説明

シアノチオフェン、その製造及び薬物としての使用

本発明は一般式(I)
【化1】


(式中、Rは特許請求の範囲に定義される)
のシアノチオフェンに関するものであり、またそれらの互変異性体、立体異性体、混合物及び塩(これらは有益な薬理学的性質、特に、グルカゴン受容体拮抗作用を有する)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は置換シアノチオフェン、それらの調製及びグルカゴン受容体を伴う疾患の治療又は予防のための薬物の調製におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病はインスリン生成の欠如又は不十分なインスリン活性により生じた高血糖を特徴とする複合病である。糖尿病の代謝合併症−高血糖及びケトーシス−はグルカゴン対インスリンの比の相対的又は絶対的増大と連関している。従って、グルカゴンは血糖の上昇をもたらす高血糖因子である。
それ故、グルカゴン受容体をブロックする好適なアンタゴニストが、肝臓中のグルコースの生成を抑制し、患者のグルコースレベルを低下することにより、糖尿病を治療するための薬剤である。
種々の刊行物がペプチド及び非ペプチドのグルカゴン受容体アンタゴニストを開示している(McCormickら, Curr. Pharm. Des. 7, 1451 (2001), 要約)。特に、Bay27-9955によるヒトのグルカゴン刺激グルコース生成の抑制が報告されていた(Petersenら, Diabetologia 44, 2018 (2001))。
本発明の目的は糖尿病の治療に高度に有効なグルカゴン受容体アンタゴニストとして適している新規非ペプチド活性物質を示すことであった。
シアノチオフェン及びグルカゴン受容体アンタゴニストとしてのそれらの使用が既に知られている。こうして、例えば、米国特許出願US 2004/0097552及びUS 2004/0097557に、置換シアノチオフェンが記載されており、これらは2位でアミド基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、ヘテロアリールカルボニルアミノ基又は複素環アミノ基により置換されている。
更に、グルカゴン受容体拮抗活性を有する二環式複素環が国際特許出願WO 2004/024066及びWO 2004/024065に開示されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
驚くことに、4位にハロゲン原子又はシアノ基、ニトロ基もしくはアルコキシ基を有し、かつ/又は2位でビシクロアルキルカルボニルアミノ基により置換されている3-シアノチオフェンが高度に有効なグルカゴン受容体アンタゴニストであり、これらが医薬組成物を調製するのに特に適していることが今わかった。
こうして、本発明は一般式I
【0004】
【化1】

【0005】
の化合物、これらの互変異性体、鏡像体、ジアステレオマー、混合物及び無機又は有機酸又は塩基とのこれらの塩、特にこれらの生理学上許される塩(これらは有益な薬理学的性質、特にグルカゴン受容体に関する抑制効果を有する)、疾患、特に糖尿病の治療及び予防のためのそれらの使用、並びにそれらの製造に関する。
上記式(I)において、
R1はC1-4-アルキル基(これは末端でフッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子又はアミノ基により置換されていてもよく、
そのアミノ基の水素原子は互いに独立にC1-3-アルキル基又はフェニル基もしくはピリジル基(必要によりC1-3-アルキル基により置換されていてもよい)により置換されていてもよい)、又は
フェニル基もしくはピリジル基(これらは夫々の場合に1〜3個のC1-3-アルキル基により置換されていてもよい)を表わし、
R2は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子又はシアノ基、ニトロ基、C1-3-アルキル基、トリフルオロメチル基もしくはC1-4-アルキルオキシ基を表わし、かつ
R3はビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-エンイル基又は
シクロヘキシル基(2位の炭素原子が-CH2基、-CH2-CH2基又は-CH=CH基により5位の炭素原子にブリッジされていてもよい)を表わす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
一般式(I)の好ましい化合物は
R1がC1-4-アルキル基(これは末端でフッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子又はアミノ基により置換されていてもよく、
そのアミノ基の水素原子は互いに独立にC1-3-アルキル基又はフェニル基もしくはピリジル基(必要によりC1-3-アルキル基により置換されていてもよい)により置換されていてもよい)、又は
フェニル基もしくはピリジル基(これらは夫々の場合に1〜3個のC1-3-アルキル基により置換されていてもよい)を表わし、
R2がフッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子又はシアノ基、ニトロ基、C1-3-アルキル基、トリフルオロメチル基もしくはC1-4-アルキルオキシ基を表わし、かつ
R3がビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-エンイル基又は
シクロヘキシル基(2位の炭素原子が-CH2基、-CH2-CH2基又は-CH=CH基により5位の炭素原子にブリッジされていてもよい)を表わす、化合物、これらの互変異性体、鏡像体、ジアステレオマー、混合物及びこれらの塩である。
R1がC1-4-アルキル基(これは末端でフッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子又はアミノ基により置換されていてもよく、
そのアミノ基の水素原子は互いに独立にC1-3-アルキル基又はフェニル基もしくはピリジル基(必要によりC1-3-アルキル基により置換されていてもよい)により置換されていてもよい)、又は
フェニル基もしくはピリジル基(これらは夫々の場合に1〜3個のC1-3-アルキル基により置換されていてもよい)を表わし、
R2がフッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子又はシアノ基、ニトロ基もしくはC1-4-アルキルオキシ基を表わし、かつ
R3がビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-エンイル基又は
シクロヘキシル基(2位の炭素原子が-CH2基、-CH2-CH2基又は-CH=CH基により5位の炭素原子にブリッジされていてもよい)を表わす、一般式(I)のこれらの化合物、これらの互変異性体、鏡像体、ジアステレオマー、混合物及びこれらの塩が特に好ましい。
【0007】
第二の好ましいサブグループは
R1がC1-4-アルキル基(これは末端でフッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子又はアミノ基により置換されていてもよく、
そのアミノ基の水素原子は互いに独立にC1-3-アルキル基又はフェニル基もしくはピリジル基(必要によりC1-3-アルキル基により置換されていてもよい)により置換されていてもよい)、又は
フェニル基もしくはピリジル基(これらは夫々の場合に1〜3個のC1-3-アルキル基により置換されていてもよい)を表わし、
R2が水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子又はシアノ基、ニトロ基、C1-3-アルキル基、トリフルオロメチル基もしくはC1-4-アルキルオキシ基を表わし、かつ
R3がシクロヘキシル基(2位の炭素原子が-CH2基又は-CH2-CH2基により5位の炭素原子にブリッジされていてもよい)を表わす、一般式(I)のこれらの化合物、これらの互変異性体、鏡像体、ジアステレオマー、混合物及びこれらの塩、特に
R1がC1-4-アルキル基(これは末端でフッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子又はアミノ基により置換されていてもよく、
そのアミノ基の水素原子は互いに独立にC1-3-アルキル基又はフェニル基もしくはピリジル基(必要によりC1-3-アルキル基により置換されていてもよい)により置換されていてもよい)、又は
フェニル基もしくはピリジル基(これらは夫々の場合に1個又は2個のC1-3-アルキル基により置換されていてもよい)を表わし、
R2がフッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子又はシアノ基、ニトロ基、C1-3-アルキル基、トリフルオロメチル基もしくはC1-4-アルキルオキシ基を表わし、かつ
R3がシクロヘキシル基(2位の炭素原子が-CH2基又は-CH2-CH2基により5位の炭素原子にブリッジされていてもよい)を表わす、一般式(I)のこれらの化合物、これらの互変異性体、鏡像体、ジアステレオマー、混合物及びこれらの塩を含む。
【0008】
R1がC2-4-アルキル基(これは末端でN-フェニル-N-メチル-アミノ基により置換されている)、又は
フェニル基(これは1個又は2個のメチル基により置換されていてもよい)を表わし、
R2が塩素原子もしくは臭素原子又はシアノ基もしくはニトロ基を表わし、かつ
R3がシクロヘキシル基(2位の炭素原子が-CH2基又は-CH2-CH2基により5位の炭素原子にブリッジされていてもよい)を表わす、一般式(I)のこれらの化合物、これらの互変異性体、鏡像体、ジアステレオマー、混合物及びこれらの塩が最も特に好ましい。
一般式(I)の下記の化合物が特に挙げられるべきである:
(a) 2-〔(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-イルカルボニルアミノ〕-4-クロロ-3-シアノ-5-(2,5-ジメチル-フェニル)-チオフェン、
(b) 2-〔(2R)-ビシクロ〔2.2.2〕オクト-2-イルカルボニルアミノ〕-4-クロロ-3-シアノ-5-(2,5-ジメチル-フェニル)-チオフェン、
(c) 4-クロロ-3-シアノ-2-(シクロヘキシルカルボニルアミノ)-5-フェニル-チオフェン、
(d) 4-ブロモ-3-シアノ-2-(シクロヘキシルカルボニルアミノ)-5-フェニル-チオフェン、
(e) 3,4-ジシアノ-2-(シクロヘキシルカルボニルアミノ)-5-フェニル-チオフェン、
(f) 3-シアノ-2-(シクロヘキシルカルボニルアミノ)-4-ニトロ-5-フェニル-チオフェン、
(g) 2-〔(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-イルカルボニルアミノ〕-4-ブロモ-3-シアノ-5-(2,5-ジメチル-フェニル)-チオフェン、
(h) 2-〔(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-イルカルボニルアミノ〕-4-ブロモ-3-シアノ-5-{3-〔メチル-(4-メチルフェニル)-アミノ〕-プロピル}-チオフェン及び
(i) 2-〔(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-イルカルボニルアミノ〕-3,4-ジシアノ-5-{3-〔メチル-(4-メチルフェニル)-アミノ〕-プロピル}-チオフェン並びにこれらの塩。
本発明によれば、一般式Iの化合物はそれ自体知られている方法により、例えば、下記の方法により得られる。
a)一般式
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、R1及びR2は先に定義されたとおりである)
の化合物を一般式
R3-COCl (III)
(式中、R3は先に定義されたとおりである)
の酸塩化物と反応させる。
その反応は溶媒、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル又はスルホラン中で、必要により無機又は有機塩基、例えば、ピリジン又は4-ジメチルアミノ-ピリジンの存在下で-20〜200℃の温度、好ましくは-10〜160℃の温度で適当に行なわれる。
b)R2がフッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子又はニトロ基を表わす式(I)の化合物を調製するために、一般式
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、R1及びR3は先に定義されたとおりである)
の化合物を塩素化、臭素化、ヨウ素化又はニトロ化する。
その塩素化は、例えば、N-クロロスクシンイミドを用いて溶媒、例えば、氷酢酸、四塩化炭素又はジクロロメタン中で25〜100℃の温度で行なわれてもよい。また、特にルイス酸、例えば、塩化アルミニウムと組み合わされた、塩素が試薬として使用されてもよい。
臭素化はN-ブロモスクシンイミドを用いて溶媒、例えば、氷酢酸、四塩化炭素又はジクロロメタン中で25〜100℃、好ましくは60-75℃の温度で都合良く行なわれてもよい。また、ルイス酸、例えば、塩化アルミニウムと組み合わされた、臭素が試薬として使用されてもよい。
ヨウ素化はN-ヨードスクシンイミドを用いて溶媒、例えば、氷酢酸、四塩化炭素又はジクロロメタン中で25〜100℃の温度で都合良く行なわれてもよい。また、ルイス酸、例えば、塩化アルミニウムと組み合わされた、ヨウ素が試薬として使用されてもよい。
ニトロ化は濃硝酸又はニトロ化酸を用いて溶媒、例えば、酢酸又は無水酢酸中で-5℃〜40℃の温度、好ましくは周囲温度で都合良く行なわれる。また、ジクロロメタン中のニトロニウムテトラフルオロボレートがまた使用されてもよい。
c)R2がシアノ基を表わす式(I)の化合物を調製するために、一般式





