びR2で表される基が結合する不斉原子をキラル中心とするエナンチオマー、ジアステレオマー又はラセミ体等の光学異性体が存在する場合があるが、これらのうち、いかなる光学異性体を単離して用いても、或いはそれらの混合物として用いてもよい。
【0049】
上記一般式(I)で表わされる本発明のシアニン化合物は、その製造法によって制限を受けるものではないが、例えば下記反応式のように、後述する一般式(IV)で表される本発明のインドレニウム化合物とアゾリウム化合物とを塩基存在下で反応させることにより製造することができる。
【0050】
【化11】

(式中、R1、R2、X、E、Y1、Y2、Z1、Z2、a、b、p及びAnq-は、上記一般式(I)と同じである。)
【0051】
本発明のシアニン化合物は、後述の光学記録材料及び光学フィルター等の光学要素として好適に用いられる他、医薬品、農薬、香料、染料等の合成中間体、或いは各種機能性材料等各種ポリマー原料、色素増感型太陽電池、光電気化学電池、非線形光学装置、エレクトロクロミックディスプレイ、ホログラム、有機半導体、有機EL、ハロゲン化銀写真感光材料、光増感剤、印刷インキ、インクジェット、電子写真カラートナー、化粧料、プラスチック等の着色剤、タンパク質用染色剤、物質検出のための発光染料等に用いられる。しかし、これらの用途によって本発明は何ら制限を受けるものではない。
【0052】
次に、上記一般式(IV)で表される本発明のインドレニウム化合物について説明する。
上記一般式(IV)で表される本発明のインドレニウム化合物は、上記一般式(I)で表される本発明のシアニン化合物を製造するための有用な中間体である。該中間体としては、上記一般式(IV)で表されるインドレニウム化合物の他、その等価体である下記一般式(V)で表されるインドレニウム化合物を用いる事もできる。
【0053】
【化12】

(式中、R1、R2、E、Y1、Z1、a及びpは、上記一般式(I)と同じである。)
【0054】
また、本発明のインドレニウム化合物の好ましい具体例としては、以下の化合物IV−1〜化合物IV−29が挙げられる。尚、以下の例示では、陰イオンを省いたシアニン陽イオンで示している。
【0055】
【化13】

【0056】
【化14】

【0057】
本発明のインドレニウム化合物の中でも、上記一般式(IV)において、R2が炭素原子数1〜10のアルキル基である化合物;Eが水素原子である化合物;上記一般式(II)におけるQ1が直接結合又は炭素原子数1〜8のアルキレン基である化合物は、製造コストが低く、該化合物を中間体として製造されるシアニン化合物のモル吸光係数が大きいので好ましく、また、上記一般式(IV)において、aが0である化合物;Z1同士が形成する環がベンゼン環である化合物は、簡便に製造でき、光学記録材料として適正な光吸収特性を有するのでより好ましい。
【0058】
上記一般式(IV)で表される本発明のインドレニウム化合物は、上記一般式(I)で表される本発明のシアニン化合物を製造するための有用な中間体であり、その製造法によって制限を受けるものではないが、例えば、下記反応式のように、インドール誘導体にN−ブロモメチルフタルイミド誘導体をヨウ化ナトリウム存在下で反応させることにより製造することができる。
【0059】
【化15】