【0013】
【化4】

【0014】
(式中、R1及びR3は先に定義されたとおりである)
の化合物をシアン化物と反応させる。
その反応は、例えば、シアン化銅(I)を用いて溶媒、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジオキサン、ベンゼン、トルエン又はアセトニトリル中で、好ましくは還流下で、加熱して行なわれる。
d)R2がフッ素原子を表わす式(I)の化合物を調製するために、一般式
【0015】
【化5】

【0016】
(式中、R1及びR3は先に定義されたとおりであり、その他のフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又はニトロ基が存在しない)
の化合物をn-ブチルリチウムと反応させ、続いてN-フルオロジベンゼンスルホンイミドと反応させる。
n-ブチルリチウムとの反応は溶媒、例えば、ジエチルエーテル又はテトラヒドロフラン中で-78℃以下の温度で、好ましくはテトラヒドロフラン中で行なわれる。N-フルオロジベンゼンスルホンイミドとのその後の反応はまた溶媒、例えば、ジエチルエーテル又はテトラヒドロフラン中で-78℃以下の温度で、好ましくはテトラヒドロフラン中で行なわれる。
e)R1がC1-4-アルキル基(これは末端でアミノ基により置換されていてもよく、そのアミノ基の水素原子は互いに独立にC1-3-アルキル基又はフェニル基もしくはピリジル基(必要によりC1-3-アルキル基により置換されていてもよい)により置換されていてもよい)を表わす式(I)の化合物を調製するために、一般式
【0017】
【化6】