(式中、R2、E、Y1、Z1、a、p及びAnq-は、上記一般式(I)と同じであり、Q1、Z3及びcは、上記一般式(II)と同じである。)
【0060】
次に、本発明の光学記録材料及び光学記録媒体について説明する。
本発明の光学記録材料は、本発明のシアニン化合物を少なくとも一種含有してなり、基体上に光学記録層が形成された光学記録媒体の該光学記録層の形成に用いられる。また、本発明の光学記録媒体は、基体上に、該光学記録材料からなる光学記録層を形成して得られるものである。
【0061】
本発明の光学記録材料の調製、及び基体上に、該光学記録材料からなる光学記録層を形成したことを特徴とする、本発明の光学記録媒体を製造する方法については、特に制限を受けない。一般には、メタノール、エタノール等の低級アルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルジグリコール等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等のエステル類;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類;2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ化アルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;メチレンジクロライド、ジクロロエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素類等の有機溶媒に、本発明のシアニン化合物及び必要に応じて後述の各種化合物を溶解して溶液状の光学記録材料を作製し、該光学記録材料を基体上にスピンコート、スプレー、ディッピング等で塗布する湿式塗布法が用いられる。その他の方法としては、蒸着法、スパッタリング法等も用いられる。上記有機溶媒を使用する場合、その使用量は、本発明の光学記録材料中における本発明のシアニン化合物の含有量が0.1〜10質量%となる量にするのが好ましい。
【0062】
上記光学記録層は薄膜として形成され、その厚さは、通常、0.001〜10μmが適当であり、好ましくは0.01〜5μmの範囲である。
【0063】
また、本発明の光学記録材料中において、本発明のシアニン化合物の含有量は、本発明の光学記録材料に含まれる固形分中、10〜100質量%が好ましい。上記光学記録層は、光学記録層中に該シアニン化合物を50〜100質量%含有するように形成されることが好ましく、このようなシアニン化合物含有量の光学記録層を形成するために、本発明の光学記録材料は、該シアニン化合物を、本発明の光学記録材料に含まれる固形分基準で50〜100質量%含有するのが更に好ましい。
【0064】
本発明の光学記録材料に含まれる上記固形分は、該光学記録材料から有機溶媒等の固形分以外の成分を除いた成分のことであり、該固形分の含有量は、上記光学記録材料中、0.01〜100質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
【0065】
本発明の光学記録材料は、本発明のシアニン化合物の他に、必要に応じて、アゾ系化合物、フタロシアニン系化合物、オキソノール系化合物、スクアリリウム系化合物、インドール化合物、スチリル系化合物、ポルフィン系化合物、アズレニウム系化合物、クロコニックメチン系化合物、ピリリウム系化合物、チオピリリウム系化合物、トリアリールメタン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、テトラヒドロコリン系化合物、インドフェノール系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、キサンテン系化合物、チアジン系化合物、アクリジン系化合物、オキサジン系化合物、スピロピラン系化合物、フルオレン系化合物、ローダミン系化合物等の、通常光学記録層に用いられる化合物;ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート等の樹脂類;界面活性剤;帯電防止剤;滑剤;難燃剤;ヒンダードアミン等のラジカル捕捉剤;フェロセン誘導体等のピット形成促進剤;分散剤;酸化防止剤;架橋剤;耐光性付与剤等を含有してもよい。更に、本発明の光学記録材料は、一重項酸素等のクエンチャーとして芳香族ニトロソ化合物、アミニウム化合物、イミニウム化合物、ビスイミニウム化合物、遷移金属キレート化合物等を含有してもよい。本発明の光学記録材料において、これらの各種化合物は、本発明の光学記録材料に含まれる固形分中、0〜50質量%の範囲となる量で使用される。
【0066】
本発明の光学記録材料には、ジイモニウム化合物を含有させてもよい。該ジイモニウム化合物を含有させることにより、本発明の光学記録媒体の経時的な吸光度残存率の低下をより効果的に防ぐことができる。また該イモニウム化合物を含有させる場合の含有量は、本発明の光学記録材料に含まれる固形分中、0〜99質量%の範囲となる量が好ましく、より好ましくは、50〜95質量%である。
【0067】
上記ジイモニウム化合物としては、例えば、下記一般式(VI)で表わされる化合物等を挙げることができる。
【0068】
【化16】

(式中、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47及びR48は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、R51、R52、R53及びR54は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基又はアミノ基を表す。R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R51、R52、R53及びR54で表される炭素原子数1〜8のアルキル基、R51、R52、R53及びR54で表されるアミノ基は、置換基を有していてもよい。上記炭素原子数1〜8のアルキル基中のメチレン基は、−O−又は−CH=CH−で置換されていてもよく、rは1〜4の数を表す。)
【0069】
このような光学記録層を設層する上記基体の材質は、書き込み(記録)光及び読み出し(再生)光に対して実質的に透明なものであれば特に制限はなく、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどの樹脂、ガラスなどが用いられる。また、その形状は、用途に応じ、テープ、ドラム、ベルト、ディスク等の任意の形状のものを使用できる。
【0070】
また、上記光学記録層上には、金、銀、アルミニウム、銅等を用いて蒸着法或いはスパッタリング法により反射膜を形成することもできるし、アクリル樹脂、紫外線硬化性樹脂等により保護層を形成することもできる。
【0071】
本発明の光学記録材料は、記録、再生に半導体レーザを用いる光学記録媒体に好適であり、特に高速記録タイプのCD−R、DVD±R、HD−DVD―R、BD−R等の公知の単層式、二層式、多層式光ディスクに好適である。
【0072】
次に、本発明の色補正材料について説明する。
本発明の色補正材料は、上記一般式(I)で表される本発明のシアニン化合物を少なくとも一種含有してなる。該シアニン化合物は、それぞれ吸収極大波長を450〜620nmの範囲内又はその付近に持ち、一部の可視光線を選択的に吸収して遮断することができる。
【0073】
本発明の色補正材料における本発明のシアニン化合物の含有量は、本発明の色補正材料に含まれる固形分中、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%である。
【0074】
本発明の色補正材料には、従来の色補正材料に使用されている公知のシアニン化合物やジイモニウム化合物等の色素化合物の一種又は二種以上を組み合わせて併用することもできる。本発明の色補正材料中の色素化合物の含有量は、特に制限されるものではないが、本発明のシアニン化合物100質量部に対して、100質量部以下とするのが好ましい。
【0075】
上記色素化合物としては、例えば、後述の本発明の色補正材料(シアニン化合物)以外の他の光吸収剤として説明する化合物等が挙げられる。
【0076】
また、本発明の色補正材料には、有機溶媒を含有させてもよい。この場合、本発明の色補正材料中の固形分は、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.5〜5.0質量%とする。また、本発明の色補正材料には、付着付与剤;軟化剤;耐光性付与剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;可塑剤;消泡剤;レベリング剤;分散剤;硬化剤等を更に必要量含有させることができる。これらの添加剤の含有量は、本発明の色補正材料の用途等に応じて適宜決定することができ、特に制限されるものではないが、好ましくは固形分中70質量%以下とする。
【0077】
本発明の色補正材料は、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)、CCDイメージセンサ、CMOSセンサ、蛍光表示管、電界放射型ディスプレイ等の画像表示装置用、分析装置用、半導体装置製造用、天文観測用、光通信用、眼鏡レンズ、窓等の用途に用いられる。特に、本発明の色補正材料は、これにバインダー樹脂を配合してフィルム形成用組成物とし、該フィルム形成用組成物を用いて光学フィルターを作製することで好適に用いられる。
【0078】
次に、本発明のフィルム形成用組成物及び該フィルム形成用組成物を用いた光学フィルターについて説明する。
本発明のフィルム形成用組成物は、本発明の色補正材料を含有してなる。本発明のフィルム形成用組成物には、通常バインダー樹脂が配合される。該バインダー樹脂としては、例えば、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、セルロース誘導体、アルギン酸等の天然高分子材料、或いは、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、メラミン樹脂、環状オレフィン樹脂等の合成高分子材料、粘着剤等が挙げられる。
【0079】
上記粘着剤としては、例えば、シリコン系、ウレタン系、アクリル系等の粘着剤、ポリビニルブチラール系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル系粘着剤、ポリオレフィン系粘着剤、SBR系粘着剤、ゴム系粘着剤等の公知の合わせガラス用透明粘着剤を用いることができ、中でもアクリル系粘着剤、特に酸性アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0080】
上記アクリル系粘着剤としては特に限定されず、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等の反応性官能基及びエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の単独重合体或いは複数種を組み合わせた共重合体、又は上記反応性官能基及びエチレン性不飽和二重結合を有する単量体と、(メタ)アクリル系単量体やビニル系単量体のようなエチレン性不飽和二重結合を有する単量体との共重合体を用いることができ、必要に応じて粘着剤の凝集力を向上させるために、硬化剤として、金属キレート系化合物、イソシアネート系化合物、メラミン化合物、エポキシ系化合物、アミン系化合物、アジリジン系化合物、オキサゾリン化合物等の架橋剤を含有するものを用いることができる。
【0081】
上記アクリル系粘着剤としては市販のものを用いることができ、例えば、デービーボンド5541(ダイアボンド社製)、SKダインAS−1925、KP−2230、SK−1811L(綜研化学社製)、DX2−PDP−19(日本触媒社製)、AT−3001(サイデン化学社製)、オリバインBPS5896(東洋インキ社製)、CS−9611(日東電工社製)等が挙げられる。
【0082】
本発明のフィルム形成用組成物には、後述する有機溶媒、本発明の色補正材料(シアニン化合物)以外の光吸収剤、各種安定剤等の任意成分等をさらに必要量含有させることができる。
【0083】