【0018】
(式中、R2及びR3は先に定義されたとおりであり、かつXは脱離基、例えば、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子又はトシル基もしくはトリフレート基を表わす)
の化合物を相当する二級アミンと反応させ、次いで必要により置換基をこうして導入されたアミノ基について変換する。
その反応はその他の溶媒(二級アミンは別にして)を添加しないで、例えば、マイクロウェーブ照射により、加熱して都合良く行なわれる。
次いで反応中に使用された保護基が開裂されてもよく、かつ/又は
こうして得られた一般式Iの化合物がそれらの鏡像体及び/又はジアステレオマーに分割されてもよく、かつ/又は
得られた式Iの化合物が無機酸又は有機酸とのそれらの塩、特に医薬上の使用のために生理学上許される塩に変換されてもよい。
更に、得られた一般式Iの化合物は前記のようなそれらの鏡像体及び/又はジアステレオマーに分割されてもよい。こうして、例えば、シス/トランス混合物がそれらのシス異性体及びトランス異性体に分割されてもよく、また少なくとも一つの光学活性炭素原子を有する化合物がそれらの鏡像体に分離されてもよい。
こうして、例えば、得られたシス/トランス混合物はクロマトグラフィーによりそのシス異性体及びトランス異性体に分割されてもよく、ラセミ体として生じる得られた一般式Iの化合物はそれ自体知られている方法(Allinger N. L. 及びEliel E. L. 著“Topics in Stereochemistry”, Vol. 6, Wiley Interscience, 1971を参照のこと)によりそれらの光学鏡像体に分離されてもよく、また少なくとも2個の不斉炭素原子を有する一般式Iの化合物はそれ自体知られている方法を使用して、例えば、クロマトグラフィー及び/又は分別結晶化によりそれらの物理的−化学的相違に基づいてそれらのジアステレオマーに分割されてもよく、これらの化合物がラセミ形態で得られる場合には、それらが続いて上記のように鏡像体に分割されてもよい。
鏡像体はキラル相によるカラム分離もしくは光学活性溶媒からの再結晶により、又は光学活性物質(これはラセミ化合物と塩又は誘導体、例えば、エステル又はアミドを生成する)、特に酸及びその活性化誘導体またはアルコールと反応させ、こうして得られたジアステレオマー塩混合物又は誘導体を、例えば、それらの溶解性の相違に基づいて分離することにより分離されることが好ましく、一方、遊離鏡像体は好適な薬剤の作用により純粋なジアステレオマー塩又は誘導体から放出し得る。普通使用される光学活性酸は、例えば、酒石酸又はジベンゾイル酒石酸、ジ-p-トルオイル酒石酸、リンゴ酸、マンデル酸、ショウノウスルホン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸又はキナ酸のD-形態及びL-形態である。光学活性アルコールは、例えば、(+)-メントール又は(-)-メントールであってもよく、またアミド中の光学活性アシル基は、例えば、(+)-又は(-)-メンチルオキシカルボニルであってもよい。
【0019】
更に、式Iの化合物は無機酸又は有機酸とのそれらの塩、特に医薬用のためにそれらの生理学上許される塩に変換し得る。この目的に使用し得る酸として、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、メタンスルホン酸、リン酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、クエン酸、酒石酸又はマレイン酸が挙げられる。
更に、こうして得られた式Iの新規化合物がカルボキシ基を含む場合、それらは続いて、所望により、無機塩基もしくは有機塩基との塩、特別には、医薬用のために、それらの生理学上許される塩に変換し得る。この目的に適した塩基として、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、シクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンが挙げられる。
出発物質として使用される一般式II〜VIの化合物は文献から知られており、又は文献から知られている方法により得られてもよい(例I〜VIIIを参照のこと)。
既に前記されたように、本発明の一般式Iの化合物及びこれらの生理学上許される塩は有益な薬理学的性質、特にグルカゴン受容体に関する抑制効果を有する。
【0020】
新規化合物の生物学的性質を以下のように調べた。
グルカゴン結合アッセイ
グルカゴン受容体への本発明の式Iの化合物の結合を置換結合アッセイ(これは組換えヒトグルカゴン受容体を含む膜フラクションからの放射能標識グルカゴンの置換に基づく)で測定した。ヒトグルカゴン受容体をコードするcDNAを発現ベクターpcDNA3.1(インビトロゲン)にクローニングした。BHK-21細胞(乳児ハムスター腎臓C-13細胞、ATCC)をこの構築物でトランスフェクトし、安定な細胞クローンをG-418(ギブコ)による処理により選択し、分離した。
組換えヒトグルカゴン受容体を含む膜フラクションを下記の工程によりこのクローンから調製した:集密まで増殖している細胞を0.05%のEDTAを含む氷冷PBS緩衝液(ギブコ)を使用して脱着し、懸濁させた。遠心分離後に、ペレットを緩衝液(10mM Tris/HCl, pH 7.2; 0.01mM PMSF(フェニルメチルスルホニルフルオリド))中で懸濁させ、4℃で90分間インキュベートした。溶解産物をホモジナイザー(ドウンス)で処理した後に、細胞核及びその他の細胞成分を500gで10分間遠心分離することにより分離した。次いで上澄みを100,000gで35分間遠心分離して膜をペレットにした。沈殿した膜をインキュベーション緩衝液(50mM Tris/HCl, pH 7.2; 100mM NaCl; 5mM MgCl2; 1mM EDTA; 0.2%BSA(ウシ血清アルブミン))中で懸濁させ、アリコートにし、-80℃で貯蔵した。
膜フラクション20μg、50.00cpmの125I-グルカゴン(アメーシャム・ファーマシア)及び或る濃度の試験物質をミクロタイタ・プレート(オプチプレート、パッカード・インストルメンツ)中でインキュベーション緩衝液中で100μlの容積で60分間にわたって20℃でインキュベートすることによりグルカゴンの置換を測定した。結合されたラジオリガンドをマルチスクリーン真空濾過系(ミリポア)でGC/Bフィルター(パッカード)を使用して濾過及び洗浄により遊離リガンドから分離した。トップカウント・シンチレーション・カウンター(パッカード)を使用して測定を行なった。1μMの未標識グルカゴン(ホエールGmbH)の存在下の結合を非特異的と定義した。試験物質の存在下の結合活性の%を測定するようにデータを分析した。結果をIC50値として計算した。実施例1〜25にリストされた化合物は10μM以下のIC50値を示す。
【0021】
本発明のグルカゴン受容体アンタゴニストは経口経路、経皮経路、吸入経路又は非経口経路により投与されてもよい。本発明の化合物は通常の製剤、例えば、実質的に不活性医薬担体及び有効用量の活性物質からなる組成物、例えば、錠剤、被覆錠剤、カプセル、ロゼンジ、粉末、溶液、懸濁液、エマルション、シロップ、座薬、経皮系等中で活性成分として存在する。本発明の化合物の有効用量は経口投与について投薬当り1〜100mg、好ましくは1〜50mg、最も好ましくは5-30mgであり、また静脈内投与又は筋肉内投与について投薬当り0.001〜50mg、好ましくは0.1〜10mgである。吸入について、本発明によれば、0.01〜1.0%、好ましくは0.1〜0.5%の活性物質を含む溶液が好適である。吸入による投与について、粉末の使用が好ましい。また、本発明の化合物を、好ましくは生理食塩水溶液又は栄養食塩水溶液中の、注入のための溶液として使用することが可能である。
本発明の化合物はそれら自体で使用されてもよく、又は本発明のその他の活性物質と連係して、また必要によりアカルボース、ベラプロスト、ベキサロテン、カプトプリル、デニロイキン、ジフチトックス、エタネルセプト、ファルグリタザル、フィダレスタット、グリベンクラミド、グリボルヌリド、グリクラジド、グリメピリド、グリピジド、グルカゴン、イロマスタット、イミダプリル、インスリン、ランレオチド、リノグリリド、リシノプリル、メトフォルミン、メキシレチン、ミグリトール、ミナルレスタット、ミチグリニド、モキソニジン、ナファグレル、ナテグリニド、オクトレオチド、オルリスタット、オクスカルバゼピン、ペグビソマント、ピオグリタゾン、ポナルレスタット、プラムリンチド、ラミプリル、レパグリニド、ロシグリタゾン、シロリムス、ソルビニル、トルレスタット、トログリタゾン、ボグリボース、ゼナレスタット及びゾポルレスタットの中から選ばれたその他の薬理学的活性物質と連係して使用されてもよい。
【0022】
好適な製剤として、例えば、錠剤、カプセル、座薬、溶液、エリキシル剤、エマルション又は分散性粉末が挙げられる。好適な錠剤は、例えば、一種以上の活性物質を既知の賦形剤、例えば、不活性希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はラクトース、崩壊剤、例えば、トウモロコシ澱粉又はアルギン酸、結合剤、例えば、澱粉又はゼラチン、滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム又はタルク及び/又は放出を遅延するための薬剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、又はポリ酢酸ビニルと混合することにより得られてもよい。錠剤はまた数層を含んでもよい。
被覆錠剤は従って錠剤と同様にして製造されたコアーを錠剤被覆に通常使用される物質、例えば、コリドンもしくはセラック、アラビアガム、タルク、二酸化チタン又は糖で被覆することにより調製されてもよい。遅延放出を得、又は不適合性を防止するために、コアーはまた幾つかの層からなってもよい。好適には、錠剤被覆物は、おそらく錠剤について上記された賦形剤を使用して、遅延放出を得るために幾つかの層からなってもよい。
本発明の活性物質又はこれらの組み合わせを含むシロップは甘味料、例えば、サッカリン、シクラメート、グリセロール又は糖及び風味増強剤、例えば、風味料、例えば、バニリン又はオレンジエキスを更に含んでもよい。それらはまた懸濁アジュバント又は増粘剤、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、湿潤剤、例えば、脂肪アルコールとエチレンオキサイドの縮合生成物、又は防腐剤、例えば、p-ヒドロキシベンゾエートを含んでもよい。