光学フィルターの作製において、本発明のフィルム形成用組成物を塗布により適用する場合は、本発明のフィルム形成用組成物に有機溶媒を含有させて本発明のフィルム形成用組成物を塗工液とする。本発明の色補正材料の成分であるシアニン化合物、有機溶媒及び本発明の色補正材料(シアニン化合物)以外の光吸収剤、各種安定剤等の任意成分等を含む塗工液の濃度(固形分)は、0.1〜5質量%、特に1〜3質量%であるのが好ましい。
【0084】
本発明のフィルム形成用組成物において、本発明の色補正材料及び上記バインダー樹脂等の使用量は制限されないが、通常、次のようにして使用される。例えば、本発明のフィルム形成用組成物から構成される粘着剤層を有する本発明の光学フィルターを製造する場合には、上記バインダー樹脂である粘着剤の固形分100質量部に対し、本発明の色補正材料の成分である本発明のシアニン化合物が0.0001〜50質量部、好ましくは0.001〜5.0質量部、及びメチルエチルケトン等の溶剤が0.1〜1000質量部、好ましくは1.0〜500質量部となるように粘着剤溶液を調製し、この粘着剤溶液を、易密着処理をしたPETフィルム等の透明支持体に塗布した後、乾燥させ、厚さ2〜400μm、好ましくは5〜40μmの粘着剤層を有する本発明の光学フィルターを得る。更に、本発明の色補正材料(シアニン化合物)以外の他の光吸収剤、各種安定剤等の任意成分等を本発明のフィルム形成用組成物に含有させる場合も、各成分の配合割合は、上述の配合割合に順じればよい。
【0085】
上記の粘着剤層を有する本発明の光学フィルターの製造において、本発明の色補正材料(シアニン化合物)及びバインダー樹脂や、本発明の色補正材料(シアニン化合物)以外の他の光吸収剤、各種安定剤等の任意成分を、透明支持体及び任意の各層から選択される任意の隣り合う二者間の粘着剤層に含有させる方法を採用する場合には、本発明のシアニン化合物等を粘着剤に含有させて本発明のフィルム形成用組成物とした後、該フィルム形成用組成物を粘着剤として用いて、透明支持体及び任意の各層のうちの隣り合う二者を接着すればよい。更に粘着剤層の表面に、易密着したポリエチレンテレフタレートフィルム等の公知のセパレータフィルムを設けることもできる。
【0086】
本発明の光学フィルターは、本発明のフィルム形成用組成物を用いたものであり、該フィルム形成用組成物により構成される層を有する。該フィルム形成用組成物により構成される層は、後述する各層の何れの層でもよい。本発明の光学フィルター、特に画像表示用光学フィルターにおいて、本発明の色補正材料の成分であるシアニン化合物の使用量は、光学フィルターの単位面積当たり、通常1〜1000mg/m2、好ましくは5〜100mg/m2の範囲である。1mg/m2未満の使用量では、光吸収効果を十分に発揮することができず、1000mg/m2を超えて使用した場合には、フィルターの色目が強くなりすぎて表示品質等を低下させるおそれがあり、更には、明度が低下するおそれもある。尚、本発明のシアニン化合物が複数種の混合物である場合は、本発明のシアニン化合物の使用量は、その合計量とする。
【0087】
本発明の光学フィルターは、通常、ディスプレイの前面に配置される。例えば、本発明の光学フィルターは、ディスプレイの表面に直接貼り付けてもよく、ディスプレイの前に前面板が設けられている場合は、前面板の表側(外側)又は裏側(ディスプレイ側)に貼り付けてもよい。
【0088】
本発明の光学フィルターの代表的な構成としては、透明支持体に、必要に応じて、下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層、粘着剤層等の各層を設けたものが挙げられる。例えば、本発明の色補正材料を下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層、粘着層等に含有させた構成でもよく、これらの層とは別に本発明のフィルム形成用組成物を用いて形成される色補正層を有する構成でもよい。本発明の光学フィルターの構成としては、本発明の色補正材料を粘着層に含有させたものが製造工程を削減でき、積層された光学フィルターを安価に製造できるので好ましい。
【0089】
上記透明支持体の材料としては、例えば、ガラス等の無機材料;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等のセルロースエステル;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4'−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリスチレン;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリオキシエチレン、ノルボルネン樹脂等の高分子材料が挙げられる。透明支持体の透過率は80%以上であることが好ましく、86%以上であることが更に好ましい。ヘイズは、2%以下であることが好ましく、1%以下であることが更に好ましい。屈折率は、1.45〜1.70であることが好ましい。
【0090】
上記透明支持体中には、本発明の色補正材料(シアニン化合物)以外の他の光吸収剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、蛍光消光剤、フェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、無機微粒子、耐光性付与剤、芳香族ニトロソ化合物、アミニウム化合物、イミニウム化合物、遷移金属キレート化合物、粘度鉱物等を添加することができ、また、上記透明支持体には、各種の表面処理を施すこともできる。
【0091】
本発明の色補正材料(シアニン化合物)以外の他の光吸収剤としては、例えば、光学フィルターを画像表示装置用途に用いる場合には、色調調整用の光吸収剤、外光の反射や映り込み防止用の光吸収剤が挙げられ、画像表示装置がプラズマディスプレイの場合には、赤外リモコン誤作動防止用の光吸収剤が挙げられる。
【0092】
上記色調調整用の上記光吸収剤としては、波長450〜620nmのオレンジ光の除去のために用いられるものとして、トリメチンインドリウム化合物、トリメチンベンゾオキサゾリウム化合物、トリメチンベンゾチアゾリウム化合物等のトリメチンシアニン誘導体;ペンタメチンオキサゾリウム化合物、ペンタメチンチアゾリウム化合物等のペンタメチンシアニン誘導体;スクアリリウム色素誘導体;アゾメチン色素誘導体;キサンテン色素誘導体;アゾ色素誘導体;オキソノール色素誘導体;ベンジリデン色素誘導体;ピロメテン色素誘導体;アゾ金属錯体誘導体:ローダミン色素誘導体;フタロシアニン誘導体;ポルフィリン誘導体;ジピロメテン金属キレート化合物等が挙げられる。
【0093】
上記の外光の反射や映り込み防止用の光吸収剤(波長480〜500nm対応)としては、トリメチンインドリウム化合物、トリメチンオキサゾリウム化合物、トリメチンチアゾリウム化合物、インドリデントリメチンチアゾニウム化合物等のトリメチンシアニン誘導体;フタロシアニン誘導体;ナフタロシアニン誘導体;ポルフィリン誘導体;ジピロメテン金属キレート化合物等が挙げられる。
【0094】