注射用の溶液は通常の方法で、例えば、防腐剤、例えば、p-ヒドロキシベンゾエート、又は安定剤、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸のアルカリ金属塩の添加により調製され、注射バイアル又はアンプルに移される。
一種以上の活性物質又は活性物質の組み合わせを含むカプセルは、例えば、活性物質を不活性担体、例えば、ラクトース又はソルビトールと混合し、それらをゼラチンカプセルに詰めることにより調製されてもよい。
好適な座薬は、例えば、この目的に用意された担体、例えば、中性脂肪又はポリエチレングリコールもしくはその誘導体と混合することによりつくられてもよい。
毎日の治療有効用量は成人当り1〜800mg、好ましくは10-300mgである。
以下の実施例は本発明を説明するが、その範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0023】
使用した略号:
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
出発化合物の調製
例I
2-アミノ-3-シアノ-4-トリフルオロメチル-5-(2,5-ジメチルフェニル)-チオフェン
a. 4,4,4-トリフルオロ-2-(2,5-ジメチルフェニル)-3-オキソ-ブチロニトリル
2,5-ジメチルフェニルアセトニトリル26.1g(145ミリモル)をエタノールに溶解し、カリウムtert-ブトキシド20.2g(112ミリモル)と合わせる。30分間撹拌した後、トリフルオロ酢酸エチル21.4g(142ミリモル)を滴下して添加する。次いでその混合物を4時間還流する。その反応溶液から真空で溶媒を除く。残渣を水と合わせ、エーテルで洗浄する。水相を濃塩酸で酸性にし、エーテルで抽出する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させる。
収量:34g(理論値の78%)
C12H10F3NO(241.21)
質量スペクトル:(M-H)-=240
b. 1,1,1-トリフルオロ-3-(2,5-ジメチルフェニル)-プロパン-2-オン
4,4,4-トリフルオロ-2-(2,5-ジメチルフェニル)-3-オキソ-ブチロニトリル34g(241ミリモル)を氷酢酸80mlに溶解し、60%の硫酸40mlと合わせる。次いでその混合物を30時間還流する。その反応溶液が冷却した後、氷酢酸を蒸留して除き、残渣を水と合わせ、エーテルで抽出する。有機相を水、10%の炭酸ナトリウム溶液及び水で洗浄する。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、有機相を蒸発、乾燥させる。残渣を真空で蒸留する。
収量:21.3g(理論値の70%)
C11H11F3O(216.20)
c. 2-アミノ-3-シアノ-4-トリフルオロ-5-(2,5-ジメチルフェニル)-チオフェン
1,1,1-トリフルオロ-3-(2,5-ジメチルフェニル)-プロパン-2-オン21.3g(99ミリモル)をエタノール70mlに溶解し、マロン酸ジニトリル6.54g(99ミリモル)、硫黄3.17g(99ミリモル)及びN-メチルモルホリン11ml(100ミリモル)と合わせる。次いでその混合物をマイクロウェーブ(CEMディスカバリー)中で30分間にわたって200ワットで120℃に加熱する。次いで溶媒を蒸留して除き、残渣をシリカゲルでクロマトグラフィーにかける(トルエン/酢酸エチル=9:1)。生成物を石油エーテル/酢酸エチルから結晶化する。
収量:8g(理論値の27%)
C14H11F3N2S(296.31)
質量スペクトル:(M+H)+=297
【0024】
例II
2-アミノ-3-シアノ-5-(2,5-ジメチルフェニル)-チオフェン
例Iと同様にしてDMF中の(2,5-ジメチルフェニル)-アセトアルデヒド、マロン酸ジニトリル、硫黄及びトリエチルアミンの反応により調製した。
C13H12N2S(228.31)
質量スペクトル:(M+H)+=229
例III
2-アミノ-3-シアノ-4-トリフルオロ-5-フェニル-チオフェン
例Iと同様にしてグリコール中の1,1,1-トリフルオロ-3-フェニル-プロパン-2-オン、マロン酸ジニトリル、硫黄及びN-メチルモルホリンの反応により調製した。
C12H7F3N2S(268.26)
融点:172℃
質量スペクトル:(M-H)-=267
【0025】
例IV
2-アミノ-4-ブロモ-3-シアノ-5-(2,5-ジメチルフェニル)-チオフェン
a. 4,5-ジブロモ-3-シアノ-2-ニトロチオフェン
3,4,5-トリブロモ-2-ニトロチオフェン4.00g(10.9ミリモル)及びシアン化銅(I)1.38g(15.4ミリモル)をDMF10mlに溶解し、90℃で43時間撹拌する。次いで溶媒を真空で除き、残渣を水100ml及び酢酸エチル100mlと合わせる。相を分離し、水相を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機相を水及び飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターを使用して濃縮する。残渣をシリカゲルでクロマトグラフィーにかける(石油エーテル/酢酸エチル=4:1)
収量:370mg(理論値の11%)
C5Br2N2O2S(311.94)
Rf=0.30(シリカゲル;石油エーテル/酢酸エチル=9:1)
b. 4-ブロモ-3-シアノ-5-(2,5-ジメチルフェニル)-2-ニトロチオフェン
2,5-ジメチルフェニルホウ酸50mg(0.33ミリモル)及び〔1,1'-ビス-(ジフェニルホスフィノ)-フェロセン〕-パラジウム(II)-クロリド20mg(0.027ミリモル)をジオキサン2ml中の4,5-ジブロモ-3-シアノ-2-ニトロチオフェン100mg(0.32ミリモル)の溶液に添加する。その反応混合物を周囲温度で30時間撹拌し、次いで水50ml及び酢酸エチル50mlと合わせる。相を分離し、水相を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターを使用して濃縮する。
収量:55mg(理論値の51%)
C13H9BrN2O2S(337.19)
Rf=0.64(シリカゲル;石油エーテル/酢酸エチル=4:1)
c. 2-アミノ-4-ブロモ-3-シアノ-5-(2,5-ジメチルフェニル)-チオフェン
塩化チタン(III)(20-30%の塩酸中10%)1.6ml(1.2ミリモル)を周囲温度でアセトン10ml中の4-ブロモ-3-シアノ-5-(2,5-ジメチルフェニル)-2-ニトロチオフェン50mg(0.15ミリモル)の溶液に添加する。その反応混合物を周囲温度で1時間撹拌し、次いで10%の水酸化ナトリウム溶液で塩基性にする。水相を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターを使用して濃縮する。
収量:27mg(理論値の59%)
C13H11BrN2S(307.21)
質量スペクトル:(M+H)+=309, 307
Rf=0.38(シリカゲル;石油エーテル/酢酸エチル=4:1)
【0026】
例V
2-アミノ-5-(3-クロロプロピル)-3-シアノチオフェン
窒素雰囲気下で、5-クロロペンタナール5.0g(24.9ミリモル)をマロン酸ジニトリル1.64g(24.9ミリモル)に溶解し、酸化アルミニウム(塩基性、活性度I)7.43g(72.8ミリモル)と合わせ、周囲温度で20分間撹拌する。次いでジクロロメタンを添加し、固体を吸引濾過により分離する。濾液を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を除く。こうして得られた粗生成物をエタノール5.5mlに溶解し、硫黄750mg(23.4ミリモル)と合わせる。周囲温度でジエチルアミン1.44ml(13.9ミリモル)を滴下して添加する。次いでその反応溶液を35℃で16時間撹拌する。次いで溶媒を真空で除く。残渣をシリカゲルでクロマトグラフィーにかける(石油エーテル/酢酸エチル=80:20→63:37)。
収量:781mg(理論値の18%)
C8H9ClN2S(200.70)
Rf値:0.4(シリカゲル;石油エーテル/酢酸エチル=2:1)
例VI
2-アミノ-5-(3-クロロプロピル)-3-シアノ-4-メチルチオフェン
例Iと同様にしてエタノール中で6-クロロヘキサン-2-オン、マロン酸ジニトリル、硫黄及びジエチルアミンから調製した。
収率:理論値の26%
C9H11ClN2S(214.72)
質量スペクトル:(M+H)+=217, 215
Rf値:0.7(シリカゲル;石油エーテル/酢酸エチル=1:1)
【0027】
例VII
2-アミノ-3-シアノ-5-フェニルチオフェン
例Iと同様にしてエタノール中でフェニルアセトアルデヒド、マロン酸ジニトリル、硫黄及びN-メチルモルホリンから調製した。
融点:177-178℃
Rf値:0.34(シリカゲル;トルエン/酢酸エチル=4:1)
例VIII
2-アミノ-3-シアノ-4-メトキシ-5-プロピルチオフェン
2-(1-メトキシ-ペンチリデン)-マロン酸ジニトリル6.00g(36.5ミリモル)をメタノール7.5mlに溶解し、硫黄1.20g(37.4ミリモル)及びN-メチルモルホリン4.02ml(36.5ミリモル)と合わせる。その反応溶液をマイクロウェーブ反応器中で15分間にわたって110℃に加熱する。次いで溶媒を真空で除き、残渣をシリカゲルでクロマトグラフィーにかける(トルエン/酢酸エチル=96:4)。
収量:0.68g(理論値の10%)
C9H12N2OS(196.27)
質量スペクトル:(M+H)+=197
【0028】
最終生成物の調製
実施例1〜8についての一般調製方法
相当するノルボルナン-、ノルボルネン-又はビシクロ〔2.2.2〕オクタン-カルボン酸1ミリモルをジクロロメタン5mlに溶解し、塩化オキサリル0.3mlと合わせ、周囲温度で1時間撹拌する。次いでその混合物を残渣にまで蒸発させる。相当する酸塩化物を5℃に冷却したジクロロメタン5ml中の2-アミノ-3-シアノ-4-トリフルオロメチル-5-(2,5-ジメチルフェニル)-チオフェン(例I)0.3g(1ミリモル)及びピリジン0.24ml(3ミリモル)の溶液に滴下して添加する。その反応溶液を周囲温度で12時間撹拌し、ジクロロメタンで希釈し、1N塩酸で2回洗浄する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発、乾燥させる。残渣をシリカゲルでクロマトグラフィーにかける(シクロヘキサン/酢酸エチル=9:1)。
【0029】
【化7】


































【0030】
【化8】

【0031】
実施例9
2-〔(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-イルカルボニルアミノ〕-3-シアノ-5-(2,5-ジメチルフェニル)-チオフェン
【0032】
【化9】

【0033】
実施例1-8と同様にして(+)-(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-2-カルボン酸及び2-アミノ-3-シアノ-5-(2,5-ジメチル-フェニル)-チオフェン(例I)から調製した。
収率:理論値の35%
C21H22N2OS(350.49)
融点:168-169℃
Rf値:0.59(シリカゲル;トルエン/酢酸エチル=4:1)
実施例10
2-〔(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-イルカルボニルアミノ〕-4-クロロ-3-シアノ-5-(2,5-ジメチル-フェニル)-チオフェン
【0034】
【化10】

【0035】
2-〔(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-イルカルボニルアミノ〕-3-シアノ-5-(2,5-ジメチルフェニル)-チオフェン(実施例9)0.5g(1.4ミリモル)を70℃で氷酢酸30mlに溶解し、N-クロロスクシンイミド0.22g(1.6ミリモル)を添加する。その反応溶液を70℃で2時間撹拌する。冷却後、その混合物を水で100mlにし、酢酸エチルで3回抽出する。有機相を10%の炭酸ナトリウム溶液で2回洗浄し、2回水洗し、次いで残渣にまで蒸発させる。残渣をシリカゲルでクロマトグラフィーにかけ(シクロヘキサン/酢酸エチル=9:1)、精製された生成物をメタノールから結晶化する。
収量:0.1g(理論値の18%)
C21H21ClN2OS(384.92)
融点:117-119℃
質量スペクトル:(M-H)-=385, 383
Rf値:0.69(シリカゲル;トルエン/酢酸エチル=4:1)
実施例11
2-〔(2R)-ビシクロ〔2.2.2〕オクト-2-イルカルボニルアミノ〕-4-クロロ-3-シアノ-5-(2,5-ジメチルフェニル)-チオフェン






【0036】
【化11】

【0037】
実施例10と同様にして2-〔(R)-ビシクロ〔2.2.2〕オクト-2-イルカルボニルアミノ〕-3-シアノ-5-(2,5-ジメチル-フェニル)-チオフェンから調製した。
収率:理論値の36%
C22H23ClN2OS(398.95)
融点:208-210℃
質量スペクトル:(M+H)+=401, 399
実施例12
4-クロロ-3-シアノ-2-(シクロヘキシルカルボニルアミノ)-5-フェニル-チオフェン
【0038】
【化12】

【0039】
a. 3-シアノ-2-(シクロヘキシルカルボニルアミノ)-5-フェニルチオフェン
実施例1-8と同様にしてピリジン中で2-アミノ-3-シアノ-5-フェニルチオフェン(例VII)及びシクロヘキサンカルボン酸クロリドから調製した。
収率:理論値の81%
C18H18N2OS(310.41)
融点:208-210℃
b. 4-クロロ-3-シアノ-2-(シクロヘキシルカルボニルアミノ)-5-フェニルチオフェン
実施例10と同様にして3-シアノ-2-(シクロヘキシルカルボニルアミノ)-5-フェニルチオフェンから調製した。
収率:理論値の29%
C18H17ClN2OS(344.86)
融点:175-180℃
質量スペクトル:(M-H)-=345, 343
実施例13
4-ブロモ-3-シアノ-2-(シクロヘキシルカルボニルアミノ)-5-フェニル-チオフェン
【0040】
【化13】

【0041】
3-シアノ-2-(シクロヘキシルカルボニルアミノ)-5-フェニル-チオフェン(実施例12a)1.1g(4ミリモル)を50℃で氷酢酸5ml中で懸濁させ、10分以内にN-ブロモスクシンイミド0.62g(4ミリモル)と合わせる。この温度で更に2時間撹拌し、続いて冷却した後、結晶を吸引濾過し、氷酢酸で洗浄する。
収量:300mg(理論値の22%)
C18H17BrN2OS(389.31)
融点:167-168℃
質量スペクトル:(M+H)+=391, 389
実施例14
3,4-ジシアノ-2-(シクロヘキシルカルボニルアミノ)-5-フェニル-チオフェン
【0042】
【化14】

【0043】
4-ブロモ-3-シアノ-2-(シクロヘキシルカルボニルアミノ)-5-フェニル-チオフェン(実施例13)0.75g(1.9ミリモル)及びシアン化銅(I)0.26g(2.9ミリモル)を無水DMF5ml中で12時間還流する。冷却後、その反応混合物を蒸発させ、残渣をシリカゲルでクロマトグラフィーにかける(シクロヘキサン/酢酸エチル=95:5)。精製した生成物をジクロロメタンに溶解し、若干のメタノールを添加し、ジクロロメタンを蒸留により除く。生成した沈殿を吸引濾過する。
収量:0.29g(理論値の45%)
C19H17N3OS(335.42)
融点:208-212℃
質量スペクトル:(M+H)+=336
Rf値:0.51(シリカゲル;トルエン/酢酸エチル=4:1)
実施例15
3-シアノ-2-(シクロヘキシルカルボニルアミノ)-4-ニトロ-5-フェニル-チオフェン
【0044】
【化15】

【0045】
3-シアノ-2-(シクロヘキシルカルボニルアミノ)-5-フェニルチオフェン(実施例12a)1g(3ミリモル)を無水酢酸80mlに入れる。5℃で、60%の硝酸4mlを徐々に滴下して添加する。この温度で10分間撹拌した後、その溶液を周囲温度に加熱し、更に2時間撹拌する。その反応混合物を氷10mlに添加し、撹拌する。次いで相を分離する。水相をジクロロメタンで抽出する。合わせた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させる。残渣をメタノール及びジクロロメタンと合わせ、ジクロロメタンを蒸留して除き、生成した沈殿を吸引濾過する。
収量:0.1g(理論値の9%)
C18H17N3O3S(355.41)
融点:213-214℃
質量スペクトル:(M-H)-=354
Rf値:0.63(シリカゲル;トルエン/酢酸エチル=4:1)
実施例16
3-シアノ-2-(シクロヘキシルカルボニルアミノ)-4-メトキシ-5-プロピル-チオフェン
【0046】
【化16】

【0047】
2-アミノ-3-シアノ-4-メトキシ-5-プロピルチオフェン(例VIII)0.68g(3.5ミリモル)及びピリジン0.84ml(10.4ミリモル)をジクロロメタン25mlに溶解する。10分以内に、ジクロロメタン5ml中のシクロヘキサンカルボン酸クロリド0.48mlを10℃で滴下して添加する。その溶液を周囲温度で12時間撹拌し、希塩酸及び水で抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させる。残渣をシリカゲルでクロマトグラフィーにかける(トルエン/酢酸エチル=95:5)。単離した生成物をジイソプロピルエーテルから再結晶する。
収量:0.32g(理論値の30%)
C16H22N2O2S(306.42)
融点:146-147℃
質量スペクトル:(M+H)+=307
実施例17
2-〔(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-イルカルボニルアミノ〕-4-ブロモ-3-シアノ-5-(2,5-ジメチル-フェニル)-チオフェン
【0048】
【化17】

【0049】
実施例1-8と同様にして2-アミノ-4-ブロモ-3-シアノ-5-(2,5-ジメチルフェニル)-チオフェン(例IV)及び(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-2-カルボン酸クロリドから調製した。
収率:理論値の63%
C21H21BrN2OS(429.37)
質量スペクトル:(M+H)+=431, 429
Rf値:0.72(シリカゲル;石油エーテル/酢酸エチル=4:1)
実施例18
2-〔(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-イルカルボニルアミノ〕-4-ブロモ-3-シアノ-5-{3-〔メチル-(4-メチルフェニル)-アミノ〕-プロピル}-チオフェン塩酸塩
【0050】
【化18】

【0051】
a. 2-〔(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-イルカルボニルアミノ〕-5-(3-クロロプロピル)-3-シアノ-チオフェン
実施例1-8と同様にして2-アミノ-5-(3-クロロプロピル)-3-シアノ-チオフェン(例V)及び(1S,SR,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-2-カルボン酸クロリドから調製した。
収率:理論値の48%
C16H19ClN2OS(322.85)
質量スペクトル:(M+H)+=325, 323
Rf値:0.58(シリカゲル;石油エーテル/酢酸エチル=3:1)
b. 2-〔(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-イルカルボニルアミノ〕-4-ブロモ-5-(3-クロロプロピル)-3-シアノ-チオフェン
ジクロロメタン0.4ml中の2-〔(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-イルカルボニルアミノ〕-5-(3-クロロプロピル)-3-シアノ-チオフェン100mg(0.31ミリモル)の溶液を無水塩化アルミニウム82mg(0.62ミリモル)と合わせる。次いで臭素18μl(0.34ミリモル)を添加する。その混合物を3時間還流する。次いで塩化アルミニウム更に50mg(0.38ミリモル)及び臭素10μl(0.19ミリモル)を添加する。その混合物を周囲温度で16時間撹拌し、再度2時間還流する。次いでその反応溶液を5%の重亜硫酸ナトリウム溶液に注ぐ。その混合物を酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させる。溶媒の除去後に得られた粗生成物(110mg)を更に直ぐに反応させる。
c. 2-〔(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-イルカルボニルアミノ〕-4-ブロモ-3-シアノ-5-{3-〔メチル-(4-メチルフェニル)-アミノ〕-プロピル}-チオフェン塩酸塩
2-〔(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-イルカルボニルアミノ〕-4-ブロモ-5-(3-クロロプロピル)-3-シアノ-チオフェン110mg(0.271ミリモル)をN-メチル-p-トルイジン0.6ml(4.6ミリモル)と合わせ、マイクロウェーブ反応器中で45分間にわたって160℃に加熱する。次いで2N塩酸2.5ml及び水5mlを添加する。その反応溶液を酢酸エチルで抽出する。有機相を水、2Nソーダ溶液、水及び飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させる。溶媒の除去後に得られた残渣を分取HPLC(アギレント)により精製する。
収量:13mg(2工程にわたって理論値の9%)
C24H28BrN3OS x HCl(522.93)
質量スペクトル:(M+H)+=488, 486
実施例19
2-〔(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-イルカルボニルアミノ〕-3,4-ジシアノ-5-{3-〔メチル-(4-メチルフェニル)-アミノ〕-プロピル}-チオフェン塩酸塩
【0052】
【化19】