上記の赤外リモコン誤作動防止用の光吸収剤(波長750〜1100nm対応)としては、ジイモニウム化合物;ペンタメチンベンゾインドリウム化合物、ペンタメチンベンゾオキサゾリウム化合物、ペンタメチンベンゾチアゾリウム化合物等のペンタメチンシアニン誘導体;ヘプタメチンインドリウム化合物、ヘプタメチンベンゾインドリウム化合物、ヘプタメチンオキサゾリウム化合物、ヘプタメチンベンゾオキサゾリウム化合物、ヘプタメチンチアゾリウム化合物、ヘプタメチンベンゾチアゾリウム化合物等のヘプタメチンシアニン誘導体;スクアリリウム誘導体;ビス(スチルベンジチオラト)化合物、ビス(ベンゼンジチオラト)ニッケル化合物、ビス(カンファージチオラト)ニッケル化合物等のニッケル錯体;スクアリリウム誘導体;アゾ色素誘導体;フタロシアニン誘導体;ポルフィリン誘導体;ジピロメテン金属キレート化合物等が挙げられる。
【0095】
また、上記透明支持体に添加することができる上記無機微粒子としては、例えば、二酸化珪素、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン等が挙げられる。
【0096】
上記透明支持体に施すことができる上記の各種の表面処理としては、例えば、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸化処理等が挙げられる。
【0097】
本発明の光学フィルターに設けることができる上記下塗り層は、任意の各層とは別に光吸収剤を含有するフィルター層を設ける場合に、透明支持体と光フィルター層との間に用いる層である。上記下塗り層は、ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーを含む層、フィルター層側の表面が粗面である層、又はフィルター層のポリマーと親和性を有するポリマーを含む層として形成する。また、下塗り層は、フィルター層が設けられていない透明支持体の面に設けて、透明支持体とその上に設けられる層(例えば、反射防止層、ハードコート層)との接着力を改善するために設けてもよく、光学フィルターと画像表示装置とを接着するための接着剤と光学フィルターとの親和性を改善するために設けてもよい。下塗り層の厚みは、2nm〜20μmが好ましく、5nm〜5μmがより好ましく、20nm〜2μmが更に好ましく、50nm〜1μmが更にまた好ましく、80nm〜300nmが最も好ましい。ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーを含む下塗り層は、ポリマーの粘着性で、透明支持体とフィルター層とを接着する。ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーは、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ブタジエン、ネオプレン、スチレン、クロロプレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル又はメチルビニルエーテルの重合又はこれらの共重合により得ることができる。ガラス転移温度は、50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることが更に好ましく、25℃以下であることが更にまた好ましく、20℃以下であることが最も好ましい。下塗り層の25℃における弾性率は、1〜1000MPaであることが好ましく、5〜800MPaであることが更に好ましく、10〜500MPaであることが最も好ましい。フィルター層の表面が粗面である下塗り層は、粗面の上にフィルター層を形成することで、透明支持体とフィルター層とを接着する。フィルター層の表面が粗面である下塗り層は、ポリマーラテックスの塗布により容易に形成することができる。ラテックスの平均粒径は、0.02〜3μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることが更に好ましい。フィルター層のバインダーポリマーと親和性を有するポリマーとしては、アクリル樹脂、セルロース誘導体、アルギン酸、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、可溶性ナイロン及び高分子ラテックス等が挙げられる。また、本発明の光学フィルターには、二以上の下塗り層を設けてもよい。下塗り層には、透明支持体を膨潤させる溶剤、マット剤、界面活性剤、帯電防止剤、塗布助剤、硬膜剤等を添加してもよい。
【0098】
本発明の光学フィルターに設けることができる上記反射防止層においては、低屈折率層が必須である。低屈折率層の屈折率は、上記透明支持体の屈折率よりも低い。低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.55であることが好ましく、1.30〜1.50であることが更に好ましい。低屈折率層の厚さは、50〜400nmであることが好ましく、50〜200nmであることが更に好ましい。低屈折率層は、屈折率の低い含フッ素ポリマーからなる層(特開昭57−34526号、特開平3−130103号、特開平6−115023号、特開平8−313702号、特開平7−168004号の各公報記載)、ゾルゲル法により得られる層(特開平5−208811号、特開平6−299091号、特開平7−168003号の各公報記載)、或いは微粒子を含む層(特公昭60−59250号、特開平5−13021号、特開平6−56478号、特開平7−92306号、特開平9−288201号の各公報に記載)として形成することができる。微粒子を含む層では、微粒子間又は微粒子内のミクロボイドとして、低屈折率層に空隙を形成することができる。微粒子を含む層は、3〜50体積%の空隙率を有することが好ましく、5〜35体積%の空隙率を有することが更に好ましい。
【0099】
広い波長領域の反射を防止するためには、上記反射防止層において、低屈折率層に加えて、屈折率の高い層(中・高屈折率層)を積層することが好ましい。高屈折率層の屈折率は、1.65〜2.40であることが好ましく、1.70〜2.20であることが更に好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.90であることが好ましく、1.55〜1.70であることが更に好ましい。中・高屈折率層の厚さは、5nm〜100μmであることが好ましく、10nm〜10μmであることが更に好ましく、30nm〜1μmであることが最も好ましい。中・高屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが最も好ましい。中・高屈折率層は、比較的高い屈折率を有するポリマーバインダーを用いて形成することができる。屈折率が高いポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン共重合体、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアミド、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、環状(脂環式又は芳香族)イソシアネートとポリオールとの反応で得られるポリウレタン等が挙げられる。その他の環状(芳香族、複素環式、脂環式)基を有するポリマーや、フッ素以外のハロゲン原子を置換基として有するポリマーも、屈折率が高い。二重結合を導入してラジカル硬化を可能にしたモノマーの重合反応により形成されたポリマーを用いてもよい。