【0053】
実施例14と同様にしてDMF中で2-〔(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-イルカルボニルアミノ〕-4-ブロモ-3-シアノ-5-{3-〔メチル-(4-メチルフェニル)-アミノ〕-プロピル}-チオフェン塩酸塩(実施例18)及びシアン化銅(I)から調製した。
収率:理論値の16%
C25H28N4OS x HCl(469.04)
質量スペクトル:(M+H)+=433
実施例20
2-〔(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-イルカルボニルアミノ〕-5-(3-クロロプロピル)-3-シアノ-4-メチルチオフェン
【0054】
【化20】

【0055】
実施例1-8と同様にして2-アミノ-5-(3-クロロプロピル)-3-シアノ-5-メチルチオフェン(例VI)及び(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-2-カルボン酸クロリドから調製した。
収率:理論値の43%
C17H21ClN2OS(336.88)
質量スペクトル:(M+H)+=339, 337
Rf値:0.46(シリカゲル;石油エーテル/酢酸エチル=4:1)
実施例21
2-〔(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-イルカルボニルアミノ〕-3-シアノ-4-メチル-5-{3-〔メチル-(4-メチルフェニル)-アミノ〕-プロピル}-チオフェン塩酸塩
【0056】
【化21】

【0057】
実施例18cと同様にして2-〔(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-イルカルボニルアミノ〕-5-(3-クロロプロピル)-3-シアノ-4-メチルチオフェン(実施例20)及びN-メチル-p-トルイジンから調製した。
収率:理論値の48%
C25H31N3OS x HCl(458.06)
融点:116-129℃(分解)
質量スペクトル:(M+H)+=422
実施例22
2-〔(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-イルカルボニルアミノ〕-3-シアノ-4-メチル-5-{3-〔メチル-(2-ピリジル)-アミノ〕-プロピル}-チオフェン二塩酸塩
【0058】
【化22】

【0059】
実施例18cと同様にして2-〔(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-イルカルボニルアミノ〕-5-(3-クロロプロピル)-3-シアノ-4-メチルチオフェン(実施例20)及び2-(メチルアミノ)-ピリジンから調製した。
収率:理論値の12%
C23H28N4OS x 2HCl(481.48)
質量スペクトル:(M+H)+=409
実施例23
2-〔ビシクロ〔2.2.2〕オクト-2-イルカルボニルアミノ〕-5-(3-クロロプロピル)-3-シアノ-4-メチルチオフェン
【0060】
【化23】

【0061】
実施例1-8と同様にして2-アミノ-5-(3-クロロプロピル)-3-シアノ-4-メチルチオフェン(例VI)及びビシクロ〔2.2.2〕オクタン-2-カルボン酸クロリドから調製した。
収率:理論値の82%
C18H23ClN2OS(350.91)
質量スペクトル:(M+H)+=353, 351
Rf値:0.56(シリカゲル;石油エーテル/酢酸エチル=4:1)
実施例24
2-(ビシクロ〔2.2.2〕オクト-2-イルカルボニルアミノ)-3-シアノ-4-メチル-5-{3-〔メチル-(4-メチルフェニル)-アミノ〕-プロピル}-チオフェン塩酸塩
【0062】
【化24】

【0063】
実施例18cと同様にして2-(ビシクロ〔2.2.2〕オクト-2-イルカルボニルアミノ)-5-(3-クロロプロピル)-3-シアノ-4-メチルチオフェン(実施例23)及びN-メチル-p-トルイジンから調製した。
収率:理論値の47%
C26H33N3OS x HCl(472.09)
融点:133-140℃(125℃から強い焼結)
質量スペクトル:(M+H)+=436
実施例25
2-(ビシクロ〔2.2.2〕オクト-2-イルカルボニルアミノ)-3-シアノ-4-メチル-5-{3-〔メチル-(2-ピリジル)-アミノ〕-プロピル}-チオフェン二塩酸塩
【0064】
【化25】