【0100】
更に高い屈折率を得るため、上記ポリマーバインダー中に無機微粒子を分散してもよい。無機微粒子の屈折率は、1.80〜2.80であることが好ましい。無機微粒子は、金属の酸化物又は硫化物から形成することが好ましい。金属の酸化物又は硫化物としては、酸化チタン(例えば、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛等が挙げられる。これらの中でも、酸化チタン、酸化錫及び酸化インジウムが特に好ましい。無機微粒子は、これらの金属の酸化物又は硫化物を主成分とし、更に他の元素を含むことができる。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。他の元素としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P、S等が挙げられる。被膜形成性で溶剤に分散し得るか、それ自身が液状である無機材料、例えば、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物(例えばキレート化合物)、活性無機ポリマーを用いて、中・高屈折率層を形成することもできる。
【0101】
上記反射防止層の表面には、アンチグレア機能(入射光を表面で散乱させて、膜周囲の景色が膜表面に移るのを防止する機能)を付与することができる。例えば、透明フィルムの表面に微細な凹凸を形成してその表面に反射防止層を形成するか、或いは、反射防止層を形成後、エンボスロールにより表面に凹凸を形成することにより、アンチグレア機能を有する反射防止層を得ることができる。アンチグレア機能を有する反射防止層は、一般に3〜30%のヘイズを有する。
【0102】
本発明の光学フィルターに設けることができる上記ハードコート層は、上記透明支持体の硬度よりも高い硬度を有する。ハードコート層は、架橋しているポリマーを含むことが好ましい。ハードコート層は、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系のポリマー、オリゴマー又はモノマー(例えば紫外線硬化型樹脂)等を用いて形成することができる。シリカ系材料からハードコート層を形成することもできる。
【0103】
上記反射防止層(低屈折率層)の表面は、潤滑層を形成してもよい。潤滑層は、低屈折率層表面に滑り性を付与し、耐傷性を改善する機能を有する。潤滑層は、ポリオルガノシロキサン(例えばシリコンオイル)、天然ワックス、石油ワックス、高級脂肪酸金属塩、フッ素系潤滑剤又はその誘導体を用いて形成することができる。潤滑層の厚さは、2〜20nmであることが好ましい。
【0104】
上記ポリマーバインダーを使用する際には、同時に有機溶媒を使用することもでき、該有機溶媒としては、特に限定されることなく公知の種々の溶媒を適宜用いることができ、例えば、イソプロパノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルジグリコール等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等のエステル類;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ化アルコール類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;メチレンジクロライド、ジクロロエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素類等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で又は混合して用いることができる。
が好ましい。
【0105】
また、上記の下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層、フィルター層等は、一般的な塗布方法により形成することができる。塗布方法としては、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ホッパーを使用するエクストルージョンコート法(米国特許第2681294号明細書記載)等が挙げられる。二以上の層を同時塗布により形成してもよい。同時塗布法については、米国特許第2761791号、米国特許第2941898号、米国特許第3508947号、米国特許第3526528号の各明細書及び原崎勇次著「コーティング工学」253頁(1973年朝倉書店発行)に記載がある。
【実施例】
【0106】
以下、実施例及び比較例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
【0107】
下記実施例1−1〜1−4は、上記一般式(IV)で表される本発明のインドレニウム化合物IV−1〜IV−4のヨウ化物の製造例を示し、下記実施例2−1〜2−8は、上記一般式(I)で表される本発明のシアニン化合物I−1〜I−4のテトラフルオロホウ酸塩、ヨウ化物、クエンチャー陰イオン(3)塩及びクエンチャー陰イオン(4)塩の製造例を示す。また、下記実施例3−1〜3−8は、実施例2−1〜2−8で得られた化合物I−1〜I−4のテトラフルオロホウ酸塩、ヨウ化物、クエンチャー陰イオン(3)塩及びクエンチャー陰イオン(4)塩を含有する本発明の光学記録材料の調製及び該光学記録材料を用いた本発明の光学記録媒体No.1〜No.8の製造例を示す。
【0108】
下記比較例1−1及び1−2は、本発明のシアニン化合物とは異なる構造を持つシアニン化合物のテトラフルオロホウ酸塩を用いた比較光学記録材料の調製及び該比較光学記録材料を用いた比較光学記録媒体No.1及びNo.2の製造例を示す。
【0109】
下記実施例4−1及び4−2並びに比較例2−1及び2−2は、実施例3−1及び実施例3−6で得られた光学記録媒体No.1及びNo.6並びに比較例1−1及び1−2で得られた比較光学記録媒体No.1及びNo.2についての耐光性を、UV吸収スペクトルの最大吸収波長(λmax)における吸光度残存率の測定により評価を行った。
【0110】
下記実施例5−1〜5−3は、実施例2−1で得られた化合物I−1のテトラフルオロホウ酸塩並びに実施例2−5及び2−6で得られた化合物I−3及びI−4のヨウ化物を含有する光学フィルターの作製例を示す。
【0111】
[実施例1−1〜1−4]インドレニウム塩の製造
1,2,3−トリアルキルインドール誘導体50mmol、N−ブロモメチルフタルイミド60mmol、ヨウ化ナトリウム60mmol及びエタノール40gを仕込み、60℃で3時間撹拌した。析出した固体をろ別後、減圧乾燥し、目的物である本発明のインドレニウム化合物IV-1〜IV-4のヨウ化物をそれぞれ得た。得られた化合物の同定は、1H−NMR分析により行った。〔表1〕に、得られた化合物の収率及び同定データを示す。
【0112】
【化17】