【0065】
a. 2-(ビシクロ〔2.2.2〕オクト-2-イルカルボニルアミノ)-3-シアノ-4-メチル-5-〔3-(N-メチル-アリル-アミノ)-プロピル〕-チオフェン
実施例18cと同様にして2-(ビシクロ〔2.2.2〕オクト-2-イルカルボニルアミノ)-5-(3-クロロプロピル)-3-シアノ-4-メチルチオフェン(実施例23)及びN-メチル-アリルアミンから調製した。
収率:理論値の98%
C22H31N3OS(385.57)
質量スペクトル:(M+H)+=386
b. 2-(ビシクロ〔2.2.2〕オクト-2-イルカルボニルアミノ)-3-シアノ-4-メチル-5-(3-メチルアミノ-プロピル)-チオフェン
1,3-ジメチルバルビツール酸696mg(4.46ミリモル)及びテトラキス-(トリフェニルホスフィン)-パラジウム(0)17mg(0.015ミリモル)を窒素雰囲気下でジクロロメタン3.5ml中の2-(ビシクロ〔2.2.2〕オクト-2-イルカルボニルアミノ)-3-シアノ-4-メチル-5-〔3-(N-メチル-アリルアミノ)-プロピル〕-チオフェン573mg(1.49ミリモル)の溶液に添加する。その反応混合物を16時間にわたって35-40℃に加熱する。次いで溶媒を真空で除き、残渣を飽和炭酸ナトリウム溶液に吸収させる。その混合物をエーテル/ジクロロメタンで抽出し、有機相を飽和食塩水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を真空で除く。こうして得られた粗生成物(560mg)を更に直ちに反応させる。
C19H27N3OS(345.50)
質量スペクトル:(M+H)+=346
c. 2-(ビシクロ〔2.2.2〕オクト-2-イルカルボニルアミノ)-3-シアノ-4-メチル-5-{3-〔メチル-(2-ピリジル)-アミノ〕-プロピル}-チオフェン二塩酸塩
2-(ビシクロ〔2.2.2〕オクト-2-イルカルボニルアミノ)-3-シアノ-4-メチル-5-(3-メチルアミノ-プロピル)-チオフェン200mg(0.579ミリモル)を窒素雰囲気下でDMF1.5mlに溶解し、2-ブロモピリジン0.17ml(1.78ミリモル)及び炭酸カリウム160mg(1.16ミリモル)と合わせる。その混合物をマイクロウェーブ中で60分間にわたって100℃に加熱する。2-ブロモピリジン更に0.1ml(1.05ミリモル)の添加後に、その混合物を再度マイクロウェーブ中で6時間にわたって130℃に加熱する。濾過して不溶性物質を除去した後に、溶媒を真空で除き、残渣を分取HPLC(アギレント、RP相)により精製する。
収量:59mg(理論値の21%)
C24H30N4OS x 2HCl(495.51)
融点:>80℃(分解)
質量スペクトル:(M+H)+=423
【0066】
実施例26
錠剤 錠剤当り
式Iの活性物質 100mg
ラクトース 140mg
トウモロコシ澱粉 240mg
ポリビニルピロリドン 15mg
ステアリン酸マグネシウム 5mg
500mg
微細に粉砕された活性物質、ラクトース及びトウモロコシ澱粉の一部を一緒に混合する。その混合物を篩分け、次いで水中のポリビニルピロリドンの溶液で湿らせ、混錬し、湿式造粒し、乾燥させる。その顆粒、残りのトウモロコシ澱粉及びステアリン酸マグネシウムを篩分け、一緒に混合する。その混合物を圧縮して好適な形状及びサイズの錠剤を製造する。
【0067】
実施例27
錠剤 錠剤当り
式IAの活性物質 80mg
トウモロコシ澱粉 190mg
ラクトース 55mg
微結晶性セルロース 35mg
ポリビニルピロリドン 15mg
ナトリウム-カルボキシメチル澱粉 23mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
400mg
微細に粉砕された活性物質、トウモロコシ澱粉の一部、ラクトース、微結晶性セルロース及びポリビニルピロリドンを一緒に混合し、その混合物を篩分け、残りのトウモロコシ澱粉及び水で処理して顆粒を得、これを乾燥させ、篩分ける。ナトリウム-カルボキシメチル澱粉及びステアリン酸マグネシウムを添加し、混合し、その混合物を圧縮して好適なサイズの錠剤を形成する。
実施例28
被覆錠剤 被覆錠剤当り
式IAの活性物質 5mg
トウモロコシ澱粉 41.5mg
ラクトース 30mg
ポリビニルピロリドン 3mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5mg
80mg
活性物質、トウモロコシ澱粉、ラクトース及びポリビニルピロリドンを充分に混合し、水で湿らせる。その湿った塊を1mmのメッシュサイズを有する篩に押しやり、約45℃で乾燥させ、次いで顆粒を同篩に通す。ステアリン酸マグネシウムを混入した後、6mmの直径を有する凸形錠剤コアーを錠剤製造機中で圧縮する。こうして製造した錠剤コアーを既知の様式で実質的に糖及びタルクからなる被覆物で被覆する。完成被覆錠剤をワックスで磨く。
【0068】
実施例29
カプセル カプセル当り
式IAの活性物質 50mg
トウモロコシ澱粉 268.5mg
ステアリン酸マグネシウム 1.5mg
320mg
その物質及びトウモロコシ澱粉を混合し、水で湿らせる。その湿った塊を篩分け、乾燥させる。乾燥した顆粒を篩分け、ステアリン酸マグネシウムと混合する。完成混合物をサイズ1硬質ゼラチンカプセルに詰める。
【0069】
実施例30
アンプル溶液
式IAの活性物質 50mg
塩化ナトリウム 50mg
注射用の水 5ml
活性物質をそれ自体のpH又は必要によりpH5.5〜6.5で水に溶解し、塩化ナトリウムを添加してそれを等張にする。得られた溶液を濾過して発熱物質を除き、濾液を無菌条件下でアンプルに移し、次いでこれらを滅菌し、融着によりシールする。アンプルは活性物質5mg、25mg及び50mgを含む。
実施例31
座薬
活性物質 50mg
固体脂肪 1650mg
1700mg
硬質脂肪を融解する。40℃で粉砕された活性物質をその中に均一に分散させる。それを38℃に冷却し、わずかに冷却した座薬金型に注入する。
【0070】
実施例32
活性物質75mgを含む被覆錠剤
1個の錠剤コアーは下記の成分を含む。
活性物質 75.0mg
リン酸カルシウム 93.0mg
トウモロコシ澱粉 35.5mg
ポリビニルピロリドン 10.0mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 15.0mg
ステアリン酸マグネシウム 1.5mg
230.0mg
調製
活性物質をリン酸カルシウム、トウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び明記された量の半分のステアリン酸マグネシウムと混合する。直径約13mmのブランクを錠剤製造機中で製造し、次いで好適な機械を使用してこれらを1.5mmのメッシュサイズを有する篩によりこすり、残りのステアリン酸マグネシウムと混合する。この顆粒を錠剤製造機中で圧縮して所望の形状の錠剤を形成する。
コアーの重量:230mg
ダイ:9mm、凸形
こうして製造した錠剤コアーを実質的にヒドロキシプロピルメチルセルロースからなるフィルムで被覆する。完成したフィルム被覆錠剤を蜜蝋で磨く。
被覆錠剤の重量:245mg
実施例33
活性物質100mgを含む錠剤
組成:
1個の錠剤は下記の成分を含む。
活性物質 100.0mg
ラクトース 80.0mg
トウモロコシ澱粉 34.0mg
ポリビニルピロリドン 4.0mg
ステアリン酸マグネシウム 2.0mg
220.0mg
調製の方法
活性物質、ラクトース及び澱粉を一緒に混合し、ポリビニルピロリドンの水溶液で一様に湿らせる。湿った組成物を篩分け(メッシュサイズ2.0mm)、50℃でラック型乾燥機中で乾燥させた後、それを再度篩分け(メッシュサイズ1.5mm)、滑剤を添加する。完成した混合物を圧縮して錠剤を形成する。
錠剤の重量:220mg
直径:10mm(2平面の、両面で刻まれ、一面でノッチを付けられたもの)
【0071】
実施例34
活性物質150mgを含む錠剤
組成:
1個の錠剤は下記の成分を含む。
活性物質 150.0mg
粉末ラクトース 89.0mg
トウモロコシ澱粉 40.0mg
コロイドシリカ 10.0mg
ポリビニルピロリドン 10.0mg
ステアリン酸マグネシウム 1.0mg
300.0mg
調製
ラクトース、トウモロコシ澱粉及びシリカと混合された活性物質を20%のポリビニルピロリドン水溶液で湿らせ、1.5mmのメッシュサイズを有する篩に通す。45℃で乾燥された、顆粒を再度同篩に通し、明記された量のステアリン酸マグネシウムと混合する。錠剤をその混合物からプレスする。
錠剤の重量:300mg
ダイ:10mm、平ら
【0072】
実施例35
活性物質150mgを含む硬質ゼラチンカプセル
1個のカプセルは下記の成分を含む。
活性物質 150.0mg
トウモロコシ澱粉(乾燥) 約180.0mg
ラクトース(粉末) 約 87.0mg
ステアリン酸マグネシウム 3.0mg
約420.0mg
調製
活性物質を賦形剤と混合し、0.75mmのメッシュサイズを有する篩に通し、好適な装置を使用して均一に混合する。完成した混合物をサイズ1硬質ゼラチンカプセルに詰める。
カプセル充填:約320mg
カプセルシェル:サイズ1硬質ゼラチンカプセル
実施例36
活性物質150mgを含む座薬
1個の座薬は下記の成分を含む。
活性物質 150.0mg
ポリエチレングリコール1500 550.0mg
ポリエチレングリコール6000 460.0mg
ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート 840.0mg
2,000.0mg
調製
座薬塊を融解した後、活性物質をその中に均一に分布させ、融解物を冷却した金型に注入する。
【0073】
実施例37
活性物質50mgを含む懸濁液
懸濁液100mlは下記の成分を含む。
活性物質 1.00g
カルボキシメチルセルロース-Na塩 0.10g
メチルp-ヒドロキシベンゾエート 0.05g
プロピルp-ヒドロキシベンゾエート 0.01g
グルコース 10.00g
グリセロール 5.00g
70%ソルビトール溶液 20.00g
風味料 0.30g
蒸留水 100ml添加
調製
蒸留水を70℃に加熱する。グリセロール及びカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩と一緒にメチルp-ヒドロキシベンゾエート及びプロピルp-ヒドロキシベンゾエートを撹拌しながらその中に溶解する。その溶液を周囲温度に冷却し、活性物質を添加し、撹拌しながらその中に均一に分散させる。糖、ソルビトール溶液及び風味料を添加し、溶解した後、その懸濁液を撹拌しながら排気して空気を除く。
懸濁液5mlは活性物質50mgを含む。
実施例38
活性物質10mgを含むアンプル
組成
活性物質 10.0mg
0.01N塩酸 充分な量
2回蒸留水 2.0ml添加
調製
活性物質を必要な量の0.01N HClに溶解し、食塩で等張にし、無菌濾過し、2mlのアンプルに移す。
【0074】
実施例39
活性物質50mgを含むアンプル
組成
活性物質 50.0mg
0.01N塩酸 充分な量
2回蒸留水 10.0ml添加
調製
活性物質を必要な量の0.01N HClに溶解し、食塩で等張にし、無菌濾過し、10mlのアンプルに移す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
【化1】

の化合物、これらの互変異性体、鏡像体、ジアステレオマー、混合物及びこれらの塩。
〔式中、
R1はC1-4-アルキル基(これは末端でフッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子又はアミノ基により置換されていてもよく、
そのアミノ基の水素原子は互いに独立にC1-3-アルキル基又はフェニル基もしくはピリジル基(必要によりC1-3-アルキル基により置換されていてもよい)により置換されていてもよい)、又は
フェニル基もしくはピリジル基(これらは夫々の場合に1〜3個のC1-3-アルキル基により置換されていてもよい)を表わし、
R2は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子又はシアノ基、ニトロ基、C1-3-アルキル基、トリフルオロメチル基もしくはC1-4-アルキルオキシ基を表わし、かつ
R3はビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-エンイル基又は
シクロヘキシル基(2位の炭素原子が-CH2基、-CH2-CH2基又は-CH=CH基により5位の炭素原子にブリッジされていてもよい)を表わす〕
【請求項2】
R1がC1-4-アルキル基(これは末端でフッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子又はアミノ基により置換されていてもよく、
そのアミノ基の水素原子は互いに独立にC1-3-アルキル基又はフェニル基もしくはピリジル基(必要によりC1-3-アルキル基により置換されていてもよい)により置換されていてもよい)、又は
フェニル基もしくはピリジル基(これらは夫々の場合に1〜3個のC1-3-アルキル基により置換されていてもよい)を表わし、
R2がフッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子又はシアノ基、ニトロ基、C1-3-アルキル基、トリフルオロメチル基もしくはC1-4-アルキルオキシ基を表わし、かつ
R3がビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-エンイル基又は
シクロヘキシル基(2位の炭素原子が-CH2基、-CH2-CH2基又は-CH=CH基により5位の炭素原子にブリッジされていてもよい)を表わす、請求項1記載の一般式(I)の化合物、これらの互変異性体、鏡像体、ジアステレオマー、混合物及びこれらの塩。
【請求項3】
R1がC1-4-アルキル基(これは末端でフッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子又はアミノ基により置換されていてもよく、
そのアミノ基の水素原子は互いに独立にC1-3-アルキル基又はフェニル基もしくはピリジル基(必要によりC1-3-アルキル基により置換されていてもよい)により置換されていてもよい)、又は
フェニル基もしくはピリジル基(これらは夫々の場合に1〜3個のC1-3-アルキル基により置換されていてもよい)を表わし、
R2がフッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子又はシアノ基、ニトロ基もしくはC1-4-アルキルオキシ基を表わし、かつ
R3がビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-エンイル基又は
シクロヘキシル基(2位の炭素原子が-CH2基、-CH2-CH2基又は-CH=CH基により5位の炭素原子にブリッジされていてもよい)を表わす、請求項2記載の一般式(I)の化合物、これらの互変異性体、鏡像体、ジアステレオマー、混合物及びこれらの塩。
【請求項4】
R1がC1-4-アルキル基(これは末端でフッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子又はアミノ基により置換されていてもよく、
そのアミノ基の水素原子は互いに独立にC1-3-アルキル基又はフェニル基もしくはピリジル基(必要によりC1-3-アルキル基により置換されていてもよい)により置換されていてもよい)、又は
フェニル基もしくはピリジル基(これらは夫々の場合に1〜3個のC1-3-アルキル基により置換されていてもよい)を表わし、
R2が水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子又はシアノ基、ニトロ基、C1-3-アルキル基、トリフルオロメチル基もしくはC1-4-アルキルオキシ基を表わし、かつ
R3がシクロヘキシル基(2位の炭素原子が-CH2基又は-CH2-CH2基により5位の炭素原子にブリッジされていてもよい)を表わす、請求項1記載の一般式(I)の化合物、これらの互変異性体、鏡像体、ジアステレオマー、混合物及びこれらの塩。
【請求項5】
R1がC1-4-アルキル基(これは末端でフッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子又はアミノ基により置換されていてもよく、
そのアミノ基の水素原子は互いに独立にC1-3-アルキル基又はフェニル基もしくはピリジル基(必要によりC1-3-アルキル基により置換されていてもよい)により置換されていてもよい)、又は
フェニル基もしくはピリジル基(これらは夫々の場合に1個又は2個のC1-3-アルキル基により置換されていてもよい)を表わし、
R2がフッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子又はシアノ基、ニトロ基、C1-3-アルキル基、トリフルオロメチル基もしくはC1-4-アルキルオキシ基を表わし、かつ
R3がシクロヘキシル基(2位の炭素原子が-CH2基又は-CH2-CH2基により5位の炭素原子にブリッジされていてもよい)を表わす、請求項4記載の一般式(I)の化合物、これらの互変異性体、鏡像体、ジアステレオマー、混合物及びこれらの塩。
【請求項6】
R1がC2-4-アルキル基(これは末端でN-フェニル-N-メチル-アミノ基により置換されている)、又は
フェニル基(これは1個又は2個のメチル基により置換されていてもよい)を表わし、
R2が塩素原子もしくは臭素原子又はシアノ基もしくはニトロ基を表わし、かつ
R3がシクロヘキシル基(2位の炭素原子が-CH2基又は-CH2-CH2基により5位の炭素原子にブリッジされていてもよい)を表わす、請求項5記載の一般式(I)の化合物、これらの互変異性体、鏡像体、ジアステレオマー、混合物及びこれらの塩。
【請求項7】
(a) 2-〔(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-イルカルボニルアミノ〕-4-クロロ-3-シアノ-5-(2,5-ジメチル-フェニル)-チオフェン、
(b) 2-〔(2R)-ビシクロ〔2.2.2〕オクト-2-イルカルボニルアミノ〕-4-クロロ-3-シアノ-5-(2,5-ジメチル-フェニル)-チオフェン、
(c) 4-クロロ-3-シアノ-2-(シクロヘキシルカルボニルアミノ)-5-フェニル-チオフェン、
(d) 4-ブロモ-3-シアノ-2-(シクロヘキシルカルボニルアミノ)-5-フェニル-チオフェン、
(e) 3,4-ジシアノ-2-(シクロヘキシルカルボニルアミノ)-5-フェニル-チオフェン、
(f) 3-シアノ-2-(シクロヘキシルカルボニルアミノ)-4-ニトロ-5-フェニル-チオフェン、
(g) 2-〔(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-イルカルボニルアミノ〕-4-ブロモ-3-シアノ-5-(2,5-ジメチル-フェニル)-チオフェン、
(h) 2-〔(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-イルカルボニルアミノ〕-4-ブロモ-3-シアノ-5-{3-〔メチル-(4-メチルフェニル)-アミノ〕-プロピル}-チオフェン及び
(i) 2-〔(1S,2R,4R)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-イルカルボニルアミノ〕-3,4-ジシアノ-5-{3-〔メチル-(4-メチルフェニル)-アミノ〕-プロピル}-チオフェンである一般式(I)の化合物並びにこれらの塩。
【請求項8】
無機又は有機酸又は塩基との請求項1記載の化合物の生理学上許される塩。
【請求項9】
必要により一種以上の不活性担体及び/又は希釈剤と一緒に請求項1記載の化合物又は請求項8記載の生理学上許される塩を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項10】
糖尿病の治療に適している医薬組成物を調製するための請求項1から9の少なくとも1項に記載の化合物の使用。
【請求項11】
請求項1から8の少なくとも1項記載の化合物を非化学的方法により一種以上の不活性担体及び/又は希釈剤に混入することを特徴とする、請求項9記載の医薬組成物の調製方法。
【請求項12】
a)一般式
【化2】

(式中、R1及びR2は請求項1から8に定義されたとおりである)
の化合物を一般式
R3-COCl (III)
(式中、R3は請求項1から8に定義されたとおりである)
の酸塩化物と反応させ、又は
b)R2がフッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子又はニトロ基を表わす式(I)の化合物を調製するために、一般式
【化3】

(式中、R1及びR3は請求項1から8に定義されたとおりである)
の化合物をフッ素化、塩素化、臭素化、ヨウ素化又はニトロ化し、又は
c)R2がシアノ基を表わす式(I)の化合物を調製するために、一般式
【化4】

(式中、R1及びR3は請求項1から8に定義されたとおりである)
の化合物をシアン化物と反応させ、又は
d)R1がC1-4-アルキル基(これは末端でアミノ基により置換されていてもよく、そのアミノ基の水素原子は互いに独立にC1-3-アルキル基又はフェニル基もしくはピリジル基(必要によりC1-3-アルキル基により置換されていてもよい)により置換されていてもよい)を表わす式(I)の化合物を調製するために、一般式
【化5】

(式中、R2及びR3は請求項1から8に定義されたとおりであり、かつXは脱離基を表わす)
の化合物を相当する二級アミンと反応させ、次いで必要により置換基をこうして導入されたアミノ基について変換し、かつ/又は
反応中に使用した保護基をその後に開裂し、かつ/又は
こうして得られた一般式Iの化合物をそれらの鏡像体及び/又はジアステレオマーに分割し、かつ/又は
得られた式Iの化合物を無機又は有機酸とのそれらの塩、特に医薬上の使用のためにそれらの生理学上許される塩に変換することを特徴とする、請求項1から8に記載の一般式Iの化合物の調製方法。

【公表番号】特表2008−517034(P2008−517034A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537267(P2007−537267)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【国際出願番号】PCT/EP2005/055344
【国際公開番号】WO2006/042850
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】