【0113】
【表1】

【0114】
[実施例2−1〜2−8]化合物I−1〜I−4のテトラフルオロホウ酸塩、ヨウ化物、クエンチャー陰イオン(3)塩及びクエンチャー陰イオン(4)塩の製造
【0115】
【化18】

【0116】
<ステップ1>シアニン化合物の無機塩の製造
実施例1−1〜1−4で得られたインドレニウム化合物のヨウ化物10mmol、1−メチル−2−メチルチオベンゾオキサゾール塩13mmol、トリエチルアミン20mmol及びアセトニトリル10gを仕込み、室温で4時間撹拌した。析出した固体をろ別後、減圧乾燥し、目的物である本発明のシアニン化合物の無機塩をそれぞれ得た。
【0117】
<ステップ2>シアニン化合物のクエンチャー陰イオン塩の製造
上記<ステップ1>で得られたシアニン化合物の無機塩0.50mmol、クエンチャー陰イオンのトリエチルアミン塩0.50mmol及びピリジン3.6gを仕込み、60℃で2時間撹拌し、メタノール8gを加え、室温まで冷却した。析出した固体をろ別後、減圧乾燥し、目的物である本発明のシアニン化合物のクエンチャー陰イオン塩をそれぞれ得た。
【0118】
得られた化合物の同定は、1H−NMR分析により行った。〔表2〕に、得られた化合物の収率並びに特性値[溶液状態での光吸収特性(λmax、及びλmaxにおけるε)、分解点]の測定結果、〔表3〕に同定データを示す。なお、〔表2〕において、分解点は10℃/分の昇温速度における示差熱分析の質量減少開始温度である。
【0119】
【表2】

【0120】
【表3】

【0121】
[実施例3−1〜3−8]
上記実施例2−1〜2−8で得た化合物I−1〜I−4のテトラフルオロホウ酸塩、ヨウ化物、クエンチャー陰イオン(3)塩及びクエンチャー陰イオン(4)塩を、それぞれシアニン化合物の濃度が1.0質量%となるように2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールに溶解して、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール溶液として、本発明の光学記録材料を得た。チタンキレート化合物(T−50:日本曹達社製)を塗布、加水分解して下地層(0.01μm)を設けた直径12cmのポリカーボネートディスク基板上に、上記光学記録材料をスピンコーティング法にて塗布して、厚さ100nmの光学記録層を形成し、本発明の光学記録媒体No.1〜No.8をそれぞれ得た。得られた光学記録媒体のUV吸収スペクトルを測定した。結果を〔表4〕に示す。
【0122】
【表4】

【0123】
[比較例1−1及び1−2]
本発明のシアニン化合物に代えて下記比較化合物No.1又はNo.2のテトラフルオロホウ酸塩を用いた以外は、上記実施例3−1〜3−8と同様にして比較光学記録材料を調製し、該光学記録材料を用いて比較光学記録媒体No.1及びNo.2を得た。
【0124】
【化19】

【0125】
[実施例4−1及び4−2並びに比較例2−1及び比較例2−2]
実施例3−1及び3−6で得られた光学記録媒体No.1及びNo.6並びに比較例1−1及び1−2で得られた比較光学記録媒体No.1及びNo.2について、耐光性評価を行なった。評価は、該光学記録媒体に55000ルクスの光を照射し、5時間及び24時間照射した後、照射前のUV吸収スペクトルのλmaxでの吸光度残存率を測定することにより行った。結果を〔表5〕に示す。
【0126】
【表5】

【0127】
〔表5〕から明らかなように、本発明の光学記録材料により形成された光学記録層を有する光学記録媒体は、24時間照射した後においても残存率が高かった。一方、比較化合物を含有する比較光学記録材料により形成された光学記録層を有する比較光学記録媒体は著しい残存率の低下が見られ、耐光性はよくなかった。
【0128】
〔実施例5−1〜5−3〕
実施例2−1で得られた化合物I−1のテトラフルオロホウ酸塩又は実施例2−5若しくは2−6で得られた化合物I−3若しくはI−4のヨウ化物の1wt%メチルエチルケトン溶液0.2g、及びポリメチルメタクリレート(以下、PMMAとも呼ぶ)の25wt%トルエン溶液3.0gを混合させ、15分間超音波照射を行い、塗工液を調製した。
得られた塗工液を、易密着処理した188μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに、該塗工液をバーコーター#30により塗布した後、70℃で15分間乾燥し、膜厚7〜8μmのフィルム層を有する本発明の光学フィルターを作製した。この光学フィルターについて、日本分光(株)製紫外可視近赤外分光光度計V−570で吸収スペクトルを測定した。結果を〔表6〕に示す。
【0129】
【表6】

【0130】
〔表6〕から明らかなように、本発明の光学フィルターは、300〜1100nmの波長領域において急峻な光吸収を有しており、画像表示装置用の光学フィルターとして好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるシアニン化合物。
【化1】

(式中、R1は下記一般式(II)で表される基を表し、R2は炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、下記一般式(II)で表される基又は下記一般式(III)で表される基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CR34又はNR5を表し、R3、R4、R5、Y1及びY2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、下記一般式(II)で表される基又は下記一般式(III)で表される基を表し、該置換基の水素原子はハロゲン原子で置換されてもよく、該置換基のメチレン基は−O−、−CO−、−OCO−又は−COO−で中断されてもよく、R3とR4は、それぞれ連結して3〜6員環の脂環基を形成してもよい。
1及びZ2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、ニトロ基、シアノ基、水酸基又はハロゲン原子、炭素原子数1〜8の炭化水素基を有するスルホニル基、炭素原子数1〜8の炭化水素基を有するスルフィニル基、炭素原子数1〜8のアルキル基を有するアルキルアミノ基、炭素原子数1〜8のアルキル基を有するジアルキルアミノ基を表し、該置換基の水素原子はハロゲン原子で置換されてもよく、該置換基のメチレン基は−O−、−CO−、−OCO−又は−COO−で中断されてもよく、複数のZ1同士、Z2同士は結合して環構造を形成していてもよく、Eは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜20のアリール基を表し、a及びbは、それぞれ独立に、0〜4の整数を表し、Anq-はq価の陰イオンを表し、qは1又は2を表し、pは電荷を中性に保つ係数を表す。)
【化2】

(式中、Z3は炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、ニトロ基、シアノ基、水酸基、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8の炭化水素基を有するスルホニル基、炭素原子数1〜8の炭化水素基を有するスルフィニル基、炭素原子数1〜8のアルキル基を有するアルキルアミノ基、炭素原子数1〜8のアルキル基を有するジアルキルアミノ基又は下記一般式(III)で表される基を表し、該置換基の水素原子はハロゲン原子で置換されてもよく、該置換基のメチレン基は−O−、−CO−、−OCO−又は−COO−で中断されてもよく、複数のZ3同士は結合して環構造を形成していてもよく、Q1は直接結合又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、該アルキレン基中のメチレン基は−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で置換されていてもよい。)
【化3】

(式中、Ra〜Riは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基中のメチレン基は−O−又は−CO−で置換されてもよく、Q2は直接結合又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、該アルキレン基中のメチレン基は−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で置換されてもよく、M1はFe、Co、Ni、Ti、Cu、Zn、Zr、Cr、Mo、Os、Mn、Ru、Sn、Pd、Rh、Pt又はIrを表す。)
【請求項2】
下記一般式(IV)で表されるインドレニウム化合物。
【化4】

(式中、R1は下記一般式(II)で表される基を表し、R2は炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、下記一般式(II)で表される基又は下記一般式(III)で表される基を表し、Y1は水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、下記一般式(II)で表される基又は下記一般式(III)で表される基を表し、該置換基の水素原子はハロゲン原子で置換されてもよく、該置換基のメチレン基は−O−、−CO−、−OCO−又は−COO−で中断されてもよい。
1は炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、ニトロ基、シアノ基、水酸基又はハロゲン原子、炭素原子数1〜8の炭化水素基を有するスルホニル基、炭素原子数1〜8の炭化水素基を有するスルフィニル基、炭素原子数1〜8のアルキル基を有するアルキルアミノ基、炭素原子数1〜8のアルキル基を有するジアルキルアミノ基を表し、該置換基の水素原子はハロゲン原子で置換されてもよく、該置換基のメチレン基は−O−、−CO−、−OCO−又は−COO−で中断されてもよく、複数のZ1同士は結合して環構造を形成していてもよく、Eは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜20のアリール基を表し、aは0〜4の整数を表し、Anq-はq価の陰イオンを表し、qは1又は2を表し、pは電荷を中性に保つ係数を表す。)
【化5】

(式中、Z3は炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、ニトロ基、シアノ基、水酸基、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8の炭化水素基を有するスルホニル基、炭素原子数1〜8の炭化水素基を有するスルフィニル基、炭素原子数1〜8のアルキル基を有するアルキルアミノ基、炭素原子数1〜8のアルキル基を有するジアルキルアミノ基又は下記一般式(III)で表される基を表し、該置換基の水素原子はハロゲン原子で置換されてもよく、該置換基のメチレン基は−O−、−CO−、−OCO−又は−COO−で中断されてもよく、複数のZ3同士は結合して環構造を形成していてもよく、Q1は直接結合又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、該アルキレン基中のメチレン基は−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で置換されていてもよい。)
【化6】

(式中、Ra〜Riは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基中のメチレン基は−O−又は−CO−で置換されてもよく、Q2は直接結合又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、該アルキレン基中のメチレン基は−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で置換されてもよく、MはFe、Co、Ni、Ti、Cu、Zn、Zr、Cr、Mo、Os、Mn、Ru、Sn、Pd、Rh、Pt又はIrを表す。)
【請求項3】
基体上に光学記録層が形成された光学記録媒体の該光学記録層の形成に用いられる、請求項1又は2に記載のシアニン化合物を少なくとも一種含有してなる光学記録材料。
【請求項4】
基体上に、請求項3に記載の光学記録材料から形成された光学記録層を有する光学記録媒体。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のシアニン化合物を少なくとも一種含有してなる色補正材料。
【請求項6】
請求項5に記載の色補正材料を含有してなるフィルム形成用組成物。
【請求項7】
請求項6に記載のフィルム形成用組成物を用いた光学フィルター。
【請求項8】
画像表示装置用である請求項7に記載の光学フィルター。
【請求項9】
上記画像表示装置がプラズマディスプレイである請求項8に記載の光学フィルター。

【公開番号】特開2011−68810(P2011−68810A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222400(P2009−222400)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】